特許第6559160号(P6559160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559160
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】冷却水案内用の挿入部材を有する駆動軸
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20190805BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20190805BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B28D1/14
   B23Q11/00 L
   B23Q11/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-571705(P2016-571705)
(86)(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公表番号】特表2017-524562(P2017-524562A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】EP2015064204
(87)【国際公開番号】WO2015197665
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】14173816.1
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ライヘンベルガー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エルハルト, ヨッヘン
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−145041(JP,A)
【文献】 独国実用新案第29803398(DE,U1)
【文献】 特開昭53−148091(JP,A)
【文献】 特開昭59−030645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23Q 1/00、11/10
B23B 51/00 − 51/14
B23B 35/00 − 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアドリル装置(1)を一例とする工作機械に用いられ、穴あけ工具(2)に連結可能な駆動軸(6)であって、前記駆動軸(6)の実質的に全長にわたり回転中心軸線(M)に沿って延設され、第1の端部(11a)と前記第1の端部(11a)の反対側の第2の端部(11b)とを含む空洞(11)を有し、前記空洞(11)は、前記第1の端部(11a)と前記第2の端部(11b)との間に位置する少なくとも1つの流入開口を備え、前記流入開口は前記空洞(11)内に水を供給することを可能とし、
前記空洞(11)内に挿入部材(14)が設けられ、前記水が、前記流入開口と前記第2の端部(11b)との間で流動する際に、前記空洞(11)の内壁面(6c)と直に接する、
ことを特徴とする駆動軸。
【請求項2】
前記挿入部材(14)は、前記水を、前記流入開口から前記第2の端部(11b)に向かう方向である第1の方向(A)に案内する第1面(15c)と、前記水を、前記第2の端部(11b)から前記第1の端部(11a)に向かう方向である第2の方向(B)に案内する第2面(15d)とを少なくとも有する案内部材(15)を備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動軸。
【請求項3】
前記案内部材(15)は、前記空洞(11)に沿って螺旋状に形成されることを特徴とする請求項に記載の駆動軸。
【請求項4】
前記案内部材(15)は、平板状に形成されることを特徴とする請求項に記載の駆動軸。
【請求項5】
前記案内部材(15)は、湾曲した板状に形成され、前記第1面(15c)が凸面形状を有し、前記第2面(15d)が凹面形状を有することを特徴とする請求項2に記載の駆動軸。
【請求項6】
前記案内部材(15)は、長手方向に沿って折り曲げられた屈曲部材(25)を有し、前記第1面(15c)が前記屈曲部材(25)の山部(25a)にあり、前記第2面(15d)が前記屈曲部材(25)の谷部(25b)にあることを特徴とする請求項2に記載の駆動軸。
【請求項7】
前記案内部材(15)は、管として形成され、前記管の外周面が前記第1面(15c)となり、前記管の内周面が前記第2面(15d)となることを特徴とする請求項2に記載の駆動軸。
【請求項8】
前記管の前記外周面に、径方向に立設された少なくとも1つのリブ(15e,15f,15g,15h)が、長手方向に沿って設けられることを特徴とする請求項7に記載の駆動軸。
【請求項9】
