特許第6559147号(P6559147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モコン・インコーポレーテッドの特許一覧

特許6559147センサーへの供給流路調整システムを搭載した対象分析物の透過試験器
<>
  • 特許6559147-センサーへの供給流路調整システムを搭載した対象分析物の透過試験器 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559147
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】センサーへの供給流路調整システムを搭載した対象分析物の透過試験器
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01N15/08 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553563(P2016-553563)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公表番号】特表2017-506346(P2017-506346A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】US2015017196
(87)【国際公開番号】WO2015127415
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】61/943,772
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592014182
【氏名又は名称】モコン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エー・アッシュマン
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0060418(US,A1)
【文献】 特開昭63−236943(JP,A)
【文献】 実開昭62−165545(JP,U)
【文献】 特開2009−271073(JP,A)
【文献】 特開2002−048703(JP,A)
【文献】 特開2000−310589(JP,A)
【文献】 特開2006−322790(JP,A)
【文献】 特開2009−042184(JP,A)
【文献】 特開平11−295192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
G01N 1/00;15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験セルにおける対象分析物の試験フィルムに対する透過率を測定するための対象分析物の透過試験器であり、
(‐)対象分析物センサーと、(‐)試験室を、対象分析物を含む駆動気体が供給される駆動室と、不活性気体が供給される検知室に密閉分離するように試験室内に試験フィルムを保持するようになっている少なくとも1つの試験セルとを有する透過試験器であって、
(i)1本の共通導管が共用の対象分析物センサーと連通することと、
(ii)複数の個別の専用導管がそれぞれ共通導管と連通しかつ透過試験器により様々な対象分析物にさらされた流体を送ることができるようになっており、個別の専用導管のうち少なくとも1本が少なくとも1つの試験セルの検知室と連通していることと、
(iii)専用弁が専用導管と接続されて試験セル側から送られる流体を排気する排気状態と通気状態の間で操作可能であることと、
(iv)共通弁が共通導管に接続されて試験セル側から送られる流体を排気する排気状態と通気状態の間で操作可能であることとを特徴とする透過試験器。
【請求項2】
試験セルにおける対象分析物の試験フィルムに対する透過率を測定するための対象分析物の透過試験器であり、
共用の対象分析物センサーと、各々試験室が形成された試験セルで、試験室を駆動室と検知室に密閉分離するように試験フィルムを保持するようになっている複数の試験セルとを有する透過試験器であって、
(i)1本の共通導管が共用の対象分析物センサーと連通することと、
(ii)個別の専用導管が各検知室と共通導管に接続されて連通し、専用導管によりそれぞれ流体を検知室から共通導管へと送るようになっていることと、
(iii)専用弁が専用導管に付属されて試験セル側から送られる流体を排気する排気状態と通気状態の間で操作可能であることと、
