(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559156
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】シフト軸操作用のカム伝動機構
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20190805BHJP
F16H 61/34 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
F16H61/28
F16H61/34
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-559204(P2016-559204)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公表番号】特表2017-508935(P2017-508935A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】DE2015200099
(87)【国際公開番号】WO2015144152
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】102014205659.4
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス エーアリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー クレッツ−ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム マリトゥルヌ
(72)【発明者】
【氏名】オイゲン コンボウスキ
【審査官】
木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−056994(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0037472(US,A1)
【文献】
特開2007−024150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
F16H 61/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム(3)用の、シフト軸(2)のセレクト運動(4)を実施するカム伝動機構(1)であって、
円筒状のアウタボディ(5)であって、内周面(6)と、該内周面(6)に配置され、少なくとも1つの最高点(10)及び少なくとも1つの最低点(11)を有する、周方向(9)で無端の周期性を有するカム軌道(8)と、を有するアウタボディ(5)と、
前記周方向(9)に対して垂直に延びる少なくとも1つの滑りガイド(13)を有するインナボディ(12)と、
前記カム軌道(8)及び前記滑りガイド(13)内に配置された少なくとも1つのガイド要素(14)と、
前記少なくとも1つのガイド要素(14)に作用結合されているか、又は前記少なくとも1つのガイド要素(14)を有する伝達部材(15)であって、前記周方向(9)に対して垂直な方向(21)での前記ガイド要素(14)の運動(16)を、前記内周面(6)に対して同心に配置可能なシフト軸(2)に伝達するのに好適な伝達部材(15)と、
を少なくとも備えることを特徴とするカム伝動機構(1)。
【請求項2】
前記ガイド要素(14)は、ローラ体(17)又は玉(18)であるか、又は前記伝達部材(15)に堅固に結合されている一種のピンである、請求項1に記載のカム伝動機構(1)。
【請求項3】
前記アウタボディ(5)は、少なくとも2つの部材(22,23)を有し、前記2つの部材(22,23)の第1の部材(22)に、前記最高点(10)を有する前記カム軌道(8)が配置され、第2の部材(23)に、前記最低点(11)を有する前記カム軌道が配置されている、請求項1又は2に記載のカム伝動機構(1)。
【請求項4】
前記アウタボディ(5)は、前記伝達部材(15)及び前記滑りガイド(13)とは独立して前記周方向(9)で可動である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のカム伝動機構(1)。
【請求項5】
前記伝達部材(15)と前記ガイド要素(14)との作用結合部(51)は、半径方向(19)で前記滑りガイド(13)と前記カム軌道(8)との間に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のカム伝動機構(1)。
【請求項6】
