特許第6559150号(P6559150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6559150-表面保護用シート 図000003
  • 特許6559150-表面保護用シート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559150
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】表面保護用シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   H01L21/304 631
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-555257(P2016-555257)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2015079724
(87)【国際公開番号】WO2016063916
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-216541(P2014-216541)
(32)【優先日】2014年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 和幸
(72)【発明者】
【氏名】奥地 茂人
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−177542(JP,A)
【文献】 特開平08−245932(JP,A)
【文献】 特開2007−206751(JP,A)
【文献】 特開2012−097188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面研削を行う際に用いる表面保護用シートであって、
無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)の硬化物とを含む帯電防止コート層及び硬化性樹脂(B)の硬化物を含む支持フィルムからなる基材と、粘着剤層とを有し、
10%伸張時の1分経過後における基材の応力緩和率が60%以上であり、
基材のヤング率が100〜2000MPaである表面保護用シート。
【請求項2】
帯電防止コート層が、硬化性樹脂(A)の硬化物100質量部に対して無機導電性フィラーを150〜600質量部含有する請求項1に記載の表面保護用シート。
【請求項3】
硬化性樹脂(B)が、エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂である請求項1または2に記載の表面保護用シート。
【請求項4】
硬化性樹脂(B)を含む配合物を工程シート上に塗布し予備硬化して、予備硬化層を形成する工程と、
無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を予備硬化層上に塗布し、塗膜層を形成する工程と、
予備硬化層と塗膜層とを硬化し、基材を形成する工程とを有する表面保護用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面研削時に該ウエハ表面に仮着され、回路パターンを保護するために使用される表面保護用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高集積化にともない、その構成部材である半導体チップの薄型化が進められている。このため、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
【0003】
半導体ウエハ表面に回路パターン形成後にウエハ裏面を研削することは従来より行われている。この際、回路面に表面保護用シートと呼ばれる粘着シートを貼付して、回路面の保護およびウエハの固定を行い、裏面研削を行っている。研削時には、発生する研削屑および熱を除去するため、ウエハの研削面に水を噴霧することが一般的である。
【0004】
従来、表面保護用シートには、基材上に粘着剤が塗工されてなる粘着シートが用いられていた。特許文献1では、応力緩和率の高い表面保護用シートを用いることで、裏面研削後におけるウエハの反りを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−150432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の表面保護用シートを用いてウエハの裏面研削を行うと、ウエハから表面保護用シートを剥離する際に剥離帯電により静電気が発生し、ウエハの表面に形成された回路に損傷を与えることがあった。近年、ウエハ表面に形成される回路は、配線が微細化され高密度化しているため、剥離帯電による静電気の発生が特に問題となっている。
【0007】
このような剥離帯電による静電気を防止する手段として、表面保護用シートに帯電防止コート層を形成することが考えられる。しかし、十分な帯電防止性能が得られていないのが現状であった。
【0008】
本発明は、シート剥離後のウエハの反りを抑制でき、十分な帯電防止性能を有する表面保護用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、以下の要旨を含む。
〔1〕表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面研削を行う際に用いる表面保護用シートであって、
無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)の硬化物とを含む帯電防止コート層及び支持フィルムからなる基材と、粘着剤層とを有し、
10%伸張時の1分経過後における基材の応力緩和率が60%以上であり、
