(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559178
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】可撓性の印刷プレートを接着するための感圧接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20190805BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20190805BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/38
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-89659(P2017-89659)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-222841(P2017-222841A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】10 2016 207 374.5
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ピュッツ
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・テブート
(72)【発明者】
【氏名】リーザ・ヴィークハルト
【審査官】
佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/186169(WO,A1)
【文献】
特開2008−013590(JP,A)
【文献】
特開平11−061059(JP,A)
【文献】
特開2007−217666(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02803712(EP,A1)
【文献】
特表2005−514237(JP,A)
【文献】
特表平10−501192(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0044611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤の印刷プレートを特に曲面上に接着するための使用であって、
前記感圧接着剤は、
少なくとも60重量%のポリマーブレンドを含む感圧接着剤であり、
その際、該ポリマーブレンドが、第一のポリマー成分A、第二のポリマー成分B及び、場合によっては、一つ又は二つ以上の別のポリマー成分(C、D、…)からなり、
その際、該第一のポリマー成分Aは、前記ポリマーブレンド中に少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在し、
かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在している別のポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在し、
その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来している、感圧接着剤であって、
各ポリマー成分A、B、C…の、他の各ポリマー成分A、B、C…とのハンセン溶解度パラメータの差Zが値1超であり、かつ、
室温において、前記ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和性でなく、それによって、多相系が存在していることを特徴とする、上記の感圧接着剤の使用。
【請求項2】
前記ポリマーブレンドが、前記感圧接着剤の少なくとも99.9重量%を構成していることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記第一のポリマー成分Aが、単一のポリマーからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリマー成分Aが、二種又は三種以上のポリマーからなる均質な混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリマーブレンドがポリマー成分A及びBだけから形成されていることにより、二相系が存在していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
前記ポリマー成分Bが、単一のポリマーからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
前記ポリマー成分Bが、二種又は三種以上のポリマーからなる均質な混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
以下の製造方法で製造される感圧接着剤の印刷プレートを特に曲面上に接着するための使用であって、感圧接着剤の製造方法において、その際、第一のポリマー成分Aと共に、少なくとも第二のポリマー成分B、及び、場合によっては、一つ又は二つ以上のポリマー成分(C、D、…)が密に混合され、それにより、前記感圧接着剤の少なくとも60重量%を構成するポリマーブレンドが生成し、
その際、該第一のポリマー成分Aは、該ポリマーブレンド中少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在しており、
かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在しているポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在し、
その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来しており、
各ポリマー成分(A、B、C、…)が、それぞれが、モノマーの重合によって得られるポリマーを含み、その際、各ポリマー成分のポリマーのためのモノマーの組成は、各ポリマー成分A、B、C…の、他の各ポリマー成分A、B、C…とのハンセン溶解度パラメータの差Zが値1超であるように選択され、
室温において、前記ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和性でなく、それによって、多相系が存在していることを特徴とする、上記の使用。
【請求項9】
ポリマー成分Aが架橋されることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記印刷プレートがポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、その上には少なくとも一つのフォトポリマーの層が設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の使用。
【請求項11】
上に前記印刷プレートが接着される前記表面が、鋼、ポリウレタンからなるか、又はガラス繊維−樹脂材料からなることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の使用。
【請求項12】
上に前記印刷板が接着される前記表面が印刷シリンダー又は印刷スリーブの一部であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項13】
硝酸セルロースを含有する印刷インキの使用下における印刷プロセスにおける、請求項1〜12のいずれか一つに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも60重量%のポリマーブレンドを含む感圧接着剤であり、その際、該ポリマーブレンドは、ポリアクリレートベースの第一のポリマー成分A、及びポリアクリレートベースの、少なくとも一つの第二のポリマーブレンドBからなり、該第一のポリマー成分Aは、前記ポリマーブレンド中に少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在し、かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在しているさらなるポリマー成分は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在する、該感圧接着剤;さらには、そのような感圧接着剤のための製造方法、並びに、印刷プレートの、特に、印刷シリンダー及び/又は印刷スリーブ上への接着のためのそのような感圧接着剤の使用、並びに、該感圧接着剤が、接着テープの形態提供される場合のそのような使用に関する。
【0002】
印刷業界では、印刷テンプレートを使って、例えば、紙又はフィルム上にモチーフを転写するための様々な方法が知られている。一つの可能性は、いわゆるフレキソ印刷である。
【0003】
フレキソ印刷法では、可撓性の印刷プレート(ステロタイプとも呼ぶ)は、印刷シリンダー又は印刷スリーブ(後者は、スリーブとも呼ぶ)上に接着されている。そのようなステロタイプは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)からなり、その上に、フォトポリマーが施用され、その際、印刷要素の露光及びその後の非印刷要素の洗い落としによって、対応する印刷レリーフを設けることができる。そのステロタイプの印刷シリンダー又は印刷スリーブ上への接着は、PETフィルムを介して行われる。接着するために、一般的には、両面感圧接着テープが使用されており、該テープには非常に高い要求が設定されている。印刷プロセスのために、その感圧接着テープは所定の硬度を有さなくてはならないが、所定の弾性も有さなくてはならない。要求に従って形成された印刷像が、所望の結果をもたらすよう、これらの特性は非常に厳密に設定されなくてはならない。高い要求は、同様に、感圧接着剤に設定される。というのも、印刷プレートが、両面感圧接着テープから、又は感圧接着テープがシリンダー又はスリーブから外れないよう、接着力も同様に十分でなくてはならないからである。このことは、高められた温度、例えば、40〜60℃においても、かつ、高められた印刷速度においても、また、同様に、室温程度の低い温度、例えば、15℃においても適用される。この特性の他に、印刷過程後に印刷プレートを再び剥がせるように、感圧接着剤は可逆的な感圧接着性を有さなくてはならない(その際、感圧接着テープの接着複合材は、二つの成分が確実に再使用可能であるために、印刷シリンダー又は印刷スリーブに対しても、またステロタイプに対しても、残留物を残さずに剥がれなければならない。)。この剥離性は、長期間にわたる接着(例えば、6ヶ月まで)後にも与えられなければならない。さらに、感圧接着剤及び特に印刷プレートを、これらを破壊することなく、かつ、それほど大きな力を用いることなく、再び除去できることが望ましい。というのも、該印刷プレートは一般に数回使用されるからである。さらに、該印刷プレート上及びシリンダー又はスリーブ上には残留物が残っているべきではない。したがって、要するに、この使用に適した両面感圧接着テープに対する非常に高い要求が存在している。
【0004】
残留物のない再剥離性は、特に、極性の基板、例えば、鋼の場合に問題となる。というのも、この場合、その接着力が、時間の経過と共に大幅に増大することが確認されているからである。本明細書の範囲において、表面という語は、“極性”及び“高エネルギー”、つまり、高い表面エネルギー(OFE)を有するものと同義に使用され、“非極性”及び“低エネルギー”という語も同様である。というのも、この単純化されたモデルは、実際に確立されているからである。これは、比較的強い極性の双極子力は、恒久的な分子の双極性に関与することなく構築される、いわゆる“分散性”又は“非極性”の相互作用に関連しているという知見に基づいている。このモデルの界面エネルギー及び界面相互作用の基礎は、極性成分は極性の相互作用だけを、そして、非極性成分は非極性の相互作用だけを有するという概念である。
【0005】
このエネルギー及びその成分は、多くの場合、異なる試験液の静的接触角の測定により測定される。これらの液体の表面張力は、極性割合及び非極性割合に関連している。試験面の表面エネルギーの極性割合及び非極性割合は、試験面上の液滴の観察された接触角から計算される。これは、例えば、OWKRモデルに従って行うことができる。通常の代替的な方法は、産業的に、DIN ISO 8296に準拠した試験インクを使用した測定である。
【0006】
感圧接着剤とは、例えば、例えば、欧州特許出願公開第760 389 A号明細書(特許文献1)に挙げられているような天然ゴムをベースとするようなものである。しかしながら、上記の使用目的のために、感圧接着剤も使用され、該感圧接着剤は、ポリアクリレートベースを有する。例えば、国際公開第03/057497 A号パンフレット(特許文献2)は、上記の使用目的のために、ブロックコポリマーをベースとするアクリレート感圧接着剤を記載している。国際公開第2004/067661 A号パンフレット(特許文献3)は、軟性のアクリルモノマー(T
G<−20℃)をベースとし、少なくとも49.5重量%の硬質の環状又は線状(メタ)アクリル酸エステル−モノマー(T
G>30℃)及び少なくとも10重量%の官能化された、硬質の(メタ)アクリル酸/−エステルモノマー(T
G>30℃)からなる感圧接着剤を有する感圧接着テープを開示しており、その際、該感圧接着剤は、二段階方法で製造される。
【0007】
従来技術より知られている、印刷ステロタイプを接着するための感圧接着剤の多くには、特に、接着された印刷ステロタイプは印刷インキを洗わなければならないという欠点を示す。これは、通常、ステロタイプからインキを洗い落とすために、溶剤−例えば、該インキに利用されている溶媒のような−を使用することよって作用する。ここでは、しばしば、多量の溶剤が使用され、このことは問題を一層悪化させる。この場合、感圧接着テープ上のステロタイプの接着体の縁部の下で、及び印刷シリンダー又は印刷スリーブ上の接着テープの縁部で、溶剤が必然的にクリープする。この場合、(接着テープ上のステロタイプ又はシリンダー又はスリーブ上の接着テープの)接着体の剥離を招き得る。なぜなら、感圧接着テープの接着剤が必要な粘着力を失うからである。この不十分な耐溶剤性に起因して起こるエッジリフト(“フラッグ(Fahnen)”は、プロセスにおいて一緒に印刷され、それによって、欠陥のある印刷像が生じ(一般に、“誤植”と呼ばれる)、そうでなければ、印刷装置におけるフラグによる機械的な問題、及びそれによるシステムの停止には至らない。したがって、実際には、従来技術の接着剤で取り付けられた印刷プレート上の結合は、片面接着性の感圧接着テープ又は液体接着剤又はホットメルト接着剤でそれぞれの縁部をシールすることによって、溶剤から有利に保護することができる。