前記挿入部材(14)には、少なくとも1つの保持部材(18)が設けられ、前記保持部材(18)に対応して前記空洞(11)の壁に設けられた固定要素に前記保持部材(18)を係止可能とすることにより、前記挿入部材(14)と前記駆動軸(6)との間での相対的な移動を防止することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の駆動軸。
【請求項10】
前記保持部材(18)は、弾性部材によって構成されることを特徴とする請求項9に記載の駆動軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアドリル装置を一例とする工作機械に使用され、穴あけ工具、特にドリルビットに連結可能な駆動軸に関するものであり、駆動軸の実質的に全長にわたり回転中心軸線に沿って延設された空洞を有し、この空洞が、少なくとも1つの流入開口を備え、当該流入開口を介し、駆動軸に沿って穴あけ工具内に水を供給することが可能な駆動軸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ほとんど全てのコアドリル作業だけでなく、それ以外にも大型で強力な工作機械(例えば、のこぎり装置、アングルグラインダなど)を用いる非常に多くの作業において、給水システムは、極めて重要であり必須の設備である。特に、コアドリル装置を用い、コアドリル装置によって回転駆動されるドリルビットで岩石に穴を開ける場合、ドリルビットに水をかけることは絶対に必要である。かけられた水は、穴あけ作業の際に分離された岩石及び作業によって生じた削りくずを、掘削泥水としてドリルビット及び加工穴から洗い流す。このような掘削泥水の洗い流しを行わないと、ドリルビットは極めて短時間のうちに高温となり、穴の中で動かなくなって、更なる穴あけ作業ができなくなるおそれがある。
【0003】
従来技術として、コアドリル装置などの工作機械と共に用いられる給水システムは、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006035345号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コアドリル作業で使用するコアドリル装置は、多くの場合、非常に強力であるため、エネルギ消費量が大きい。そして、コアドリル作業を行っている際の熱の発生は、コアドリル作業に重大な問題を引き起こす。コアドリル装置内に蓄積された過剰な熱により、装置の性能が大幅に低下し、従ってコアドリル作業の効率が大きく低下するおそれがある。また、コアドリル装置全体、またはコアドリル装置の個々の構成部品に、永久的な損傷を生じるおそれもある。更に、コアドリル装置の使用者は、コアドリル装置内で生じた熱で過剰に熱せられた装置外面によって火傷を負うおそれもある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上述した問題を解消することにあり、具体的には、穴あけ工具、特にドリルビットと連結することが可能な、コアドリル装置などの工作機械の駆動軸として、工作機械の損傷や、熱に起因する使用者の傷害を効果的に防止することが可能な駆動軸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のこのような目的は、独立請求項1の主題によって達成される。また、本発明の有用な態様は、各従属請求項に見出すことができる。
【0008】
本発明は、コアドリル装置を一例とする工作機械に用いられ、穴あけ工具、特にドリルビットに連結可能な駆動軸であって、前記駆動軸の実質的に全長にわたり回転中心軸線に沿って延設された空洞を有し、前記空洞が、少なくとも1つの流入開口を備え、前記流入開口を介し、前記駆動軸に沿って前記穴あけ工具内に水を供給することが可能な駆動軸に関するものである。
【0009】
本発明による前記駆動軸は、前記空洞内に挿入部材が設けられ、前記挿入部材を介し、前記水が、第1の方向に案内された後に第2の方向に案内されて前記駆動軸を冷却し、前記水が、少なくとも前記第1の方向に流動する際に、前記空洞の内壁面と直に接することを特徴とする。このようにして、ドリルビットの洗い流しを本来の目的とする水が、効果的に駆動軸の冷却に用いられ、従ってコアドリル装置の冷却に用いられる。第1の方向及び第2の方向に水を案内することで、より一層長時間にわたって水が駆動軸の空洞内を流動することになり、水による吸熱量がより大きくなるので、より良好な冷却がなされる。
【0010】
本発明の有用な態様によれば、前記挿入部材は、前記水を前記第1の方向に案内する第1面と、前記水を前記第2の方向に案内する第2面とを少なくとも有する案内部材を備えていてもよい。案内部材の第1面及び第2面を用いることで、空洞の内壁面との接触面積が大きくなり、最大限の熱の除去が行われる。
【0011】
熱エネルギを吸収する最大限の体積流量を得るため、前記案内部材は、前記空洞に沿って螺旋状に形成されているのが有効である。
【0012】
本発明の更に有用な態様によれば、前記案内部材は、平板状に形成されていてもよい。これにより、低コストで製造が容易な案内部材を、たやすく得ることができる。
【0013】
