(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサカサ鈎を用いた仕掛けでは、仕掛けに繋がれたおとり鮎に対する拘束力は強いものではなく、おとり鮎は自由に遊泳することができる。そもそも、強く拘束されていては、おとり鮎の動きが悪くなり、野鮎を挑発する効果も弱まってしまうので、野鮎が掛け鈎に掛かるまでは、おとり鮎は自由に遊泳できることが望ましい。
【0005】
しかしながら、従来のサカサ鈎を用いた仕掛けでは、野鮎が掛かったあとはサカサ鈎がおとり鮎の体から外れるので、野鮎の抵抗のみならず、おとり鮎の抵抗および水流の負荷も加わる。このため、野鮎とおとり鮎の双方の抵抗をコントロールしながらの取り込みとなる。
【0006】
このときに様々なリスクが生じ、ときには水中糸切れに見舞われ、おとり鮎、野鮎共々失うことになり得る。
【0007】
そこで、本発明は、野鮎が掛かった後はおとり鮎への拘束力が働くことで、おとり鮎の抵抗を無力化でき、野鮎の取り込みが容易となるような仕掛けを容易に実現し、このような仕掛けのための友釣り用の仕掛具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様は、鼻カンおよび掛け鈎とともに鮎を友釣りするための仕掛けを構成する友釣り用の仕掛具に関する。本態様に係る友釣り用の仕掛具は、前記鼻カンから前記掛け鈎側へと延びるハリスが通される第1の通し部と、前記第1の通し部を通された後の前記ハリスが、鮎の体に巻かれた後に通される第2の通し部と、を備える。ここで、前記第2の通し部は、前記ハリスが通される孔部と、当該孔部の周縁側から当該孔部に前記ハリスを挿入させるための挿入部と、を含む。さらに、前記挿入部に関連して、前記ハリスを前記挿入部に導くための案内部が設けられる。
【0009】
上記の構成によれば、おとり鮎の頭部に鼻カンが装着され、鼻カンから延びて第1の通し部に通されたハリスがおとり鮎の体(たとえば、尾部)に巻きつけられた後に第2の通し部に通されることにより、鼻カンと掛け鈎との間に、仕掛具とハリスとによる輪が形成され、この輪によって鮎の体の全周が包囲される。おとり鮎は、鼻カンと輪によって仕掛けに繋がれる。
【0010】
この際、おとり鮎の体に巻かれた後のハリスを案内部で挿入部へと導き、挿入部を通じて第2の通し部の孔部に挿入することができるので、掛け鈎が繋がれた状態にあるために孔部の開口、即ち正面からは通せないハリスを、第2の通し部に容易に通すことができる。これにより、仕掛具とハリスとによる輪を、おとり鮎の体に簡単に掛けることができる。
【0011】
おとり鮎が仕掛けに繋がれているだけの状態にあるとき、鼻カンと輪との間のハリスおよび輪はある程度緩んだ状態にあるので、川に入れられたおとり鮎は、自由に遊泳できる。やがて、縄張りに侵入したおとり鮎を追って来た野鮎が掛け鈎に掛かる。野鮎が逃げようとすると、掛け鈎が野鮎に引っ張られて掛け鈎に繋がったハリスが引っ張られる。ハリスは、第1の通し部および第2の通し部において、通された方向に何ら拘束されていないので、輪の後段でハリスが引っ張られると、鼻カンと輪との間のハリスが、緊張した状態、即ち真っ直ぐに引っ張られた状態になるとともに、輪が縮まって、おとり鮎の体が輪で締め付けられた状態となる。これにより、おとり鮎は、緊張したハリスと締め付けられた輪とによって強く拘束された状態となり、その動きが封じられる。よって、掛かった野鮎を取り込む際には、野鮎の抵抗だけがコントロールされればよくなり、野鮎の取り込みが容易となる。
【0012】
このように、本態様に係る友釣り用の仕掛具によれば、野鮎の取り込みが容易となるような仕掛けを容易に実現することが可能となる。
【0013】
本態様に係る友釣り用の仕掛具において、鮎の体に固定可能な固定部を、さらに備えるような構成が採られ得る。
