特許第6559176号(P6559176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559176
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】運動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-76500(P2017-76500)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-179077(P2018-179077A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】山越 竜一
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−184681(JP,A)
【文献】 特開2010−249229(JP,A)
【文献】 実開昭61−097626(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体転走部を有する軌道部材と、
前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、前記負荷転動体転走部に平行な戻し路、及び前記負荷転動体転走部と前記戻し路とに繋がる略U字状のターン路を有するキャリッジと、
前記転動体転走部と前記負荷転動体転走部との間の負荷路、前記戻し路、及び前記ターン路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置において、
前記転動体は、リテーナバンドによって保持されており、
前記リテーナバンドは、一つの帯状のバンド本体と、前記転動体間に介在し、前記バンド本体に一体に形成される複数のスペーサと、を備え、
前記キャリッジの相対移動方向に直交する断面視において、前記負荷路における前記リテーナバンドと前記戻し路における前記リテーナバンドとがハの字状に開き、
前記負荷路と前記戻し路とが重なる方向から見た側面視において、前記ターン路の少なくとも一部と前記リテーナバンドの一部が、前記リテーナバンドの前記ハの字状の開いた方へ湾曲する運動案内装置。
【請求項2】
前記リテーナバンドに2列以上の前記転動体が保持されることを特徴とする請求項に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記運動案内装置を水平面に配置した状態の前記キャリッジの正面視において、前記キャリッジの左右に上下2つの前記ターン路が設けられ、上側の前記ターン路は上に凸状に湾曲し、下側の前記ターン路は下に凸状に湾曲することを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記上側の前記ターン路と前記下側の前記ターン路とは、幅方向の中央部が最も離れており、
前記上側の前記ターン路と前記下側の前記ターン路との間に、前記ターン路の外周側が形成されるエンドプレートの取付け用ボルトが配置されることを特徴とする請求項に記載の運動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル等が運動するのを案内する運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の運動案内装置は、ベース等に取り付けられる軌道部材と、軌道部材にボール、ローラ等の転動体を介して相対移動可能に組み付けられ、テーブル等に取り付けられるキャリッジと、を備える。軌道部材には、転動体が転走する転動体転走部が形成される。キャリッジには、転動体転走部に対向する負荷転動体転走部が形成される。キャリッジが軌道部材に対して相対移動すると、転動体が転動体転走部と負荷転動体転走部との間の負荷路を転がり運動する。
【0003】
キャリッジには、転動体を循環させるための循環路が設けられる。循環路は、負荷路と、負荷路に平行な戻し路と、負荷転動体転走部と戻し路とに繋がる略U字状のターン路と、から構成され、トラック状である。キャリッジが軌道部材に対して相対移動すると、転動体が循環路を循環する。
【0004】
従来の運動案内装置において、循環路は一平面内に配置される。そして、キャリッジの正面視(キャリッジの相対移動方向視)において、循環路は転動体の接触角の方向に配置される(特許文献1参照)。転動体と転動体転走部との接触幅、及び転動体と負荷転動体転走部との接触幅を確保するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−343556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の運動案内装置にあっては、循環路のレイアウトに上記の制約があり、キャリッジが大型化するという課題がある。