第2の方向における最大限の体積流量を得るため、前記案内部材は、湾曲した板状に形成され、前記第1面が凸面形状を有し、前記第2面が凹面形状を有していてもよい。
【0014】
第1の方向における水の最大限の体積流量を得て、水による吸熱量を最大限とするために、前記案内部材は、長手方向に沿って折り曲げられた屈曲部材を有し、前記第1面が前記屈曲部材の山部にあり、前記第2面が前記屈曲部材の谷部にあるようにしてもよい。
【0015】
本発明の更に有用な態様によれば、前記案内部材は、管として形成され、前記管の外周面が前記第1面となり、前記管の内周面が前記第2面となるようにしてもよい。これにより、第1の方向における水の最大限の流量を得て、水による吸熱量を最大限とすることが可能となる。
【0016】
本発明の更に有用な態様によれば、前記管の前記外周面には、径方向に立設された少なくとも1つのリブが、長手方向に沿って設けられていてもよい。これにより、水が第1の方向に可能な限り直線的に案内されると共に、空洞内で案内部材を安定させることができる。
【0017】
空洞内で挿入部材が捩れたりずれたりしないようにするため、更なる態様によれば、前記挿入部材には、少なくとも1つの保持部材が設けられ、前記保持部材に対応して前記空洞の壁に設けられた固定要素に前記保持部材を係止可能とすることにより、前記挿入部材と前記駆動軸との間での相対的な移動を防止するようにしてもよい。
【0018】
更に、前記保持部材は、弾性部材によって構成されるようにしてもよい。これにより、挿入部材は、空洞内で要求される位置を変更することなく、空洞内での振動や衝撃を分散させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ドリルビットを有したコアドリル装置の各部を示す概要図である。
図2】コアドリル装置の駆動軸及びコアドリル装置のハウジングの構成部材に沿う長手方向の断面図である。
図3】本発明のコアドリル装置の駆動軸に沿う長手方向の断面を、挿入部材と共に示す断面図である。
図3a図3のA−A線で見た断面図である。
図4】第1実施形態に係る挿入部材の斜視図である。
図5】第1実施形態に係る挿入部材の側面図である。
図6】第1実施形態に係る挿入部材の正面図である。
図7】第2実施形態に係る挿入部材の斜視図である。
図8】第2実施形態に係る挿入部材の底面図である。
図9】第2実施形態に係る挿入部材の正面図である。
図10】第2実施形態に係る挿入部材の側面図である。
図11】第3実施形態に係る挿入部材の斜視図である。
図12】第3実施形態に係る挿入部材の底面図である。
図13】第3実施形態に係る挿入部材の側面図である。
図14図13のA−A線で見た断面図である。
図15】第4実施形態に係る挿入部材の斜視図である。
図16】第4実施形態に係る挿入部材の第1の側面図である。
図17】第4実施形態に係る挿入部材の第2の側面図である。
図18図17のA−A線で見た、第4実施形態に係る挿入部材の長手方向の断面図である。
図19図18のB−B線で見た、第4実施形態に係る挿入部材の断面図である。
図20】第5実施形態に係る挿入部材の斜視図である。
図21】第5実施形態に係る挿入部材の側面図である。
図22】第5実施形態に係る挿入部材の底面図である。
図23図22のA−A線で見た、第5実施形態に係る挿入部材の長手方向の断面図である。
図24図23のB−B線で見た、第5実施形態に係る挿入部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面に基づく以下の説明から、更なる効果が判明する。図面には、本発明の様々な実施形態が示されている。図面、明細書、及び特許請求の範囲は、多くの特徴を、組み合わせた状態で含んでいる。当業者は、それぞれの特徴を個別に適切に考察し、組み合わせることにより、有用な組み合わせを更に形成しうるものである。
【0021】
図1は、穴あけ工具2を有した工作機械1の概略図である。工作機械1は、コアドリル装置として示され、穴あけ工具2は、ドリルビットとして示されている。
【0022】
コアドリル装置1は、基本構成として、ハウジング3、電動モータ4、伝動装置5、駆動軸6、給水部7、及び工具保持部8を備えている。電動モータ4及び伝動装置5と、駆動軸6の一部とは、ハウジング3内に配置されている。
【0023】
電動モータ4はトルクを発生し、伝動装置5を介して当該トルクを駆動軸6に伝達し、駆動軸6は、回転方向Rに回転するようになっている。駆動軸6は、第1端部6aと第2端部6bとを有する。第1端部6aはハウジング3から突出している。第2端部6bは、伝動装置5に連結されており、電動モータ4が発生したトルクを受け取る。
【0024】
工具保持部8は、駆動軸6の第1端部6aに対して相対回転しないように固定される。駆動軸6は、工具保持部8を介し、ドリルビット2として構成された工具に対して相対回転しないように連結固定される。ドリルビット2は、第1端部2aと第2端部2bとを有する。
【0025】
