(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縦横に広がるスクリーンの横方向端部に一端側が連結されるボルトと、このボルトの他端側に螺合されるナットとを備え、前記ナットを締め付けることによって前記スクリーンを横方向外側に引っ張るようにしたスクリーン引張装置において、
前記ナットの締付時に前記ボルトに対し前記ナットが相対移動する側に、前記ナットからの締付荷重を受けるとともに前記スクリーンの横方向外側に付勢力を発するナット受け部材を配設し、
前記ナット受け部材は、前記ナットからの締付荷重を受けることによって弾性変形した状態で前記スクリーンの横方向内側に傾きが付される板状の弾性体からなるものであることを特徴とするスクリーン引張装置。
縦横に広がるスクリーンの横方向端部に一端側が連結されるボルトと、このボルトの他端側に螺合されるナットとを備え、前記ナットを締め付けることによって前記スクリーンを横方向外側に引っ張るようにしたスクリーン引張装置において、
前記ナットの締付時に前記ボルトに対し前記ナットが相対移動する側に、前記ナットからの締付荷重を受けるとともに前記スクリーンの横方向外側に付勢力を発するナット受け部材を配設し、
前記ナット受け部材は、前記ナットからの締付荷重を受けていない弾性変形前の自然状態で前記スクリーンの横方向外側に傾きが付される板状の弾性体からなるものであることを特徴とするスクリーン引張装置。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のスクリーン引張装置として、
図13(a)に示されるようなものがある。(特許文献1参照)。この
図13(a)に示されるスクリーン引張装置101は、管状の横棒102に上部が保持されるスクリーン103を横方向に引っ張る装置であって、スクリーン103の上部の横方向端部に取り付けられた引っ張り片104にジョイント105を介して一端側が連結されるボルト106を備えている。ボルト106は、その他端側を横棒102の端面から突出させた状態でその大部分が横棒102の内部に組み込まれている。ボルト106の他端側にはナット107が螺合され、横棒102の端面とナット107との間には、ナット止め具108が介設され、ナット107を締め付けることにより、スクリーン103を横方向外側に引っ張ることができるようになっている。
【0003】
このスクリーン引張装置101は、ナット107が例えば1mm進むようなナット締付操作量によって例えば3kg程度の引張力をスクリーン103に正確に作用させることができ、これによってスクリーン103の平面性を得ることができる。
【0004】
しかしながら、従来のスクリーン引張装置101では、使用の初期段階においてナット締付操作量が1mm程度の僅かな距離で所定の引張力をスクリーン103に掛けてその平面性を得るようにしているため、例えば温度・湿度変化の長期の繰り返しに起因してスクリーン103が横方向に若干でも伸びた場合、所期の引張力が働かなくなり、スクリーン103の平面性が損なわれるという問題点がある。なお、長期の使用に伴うスクリーン103の伸びを予め想定し、ナット107が2mm進むようなナット締付操作量によって強い引張力を使用の初期段階で作用させたり、例えば4kgといった強い引張力を使用の初期段階で作用させたりすることも考えられるが、上記のような環境変化に起因するスクリーン103の伸びの補正にはさほど強い引張力が必要でないにもかかわらず、過剰な引張力を作用させることになるので、使用の初期段階でスクリーン103に皺が発生してしまうことになり、合理的ではない。
【0005】
一方、環境変化等に起因してスクリーンが伸びた場合でもそのスクリーンの平面性を得る手段として、
図13(b)に示されるように、コイルバネ110を用いてスクリーン本体111の四辺を外方に付勢した状態でスクリーン本体111をベース枠112に取り付けるようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。また、
図13(c)に示されるように、スクリーン120の両側にそれぞれローラ121を巻き付け、各ローラ121に、ローラ121がスクリーン120を引っ張る方向に付勢するバネ122を連結するようにしたものが提案されている(特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明によるスクリーン引張装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
<掛け軸型の吊り下げ式スクリーン装置の説明>