キャリッジをコンパクトにするために、キャリッジの正面視において、転動体の接触角の方向から循環路をずらすと、転動体の接触幅が犠牲になり、運動案内装置の定格荷重及び許容荷重が小さくなるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、定格荷重及び許容荷重が小さくなるのを防止でき、キャリッジをコンパクトにすることができる運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、転動体転走部を有する軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、前記負荷転動体転走部に平行な戻し路、及び前記負荷転動体転走部と前記戻し路とに繋がる略U字状のターン路を有するキャリッジと、前記転動体転走部と前記負荷転動体転走部との間の負荷路、前記戻し路、及び前記ターン路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置において、前記転動体は、リテーナバンドによって保持されており、前記リテーナバンドは、一つの帯状のバンド本体と、前記転動体間に介在し、前記バンド本体に一体に形成される複数のスペーサと、を備え、前記キャリッジの相対移動方向に直交する断面視において、前記負荷路における前記リテーナバンドと前記戻し路における前記リテーナバンドとがハの字状に開き、前記負荷路と前記戻し路とが重なる方向から見た側面視において、前記ターン路の少なくとも一部と前記リテーナバンドの一部が、前記リテーナバンドの前記ハの字状の開いた方へ湾曲する運動案内装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転動体の接触幅を犠牲にすることなく、循環路の配置設計の自由度を増すことができる。このため、定格荷重及び許容荷重が小さくなるのを防止でき、キャリッジをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態の運動案内装置の斜視図(一部断面を含む)である。
図2】エンドプレートを取り外した状態の本実施形態の運動案内装置の正面図である。
図3】キャリッジの相対移動方向に直交する本実施形態の運動案内装置の断面図である。
図4】循環路の斜視図である。
図5】循環路の3面図(図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図)である。
図6】リテーナバンドを示す図(図6(a)は平面図、図6(b)は側面図)である。
図7】ハの字状に開いたリテーナバンドの斜視図である。
図8】ハの字状に開いたリテーナバンドの3面図(図8(a)は平面図、図8(b)は正面図、図8(c)は側面図)である。
図9】エンドプレートを取り外した状態の本発明の第2の実施形態の運動案内装置の正面図である。
図10】循環路の3面図(図10(a)は平面図、図10(b)は正面図、図10(c)は側面図)である。
図11】ハの字状に開いたリテーナバンドの3面図(図11(a)は平面図、図11(b)は正面図、図11(c)は側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の運動案内装置を説明する。ただし、本発明の運動案内装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態の運動案内装置を示す。図1は、運動案内装置の斜視図(一部断面図を含む)である。図2は、エンドプレート5を取り外した状態の運動案内装置の正面図(キャリッジ2の相対移動方向視)である。図3は、キャリッジ2の相対移動方向に直交する運動案内装置の断面図である。
【0013】
なお、以下の説明において、説明の便宜上、運動案内装置を水平面に配置し、運動案内装置を正面視(キャリッジ2の相対移動方向視)したときの方向、すなわち図1図2の上下、左右、前後を用いて運動案内装置の構成を説明する。もちろん、運動案内装置の配置はこれに限られるものではない。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態の運動案内装置はリニアガイドである。符号1は軌道部材としての案内レール、符号2はキャリッジ、符号6は転動体としてのボールである。キャリッジ2の左右には、上下2つのトラック状の循環路7が設けられる。循環路7は合計4つである。第1の実施形態では、低ウェービングと高剛性を実現するために、各循環路7に2つのボール列6a,6bを設け、合計8つのボール列6a,6bを設ける。
【0015】
案内レール1は、前後方向に長い。案内レール1の上部の左右には、左右方向に突出する突条11が形成される。案内レール1には、突条11を挟むようにその左右に上下2つの転動体転走部としてのボール転走部12が形成される。各ボール転走部12には2条のボール転走溝1aが形成され、案内レール1には合計8条のボール転走溝1aが形成される。ボール転走溝1aは、断面が単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝である。案内レール1には、案内レール1をベース等に取り付けるための通し孔1bが開けられる。
