(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラズマ発生部により前記送電電極と前記受電電極との間の空間に発生したプラズマを、前記送電電極と前記受電電極との間の当該空間に保持するプラズマ保持部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
まず、本発明が適用される電力供給システムに共通の基本的概念について説明する。
本発明が適用される電力供給システムは、電力供給領域に配置された固定体から、電力被供給領域に配置された可動体に対して、電力を供給するための電力供給システムである。
電力供給領域や電力被供給領域の具体的構成は任意であり、例えば、一般住宅やオフィスビルの如き建屋の内部空間や、電車や飛行機の如き乗り物の内部空間、あるいは、屋外空間を含む。以下では、電力供給領域と電力被供給領域とを相互に区画する面を境界面と称する。例えば、電力被供給領域を建屋の居室とすると共に、電力供給領域を居室の床部とした場合、床部の上面(床面)が境界面になる。
【0022】
固定体は、当該固定体の内部に電源を備えたものと、当該固定体の外部の電源から供給された電力を可動体に供給するものを含む。
この固定体は、電力供給領域に配置されるものであるが、恒久的に移動不能に固定されるものに限定されず、不使用時には電力供給領域から取り外すことができたり、当該電力供給領域の内部の任意位置に移動可能なものを含む。
特に、固定体の全体が常時固定的であるものに限定されず、例えば、固定体の一部の構成要素の位置を必要に応じて調整することで、当該構成要素と可動体との相対的な位置関係を変更可能なものを含む。
【0023】
可動体は、電力被供給領域に固定的に配置して使用されるもの(静止体)と、電力被供給領域の内部において必要に応じて移動するもの(移動体)とを含む。
この可動体の機能や具体的構成は特記する点を除いて任意であるが、例えば、静止体としては、コンピュータや家電の如き機器を挙げることができ、移動体としては、ロボットや電気自動車を挙げることができる。
【0024】
このように構成される電力供給システムは、電界結合電力伝送技術を用いることにより固定体から可動体に対して電力を非接触で供給する。
電界結合電力伝送技術は、2枚の金属板(導電性の板)を対向させて、これら2枚の金属板を電極対としてコンデンサ(このようなコンデンサを以下「接合容量」と呼ぶ)を形成した状態で、高周波電流を流すことで非接触の電力電送を実現する技術である。
電界結合電力電送技術を適用した電力電送システムは、電源からの電力を送電する送電部と、送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部とを備えている。この場合、送電部の末端に設けた金属板等の電極(以下、「送電電極」と呼ぶ)と、受電部の先端に設けた金属板等の電極(以下、「受電電極」と呼ぶ)とを対向させることで、接合容量が形成される。
電界結合電力電送技術を適用した電力電送システムによれば、固定体の送電電極を電力被供給領域に露出させる必要がないため、電力供給システムの安全性や耐久性を高めることができる。また、送電電極を複数配置することで、可動体が移動した場合においても当該可動体に対して継続的に電力供給を行うことができ、可動体の移動の自由度を確保することができる。
【0025】
特に、本発明が適用される電力供給システムの特徴の一部は、可動体に並列共振回路を設け、この並列共振回路に並列共振を発生させる条件で固定体から電力供給を行う点にある。この構成により、結合コンデンサのインピーダンスを並列共振時の並列共振回路のインピーダンスと比較して極めて小さいものとすることができ、結合コンデンサの容量変動による電力供給効率への影響を抑制するという利点を得ることができる。
なお、共振回路は、並列共振回路には限定されず、直列共振回路でもよい。
【0026】
図1は、本発明の基礎となる電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路の基本回路を示す図である。
【0027】
図1に示すように、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路は、送電部1と受電部2とを備える。
【0028】
電界結合電力伝送技術は、上述したように、対向する2枚の金属板からなる電極対により接合容量Ccを形成した状態で、高周波電流を流すことで非接触の電力電送を実現する技術である。