前記カム伝動機構(1)は、2つのガイド要素(14)を有し、これに伴い、2つの伝達部材(15)及び2つの滑りガイド(13)も有し、前記2つのガイド要素(14)は、前記内周面(6)の互いに対向する側において前記カム軌道(8)内に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載のカム伝動機構(1)。
【請求項7】
カム伝動機構アッセンブリ(20)であって、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のカム伝動機構(1)と、
シフト軸(2)と、
を備え、前記シフト軸(2)は、前記内周面(6)に対して同心に配置され、前記少なくとも1つの伝達部材(15)に、前記シフト軸(2)が該伝達部材(15)に対して周方向(9)で自由回転可能であるように結合されており、これにより、前記シフト軸(2)は、前記アウタボディ(5)及び前記伝達部材(15)に対して前記周方向(9)で自由回転可能であるとともに、前記周方向(9)に対して垂直な方向(21)で前記伝達部材(15)とともに昇降可動である、
ことを特徴とするカム伝動機構アッセンブリ(20)。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のカム伝動機構(1)を組み立てる方法であって、
i)内周面(6)と、該内周面(6)に配置され、少なくとも1つの最高点(10)及び少なくとも1つの最低点(11)を有する、周方向(9)で無端の周期性を有するカム軌道(8)と、を有する円筒状のアウタボディ(5)であって、該アウタボディ(5)は、2つの部材(22,23)を有し、該2つの部材(22,23)の第1の部材(22)に、前記最高点(10)を有する前記カム軌道(8)が配置され、第2の部材(23)に、前記最低点(11)を有する前記カム軌道が配置されたアウタボディ(5)を用意するステップと、
ii)少なくとも1つのガイド要素(14)を用意するステップと、
iii)少なくとも1つの伝達部材(15)を用意するステップと、
iv)前記第1の部材(22)又は前記第2の部材(23)を前記少なくとも1つの伝達部材(15)及び前記少なくとも1つのガイド要素(14)とともに互いに配置して、前記ガイド要素(14)が、前記カム軌道(8)内に配置され、かつ前記伝達部材(15)に作用結合されるようにするステップと、
v)前記第1の部材(22)と前記第2の部材(23)とを組み合わせて、前記カム軌道(8)を形成するステップと、
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載のカム伝動機構アッセンブリ(20)を組み立てる方法であって、
a.請求項8に従って組み立てられたカム伝動機構(1)を用意するステップと、
b.シフト軸(2)を用意するステップと、
c.前記少なくとも1つの伝達部材(15)を前記シフト軸(2)に結合するステップと、
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの滑りガイド(13)を前記シングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム(3)のハウジング(52)に結合し、次に前記カム伝動機構(1)又は前記カム伝動機構アッセンブリ(20)を前記滑りガイド(13)及び前記ハウジング(52)に作用結合する、請求項8に記載のカム伝動機構(1)を組み立てる方法又は請求項9に記載のカム伝動機構アッセンブリ(20)を組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト軸操作用のカム伝動機構、特にシングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム(1−Motor−Getriebeaktorik)用の、特にシフト軸のセレクト運動を実施するカム伝動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明における伝動機構アクチュエータシステム(伝動機構アクチュエータ)とは、特に、自動車内で下記装置の少なくとも1つを操作する(車両伝動機構、クラッチ及びブレーキを操作、セレクト及び/又はシフトする)ように働く伝動機構アクチュエータと解すべきである。
【0003】
公知のように、自動車伝動機構、例えばオートメーテッドマニュアルトランスミッション(automatisiertes Schaltgetriebe:ASG)、パラレルシフトトランスミッション(Parallelschaltgetriebe:PSG)、またはデュアルクラッチトランスミッション(Doppelkupplungsgetriebe:DKG)その他の類似の伝動機構のギヤ段を入れたり外したりすることは、伝動機構アクチュエータによって行うことができ、その際、伝動機構アクチュエータは、「外部の伝動機構切り換え部(aeussere Getriebeschaltung)」を形成している。
