【実施例】
【0033】
(例1〜4)
例1〜4に使用された材料として、フュームドSiO
2(Cab−O−Sil、HS−5、310m
2g
−1)、NaOH(99.995%、Sigma Aldrich)、FAU(CBV780、Zeolyst、H−FAU、Si/Al=40)、BEA(CP811E−75、Zeolyst、H−BEA、Si/Al=37.5)、臭化テトラプロピルアンモニウム(TPABr、98%、Sigma Aldrich)、NaAlO
2(無水、Riedel−de Haen、工業用)、Al(NO
3)
3・9H
2O(>98%、Strem Chemical)、NH
4F(>98%、Fluka)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、98%、Sigma Aldrich)、[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2(99.99%、Alfa Aesar)、[Rh(NH
2CH
2CH
2NH
2)
3]Cl
3・3H
2O(≧99.5%、Aldrich)、RuCl
3(45−55重量%Ru、Sigma Aldrich)、Ludox AS−30コロイダルシリカ(H
2O中30重量%懸濁液、Sigma Aldrich)、[Ru(NH
3)
6]Cl
3(98%、Aldrich)、トルエン(≧99.9%、Aldrich)、1,3,5−トリメチルベンゼン(98%、Aldrich)、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン(98%、Aldrich)、He(99.999%、Praxair)、空気(Air)(99.999%、Praxair)、0.5%O
2/He(99.999%、Praxair)、9%H
2/He(99.999%、Praxair)、及びH
2(99.999%、Praxair)が挙げられ、これらは受け取った状態で使用された。
【0034】
ZSM−5種結晶
典型的な合成において、水649g、1molL
−1NaOH(Baker Reagent)740g、臭化テトラプロピルアンモニウム(Kodak Chemicals)98gをLudox AS−30コロイダルSiO
2(Dupont)872gに添加した。次いで合成混合物をハステロイでライニングされたステンレス鋼製オートクレーブ(3.8L)に移し、圧力試験を行い、対流式オーブン内で回転(78rpm)の下、423Kで4日間保持した。4日後、オートクレーブを冷却し、結果として得られた個体をろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水で洗浄した。結果として得られた生成物は、結晶質MFI(Si/Al〜300)であり、粉末X線回折により確認された。
【0035】
(例1)
典型的な合成において、NaOH水溶液にゼオライトBEA(Si/Al=37.5)又はFAU(Si/Al=40)を添加(0.5〜1.0g)し、ここへMFI種結晶又は構造規定剤(TPABr)を添加し、下記表1に記載されるモル組成を有する最終混合物を調製した。これらの混合物を密封されたポリプロピレン容器(Nalgene、125cm
3)内に入れ、周囲温度で1時間、マグネチックスターラーで激しく攪拌(400rpm)することにより均質化した。次いで混合物をテフロン(登録商標)でライニングされたステンレス鋼製オートクレーブに移し、静的条件下で、423Kで24〜40時間保持した。結果として得られた固体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水(抵抗率17.9MΩ)で洗浄した。試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理し、結果として得られた生成物の固体収率を、以下の数式(1)として定義した。
【数1】
【0036】
次いで、結果として得られた生成物を空気中(1.67cm
3g
−1s
−1)で0.03Ks
−1で623Kまで加熱し、この温度で3時間保持した。直接ゼオライト転換、テンプレート介在(template−assisted)ゼオライト転換、及び種結晶介在(seed−assisted)ゼオライト転換における、処理後の試料を、BEAから合成した場合はMFI
B、MFI
B−T、MFI
B−Sと、FAUから合成した場合はMFI
F、MFI
F−T、MFI
F−Sと、それぞれ表した。
【表1】
【0037】
(例2)
353Kで8時間、マグネチックスターラーで攪拌(400rpm)することで、[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2、[Rh(NH
2CH
2CH
2NH
2)
3]Cl
3・3H
2O、又は[Ru(NH
3)
6]Cl
3水溶液(金属含有量〜1重量%を達成するため、H
2O:ゼオライト質量比10:1)からのイオン交換により、BEA又はFAU内に内包された金属(M=Pt、Ru、Rh)を調製した。得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水で洗浄した。次いで、これらの試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理し、空気中(1.67cm
3g
−1s
−1)で0.03Ks
−1で623Kまで加熱し、3時間保持した。次いで、9%H
2/He流(1.67cm
3g
−1s
−1)に金属前駆体を接触させ、0.03Ks
−1で573Kまで加熱し、2時間保持した。この処理の後、周囲空気にさらす前に、0.5%O
2/He流(1.67cm
3g
−1s
−1)中で、室温で1時間、試料を不動態化した。BEA及びFAUから合成された、結果として得られた処理後の試料を、M/BEA及びM/FAU(M=Pt、Ru、Rh)とそれぞれ表した。
【0038】
(例3)