即ち、電源Vfからの電力を送電する送電部1の末端に金属板の送電電極を取り付け、当該電力を受電して負荷Rに供給する受電部2の先端に金属板の受電電極を取り付けて、これら対となる送電電極及び受電電極を対向させて接合容量Ccを形成することで、電界結合電力電送技術が実現される。
【0029】
送電部1は、並列共振回路11と、トランス12とを備えるとともに、交流電源Vfに接続され、電力の供給を受けている。
並列共振回路11は、トランス12を介して交流電源Vfに接続されるものであり、コンデンサC1及びコイルL2を備えている。即ち、コンデンサC1とコイルL2とは、相互に並列に接続されることで、並列共振回路11が構成される。
さらに、コイルL2を二次側巻線として採用し、一次側巻線としてコイルL1を採用することで、トランス12が構成されている。
ここで、コイルL1の巻線数:コイルL2の巻線数=1:nとされているので、一次側の電圧、即ち交流電源Vfの電圧は、トランス12においてn倍に昇圧されて、並列共振回路11に印加される。
並列共振回路の両端には、2つの送電電極が接続される。
【0030】
受電部2は、並列共振回路14と、トランス15とを備える。
並列共振回路14は、受電部2の2つの受電電極が接続されるものであり、コンデンサC2及びコイルL3を備えている。即ち、コンデンサC2とコイルL3とは、相互に並列に接続されることで、並列共振回路14が構成される。
さらに、コイルL3を一次側巻線として採用し、二次側巻線としてコイルL4を採用することで、トランス15が構成されている。
ここで、コイルL3の巻線数:コイルL4の巻線数=n:1とされているので、一次側の電圧、即ち受電電極で受信されて並列共振回路14に印加された電圧は、トランス15において1/n倍に降圧されて、負荷Rに印加される。
【0031】
図2は、本発明の基礎となる電界結合電力伝送技術が適用される電力供給線路の一実施形態であって、
図1の電力伝送回路を適用した電力供給線路の模式図である。
【0032】
図2に示すように、送電部1は、所定方向に棒状に延在する2本の線路の夫々を送電電極21として機能させている。なお、これらの2本の線路である送電電極21をまとめて、「非接触電力伝送線路23」と呼ぶ。
つまり、移動体である受電部2は、2枚の受電電極22を非接触電力伝送線路23に対向させるように夫々配置させることで、当該非接触電力伝送電路23に沿って自在に移動できるように構成されている。この2枚の受電電極22の夫々と、非接触電力伝送線路23を構成する2本の送電電極21の夫々とにより、2つの接合容量Cc(
図1の左側と右側の夫々の接合容量Cc)が形成される。
つまり、受電部2は、非接触電力伝送線路23の上を自在に移動することができ、当該非接触電力伝送線路23の任意の位置で電力を受け取ることができる。
【0033】
ただし、
図2に示すように送電電極21が長い棒状の線路として構成される場合、線間容量Cuを無視することができない。そこで、線間容量Cuと、送電側インダクタLu(
図1のコイルL2に相当)との間で共振させる。これにより、電力の伝送効率を向上させることができる。
なお、送電側インダクタLuの他に、
図2に示すように、調整用の送電側インダクタLvを入れてもよい(この場合、送電側インダクタLuと調整用の送電側インダクタLvの並列回路が、
図1のコイルL2に相当)。さらにまた、調整用の送電側インダクタLvは、
図2の例では並列に接続されているが、直列に接続されてもよい。
【0034】
図3は、本発明が適用される電力供給システム、即ち、電界結合非接触電力供給が可能な電力供給システムの回路の各種構成例を示す図である。
即ち、本発明が適用される電力供給システムを実現する場合、
図3(a)乃至(t)のうち任意の回路構成を取ることができる。換言すると、電界結合非接触電力供給を行うためには、
図3(a)乃至(t)のうち何れかに示す回路を採用することができる。
【0035】
例えば、
図3(a)に示す電界結合電力電送技術を適用した電力伝送回路は、送電電極及び受電電極を対向させて接合容量Ccを形成することで、送電部1が電源Vfからの電力を受電部2に対し送電を行い、受電部2が当該電力を受電して負荷Rに供給する。
なお、
図1(a)乃至(t)に示す回路は、あくまでも例示であり、電界結合非接触電力供給を行うことが可能であれば任意の構成の回路を採用することができる。
【0036】
ここで、電界結合非接触電力供給を行う場合には、接合容量Ccの大きさによって利用用途が制限されていた。