給水部7は、冷却及び洗い流しを行うために、コアドリル装置1及び駆動軸6、更にはドリルビット2へと運ばれる水Wを、給水源(図示せず)から送給可能な注水管9を備えている。ドリルビット2の第1端部(前端部)2aには、吸引装置10が設けられ、この吸引装置10を用い、水により岩石及び削りくずが掘削泥水となってドリルビット2から除去される。
【0026】
図2は、コアドリル装置1のハウジング3の一部における、駆動軸6に沿った断面図である。駆動軸6は、止り穴として形成された円筒状の空洞11を備える。空洞11は第1端部11aと第2端部11bとを有する。第1端部11aは、止り穴である空洞11の開口端となっており、第2端部11bは閉塞端となっている。図2及び図3に示すように、駆動軸6は、外壁面から内壁面6cに貫通する第1貫通孔12及び第2貫通孔13を備える。第1貫通孔12及び第2貫通孔13により、駆動軸6の内部に水を導入できるようにすることで、止り穴として形成された空洞11内に水を到達させることができる。第1貫通孔12及び第2貫通孔13は、駆動軸6の内壁面6cにおいて、実質的に互いに向き合うような位置に設けられる。第1貫通孔12及び第2貫通孔13は、互いがなす中心角α(図3a参照)が、90°より大きくなるように配置される。中心角αの中心点Pは、駆動軸6の中心軸線M上にある。第1実施形態において、空洞11内には、挿入部材14が設けられる(図2図3、及び図4参照)。
【0027】
図2図5には、第1実施形態に係る挿入部材14が示されている。これら図2図5に示すように、第1実施形態の挿入部材14は、薄板状に形成された縦長の案内部材15を備えている。挿入部材14は、第1端部14aと第2端部14bとを有する。案内部材15は、第1端部15a、第2端部15b、第1面15c、及び第2面15dを有する。また、案内部材15は、基本的構成として、第1部分16と第2部分17とを備える。第1部分16は、平坦な部材として構成され、第2部分17は、螺旋状の部材として構成される。挿入部材14が、止り穴である空洞11内に配置されているとき、案内部材15の第2端部15bは、止り穴である空洞11の第2端部11bには達していない。従って、案内部材15の第2端部15bと、止り穴である空洞11の第2端部11bとの間には、ある程度の空隙Sが確保される(図2及び図3参照)。
【0028】
案内部材15の第1部分16には、保持部材18と仕切部材19とが設けられる。
【0029】
保持部材18は、片持ちアームの形式で構成される。保持部材18は、第1部分20と第2部分21とを備えている。第1部分20は、第1端部20aと第2端部20bとを有する。また、第2部分21は、第1端部21aと第2端部21bとを有する。第1部分20の第1端部20aは、案内部材15における第1部分16の第2面15d上に配置される。従って、第1部分20は、第2面15dから実質的に直立するように突出する。第1部分20の第2端部20bは、第2部分21の第1端部21aと直角に結合されている。従って、第2部分21は、第1部分16の第2面15dに実質的に平行に延設される。第2部分21の第2端部21bには、半球状に形成された係止部材22が取り付けられている。係止部材22の径は、第1貫通孔12及び第2貫通孔13の径とほぼ一致する。保持部材18は、挿入部材14を空洞11内に位置決めして回転しないように保持する機能を有する。このような目的のため、係止部材22が第2貫通孔13内に位置する。即ち、第2貫通孔13は、固定要素として機能し、この第2貫通孔13に保持部材18、即ち係止部材22を挿入できるようになっている。第2部分21に対し、このように第1部分20を配置することにより、第2部分21は、第1部分20に対して相対的に動くことが可能となる。これにより、保持部材18が弾性部材として機能するので、挿入部材14は空洞11内に弾性的に装着され、振動や衝撃が生じたとしても、挿入部材14は空洞11内の定められた位置から移動することがない。
【0030】
仕切部材19は、実質的に半円状の板として形成され、案内部材15における第1部分16の第1面15c上に配置される(図6参照)。仕切部材19は、第1面15cと空洞11の内壁面との間の隙間を塞ぐように構成されている。従って、仕切部材19により、第1面15c側にある水が、第1の方向Aへと流動可能となる一方で、第2の方向Bには流動できないという状態が確保される。
【0031】
第1面15cは、冷却及び洗い流しを行うために駆動軸6内に運ばれた水を、第1の方向Aに向けて案内するために用いられ、第2面15dは、この水を第2の方向Bに向けて案内するために用いられる。第1面15cを用いることにより、水は、止り穴として形成された空洞11の第2端部11bへと運ばれる(第1の方向A)。このとき、水は、第1面15cと空洞11の壁面、即ち内壁面6cとの間にある。
【0032】
水が案内部材15の第2端部15bに達すると、この水は、案内部材15の第2端部15bと空洞11の第2端部11bとの間の空隙Sを通って、第1面15cから第2面15dに流入する。水は、この空隙Sを介し、案内部材15に沿って方向転換し、第1面15cから第2面15dへと流動する(図5に曲線状の矢印で示す)。
【0033】