【0004】
このような伝動機構アクチュエータは、セレクト運動及びシフト運動を実施し、予め決められたギヤ段を入れたり外したりしなければならない。このために、一般に伝動機構アクチュエータは2つのモータを装備しており、一方のモータはセレクト運動を担い、他方のモータはシフト運動を担っている。
【0005】
既に独国特許出願公開第102004038955号明細書において、伝動機構内でセレクト運動とシフト運動とを実施するのに、自動車の伝動機構アクチュエータ内で1つの電動モータしか使用しないことが公知である。それゆえ、相応の伝動機構アクチュエータは、シングルモータ型伝動機構アクチュエータともいう。
【0006】
さらに、本件出願人の独国特許出願公開第102006054901号明細書において、電動モータの一方向の回転がシフト運動を引き起こし、電動モータの他方向の相応の運動がシフト軸のセレクト運動を引き起こすように、このシングルモータ型伝動機構アクチュエータを構成することが公知である。
【0007】
本件出願時には未公開の本件出願人の独国特許出願102013207871号では、セレクト運動とシフト運動とが1つのモータだけで実施されるシングルモータ型伝動機構アクチュエータが提案されている。そこで本発明は、特に、このシングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム用のカム伝動機構を提供することを目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことから出発して、本発明の根底にある課題は、従来技術に見られる欠点を少なくとも部分的に克服し、新しいシングルモータ型伝動機構アクチュエータにおいて使用可能なカム伝動機構を提案することである。上記課題は、独立請求項1の特徴によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項に係る発明である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シフト軸操作用のカム伝動機構、特にシングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム用の、特にシフト軸のセレクト運動を実施するカム伝動機構であって、
円筒状のアウタボディであって、内周面と、内周面に配置され、少なくとも1つの最高点及び少なくとも1つの最低点を有する、周方向で無端の周期性を有するカム軌道と、を有するアウタボディと、
周方向に対して垂直に延びる少なくとも1つの滑りガイドを有するインナボディと、
カム軌道内及び滑りガイド内に又は滑りガイドに沿って配置されている少なくとも1つのガイド要素と、
少なくとも1つのガイド要素に作用結合されているか、又は少なくとも1つのガイド要素を有する伝達部材であって、周方向に対して垂直な方向でのガイド要素の運動を、内周面に対して同心に配置可能なシフト軸に伝達するのに好適な伝達部材と、
を少なくとも備えるカム伝動機構に関する。
【0010】
特にガイド要素は、ローラ体又は玉であるか、又は伝達部材に堅固に(1つの部材から一体に/素材結合(stoffschluessig)を介して)結合されている一種のピンである。例えば円形の周面を有する円筒体も、ローラ体という。
【0011】
好ましい一形態では、アウタボディは、少なくとも2つの部材を有し、2つの部材の第1の部材に、最高点を有するカム軌道が配置され、第2の部材に、最低点を有するカム軌道が配置される。この配置は、構成部材の組み立てに関して特に有利である。特にアウタボディは、1つの部材から一体に構成されていてもよいし、複数の部材から構成されていてもよく、最低点と最高点とにカム軌道を分割することは、必須ではない。
【0012】
さらに、特にアウタボディは、伝達部材及び滑りガイドとは独立して周方向で可動である。特に滑りガイド及び伝達部材は、周方向では可動でなく、アウタボディだけが周方向で可動である。特に少なくとも滑りガイドは、ハウジング固定に(伝動機構アクチュエータのハウジングに)結合されている。特に伝達部材は、シフト軸とともにアウタボディに対して昇降のみ可動である。特にシフト軸は、伝達部材に対して周方向で回転可能である。
【0013】
特に、伝達部材とガイド要素との作用結合部は、半径方向で滑りガイドとカム軌道との間、つまり、特にインナボディとアウタボディとの間に配置されている。