しかしながら、接合容量Ccを形成している送電電極21と受電電極22との間の空間内にプラズマPを発生させることができるならば、接合容量Ccが極めて大きくなり、利用用途が飛躍的に拡大される。
【0037】
そこで、本実施形態の電力供給システムは、接合容量Ccを形成している送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPを発生させるプラズマ発生部41を備えることにより、接合容量Ccを増大させながら非接触電力供給を行う。
以下、接合容量Ccを形成している送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPを発生させる方法について説明する。
【0038】
まず、本実施形態において使用するプラズマ源は、大気圧プラズマを用いるものとする。これにより、真空チャンバー等の設備が不要になるため、特別なシールドを使用することなく、接合容量Ccを形成している送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPを発生させることができる。
なお、当該空間にプラズマPを発生させるに際しては、当該空間に導電性が付与される場合と誘電性が付与される場合とがある。本実施形態では、誘電性が付与される場合が採用される。
【0039】
また、接合容量Ccを形成している送電電極21と前記受電電極22との間の空間には誘電性が付与されることから、送電電極21及び受電電極22の構造としては、対向する電極(金属板)には絶縁層45がコーティングされている(
図5参照)。これにより、プラズマPが電極を通して流れて消失してしまうことを防止することができる。
即ち、プラズマPを構成する電子が、送電電極21又は前記受電電極22の材料(金属)を介して流れると、同じくプラズマPを構成する陽イオンは、電極から電子を受けて中性化するため、プラズマが消失してしまう。しかし、電極板に絶縁層45を設ければ、電子の移動を阻止できるため、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に発生したプラズマPの消失を防止することができる。
なお、プラズマ発生部41は、プラズマPを発生させるプラズマ発生源51を備える構成をとることとしてもよい。当該構成は、
図4を参照して説明する。
【0040】
図4は、プラズマ発生源51とプラズマ発生部41とによって構成されるプラズマ放射源31の断面構成の概略と、プラズマ発生源51の回路の概略とを模式的に例示した図である。
【0041】
図4(a)に示すプラズマ放射源31は、プラズマ発生部41と、プラズマ発生源51とが含まれるように構成される。
プラズマ発生部41は、石英ガラス管等の耐熱性と絶縁性とを有する導管によって構成される。これにより、プラズマPが電極を通して流れて消失してしまうことを防止することができる。
プラズマ発生源51は、金属製のニードル電極42と、筒状電極43と、高圧高周波数電源44とが含まれるように構成される。
【0042】
プラズマ発生部41の内部にニードル電極42が挿入された状態で、高圧高周波電源44により電圧が印加されると、プラズマ発生部41の内部でプラズマPが発生する。このとき、プラズマ発生部41の端部からガスGが導入されると、プラズマ発生部41のもう一方の端部からプラズマPが放射される。
これにより、送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマ発生部41が接続されれば、当該空間にプラズマPを発生させることができる。
【0043】
なお、プラズマ発生部41の端部から導入されるガスGとしては、Ar、Ne、He、Xe、Kr等のアルカリ土類金属のガス、窒素、二酸化炭素、空気、酸素等の分子ガス、ハロゲンガス等を採用することができる。なお、電界結合で使用する場合には、システムが簡易化できるという点で、空気が好適である。
【0044】
図4(b)に示すプラズマ放射源31は、
図4(a)の例と同様に、プラズマ発生部41と、プラズマ発生源51とが含まれるように構成されるが、プラズマ発生源51にニードル電極42は用いられない。
即ち、
図4(b)の例では、筒状電極43a及び43bが、プラズマ発生部41の側面に夫々配置される構成をとる。この状態で、高圧高周波電源44により電圧が印加されると、プラズマ発生部41の内部でプラズマPが発生する。このとき、プラズマ発生部41の端部からガスGが導入されると、プラズマ発生部41のもう一方の端部からプラズマPが放射される。