第2面15d上では、止り穴として形成された空洞11の第1端部11aに向け、水が運ばれる(第2の方向B)。この水は、駆動軸6の開口した第1端部6aを介し、中空の工具保持部8を通過して、穴あけ工具であるドリルビット2へと流動する。
【0034】
第1面15c及び第2面15dに沿って水が案内される際、この水は、コアドリル装置1、及び特に駆動軸6の熱エネルギを吸収することにより、コアドリル装置1及び駆動軸6を冷却する。
【0035】
図7図8図9、及び図10は、第2実施形態に係る挿入部材14を示している。
【0036】
第2実施形態の挿入部材14は、薄板状に形成された縦長の案内部材15を備える。挿入部材14は、第1端部14aと第2端部14bとを有する。案内部材15は、第1端部15a、第2端部15b、第1面15c、及び第2面15dを有する。第1面15cと第2面15dとは、互いに平行になっている。案内部材15は、平坦な形状で構成されている(図7及び図10参照)。挿入部材14が止り穴である空洞11内に配置されているとき、案内部材15の第2端部15bは、止り穴である空洞11の第2端部11bには達していない。従って、案内部材15の第2端部15bと、止り穴である空洞11の第2端部11bとの間には、ある程度の空隙Sが確保される。水は、この空隙Sを介し、案内部材15に沿って方向転換し、第1面15cから第2面15dへと流動する(図10に曲線状の矢印で示す)。
【0037】
第2実施形態の案内部材15には、保持部材18及び仕切部材19が設けられる。第2実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19は、第1実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19に相当する。
【0038】
上述したように、水は、駆動軸6の開口端した第1端部6aから流出して、中空の工具保持部8を通過し、ドリルビット2へと流動する前に、第1面15cに沿って第1の方向Aに運ばれ、次に第2面15dに沿って第2の方向Bに運ばれる。
【0039】
図11図12図13、及び図14は、第3実施形態に係る挿入部材14を示している。
【0040】
第3実施形態の挿入部材14は、薄板状に形成された縦長の案内部材15を備える。挿入部材14は、第1端部14aと第2端部14bとを有する。案内部材15は、第1端部15a、第2端部15b、第1面15c、及び第2面15dを有する。案内部材15は、湾曲した板状に形成されており、第1面15cが凸面形状を有し、第2面15dが凹面形状を有している(図11及び図14参照)。挿入部材14が止り穴である空洞11内に配置されているとき、案内部材15の第2端部15bは、止り穴である空洞11の第2端部11bには達していない。従って、案内部材15の第2端部15bと、止り穴である空洞11の第2端部11bとの間には、ある程度の空隙Sが確保される。水は、この空隙Sを介し、案内部材15に沿って方向転換し、第1面15cから第2面15dへと流動する(図13に曲線状の矢印で示す)。
【0041】
第3実施形態の案内部材15には、保持部材18及び仕切部材19が設けられる。第3実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19は、第1または第2実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19に相当する。
【0042】
上述したように、水は、駆動軸6の開口した第1端部6aから流出して、中空の工具保持部8を通過し、ドリルビット2へと流動する前に、第1面15cに沿って第1の方向Aに運ばれ、次に第2面15dに沿って第2の方向Bに運ばれる。
【0043】
図15図16図17図18、及び図19は、第4実施形態に係る挿入部材14を示している。第4実施形態の挿入部材14は、円筒状の管により構成された案内部材15を備える。挿入部材14は、第1端部14aと第2端部14bとを有する。案内部材15は、第1端部15a、第2端部15b、第1面15c、第2面15d、4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15h、及び中心貫通孔15jを有する。第1面15cは、管により構成された案内部材15の外周面によって形成される。第2面15dは、管により構成された案内部材15の内周面によって形成され、中心貫通孔15jを取り囲んでいる。水は、管により構成された案内部材15の外側で、第1面15cに沿って案内部材15の第1端部15aから第2端部15bへと流動する(第1の方向A)。挿入部材14が止り穴である空洞11内に配置されているとき、案内部材15の第2端部15bは、止り穴である空洞11の第2端部11bには達していない。従って、案内部材15の第2端部15bと、止り穴である空洞11の第2端部11bとの間には、ある程度の空隙Sが確保される。水は、この空隙Sを介し、案内部材15に沿って方向転換し、第1面15cから第2面15dへと流動する(図16に曲線状の矢印で示す)。この水は、管により構成された案内部材15の内側15iで、第2面15dに沿って案内部材15の第2端部15bから第1端部15aへと流動する(第2の方向B)。