【0014】
好ましくは、カム伝動機構は、2つのガイド要素を有し、これに伴い、2つの伝達部材及び2つの滑りガイドも有し、2つのガイド要素は、アウタボディの内周面の互いに対向する側においてカム軌道内に配置される。
【0015】
さらに、カム伝動機構アッセンブリであって、本発明に係るカム伝動機構と、シフト軸と、を備え、シフト軸は、内周面に対して同心に配置され、少なくとも1つの伝達部材に、シフト軸が伝達部材に対して周方向で自由回転可能であるように結合されており、これにより、シフト軸が、アウタボディ及び伝達部材に対して周方向で自由回転可能であるとともに、周方向に対して垂直な方向で伝達部材とともに昇降可動である、カム伝動機構アッセンブリを提案する。
【0016】
さらに、本発明に係るカム伝動機構を組み立てる方法を提案する。この方法は、
i)内周面と、内周面に配置され、少なくとも1つの最高点及び少なくとも1つの最低点を有する、周方向で無端の周期性を有するカム軌道と、を有する円筒状のアウタボディであって、アウタボディは、2つの部材を有し、2つの部材の第1の部材に、最高点を有するカム軌道が配置され、第2の部材に、最低点を有するカム軌道が配置されている、アウタボディを用意するステップと、
ii)少なくとも1つのガイド要素を用意するステップと、
iii)少なくとも1つの伝達部材を用意するステップと、
iv)第1の部材又は第2の部材を少なくとも1つの伝達要素及び少なくとも1つのガイド要素とともに互いに配置して、ガイド要素が、カム軌道内に配置され、かつ伝達要素に作用結合されるようにするステップと、
v)第1の部材と第2の部材とを組み合わせて、カム軌道を形成するステップと、
を少なくとも含む。
【0017】
特に、第1の部材と第2の部材とを堅固に互いに結合可能なロックが設けられている。
【0018】
さらに、本発明に係るカム伝動機構アッセンブリを組み立てる方法であって、
a.ステップv)後のカム伝動機構を用意するステップと、
b.シフト軸を用意するステップと、
c.少なくとも1つの伝達部材をシフト軸に結合するステップと、
を少なくとも含む方法を提案する。
【0019】
さらに、少なくとも1つの滑りガイドをシングルモータ型伝動機構アクチュエータシステムのハウジングに(ハウジング固定に)結合し、次にカム伝動機構又はカム伝動機構アッセンブリを滑りガイド及びハウジングに作用結合する、カム伝動機構又はカム伝動機構アッセンブリを組み立てる方法を提案する。
【0020】
特許請求の範囲に個々に記載した特徴は、技術的に意義のある任意の形で互いに組み合わせ可能であり、明細書に記載した事項及び図面に示した詳細によって補足可能であって、本発明のさらなる実施変化形態をなす。
【0021】
以下に、本発明及び技術的環境について図面を参照しながら詳しく説明する。図面は、特に好ましい実施の形態を複数示すが、本発明は、これらに限定されない。特に附言すると、図面、特に図示の縮尺は、概略にすぎない。同じ符号は、同じ対象を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】独国特許出願102013207871号に記載の従来技術によるシングルモータ型伝動機構アクチュエータを示す図である。
【
図2】90°回転させた位置で見た
図1の要部を示す図である。
【
図3】第1の位置にあるカム伝動機構の側面図である。
【
図4】第2の位置にあるカム伝動機構の側面図である。
【
図5】第1の位置にあるカム伝動機構の屈曲したカム軌道を示す図である。
【
図6】第2の位置にあるカム伝動機構の屈曲したカム軌道を示す図である。
【
図7】第3の位置にあるカム伝動機構の屈曲したカム軌道を示す図である。
【
図9】伝達部材とアウタボディの第2の部材とを、ガイド要素とともに示す斜視断面図である。
【
図10】伝達部材とアウタボディとを、ガイド要素とともに示す斜視断面図である。
【
図11】伝達部材とアウタボディとを、ガイド要素及びシフト軸とともに示す斜視断面図である。
【
図12】カム伝動機構アッセンブリを側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、独国特許出願102013207871号に記載の従来技術によるシングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム3を示している。モータ31によって、対応するモータスピンドル33を介して円筒歯車歯列32が駆動され、このとき、両回転方向34,35が可能である。この場合、円筒歯車歯列32は、内歯車内歯列36に係合する。内歯車内歯列36は、本実施の形態では、スピンドル24(ねじ山付きスピンドル)を直接駆動する。モータ31のモータスピンドル33の回転方向次第で、スピンドル24も、第1の回転方向34又は逆向きの第2の回転方向35で回転運動を実施する。