【0045】
図4(c)に示すプラズマ放射源31は、
図4に示される他の例と同様に、プラズマ発生部41と、プラズマ発生源51とが含まれるように構成されるが、プラズマ発生源51に加熱コイル45が用いられる点で、
図4に示される他の例と相違する。
プラズマ発生部41に加熱コイル45が巻かれた状態で、高圧高周波電源44により電圧が印加されると、プラズマ発生部41の内部でプラズマPが発生する。このとき、プラズマ発生部41の端部からガスGが導入されると、プラズマ発生部41のもう一方の端部からプラズマPが放射される。
【0046】
なお、プラズマ放射源31は、プラズマ発生部41から放出されるプラズマPを、マイクロ波M又は紫外線によって再加熱する再加熱部52をさらに備える構成をとることとしてもよい。当該構成は、
図5を参照して説明する。
【0047】
図5は、再加熱部52を有するプラズマ放射源31の断面構成と回路との概略を模式的に例示した図である。
図5に示すプラズマ放射源31は、
図4(a)に示す構成に、再加熱部52をさらに備える構成をとる。
【0048】
まず、プラズマ発生部41に金属製ニードル電極42が挿入された状態で、高圧高周波電源44により電圧が印加されると、プラズマ発生部41の内部でプラズマPが発生する。このとき、プラズマ発生部41の端部からガスGが導入されると、プラズマ発生部41のもう一方の端部からプラズマPが放射される。
【0049】
このとき、再加熱部52によってマイクロ波Mが重畳的に放射されると、プラズマPが再加熱される。これにより、プラズマPとしての性能を向上させることができる。
当該マイクロ波Mによって再加熱されたプラズマPは、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に発生する。なお、マイクロ波Mの代わりに、又は同時に、紫外線が放射されることとしてもよい。
【0050】
また、上述したように、送電電極21及び前記受電電極22は、絶縁層45でコーティングされているため、プラズマPが送電電極21又は前記受電電極22を通して流れて消失してしまうことを防止することができる。
なお、再加熱部52は、
図5においては
図4(a)の方式について適用されているが、
図4の他の方式((b)又は(c))においても適用されることができる。
【0051】
図6は、プラズマ放射源31が受電電極22に接続されたときの電極構造の断面構成の概略を模式的に例示した図である。
図6(a)に示す電極構造の例では、絶縁層45sでコーティングされた金属板からなる送電電極21と、絶縁層45rでコーティングされた金属板からなる受電電極22とが平行に配置され、プラズマ放射源31が絶縁層45を含む受電電極22を貫通させて配置されている。
これにより、プラズマ放射源31のプラズマ発生部41によって、送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPが発生する。
【0052】
なお、送電電極21及び受電電極22の形状は特に限定されず、円形、方形等あらゆる形状の電極を採用することができる。
また、プラズマ放射源31は、送電電極21と受電電極22との両方を貫通させて配置されることとしてもよいし、いずれか一方のみを貫通させて配置されることとしてもよい。
さらに、送電電極21及び受電電極22のいずれも貫通させることなく、送電電極21及び受電電極22の周囲から、送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPが発生するようにプラズマ放射源31を配置してもよい。
【0053】
また、
図6(b)に示す電極構造の例では、
図6(a)と比較して、送電電極21が大きく作成されているため、受電電極22側が移動可能になっている。
これにより、プラズマ放射源31が貫通されるように配置された受電電極22を移動させた状態であっても、プラズマ放射源31のプラズマ発生部41は、送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPを発生させることができる。
【0054】
図7は、プラズマ放射源31が受電電極22に接続されたときに、プラズマPが磁場によって送電電極21と受電電極22との間の空間に保持される構成をとった場合の電極構造の断面構成と回路との概略を模式的に例示した図である。