基材のヤング率が100〜2000MPaである表面保護用シート。
【0010】
〔2〕帯電防止コート層が、硬化性樹脂(A)の硬化物100質量部に対して無機導電性フィラーを150〜600質量部含有する〔1〕に記載の表面保護用シート。
【0011】
〔3〕支持フィルムが硬化性樹脂(B)の硬化物を含む〔1〕または〔2〕に記載の表面保護用シート。
【0012】
〔4〕硬化性樹脂(B)が、エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂である〔3〕に記載の表面保護用シート。
【0013】
〔5〕硬化性樹脂(B)を含む配合物を工程シート上に塗布し予備硬化して、予備硬化層を形成する工程と、
無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を予備硬化層上に塗布し、塗膜層を形成する工程と、
予備硬化層と塗膜層とを硬化し、基材を形成する工程とを有する表面保護用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面保護用シートによれば、シート剥離後のウエハの反りが抑制され、かつ剥離帯電による静電気の発生を抑制し、静電気によるウエハ回路の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る表面保護用シートを半導体ウエハに貼付している状態の断面図である。
図2】半導体ウエハの回路形成面の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、その最良の形態も含めてさらに具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係る表面保護用シート10は、表面に回路12が形成された半導体ウエハ11の裏面研削を行う際に用いられ、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)の硬化物とからなる帯電防止コート層1及び支持フィルム2からなる基材5と、粘着剤層3とを有し、10%伸張時の1分経過後における基材の応力緩和率が60%以上であり、基材のヤング率が100〜2000MPaである。
【0017】
〔基材〕
本発明の表面保護用シートに使用される基材は、帯電防止コート層と支持フィルムとからなる。以下において、帯電防止コート層、支持フィルムの順に説明する。
【0018】
(帯電防止コート層)
帯電防止コート層は、後述する支持フィルムの片面または両面を被覆するように形成される。帯電防止コート層を設けることで、本発明に係る表面保護用シートを被着体(例えば半導体ウエハや半導体チップ等)から剥離する際に剥離帯電により発生する静電気を効果的に拡散し、帯電防止性能が向上する。帯電防止コート層は、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)の硬化物とからなり、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を硬化する方法により得ることができる。
【0019】
無機導電性フィラーは特に限定されないが、例えばCu、Al、Ni、Sn、Zn等の金属粉末等の金属フィラーや、酸化亜鉛系、酸化チタン系、酸化スズ系、酸化インジウム系、酸化アンチモン系等の金属酸化物フィラーが挙げられる。これらの中でも、比較的安価であり、汎用性があることから酸化スズ系の金属酸化物フィラーが好ましい。酸化スズ系の金属酸化物フィラーとして、具体的には、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)等を用いることができる。
【0020】
無機導電性フィラーの平均粒子径は特に限定されず、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μmである。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラックUPA-150)により測定した値である。
【0021】
帯電防止コート層は、硬化性樹脂(A)の硬化物100質量部に対して、無機導電性フィラーを好ましくは150〜600質量部、より好ましくは200〜600質量部、特に好ましくは220〜600質量部含有する。なお、硬化前の硬化性樹脂(A)および無機導電性フィラーの配合量比と、硬化性樹脂(A)の硬化物および無機導電性フィラーの配合量比には実質的に差がないのが通常である。そのため、本発明では硬化前の硬化性樹脂(A)および無機導電性フィラーの配合量比を、硬化性樹脂(A)の硬化物および無機導電性フィラーの配合量比とみなす。帯電防止コート層における無機導電性フィラーの含有量を上記範囲とすることで、優れた帯電防止性能を発現することができ、また、半導体ウエハを加工する工程において、帯電防止コート層にクラックが発生することを防止し、その結果、帯電防止性能が低下することをより効率的に抑制できる。
【0022】
硬化性樹脂(A)は特に限定されないが、エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が用いられ、好ましくはエネルギー線硬化型樹脂が用いられる。
【0023】
エネルギー線硬化型樹脂は特に限定されないが、例えば、エネルギー線重合性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーや、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー系エネルギー線硬化型樹脂を主剤とした樹脂組成物が好ましく用いられる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mw(ゲルパーミテーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう。)は、通常1000〜70000程度であり、好ましくは1500〜60000の範囲である。上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