【0008】
この追加の密封操作は、かなりの余分な費用を意味し、特に液体接着剤またはホットメルト接着剤が使用される場合には、高価な印刷プレートを取り外し時に損傷させる危険性がある。
【0009】
欧州特許出願公開第2 226 372 A1号明細書(特許文献4)は、8〜15重量%の高いアクリル酸割合を有する、シリンダー又はスリーブ上への印刷プレートの接着のためのアクリレートベースの感圧接着剤を開示している。さらなるモノマーは、線状及び分岐状のアクリル酸エステルであり、互いに対して所定の比率で存在する。このような接着剤を使用すると、エッジリフト挙動及び耐溶剤性の要件が非常に良好に満たされる。しかしながら、高いアクリル酸割合を有する感圧接着剤は、一般に、印刷シリンダーのための材料である鋼のような極性基材上で強力な剥離増加を起こしやすい。また、ポリウレタンをベースにしたプラスチックスリーブもますます使用されている。印刷スリーブ上の接着剤は、鋼及び低エネルギーのスリーブ表面の両方に接着しなければならず、これは現像プロセスにおいて追加の課題を提起する。この問題は、特に、それが印刷シリンダー又は印刷スリーブに面する接着テープの側で使用される場合には、欧州特許出願公開第226 372 A1号明細書(特許文献4)の接着剤でも生じる。従って、そのような基材からそのような接着剤を脱着することは問題を伴う。非常に高い脱着力が生じ、使用した接着テープが破損したり、又は基材上に残留物が残ったりする可能性がある。
【0010】
溶剤の影響下であっても、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)のようなフレキソ印刷に共通する材料への効果的かつ信頼性の高い結合を確実にする感圧接着剤を提供するために、長時間経過した後でさえも、−鋼製の印刷シリンダーの表面又は特定の印刷スリーブの極性のプラスチック表面のような−高度に極性の基板からさえも、依然として再着脱可能であり、その際、感圧接着剤は、特に好ましくは、印刷ステロタイプを確実に接着するのに適しているべきであり、かつ、その際、感圧接着剤を有する接着テープでは、接着テープアセンブリの安定性、−例えば、ポリオレフィンフォーム−のような発泡支持体上への感圧接着剤の確実な固定が保証されなければならず、国際公開第2014/001096A1号パンフレット(特許文献5)は、N−アルキル置換アクリルアミド2〜20重量及び少なくとも12個のC原子を有する線状アルキル残基を有する(メタ)アクリル酸エステル5〜25重量%並びに(メタ)アクリル酸0.5〜5重量%を有するアクリレートベースの感圧接着剤を開示している。
【0011】
そのような感圧接着剤は、従来技術に対して改良された特性を有するが、それにもかかわらず、印刷プレートと、それ自体可逆的に接着する感圧接着剤との接着体は、溶媒中の不純物によって印刷後に印刷プレートを清浄化され、印刷されることが判明している。
【0012】
接着テープの分野における“プライミング(Priming)”という語は、通常、基材への接着力を、適切な化学物質で基材を前処理することによって高めることができることを意味する。本明細書では、接着の可逆性が重要な役割を果たしている場合、それが不純物によって意図せずに起こった場合に、このプライミングは特に望ましくない。この場合の“プライミング効果”は、純粋な溶媒で洗浄した印刷プレートと比較して、溶剤に含まれるインク残滓によって汚染された印刷プレートに対する感圧接着剤の接着強度が著しく増加することを意味すると理解される。
【0013】
不純物は、洗浄に使用される溶剤中へ印刷インクのインク残留物から発生し、目に見えないほどの少量の不純物でさえ、この効果を起こすのに十分である。このように、時間の経過により、プレートの再剥離に望ましい、著しく高い接着強度が得られる。印刷プレートは、非常に高い力の付与でのみ、部分的に剥がすことができ、それにより、それらは損傷を受ける可能性もあり、これはプレートの再使用可能性を不可能にする。これを避けるために、プリンタは、各清浄化過程のために新たな溶剤及び新たなクリーニングワイプを使用するようことが望まれる。これは増大した時間と材料の手間暇をかける場合を除いて、これは実際に使用するのはほぼ不可能である。特に、存在する汚れがしばしば目には見えないからと言って、使用者には、溶剤及び清掃布を交換することは許容されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第760 389 A号明細書
【特許文献2】国際公開第03/057497 A号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/067661 A号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第2 226 372 A1号明細書
【特許文献5】国際公開第2014/001096A1号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook, Second Edition; Charles M. Hansen; 2007 CRC Press; ISBN 9780849372483
【非特許文献2】Prediction of Hansen Solubility Parameters with a New Group−Contribution Method; Int. J. Thermophys. (2008) 29:568−585; Emmanuel Stefanis, Costas Panayiotou
【非特許文献3】Prediction of Hansen Solubility Parameters with a New Group−Contribution Method; Int. J. Thermophys. (2008), Tables 3 bis 6, Seiten 578 bis 582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、印刷プレートを、特に、印刷シリンダー及び/又は印刷スリーブ上に接着時に、清浄化溶剤中の印刷インキ残滓の影響に対して敏感でないために、印刷プレートを清浄化する溶剤中の印刷インキ残滓の望ましくないプライマー効果に対抗し、そしてそれにより、いわゆる“インキ耐性”を有する感圧接着剤を提供することである。そのように汚染された表面上のその感圧接着剤の接着性は、物理的な固定と同等と見なすことができ、その原因は、印刷インキ中に存在する少なくとも1種のバインダー(フィルム形成剤とも呼ばれる)に起因する可能性がある。印刷インキに一般的に使用されるバインダーの一つは、硝酸セルロース(本明細書においては、口語的な“ニトロセルロース”と同義に使用される)であり、接着面において、感圧接着剤との相互作用を形成する可能性があり、そしてそれにより、プライマー効果を引き起こすことが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題は、感圧接着剤−特に、印刷プレートを、そして、特に、印刷シリンダー及び/又は印刷スリーブ(印刷スリーブとも言う。)上に接着するための−感圧接着剤によって解決され、これは、少なくとも60重量%のポリマーブレンドを含む感圧接着剤であり、
その際、該ポリマーブレンドが、第一のポリマー成分A、第二のポリマー成分B及び、場合によっては、一つ又は二つ以上の別のポリマー成分(C、D、…)からなり、
その際、該第一のポリマー成分Aは、前記ポリマーブレンド中に少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在し、
かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在している別のポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在し、
その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来している、感圧接着剤であって、
室温において、前記ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和性でなく、それによって、多相系が存在していることを特徴とする。
【0018】
驚くべきことに、該感圧接着剤は、感圧接着剤のそのような多相構造は、定義された量の範囲における高い過剰量の成分が存在しており、印刷インキの残滓の影響に対する感圧接着剤の抵抗性を大幅に低減した。これは、(表面上にある
インキ残滓によって高められた)力の付与という形で現れ、ステロタイプをシリンダー又はスリーブから剥がすのに必要である。特に、その力の付与は印刷インキの残滓の影響を受けることなく、感圧接着剤自体を剥がすための力の付与に対抗するのに必要とされ、わずかにのみ、好ましくは、気づかぬうちに高められており、特に、高められてさえいない。
【0019】
上述の要求以外に、本発明の感圧接着剤は、印刷プレートを接着する際に生ずる要求を可能な限り満たす場合、好ましくは、ここで特に言及すると:
−溶剤の影響下でさえ、フレキソ印刷における全ての材料、例えば、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)上への良好かつ確実な接着を確保すること。
−長時間後でさえ、非常に極性の基材の表面から、例えば、鋼製の印刷シリンダーの表面又は所定の印刷スリーブの極性のプラスチック表面からからさえも剥離可能であること。
−印刷ステロタイプのこの確実な接着のために適していること。その際、感圧接着剤を有する接着テープには、接着テープ複合体の安定性、特に、感圧接着剤を発泡支持体、例えば、ポリオレフィン系発泡体上及び/又はフィルム支持体上に確実に接着できること。
【0020】
この要求プロフィルはまた、本発明の感圧接着剤により良好に満たされる。
【0021】
ポリマー成分とは、本明細書の範囲において、個々のポリマー又は互いに均質に混合可能なポリマーの混合物であると理解され、そのような混合物は個々の均質な相を形成する。基礎となるポリマーは、ホモポリマー(いくつかのモノマー種からなる)及び/又はコポリマー(一種超のモノマー種からなる)であることができる。
【0022】
本明細書におけるポリマー成分のポリマーは、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマー(この語の意味はさらに以下を参照)からなる。ポリマー成分A及び/又はB、−及び互いに独立して−専ら又は部分的に、有利に、少なくとも80重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来していることができ;好ましい実施形態において、該ポリマー成分A及び/又はBには純粋なアクリレート系が使用される、つまり、そのようなポリマーは、全部−つまり100重量%まで−が(メタ)アクリルモノマーに由来している。さらなる成分C、D等が、ここでは、−成分A及びBの組成とは独立して存在していることができる場合も、これには、純粋なアクリレート系が使用される。
【0023】
“感圧接着剤”(PSA:“pressure sensitive adhesives”(英語))という語は、通常、粘弾性のポリマー材料であると理解され、これは−場合によっては、さらなる成分、例えば、接着樹脂の適切な添加によって−使用温度(別途定義されない限り、室温、つまり23℃)において、恒久的に接着性かつ永久に粘着性であり、そして、複数の表面に接触すると粘着し、特に、すぐに粘着する(いわゆる“タック性”(接着性又は粘着性とも言う)を有する)。それらは、貯蔵時には、溶剤又は熱による活性化することなく−場合によっては、多かれ少なかれ高い圧力の影響下で−、使用温度で既に接着する基材を十分に湿潤させ、それにより、材料と基材との間に、粘着のための十分な相互作用を形成することができる。
【0024】
感圧接着剤は、通常、ベースポリマーとも呼ばれるポリマー成分からなり、これは、ホモポリマー、コポリマー又はポリマー(ホモポリマー及び/又はコポリマー)、そして、場合によっては、かなりの範囲において部分的に添加剤(副成分、添加剤)からなる混合物であることができる。ここで、“所定のモノマーをベースとするポリマー(成分)”、“モノマー混合物をベースとするポリマー(成分)”又は“所定のモノマーからなるポリマー又はポリマー成分”という用語は、一般に、対応するモノマー又は対応するモノマー混合物の−特に、ラジカル−重合によって得ることができるポリマー−又はポリマー成分のポリマーを意味する。
【0025】
感圧接着剤は、原則的に、異なる化学的性質のポリマーに基づいて製造することができる。感圧接着特性は、とりわけ、使用するモノマーの種類及び量の割合、−つまり、モノマー混合物の組成−によって、感圧接着剤の基礎となるポリマーの重合時に、ポリマーの平均モル質量及びモル質量分布並びに任意の添加剤(種類及び量)の混和の影響を受ける。
【0026】
粘弾特性を達成するために、感圧接着剤の基礎となるポリマーのベースとなるモノマー、並びに、場合によっては存在している感圧接着剤のさらなる成分は、特に、感圧接着剤が、使用温度を下回る(つまり、通常、室温を下回る)ガラス転移温度T
Gを有するように選択される。そのガラス転移温度T
Gの下では、感圧接着剤自体は、脆性−弾性(ガラス状アモルファス又は部分結晶)のように挙動し;ここでは、感圧接着性の挙動を形成することはできない。そのガラス転移温度T
Gの上では、温度の増大に伴って材料は組成に応じて軟化し、多かれ少なかれ強くなり、そして、依然として粘着特性を有するために、さらに高い温度で非常に流動性になる前に(それらはそれ以前に分解する)、感圧接着特性に適した粘度値を取る。
【0027】
ガラス転移温度は、DIN 53 765;特に、セクション7.1及び8.1に準拠するが、全ての熱工程及び冷却工程において10K/分の均一な熱速度及び冷却速度を用いて、示差走査熱量測定DDKによる測定の結果として与えられる(DIN 53 765;セクション7.1;注釈1を参照)。試料の重量は20mgである。感圧接着剤の事前処理が行われる(セクション7.1;第一工程)。温度:−140℃(もしくはT
G-50℃/+200℃(もしくはT
G+50℃)。与えられるガラス転移温度TGは、第二の工程の熱工程における試料の温度であり、その時、特定の熱容量の半分が変化する。
【0028】