図7(a)に例示する電極構造では、絶縁層45sでコーティングされた金属板からなる送電電極21と、絶縁層45rでコーティングされた金属板からなる受電電極22とが平行に配置され、プラズマ放射源31は、絶縁層45を含む受電電極22を貫通させるように配置されている。ここまでは
図6に例示する電極構造と同様の構成であるが、
図7(a)の例では、さらに、受電電極22に永久磁石mが配置される。
【0055】
即ち、
図6に例示する電極構造では、送電電極21と受電電極22との間の空間にプラズマPが発生しても、送電電極21と前記受電電極22との間の空間の端部から外部にプラズマPが逃げてしまうことになる。
これを防止するために、本実施形態ではプラズマPを保持するためのプラズマ保持部が設けられている。プラズマ保持部は、絶縁層45sでコーティングされた金属板からなる送電電極21と、絶縁層45rでコーティングされた金属板からなる受電電極22と、永久磁石mとを含む。
【0056】
絶縁層45s及び45rは、プラズマPが送電電極21又は前記受電電極22を通して流れて消失してしまうことを防止する。また、永久磁石mは、受電電極22、又は送電電極21及び受電電極22の端部に配置され、永久磁石mによって形成された磁場によってプラズマPを保持する。
具体的には、
図7(a)に例示するように、送電電極21側の電極材に強磁性体の金属(例えば、鉄、Ni)を採用し、受電電極22側の電極材に非磁性の金属(例えば、アルミニウム)を採用する。さらに、受電電極22側の金属電極には、永久磁石mを配置される。これにより、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に同心円状の磁場が形成される。
【0057】
図7(b)は、
図7(a)の電極構造の平面図である。
図7に例示する電極構造では、
図7(a)に示すように、非磁性電極板(受電電極22)上に置かれた永久磁石mから強磁性電極板(送電電極21)を介して磁場が流れ、再度非磁性電極板(受電電極22)上に置かれた永久磁石mに磁場が帰る。
これにより、
図7(b)に示すように、プラズマ放射源31のプラズマ発生部41によって送電電極21と前記受電電極22との間の空間に発生したプラズマPは、磁場HSに達する。このとき、プラズマPを構成する電子eの進行方向は、磁場HSによって中心方向(プラズマ放射源31が配置された方向)に変化させられるため、当該電子eは、磁場HSから外側に出ることがない。
【0058】
同様に、プラズマPを構成する陽イオンcの進行方向は、磁場HSによって中心方向(プラズマ放射源31が配置された方向)に変化させられるため、当該陽イオンcは、磁場HSから外側に出ることがない。
なお、再結合により中和化された非帯電粒子Uは、磁場HS及びHNの影響を受けることなく磁場HS及びHNの外部に出る。
このようにして、送電電極21と前記受電電極22との間の空間の端部から外部にプラズマPが逃げてしまうことを防止し、平行電極間の電荷密度が保持される。
【0059】
なお、受電電極22側の金属電極に配置される永久磁石mとしては、ネオジウム磁石等の磁力が強力なものが好適である。強力な永久磁石mが受電電極22側の金属電極に配置されることにより、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に強力な直流磁場が形成されるため、プラズマPを構成する電子e及び陽イオンcの進行方向を、中心方向(プラズマ放射源31が配置された方向)により強力に変化させることができるからである。
【0060】
また、
図7に例示する電極構造では、送電電極21及び受電電極22の形状には円形が採用されているが、この形状は例示であって限定されない。方形等の任意の形状を採用することができる。
【0061】
図8は、
図7に例示する電極構造の具体例の変形例を示した図である。
図8(a)は、
図8(b)との比較に用いるため、
図7(a)と同一の電極構造を示している。
図8(b)は、
図8(a)に対する電極構造の変形例を示している。
即ち、
図8(a)に示す電極構造の例では、送電電極21の電極材には強磁性の金属が採用され、受電電極22側の電極材には非磁性体の金属が採用されているが、
図8(b)に示すように、送電電極21及び受電電極22のいずれの電極材についても非磁性体の金属を採用してもよい。ただし、この場合は、送電電極21側に永久磁石msを配置し、受電電極22側に永久磁石mrを配置する必要がある。