図1に示される掛け軸型の吊り下げ式スクリーン装置(以下、単に「スクリーン装置」と表記する。)1は、略矩形状のスクリーン本体2(本発明の「スクリーン」に相当する。)と、このスクリーン本体2の上端部に配される管状の上部横棒3と、スクリーン本体2の下端部に配される管状の下部横棒4とを備えて構成され、上部横棒3の内部にスクリーン本体2の上端部が差し込まれることによって該スクリーン本体2を保持し、この上部横棒3を壁や天井から吊り下げることでスクリーン本体2を展張させ、映画やプロジェクタの画像を投影するようにされている。ここで、上部横棒3と下部横棒4とは略同一構造であるので、以下の説明においては代表して上部横棒3(以下、単に「横棒3」と表記する。)の構成についてのみ説明する。
【0019】
図3に示されるように、横棒3は、アルミ押し出し材からなり全体として丸管状で、内部に長手方向に平行に延びる仕切り壁5,6が形成されるとともに、これら仕切り壁5,6の外周側にそれぞれ長手方向に延びる開口部(スリット)7,8が形成され、仕切り壁5,6と開口部7,8との間にそれぞれ上部凹所9および下部凹所10が画成されてなる形状とされている。ここで、下部凹所10が、横棒3の内側にスクリーン本体2およびスクリーン保持部材11を保持するスペースとなっている。
【0020】
図2に示されるように、スクリーン保持部材11は、横棒3の左端部側に配される左側端部保持部材12と、横棒3の右端部側に配される右側端部保持部材13と、これら左側端部保持部材12および右側端部保持部材13の中間部に配される中央部保持部材14の3分割構成とされている。これら左側端部保持部材12、右側端部保持部材13および中央部保持部材14の横棒3長手方向長さはそれぞれ、スクリーン本体2の幅(上端部長さ)の略1/3(すなわち、a:b:c=1:1:1)となるように設定されている。なお、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13の長さを中央部保持部材14の長さよりやや長めに設定しても良い(例えばスクリーン本体2の幅が2mの場合に、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13の長さを700〜1200mmとするなど)。
【0021】
中央部保持部材14は、その長手方向に複数個(図の例では5個)の高さ保持用保持部片14aに分割され、各高さ保持用保持部片14aがスクリーン本体2の上端部に取り付けられて、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13による張力の影響のない状態でスクリーン本体2の高さを保持するよう機能する。ここで、各高さ保持用保持部片14aの横棒3長手方向長さは、例えば200〜400mmとされる。
【0022】
これに対して、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13は、前記中央部保持部材14と独立してスクリーン本体2に取り付けられ、該スクリーン本体2を主として左側端部または右側端部に引っ張るよう機能するとともにスクリーン本体2の高さを保持する機能を有する引っ張り用保持部材12a,13aと、前記引っ張り用保持部材12a,13aの端部側に接着剤で固定される引っ張り片(引っ張り用金具)12b,13bを備えている。より詳細には、スクリーン本体2の上端部は、スクリーン本体2の幅全体に中央部の高さ保持用保持部片14aおよび左右の引っ張り用保持部材12a,13aが接合される。
【0023】
次に、スクリーン本体2を横方向外側に引っ張るスクリーン引張装置20Aについて、主に、
図4および
図5を用いて説明する。ここで、
図4には、第1の実施形態のスクリーン引張装置を示す部分斜視図が示され、
図5には、第1の実施形態のスクリーン引張装置の要部縦断面図で、スクリーンの使用初期段階でのスクリーン引張状態図(a)およびスクリーンの横方向伸びの吸収後のスクリーン引張状態図(b)がそれぞれ示されている。
【0024】
<スクリーン引張装置の説明>
図4および
図5に示されるように、スクリーン引張装置20Aは、引っ張り片12b,13bにピアノ線よりなるジョイント21を介して一端側が連結されるボルト22と、横棒3の端面に取り付けられる端板23とを備えている。
【0025】
ボルト22は、その他端側を横棒3の端面から突出させた状態でその大部分が横棒3の内部に組み込まれている。ボルト22の他端側にはナット24が螺合されている。
【0026】