【0014】
上記の構成によれば、ハリスをおとり鮎の体に巻いて第2の通し部に通すときに、固定部によって仕掛具をおとり鮎の体に固定しておくことができるので、おとり鮎の体にハリスと仕掛具による輪を掛ける作業が行いやすくなる。
【0015】
上記のように固定部が備えられる場合、前記固定部は、鮎の体に刺し込み可能なフック状の鈎部を含むような構成とされ得る。
【0016】
このような構成とされれば、鮎の体に刺し込まれた鈎部によって仕掛具をおとり鮎の体にしっかりと固定できる。
【0017】
上記の構成とされた場合、さらに、前記案内部は、前記第1の通し部の孔部が開口する方向と直交する面に対して、交差する方向へ前記挿入部から延び、鮎の体に巻かれた前記ハリスを受けるような構成とされ得る。
【0018】
このような構成とされれば、仕掛具をおとり鮎の体に鈎部により装着し、ハリスをおとり鮎の体に巻き付けたときに、第1の通し部の孔部がおとり鮎の体の表面に密着するような状態となっても、おとり鮎の体に巻き付けられたハリスを案内部で受けやすくなる。よって、ハリスを一層容易に第2の通し部に通すことができ、仕掛具とハリスによる輪をおとり鮎の体に一層簡単に掛けることができる。
【0019】
あるいは、上記のように固定部が備えられる場合、前記固定部は、鮎の体に嵌め込み可能な凹湾曲部を含むような構成とされ得る。
【0020】
このような構成とされれば、凹湾曲部がおとり鮎の体に嵌め込まれるだけなので、おとり鮎の体がダメージを受けにくい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の友釣り用の仕掛具によれば、野鮎が掛かった後はおとり鮎への拘束力が働くことで、おとり鮎の抵抗を無力化でき、野鮎の取り込みが容易となるような仕掛けを容易に実現することが可能となる。
【0022】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
<第1実施形態>
まず、本発明の友釣り用の仕掛具の第1実施形態であるサカサ鈎型仕掛具1Aについて説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る、サカサ鈎型仕掛具1Aの構成を示す図である。
【0027】
サカサ鈎型仕掛具1Aは、鈎部10と、第1通し部20と、第2通し部30と、案内部40とを含む。サカサ鈎型仕掛具1Aは、弾性を有する断面円形の金属製の線材、たとえば、番手#26〜#28のピアノ線(炭素鋼の線材)を、所期の形状に折り曲げ加工することにより、これら鈎部10、第1通し部20、第2通し部30および案内部40を一体に形成したものである。このように、鈎部10、第1通し部20、第2通し部30および案内部40が一本の線材によって一体に形成されることにより、サカサ鈎型仕掛具1Aの製造が容易となる。
【0028】
鈎部10は、ほぼU字に湾曲する形状(フック状)を有し、その先端部である鈎先部11が尖っている。
【0029】
第1通し部20は、鈎部10の基端部12側に設けられ、鈎部10の鈎先部11側に張り出す。第1通し部20は、鈎部10の基端部12から連続する線材が、一回りするように曲げ加工されることによりリング状に形成され、円形の孔部21を有する。孔部21の大きさは、この孔部21に通される鼻カン側ハリス(後述する)の径よりも十分に大きいものとされる。孔部21の周縁は完全に閉鎖されており、鼻カン側ハリスは、孔部21の開口からしか孔部21に通すことができず、開口からしか孔部21から抜けない。
【0030】