【0024】
(ねじ山付き)スピンドル24には、スピンドルナット25が配置されている。スピンドルナット25は、歯列46を介して2つの歯車27,28のその都度一方に係合しており、歯車27,28自体は、軸歯車29を介してシフト軸2に作用結合されている。スピンドルナット25の軸方向の調節は、2つの歯車27,28の一方の歯車の回転を引き起こす。この回転は、軸歯車29の回転と、これに応じた、シフト軸2に配置されているシフトレバー37の旋回とを引き起こす。シフトレバー37は、自動車伝動機構装置47と協働する。自動車伝動機構装置47は、複数のギヤ段を形成するために複数の変速段を有している。シフトレバー37は、旋回運動によりシフト運動48を実施する。
【0025】
スピンドルナット25は、スピンドル24に沿ってスピンドル24の第1の軸方向の位置範囲40に動かされると、スピンドルナット25の回転を阻止する係止部38に係合する。スピンドルナット25は、いずれの軸方向の位置範囲においても第3の歯車39に作用結合されている。スピンドルナット25が係止部38に係合している限り、スピンドルナット25及び第3の歯車39は、回転できない。回転は、スピンドルナット25と係止部38との間の係合がもはや成立しなくなるまで、スピンドルナット25が、この第1の軸方向の位置範囲40から離脱し、スピンドル24に沿って別の軸方向の範囲に進入して初めて可能となる。スピンドルナット25は、第3の歯車39を介してフリーホイール41に接続されている。フリーホイール41は、第2の回転方向35でのみ回転運動を許容するので、スピンドルナット25は、第1の回転方向34でのみ回転運動を実施可能である。フリーホイール41の回転軸線上には、セレクト歯車42も配置されており、スピンドルナット25またはモータスピンドル33の回転は、セレクト歯車42を介してセレクトポット43(本実施の形態では、カム伝動機構1)に伝達される。この目的のためにセレクトポット43は、セレクト歯車42と協働する冠歯列44を有している。セレクトポット43も、相応に一回転方向でのみ駆動されることができ、セレクトポット43の内周面6に配置されるカム軌道8により、この回転運動を、周方向9に対して垂直な方向21でのガイド要素14の昇降運動に変換する。ガイド要素14は、カム軌道8内に配置されており、シフト軸2に伝達部材15を介して結合されている。
【0026】
これにより、ガイド要素14の昇降運動は、シフトレバー37のセレクト運動4に相当する。このセレクト運動4は、モータ31が第1の回転方向34で動いている間、実施される。その際、スピンドルナット25も、ラック26として構成されるスピンドルナット25の歯列46が第1の歯車27又は第2の歯車28に作用結合されている限り、回転される。モータ31がその回転方向を変えると、セレクト運動4は、フリーホイール41に基づいて停止する。しかし、それでもスピンドル24は回転し続け、(回転方向で)固定されているスピンドルナット25は、スピンドル24に沿って第1の軸方向の位置範囲40に戻る。第1の軸方向の位置範囲40では、回転運動は、係止部38によっても阻止される。スピンドルナット25のこの軸方向の運動45のとき、スピンドルナット25は、歯列46を介して、シフト軸2に作用結合されている2つの歯車27,28のうちの選択された1つの歯車に係合している。これにより、スピンドルナット25の軸方向の運動45を介して、シフト軸2の回転を伴うシフト運動48が実施される。このシフト運動48のとき、シフト軸2は、伝達部材15、ガイド要素14及びセレクトポット43とは独立して回転する。これにより、シフト運動48中、ガイド要素14までもカム軌道8内で(昇降)運動してしまうことはない。
【0027】
シングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム3は、ハウジング52を有している。ハウジング52には、伝動機構アクチュエータシステム3の個々の構成要素、特にモータ31、滑りガイド13及び係止部38が堅固に結合されている。
【0028】
DE102013207871の記載は、シングルモータ型伝動機構アクチュエータについて当該刊行物に記載される内容すべてに関して、参照によって援用される。
【0029】
図2は、
図1の要部を、90°回転させた位置で示している。本図では、スピンドルナット25は、歯列46を介して第2の歯車28に係合しており、その結果、軸方向の運動45(