エネルギー線硬化型樹脂におけるオリゴマー系エネルギー線硬化型樹脂の含有量を大きくすると、後述する支持フィルムとの密着性が低下する場合がある。支持フィルムとの密着性を向上させるため、硬化性樹脂(A)の成分中にバインダー成分を添加してもよい。このようなバインダー成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0025】
また、エネルギー線硬化型樹脂は側鎖にエネルギー線硬化性の官能基を有するポリマーであってもよい。このようなポリマーをエネルギー線硬化型樹脂として使用すれば、架橋密度を下げることなく支持フィルムとの密着性を向上させることができる。このようなポリマーとしては、例えば、主鎖がアクリルポリマーであり、側鎖にエネルギー線硬化性二重結合やエポキシ基を官能基として有するものが使用できる。
【0026】
エネルギー線硬化型樹脂に、光重合開始剤を混入することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびに照射量を少なくすることができる。光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
また、硬化性樹脂(A)には、無機導電性フィラーの樹脂中の分散性を向上させるために、分散剤を配合してもよい。また、顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
【0028】
帯電防止コート層は、後述する支持フィルム上に直接、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を製膜、硬化することで形成できる。また、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を液状状態で工程フィルム上に薄膜状にキャストし、さらにその上に、後述する硬化性樹脂(B)を含む配合物をキャストすることにより、帯電防止コート層と支持フィルムとからなる基材を得ることができる。このときの硬化を行う手順は、それぞれの製膜の直後でもよいし、基材を製膜後、一括で行ってもよい。
【0029】
帯電防止コート層の厚さは、好ましくは0.2〜5μm、より好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは1〜4μmである。帯電防止コート層の厚さを上記範囲とすることで、高い帯電防止性能が維持される傾向がある。
【0030】
また、帯電防止コート層の表面抵抗率は、好ましくは1×1012Ω/□以下、より好ましくは1×1011Ω/□以下、特に好ましくは1×1010Ω/□以下である。帯電防止コート層の表面抵抗率が1×1012Ω/□を超えると、本発明の表面保護用シートを被着体から剥離する際に、静電気の発生を安定的に抑制することが困難になることがある。帯電防止コート層の表面抵抗率を上記範囲とすることにより、表面保護用シートの帯電防止性能を向上させることができる。帯電防止コート層の表面抵抗率は、帯電防止コート層を100mm×100mmに裁断して得られたサンプルを、23℃、平均湿度50%RHの条件下で24時間調湿した後、その表面の抵抗値を、JIS K 6911;1995に準拠して測定することができる。
【0031】
(支持フィルム)
本発明の表面保護用シートに使用される支持フィルムは、樹脂シートであれば特に限定されず、各種の樹脂シートが使用可能である。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、ウレタン等の樹脂フィルムが挙げられる。支持フィルムはこれらの単層であってもよいし、積層体からなってもよい。また、架橋等の処理を施したフィルムであってもよい。
【0032】
このような支持フィルムとしては、熱可塑性樹脂を押出成形によりシート化したものが使用されてもよいし、硬化性樹脂(B)を所定手段により薄膜化、硬化した硬化物からなるフィルムが使われてもよい。支持フィルムとして、硬化性樹脂(B)の硬化物からなるフィルムを用いると、基材の応力緩和率やヤング率の制御が容易になると共に、帯電防止コート層との密着性を向上させることができる。
【0033】
硬化性樹脂(B)は特に限定されないが、帯電防止コート層に使用する硬化性樹脂(A)と同様に、エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が用いられ、好ましくはエネルギー線硬化型樹脂が用いられる。エネルギー線硬化型樹脂は特に限定されないが、たとえば、エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂を用いることができる。エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂の硬化物を含む支持フィルムは応力緩和性に優れ、基材の応力緩和率を後述する範囲に調整しやすいことから好ましい。
エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂やウレタンポリマーと、エネルギー線重合性モノマーとを主成分とするエネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む配合物であり、必要に応じ分子内にチオール基を含有する化合物や、N−ニトロソアミン系重合禁止剤および/またはN−オキシル系重合禁止剤を含んでもよい。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有する化合物である。このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの両者を包含した意味で用いる。