使用したモノマーの特性としてのガラス転移温度は、実験の部分において、アクリレート感圧接着剤のための合成工程語に得られる、個々のホモポリマーのそれに関連して示され、ここで、モノマー混合物400gに代えてそれぞれのモノマーが使用される。T
Gの測定は、架橋していない状態で溶剤を除去した後に行う(架橋剤の不存在下で)。
【0029】
特に、本発明の感圧接着剤は相分離して存在しているため、本発明の感圧接着剤は、少なくとも顕微鏡的に、かつ、少なくとも室温で−23℃と定義される−で、好ましくは、少なくとも二相、場合によっては多相の形態で存在しており、そのため、少なくとも二つ又は多数の安定な相が形成されており、それらはそれぞれ、感圧接着剤中で均質に存在している。
【0030】
感圧接着剤中に含まれるポリマー成分は、好ましくは、23℃において均質になるまで互いに混和できないように選択される。特に好ましくは、ポリマー成分は、少なくとも0℃〜50℃、特に、−30℃〜80℃の温度において、互いに均質に混和性でないため、感圧接着剤は、この温度範囲において少なくとも顕微鏡的に少なくとも二相で存在している。
【0031】
本明細書において、密に混合した後に、少なくとも二つの安定な相の形成が、物理的及び/又は化学的に、少なくとも顕微鏡的に確認できる場合、成分は“互いに均質に混和性でない”と定義され、その際、一つの相は一方の成分に富んでおり、そして第二の相は他方の成分に富んでいる。この場合、一方の成分は、無視できるほどの少量で他方における存在は、多相性の形成に対抗するものではなく、無関係であると思われる。それ故、第一のポリマー成分Aの相において、相の分離に影響を及ぼすような本質的な量でない限り、例えば、第二のポリマー成分は少量存在することができ、ポリマー成分Bの少量のポリマー成分A、並びに、感圧接着剤中に存在するその他のポリマー成分についても同様である。
【0032】
相の分離は、特に、一つのポリマー成分に富んだ−例えば、第一のポリマー成分B−個々の領域(“ドメイン”)、つまり、本質的に、対応するポリマー成分から形成されている、が、別のポリマー成分に富んだ−例えば、第二のポリマー成分B、つまり、本質的にポリマー成分Bから形成されている−連続的なマトリックスとして存在するように実現できる。さらなるポリマー成分C、D、…が感圧接着剤中に存在する限り、本発明の特に好ましい実施形態において、これらも同様に、それぞれ、個々の領域(“ドメイン”)として、ポリマー成分Aによって形成されたマトリックス中に存在し、実際、ポリマー成分Bのドメインから独立して、さらに、場合によってはさらに存在しているポリマー成分のドメインから独立して存在し、その結果、二つ超の相を有する多相−つまり、互いに均質に混和性でない成分の数が存在する。
【0033】
相分離に適した分析システムは、例えば、走査電子顕微鏡である。しかしながら、相分離は、例えば、示差走査熱量測定(DDK、DSC)において、異なる相が、二つの互いに独立したガラス転移温度を有することによっても可能である。本発明によれば、少なくとも一つの分析方法によって明確に示すことができる場合に相分離は存在する。
【0034】
特に有利には、二つのポリマー成分の間の相分離は、ポリマー成分のハンセン溶解度パラメータが互いに十分異なる(差“Z”で表される)場合に実現できる。感圧接着剤は、この場合、特にインキ耐性であることが判明している。
【0035】
文献において周知の溶解度パラメータの説明は、一次元のヒルデブランド−パラメータ(δ)によって示される。しかしながら、この一次元のδ値は、極性化合物、例えば、アクリレート又は水素ブリッジ結合を形成し得る、例えば、アクリル酸の場合、大抵大きい。それ故、一次元のヒルデブランド溶解度パラメータのモデルは、限られた用途しかないため、それはハンセンによってさらに発展した(Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook, Second Edition; Charles M. Hansen; 2007 CRC Press; ISBN 9780849372483(非特許文献1)。
【0036】
したがって、今日多く用いられているハンセン溶解度パラメータは、三次元の溶解度パラメータである。それは、分散割合(δ
D)、極性相互作用の割合(δ
P)及び水素ブリッジ結合のための割合(δ
H)からなる。ヒルデブランドパラメータδは次のように関連している:
δ
2=δ
2d+δ
2P+δ
2H
【0037】
δ
d、δ
P及びδ
Hは、ポリアクリレートについて実験的に直接測定することはできないが、インクリメントシステムによって計算することができる。本明細書でも使用される−通常の方法は、Stefanis/Panayiotouによる(Prediction of Hansen Solubility Parameters with a New Group−Contribution Method; Int. J. Thermophys. (2008) 29:568−585; Emmanuel Stefanis, Costas Panayiotou(非特許文献2))。
【0038】
ポリアクリレートのハンセン溶解度パラメータを測定するために、ポリマー中の個々のモノマーを構成する構成要素の溶解度パラメータ、つまり、上述の文献における規定に従うポリマー鎖中の繰り返し単位(重合可能な二重結合を除き、代わりにそのポリマー鎖中に存在するような共有シグマ結合)に対して計算する。そのために、該構成要素中の各基について、分散割合(δ
D)、極性相互作用の割合(δ
P)及び水素ブリッジ結合のための割合(δ
H)を表集計分析する(Prediction of Hansen Solubility Parameters with a New Group−Contribution Method; Int. J. Thermophys. (2008), Tables 3 bis 6, Seiten 578 bis 582(非特許文献3)参照)。
【0039】
例:
ポリアクリル酸は、繰り返し単位、
−[−CH
2−CHCOOH−]
n−
を含み、Stefanis/Panayiotouのインクリメントシステムによれば、これは、対応する構成要素のハンセン溶解度パラメータ(CH
2−基、CH−基及びCOOH−基)、δ
D=17.7、δ
P=8.6及びδ
H=11.1を示す。
【0040】
ポリブチルアクリレートは、繰り返し単位、
−[−CH
2−CHCOO(CH
2)
3CH
3−]
n−
を含み、4個のCH
2−基、一つのCH−基、一つのCOO−基及び一つのCH
3−基により、対応する構成要素のハンセン溶解度パラメータは、δ
D=17.1、δ
P=8.6及びδ
H=6.5を示す。
【0041】
モノマー構成要素のハンセン溶解度パラメータの計算後、ポリアクリレート(コポリマー)の対応するハンセン溶解度パラメータの測定を行うことができる。アクリレートコポリマーの溶解度パラメータ(δ
D、δ
P、δ
H)は、個々のモノマー(構成要素)のモル割合から算出され、それから、ポリアクリレートの組成が算出され、その際、それぞれの値は、コポリマー中のモノマー構成要素のモル割合で乗じ、そしてそれから、寄与パラメータ(各モノマーのδ
D、δ
P、δ
H)が加算される。
【0042】
例として、ポリアクリレートは、97重量%のブチルアクリレート及び3重量%のアクリル酸からなり、これは、84.8モル%のブチルアクリレート及び5.2モル%のアクリル酸のモル組成に対応し、これは明らかである。
【0043】
【表1】
【0044】
均質な、混和性のポリマー混合物に対応する工程は次の通りである:各ポリマーのハンセン溶解度パラメータを、それぞれ、ポリマー成分のこのポリマーのモル割合で乗じ、それから寄与値を加算することで、ポリマー成分の各パラメータを得る。
【0045】
二つのポリマー成分1及び2(例えば、ポリマー成分A及びB)の差は、本明細書では、パラメータZで示される。
【0046】
ポリマー成分1のパラメータδ
d1、δ
p1及びδ
H1のそれぞれを、ポリマー成分2の対応するパラメータδ
d1、δ
p1及びδ
H1から差し引く。それぞれの差の値から、絶対量が得られ、そしてこのそれぞれを加算して全因子Zとする。
Z=|δ
d1−δ
d2|+|δ
p1−δ
p1|+|δ
H1−δ
H2|
【0047】
本発明により非常に適した一連のモノマーについて、添付の表3にそれぞれのハンセン溶解度パラメータを示すことにより、ポリマー成分の上記の値を用い、該ポリマーから形成されるポリマーが簡単に決定される。
【0048】
本発明によれば、特に好ましい感圧接着剤は、全ての成分それぞれの互いの差Zが、値1超を取ることを特徴とする。
【0049】
したがって、本発明のさらなる態様は、−最初に独立して、相分離の問題を考慮して−少なくとも60重量%(感圧接着剤に対して)のポリマーブレンドを含む感圧接着剤に関し、その際、該ポリマーブレンドが、第一のポリマー成分A、第二のポリマー成分B及び、場合によっては、一つ又は二つ以上の別のポリマー成分(C、D、…)からなり、その際、該第一のポリマー成分Aは、前記ポリマーブレンド中に少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)(ポリマーブレンドに対し)まで存在し、かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在している別のポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)(ポリマーブレンドに対し)まで存在し、その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマー由来であり、そして、その際、ポリマー成分A、B、C、…のそれぞれと、ポリマー成分A、B、C…の他方とのハンセン溶解度パラメータの差が少なくとも値1である。
【0050】
本発明により、特に好ましくは、室温で一方のポリマー成分(A、B、C、…)は、他方のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混合可能ではないため、多相系が存在することが、選択された差異の結果であると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ポリマーブレンドの組成
本発明の感圧接着剤は、それぞれが、少なくとも二つのポリマー成分−すなわち、第一のポリマー成分A及び第二のポリマー成分B−を有するポリマーブレンドを含み、該成分は、それぞれが一種又は二種以上のポリマーから、従来公知の重合−例えば、フリーラジカル重合又は制御ラジカル重合−によって得られる。原則的に、成分A及び成分Bのポリマー−並びに、場合によっては、存在する別のポリマー成分C、D、…−を製造するためのモノマーは、同じモノマーのプールから選択することができるが、ただし、成分が室温で互いに均一に混和しないようにそれらの選択が行われることを条件とする。
【0052】
ポリマー成分A、B、C、…のポリマーは、特に、ポリアクリレートベースのポリマー、つまり、少なくとも大部分−特に、60重量%超まで−がアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸、並びに、場合によっては、それの遊離酸がモノマー(以下において、“アクリルモノマー”と呼ぶ)であるポリマーである。ポリアクリレートは、好ましくは、フリーラジカル重合によって得られる。ポリアクリレートは、場合によっては、別の、非アクリル系の共重合可能なモノマーをベースとする更なる構成成分を含むことができる。ポリアクリレートは、ホモポリマー及び/又は特にコポリマーであることができる。“コポリマー”という語は、本発明の意味において、重合時に使用されたコモノマー樹脂が、ランダムに組み込まれたコポリマーも、そのコモノマー組成物における勾配した及び/又は個々のコモノマー種が局所的な蓄積したコポリマー、並びに、ポリマー鎖において一つのモノマーがブロック全体を構成しているコポリマーを含む。コモノマーシーケンスが交互する場合も考慮される。
【0053】
ポリアクリレートは、例えば、線状、分岐状、星形又はグラフト化構造であることができ、ホモポリマー又はコポリマーであることができる。
【0054】
有利には、ポリアクリレート−ベースポリマーの少なくとも一つのポリアクリレートの平均モル質量(重量平均M
W)は、いくつかのポリアクリレートが存在する場合、有利には、支配的なポリアクリレートの重量割合、特に、存在するポリアクリレートの全てが、250,000g/mol〜10,000,000g/molの範囲、好ましくは、500,000g/mol〜5,000,000g/molの範囲にある。
【0055】
特に好ましくは、ポリアクリレート成分の組成は、ポリアクリレート成分が、0℃以下、好ましくは、−20℃以下、特に好ましくは、−40℃以下のガラス転移温度(以下において、DDKと称す)を有するように選択される。
【0056】
コポリマーのガラス転移温度は、使用した成分の選択及び量的な組成;によって、Foxの式と同様に、次の等式G1において、ポリマーの適切なガラス転移点T
Gが与えられるように有利に選択することができる。
【0058】
式中、n=使用されたモノマーのシリアルナンバー、w
n=各モノマーの質量割合(重量%)、及びT
G,n=各モノマーnからなるホモポリマーの各ガラス転移温度(K)。ホモポリマーのガラス転移温度は、ホモポリマーのモル質量の所定の上限のモル質量まで、そのモル質量に依存する(本明細書においてモル質量が、この上限のモル質量を超える、つまり、ガラス転移温度一定範囲にあるようなポリマーに関して参照)。T
Gの測定は、架橋していない状態における溶媒の除去後(架橋剤の不存在下)で行われる。
【0059】
同じように、等式G1は、ポリマー混合物のガラス転移温度を測定して予測するのに使用することができる。それから、それが均質な混合物である限り、n=使用したポリマーのシリアルナンバー、Wn=各ポリマーnの質量割合(重量%)、及びT
G,n=ポリマーnそれぞれのガラス転移温度(K)。
【0060】
接着樹脂との混合によって、一般に、静的ガラス転移温度は高められる。
【0061】
本発明の意味において、特に有利には、ランダムコポリマーが使用可能である。ポリアクリレート成分の少なくとも一つのポリマー種は、有利に、非官能化されていないα,β−不飽和エステルをベースとする。コポリマー特性を有するポリアクリレート成分中の少なくとも一つのポリマーとしてこれが使用される場合、この少なくとも一つのポリマー種の製造時に、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの合成に使用される当業者に公知の全ての化合物をモノマーとして使用することができる。好ましくは、一般的な構造のα,β−不飽和アルキルエステルが使用される。