図1参照)は、第2の歯車28の回転、ひいては軸歯車29の回転、ひいてはシフト軸2のシフト運動48を引き起こす。シフト軸2に配置されるシフトレバー37は、シフト軸2の回転時、周方向9でのシフト運動48を実施する。シフト運動48によって自動車伝動機構装置47が操作され、これに応じて1つのギヤ段がシフトされる。
【0030】
図3は、カム伝動機構1、またはカム伝動機構1とシフト軸2とを含むカム伝動機構アッセンブリ20を、第1の位置において側面図で示している。
図1に示したセレクトポット43は、本発明において説明するカム伝動機構1であり、カム伝動機構1は、アウタボディ5を有している。アウタボディ5は、内周面6と、内周面6に配置されるカム軌道8とを有しており、カム軌道8は、少なくとも1つの最高点10と少なくとも1つの最低点11(本図には図示せず)とを有する、周方向9で無端の周期性を有している。さらに、内周面6内、ひいてはアウタボディ5内には、インナボディ12が配置されており、インナボディ12は、周方向9に対して垂直に延びる少なくとも1つの滑りガイド13を有している。滑りガイド13内には、ガイド要素14が配置されており、ガイド要素14は、同時にカム軌道8内と滑りガイド13内とにあって可動である。ガイド要素14、本実施の形態ではローラ体17(円筒)には、周方向9に対して垂直な方向21でのガイド要素14の運動16を、内周面6に対して同心に配置されるシフト軸2に伝達するように、伝達部材15が作用結合されている。看取可能であるのは、シフト軸2が伝達部材15に対して自由回転可能に配置されていることである。しかし、周方向9に対して垂直な方向21でのガイド要素14の運動16が、伝達部材15を介してシフト軸2に伝達され、その結果、シフト軸2は、セレクト運動4を実施する。伝達部材15は、少なくとも部分的に半径方向19で滑りガイド13とカム軌道8との間に配置されており、具体的には、ガイド要素14をガイドする部材またはガイド要素14に作用結合される。
【0031】
図4は、カム伝動機構1を第2の位置において側面図で示している。
図1についての説明を参照されたい。本図では、ガイド要素14が、カム軌道8の最低点11の領域に配置されている。相応して、シフト軸2は、周方向9に対して垂直な方向21で下方に動かされている。
【0032】
シフト軸2とカム伝動機構1とは、カム伝動機構アッセンブリ20を形成している。
【0033】
図5は、カム伝動機構1の屈曲したカム軌道8を第1の位置において示している。カム軌道8は、アウタボディ5の内周面6に配置されており、本実施の形態では、複数の最高点10と複数の最低点11とを有する、内周方向9で無端の周期性を有している。ガイド要素14は、同時にインナボディ12の滑りガイド13内とアウタボディ5のカム軌道8内とに配置されている。アウタボディ5が滑りガイド13に対して周方向9で動くと、ガイド要素14は、カム軌道8に沿って最低点11から最高点10に向かって、続いて次の最低点11に向かって動き、以後これを繰り返す。その際、ガイド要素14は、あらゆる時点で滑りガイド13内に配置されており、滑りガイド13内では、周方向9に対して垂直な方向21での昇降運動16が実施される。
【0034】
図6は、カム伝動機構1の屈曲したカム軌道8を第2の位置において示している。本図では、ガイド要素14は、カム軌道8の最低点11の領域に配置されている。
【0035】
図7は、カム伝動機構1の屈曲したカム軌道8を第3の位置において示しており、本図では、ガイド要素14は、最低点11(
図6参照)から出発して、引き続き、隣接する最高点10に向かってカム軌道8内を移動している。
【0036】
図8は、伝達部材15を斜視断面図で示している。伝達部材15は、特に有利な形態において、シフト軸2を取り巻くように延在しており、シフト軸2に対して同心に配置されている。伝達部材15は、ガイド要素14のための空所50を有している。
【0037】
図9は、伝達部材15と、アウタボディ5の第2の部材23とを、ガイド要素14(本実施の形態では、玉18)とともに、斜視断面図で示している。特に第2の部材23も、シフト軸2を取り巻くように延在しており、相応してシフト軸2に対して同心に配置されている。第2の部材23は、少なくとも1つの最低点11を有する軌道カム8の下側の部分を含んでいる。さらに、アウタボディ5の第1の部材22と結合するロック7が設けられている。
【0038】
特に有利な一形態において、伝達部材15は、本実施の形態では、ドーム18のためのストッパ49を有している。その結果、伝達部材15をアウタボディ5内に配置した後は、玉18はカム軌道8内に配置され、半径方向19で内方に脱落することが阻止される。
【0039】