第2通し部30は、第1通し部20を挟んで鈎部10と反対側に設けられる。第2通し部30は、第1通し部20から連続する線材が、その始端部30aから第1通し部20に対して離れる方向に延びた後に円弧を描くように折り返され、第1通し部20に対して近づく方向に延び、その終端部30bが始端部30aに接触するような細長いリング状に曲げ加工されることにより形成され、細長い孔部31を有する。孔部31の大きさは、この孔部31に通される鼻カン側ハリス(後述する)の径よりも十分に大きいものとされる。孔部31の周縁は、始端部30aと終端部30bの接触部分で切れた状態となっており、この部分が、孔部31の周縁側(孔部31の開口方向と直交する方向)から孔部31へ鼻カン側ハリスを挿入するための挿入部32となる。挿入部32は、通常は閉じており、鼻カン側ハリスが挿入されたときに、鼻カン側ハリスで始端部30aと終端部30bの間が拡げられることにより開放する。なお、始端部30aと終端部30bと間に僅かな隙間が設けられることにより、最初から挿入部32が開放されている構成が採られてもよい。
【0031】
案内部40は、挿入部32に関連して設けられ、第2通し部30の終端部30b、即ち挿入部32から第2通し部30に対して遠ざかるように斜め方向に延びる。案内部40は、鼻カン側ハリスを挿入部32へと導くためのものである。案内部40の先端部41は、鋭利にならないように、曲げ加工によって丸められた形状とされる。これにより、サカサ鈎型仕掛具1Aがおとり鮎に固定された状態において、案内部40の先端部41がおとり鮎の体に当たるようなことが生じても、おとり鮎の体が傷つきにくい。
【0032】
なお、案内部40は、長さが短すぎると鼻カン側ハリスを案内部40に引っ掛けにくくなり、長さが長すぎると他のものに引っ掛かりやすく邪魔になる。よって、案内部40の長さは、3mmないし5mm程度とされることが望ましい。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る、サカサ鈎型仕掛具1Aが用いられる、鮎の友釣り用の仕掛け100Aの一例を示す図である。
【0034】
仕掛け100Aは、サカサ鈎型仕掛具1Aの他、鼻カン2、ハリス止金具3および掛け鈎4を含む。鼻カン2から延びる鼻カン側ハリス5がハリス止金具3に固定され、掛け鈎4から延びる掛け鈎側ハリス6がハリス止金具3に固定される。鼻カン側ハリス5は、ハリス止金具3から外れないよう接着剤等を用いて強固に固定される。一方、掛け鈎側ハリス6は、ハリス止金具3に挟み込まれた状態で固定され、野鮎を釣り上げる際に作用する程度の力ではハリス止金具3から外れない。
【0035】
掛け鈎4には、たとえば、
図2に示すような、イカリタイプの掛け鈎が用いられ得る。縄張りに進入したおとり鮎を追い払おうとする野鮎が、掛け鈎4に引っ掛かり釣り上げられる。
【0036】
サカサ鈎型仕掛具1Aの第1通し部20に鼻カン側ハリス5が通される。このとき、鼻カン側ハリス5は、第1通し部20において、通された方向には何ら拘束されない。よって、サカサ鈎型仕掛具1Aは、鼻カン側ハリス5に沿って自由に移動できる。言い換えれば、鼻カン側ハリス5は、サカサ鈎型仕掛具1Aに対し、通された方向に自由に動くことができる。
【0037】
サカサ鈎型仕掛具1Aは、鼻カン2またはハリス止金具3が鼻カン側ハリス5に固定される前に、鼻カン側ハリス5に通される。上述の通り、鼻カン側ハリス5は、第1通し部20の孔部21からは孔部21の開口を通じてしか抜くことができないので、鼻カン2およびハリス止金具3が鼻カン側ハリス5に固定された後は、サカサ鈎型仕掛具1Aが鼻カン側ハリス5から外れない。
【0038】
図3(a)ないし(d)は、第1実施形態に係る、おとり鮎を仕掛け100Aに繋ぐ手順について説明するための図である。なお、
図3(a)ないし(d)では、便宜上、掛け鈎4と掛け鈎側ハリス6の図示が省略されているが、実際には、ハリス止金具3、即ち鼻カン側ハリス5に掛け鈎4が繋がっている。
【0039】
まず、