CH
2=C(R
1)(COOR
2) (I)
【0062】
式中、R
1=H又はCH
3、及びR
2=H又は1〜30個、特に、4〜18個の炭素原子を有する線状、分岐状又は環状の、飽和又は不飽和のアルキル残基である。
【0063】
本発明の接着剤のポリアクリレート成分のポリアクリレートの少なくとも一種のモノマーは、ガラス転移温度T
Gが、0℃以下、非常に好ましくは、最高で−20℃を有するようなホモポリマーである。これは、特に、アクリル酸と、10C以下の原子を有する線状アルコール又は少なくとも4C原子を有する分岐状のアルコールとのエステル、及びメタクリル酸と、8〜10C原子を有する線状のアルコール又は少なくとも10C原子を有する分岐状のアルコールとのエステルである。
【0064】
さらに、追加的なモノマーを使用することができ、そのホモポリマーが、0℃以下のガラス転移温度T
Gを有する。本発明の具体的な例として、好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、上述の化合物の分岐状の異性体、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−プロピルヘプチルアクリレートを含む群から選択される一種又は二種以上のメンバーである。
【0065】
さらに、ポリマー中の半結晶性部分を形成する傾向を有するモノマーを選択することができる。この挙動は、アルコール残基に、少なくとも12C原子、好ましくは、少なくとも14C原子を有する線状のアルキル残基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルで観察される。ここで、本発明によれば、例えば、ステアリルアクリレート及び/又はステアリルメタクリレートが特に有利に使用できる。
【0066】
さらに有利に使用可能なモノマーは、シクロアルキルアルコール残基中に少なくとも6C原子を有するブリッジしたシクロアルキルアルコールの単官能性のアクリレート及び/又はメタクリレートである。該シクロアルキルアルコールは、例えば、C
1−〜C
6−アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基で置換されていることもできる。具体的な例は、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート及び3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートである。
【0067】
ガラス転移温度を変化させるために、ポリアクリレートを製造するのに、そのホモポリマーが、高い静的ガラス転移温度を有するようなコモノマーを一部に使用することもできる。成分として、芳香族ビニル化合物、例えば、スチレンが適しており、その際、好ましくは、該芳香族の種が、C
4−〜C
18−構成要素を含み、また、ヘテロ原子を含むことも可能である。特に好ましい例は、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、4−ビフェニルアクリレート及び−メタクリレート、2−ナフチルアクリレートおよび−メタクリレート、並びにこの各モノマーからなる混合物であるが、このリストは網羅的ではない。
【0068】
アクリルモノマーに対するコモノマーとしては、さらに、アクリルモノマーと共重合可能なモノマーが例えば、40重量%以下の割合で使用できる。そのようなコモノマーは、原則的に、アクリレートに許容される共重合可能な二重結合を有する全ての化合物、例えば、ビニル化合物であることができる。そのようなビニル化合物は、全部又は一部が、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、芳香環及び複素環を有するビニル化合物、特にα位に二重結合する化合物を含む群から選択される。特に好ましく適したコモノマーは、例えば、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリルである。
【0069】
しかしながら、アクリルモノマーと共重合可能なその他の化合物をここでは使用可能である。
【0070】
効率的な架橋のために、ポリアクリレートの少なくとも一部が、本発明により使用される架橋材と反応することができる官能基を有する場合が特に有である。このために好ましくは、酸基を有するモノマー、例えば、アクリル酸基、スルホン酸基又はホスホン酸基を有するモノマー又は酸無水物構成要素を有するモノマーが使用される。
【0071】
ポリアクリレートに特に好ましいモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、β−アクリロイルプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、無水マレイン酸である。
【0072】
架橋
感圧接着剤としての適性のためのさらなる基準は凝集性である。通常、ポリマー材料は、接着時に粘着を促進するのに十分な凝集力を有し、かつ、接着箇所から流出してはならなり。適切な凝集力を高める方策、例えば、架橋反応(マクロ分子間にブリッジ形成リンクを形成すること)によって、そのポリマー材料が粘着特性を有するようになる温度範囲を調節、増大及び/又は移動することができる。それ故、材料の流動性と凝集性との間を調節することにより感圧接着剤の適用範囲を最適化することができる。
【0073】
特に好ましくは、本発明により、−特に、第一のポリマー成分Aによって形成される−少なくともマトリックス成分が架橋するように進行する。−特に、第二のポリマー成分B、場合によっては、任意に存在するさらなるポリマー成分の−さらなるポリマー成分のドメインも同様に架橋することができるが、架橋せずに存在する、つまり、さらに存在しているポリマー成分の架橋状態からそれぞれが互いに独立していることも可能である。
【0074】
本発明の感圧接着剤の最適な特性を得るために、これは非常に好ましい架橋である。しかしながら、既に示したように、少なくともマトリックス−ポリマー成分が架橋している場合、代替的に、又は追加的に、さらなる(ドメインとして存在している)ポリマー成分が架橋すること、つまり、場合によっては存在しているさらなるポリマー成分からそれぞれが互いに独立していることが有利である。
【0075】
本発明の感圧接着剤は、−面重量50g/m
2に対応する厚さを有する、最初に13mm×10mmの大きな面積片の感圧接着剤の40℃で15分間のせん断において、方法Fに従って、より長い伸長方向において1.0Nで負荷した際−そのマイクロせん断性が、100μm〜300μmである場合に、印刷ステロタイプを印刷シリンダー及び印刷スリーブ上に接着するのに、該印刷シリンダー又は印刷スリーブに対向する面上の特に、接着テープの接着剤層として(つまり、これらの基材との接着時に接触してさせて)使用するのに、特に適している。最良の特性は、本発明の接着剤が、架橋状態において、この点に関して上記に関連して、125μm〜250μmのマイクロせん断性を有する。
【0076】
上記の値は、適切な架橋剤を良好に決定した量で、特に、ほぼ完全に進行する架橋反応において使用することによって良好に調節することができる。
【0077】
適切な熱架橋材の添加によって、本発明の感圧接着剤は有利に熱架橋可能であり、それ故、化学活性可能な架橋剤、例えば、紫外光により活性化可能な架橋剤(UV架橋剤)を添加せずにすむ。熱架橋は、感圧接着剤に本質的に温和な条件下で遂行することができる。というのも、破壊的な効果の放射線の作用を回避することができるからである。
【0078】
しかしながら、個々の場合においてこのことが所望される場合、架橋は、それに続いて又は追加的に、化学線の照射によって作用させることも可能であり、その際、場合によっては、必要な又は促進性の架橋物質を添加することができる(例えば、UV架橋剤)。
【0079】
一般に、本発明の感圧接着剤は、熱架橋剤、つまり、熱エネルギーの影響下で架橋反応を可能にする(開始させる)及び/又は促進させるような物質を含む。
【0080】
−特に、上述の好ましい範囲に−架橋状態を調節することは、例えば、共有結合反応性架橋剤、特に、エポキシド、イソシアネート及び/又はアジリジンを使用することによって、及び/又は配位結合性架橋剤、特に、金属キレート、好ましくは、アルミニウムキレートを使用することによって引き起こすことができる。
【0081】
上述の架橋状態を達成するのに、金属キレート、特に、例えば、アルミニウム(III)−アセチルアセトネートの形態のアルミニウムキレートは、100重量部のポリマー成分(溶媒不含)に基づいて、それぞれ、好ましくは、0.15〜0.35重量部、特に好ましくは、0.2〜0.3重量部の量で使用される。
【0082】
さらに、非常に適した熱架橋剤は、例えば、第三級アミン官能基を含むエポキシド、特に、テトラグリシジルメタキシレンジアミン(N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン)である。上記で定義された架橋状態を達成するために、これらの化合物は、好ましくは、100重量部のポリマー成分(溶媒不含)に対して、それぞれ、0.03〜0.1重量部、特に好ましくは、0.04〜0.07重量部、例えば、0.06重量部の量で使用される。
【0083】
有利には、架橋反応が可能な限り完全に進行するように架橋する。ここで、架橋剤の少なくとも85重量%、好ましくは、少なくとも90重量%が、架橋反応の間に転換するのが有利である。架橋反応の対応する転換の場合に、感圧接着剤の上記で定義した架橋反応がそれぞれ実現できた。
【0084】
その場合、架橋した感圧接着剤の製造は、有利な方法で、対応する基礎となるモノマー混合物から、それぞれのポリマー成分のポリマーが、ラジカル重合によって製造されるように行われる。これらのポリマー成分は、引き続いて、密に混合される。重合の間又は好ましくは重合後、少なくとも一種の熱架橋剤、特に、上述した架橋剤の一種又は二種以上、就中、好ましくは、アルミニウム(III)−アセチルアセトネート又はテトラグリシジルメタキシレンジアミンを、特に、上述したそれぞれの量で添加する。−以下に示すように、本発明の感圧接着剤には一般に必要ではないが−さらなる添加剤が添加される場合、これらも同様にその際混合される。架橋剤と混合された感圧接着剤は、熱エネルギーの供給によって、その架橋状態が、125μm〜250μmの範囲の100μm〜300μmの範囲のマイクロせん断性に対応するような規模にわたって架橋する(上記を参照)。
【0085】
本発明の有利な実施形態
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリマーブレンドはポリマー成分A及びBだけから形成され、その結果、二成分系が存在する。
【0086】
第一のポリマー成分Aは、単一のポリマーにより形成することができ、これは、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、特に、本明細書に記載されたモノマーから重合される。
【0087】
あるいはまた、第一のポリマー成分Aは、二種又は三種以上のポリマーの均質な混合物、つまり、いくつかの互いに混合可能なポリマーから構成することができ、これらは、互いに独立して、それぞれホモポリマー又はコポリマーであることができる。有利には、これらのポリマーのいくつか又は好ましくは全てのうちの一つは、本明細書に記載のモノマーを基礎とする。
【0088】
第二のポリマー成分Bは、単一のポリマーにより形成することができ、これは、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、特に、本明細書に記載されたモノマーから重合される。
【0089】
あるいはまた、第一のポリマー成分Aは、二種又は三種以上のポリマーの均質な混合物、つまり、いくつかの互いに混合可能なポリマーから構成することができ、これらは、互いに独立して、それぞれホモポリマー又はコポリマーであることができる。有利には、これらのポリマーのいくつか又は好ましくは全てのうちの一つは、本明細書に記載のモノマーを基礎とする。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において、第一のポリマー成分A及び第二のポリマー成分Bは、それぞれ、アクリルベースの単一のコポリマーにより形成され、これらは、特に、感圧接着剤についての本発明の基準を満たすような組成である。
【0091】
本発明の別の好ましい実施形態において、該第一のポリマー成分Aは、二種又は三種以上の、アクリルベースのコポリマーの均質な混合物であり、第二のポリマー成分Bは、アクリルベースの単一コポリマーにより形成される。該ポリマー成分は、特に、感圧接着剤の本発明の基準を満たすような組成である。
【0092】
場合によっては存在するさらなるポリマー成分C、D、…もまた、互いに独立して、それぞれが、単一のホモポリマー又はコポリマーにより、又は、均質なポリマー混合物により実現することができる。第二のポリマー成分Bのために挙げた上記の成分それぞれが対応する。
【0093】
混合
好ましい方法で、−他の構成成分が実質的に存在しない−そのようなポリマー成分は、すでに感圧接着性である。本発明によれば、ポリマーブレンドは、少なくとも60重量%の感圧接着剤からなる。
【0094】
好ましい方法において、該ポリマーブレンドは、存在する架橋剤を差し引いて、組成の少なくとも98重量%、特に好ましくは、99.9重量%超が感圧接着剤からなる(すなわち、架橋剤を除く感圧接着剤の全構成成分。というのも、架橋剤は、通常、提供される添加剤不含であると考慮されるため、無視すべきであるからである)。特に好ましくは、100重量%の値が選択される(架橋剤の存在にもかかわらず、すぐ上記に記載のように。)。しかしながら、通常、感圧接着剤は、製造条件的に、使用されるモノマー等ではない、低割合の汚染物質を含む。
【0095】
有利な実施形態では、本発明の感圧接着剤は、−架橋剤の存在または不在にもかかわらず(上記参照)−樹脂不含及び/又はその他の添加剤不含である。
【0096】