(iv)共通弁が共通導管に付属されて試験セル側から送られる流体を排気する排気状態と通気状態の間で操作可能であることとを特徴とする透過試験器。
【請求項3】
請求項1の対象分析物の透過試験器を用いて試験フィルムを通る対象分析物の透過率を測定する方法であって、
(a)請求項1の対象分析物の透過試験器を入手するステップと、
(b)少なくとも1つの試験セルに試験フィルムを装着するステップと、
(c)試験フィルムを内蔵する少なくとも1つの試験セルの駆動室を通して、対象分析物を含む駆動気体の流れを供給するステップと、
(d)試験フィルムを内蔵する少なくとも1つの試験セルの検知室を通して、不活性気体の流れを供給するステップとを備えており、
さらにこれに続いて順番に、
(e)少なくとも1つの試験セルの検知室に付属された、個別の専用導管のための専用弁を通気するように調節し、共通弁を通気するように調節し、他の全ての専用弁を排気するように調節し、対象分析物センサーと連通する対象分析物の濃度を測定することにより、少なくとも1つの試験セルの検知室における対象分析物の濃度を測定するステップと、
(f)共通弁を排気するように調節し、少なくとも1つの試験セルの検知室に付属した個別の専用導管用の専用弁を排気するように調節し、異なる個別の専用導管に付属した専用弁を通気するように調節し、他の全ての専用弁を排気するようにしておくことにより、異なる個別の専用導管を通って共通導管へと送られる流体中の対象分析物の濃度を測定する次の測定のために透過試験器をある調整期間で調整するステップと、
(g)共通弁を通気するように調節することにより、異なる個別の専用導管を通って共通導管に送られる流体中の対象分析物の濃度を測定するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3の方法であって、異なる個別の専用導管により流体を別の試験セルの検知室から共通導管へと送るようになっていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3の方法であって、異なる個別の専用導管により不活性キャリア気体を、すべての試験セルを通過することなく共通導管に送るようになっていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2の対象分析物の透過試験器を用いて複数の試験フィルムを通る対象分析物の透過率を同時に測定する方法であって、
(a)請求項2の対象分析物の透過試験器を入手するステップと、
(b)少なくとも2つの試験セルのそれぞれに試験フィルムを装着するステップと、
(c)試験フィルムを内蔵する各試験セルの駆動室を通して対象分析物を含む駆動気体の流れを供給するステップと、
(d)試験フィルムを内蔵する各試験セルの検知室を通して不活性キャリア気体の流れを供給するステップとを備えており、
さらにこれに続いて順番に、
(e)専用導管に付属の専用弁を通気するように調節し、共通弁を通気するように調節し、他の全ての専用弁を排気するように調節し、第一試験セルの検知室から専用弁と共通弁を通って対象分析物センサーへと連通する不活性気体の流れによって運ばれる対象分析物の濃度を測定することにより、第一試験セルの検知室における対象分析物の濃度を測定するステップと、
(f)共通弁を排気するように調節し、第一試験セルの検知室に付属した専用弁を排気するように調節し、第二試験セルの検知室に接続された専用弁を通気するように調節し、他の全ての専用弁を排気するようにしておくことにより、第二試験セルの検知室における対象分析物の濃度を測定する次の測定のために透過試験器をある調整期間で調整するステップと、
(g)共通弁を通気するように調節することにより、第二試験セルの検知室における対象分析物の濃度を測定するステップとを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(記載なし)
【背景技術】
【0002】