図3(a)のように、おとり鮎の頭部、具体的には鼻の孔に、鼻カン2が装着される。次に、
図3(b)のように、サカサ鈎型仕掛具1Aが、おとり鮎の尾部、たとえば、脂びれ付近の部分に固定される。このとき、鈎部10がおとり鮎の尾部に刺し込まれる。次に、
図3(c)のように、第1通し部20を通された後の鼻カン側ハリス5がおとり鮎の尾部に巻きつけられる。次に、
図3(d)のように、尾部に巻きつけられた後の鼻カン側ハリス5が第2通し部30に通される。このとき、鼻カン側ハリス5は、案内部40によって挿入部32へと導かれ、挿入部32を通じて孔部31に挿入される。これにより、掛け鈎4が繋がれているために孔部31の開口からは通すことができない鼻カン側ハリス5を、第2通し部30に容易に通すことができる。鼻カン側ハリス5は、第2通し部30において、通された方向には何ら拘束されず、サカサ鈎型仕掛具1Aに対し、通された方向に自由に動くことができる。
【0040】
こうして、サカサ鈎型仕掛具1Aと鼻カン側ハリス5とによる輪が形成され、この輪によって鮎の尾部の全周が包囲される。おとり鮎は、鼻カン2と輪によって仕掛け100Aに繋がれた状態となる。なお、おとり鮎の尾部に輪が掛けられた後は、鈎部10がおとり鮎の尾部から外れても、輪は維持されるので、問題とならない。
【0041】
図4(a)は、第1実施形態に係る、野鮎が掛け鈎4に掛かる前のおとり鮎に繋がれた仕掛け100Aの状態を示す図であり、
図4(b)は、第1実施形態に係る、野鮎が掛け鈎4に掛かった後のおとり鮎に繋がれた仕掛け100Aの状態を示す図である。
【0042】
図4(a)のように、おとり鮎が仕掛け100Aに繋がれているだけの状態にあるとき、鼻カン2と輪との間の鼻カン側ハリス5および輪はある程度緩んだ状態にあるので、川に入れられたおとり鮎はかなり自由に遊泳できる。やがて、縄張りに侵入したおとり鮎を追って来た野鮎が掛け鈎4に掛かる。
【0043】
掛かった野鮎が逃げようとすると、
図4(b)のように、掛け鈎4が野鮎に引っ張られ、掛け鈎4に掛け鈎側ハリス6とハリス止金具3とを介して繋がった鼻カン側ハリス5が引っ張られる。鼻カン側ハリス5は、第1通し部20および第2通し部30において、通された方向に何ら拘束されていないので、輪の後段で鼻カン側ハリス5が引っ張られると、鼻カン2と輪との間の鼻カン側ハリス5が、緊張した状態、即ち真っ直ぐに張られた状態になるとともに、輪が縮まって、おとり鮎の尾部が輪で締め付けられた状態となる。これにより、おとり鮎は、緊張した鼻カン側ハリス5と締め付けられた輪とによって強く拘束された状態となり、その動きが封じられて棒のようになる。よって、掛かった野鮎を取り込む際には、野鮎の抵抗だけがコントロールされればよくなり、野鮎の取り込みが容易となる。
【0044】
<第1実施形態の効果>
本実施の形態のサカサ鈎型仕掛具1Aによれば、鼻カン2や掛け鈎4とともに、野鮎の取り込みが容易となるような仕掛け100Aを容易に実現することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態のサカサ鈎型仕掛具1Aによれば、鼻カン側ハリス5をおとり鮎の尾部に巻いて第2通し部30に通すときに、鈎部10によってサカサ鈎型仕掛具1Aをおとり鮎の尾部に固定しておくことができるので、おとり鮎の尾部にサカサ鈎型仕掛具1Aと鼻カン側ハリス5による輪を掛ける作業が行いやすくなる。これにより、おとり鮎に仕掛け100Aを素早く装着できるようになるので、おとり鮎が弱りにくい。
【0046】
さらに、本実施の形態のサカサ鈎型仕掛具1Aによれば、鈎部10が鮎の尾部に刺し込まれることによって、サカサ鈎型仕掛具1Aがおとり鮎の体にしっかりと固定される。
【0047】
<第2実施形態>
次に、本発明の友釣り用の仕掛具の第2実施形態である鞍掛型仕掛具1Bについて説明する。