粘着特性の微調整のために、又は架橋反応又は硬化反応に寄与する成分として、感圧接着剤は、しばしば、樹脂と混合される(接着付与性樹脂、反応性樹脂)。対照的に、本発明の感圧接着剤は、樹脂を混合することなく、卓越して実現することができ、これは定められた目的のための適合性に悪影響を及ぼすことがない。その際に、接着付与性樹脂、熱硬化性樹脂、さらには反応性の樹脂なしですませることができる。特に、樹脂の不存在は、接着テープの着脱後に、残留物なしの基板表面をもたらす、例えば、事前に接着された本発明の感圧接着テープは、再び除去された後に、好ましくは、残留物不含の印刷シリンダー又は印刷スリーブをもたらす。
【0097】
本明細書の範囲において、特に、数平均モル質量M
Wは、5,000g/mol以下であるオリゴマー化合物及び(低分子量)ポリマー化合物は樹脂と見なされる。当然ながら、本発明の感圧接着剤のポリマー成分を製造するための上記で定義されたモノマー混合物の重合時に生ずる短鎖重合生成物は、“樹脂”という語に包含されない。
【0098】
接着付与性樹脂−接着樹脂とも言う−は、しばしば、80〜150℃の範囲の軟化点を有するが、該定義はこの範囲に限定されるものではない。オリゴマー化合物及びポリマー化合物、例えば、樹脂の軟化点T
Eに対する情報は、規定の適した使用時に、DIN EN 1427:2007に準拠した環/球法に関連する(オリゴマー試料又はポリマー試料の検査は、ビチューメンに代えた以外は同じ方法で行われる)。測定は、グリセリン浴中で行われる。本発明による感圧接着剤において省略できるような樹脂は、例えば、天然樹脂及び/又は合成樹脂、ほんの数例挙げると、例えば、ピネン樹脂、インデン樹脂、ロジン及びロジン誘導体(ロジンエステル、例えば、不均化又は水素化によって安定化されたロジン誘導体)、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂肪族、芳香族及び脂肪−芳香族炭化水素樹脂である。
【0099】
感圧接着剤のさらなる構成成分であるような、官能基を有する反応性樹脂−例えば、ポリマー成分のマクロ分子又は他の反応性樹脂−は、適切な活性化により反応させることができる。
【0100】
しかしながら、これが望まれる場合、本発明の接着剤は、代替的な方法において、接着樹脂及び/又は反応性樹脂と混合することができる。
【0101】
本発明の感圧接着剤を最適化するために、それぞれの目的のために、当業者は、それぞれの一般的な添加剤を添加することができる。しかしながら、本発明の感圧接着剤の利点の一つは、特に、−別途述べた架橋剤を除いて−上述の使用目的のために、添加剤不含であることが非常に適していることである。それ故、−架橋剤の存在又は不在にかかわらず−感圧接着剤の有利な特性に悪影響を及ぼすことなく、他の添加剤の存在を省くことができる。それ故、特に、可塑剤、フィラー材料、特定の物理的特性を達成するための機能性添加剤(例えば、導電性フィラー材料、熱伝導性フィラー材料等)、難燃剤(例えば、ポリリン酸アンモニウムおよびその誘導体など)等の添加剤の混合を省くことができる。
【0102】
本発明の接着剤組成物は、可撓性の印刷プレートを取り外し可能に取り付けるのに特に適している。というのも、それによって印刷プレートが良好にかつ安全に固定することができる一方で、問題なく剥離することができる、すなわち、印刷プレートを、溶剤で清浄した場合でも、印刷インキの残滓で汚染されている。
【0103】
製造方法
本発明のさらなる態様は、感圧接着剤を製造する第一の方法に関し、その際、第一のポリマー成分Aを、少なくとも一種の第二のポリマー成分B、及び場合によっては、一種又は二種以上のさらなるポリマー成分(C、D、…)を密に混合し、その結果、ポリマーブレンドが得られ、これは、感圧接着剤の少なくとも60重量%を構成し、その際、該第一のポリマー成分Aは、該ポリマーブレンド中、少なくともx重量%存在しており、その際、90≦x≦99であり、その際、該第二のポリマー成分B及び場合によっては存在しているさらなるポリマー成分C、D、…は、該ポリマーブレンド中に、合計でy重量%存在しており、その際、y=100−xであり、その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%が、(メタ)アクリルモノマーに由来しており、そして、その際、ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)のいずれとも室温で均一に混合しないため、多相系が生ずる。
【0104】
感圧接着剤を製造するためのさらなる方法は、少なくとも第二のポリマー成分B、及び場合によっては一種又は二種以上のさらなるポリマー成分(C、D、…)を第一のポリマー成分Aと密に混合することによってポリマーブレンドを得、これは、感圧接着剤の少なくとも60重量%を構成し、その際、該第一のポリマー成分Aは、該ポリマーブレンド中、少なくともx重量%存在しており、その際、90≦x≦99であり、その際、該第二のポリマー成分B及び場合によっては存在しているさらなるポリマー成分C、D、…は、該ポリマーブレンド中に、合計でy重量%存在しており、その際、y=100−xであり、その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%が、(メタ)アクリルモノマーに由来している。この方法では、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、それぞれがモノマーの重合によって得られるそれらのポリマーを含み、その際、各ポリマー成分の該ポリマーのモノマーの組成は、各ポリマー成分A、B、C…の、他の各ポリマー成分A、B、C…とのハンセン溶解度パラメータの差Zが値1超であるように選択される。
【0105】
特に好ましくは、特に好ましくは、この方法の遂行により、室温で、ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和できないような感圧接着剤をもたらすため、多相系が生ずる。
【0106】
上述の方法は、本発明の感圧接着剤を、本明細書の範囲に示したような、それの基本的な形態又はそれ有利な実施形態で有利に利用できるように製造することができる。
【0107】
使用
本発明の対象は、さらに、本発明の感圧接着剤の使用−それぞれのそれの実施形態を含む−又は本発明の方法に従って製造された感圧接着剤を、印刷プレートを、特に、曲面上に接着するための使用である。
【0108】
印刷プレートは、有利に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなることができ、その上には少なくとも一層のフォトポリマーが施用されている。
【0109】
印刷プレートが接着される表面は、例えば、鋼、ポリウレタン又はガラス繊維−樹脂材料からなる。
【0110】
本発明の使用は、特に、印刷プレートを、印刷シリンダー又は印刷スリーブの部分のような表面上に接着することである。
【0111】
特に適しているのは、本発明感圧接着剤−それの実施形態のいずれも含む−又は本発明の方法に従って製造した感圧接着剤を、硝酸セルロース含有の印刷インキの使用下での印刷プロセスにおいて、特に、印刷プレートを曲面上、例えば、印刷スレーブ又は印刷シリンダー上に接着するために上記のように使用することである。
【0112】
本発明の感圧接着剤は、一般的な材料上に安全に接着するのに適しており、そして、残留物のない良好な再剥離性を特徴とする。これは、特に、非常に極性の基材について、従来技術による接着剤の場合、特に、より長い接着期間後に、これを該基材から剥離する場合には、一般に、残留物を残さずに再び剥離することができないという挙動を示す。
【0113】
非常に良好な可逆性、すなわち残留物のない剥離性は、表面エネルギーが45mN/m以上の基材についても、特に、48mN/m以上の範囲の表面エネルギーを有する材料、例えば、文献情報によれば、値50mN/mを有する鋼に対してさえも確認することができた。
【0114】
本発明の対象は、さらに、本発明の感圧接着剤を感圧接着テープ、特に、両面接着性の感圧接着テープの接着層としての使用、並びに、本発明の感圧接着剤の一つの層を含む、対応する感圧接着テープ、及び対応する接着テープ自体に関する。そのような接着テープは、特に、支持体、場合によっては、さらなる層及び二つの外部に存在する接着層を備えることができ、該外部に存在する接着層は、一時的に、−改善した取扱、貯蔵及び提供のために−一方又は両方の感圧接着層上に、一時的なカバー材−ライナーとも言う−と共に供給することができる。そのような両面感圧接着性を備えた接着テープの場合、二つの接着層を、本発明の感圧接着剤から形成することができる−特に、それの組成及び/又はそれの厚さ及び/又はそれの架橋状態において同じであることができる−か又は、本発明の感圧接着剤によって実現された接着層であることができる一方で、別の接着層は、他の感圧接着剤から選択され、それは、接着すべき基板に対応させて最適に調整することができる。感圧接着テープの支持材料として適しているのは、当業者に公知の慣用的なフィルム、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、一軸延伸ポリプロピレン(MOPP)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)などであり、その際、これらの材料はまた、発泡層としてそれぞれ使用することができる。支持体として、いくつかの層の組み合わせ−例えば、フィルム箔層と発泡層−も使用することができる。
【0115】
さらに、本発明の感圧接着剤は、他のテープ上の接着層、例えば、接着層からなる、単層の支持体のない接着テープ(“転写型接着テープ”)として使用できることも指摘される。
【0116】
上述したように、本発明の感圧接着剤は、可撓性の印刷プレートを曲面状に接着するために、特に、印刷プレート又はステロタイプを、印刷スリーブ又は印刷シリンダーに接着するために、特に、感圧接着テープの接着層として良好に使用することができる。プラスチック(上記を参照)上に可逆的に接着するための、本発明の感圧接着剤の好ましい適性により、この材料からなる印刷プレート又は印刷ステロタイプ上に接着するのにこれは特に適している。該接着剤は、他の材料に対する良好な特性も有するため、対応する感圧接着テープは、フレキソ印刷において使用する場合でも、非常に柔軟に使用することができる。それ故、本発明の感圧接着剤は、両面感圧接着テープの接着層として使用することができ、その際、本発明の感圧接着剤は、その接着時に、印刷プレート又はステロタイプに適合した接着層となる。上述したように、特に、両面感圧接着剤が使用される。その場合、支持材料として、発泡シート、例えば、ポリマー発泡体層が有利に使用される。そのため、特に、発泡ポリオレフィン−例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン−を使用することができ、特に好ましくは、ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル−発泡体が使用できる。さらに、例として、発泡ポリウレタン又は発泡ポリ塩化ビニルが使用できる。一般に、支持材料の表面をざらざらにするか又は事前処理することによって、感圧接着剤の固定を向上させることを企図することができる。ポリマー構造体の表面をざらざらにして、化学的に変更する方法は、支持材料を湿式化学的エッチングによって行われる。エッチング以外にも別の方法で事前処理することができる。例えば、支持材料の固定を改善するために、物理的及び化学的に事前処理することができる。物理的に処理するためには、フィルムを、好ましくは、フレーム又はコロナ又はプラズマで処理する。化学的な事前処理としては、支持材料にプライマーを供給し、その際、特に好ましい態様では反応性プライマーが使用される。プライマー材料としては、例えば、反応性プライマーが適している。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1a】
図1aは、本発明の接着テープの構造を示す図である。
【
図1b】
図1bは、本発明の接着テープの構造を示す図である。
【
図2】
図2は、印刷ステロタイプを、印刷シリンダー上及び印刷スリーブ上に、異なる種類及び方法で接着する一般的な方法を示す図である。
【
図3】
図3は、印刷ステロタイプを、印刷シリンダー上及び印刷スリーブ上に、異なる種類及び方法で接着する一般的な方法を示す図である。
【
図4】
図4は、印刷ステロタイプを、印刷シリンダー上及び印刷スリーブ上に、異なる種類及び方法で接着する一般的な方法を示す図である。
【0118】
その場合、本発明の接着テープの構造は、
図1a及び
図1bに示されるように、非常に好ましい層の順の実施形態に対応している。その際、本発明の感圧接着剤は、特に好ましくは、接着層9の意味において、つまり、これは、接着層に対向する印刷シリンダー又は印刷スリーブに、使用される。というのも、この利用目的に最適化されているからである。
【0119】
本発明の感圧接着剤の広い使用範囲のために、これは、印刷ステロタイプと接触する接着層としても適している。
【0120】
本発明による接着テープは、PETフィルム2及びフォトポリマーの層からなるステロタイプ1を接着するのに有利に利用される。
【0121】
層3及び層9は、−本発明による−両面接着性の、表面がざらざらのステロタイプ接着テープの外側にある接着層を形成し、これは、その支持体発泡層8のために圧縮性かつ弾性である。その際、本発明の感圧接着剤は、層3、又は層9、又は特に有利には二つの層3及び9の両方に使用することができる。
【0122】
特に、印刷業界では、ここで使用されるテープが高い可撓性を有することが重要である。つまり、圧力が与えられたときにある程度の厚さを変えることができるか、又は負荷が取り除かれた後に元の形状をとることができることである。
【0123】
また、支持体発泡層8がポリオレフィン、ポリ塩化ビニル又はポリウレタンからなる場合が有利である。特に好ましい一形態において、発泡ポリエチレン及び/又はポリプロピレンが使用される。さらに好ましくは、支持体発泡層8の表面が物理的に事前処理されており、その際、その事前処理のための物理的な方法が、コロナ事前処理、フレーム事前処理又はプラズマ事前処理の群から特に選択される。代替的又は追加的に、PETフィルム5及び/又はポリエチレンフィルム10の表面を物理的に事前処理することは有利である。
【0124】
通常“コロナ事前処理”と呼ばれる物理的な事前処理技術は、大抵、前処理技術は、通常、“誘電体バリア放電”(dielectric barrier discharge,DBD(英語))であり、その際、高周波交流電圧によって高電圧放電が生ずる。この場合、シート状の処理する基板は、二つの高電圧電極の間を通り、その際、電極の少なくとも一方は、誘電材料からなるか、又は誘電材料で被覆されている。その際、処理される材料は、電気放電に直接曝されるか、又は少なくとも、放電により生じた反応性ガスに直接曝される。その電気放電は、しばしば“コロナ放電”と呼ばれる。