端板23は、板状の弾性体、例えば、ばね鋼鋼材(SUP10、SK−5)やばね用ステンレス鋼(SUS304−CSP)等の板ばね素材からなり、横棒3の端面に当接・固定される舌形状の本体部材23aと、この本体部材23aに折曲部23bを介して一体的に連設されてその本体部材23aと重なり合うような舌形状のナット受け部材23cと、本体部材23aの両側で折曲部23bから仕切り壁5に沿って延設されてその仕切り壁5に引っ掛かるように係合する掛け止め部材23dとから構成されている。
【0027】
端板23においては、厚みが例えば0.3〜0.4mm程度の帯状の板ばね素材を断面逆Uの字状となるように二つ折りに折り曲げることにより、一側に本体部材23aが、他側にナット24と係合するナット受け部材23cが互いに所定隙間を存して対向するように形成され、ナット受け部材23cの基端側(上端側)が折曲部23bを介して本体部材23aと一体的に結合されて固定端とされる一方で先端側(下端側)がスクリーン本体2の横方向(横棒3の軸方向)に自由に動くことのできる自由端とされている。
【0028】
本体部材23aは、横棒3の端面に密着できるように鉛直方向に沿って平面状に形成され、ナット受け部材23cは、ナット24からの締付荷重を受けていない弾性変形前の自然状態で本体部材23aと平行であり、ナット24からの締付荷重を受けることによって弾性変形した状態でスクリーン本体2の横方向内側に傾きが付される(
図5(a)参照)。さらに、ナット受け部材23cにおいては、スクリーン本体2の横方向外側に向けて1mmの距離で2kg以下の付勢力を発するようなばね特性が得られるように、ボルト22の挿通孔と折曲部23bとの距離や、幅寸法等が適宜に設定され、より適切な形状に形成されている。こうして、極めて簡易な構成でナット受け部材23cがスクリーン本体2の横方向外側に付勢力を発するようにすることができる。
【0029】
本体部材23aおよびナット受け部材23cには、ボルト22の他端側が挿通され、ナット24の締付時にボルト22に対しナット24が相対移動する側にナット受け部材23cが配され、ナット24からの締付荷重をナット受け部材23cが受けるようにされている。こうして、ナット24を締め付けることにより、引張力がボルト22、ジョイント21および引っ張り片12b,13bを介して引っ張り用保持部材12a,13aに伝達され、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13によって保持されているスクリーン本体2に対し左右方向の引っ張り力が付与される。
【0030】
通常、スクリーン本体2に生じる皺はそのスクリーン本体2の僅かな伸縮により大きな皺になる特性を持つことから、スクリーン装置1において、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13は、これら端部保持部材12,13により付与される張力が1〜2mm程度の距離を精密に展張できる構造となっている。これに対して中央部保持部材14はスクリーン本体2の自重による下方への張力を支える構造となっている。こうして3分割された保持部材12,13,14を面としてスクリーン本体2の上端部に取り付けた状態で、両側から左側端部保持部材12および右側端部保持部材13により僅かに張力を付与してスクリーン本体2を展張させることで、スクリーン本体2と横棒3との間に伸縮率に差があっても、保持部材12,13,14全体で分散吸収して伸縮距離の差をスクリーン本体2の幅全体の略1/3の面(
図2(a)の領域18a,18b参照)の伸縮として解消することができ、皺の発生を防ぐことができる。この場合、スクリーン本体2の中央部は左右の張力が掛かっていないから、引っ張り用保持部材12a,13aの引っ張り基づく該引っ張り用保持部材12a,13aの傾きによる影響を受けることがなく、各高さ保持用保持部片14aはスクリーン本体2の自重に対する保持力としてのみ作用し、これによってスクリーン本体2の平滑性が保たれる。
【0031】
ここで、高さ保持用保持部片14aはスクリーン本体2の吊り下げ高さに応じてその高さが設定される。また、左右の引っ張り用保持部材12a,13aの高さは、高さ保持用保持部片14aより低い高さで、左右の引っ張り力に応じた高さに設定される。
【0032】
ところで、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力をスクリーン本体2に作用させる場合、ナット24からの締付荷重を受けていない弾性変形前の自然状態で本体部材23aと平行であるナット受け部材23cは、当該ナット受け部材23cの発する付勢力が1mmの距離で2kg以下であるので、ナット24からの締付荷重を受けて弾性変形され、折曲部23bを支点として自由端側が本体部材23aの下端部に近づくように曲げられ、遂には本体部材23aの下端部に押し付けられて、