膜やフィルム、包装材、瓶、パッケージ、容器等の様々な試料(以降、便宜的にまとめて「試験フィルム」と呼ぶ)を透過する酸素、二酸化炭素、水蒸気などの対象分析物の透過率を測定するのに透過機器が用いられる。典型的な試験フィルムは低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVTDC)などから構成される高分子包装フィルムである。通常、試験にかけるフィルムは試験室を第1室と第2室に分けて密閉分離するように試験室内に配置される。第1室(一般に駆動室または分析室と呼ぶ)は既知濃度の対象分析物を含む気体(一般に駆動気体と呼ぶ)で満たされる。第2室(一般に検知室と呼ぶ)には対象分析物をセルから除去するように不活性気体(一般にキャリア気体と呼ぶ)が流される。対象分析物用のセンサーは、駆動室から試験フィルムを透過し、検知室へと移動した対象分析物の存在を検出する検知室と連通して配置されている。酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)を試験フィルムに通して透過率を計測する代表的な透過率測定器としては、モコン社(Mocon,Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)からそれぞれOXTRAN、PERMATRAN−CおよびPERMATRAN−Wの名称で市販されている。
【0003】
透過試験器の機器内に圧力差が生じると、試験気体やキャリア気体の加湿に影響を与えたり、圧力誘起により試験フィルムを隔てた駆動力を生み出したりするおそれがあるが、これらを制限するため透過試験器では機器内を非常に低い質量流量で流すようにしている。センサーへの供給流路は、新規に選択された試験セルの検知室から送られてくるキャリア気体により洗い流されるようにしているため、このような低い質量流量では異なる試験セルを用いた測定から測定までの間に著しい遅延時間を生じさせてしまう。
【0004】
異なる試験セルを用いた測定への切り替えにかかる時間を最小限にとどめつつ、複数の試験セル由来の対象分析物の透過率を同時に測定できる透過機器が大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,578,208号
【特許文献2】米国特許第7,908,936号
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一態様は試験セル内において試験フィルムに対する対象分析物の透過率を測定するための対象分析物の透過試験器であり、センサーへの供給流路を調整するシステムを特徴とする。
【0007】
第一実施例として、この機器は対象分析物センサーと、試験室を駆動室と検知室に密閉分離するように試験室内に試験フィルムを保持するように用いることができる、少なくとも1つの試験セルとを備える。この対象分析物の透過試験器は(i)1本の共通導管が共用の対象分析物センサーと連通することと、(ii)複数の個別の専用導管が、それぞれ共通導管と連通し、かつ機器により様々な対象分析物にさらされた流体を送ることができ、個別の専用導管のうちの少なくとも1本が少なくとも1つの試験セルの検知室と連通していることと、(iii)それぞれの専用導管に専用弁が付属されて排気状態と通気状態の間で操作可能であることと、(iv)共通導管に共通弁が付属されて排気状態と通気状態の間で操作可能であること、とによって特徴付けられる。
【0008】
第二実施例として、この機器は共用の対象分析物センサーと複数の試験セルとを備えており、各試験セルに試験室が形成されており、各試験セルは試験室を駆動室と検知室に密閉分離するように試験フィルムを保持するようになっている。本願の対象分析物の透過試験器は、
(i)1本の共通導管が共用の対象分析物センサーと連通することと、
(ii)個別の専用導管が、各々の検知室や共通導管と接続されて連通することや、専用導管の各々が試験セルに接続されて検知室から共通導管まで流体を流すように操作可能であることと、
(iii)専用弁がそれぞれの専用導管に付属され、排気状態と通気状態の間で操作可能であることと、
(iv)共通弁が共通導管に付属され、排気状態と通気状態の間で操作可能であること、とによって特徴付けられる。
【0009】
本発明の第二態様は、本発明の第一態様による対象分析物の透過試験器を用いて試験フィルムを透過する対象分析物の透過率を測定する方法である。
【0010】