【0036】
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえばアルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオールの何れであってもよいが、ポリエーテル型ポリオールを用いることで、より良好な効果が得られる。また、ポリオールであれば特に限定はされず、2官能のジオール、3官能のトリオール、さらには4官能以上のポリオールであってよいが、入手の容易性、汎用性、反応性などの観点から、ジオールを使用することが特に好ましい。これらの中でも、ポリエーテル型ジオールが好ましく使用される。
【0037】
ポリエーテル型ポリオールの代表例であるポリエーテル型ジオールは、一般にHO-(-R-O-)n-Hで示される。ここで、Rは2価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、特に好ましくは炭素数2または3のアルキレン基である。また、炭素数1〜6のアルキレン基の中でも好ましくはエチレン、プロピレン、またはテトラメチレン、特に好ましくはエチレンまたはプロピレンである。したがって、特に好ましいポリエーテル型ジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられ、さらに特に好ましいポリエーテル型ジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。nはRの繰り返し数であり、10〜250程度が好ましく、25〜205程度とすることがさらに好ましく、40〜185程度とすることが特に好ましい。nが10より小さいと、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタン結合濃度が高くなってしまい、支持フィルムの弾性が昂進し、本発明における基材のヤング率が過度に高くなることがある。nが250より大きいと、ポリエーテル鎖同士の相互作用が強くなることに起因して、ヤング率が後述する範囲の上限を超える懸念がある。
【0038】
ポリエーテル型ジオールと、多価イソシアネート化合物との反応により、エーテル結合部(-(-R-O-)n-)が導入された、末端イソシアネートウレタンプレポリマーが生成する。このようなポリエーテル型ジオールを用いることで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテル型ジオールから誘導される構成単位を含有する。
【0039】
ポリエステル型ポリオールはポリオール化合物と多塩基酸成分を重縮合させることにより得られる。ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレングリコールまたはプロピレングリコール付加物等の公知の各種グリコール類などが挙げられる。ポリエステル型ポリオールの製造に用いられる多塩基酸成分としては、一般にポリエステルの多塩基酸成分として知られている各種公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸、しゅう酸、フマル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸、芳香族多塩基酸、これらに対応する無水物やその誘導体およびダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。なお、塗膜に適度の硬度を付与するためには、芳香族多塩基酸を用いることが好ましい。当該芳香族多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸や、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多塩基酸およびこれらに対応する酸無水物やその誘導体が挙げられる。なお、当該エステル化反応には、必要に応じて各種公知の触媒を使用してもよい。触媒としては、例えば、ジブチルスズオキサイドやオクチル酸第一スズなどのスズ化合物やテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのアルコキシチタンが挙げられる。
【0040】
ポリカーボネート型ポリオールとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、前述したグリコール類とアルキレンカーボネートとの反応物などが挙げられる。
【0041】
ポリオール化合物の分子量としては、500〜10000程度が好ましく、800〜8000程度とすることがさらに好ましい。分子量が500より低いと、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタン結合濃度が高くなってしまい、本発明における基材のヤング率が高くなることがある。分子量が高すぎると、ポリエーテル鎖同士の相互作用が強くなることに起因して、ヤング率が後述する範囲の上限を超える懸念がある。
【0042】
なお、ポリオール化合物の分子量は、ポリオール官能基数×56.11×1000/水酸基価[mgKOH/g]であり、ポリオール化合物の水酸基価から算出される。
【0043】
多価イソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類などが挙げられる。これらの中では、イソホロンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートを用いることが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粘度を低く維持でき、取り扱い性が良好となるため好ましい。