【0125】
支持体の表面を事前処理するための方法としてのコロナ事前処理は、工業的に広く使用されている。プロセスガスとして、通常、周囲空気が利用される。例えば、窒素、二酸化炭素又は希ガスなどの空気以外のプロセスガスの使用が、従来技術として同様に知られている。
【0126】
あるいはまた、感圧接着層と支持体との間の接着強度を向上するために、支持体に対向する感圧接着層9の面を、特に、コロナ事前処理、フレーム事前処理又はプラズマ事前処理により、物理的に事前処理することができる。感圧接着剤の物理的な処理は、同様に、プロセスガスとしての空気中で有利遂行することができるが、プロセスガスとして、例えば、窒素、二酸化炭素又は希ガスが使用できる。例えば、窒素又は空気及び窒素からなる混合物が有利であることが判明している。
【0127】
感圧接着層9と発泡支持体8との間の接着力を高めるために、感圧接着層9及び発泡支持体8の両方を、複合体においてそれぞれが対向する面、又は、それぞれに対応する、下にあるPEフィルム10及び感圧接着層9の表面上で一緒にする前に、特に、上述の物理的な方法によって物理的に処理することが特に有利であることが判明している。その際、二つの層の事前処理方法は、互いに独立して選択することができ、好ましくは、同じ方法で事前処理され、特に好ましくは、コロナ事前処理を使って事前処理される。二つの層を、特に、コロナ事前処理を使って事前処理することによって、接着体の内部強度が著しく向上し、そして、すでに少量の本発明の感圧接着剤を使用する場合、基板(例えば、印刷シリンダー又は印刷スリーブ)から着脱する時に、最終的に残る接着テープの残留物は視認出来る程度に低減することができる。
【0128】
原則的に、物理的な方法で接着剤表面を処理することによって接着強度を増大させることができるということは、当業者にとって驚くことである。当業者は、これらの方法の全てが鎖の切断及び材料の分解を伴い、極性基の含有量の高い層が形成されると予想したため、内部結合の減少を予想していた。高められた極性を有する弱い粘着性の層によって、接着剤によるより改善された基板の濡れ性は、驚くべきことではないが、低減された接着特性は予想される。コロナ事前処理の処理強度は、“線量(Dosis)”として、[W*min/m
2]で与えられる(線量D=P/(b*v)、P=電力[W]、B=電極幅[m]、及びv=ウェブ速度[m/min])。
【0129】
コロナ事前処理は、好ましくは、1〜150W*min/m
2の線量で行われる。特に好ましくは、感圧接着層のために、10〜100W*min/m
2の線量、特に、40〜60W*min/m
2の線量である。発泡支持層のためには、好ましくは、より大きな線量が使用され、例えば、ここでは、50〜150W*min/m
2の線量であり、この場合、特に、80〜120W*min/m
2の線量と非常に有利である。
【0130】
好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムは、5μm〜500μm、好ましくは、5μm〜60μmの厚さを有し、特に好ましくは、12μm、19μm及び23μmである。
【0131】
図1aに示された製品構造以外に、安定化フィルムは、ポリオレフン、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルからなることができ、そして、エッチング以外の異なる方法で事前処理することができる。それ故、この場合、固定を改善するために、安定化フィルムは、物理的及び化学的に事前処理することができる。物理的な処理のために、好ましくは、フィルムをフレーム又はコロナ又はプラズマで処理する。化学的な事前処理のために、フィルムにはプライマーが提供され、その際、特に好ましい実施形態では、反応性−プライマーが使用される。プライマー材料としては、例えば、反応性プライマーが適している。さらに、この場合、−フィルム層に対して代替的に又は追加的に−隣接する、特に、上述した接着層9に相当する接着層を事前処理することもできる。
【0132】
さらに好ましい実施形態において、ポリエチレンテレフタレート又は別の材料からなる安定化フィルムは、片面又は両面を印刷される。この印刷は、後に適用される感圧接着剤の存在下で行うことができる。
【0133】
感圧接着剤7には、同様に、例えば、アクリレート感圧接着剤を使用することができるが、原則的に、他の接着剤種も使用可能である。
【0134】
さらに、本発明の接着テープは、片面又は両面に、特に、抗粘着性材料又は抗粘着性にコーティングされた材料からなるようなカバー材を設けることができる。これは、例えば、紙又は適当なフィルム−特に、それぞれ、片面又は両面をシリコーン処理されている−であることができる。これにより、より長期間の貯蔵及び使用の間の快適な取扱性が確保される。
【0135】
しかしながら、それ以外の接着テープ設計、例えば、従来技術から知られている特に、印刷ステロタイプ又は印刷プレートを印刷シリンダー上又は印刷スリーブ上に接着するための設計もまた、本発明により実現することができ、その際、本発明の感圧接着剤、特に、少なくとも接着層によって、シリンダー上又はスリーブ上への接着は実現される。
【0136】
その特別な特性に基づいて、本発明の両面接着性の表面をざらざらにした接着テープは、印刷プレート、特に−多層型の−フォトポリマー−印刷プレート(ステロタイプ)を、印刷シリンダー上及び印刷スリーブ(Sleeves)上に優良に固定するのに使用することができる。
【0137】
本発明の接着テープは、その好ましい実施形態、好ましくは、それによる、印刷プレート上への所定の接着力に基づいて、該印刷プレートは印刷シリンダー上に接着するのに適している。一方で、印刷開始前に印刷プレートを再配置することが可能であるが、他方で、印刷過程の間、該プレートを確実に堅固に接着しておくことが可能である。また、感圧接着テープからいかなる損傷なしに、塗料残滓により汚染された印刷プレートを取り除くことができる。取り除く間のプレートの支持層の剥離又は該プレート中の望ましくないしわの形成は起こらない。接着テープを印刷シリンダーから取り除いた後、残留物は全く残らない。
【0138】
印刷ステロタイプは、印刷シリンダー上及び印刷スリーブ上に、異なる種類及び方法で接着される。一般的な方法を
図2、
図3及び
図4に示す。
【0139】
図2によれば、ステロタイプ(11)は、接着テープ(12)を使って、印刷スリーブ(13)又は印刷シリンダー(13)の上に接着され、その際、該接着テープ(12)は、該ステロタイプ(11)よりも大きく、かつ、それにより、そのステロタイプ(11)の下方に、露出領域(20)が突出している。
図3における使用変形によれば、接着体の端部は接着テープ(12)及びステロタイプ(11)から同一平面上で互いに離間している、縁部(30)。
【0140】
図4によれば、ステロタイプ(11)を接着するために、印刷シリンダー(13)又は印刷スリーブ(13)の全周を接着テープ(12)で取り囲み;その際、接着テープの縁部は、互いに接する位置(40)である。複合的な剥離を防ぐために、印刷ステロタイプ(11)は、その縁部(位置41)が、接着テープの縁部(位置40)の箇所に存在しないように、接着テープ上に固定する。
【0141】
本明細書におけるこれらの使用形態は、例示的に示されるものであって、本発明の教示をそれらによって限定するものではない。
【0142】
本発明の接着テープは非常に良好な脱着挙動を示す。脱着挙動とは、本明細書の意味において、特に、問題の感圧接着層により接着テープを基板上に接着する時の即時の接着力であると理解され、良好な脱着挙動とは、小さい力での短時間の加圧で、つまり、それにより良好で信頼性のある粘着力がもたらされるものである。
【0143】
本発明の感圧接着剤は、特に、極性の基板上でかつ溶剤の影響下で、簡単な組み立て、再配置可能性、安全な停止の要求を満たす。さらに、それらは簡単で、残留物を残さない脱着性を特徴とする。本発明は特に、上述のように、フレキソ印刷における使用に特に適している。
本発明の特徴は次のとおりである。
1. 少なくとも60重量%のポリマーブレンドを含む感圧接着剤であり、
その際、該ポリマーブレンドが、第一のポリマー成分A、第二のポリマー成分B及び、場合によっては、一つ又は二つ以上の別のポリマー成分(C、D、…)からなり、
その際、該第一のポリマー成分Aは、前記ポリマーブレンド中に少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在し、
かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在している別のポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在し、
その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来している、感圧接着剤であって、
室温において、前記ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和性でなく、それによって、多相系が存在していることを特徴とする、上記の感圧接着剤。
2. 前記ポリマーブレンドが、前記感圧接着剤の少なくとも99.9重量%、特に、前記感圧接着剤の100%を構成していることを特徴とする、上記の特徴1に記載の感圧接着剤。
3. 前記第一のポリマー成分Aが、単一のポリマーからなることを特徴とする、上記の特徴1又は2に記載の感圧接着剤。
4. 前記ポリマー成分Aが、二種又は三種以上のポリマーからなる均質な混合物であることを特徴とする、上記の特徴1又は2に記載の感圧接着剤。
5. 前記ポリマーブレンドがポリマー成分A及びBだけから形成されていることにより、二相系が存在していることを特徴とする、上記の特徴1〜4のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
6. 前記ポリマー成分Bが、単一のポリマーからなることを特徴とする、上記の特徴1〜5のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
7. 前記ポリマー成分Bが、二種又は三種以上のポリマーからなる均質な混合物であることを特徴とする、上記の特徴1〜5のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
8. 感圧接着剤の製造方法であり、その際、第一のポリマー成分Aと共に、少なくとも第二のポリマー成分B、及び、場合によっては、一つ又は二つ以上のポリマー成分(C、D、…)が密に混合され、それにより、前記感圧接着剤の少なくとも60重量%を構成するポリマーブレンドが生成し、
その際、該第一のポリマー成分Aは、該ポリマーブレンド中少なくともx重量%(ここで、90≦x≦99)まで存在しており、
かつ、その際、該第二のポリマー成分B及び、場合によっては存在しているポリマー成分C、D、…は、前記ポリマーブレンド中に、合計でy重量%(ここで、y=100−x)まで存在し、
その際、各ポリマー成分(A、B、C、…)は、少なくとも60重量%までが(メタ)アクリルモノマーに由来しており、
室温において、前記ポリマー成分(A、B、C、…)のいずれも、他のポリマー成分(A、B、C、…)と均質に混和性でなく、それによって、多相系が存在していることを特徴とする、上記の方法。
9. 各ポリマー成分(A、B、C、…)が、それぞれが、モノマーの重合によって得られるポリマーを含み、その際、各ポリマー成分のポリマーのためのモノマーの組成は、各ポリマー成分A、B、C…の、他の各ポリマー成分A、B、C…とのハンセン溶解度パラメータの差Zが値1超であるように選択されることを特徴とする、上記の特徴8に記載の方法。
10. 前記感圧接着剤が架橋されることを特徴とする、上記の特徴8又は9に記載の方法。
11. 上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の感圧接着剤を製造するための、上記の特徴9又は10に記載の方法。
12. 上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の感圧接着剤、又は上記の特徴8〜11のいずれか一つに記載の方法によって製造された感圧接着剤の、印刷プレートを特に曲面上に接着するための使用。
13. 前記印刷プレートがポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、その上には少なくとも一つのフォトポリマーの層が設けられていることを特徴とする、上記の特徴12に記載の使用。
14. 上に前記印刷プレートが接着される前記表面が、鋼、ポリウレタンからなるか、又はガラス繊維−樹脂材料からなることを特徴とする、上記の特徴12又は13に記載の使用。
15. 上に前記印刷板が接着される前記表面が印刷シリンダー又は印刷スリーブの一部であることを特徴とする、上記の特徴12〜14のいずれか一つに記載の使用。
16. 硝酸セルロースを含有する印刷インキの使用下における印刷プロセスにおける、上記の特徴12〜15のいずれか一つに記載の使用。
【0144】
試験法
感圧接着複合材の製造
両面性の、シリコーン処理したザラザラした、構造化した表面を有するカバー材に、例の感圧接着剤を溶液から塗布する。これは、アクリル系接着剤へのライナー構造体の可能な限り最高の転写を実現する。
【0145】
120℃での15分の乾燥後、材料の塗布量は35g/m
2である。材料側は、塗布されたカバー材が、トリクロロ酢酸で両面をエッチングされた19μmの厚さのPETフィルムで積層されている。引き続いて、転写支持体の上に、市販のアクリレート剤で材料の塗布料20g/m
2で、又は接着剤に類似の特性を有する接着剤を、複合材のエッチングされたPETフィルムのコーティングされていない側上にラミネートし、そして、500μgの厚さ及び250kg/m
3の空間重量を有するPE−EVA発泡体をそこに積層する。この発泡支持体の上に、上記の複合材のコーティングしていない側上に転写支持体の上の市販のアクリレート感圧接着剤を、材料の塗布料60g/m
2でラミネートする(開放しているアクリレート感圧接着層)。
【0146】
ゲル浸透クロマトグラフィーGPC(方法A):
数平均分子量及び重量平均分子量のM
n及びM