図5(a)に示されるように、鉛直方向に沿って平面状である本体部材23aに対し、スクリーン本体2の横方向内側に傾きが付された状態となる。
【0033】
図5(a)に示されるスクリーン使用初期段階でのスクリーン引張状態においては、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力がスクリーン本体2の横方向外側に働いて、スクリーン本体2の平面性が保たれている。
【0034】
スクリーン本体2の使用が進み、温度・湿度変化の長期の繰り返しに起因してスクリーン本体2が横方向に若干伸びることがある。このとき、
図5(b)に示されるように、ナット受け部材23cからの付勢力がナット24を介してボルト22に伝達され、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に付勢され、スクリーン本体2に対し横方向外側に引張力を掛けたまま、そのスクリーン本体2の伸び分だけ、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に移動される。したがって、使用に伴いスクリーン本体2が横方向に若干伸びたとしてもその伸び分を吸収して引張力を作用させた状態を維持することができる。
【0035】
また、スクリーン引張装置20Aを具備するスクリーン装置1によれば、左右の引っ張り用保持部材12a,13aに張力を付与してスクリーン本体2を展張させた際、引っ張り用保持部材12a,13aはスクリーン本体2の自重による下がり力の影響を受けずに左右方向に引っ張られるので、引っ張り用保持部材12a,13aが変形することなく左右方向へスクリーン本体2を移動させることができる。この左右方向へのスクリーン本体2の展張は、高さ保持用保持部片14aが水平の状態を維持しつつ行われるので、平滑性を保った状態でスクリーン本体2の展張が可能となる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るスクリーン引張装置20Bについて主に、
図6および
図7を用いて説明する。ここで、
図6には、第2の実施形態のスクリーン引張装置を示す部分斜視図が示され、
図7には、第2の実施形態のスクリーン引張装置の要部縦断面図で、スクリーンの使用初期段階でのスクリーン引張状態図(a)およびスクリーンの横方向伸びの吸収後のスクリーン引張状態図(b)がそれぞれ示されている。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては第2の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする(後述する第3の実施形態および第4の実施形態についても同様)。
【0037】
横棒3の端面に取り付けられる端板25は、板状の弾性体、例えば、ばね鋼鋼材(SUP10、SK−5)やばね用ステンレス鋼(SUS304−CSP)等の板ばね素材からなり、横棒3の端面を略塞ぐことのできる全体として略円形状とされている。この端板25は、横棒3の端面に当接・固定される逆Uの字形状の本体部材25aと、この本体部材25aによって支持される舌形状のナット受け部材25bとから構成されている。
【0038】
端板25においては、厚みが例えば0.3〜0.4mm程度の円形状の板ばね素材に、一端(下端)側が開かれる一方で他端(上端)側が閉じられた鉛直方向に細長く延びる一対の切欠き26を、その板ばね素材の直径位置を挟むように所定間隔を存して設けることにより、一対の切欠き26の外側に本体部材25aが、一対の切欠き26の間にナット24と係合するナット受け部材25bがそれぞれ形成され、ナット受け部材25bの基端側(上端側)が折曲部27を介して本体部材25aと一体的に結合されて固定端とされる一方で先端側(下端側)がスクリーン本体2の横方向(横棒3の軸方向)に自由に動くことのできる自由端とされている。
【0039】
本体部材25aは、横棒3の端面に密着できるように鉛直方向に沿って平面状に形成されるに対し、ナット受け部材25bは、弾性変形前の自然状態でスクリーン本体2の横方向外側に傾きが付され(
図7(b)参照)、自然状態にあるナット受け部材25bの自由端と横棒3の端面との間に所定の隙間が生じるようにされている。さらに、ナット受け部材25bにおいては、スクリーン本体2の横方向外側に向けて1mmの距離で2kg以下の付勢力を発するようなばね特性が得られるように、ボルト22の挿通孔と折曲部27との距離や、幅寸法等が適宜に設定され、より適切な形状に形成されている。こうして、極めて簡易な構成でナット受け部材25bがスクリーン本体2の横方向外側に付勢力を発するようにすることができる。