【0044】
上記のようなポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが得られる。
【0045】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中にヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物などが挙げられる。
【0046】
末端イソシアネートウレタンプレポリマーおよびヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させるための条件としては、末端イソシアネートウレタンプレポリマーとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとを、必要に応じて溶剤、触媒の存在下、60〜100℃程度で、1〜4時間程度反応させればよい。
【0047】
得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内に光重合性の二重結合を有し、エネルギー線照射により重合硬化し、皮膜を形成する性質を有する。上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中にただ1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよいし、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよいが、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることで、後述のようにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量を調整することで、得られる基材のヤング率の制御が容易となるという利点がある。多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの有する(メタ)アクリロイル基の数は、2〜3個であることが好ましく、2個である(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである)ことがより好ましい。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう、以下同様。)は、特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである場合に、重量平均分子量を1500〜10000程度とすることが好ましく、4000〜9000とすることがより好ましい。重量平均分子量を1500以上とすることで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重合物における架橋密度の上昇を抑え、基材のヤング率を後述の範囲の上限を超えない程度に調整することが容易となる。また、10000以下とすることで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重合物における架橋密度の低下を抑え、基材のヤング率を後述の範囲の下限を下回らないように調整することが容易となる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粘度を低くすることができ、製膜用塗布液のハンドリング性が向上する。
【0049】
上記のようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂を使用する場合、支持フィルムの成膜が困難な場合が多いため、通常は、エネルギー線重合性モノマーで希釈して成膜した後、これを硬化して支持フィルムを得る。エネルギー線重合性モノマーは、分子内にエネルギー線重合性の二重結合を有し、特に本発明では、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の比較的嵩高い基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物が好ましく用いられる。
【0050】
上記エネルギー線重合性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは5〜900質量部、さらに好ましくは10〜500質量部、特に好ましくは30〜200質量部の割合で用いられる。エネルギー線重合性モノマーの配合量がこのような範囲にあることで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとエネルギー線重合性モノマーの共重合物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリロイル基に由来する部分の間隔が適度な程度となり、基材のヤング率を後述の範囲に制御することが容易となる。
【0051】
エネルギー線硬化型含ウレタン樹脂として、ウレタンポリマーとエネルギー線重合性モノマーとを主成分とするエネルギー線硬化型樹脂を用い、該エネルギー線硬化型樹脂を硬化して得られる支持フィルムを用いてもよい。
ウレタンポリマーはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと異なり、分子中に(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有しないウレタン系重合体であり、たとえば上述のポリオール化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得ることができる。