【0048】
図5は、第2実施形態に係る、鞍掛型仕掛具1Bの構成を示す図である。
【0049】
鞍掛型仕掛具1Bは、鞍部50と、第1通し部60と、第2通し部70と、案内部80とを含む。鞍掛型仕掛具1Bは、弾性を有する断面円形の金属製の線材、たとえば、番手#26〜#28のピアノ線(炭素鋼の線材)を、所期の形状に折り曲げ加工することにより、これら鞍部50、第1通し部60、第2通し部70および案内部80を一体に形成したものである。このように、鞍部50、第1通し部60、第2通し部70および案内部80が一本の線材によって一体に形成されることにより、鞍掛型仕掛具1Bの製造が容易となる。
【0050】
鞍部50は、線材が曲げ加工されることにより、五角形に近い凹湾曲形状に形成され、ほぼ逆V字状の第1部材51と、第1部材51の一端から下方に延びる第2部材52と、第1部材51の他端から下方に延びる第3部材53とを含む。第2部材52と第3部材53との間隔は、下方、即ち鞍部50の開口側に向かうに従って狭くなっている。第2部材52の先端部52aは、鋭利にならないように、曲げ加工によって丸められた形状とされる。これにより、鞍部50がおとり鮎の体に嵌め込まれたときに、第2部材52の先端部52aでおとり鮎の体が傷つきにくい。第3部材53は、第2通し部70の一部として共用される。なお、鞍部50は、凹湾曲形状であれば、
図5のような形状でなくともよく、たとえば、ほぼ逆U字形状であってもよい。
【0051】
第1通し部60は、鞍部50の第2部材52の下部に設けられ、鞍部50の外側に張り出す。第1通し部60は、上記第1実施形態の第1通し部20と同様な構成とされ、第2部材52を構成する線材が、一回りするように曲げ加工されることによりリング状に形成され、円形の孔部61を有する。孔部61の大きさは、この孔部61に通される鼻カン側ハリス5の径よりも十分に大きいものとされる。孔部61の周縁は完全に閉鎖されており、鼻カン側ハリス5は、孔部61の開口からしか孔部61に通すことができず、開口からしか孔部61から抜けない。
【0052】
第2通し部70は、第1通し部60と反対側に設けられる。第2通し部70は、上記第1実施形態の第2通し部30と同様な構成とされ、細長いリング状に形成され、細長い孔部71と、孔部71の周縁側(側方)から孔部71へ鼻カン側ハリス5を挿入するための挿入部72とを有する。孔部71の大きさは、この孔部71に通される鼻カン側ハリス5の径よりも十分に大きいものとされる。挿入部72も、上記第1実施形態の挿入部32と同様、通常は閉じており、鼻カン側ハリス5が挿入されたときに開放するが、最初から開放されている構成であってもよい。
【0053】
案内部80は、上記第1実施形態の案内部40と同様な構成とされ、挿入部72から第2通し部70に対して遠ざかるように斜め方向に延び、その先端部81が、鋭利にならないように、曲げ加工によって丸められた形状とされる。案内部80の長さも、上記第1実施形態の案内部40と同様、3mmないし5mm程度とされることが望ましい。
【0054】
図6は、第2実施形態に係る、鞍掛型仕掛具1Bが用いられる、鮎の友釣り用の仕掛け100Bの一例を示す図である。
【0055】
仕掛け100Bは、上記第1実施形態の仕掛け100Aのサカサ鈎型仕掛具1Aに替えて鞍掛型仕掛具1Bが用いられたものである。
【0056】
鞍掛型仕掛具1Bの第1通し部60に鼻カン側ハリス5が通される。このとき、鼻カン側ハリス5は、第1通し部60において、通された方向には何ら拘束されず、鞍掛型仕掛具1Bに対し、通された方向に自由に動くことができる。また、鞍掛型仕掛具1Bは、鼻カン2またはハリス止金具3が鼻カン側ハリス5に固定される前に鼻カン側ハリス5に通され、鼻カン2およびハリス止金具3が鼻カン側ハリス5に固定された後は鼻カン側ハリス5から外れない。