【0016】
キャリッジ2は、キャリッジ本体3と、キャリッジ本体3の相対移動方向の両端面に取り付けられるインナープレート4と、キャリッジ本体3の両端面にインナープレート4を覆うように取り付けられるエンドプレート5と、を備える。
【0017】
図3に示すように、キャリッジ本体3は、正面視において逆U字状であり(図3は右半分のみ示すが、キャリッジ本体3は左右対称である)、案内レール1の上面に対向する中央部3aと、案内レール1の側面に対向する左右の袖部3bと、を有する。キャリッジ本体3の左右の袖部3bには、案内レール1のボール転走部12に対向する上下2つの負荷ボール転走部13が形成される。各負荷ボール転走部13には2条の負荷ボール転走溝3cが形成され、キャリッジ本体3には合計8条の負荷ボール転走溝3cが形成される。負荷ボール転走溝3cは、断面が単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝である。
【0018】
キャリッジ本体3の負荷ボール転走部13と案内レール1のボール転走部12との間が負荷路C1を構成する。上側の負荷路C1のボール6の接触角L1の方向と水平方向L2とのなす角度はθ1である。下側の負荷路C1のボール6の接触角L3の方向と水平方向L2とのなす角度はθ2である。ここで、接触角L1,L3の方向は、ボール6とボール転走溝1aとの接触点と、ボール6と負荷ボール転走溝3cの接触点と、を結んだ線の方向である。θ1、θ2は、キャリッジ2が受ける荷重の方向に応じて適宜決定される。θ1,θ2を例えば45°に設定すれば、キャリッジ2が上下左右の4方向の荷重を均等に受けられるようになる。
【0019】
なお、ボール転走溝1a及び負荷ボール転走溝3cをゴシックアーチ溝にすることも可能である。ゴシックアーチ溝の場合、接触角の方向は、ボール転走溝1aのゴシックアーチ溝の底と負荷ボール転走溝3cのゴシックアーチ溝の底とを結んだ線の方向である。
【0020】
図3に示すように、キャリッジ本体3には、負荷ボール転走部13と平行に貫通穴14が形成される。貫通穴14には、戻し路C2を構成する戻し路構成部材15が挿入される。戻し路C2は、キャリッジ本体3の左右の袖部3bに上下2つ、合計4つ設けられる。戻し路C2は、ボール6の接触角L1,L3の方向から水平方向L2に向かってずれた位置に配置される。
【0021】
図1及び図2に示すように、インナープレート4は、正面視において逆U字状であり、案内レール1の上面に対向する中央部4aと、案内レール1の側面に対向する左右一対の袖部4bと、を有する。インナープレート4の袖部4bには、負荷路C1と戻し路C2とを繋ぐ略U字状のターン路C3の内周側が形成される。
【0022】
図1に示すように、エンドプレート5も、正面視において逆U字状であり、案内レール1の上面に対向する中央部5aと、案内レール1の側面に対向する左右一対の袖部5bと、を有する。エンドプレート5の袖部5bには、略U字状のターン路C3の外周側が形成される。ターン路C3は、インナープレート4及びエンドプレート5の左右の袖部4b,5bに上下2つ、合計4つ設けられる。
【0023】
エンドプレート5とインナープレート4とは、ボルト21(図2参照)によってキャリッジ本体3に取り付けられる。エンドプレート5及びインナープレート4には、ボルト用の通し穴が形成される。エンドプレート5及びインナープレート4の通し穴にボルト21を通し、ボルト21をキャリッジ本体3にねじ込むことで、エンドプレート5及びインナープレート4がキャリッジ本体3に取り付けられる。
【0024】
図4は循環路7の斜視図を示し、図5は循環路7の3面図を示す。直線状の負荷路C1、直線状の戻し路C2、及び一対の略U字状のターン路C3がトラック状の循環路7を構成する。循環路7は、キャリッジ2の左右の袖部に上下2つ、合計4つ設けられる(図2参照)。
【0025】
図5(a)に示すように、負荷路C1は、案内レール1とキャリッジ本体3との間に形成される。戻し路C2は、キャリッジ本体3に形成される。ターン路C3は、インナープレート4とエンドプレート5との間に形成される。本実施形態では、循環路7に2つのボール列6a,6bが配列されるので、循環路7は、断面略円状のボール循環路を上下2段に重ねた形状になる。
【0026】
図5(c)に示すように、負荷路C1と戻し路C2とが重なる方向から見た側面視において、ターン路C3は湾曲する。側面視において、ターン路C3の中心(ボール6の移動方向におけるターン路C3の中心)と負荷路C1及び戻し路C2との間には、湾曲度合いを示すずれAが生ずる。この結果、図5(b)に示すように、正面視において、ターン路C3は凸状に湾曲する。なお、負荷路C1と戻し路C2とが重なる方向から見た側面視とは、図3の上側の負荷路C1及び戻し路C2を右斜め上方向(矢印V1の方向)から見て、図3の下側の負荷路C1及び戻し路C2を右斜め下方向(矢印V2の方向)から見ることを意味する。