【0044】
また、案内部材15には仕切部材19が設けられており、この仕切部材19は、第1環状部材23と第2環状部材24とを備える。これら第1環状部材23及び第2環状部材24は、挿入部材14の第1端部14aに、互いに前後に並ぶように配置される(図15参照)。
【0045】
4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hは、案内部材15の外側、即ち第1面15cに沿って、第2環状部材24から案内部材15の第2端部15bまで延設される。これら4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hは、周方向で互いに等間隔に配置されている。
【0046】
案内部材15の第2端部15b側では、これら4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hが、径方向に低くなっている。挿入部材14が駆動軸6の止り穴である空洞11内に配置されているとき、これら4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hは、案内部材15の第1面15cから、止り穴である空洞11の内壁面まで延在する。また、第1環状部材23及び第2環状部材24は、それぞれが、案内部材15の第1面15cから、止り穴である空洞11の内壁面まで達するように構成されている。仕切部材19を第1環状部材23及び第2環状部材24で構成することにより、第1面15c上においては、第2の方向Bではなく第1の方向Aにしか水が流動できない状態が確保される。4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hにより、特に安定した状態で、止り穴である空洞11の内部に挿入部材14を位置決めすることができるようになる。第4実施形態では、第2貫通孔13内に保持されるような保持部材が挿入部材14に設けられていないので、水は、第2貫通孔13からも、案内部材15の第1面15cや、駆動軸6の空洞11内に向けて流入可能となる。なお、図16では、同図の視点で見ると、第1貫通孔12が、4つの長手方向リブ15e,15f,15g,15hの1つによって隠れているため、この第1貫通孔12が破線の円で示されている。
【0047】
図20図21図22図23、及び図24は、第5実施形態に係る挿入部材14を示している。第5実施形態の挿入部材14は、第1端部14aと第2端部14bとを有する。また、挿入部材14は案内部材15を備える。案内部材15は、第1端部15a、第2端部15b、第1面15c、及び第2面15dを有する。更に、案内部材15は、山部25a、谷部25b、及び峰部26を有して長手方向に沿って折り曲げられた屈曲部材25を備える。案内部材15の第1面15cは、屈曲部材25の山部25aにあり、案内部材15の第2面15dは、屈曲部材25の谷部25bにある。上述したように、水は、第1貫通孔12を介して駆動軸6の空洞11内に流入し、第1面15cに沿って第1の方向Aに運ばれる。挿入部材14が止り穴である空洞11内に配置されているとき、案内部材15の第2端部15bは、止り穴である空洞11の第2端部11bには達していない。従って、案内部材15の第2端部15bと、止り穴である空洞11の第2端部11bとの間には、ある程度の空隙Sが確保される。水は、この空隙Sを介し、案内部材15に沿って方向転換し、第1面15cから第2面15dへと流動する(図21に曲線状の矢印で示す)。この水は、第2面15dに沿って第1の方向Bに運ばれ、最終的に、駆動軸6の開口した第1端部6aから流出して、中空の工具保持部8を通過し、ドリルビット2へと流動する。
【0048】
また、案内部材15には保持部材18及び仕切部材19が設けられている。第5実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19は、第1、第2、または第3実施形態における挿入部材14の保持部材18及び仕切部材19に相当する。なお、図21では、同図の視点で見ると、第1貫通孔12が屈曲部材25によって隠れているため、破線の円によって示されている。
【0049】
ドリルビット2の洗い流しを目的とする水が、第1貫通孔12または第2貫通孔13を介して駆動軸6の空洞11内に流入すると、駆動軸6が効果的に冷却され、従ってコアドリル装置1全体も効果的に冷却することができる。水を第1の方向A及び第2の方向Bに案内することで、より一層長時間にわたって水が駆動軸6の空洞11内を流動することになり、水による吸熱量がより大きくなるので、駆動軸6やコアドリル装置1全体の効果的な冷却が行われる。
図1
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図3
図3a
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