本発明の第二態様の第一実施例は、本発明の第一態様の第一実施例による対象分析物の透過試験器を利用して試験フィルムを透過する対象分析物の透過率を測定する方法である。この方法には最初のセットアップとそれに続く試験のステップを含む。このセットアップのステップには(i)本発明の第一態様の第一実施例による対象分析物の透過試験器を入手するステップと、(ii)少なくとも1つのセル内に試験フィルムを装着するステップと、(iii)試験フィルムを内蔵する少なくとも1つの試験セルの駆動室を通る駆動気体を含んだ対象分析物の流れを供給するステップと、(iv)試験フィルムを内蔵する少なくとも1つの試験セルの検知室を通る不活性キャリア気体の流れを供給するステップとを含む。また試験のステップには(a)少なくとも1つの試験セルの検知室に付属された個別の専用導管のための専用弁を通気するように調節し、共通弁を流れるように調節し、他の全ての専用弁を排気するように調節し、対象分析物センサーと連通する対象分析物の濃度を測定することにより、少なくとも1つの試験セルの検知室内における対象分析物の濃度を測定するステップと、(b)共通弁を排気するように調節し、少なくとも1つの試験セルの検知室に付属された、異なる個別の専用導管用の専用弁を排気するように調節し、異なる個別の専用導管に付属された専用弁を流れるように調節し、他の全ての専用弁を排気するように調節することにより、調整期間に異なる個別の専用導管を通って共通導管に運ばれる、流体中の対象分析物の濃度測定を確実なものとするように機器を調整するステップと、(c)共通弁を流れるように調節することにより、異なる個別の専用導管を通って共通導管に運ばれる流体中の対象分析物の濃度を測定するステップといった一連のステップを含む。
【0011】
本発明の第二態様の第二実施例は、本発明の第一態様の第二実施例による対象分析物の透過試験器を利用して、複数の試験フィルムを透過する対象分析物の濃度を同時に測定する方法である。この方法には最初のセットアップとそれに続く試験ステップを含む。このセットアップには(i)本発明の第一態様の第二実施例による対象分析物の透過試験器を入手するステップと、(ii)少なくとも2つの試験セルのそれぞれに試験フィルムを搭載するステップと、(iii)試験フィルムを内蔵するそれぞれの試験セルの駆動室を通り対象分析物を含む駆動気体の流れを供給するステップと、(iv)試験フィルムを内蔵するそれぞれの試験セルの検知室を通る不活性気体の流れを供給するステップとを含む。試験ステップには(a)付属の専用弁を流れるように調節し、共通弁を流れるように調節し、他の全ての専用弁を流れるように調節し、対象分析物センサーと連通する対象分析物の濃度を測定することにより、第一試験セルの検知室内における対象分析物の濃度を測定するステップと、(b)共通弁を排気するように調節し、第一試験セルの検知室に付属の専用弁を排気するように調節し、第二試験セルの検知室に付属の専用弁を流れるように調節し、他の全ての専用弁を排気するように置いておくことにより、第二試験セルの検知室内の対象分析物の濃度を調整期間に確実に測定するために機器を調整するステップと、(c)共通弁を流れるように調節することにより、第二試験セルの検知室内の対象分析物の濃度を測定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の一実施例の配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1によると、本発明はセンサーへの供給流路調整システムに特徴のある対象分析物の透過試験器10である。
【0014】
この機器10は試験フィルムFnに対する対象分析物の透過率を測定するための、対象物分析センサー200と複数の試験セル70nを備える。各試験セル70nに試験室が形成され、各試験セル70nは試験室を駆動室70nAと検知室70nBに密閉分離するように試験フィルムFを保持するようになっている。セル70nはブロックマニホールド100に固定されていることが望ましく、このブロックマニホールドは内部に適切な経路と部屋が形成されている頑丈なブロック状の鋳物マニホールド100であることが望ましい。複数の経路300nは各セル70nの試験室と、駆動気体の加圧供給源Aと、不活性気体の加圧供給源Bと、対象分析物センサー200と連通する。この複数の経路300nは駆動気体を駆動気体の加圧供給源Aから各セル70nの駆動室70nAに選択的に送ったり、駆動気体を各セルの駆動室70nAから駆動気体の排気ポート70nAxへと送ったりすることができるようになっており、また不活性気体を不活性気体の加圧供給源Bから各セル70nの検知室70nBに選択的に送ったり、不活性気体を各セルの検知室70nBから対象分析物センサー200へと送ったりすることができるようになっている。
【0015】
機器10には詰替え可能な第一貯水器50Aを設けてもよい。この第一貯水器は駆動気体源Aと選択的な連通をし、各々のセル70nの駆動室70nAと連通する。加えて機器10には詰替え可能な第二貯水器50Bを設けてもよい。この第二貯水器は不活性気体源Bと選択的な連通をし、各々のセル70nの検知室70nBと連通する。