【0040】
ナット受け部材25bには、ボルト22の他端側が挿通され、ナット24の締付時にボルト22に対しナット24が相対移動する側にナット受け部材25bが配され、ナット24からの締付荷重をナット受け部材25bが受けるようにされている。こうして、ナット24を締め付けることにより、引張力がボルト22、ジョイント21および引っ張り片12b,13bを介して引っ張り用保持部材12a,13aに伝達され、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13によって保持されているスクリーン本体2に対し左右方向の引っ張り力が付与される。
【0041】
ところで、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力をスクリーン本体2に作用させる場合、自然状態で傾きが付された状態にあるナット受け部材25bは、当該ナット受け部材25bの発する付勢力が1mmの距離で2kg以下であるので、ナット24からの締付荷重を受けて弾性変形され、折曲部27を支点として自由端側が横棒3の端面に近づくように曲げられ、遂には横棒3の端面に押し付けられて、
図7(a)に示されるように、本体部材25aと面一の状態となる。
【0042】
図7(a)に示されるスクリーン使用初期段階でのスクリーン引張状態においては、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力がスクリーン本体2の横方向外側に働いて、スクリーン本体2の平面性が保たれている。
【0043】
スクリーン本体2の使用が進み、温度・湿度変化の長期の繰り返しに起因してスクリーン本体2が横方向に若干伸びることがある。このとき、
図7(b)に示されるように、ナット受け部材25bからの付勢力がナット24を介してボルト22に伝達され、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に付勢され、スクリーン本体2に対し横方向外側に引張力を掛けたまま、そのスクリーン本体2の伸び分だけ、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に移動される。したがって、使用に伴いスクリーン本体2が横方向に若干伸びたとしてもその伸び分を吸収して引張力を作用させた状態を維持することができる。
【0044】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係るスクリーン引張装置20Cについて主に、
図8および
図9を用いて説明する。ここで、
図8には、第3の実施形態のスクリーン引張装置を示す部分斜視図が示され、
図9には、第3の実施形態のスクリーン引張装置の要部縦断面図で、スクリーンの使用初期段階でのスクリーン引張状態図(a)およびスクリーンの横方向伸びの吸収後のスクリーン引張状態図(b)がそれぞれ示されている。
【0045】
横棒3の端部には、仕切り壁5,6を跨ぐように断面門形状の弛み防止ばね支持板28が装着されている。この弛み防止ばね支持板28とナット24との間には、弛み防止ばね29が配設されている。弛み防止ばね29は、板状の弾性体、例えば、ばね鋼鋼材(SUP10、SK−5)やばね用ステンレス鋼(SUS304−CSP)等の板ばね素材からなり、厚みが例えば0.3〜0.4mm程度の帯状の板ばね素材に対し所要の折曲加工を施すことによって形成されている。弛み防止ばね29は、ナット24と係合するナット受け部材29aと、このナット受け部材29aの両側に一体的に連設される一対の板ばね部材29bとから構成されている。板ばね部材29bは、断面略への字状に屈曲形成されてなり、弾性変形前の自然状態において、板ばね部材29bの先端が弛み防止ばね支持板28に当接したときに、弛み防止ばね支持板28とナット受け部材29aとの間に所定の隙間(
図9(b)参照)が設けられるようにされている。
【0046】
弛み防止ばね29においては、スクリーン本体2の横方向外側に向けて1mmの距離で2kg以下の付勢力を発するようなばね特性が得られるように、ボルト22の挿通孔と板ばね部材29bの先端との距離や、幅寸法等が適宜に設定され、より適切な形状に形成されている。こうして、極めて簡易な構成でナット受け部材29aがスクリーン本体2の横方向外側に付勢力を発するようにすることができる。
【0047】