これにより、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に同心円状に磁場を形成させることができるため、送電電極21と前記受電電極22との間の空間の端部から外部にプラズマPが逃げてしまうことを防止し、平行電極間の電荷密度が保持される。
【0062】
図9は、
図6乃至8に例示する電極構造とは異なる電極構造の、断面構成と回路との概略を模式的に例示した図である。
即ち、
図9には、
図6乃至8に例示する電極構造とは異なり、受電電極22自体にプラズマPを発生させるための高圧高周波電源44を配置した場合の電極構造が例示されている。
【0063】
図9(a)の電極構造の例では、送電電極21と、プラズマPを発生させるための高圧高周波電源44を備える同心円状の2つの受電電極22a及び22bとが平行して配置されている。また、送電電極21と受電電極22a及び22bとの間には、絶縁層45sと絶縁層45rとが配置され、受電電極22bの中央部にはガスGの導入口が設けられている。なお、送電電極21は絶縁層45sによってコーティングされ、受電電極22a及び22bは絶縁層45rによってコーティングされている。
また、絶縁層45sと45rとの夫々には、永久磁石msとmrとの夫々が配置され、当該導入口と同じ位置の絶縁層45rに開けられた開口を通してガスGが導入される。
【0064】
同心円状の2つの受電電極22a及び22bに高圧高周波の電圧が印加されると、送電電極21と前記受電電極22との間の空間にプラズマPが発生する。
また、絶縁層45sと45rとの夫々の周囲には、永久磁石ms及びmrが配置されているため、
図7の例と同様に、磁場HSとHNの存在によって受電電極22bの中央部のイオン密度が高く保たれ、プラズマPが当該空間に保持される。
なお、送電電極21は、金属製の電極素材によって構成される。これにより、受電電極22a又は22bとの間で電界結合による電力伝送が行われる。
【0065】
図9(b)の電極構造の例では、強磁性の金属板からなる送電電極21と、プラズマPを発生させるための高圧高周波電源44を備える同心円状の2つの受電電極22a及び22bとが、平行して配置されている。また、接合容量Ccを形成する、送電電極21と、受電電極22a及び22bとの間には、絶縁層45sと絶縁層45rとが配置されている。
また、絶縁層45rには、永久磁石mが配置されているが、
図9(a)とは異なり、受電電極22bの中央部にはガスGの導入口が設けられていない。
このため、送電電極21と前記受電電極22との間の空間に存在するガスGをプラズマ化させる方法が採用されている。
【0066】
この場合、ガスGを導入させることなく同じガスGに電圧をかけてプラズマ化するため、ガスGの温度が上がる。このため、絶縁層45s及び45rには、耐熱材が用いられる必要がある。
また、
図9(b)の例では、送電電極21の電極材として強磁性の金属が用いられるため、永久磁石mは、受電電極22側にのみ配置されているが、送電電極21側の電極材に強磁性の金属を用いることなく、
図9(a)の例と同様に送電電極21側及び受電電極22側の両方に永久磁石ms及びmrを配置する方法を採用してもよい。
【0067】
なお、
図9(a)及び(b)の電極構造の例では、永久磁石mを付けたものであるが、これは例示に過ぎない。永久磁石mを配置しない電極構造を採用することもできる。当該電極構造は
図9(c)を参照して説明する。
【0068】
図9(c)は、電極構造に永久磁石mを採用しない方法の例として、送電電極21上にファブリック素材が配置された場合の電極構造を示している。
ファブリック素材としては、例えば、絨毯やカーペットの様に、表面が起毛で構成された素材が好適である。
【0069】
上述したように、本実施例におけるプラズマ源は、大気圧プラズマが採用されているため、ガスGの導入量を増やすことにより、ガスGの分子温度を殆ど上昇させることなく、電子温度のみが高い状態を作り出すことができる。これにより、分子温度の上昇に伴うファブリック素材の損傷を防ぐことができるとともに、ファブリック素材の隙間における電子密度が高められることから、送電電極21と受電電極22とによって形成される接合容量Ccを高めることができる。
【0070】
なお、ファブリック素材の絶縁性は特に限定されない。絶縁性であってもよいし、導電性であってもよい。
また、送電電極21を構成する金属板に、導電性のファブリック材を接合させ、当該導電性のファブリック素材の周囲を絶縁性の材料によってコーティングさせる構成をとってもよい。
【0071】