【0016】
図1に具体例として、本発明10のセルが2つの場合で、任意で設けることのできるブロックマニホールド100を利用する実施例を示す。例えば米国特許第7,578,208号や米国特許第7,908,936号に記載されている(参照によりその全体を本明細書に援用する)ように、透過試験器10は試験気体とキャリア気体のそれぞれのための加湿システムを備えていることが望ましい。
【0017】
乾燥した試験気体の気体源Aは第一加湿システムと流体的に連通しており、この第一加湿システムは貯水器50Aと連通する湿潤流路3000wetと、貯水器50Aを避けて通る乾燥流路3000dryを備える。試験気体に所望の加湿量が与えられるように、湿潤流路3000wetと乾燥流路3000dryを通る試験気体の流れをデューティー比に応じて試験気体のRH調節弁20Aで調整する。
【0018】
試験気体の湿潤流路3000wetは送入口101Awetからブロックマニホールド100に入る。また試験気体の乾燥流路3000dryは送入口101Adryからブロックマニホールド100に入る。
【0019】
貯水器50Aを出ると、湿潤流路3000wet中の加湿された試験気体は、乾燥流路3000dry中の乾燥した試験気体と混ぜ合わされ、この混ぜ合わされた試験気体は試験気体の吸気流路3001A・3002Aを通ってそれぞれ第一試験セル701と第二試験セル702の駆動室701A・702Aに向かう。試験気体は駆動室701A・702Aを通過し、排気ポート(符号なし)から出て、それぞれ排気ポート701Ax・702Axからブロックマニホールドの外に排気される。
【0020】
試験気体に同伴する粒子状物質をブロックマニホールド100に侵入する前に取り除くために、粒子フィルター40Awet・40Adryを試験気体の湿潤流路3000wetと試験気体の乾燥流路3000dryにそれぞれ設けるのが望ましい。
【0021】
同様に、乾燥キャリア気体の気体源Bは第二加湿システムと連通しており、このシステムは貯水器50Bと連通している湿潤流路3000wetと、貯水器50Bを避けて通る乾燥流路3000dryを備える。キャリア気体に所望の加湿量が与えられるように、湿潤流路3000wetと乾燥流路3000dryを通るキャリア気体の流れを、デューティー比によってキャリア気体のRH操作弁20Bで調整する。
【0022】
キャリア気体の湿潤流路3000wetは送入口101Bwetからブロックマニホールド100に入る。またキャリア気体の乾燥流路3000dryは送入口101Bdryからブロックマニホールド100に入る。
【0023】
貯水器50Bを出ると、湿潤流路3000wet中の加湿されたキャリア気体は乾燥流路3000dry中の乾燥したキャリア気体と混ぜ合わされ、この混ぜ合わされたキャリア気体は試験気体の吸気流路3001B・3002Bを通りそれぞれ第一試験セル701と第二試験セル702内にある検知室701B・検知室702Bに向かう。キャリア気体は、各々の検知室701B・702Bを通過し、排気ポート(符号なし)から出て、それぞれ専用の排気経路3001OUT・3002OUTを通して共通の経路3005へと向かう。この共通の経路3005はブロックマニホールド100の外側にある対象分析物センサー200と連通している。
【0024】
共通の経路3005は排気ポート102からブロックマニホールド100の外に出る。
【0025】
キャリア気体の湿潤流路3000wetとキャリア気体の乾燥流路3000dryにはそれぞれ粒子フィルター40Bwet・40Bdryを設けるのが望ましい。これはキャリア気体に同伴する粒子状物質をブロックマニホールド100に侵入する前に取り除くためである。
【0026】
対象分析物の触媒コンバーター30Bwet・30Bdryは、キャリア気体の湿潤流路3000wetとキャリア気体の乾燥流路3000dryのそれぞれに設けられるのが望ましい。これはキャリア気体中のどんな対象分析物(例えばO2等)も、(例えば対象分析物がO2の場合にH2O等の)対象分析物センサー200により検知されない分子種に変換するためである。
【0027】
試験気体の吸気流路3001A・3002Aとキャリア気体の吸気流路3001B・3002Bにはそれぞれ毛細管絞り601A・602A・601B・602Bを設けるのが望ましい。これは、試験セル701・702の駆動室701A・702Aと、試験セル701・702の検知室701B・702Bにそれぞれ気体が一定かつ均等に流れるのを促進するためである。毛細管絞り60nはブロックマニホールド100の側面に取り付けるのが望ましい。