エネルギー線重合性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を希釈するものとして上述したのと同じものを用いることができるほか、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン等の含窒素モノマーを用いてもよい。
【0052】
上記エネルギー線重合性モノマーは、ウレタンポリマー100質量部に対して、好ましくは5〜900質量部、さらに好ましくは10〜500質量部、特に好ましくは30〜200質量部の割合で用いられる。
【0053】
支持フィルムを、上記のエネルギー線硬化型樹脂から形成する場合には、該樹脂に光重合開始剤を混入することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびに照射量を少なくすることができる。光重合開始剤としては、硬化性樹脂(A)に混入するものと同じものを混入することができる。
【0054】
光重合開始剤の使用量は、エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0055】
また、上述の硬化性樹脂(B)中に、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラー、顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
【0056】
支持フィルムの製膜方法としては、硬化性樹脂(B)を含む配合物を液状状態で工程フィルム上に薄膜状にキャストした後に、これを所定の手段によりフィルム化し、工程フィルムを除去することで支持フィルムを製造できる。このような製法によれば、製膜時に樹脂にかかる応力が少なく、経時あるいは加熱による寸法変化が起こりにくくなる。また、固形の不純物を取り除きやすいので、製膜したフィルムはフィッシュアイの形成が少なくなり、これにより、膜厚の均一性が向上し、厚み精度は通常2%以内になる。
【0057】
支持フィルムの厚さは、好ましくは40〜300μm、より好ましくは60〜250μm、特に好ましくは80〜200μmである。
【0058】
さらに、支持フィルムの帯電防止コート層が形成される面や粘着剤層が設けられる面には、これらの層との密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー処理等の他の層を設けてもよい。
【0059】
上記のような原材料および方法により製膜された支持フィルムは、応力緩和性に優れた性質を示す。たとえばかかる応力緩和性に優れた支持フィルムを採用すること等により、本発明に用いる基材は優れた応力緩和性を示す。具体的には、10%伸張時の1分経過後における基材の応力緩和率は60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは75〜90%である。基材の応力緩和率を上記範囲とすることで、該基材を用いた本発明の表面保護用シートは、被着体に貼付した際に発生する残留応力を速やかに解消し、半導体ウエハの裏面を研削する工程(半導体ウエハを加工する工程)において半導体ウエハを極薄に研削した場合であっても、半導体ウエハの反りを抑制できる。基材の応力緩和率が60%未満であると、半導体ウエハを加工する工程において発生する応力により、半導体ウエハに反りが発生する。
【0060】
また、基材のヤング率は100〜2000MPa、好ましくは125〜1500MPa、より好ましくは125〜1000MPa、特に好ましくは125〜700MPaである。表面保護用シートに帯電防止コート層が設けられていると、ウエハの裏面研削工程において帯電防止コート層にクラック(断裂)が発生することがある。かかるクラックの発生により、帯電防止コート層の面方向の導電性が切断され、剥離帯電を拡散する効果が低下することがある。本発明の表面保護用シートによれば、基材のヤング率を上記範囲とすることで、表面保護用シートの引っ張りに対する耐性が適度に付与されることで、帯電防止コート層のクラックが防止され、帯電防止性能の低下を抑制できる。基材のヤング率が100MPa未満であると、帯電防止コート層にクラックが発生し、帯電防止性能が低下する。また、基材のヤング率が2000MPaを超えると、基材の応力緩和率が低下し、所望の範囲の応力緩和率を有する基材を得ることが困難になり、ウエハの反りを防止する効果が低下する。
【0061】
〔粘着剤層〕
本発明の表面保護用シートにおいては、帯電防止コート層上または支持フィルム上に粘着剤層が形成される。
【0062】
粘着剤層は、ウエハに対し適度な再剥離性があればその種類は特定されず、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線の照射により硬化して再剥離性となるエネルギー線硬化型粘着剤や、加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。
【0063】
エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。このようなエネルギー線硬化型粘着剤の具体例は、たとえば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に記載されている。また、水膨潤型粘着剤としては、たとえば特公平5−77284号公報、特公平6−101455号公報等に記載のものが好ましく用いられる。
【0064】
粘着剤層の厚みは特に限定はされないが、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μmの範囲にある。
【0065】