図10は、本発明が適用される電界結合電力伝送回路の構成例を示す図である。
図10(a)は、本発明が適用される電界結合電力伝送回路の断面構成の概略を模式的に示した図である。
図10(b)は、
図10(a)に例示する回路の平面図である。
【0072】
図10に例示する電界結合電力伝送回路の例では、プラズマ発生源51を備える受電電極22及びスルホース付電極61を並べるように1対配置し、これに1対の送電電極21を対向させるように配置することにより、1対の接合容量Ccが形成されている。
なお、送電電極21の夫々には絶縁層45sがコーティングされており、受電電極22及びスルホース付電極61の夫々には絶縁層45rがコーティングされており、スルホース付電極61はスルホース62によって中心部が貫通している。また、各送電電極21は、各送電電極21をコーティングする絶縁層45sを介して繋がっている。
【0073】
また、送電電極21には非接触電力供給用の電源Vfが接続されており、受電電極22には負荷Rが接続されている。
このような構成において、高圧高周波電源44により電圧が印加されると、送電電極21と受電電極22との間の空間にプラズマPが発生する。このとき、スルホース付電極61のスルホース62からガスG1が導入されると、プラズマPは送電電極21と受電電極22との間の空間に行き渡り、最終的には中和化されたガスG2が、送電電極21と受電電極22との間の空間の端部から放出される。
なお、
図10には図示していないが、負荷Rには、整流回路、平滑回路を設けることにより、直流が出力される構成としてもよい。
【0074】
また、各受電側電極の夫々は、中央に絶縁して配置したスルホース電極61と受電電極22との間に、プラズマPを発生させるための高圧高周波電源44を備える回路を有しているが、当該回路は、電力伝送用の回路とは独立した回路となっている。
なお、プラズマPを発生させるための電力には、接合容量Ccを介して受電された電力の一部が用いられる構成としてもよい。
【0075】
なお、
図10に示す例では、電界結合用の回路として、
図3(a)の回路が採用されているが、これは例示に過ぎない。上述したように、
図3(b)乃至(t)の夫々の回路のいずれを採用してもよい。
また、
図10に示す例では、プラズマPを発生させるための回路を受電部2に設ける構成をとっているが、送電部1に当該回路を設ける構成をとることとしてもよい。
【0076】
次に、送電電極21と受電電極22との間の空間(間隔)を保持する方法(以下「浮上方法」と呼ぶ)について説明する。
浮上方法としては、別途設けたタイヤとレールを用いることにより、大まかに間隔を保持し、受電側の電極をフリーにした時には、浮上方法として、例えば以下の浮上方法(a)乃至(f)のうち少なくとも1つを採用することができる。
【0077】
即ち、(a)センサーを用いて距離を測定し、アクチュエータによって電極の位置を保持する方法、(b)ガスGの導入口からの空気圧で上部電極を浮かせる方法、(c)静電的方法で間隔を保持する方法、(d)磁気的方法で間隔を保持する方法、(e)超音波浮上力を用いて間隔を保持する方法、(f)磁石を高速で回転させることにより磁気及び機械的方法で間隔を保持する方法のうち、少なくとも1つを採用することができる。
【0078】
さらに、タイヤやレール等の他の保持方法を用いることなく、送電電極21と受電電極22との間に直接力を加えることにより、浮上させる方法を採用することもできる。なお、この場合には、上述の浮上方法(b)乃至(f)のうち少なくとも1つを併用することができる。
【0079】
図11は、上述した浮上方法のうち、浮上方法(c)の静電的方法で間隔を保持する方法の例を説明する図である。
即ち、
図11には、浮上方法の一例として、静電吸着によって、上部に配置された送電レール(送電部1)に、移動体(受電部2)が、静電力dによってぶら下げられている方法が示されている。
具体的には、静電力dによってぶら下げられている移動体(受電部2)に取付けられた距離センサ54のデータが、送電レール(送電部1)に送られると、直流電圧が可変させられる。これにより、送電レール(送電部1)と移動体(受電部2)との間隔が最適の状態で保持される構成となっている。
【0080】
図11の例では、十分な伝送速度が保たれた通信環境の下であれば、通信ユニット53s及び53rを介することにより、送電レール(送電部1)と移動体(受電部2)との間隔を調整するのための応答性に問題は生じない。しかしながら、当該応答性を担保するために、送電レール(送電部1)側に、別途センサを配置することにより、直接直流電圧を変化させることとしてもよい。