【0028】
それぞれの専用の排気経路3001OUT・3002OUTには、試験フィルムFを透過した対象分析物を含むキャリア気体を検知室701B・702Bのそれぞれから選択的かつ相互排他的に通してセンサー200に対し検知可能な関わりが生じるようにするための弁801Bと弁802Bがそれぞれ設けられている。弁を閉じると、弁801B・802Bによって、試験フィルムFを透過した対象分析物を含むキャリア気体をマニホールド100の放出ポート801Bx・802Bxから周囲の空気中へと放出する。この弁80nBはブロックマニホールド100の側面に取り付けるのが望ましい。
【0029】
前に述べたように、透過試験器10は測定器10の中を非常に低い質量流量で流すようにしている。なぜならば、測定器10内に圧力差が生じることで試験気体やキャリア気体の加湿に影響を与えたり圧力誘起により試験フィルムFを横切る駆動力を生み出したりするのを抑制するためである。図1に示した実施例において、このように、測定器10を流れる質量流量を低く抑えているため、異なる試験セルでの測定の間に大幅な時間の遅延が発生する。なぜならば、次の試験セル70nでの測定に備え試験セル排気通路300nOUTに含まれる「新鮮でない」キャリア気体と、測定済みの試験セル70nから分配されて排気流路3005に含まれる「利用できない」キャリア気体とが流路から洗い流され、次の試験セル70nから来る、試験フィルムFを透過した対象分析物を含む新鮮なキャリア気体で置換されるためである。経路調整機能は、共有の排気流路3005において共通の経路調整弁88Bを利用して、次の試験セル70nと前の試験セル70nの弁80nBの開閉と連携しながら、次の試験セル70nに備えて排気流路300nOUTに含まれる「新鮮でない」キャリア気体を前もって排気できるようにする。このセル切り替え経路調整弁88Bは、キャリア気体がセンサー200に向かって流れるフロースルー状態と、キャリア気体がブロックマニホールド100内の排気ポート88Bxを通って周囲の空気に排気される排気状態との間を切り替える動作が可能である。共通の経路調整弁88Bはブロックマニホールド100の側面に取り付けるのが望ましい。
【0030】
図1に示した測定器10は任意で再ゼロ校正機能を備える。再ゼロ校正は試験期間中にキャリア気体に含まれる残りの対象分析物を測定する方法のひとつであって、この方法には試験セルを回避してキャリア気体中の対象分析物濃度を直接計測するステップを含み、後でこの濃度は各試料に関して測定した対象分析物濃度の透過率から差し引かれる。
【0031】
この再ゼロ校正機能には、試験セル70nを回避して直接的にセンサー200にキャリア気体を送るため、試験セル70nより上流に再ゼロ校正流路3009Bを含む。また、キャリア気体を選択的にセンサー200へと向かわせるかブロックマニホールド100から排気ポート89Bxを通して排出するために、再ゼロ校正弁89Bが再ゼロ校正流路3009Bに設けられる。この再ゼロ校正弁89Bはブロックマニホールド100の側面に取り付けるのが望ましい。
【0032】
試験セル701・702の検知室701B・702Bの各々にキャリア気体が一定かつ均等に流れるのを促進するため、毛細管絞り609Bをキャリア気体再ゼロ校正流路3009Bに設けるのが望ましい。この毛細管絞り609Bは他の毛細管絞りと同様に、ブロックマニホールド100の側面に取り付けるのが望ましい。
【0033】
センサー200は適当な対象分析物(例えば酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等)を測定できるものを選択する。当業者であればその知識と技術の範囲内で十分に適切なセンサー200を選択することができる。このセンサー200はクーロックス(Coulox(登録商標))センサーとするのが望ましく、センサー200にキャリア気体が流れていないときにセンサーが周囲の空気により汚染されるのを防ぐ排出弁210を備えるものとする。
【0034】
利用
対象分析物の透過試験器10を用いることにより、複数の試験フィルムを通してする対象分析物の透過率を比較的短時間かつ同時に測定することができる。この方法には最初のセットアップとそれに続く試験ステップを含む。
【0035】