なお、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、剥離シート用基材に剥離剤で処理したものを使用することができる。剥離シート用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙が挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤が挙げられる。
【0066】
基材表面に粘着剤層を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材表面に転写しても構わないし、基材表面に直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。
【0067】
[表面保護用シート]
本発明に係る表面保護用シートは、上記帯電防止コート層と支持フィルムとからなる基材の片面に粘着剤層が形成されてなる。粘着剤層は帯電防止コート層上または支持フィルム上に設けることができる。なお、図1においては、支持フィルム2上に粘着剤層3を形成している。
【0068】
表面保護用シートの製造方法は特に限定されないが、たとえば硬化性樹脂(B)を含む配合物を工程シート上に塗布し硬化して、支持フィルムを得る工程と、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を支持フィルム上に塗布し、塗膜層を形成する工程と、塗膜層を硬化し、基材を形成する工程とを有する製造方法により製造することができる。その後、基材の片面に粘着剤層を形成することで、本発明に係る表面保護用シートを得ることができる。上記の製造方法により得られる表面保護用シートの基材は、硬化性樹脂(B)を含む配合物を工程シート上に塗布し予備硬化して、予備硬化層を形成する工程と、無機導電性フィラーと硬化性樹脂(A)とを含む配合物を予備硬化層上に塗布し、塗膜層を形成する工程と、予備硬化層と塗膜層とを硬化する工程により形成されることが好ましい。つまり、予備硬化状態の支持フィルムの表面に、帯電防止コート層となる塗布層を形成し、支持フィルムと帯電防止コート層とを一括して完全硬化するため、帯電防止コート層と支持フィルムとの密着性に優れ、また帯電防止性能を向上させることができる。
なお、上記の表面保護用シートの製造方法においては、予備硬化の段階で硬化性樹脂(B)を完全に硬化させてもよい。このような製造方法であっても、帯電防止コート層と支持フィルムとの密着性を向上させることができる。
【0069】
また、表面保護用シートの製造方法としては、帯電防止コート層と支持フィルムとを別々に製膜し、積層して基材を得、基材上に粘着剤層を形成する方法も挙げられる。
【0070】
[半導体ウエハの加工方法]
本発明の表面保護用シートは、下記に示すように半導体ウエハの加工に用いることができる。
(ウエハ裏面研削方法)
ウエハの裏面研削においては、図1に示すように、表面に回路12が形成された半導体ウエハ11の回路面に表面保護用シート10を貼付して回路面を保護しつつウエハの裏面をグラインダー20により研削し、所定厚みのウエハとする。
【0071】
半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。半導体ウエハの回路形成工程において、所定の回路が形成される。図2に示すように、回路12はウエハ11の内周部13表面に格子状に形成され、外周端から数mmの範囲には回路が存在しない余剰部分14が残存する。このようなウエハの研削前の厚みは特に限定はされないが、通常は500〜1000μm程度である。
【0072】
裏面研削時には、図1に示すように、ウエハ表面の回路12を保護するために回路面に本発明の表面保護用シート10を貼付する。ウエハ表面への表面保護用シートの貼付は、テープマウンターなどを用いた汎用の手法により行われる。また、表面保護用シート10は、予め半導体ウエハ11と略同形状に切断されていてもよく、ウエハにシートを貼付後、余分なシートをウエハ外周に沿って切断、除去してもよい。
【0073】
ウエハの裏面研削は、表面保護用シート10が回路の全面に貼付された状態で、グラインダー20およびウエハ固定のための吸着テーブル(図示せず)等を用いた公知の手法により行われる。裏面研削工程の後、研削によって生成した破砕層を除去する処理が行われてもよい。裏面研削後の半導体ウエハの厚みは、特に限定はされないが、好ましくは10〜500μm、特に好ましくは25〜300μm程度である。
【0074】
裏面研削工程後、回路面から表面保護用シート10を剥離する。本発明の表面保護用シートによれば、ウエハの裏面研削時にはウエハを確実に保持し、また切削水の回路面への浸入を防止できる。また、裏面研削終了後、ウエハ表面からシート10を剥離する際に剥離帯電により発生する静電気を効果的に拡散できる。
【0075】
次いで、ウエハのダイシング、チップのマウンティング、樹脂封止などの工程を経て、半導体装置が得られる。
【0076】
(先ダイシング法)
さらにまた、本発明の表面保護用シートは、いわゆる先ダイシング法による高バンプ付ウエハのチップ化において好ましく用いられる。具体的には、バンプを有する回路が表面に形成された半導体ウエハ表面からそのウエハ厚さよりも浅い切込み深さの溝を形成し、該回路形成面に、表面保護用シートを貼付し、 その後、半導体ウエハの裏面研削をすることでウエハの厚みを薄くするとともに、最終的には個々のチップへの分割を行なう。
【0077】
その後、所定の方法でチップのピックアップを行う。また、チップのピックアップに先立ち、ウエハ形状に整列した状態のチップを、他の粘着シートに転写し、その後、チップのピックアップを行ってもよい。本発明の表面保護用シートによれば、表面保護用シートをチップから剥離する際に剥離帯電により発生する静電気を効果的に拡散できる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各種物性の評価は次のように行った。