【0027】
図2に示すように、上側のターン路C3は上に凸状に湾曲し、下側のターン路C3は下に凸状に湾曲する。上側のターン路C3と下側のターン路C3とは、左右方向(幅方向)の中央部が最も離れる。上側のターン路C3の幅方向の中央部と下側の前記ターン路C3の幅方向の中央部との間には、エンドプレート5の取付け用ボルト21が配置される。
【0028】
図6に示すように、リテーナバンド22は、帯状のバンド本体22aと、ボール6間に介在し、バンド本体22aに一体に形成される複数のスペーサ22bと、を備える。この実施形態では、リテーナバンド22に2つのボール列6a,6bが保持される。一方のボール列6aと他方のボール列6bとは半ピッチ位相がずれる。
【0029】
図2に示すように、キャリッジ本体3には、負荷路C1におけるリテーナバンド22を保持・案内する保持部23a,23b,23cが設けられる。図2の符号5は背面側のエンドプレートである。図3に示すように、キャリッジ本体3の戻し路構成部材15には、戻し路C2におけるリテーナバンド22を案内する案内溝15aが設けられる。インナープレート4とエンドプレート5の間には、ターン路C3におけるリテーナバンド22を案内する案内溝が設けられる。
【0030】
図3に示すように、キャリッジ2の断面視において、負荷路C1におけるリテーナバンド22と戻し路C2におけるリテーナバンド22とがハの字状に開く。これは、負荷路C1でのボール6の接触幅を確保するため、リテーナバンド22を接触角L1,L3の方向に垂直に配置し、なおかつキャリッジ2をコンパクトにするため、戻し路C2を接触角L1,L3の方向から水平方向L2にずれた位置に配置するからである。
【0031】
図7は、ハの字状に開いたリテーナバンド22の斜視図を示し、図8は、ハの字状に開いたリテーナバンド22の3面図を示す。図7に示すように、帯状のリテーナバンド22を略U字状に曲げ、ハの字状に開くと、図8(c)の側面図に示すように、リテーナバンド22のターン部22cは開いた方向Pに向かって自然に湾曲する。この状態は発生応力が最も小さい無理のない状態である。リテーナバンド22のターン部22cの中心(リテーナバンド22のターン部22cの長さ方向の中心)とハの字状に開いたリテーナバンド22の直線部分22dとの間には、湾曲度合いを示すずれAが生ずる。図5(c)に示すように、ターン路C3もリテーナバンド22の湾曲に合わせてハの字状に開いた方へ湾曲していて、ターン路C3のずれAは、リテーナバンド22のターン部22cのずれAに一致する。
【0032】
本実施形態の運動案内装置によれば、以下の効果を奏する。負荷路C1と戻し路C2とが重なる側面視において、ターン路C3が湾曲する(図5(c)参照)ので、ボール6とボール転走溝1aとの接触幅、及びボール6と負荷ボール転走溝3cとの接触幅を犠牲にすることなく、戻し路C2をボール6の接触角L1,L3の方向から水平方向L2にずれた位置に配置することができる(図3参照)。このため、定格荷重及び許容荷重が小さくなるのを防止でき、キャリッジ2をコンパクトにすることができる。また、同等サイズの運動案内装置では、定格荷重及び許容荷重を大きくすることができる。
【0033】
リテーナバンド22をハの字状に開き、側面視において、ターン路C3をリテーナバンド22がハの字状に開いた方Pへ湾曲させる(図5(c)、図8(c)参照)ので、ターン路C3の湾曲をリテーナバンド22の湾曲に合わせることができ、リテーナバンド22を無理なくターンさせることができる。
【0034】
リテーナバンド22が2つ以上のボール列6a,6bを保持するので、負荷路C1と戻し路C2でハの字状に開いたリテーナバンド22の姿勢を安定させることができ(図3参照)、リテーナバンド22が案内溝を摺るのを防止又は低減することができる。
【0035】
正面視において、上側のターン路C3が上に凸状に湾曲し、下側のターン路C3が下に凸状に湾曲する(図2参照)ので、運動案内装置をよりコンパクトにすることができる。
【0036】
上側のターン路C3と下側のターン路C3とは、左右方向(幅方向)の中央部が最も離れている(図2参照)ので、これらの中央部の間にエンドプレート5の取付け用ボルト21を配置することができ、なおかつボルト21をより大きなサイズにすることができる。一般に、エンドプレート5は、生産性及び機能性の面から樹脂製の略板形状をしたものが使用される。限られた数のボルト21でエンドプレート5を金属製のキャリッジ本体3に固定するので、エンドプレート5の、ボルト21の位置から離れた部分は、キャリッジ本体3との密着性が劣るおそれがある。従来のエンドプレート5の取り付け用のボルト21´は、ターン路C3に対して偏った位置に配置せざるを得なかったが、ボルト21をターン路C3の左右方向の中央部に配置することで、エンドプレート5とキャリッジ本体3との密着性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