また、静電吸着において用いられた電極を、そのまま電界結合における電力供給のための電極として用いることにより電力を供給することとしてもよい。
【0081】
さらに、静電吸着によって電力が対向している、送電電極21と受電電極22との表面を絶縁処理することにより、送電電極21と受電電極22との間の空間(静電力dが生じている空間)に、プラズマを発生させる構成をとってもよい。
【0082】
プラズマを発生させる方法としては、
図4又は
図5を参照して上述した方法を採用することとしてもよいが、例えば、紫外線レーザー(真空紫外)を電極間で多重反射(ファブリペロー共振)させることにより、プラズマを発生させる方法を採用してもよい。
なお、プラズマを発生させるために紫外線レーザーを用いる場合、絶縁層では紫外光が吸収されてしまう。このため、絶縁層でコーティングされている電極面とは別のガス導入口に並行平板アルミニウム面(鏡面研磨)を設け、当該並行平板アルミニウム面においてファブリペロー共振をさせることによりプラズマを発生させ、対向する電極面に当該プラズマを発生させる方法を採用することとしてもよい。換言すると、当該方法は、
図4のプラズマ発生方法を紫外線レーザーで行う方法であるといえる。
【0083】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0084】
例えば、
図5乃至10に示す例では、図面上部に配置されたの電極を受電電極とし、図面下部に配置された電極を送電電極とする構成となっているが、これは例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、図面上部に配置されたの電極を送電電極とし、図面下部に配置された電極を受電電極とする構成を採用することとしてもよい。
【0085】
以上をまとめると、本発明が適用される電力供給システムは、次のような構成を取れば足り、上述の各種実施形態を含め、各種各様の実施形態を取ることができる。
【0086】
即ち、本発明が適用される電力供給システムは、
電源からの電力を送電する送電電極(例えば
図2の送電電極21)と、
前記送電電極と非接触で対向配置されることにより接合容量を形成させ、当該接合容量を介して前記送電電極から送電された電力を受電する受電電極(例えば
図2の受電電極22)と、
前記接合容量を形成している前記送電電極と前記受電電極との間の空間(例えば
図6(a)における送電電極21と受電電極22との間の空間)にプラズマを発生させるプラズマ発生部(例えば
図4のプラズマ発生部41)と、
を備える。
【0087】
このように、送電電極と受電電極との間(電極間)にプラズマを発生させることにより、接合容量における静電容量を大きくすることが可能となり、多少のギャップ間隔があっても効率的に電力送電することができる。
【0088】
また、前記プラズマ発生部は、前記プラズマを発生させるための高圧高周波電源(例えば
図4の高圧高周波電源44)を備える。
【0089】
また、前記プラズマ発生部により前記送電電極と前記受電電極との間の空間に発生したプラズマを、前記送電電極と前記受電電極との間の空間に保持するプラズマ保持部(例えば
図5の絶縁層45や
図7の永久磁石m)をさらに備える。
【0090】
また、前記プラズマ保持部は、
前記プラズマ発生部によって前記空間に発生したプラズマを構成する電子の移動を防止することで、当該プラズマを、前記送電電極と前記受電電極との間の空間に保持する機能を有する誘電体(例えば
図5の絶縁層45)を含む。
【0091】
また、前記プラズマ保持部は、
前記送電電極と前記受電電極との間の空間に磁場を形成させ(例えば
図7の永久磁石m)、前記プラズマ発生部により前記空間に発生したプラズマを構成する陽イオン及び電子の進行方向を変化させることにより、当該プラズマを前記空間に保持する。
【0092】
これにより、電極間の電界をプラズマで誘導して中心部に閉じ込めることが出来るため、接合容量を増大させながら非接触電力供給を行うことができる。また、外部に対する電磁波放射も低減化させることできる。
【0093】
また、前記プラズマ発生部は、
前記プラズマ発生部によって発生されたプラズマを、マイクロ波又は紫外線によって再加熱する再加熱部(例えば
図5の再加熱部52)をさらに備える。
【0094】
これにより、プラズマとしての性能を向上させることができる。