ナット受け部材29aには、ボルト22の他端側が挿通され、ナット24の締付時にボルト22に対しナット24が相対移動する側にナット受け部材29aが配され、ナット24からの締付荷重をナット受け部材29aが受けるようにされている。こうして、ナット24を締め付けることにより、引張力がボルト22、ジョイント21および引っ張り片12b,13bを介して引っ張り用保持部材12a,13aに伝達され、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13によって保持されているスクリーン本体2に対し左右方向の引っ張り力が付与される。
【0048】
ところで、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力をスクリーン本体2に作用させる場合、弛み防止ばねの発する付勢力が1mmの距離で2kg以下であるので、弛み防止ばね29における板ばね部材29bはナット24からの締付荷重を受けて弾性変形され、板ばね部材29bにおける折曲部分を基点として先端側が外向きに進むように板ばね部材29bが広がり、遂には
図9(a)に示されるようにナット受け部材29aが弛み防止ばね支持板28に押し付けられる。
【0049】
図9(a)に示されるスクリーン使用初期段階でのスクリーン引張状態においては、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力がスクリーン本体2の横方向外側に働いて、スクリーン本体2の平面性が保たれている。
【0050】
スクリーン本体2の使用が進み、温度・湿度変化の長期の繰り返しに起因してスクリーン本体2が横方向に若干伸びることがある。このとき、
図9(b)に示されるように、板状の弾性体の撓みに対する反発力を利用した板ばね部材29bによってスクリーン本体2の横方向外側に付勢されているナット受け部材29aからの付勢力がナット24を介してボルト22に伝達され、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に付勢され、スクリーン本体2に対し横方向外側に引張力を掛けたまま、そのスクリーン本体2の伸び分だけ、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に移動される。したがって、使用に伴いスクリーン本体2が横方向に若干伸びたとしてもその伸び分を吸収して引張力を作用させた状態を維持することができる。
【0051】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係るスクリーン引張装置20Dについて主に、
図10および
図11を用いて説明する。ここで、
図10には、第4の実施形態のスクリーン引張装置を示す部分斜視図が示され、
図11には、第4の実施形態のスクリーン引張装置の要部縦断面一部破断図で、スクリーンの使用初期段階でのスクリーン引張状態図(a)およびスクリーンの横方向伸びの吸収後のスクリーン引張状態図(b)がそれぞれ示されている。なお、第4の実施形態は、ロール巻き込み式スクリーン装置(
図12参照)において使用されて好適なロール巻き込み式の横棒にスクリーン引張装置が装備される態様例である。
【0052】
横棒3の端面の外周寄りの部位には、弛み防止ばね支持板30が取り付けられている。この弛み防止ばね支持板30とナット24との間には、弛み防止ばね31が配設されている。弛み防止ばね31は、例えば、ピアノ線(SWP−A)やステンレス線材(SUS304−WPB、SUS302)等のばね線材から作製される圧縮コイルばねからなり、ボルト22の他端側に外嵌されている。弛み防止ばね31とナット24との間には、断面門形状の弛み防止ばね用カバー材32が配設されている。弛み防止ばね用カバー材32は、SUS304や鉄板等の金属板素材に対し所定の折曲加工を施してなるものであり、ナット24と係合するナット受け部材32aと、このナット受け部材32aの両側に一体的に連設されて弛み防止ばね支持板30に向けて真っ直ぐに延びる一対の脚部材32bとから構成されている。
【0053】
弛み防止ばね31においては、スクリーン本体2の横方向外側に向けて1mmの距離で2kg以下の付勢力を発するようなばね特性が得られるように、圧縮コイルばねの線径や巻き数等が適宜に設定され、より適切なばね定数に設定されている。こうして、極めて簡易な構成でナット受け部材32aがスクリーン本体2の横方向外側に付勢力を発するようにすることができる。
【0054】