w並びに多分散性PDの指示は、本明細書においては、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値に関する。その測定は、100μLの清澄ろ過サンプル(サンプル濃度4g/L)で行う。溶離剤として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸を有するテトラヒドロフランが使用される。測定は25℃で行う。プレカラムそして、カラム型PSS−SDV、5μm、10
3Å、ID8.0mm・50mmが使用される。分離には、それぞれが、ID8.0mm×300mmを有する型PSS−SDV、5μm、10
3Å並びに10
5Å及び106Åのカラムを使用する(Polymer Standards Service社のカラム;示差屈折計 Shodex RI71を使って検出)。流量は毎分1.0mLである。キャリブレーションは、PMMA標準(ポリメチルメタクリレート−キャリブレーション)に対して行われる。
【0147】
90°接着力試験(方法B):
接着力PETの測定は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験気候で行う。
【0148】
接着テープ試料の20mm幅の細片を、PETプレート上に適用する。このPETプレートは、事前にイソプロパノールで二回清浄化し、その後、溶媒が蒸発できるよう5分間空気中に放置する。
【0149】
4kgのおもり及び1000mm/分の圧延速度に相当する接触圧により、鋼製ロールで感圧接着剤の細片を基板上に10回押しつける。
【0150】
その後すぐに、300mm/分の速度及び基板から90°の角度でその接着テープを引き剥がす。
【0151】
測定結果はN/cm単位で示され、そして3回の測定から平均化される。
【0152】
NC試験(方法C):
接着力PETの測定は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験気候で行う。
【0153】
50μmの厚さのPETフィルムの20mm幅の細片二つを、エタノールで二回清浄化し、その後、溶媒が蒸発できるよう5分間空気中に放置する。
【0154】
エタノールで両面を清浄化しただけの細片をブラインド値とする。
【0155】
4kgのおもり及び1000mm/分の圧延速度に相当する接触圧により、鋼製ロールでPET細片を感圧接着剤上に10回押しつける。
【0156】
ニトロセルロース浴(エタノール中、0.1%濃度のNCの溶液)による二回の精製後、第二の細片(NC細片)を引き出して、20分空気中で吊り下げて乾燥させる。引き続いて、4kgのおもり及び1000mm/分の圧延速度に相当する接触圧により、鋼製ロールで該PET細片を感圧接着剤上に10回押しつける。
【0157】
二つのサンプルを、72時間、40℃で放置し、そして、それから、1時間、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度で空調する。
【0158】
300mm/分の速度及び基板から90°の角度でそのPET細片を引き剥がしてその接着力を測定する。
【0159】
必要とされる力の最大値を測定する。測定結果はN/cm単位で示され、そして3回の測定から平均化される。NC細片の接着力について得られた値を、ブランク値−細片に関連して評価する。
【0160】
接着力の変化(増加)は、パーセントで示される。本発明によれば、15%の最大の接着力の増加が有利である。
【0161】
エッジリフト(方法D):
図5についての比較
ニトロセルロース(NC)なし
エッジリフトの測定は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験気候で行う。
【0162】
調査する両面感圧接着複合材(22)から、250mm×160mmの寸法のサンプルを切り出す。このサンプルを、慣用的な、露出しているアクリレート感圧接着層により、110mmの径を有する鋼製シリンダー(23)上に、サンプルの短辺が、そのシリンダーの長手方向に配列するように接着する。引き続いて、本発明の感圧接着剤の層が露出するように、マスキング材料を除去する。そのようにして接着された感圧接着複合材サンプルの上に、長さ210mm×幅120mm×厚さ1.7mmの大きさの、全面露光した印刷プレート(21)(DuPont社のCyrel HOS)を、その本発明の感圧接着剤上に、その下に存在する感圧接着複合材のそれぞれのエッジが20mmはみ出すように接着する(感圧接着複合材サンプル上に中心的に適用)。ステロタイプ(Klischee)は、該感圧性接着複合材の上縁対して平行に配列する。その前に、そのステロタイプのPET側を、イソプロパノールで清浄化し、溶媒が完全に蒸発できるよう、5分空気で乾燥させる。
【0163】
引き続いて、ゴムロール(幅100mm、径30mm、ショア硬度A45)を用いて、ステロタイプの上縁から出発して圧延する。その圧延の動きは、印刷シリンダーの長手方向において起こり、そして、ステロタイプのそれぞれの長辺から対向して存在する該ステロタイプの長辺まで続き、そして、再び戻る。その際の圧延速度は、横方向において10m/分である。同時に、印刷シリンダーを、0.6m/分の表面速度で回転させることによって、印刷ステロタイプに相対して、そのステロタイプの第二の横方向のエッジに対する方向でゴムロールがジグザグ運動を描く。該感圧接着複合材上のステロタイプの着脱は、ステロタイプを完全に、かつ、エッジリフトなく固定するのに必要な、適当な加圧で行った。鋼製シリンダーを、そのようにして接着したサンプルと共に、所与の気候条件(40℃)で72時間放置する。
【0164】
ステレオタイプは、その回復動作に起因して、エッジリフティングする傾向がある。本発明の感圧接着剤のステロタイプ上への接着の耐性に依存して、鋼製シリンダーの長手方向に延びるステロタイプのエッジの剥離が示される。この挙動を評価するために、リフトしたステロタイプのエッジの長さLを、基材との最初の残存する接触点まで測定する(それぞれのステロタイプのエッジのリフトの最大値の測定;二つのエッジのそれぞれの評価からの平均値及び三回の測定)。
【0165】
本発明によれば、最大5mmのエッジリフトが有利である。
【0166】
ニトロセルロース(NC)あり
印刷インキ中のバインダーの影響に対する接着剤の耐性を評価するために、エタノール中0.1%濃度の硝酸セルロースの溶液を調製する。その試験のために、低粘度の“Walsroder(登録商標) Nitrocellulose”A400を使用し、これは、10.7%〜11.3%の窒素含有量及び1.89〜2.05の置換度を有する。
【0167】
長さ210mm×幅120mm×厚さ1.7mmの大きさを有するステロタイプを、イソプロパノールで清浄化し、そして、溶媒が完全に蒸発できるよう、5分間空気中に放置する。長さ30mm×幅30mm×厚さ2mmの大きさを有するパルプ片を使用して、該ステロタイプを3mlのNC溶液(0.1%NC及び99%エタノール)で塗工する。これは、細片において最初に水平に行われる。該ステロタイプが、その溶液により完全に架橋したことを確認することが重要である。該ステロタイプは、同じパルプ片を用いて、二回目に垂直方向で塗工される。
【0168】
引き続いて、そのステロタイプを1分間空気中に放置することで、溶媒が蒸発できる。該ステロタイプは、今や、NCを用いないステロタイプと同様に接着され、貯蔵され、そして評価される。
【0169】
本発明によれば、最大5mmのエッジリフトが有利である。
【0170】
着脱(方法E)
ニトロセルロース(NC)なし
エッジリフトの測定は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験気候で行う。
【0171】
調査する両面感圧接着複合材から、480mm×340mmの寸法のサンプルを切り出す。110mmの径を有する鋼製シリンダー上に存在する、露出しているアクリレート感圧接着層に、サンプルの長手方向における長辺が、そのシリンダーの長手方向に配列するようにこのサンプルを接着する。引き続いて、カバー材料を引き剥がして、本発明の感圧接着剤の層を露出させる。そのようにして接着した感圧接着複合材サンプルの上に、長さ420mm×幅330mm×厚さ1.14mmの大きさを有する、完全に露光した印刷プレート、DuPont社のCyrel HOSを、その下の感圧接着複合材が、垂直のステロタイプのエッジにおいて各20mmはみ出すように、該本発明の感圧接着剤の上に接着する(感圧接着複合材のサンプル上に中心的に適用)。該ステロタイプの中心が、該両面感圧接着複合材のギャップにまたがって配置されるように該ステロタイプは配列される。
【0172】
該ステロタイプのPET側は、事前にイソプロパノールで清浄化し、溶媒が完全に蒸発できるよう、5分間空気で乾燥放置する。
【0173】
引き続いて、ゴムロール(幅100mm、径30mm、ショア硬度A45)を用いて、ステロタイプの上縁から出発して圧延する。その圧延の動きは、印刷シリンダーの長手方向において起こり、そして、ステロタイプのそれぞれの長辺から対向して存在する該ステロタイプの長辺まで続き、そして、再び戻る。その際の圧延速度は、横方向において10m/分である。同時に、印刷シリンダーを、0.6m/分の表面速度で回転させることによって、印刷ステロタイプに相対して、そのステロタイプの第二の横方向のエッジに対する方向でゴムロールがジグザグ運動を描く。該感圧接着複合材上のステロタイプの着脱は、ステロタイプを完全に、かつ、エッジリフトなく固定するのに必要な、適当な加圧で行った。鋼製シリンダーを、そのようにして接着したサンプルと共に、40℃で72時間放置する。
【0174】
ニトロセルロース(NC)あり
長さ420mm×幅330mm×厚さ1.14mmの大きさのステロタイプは、PET側をイソプロパノールで清浄化し、溶媒が完全に蒸発できるよう5分間空気に放置する。長さ30mm×幅30mm×厚さ4mmの大きさを有するパルプ片を使用して、該ステロタイプを5mlのNC溶液(0.1%NC及び99%エタノール)で塗工する。これは、細片において最初に水平に行われる。該ステロタイプが、その溶液により完全に架橋したことを確認することが重要である。該ステロタイプは、同じパルプ片を用いて、二回目に垂直方向で塗工される。
【0175】
引き続いて、そのステロタイプを1分間空気に放置することで、溶媒が蒸発できる。該ステロタイプは、今や、着脱を評価するためのステロタイプと同様に接着され、そして40℃で72時間貯蔵される。
【0176】
両方のステロタイプを着脱に必要な、主観的に適用される力を判定する。着脱は、足部が肩幅的に互いに離間した直立した状態で行われる。鋼製シリンダーの長手方向に対して延びる辺において、ステロタイプを両手で扱い、そして、約300mm/分で鋼製シリンダーに対して横方向(径方向)に引き剥がす。
【0177】
力の分類は、当該専門分野で利用される評価スキームを描く。
【0178】
“+”で特徴付けられた力は、当業者が使用に許容できるものと見なされる。否定的な評価(“−”)は、最早、日常的な使用に許容できないものと考えられる。
【0179】
マイクロせん断試験(方法F)
この試験は、温度負荷下での接着テープのせん断強度の加速試験に役立つ。
【0180】
マイクロせん断試験のための試料の調製
接着テープから切り出したそれぞれの試料サンプル(長さ約50mm、幅10mm)を、アセトンで清浄化した鋼製試験プレート上に、その鋼製プレートが該接着テープの左右からはみ出し、かつ、該接着テープが、その試験プレートの上縁で2mmはみ出すように接着する。試料の接着面積は、高さ・幅=13mm・10mmである。それから、その接着箇所を、2kg−鋼製ロールで、10m/分の速度で6回圧延する。接着テープは、同一面で、安定な接着片で補強され、これは、トラベルセンサーの支持体として利用される。試料は、試験プレートを使って垂直に吊り下げられる。
【0181】
マイクロせん断試験:
測定する試料サンプルに、その下方端で300gのおもりで負荷をかける。試験温度は40℃であり、試験期間は30分(15分負荷及び15分脱負荷)である。一定温度での所与の試験期間後のせん断距離は、結果としてμmで示される、すなわち、最大値[“max”;15分間の負荷による最大のせん断距離];最小値[“min”;脱負荷後15分のせん断距離(“残部逸脱(Restauslenkung)”;脱負荷時に緩和によって復元移動する]。同様に、弾性率もパーセントで示される[“elast”;弾性率=(max−min)・100/max]。
【実施例】
【0182】
化学物質:
架橋剤:
Alキレート:Al−(III)−アセチルアセトネート(Sigma Aldrich社)
ニトロセルロース(NC):Walsroder(登録商標) Nitrocellulose A400
【0183】
別途示さない限り、以下に示されるパーセンテージは全て重量%である。
【0184】
ポリマー成分Iからなる接着剤、場合によっては、存在しているポリマー成分IIの組成物に関する量は、これらの成分により組み合わされた接着剤を全体として100重量%に基づく。
【0185】
架橋剤に関する量は、それぞれ、全てのポリアクリレート成分100重量部に基づく重量部(GT)で与えられる。
【0186】
例1
ポリアクリレートI(PA I)の製造
慣用的なラジカル重合のための300L反応器に、2.0kgのアクリル酸、30.0kgのイソボルニルアクリレート(BA)、68.0kgの2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)並びに72.4kgのベンジン/アセトン(70:30)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、50gのVazo(登録商標) 67を添加した。引き続いて、ジャケット温度を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、50gのVazo(登録商標) 67を添加した。3時間後に20kgのベンジン/アセトン(70:30)で、そして6時間後に10.0kgのベンジン/アセトン(70:30)で希釈した。残留開始物質を減少するために、5.5時間後及び7時間後のそれぞれに、0.15kgのPerkadox(登録商標) 16を添加した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして、室温に冷却した。GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=62,800g/mol;M
w=852,600g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=17.1、δ
p=6.5及びδ
H=4.9
【0187】