【0037】
図9は本発明の第2の実施形態の運動案内装置を示す。図9はエンドプレート5を取り外した状態の運動案内装置の正面図を示す。
【0038】
第2の実施形態の運動案内装置も、軌道部材としての案内レール1と、案内レール1に相対移動可能に組み付けられるキャリッジ2と、案内レール1とキャリッジ2との間に介在する転動体としてのボール6と、を備える。キャリッジ2の左右には、上下2つのトラック状の循環路7が設けられる。
【0039】
第2の実施形態では、循環路7に1つのボール列が配列される点が第1の実施形態と異なる。案内レール1の各ボール転走部には1条のボール転走溝1aが形成され、案内レール1には合計4条のボール転走溝1aが形成される。キャリッジ本体3の各負荷ボール転走部には1条の負荷ボール転走溝が形成され、キャリッジ本体3には合計4条の負荷ボール転走溝が形成される。案内レール1、キャリッジ本体3、インナープレート4のその他の構成は、第1の実施形態と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0040】
図10は循環路7の3面図を示す。直線状の負荷路C1、直線状の戻し路C2、一対の略U字状のターン路C3がトラック状の循環路7を構成する。図10(c)に示すように、負荷路C1と戻し路C2とが重なる方向から見た側面視において、ターン路C3は湾曲する。側面視において、ターン路C3の中心(ボール6の移動方向におけるターン路C3の中心)と負荷路C1及び戻し路C2との間には、湾曲度合いを示すずれBが生ずる。この結果、図10(b)に示すように、正面視において、ターン路C3は凸状に湾曲する。
【0041】
図9に示すように、上側のターン路C3は上に凸状に湾曲し、下側のターン路C3は下に凸状に湾曲する。上側のターン路C3と下側のターン路C3とは、左右方向(幅方向)の中央部が最も離れる。上側のターン路C3の幅方向の中央部と下側のターン路C3の幅方向の中央部との間には、エンドプレート5の取付け用ボルト21が配置される。
【0042】
図11は、ハの字状に開いたリテーナバンドの3面図を示す。図11に示すように、帯状のリテーナバンド22を略U字状に曲げ、ハの字状に開くと、図11(c)の側面図に示すように、リテーナバンド22のターン部22cは開いた方Pに向かって自然に湾曲する。リテーナバンド22のターン部22cの中心(リテーナバンド22のターン部22cの長さ方向の中心)とハの字状に開いた直線部分22dとの間には、湾曲度合いを示すずれBが生ずる。図10(c)に示すように、ターン路C3もリテーナバンド22の湾曲に合わせてハの字状に開いた方へ湾曲していて、ターン路C3のずれBはリテーナバンド22のターン部22cのずれBに一致する。
【0043】
第2の実施形態でも、負荷路C1と戻し路C2とが重なる側面視において、ターン路C3が湾曲する(図10(c)参照)ので、ボール6とボール転走溝1aとの接触幅、及びボール6と負荷ボール転走溝との接触幅を犠牲にすることなく、戻し路C2をボール6の接触角の方向から水平方向にずれた位置に配置することができる(図9参照)。このため、運動案内装置の定格荷重及び許容荷重を小さくするのを防止でき、キャリッジ2をコンパクトにすることができる。
【0044】
リテーナバンド22をハの字状に開き、側面視において、ターン路C3をリテーナバンド22がハの字状に開いた方へ湾曲させる(図10(c)、図11(c)参照)ので、ターン路C3の湾曲をリテーナバンド22の湾曲に合わせることができ、リテーナバンド22を無理なくターンさせることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々に変更可能である。
【0046】
第1及び第2の実施形態の運動案内装置において、ボールを保持するリテーナバンドを省略することができる。すなわち、本発明は総ボール型の運動案内装置にも適用することができる。
【0047】
第1及び第2の実施形態の運動案内装置において、側面視において、ターン路の全体が湾曲しているが、ターン路の一部のみを湾曲させることもできる。
【0048】
転動体として、ボールの替わりにローラを使用することもできる。本発明は、リニアガイドの他にボールスプラインにも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…案内レール(軌道部材)、1a…ボール転走溝(転動体転走部)、2…キャリッジ、3…キャリッジ本体、3c…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部)、4…インナープレート、5…エンドプレート、6…ボール(転動体)、6a,6b…ボール列、7…循環路、12…ボール転走部(転動体転走部)、13…負荷ボール転走部(負荷転動体転走部)、21…ボルト、22…リテーナバンド、C1…負荷路、C2…戻し路、C3…ターン路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11