ナット受け部材32aには、ボルト22の他端側が挿通され、ナット24の締付時にボルト22に対しナット24が相対移動する側にナット受け部材32aが配され、ナット24からの締付荷重をナット受け部材32aが受けるようにされている。こうして、ナット24を締め付けることにより、引張力がボルト22、ジョイント21および引っ張り片12b,13bを介して引っ張り用保持部材12a,13aに伝達され、左側端部保持部材12および右側端部保持部材13によって保持されているスクリーン本体2に対し左右方向の引っ張り力が付与される。
【0055】
ところで、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力をスクリーン本体2に作用させる場合、弛み防止ばね31の発する付勢力が1mmの距離で2kg以下であるので、弛み防止ばね31は弛み防止ばね用カバー材32におけるナット受け部材32aを介してナット24からの締付荷重を受けて弾性変形され、弛み防止ばね用カバー材32における一対の脚部材32bが弛み防止ばね支持板30に近づくように弛み防止ばね用カバー材32が移動され、遂には
図11(a)に示されるように一対の脚部材32bが弛み防止ばね支持板30に当接される。
【0056】
図11(a)に示されるスクリーン使用初期段階でのスクリーン引張状態においては、ボルト22に対しナット24が1mm進むようなナット締付操作量によって3kg程度の引張力がスクリーン本体2の横方向外側に働いて、スクリーン本体2の平面性が保たれている。
【0057】
スクリーン本体2の使用が進み、温度・湿度変化の長期の繰り返しに起因してスクリーン本体2が横方向に若干伸びることがある。このとき、
図11(b)に示されるように、弛み防止ばね31によってスクリーン本体2の横方向外側に付勢されているナット受け部材32aからの付勢力がナット24を介してボルト22に伝達され、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に付勢され、スクリーン本体2に対し横方向外側に引張力を掛けたまま、そのスクリーン本体2の伸び分だけ、ナット24と共にボルト22がスクリーン本体2の横方向外側に移動される。したがって、使用に伴いスクリーン本体2が横方向に若干伸びたとしてもその伸び分を吸収して引張力を作用させた状態を維持することができる。
【0058】
以上、本発明のスクリーン引張装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0059】
上記の第1〜第3の実施形態では、
図1に示される掛け軸型の吊り下げ式スクリーン装置に適用した例について説明したが、本発明は、
図12(a)に示されるようなロール巻き込み式スクリーン装置1Aに対しても適用することができる。また、
図12(b)に示されるような床置き式ロール巻き込みスクリーン装置1Bに対しても適用することができる。ここで、ロール巻き込み式スクリーン装置1A(
図12(a))においては、電動やスプリングの力による回転式の巻胴33を備え、この巻胴33にスクリーン本体2の上端部が取り付けられ、ロール巻き込み装置34によってスクリーン本体2の上げ下げが行われるように構成されている。図中、符号35にて示されるのは下部横棒、符号36にて示されるのはハンドルである。一方、床置き式ロール巻き込みスクリーン装置1B(
図12(b))においては、電動やスプリングの力による回転式の巻胴37を下部に備え、スクリーン本体2の端部を引き上げた後、下部に立設された支柱38にその端部を取り付けて展張させるように構成されている。図中、符号39にて示されるのはロール巻き込み装置、符号40にて示されるのは上部横棒、符号41にて示されるのは支柱取付部である。
【0060】
上記の実施形態では、映写用、プロジェクタ用のスクリーンに本発明が適用された例を示したが、これに限定されるものではなく、窓辺の装飾用、間仕切り用等に用いられるスクリーン(「カーテン」とも称される。)に本発明を適用することも可能である。
【0061】
また、上記の実施形態では、スクリーン本体2の上端部において上部横棒3内に左側端部保持部材12、右側端部保持部材13および中央部保持部材14を配したものについて説明したが、これら保持部材12,13,14を下部横棒4内にも配することで、スクリーン本体2の展張作用をより確実に行うことができ、これに伴い、下部横棒4が側にもスクリーン引張装置20A〜20Dを配置するのが好ましい。
【0062】
また、上記の実施形態では、スクリーン保持部材11が、左側端部保持部材12、右側端部保持部材13および中央部保持部材14の3分割構成とされている例を示したが、これに限定されるものではなく、分割されずに一体構成の態様例や、2分割あるいは4分割以上の構成とする態様例もあり得る。