このセットアップには(i)本発明の対象分析物の透過試験器10を入手するステップと、(ii)少なくとも2つの試験セル70nにそれぞれ試験フィルムを装着するステップと、(iii)試験フィルムFを内蔵する各試験セル70nの駆動室70nAを通る対象分析物を含む駆動気体の流れを供給するステップと、(iv)試験フィルムFを内蔵する各試験セル70nの検知室70nBを通る不活性キャリア気体の流れを供給するステップとを含む。
【0036】
図1に示した実施例に基づくと、試験ステップには(a)付属の専用弁を流れるように調節し、共通の経路弁88Bを流れるように調節し、他の全ての専用弁802Bを排気するように調節し、対象分析物センサー200と連通する対象分析物の濃度を測定することにより、第一試験セル701の検知室701Bの対象分析物の濃度を測定するステップと、(b)共通の経路弁88Bを排気するように調節し、第一試験セル701の検知室701Bに付属の専用弁801Bを排気するように調節し、第二試験セル702の検知室702Bに付属の専用弁802Bを流れるように調節し、他の全ての専用弁(図1の実施例に図示せず)を排気するようにしておくことにより、第二試験セル702の検知室702Bにおける対象分析物の濃度を確実に測定するために測定器10を調整するステップと、(c)共通の経路弁88Bを流れるように調節することにより、調整期間に第二試験セル702の検知室702Bの対象分析物の濃度を測定するステップといった、一連のステップを含む。
【符号の説明】
【0037】
用語表
10 対象分析物の透過試験器
20A 試験気体のRH操作弁
20B キャリア気体のRH操作弁
30Bwet 湿潤キャリア気体流路における触媒室
30Bdry 乾燥キャリア気体流路における触媒室
40Awet 湿潤試験気体流路における粒子フィルター
40Adry 乾燥試験気体流路における粒子フィルター
40Bwet 湿潤キャリア気体流路における粒子フィルター
40Bdry 乾燥キャリア気体流路における粒子フィルター
50A 試験気体用の貯水器
50B キャリア気体用の貯水器
60n 毛細管絞り
601A 第一試験セルに向かう試験気体経路のための毛細管絞り
602A 第二試験セルに向かう試験気体経路のための毛細管絞り
601B 第一試験セルに向かうキャリア気体経路のための毛細管絞り
602B 第二試験セルに向かうキャリア気体経路のための毛細管絞り
609B 再ゼロ校正弁に向かうキャリア気体経路のための毛細管絞り
70n 試験セル
70nA 試験セルnの駆動室
70nB 試験セルnの検知室
70nAx 試験セルnの駆動室からの排気
701 第一試験セル
701A 第一試験セルの駆動室
701Ax 第一試験セルの駆動室からの排気
701B 第一試験セルの検知室
702 第二試験セル
702A 第二試験セルの駆動室
702Ax 第二試験セルの駆動室からの排気
702B 第二試験セルの検知室
80nB 試験セルn用のキャリア気体の検知室出口弁
801B 第一試験セルのキャリア気体出口弁
801Bx 第一試験セルの検知室からの排気
802B 第二試験セルのキャリア気体出口弁
802Bx 第二試験セルの検知室からの排気
88B 共通の経路調整弁
88Bx 共通の経路調整弁からの排気
89B 再ゼロ校正弁
89Bx 再ゼロ校正弁からの排気
100 ブロックマニホールド
101Awet 試験気体の貯水器送入口
101Adry 試験気体の貯水器バイパス送入口
101Bwet キャリア気体の貯水器送入口
101Bdry キャリア気体の貯水器バイパス送入口
102 キャリア気体のセンサーに向かう送出口
200 対象分析物センサー
210 センサー排気弁
300n 気体フロー流路n
3000wet 試験気体の貯水器送入流路
3000dry 試験気体の貯水器バイパス送入流路
3000wet キャリア気体の貯水器送入流路
3000dry キャリア気体の貯水器バイパス送入流路
3001in 試験気体の第一試験セル送入流路
3001in キャリア気体の第一試験セル送入流路
3002in 試験気体の第二試験セル送入流路
3002in キャリア気体の第二試験セル送入口
300nout 試験セルn用のキャリア気体送出流路
3001out キャリア気体の第一試験セル送出流路
3002out キャリア気体の第二試験セル送出流路
3005 共用のキャリア気体の試験セル送出流路
3009B キャリア気体の再ゼロ校正流路
A 駆動気体源または試験気体源
B 不活性気体源またはキャリア気体源
F 試験フィルム

図1