図10は、伝達部材15とアウタボディ5とを、ガイド要素14(玉18)とともに斜視断面図で示している。アウタボディ5は、第1の部材22と第2の部材23とによって形成され、両部材22,23は、相俟ってカム軌道8を形成している。第1の部材22と第2の部材23とは、ロック7を介して互いに結合可能である。本実施の形態では、第1の部材22は、シングルモータ型伝動機構アクチュエータ3のセレクト歯車42と協働する冠歯列44を有している。
【0040】
図11は、伝達部材15とアウタボディ5とを、ガイド要素14(玉18)及びシフト軸2とともに斜視断面図で示している。シフト軸2は、伝達部材15及びアウタボディ5に対して同心に延在している。シフト軸2は、自由回転可能に伝達部材15に配置されている。しかし、伝達部材15とシフト軸2とは、周方向9に対して垂直な方向21での運動16をともに実施するように互いに結合されている。
【0041】
つまり、シフト軸2に対するアウタボディ5の(例えばセレクト歯車42によって引き起こされる)回転は、伝達部材15及びシフト軸2に対してカム軌道8を相対的に周方向9で移動させる。
【0042】
周方向9におけるこの運動の結果、ガイド要素14は、カム軌道8に沿ってかつ滑りガイド13内で昇降移動する(
図12も参照)。これにより、伝達部材15は、ガイド要素14によって、周方向9に対して垂直な方向21での運動16を強制される。伝達部材15は、この運動16をシフト軸2に伝達し、その結果、セレクト運動4が実施される。
【0043】
他方、シングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム3(
図1における説明参照)を介して、周方向9でのシフト運動48、つまり周方向9でのシフト軸2の回転を、このシフト運動48が伝達部材15に伝達されることなく実施することができる。つまり、その際、伝達部材15は、アウタボディ5のカム軌道8に沿って動かされず、その結果、周方向9に対して垂直な方向21での位置が不変に維持される。
【0044】
図12は、カム伝動機構アッセンブリ20を側方から見た断面図で示している。看取可能であるのは、本実施の形態では、
図11の図示と比較して、第1の部材22と第2の部材23とが異なる配置とされていることである。看取可能であるのは、カム軌道8がアウタボディ5内に配置されており、ガイド要素14を収容していることである。さらに、ガイド要素14は、インナボディ12の滑りガイド13内に配置されている。第1の部材22と第2の部材23とは、ロック7を介して互いに結合されている。本実施の形態では、ガイド要素14は玉18として構成されており、ストッパ49により、伝達部材15から半径方向19で内側に脱落しないようにされている。これにより、カム伝動機構1及びカム伝動機構アッセンブリ20の簡単な組み立てが可能である。
【0045】
つまり、看取可能であるように、特に有利には、アウタボディ5、ひいてはカム軌道8は、第1の部材22及び第2の部材23の両部材から構成されている。これにより、カム軌道8を、カム伝動機構1の組み立て中、開放状態に維持可能であり、その結果、ガイド要素14を、伝達部材15とともにアウタボディ5内に配置することができる。その後で初めて、他方の部材、つまり第1の部材22又は第2の部材23が、アウタボディ5の最初に使用された部材22,23にロック7を介して取り付けられ、その結果、カム軌道8が閉鎖され、これにより、ガイド要素14のカム軌道8からの脱落が阻止される。この目的のために、伝達部材15の、ガイド要素14のための空所50内に、ストッパ49が設けられており、これにより、ガイド要素14は、伝達部材15とカム軌道8との間に保持される。
【符号の説明】
【0046】
1 カム伝動機構
2 シフト軸
3 シングルモータ型伝動機構アクチュエータシステム
4 セレクト運動
5 アウタボディ
6 内周面
7 ロック
8 カム軌道
9 周方向
10 最高点
11 最低点
12 インナボディ
13 滑りガイド
14 ガイド要素
15 伝達部材
16 運動
17 ローラ体
18 玉
19 半径方向
20 カム伝動機構アッセンブリ
21 方向(周方向9に対して垂直)
22 第1の部材
23 第2の部材
24 スピンドル
25 スピンドルナット
26 ラック
27 第1の歯車
28 第2の歯車
29 軸歯車
30 スピンドル軸線
31 モータ
32 円筒歯車歯列
33 モータスピンドル
34 第1の回転方向
35 第2の回転方向
36 内歯車内歯列
37 シフトレバー
38 係止部
39 第3の歯車
40 第1の軸方向の位置範囲
41 フリーホイール
42 セレクト歯車
43 セレクトポット
44 冠歯列
45 軸方向の運動
46 歯列
47 自動車伝動機構装置
48 シフト運動
49 ストッパ
50 空所
51 作用結合部
52 ハウジング