例2
ポリアクリレートII(PA II)の製造
蒸発冷却下でのラジカル重合に適切な、従来の2Lガラス反応器に、219gのエチルヘキシルアクリレート、60gのメチルアクリレート及び21gのアクリル酸を含む、300gのモノマー混合物、及び200gのアセトン:軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin)60/95(1:1)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、6gのアセトンに溶解した0.15gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル(Vazo 67(登録商標)、DuPont社)を添加した。引き続いて、外部の加熱浴を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、6gのアセトンに溶解した0.15gのVazo 67(登録商標)を添加した。3時間後に90gの軽質ベンジン 60:95で希釈した。5:30時間の反応時間後、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。7時間の反応時間後、さらに、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。10時間の反応時間後、90gの軽質ベンジン 60/95で希釈した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして室温に冷却した。
GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=52500g/mol;M
w=626000g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=17.0、δ
p=8.0及びδ
H=6.5
【0188】
例3
ポリアクリレート III(PA III)の製造
蒸発冷却下でのラジカル重合に適切な、従来の2Lガラス反応器に、130.5gのブチルアクリレート、130.5gのエチルヘキシルアクリレート、30gのメチルアクリレート及び15gのアクリル酸を含む、300gのモノマー混合物、及び200gのアセトン:軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin)60/95(1:1)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、6gのアセトンに溶解した0.15gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル(Vazo 67(登録商標)、DuPont社)を添加した。引き続いて、外部の加熱浴を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、6gのアセトンに溶解した0.15gのVazo 67(登録商標)を添加した。3時間後に90gの軽質ベンジン 60:95で希釈した。5:30時間の反応時間後、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。7時間の反応時間後、さらに、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。10時間の反応時間後、90gの軽質ベンジン 60/95で希釈した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして室温に冷却した。GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=98500g/mol;M
w=1515000g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=17.0、δ
p=8.2及びδ
H=6.4
【0189】
例4
ポリアクリレート IVの製造
蒸発冷却下でのラジカル重合に適切な、従来の2Lガラス反応器に、291gのエチルヘキシルアクリレート、9gのアクリル酸を含む、300gのモノマー混合物、及び200gのアセトン:軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin)60/95(1:1)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、6gのアセトンに溶解した0.15gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル(Vazo 67(登録商標)、DuPont社)を添加した。引き続いて、外部の加熱浴を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、6gのアセトンに溶解した0.15gのVazo 67(登録商標)を添加した。3時間後に90gの軽質ベンジン 60:95で希釈した。5:30時間の反応時間後、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。7時間の反応時間後、さらに、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。10時間の反応時間後、90gの軽質ベンジン 60/95で希釈した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして室温に冷却した。GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=56500g/mol;M
w=1037000g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=16.8、δ
p=7.1及びδ
H=5.2
【0190】
例5
ポリアクリレート V(PA V)の製造
蒸発冷却下でのラジカル重合に適切な、従来の2Lガラス反応器に、130.5gのブチルアクリレート、130.5gのエチルヘキシルアクリレート、30gのメチルアクリレート及び15gのアクリル酸を含む、300gのモノマー混合物、及び200gのアセトン:軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin)60/95(30:70)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、6gのアセトンに溶解した0.15gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル(Vazo 67(登録商標)、DuPont社)を添加した。引き続いて、外部の加熱浴を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、6gのアセトンに溶解した0.15gのVazo 67(登録商標)を添加した。3時間後に90gの軽質ベンジン 60:95で希釈した。5:30時間の反応時間後、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。7時間の反応時間後、さらに、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。10時間の反応時間後、90gの軽質ベンジン 60/95で希釈した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして室温に冷却した。GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=43500g/mol;M
w=730000g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=16.8、δ
p=7.1及びδ
H=5.1
【0191】
例6
ポリアクリレート VI(PA VI)の製造
蒸発冷却下でのラジカル重合に適切な、従来の2Lガラス反応器に、228gのエチルヘキシルアクリレート、60gのステアリルアクリレート及び12gのアクリル酸を含む、300gのモノマー混合物、及び200gのアセトン:軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin)60/95(1:1)を充填した。撹拌下で窒素ガスを45分間導入した後、その反応器を58℃に加熱し、そして、6gのアセトンに溶解した0.15gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル(Vazo 67(登録商標)、DuPont社)を添加した。引き続いて、外部の加熱浴を75℃に加熱し、そして、この外部温度で反応を一定に遂行した。1時間の反応時間後、さらに、6gのアセトンに溶解した0.15gのVazo 67(登録商標)を添加した。3時間後に90gの軽質ベンジン 60:95で希釈した。5:30時間の反応時間後、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。7時間の反応時間後、さらに、9gのアセトンに溶解した0.45gのビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を添加した。10時間の反応時間後、90gの軽質ベンジン 60/95で希釈した。24時間の反応時間後に反応を停止し、そして室温に冷却した。GPC(測定方法A)によるモル質量:M
n=77900g/mol;M
w=1334000g/mol
ハンセン溶解度パラメータ:δ
d=16.8、δ
p=6.6及びδ
H=4.8
【0192】
例7
上述の“
Herstellung eines Haftklebeverbundes”に記載されているようにして、例1と同様にして製造したPA Iを架橋剤溶液(アセトン中3重量%)と混合した。対応する接着テープ試料を、標準気候(23℃、50%の相対湿度)で一週間コンディショニングした。
【0193】
ポリマー成分PA Iを、Alキレートで架橋した(100GTのポリマー成分1に対して0.3重量部(GT))。
【0194】
例8〜27
例1と同様にして製造したPA I(ポリマー成分1)を、撹拌下で第二のポリマー成分と混合した。そのポリマー成分2及びポリマー成分1それぞれの量を表1に示す。引き続いて、上述の“
Herstellung eines Haftklebeverbundes”に記載されているようにして、そのポリマー混合物を架橋剤溶液(アセトン中3重量%)と混合した。対応する接着テープ試料を、標準気候(23℃、50%の相対湿度)で一週間コンディショニングした。
【0195】
そのポリマー混合物を、Alキレートで架橋した(ポリマー成分1+ポリマー成分2、100GTに対して0.3GT)。
【0196】
【表2】
【0197】
結果
本発明の例:8−10、12−14、16−18
反例(本発明により規定された要件を満たしていない):7、11、15、19−27
調査結果を表2に示す。
【0198】
それに加えて、本発明による接着剤の全ては硬化状態を有しており、これは、方法F後の、125μm〜250μmのマイクロせん断過程に対応する。
【0199】
既知の従来技術において、ポリアクリレート−感圧接着剤は一種のポリマー成分だけからなる。例7に示すように、ポリアクリレートにより、基本的に、良好な接着力でPET上に感圧接着性であり(方法F)、そして、良好な着脱(硝酸セルロースを用いない、方法E[NCと略す])時に有利なエッジリフト(方法D)が達成できる。しかしながら、硝酸セルロース含有の印刷インキによる印刷プロセスにおける対応する接着テープの使用時には、そのような感圧接着の場合に明らかな欠点が生ずる。例7は、51.3%のNC(方法C)に起因した接着力の増大を示しており、かつ、同時に、不利な着脱挙動を示す。
【0200】
予想外に、本発明によって設定された課題は、少なくとも二つのポリマー成分を含む接着剤によって達成される。
【0201】
示差走査熱量測定(Dynamic Scanning Calorimetry;DSC)及び/又は対応するサンプルのために有利な場合には、電子走査調査を使った調査により、本発明による感圧接着剤の全てが相分離して存在している一方で、1未満の差Zを有する材料(例20〜27)の全てがそうでなかったことが確認された。好ましくは、ポリマー成分は、ポリマー成分の差Zが少なくとも値1を取るように選択される。
【0202】
例20〜27の結果、二つのポリマー成分からなる、1未満の差Zの感圧接着剤は、設定された課題を解決できないことがわかる。上述の例において、少なくとも20%の硝酸セルロース(NC)による接着力の増大が確認される(方法C)。この有利ではない特性は、同様に、不利な着脱においても反映される(方法E)。
【0203】
当業者が驚くことに、二つのポリマー成分からなり、1超の差Zを有する感圧接着剤は、接着技術調査時に、NCと接触した際に不利な挙動を全く示すことがない。例8〜19は、最大でも14.6%のNC(方法C)による接着力の増大を示すことによってこれを証明している。さらに、着脱のための使用試験(方法E)において、有利な結果だけが確認可能である。加えて、方法BによるPET上の接着力は、例7の結果に比べて、影響を受けていない。着脱から、例8〜19では、方法Dによるエッジリフトの不利な傾向がわかる。>5mmという許容できないエッジリフトは、第二のポリマー成分の割合が15重量%の場合に現れる。例11、15、19は、それらの相分離にも拘わらず、それらの結果を示している(DSC又は電子顕微鏡)。それ故、本発明によれば、最大5mmの有利なエッジリフト(方法E)、方法D後の容易な着脱、及び有利に減少する、NCによる接着力の増大(方法C)に関して、例8〜10、12〜14、16〜18は有利さが際立っている。
【表3】
【表4】
【符号の説明】
【0204】
3 ステロタイプを固定するための感圧接着剤
4 事前処理した−特に、エッチング又はコロナ処理した−PETフィルム5の上面
5 ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム
6 事前処理した−特に、エッチング又はコロナ処理した−PETフィルム5の下面
7 支持体−発泡層8をPETフィルム5上に固定するための接着剤−特に、感圧接着剤−
8 支持体−発泡層、例えば、ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル発泡体
9 印刷シリンダー上に固定するための感圧接着剤
10 支持体−発泡層8のポリエチレン−フィルム(両面)