【0057】
図7(a)ないし(c)は、第2実施形態に係る、おとり鮎を仕掛け100Bに繋ぐ手順について説明するための図である。なお、
図7(a)ないし(c)では、便宜上、掛け鈎4と掛け鈎側ハリス6の図示が省略されているが、実際には、ハリス止金具3、即ち鼻カン側ハリス5に掛け鈎4が繋がっている。
【0058】
おとり鮎の頭部に鼻カン2が装着され後、
図7(a)のように、鞍掛型仕掛具1Bが、おとり鮎の尾部、たとえば、脂びれ付近の部分に固定される。このとき、鞍部50がおとり鮎の尾部に嵌め込まれる。上述の通り、鞍部50は、その開口側に向かうに従って幅が狭くなっているため、開口側が押し拡げられた状態となっており、戻ろうとする力によっておとり鮎がしっかりと挟み込まれる。
【0059】
次に、
図7(b)のように、第1通し部60を通された後の鼻カン側ハリス5がおとり鮎の尾部に巻きつけられる。次に、
図7(c)のように、尾部に巻きつけた後の鼻カン側ハリス5が第2通し部70に通される。このとき、鼻カン側ハリス5は、案内部80によって挿入部72へと導かれ、挿入部72を通じて孔部71に挿入される。これにより、掛け鈎4が繋がれているために孔部71の開口からは通すことができない鼻カン側ハリス5を、第2通し部70に容易に通すことができる。鼻カン側ハリス5は、第2通し部70において、通された方向には何ら拘束されず、鞍掛型仕掛具1Bに対し、通された方向に自由に動くことができる。
【0060】
こうして、鞍掛型仕掛具1Bと鼻カン側ハリス5とによる輪が形成され、この輪によって鮎の尾部の全周が包囲される。おとり鮎は、鼻カン2と輪によって仕掛け100Bに繋がれた状態となる。なお、おとり鮎の尾部に輪が掛けられた後は、鞍部50がおとり鮎の尾部から外れても、輪は維持されるので、問題とならない。
【0061】
図8(a)は、第2実施形態に係る、野鮎が掛け鈎4に掛かる前のおとり鮎に繋がれた仕掛け100Bの状態を示す図であり、
図8(b)は、第2実施形態に係る、野鮎が掛け鈎4に掛かった後のおとり鮎に繋がれた仕掛け100Bの状態を示す図である。
【0062】
図8(a)のように、おとり鮎が仕掛け100Bに繋がれているだけの状態にあるとき、鼻カン2と輪との間の鼻カン側ハリス5および輪はある程度緩んだ状態にあり、おとり鮎はかなり自由に遊泳できる。一方、掛け鈎4に野鮎が掛かり、掛かった野鮎が逃げようとすると、
図8(b)のように、掛け鈎4が野鮎に引っ張られて鼻カン側ハリス5が引っ張られる。すると、鼻カン2と輪との間の鼻カン側ハリス5が、緊張した状態、即ち真っ直ぐに張られた状態になるとともに、輪が縮まって、おとり鮎の体が輪で締め付けられた状態となる。これにより、おとり鮎は、緊張した鼻カン側ハリス5と締め付けられた輪とによって強く拘束された状態となり、その動きが封じられて棒のようになる。よって、掛かった野鮎を取り込む際には、野鮎の抵抗だけがコントロールされればよくなり、野鮎の取り込みが容易となる。
【0063】
<第2実施形態の効果>
本実施の形態の鞍掛型仕掛具1Bによれば、鼻カン2や掛け鈎4とともに、野鮎の取り込みが容易となるような仕掛け100Bを容易に実現することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態の鞍掛型仕掛具1Bによれば、鼻カン側ハリス5をおとり鮎の尾部に巻いて第2通し部70に通すときに、鞍部50によって鞍掛型仕掛具1Bをおとり鮎の尾部に固定しておくことができるので、おとり鮎の尾部に鞍掛型仕掛具1Bと鼻カン側ハリス5による輪を掛ける作業が行いやすくなる。これにより、おとり鮎に仕掛け100Bを素早く装着できるようになるので、おとり鮎が弱りにくい。
【0065】
さらに、本実施の形態の鞍掛型仕掛具1Bによれば、鞍部50がおとり鮎の体に嵌め込まれるだけなので、おとり鮎の体がダメージを受けにくい。