【0079】
<基材のヤング率>
基材のヤング率は、万能引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTA−T−2M)を用いて、JIS K7161:1994に準拠して、23℃、湿度50%の環境下において引張速度200mm/分で測定した。
【0080】
<基材の応力緩和率>
実施例または比較例で使用した基材を幅15mm、長さ100mmに切り出して試験片を得た。この試験片を、オリエンテック社製テンシロンRTA−100を用いて室温(23℃)にて速度200mm/分で引っ張った。10%伸張した状態で引張を停止し、その時の応力Aと、伸張停止の1分後の応力Bとから、応力緩和率=(A−B)/A×100(%)の式に基づいて応力緩和率を算出した。
【0081】
<研削後のウエハの反り>
実施例または比較例で作成した表面保護用シートをシリコンウエハ(200mmφ、厚み750μm)に、テープマウンター(リンテック社製Adwill RAD−3500)を用いて貼付した。その後、ディスコ社製 DFG−840を用いてシリコンウエハの厚みが150μmとなるように研削した。研削後、表面保護用シートを除去せずに、ウエハをJIS B 7513;1992に準拠した平面度1級の精密検査用の定盤上に、表面保護用シートが上側となるように載置した。
【0082】
測定は定盤をゼロ地点とし、17ヵ所の測定ポイントを求めた。反り量は、最大値と最小値の差とした。
【0083】
<剥離帯電>
ウエハ回路面に、実施例または比較例の表面保護用シートを貼付し、ウエハと表面保護用シートとの積層体を得た。積層体について、積層体作成後から30日間、平均温度約23℃、平均湿度65%RHの環境下に放置した。放置後、まず、積層体を10×10cmの四角形に裁断した。次に、表面保護用シートをウエハから500mm/分で剥離した。このとき、表面保護用シートに帯電した帯電電位を50mmの距離から集電式電位測定機(春日電機社製 KSD−6110)により23℃、湿度65%RHの環境下で測定した(測定下限値0.1kV)。
【0084】
<帯電防止コート層のクラック>
研削後のウエハの反りを評価したのと同じ方法によりウエハを研削した後、表面保護用シートをウエハより剥離し、帯電防止コート層面をデジタル顕微鏡にて観察し、帯電防止コート層のクラックの有無を確認した。
【0085】
(実施例1)
分子量2000のポリエステル型ポリオールとイソホロンジイソシアネートから合成されたウレタンオリゴマーを骨格とし、その末端に2−ヒドロキシエチルアクリレートを付加して得た二官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量8000)50質量部、アクリル系モノマー(エネルギー線重合性モノマー)としてのイソボルニルアクリレート25質量部と2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート25質量部の混合物、および光重合開始剤としてのダロキュア1173(製品名、BASF社製)1質量部を含む配合物を剥離フィルム上に塗布展延し、紫外線により硬化させてなる厚さ100μmの支持フィルムを得た。
エポキシアクリレート系樹脂100質量部(重量平均分子量2000)に、平均粒子径0.1μmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)を230質量部、光重合開始剤(BASF社製イルガキュア184)を2質量部配合した配合物を得た。この配合物を支持フィルムの片面に塗布し、紫外線を照射することにより厚みが2μmの帯電防止コート層を設けた。一方、支持フィルムの帯電防止コート層を設けた面とは逆の面に紫外線硬化型粘着剤を20μmの厚さになるように塗布し、粘着剤層を設けて表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例2)
支持フィルムの製造においてウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を3000とした以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0087】
(実施例3)
支持フィルムの製造においてウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を6000とし、ATOの添加量を400質量部とし、帯電防止コート層の厚みを0.25μmとした以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例4)
ATOの添加量を150質量部とし、帯電防止コート層の厚みを4.8μmとした以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
帯電防止コート層を設けなかった以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
支持フィルムの製造においてウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を12000とした以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
支持フィルムの製造においてウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を900とした以外は実施例1と同様にして表面保護用シートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【符号の説明】
【0093】
1・・・帯電防止コート層
2・・・支持フィルム
3・・・粘着剤層
5・・・基材
10・・・表面保護用シート
図1
図2