【0066】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0067】
上記第1実施形態において、第1通し部20の孔部21および第2通し部30の孔部31は、鼻カン側ハリス5を通すことができれば、如何なる形状であってもよい。同様に、上記第2実施形態において、第1通し部60の孔部61および第2通し部70の孔部71も、鼻カン側ハリス5を通すことができれば、如何なる形状であってもよい。
【0068】
また、上記第1実施形態において、案内部40は、鼻カン側ハリス5を第2通し部30の挿入部32に導くことができれば、如何なる形状であってもよい。同様に、上記第2実施形態において、案内部80も、鼻カン側ハリス5を第2通し部70の挿入部72に導くことができれば、如何なる形状であってもよい。
【0069】
さらに、上記第1実施形態および上記第2実施形態では、サカサ鈎型仕掛具1Aと鼻カン側ハリス5とによる輪および鞍掛型仕掛具1Bと鼻カン側ハリス5とによる輪が、おとり鮎の尾部に掛けられたが、おとり鮎の胴部における尾部に近い部分、たとえば、尻びれよりも少し前側の部分に掛けられてもよい。
【0070】
さらに、上記第2実施形態において、おとり鮎のサイズが大きく異なっても対応できるよう、鞍部50の大きさが異なる複数種類の鞍掛型仕掛具1Bを製造することもできる。
【0071】
さらに、上記第1実施形態のサカサ鈎型仕掛具1Aを
図9に示すような構成に変更することができる。
図9(a)および(b)は、変更例に係る、サカサ鈎型仕掛具1Cの構成を示す図であり、
図9(a)は側面図、
図9(b)は正面図である。
【0072】
本変更例のサカサ鈎型仕掛具1Cは、案内部40の向きが上記第1実施形態のサカサ鈎型仕掛具1Aと異なる。即ち、サカサ鈎型仕掛具1Cでは、図示の通り、案内部40が第1通し部20の孔部21が開口する方向Pと直交する面Dに対して、交差する方向、たとえば、ほぼ直交する方向に挿入部32から延び出す。なお、上記第1実施形態のサカサ鈎型仕掛具1Aは、案内部40が、直交する面Dに対して平行な方向に延び出すものとされた。
【0073】
図10は、変更例に係る、サカサ鈎型仕掛具1Cをおとり鮎の尾部に装着し、鼻カン側ハリス5を尾部に巻き付けた状態を示す図である。なお、
図10では、おとり鮎の尾部が断面で示されている。
【0074】
図10に示すように、サカサ鈎型仕掛具1Cをおとり鮎の尾部に鈎部10により装着し、鼻カン側ハリス5を尾部に巻き付けたとき、第1通し部20は、白抜き矢印に示すように、鼻カン側ハリス5の輪の内側に引かれるため、第1通し部20の孔部21が、尾部(鮎の体)の表面に密着する状態となりやすい。このような状態となった場合、本変更例の構成では、図示のように、案内部40がおとり鮎の尾部からは離れる方向に延び出す状態となるため、おとり鮎の尾部に巻き付けられた鼻カン側ハリス5を案内部40で受けやすくなる。よって、鼻カン側ハリス5を一層容易に第2通し部30に通すことができ、サカサ鈎型仕掛具1Cと鼻カン側ハリス5による輪をおとり鮎の体に一層簡単に掛けることができる。
【0075】
なお、本変更例のサカサ鈎型仕掛具1Cにおいて、案内部40は、サカサ鈎型仕掛具1Cを正面から見たときに、
図9(b)のように第1通し部20および第2通し部30に対して右方向へ延び出すのではなく、第1通し部20および第2通し部30に対して左方向に延び出すような構成とされてもよい。この場合、たとえば、サカサ鈎型仕掛具1Cが、おとり鮎の尾部において、
図10に示す側とは反対側に装着され、鼻カンハリス5が巻かれる方向が反対方向とされる。
【0076】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。