MFI内への金属クラスターの内包が、本発明に従い、M/BEA試料を親ゼオライトとして用いて、M/BEA(M=Pt、Ru)のゼオライト転換によって、達成された。M/BEA(M=Pt、Ru)試料(0.5〜1.0g)をNaOH水溶液に添加し、表1に記載されるモル組成を有する混合物を調製した。これらの混合物を密封されたポリプロピレン容器(Nalgene、125cm
3)内に入れ、周囲温度で1時間、マグネチックスターラーで激しく攪拌(400rpm)することにより均質化した。次いで混合物をテフロン(登録商標)でライニングされたステンレス鋼製オートクレーブへ移し、静的条件下で、423Kで30時間保持した。結果として得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水で洗浄した。次いで、これらの試料を373Kで一晩、周囲空気中で処理し、空気中(1.67cm
3g
−1s
−1)で0.03Ks
−1で623Kまで加熱し、3時間保持した。次いで、9%H
2/He流(1.67cm
3g
−1s
−1)に金属前駆体を接触させ、0.03Ks
−1で623Kまで加熱し、2時間保持した。この処理の後、周囲空気にさらす前に、0.5%O
2/He流(1.67cm
3g
−1s
−1)中で、室温で1時間、試料を不動態化した。M/BEA親ゼオライトのゼオライト転換を介して合成された、結果として得られた処理後の試料を、M/MFI
B(M=Pt、Ru)と表した。
【0039】
(例4)
MFI内への金属クラスターの内包が、M/FAU試料を親ゼオライトとして用いて、M/FAU(M=Pt、Ru、Rh)のゼオライト転換によっても達成された。M/FAU(M=Pt、Ru、Rh)試料(0.5〜1.0g)を、10重量%のMFI種結晶(親FAUに対する重量%)と共に、NaOH水溶液に添加して、表1に記載されるモル組成を有する混合物を調製した。その後の合成及び処理工程は、全てM/BEA試料のゼオライト転換を介して合成されたM/MFI
B試料に関して記載されたものと同じである。M/FAU親ゼオライトのゼオライト転換を介して合成された、結果として得られた処理後の試料を、M/MFI
F(M=Pt、Ru、Rh)と表した。
【0040】
例1〜4の構造的特性評価
生成物ゼオライトの同定及び相純度並びに大きな金属クラスターが存在しないことを、粉末X線回折(CuKα線、λ=0.15418nm、40kV、40mA、Bruker D8 Advance)により実証した。5〜50°の2θ値について、スキャン時間2秒、0.02°間隔で、回折図を測定した。誘導結合プラズマ原子発光分光分析(IRIS Intrepid分光計、Galbraith Laboratories)により、Si、Al、Na及び金属(Pt、Ru又はRh)含有量を測定した。容積法を用いて、H
2化学吸着取込量により金属クラスターの分散度を決定した。H
2流(1.67cm
3s
−1g
−1)中、0.03Ks
−1で623Kまで試料を加熱し、1時間保持した後、623Kで1時間排気し、298Kに冷却する前に弱く吸着された水素を全て除去した。水素化学吸着取込量は、298K、5〜50kPaで、金属含有試料上のH
2について測定した。分散度は、圧力ゼロを外挿し、1:1のH:M
表面(M=Pt、Ru、Rh)吸着化学量論比を用いて、H
2の総取込量と不可逆取込量の差から決定した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像を、Philips/FEI Tecnai 12顕微鏡を120kVで操作して、撮影した。TEM分析前に、試料をエタノール中に懸濁させ、400メッシュCuグリッド上に支持された炭素/穴開き炭素極薄フィルム(Ted Pella Inc.)上に分散させた。各試料に対し300個を超えるクラスターを測定し、金属クラスターのサイズ分布を決定した。表面平均クラスター径d
TEMを、
【数2】
(式中、n
iは直径d
iを有する結晶子の数である)を用いて算出した。TEM由来のサイズ分布は、金属クラスターの分散指数(DI)を算出するためにも使用された。DI値は、表面平均径(d
TEM:式2)を数平均径(d
n=Σn
id
i/Σn
i)[30]で割ることにより与えられる。
【数3】
【0041】
このパラメータは、金属クラスターにおけるクラスター径の不均一性の指標であり、値が1であることは単峰性のクラスターを反映し、1.5未満の値は比較的均一なサイズ分布を示唆する。
【0042】
例2〜4の触媒反応速度測定
石英製管型反応器を用いて、プラグフロー動態で、トルエン、1,3,5−トリメチルベンゼン(1,3,5−TMB)、及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン(1,3,5−TIPB)の水素化速度を、フュームドSiO
2(Cab−O−Sil、HS−5、310m
2g
−1)で希釈した触媒試料について測定した。希釈剤/触媒質量比10で混和し、ペレット化し、直径0.18〜0.25mmの凝集体を保持するよう細粒をふるい分けすることにより、希釈は達成された。次いで、これらの細粒(5〜25mg)を、同様の大きさの酸洗浄した石英細粒(Fluka、酸精製、1.0g、0.18〜0.25mm)と混合した。ペレット内又はベッドの、濃度勾配及び温度勾配を避けるため、そのような希釈物を使用した。
【0043】
水素化速度を測定する前に、予め還元及び不動態化した試料を、H
2流(1.67cm
3g
−1s
−1)中で、0.03Ks
−1で623Kまで加熱し、1時間保持することにより処理した。0.35kPaのトルエン、又は0.26kPaの1,3,5−TMB、又は0.15kPaの1,3,5−TIPB、及び100kPaのH
2を用いて、473Kでアレーン水素化速度を測定した。トルエン(動的分子径0.59nm)は、ゼオライトの開口(apertures)を通して拡散し、ゼオライト空隙内に包含される活性サイトに接近することができたが、1,3,5−TMB(動的分子径0.74nm)はMFI(0.53×0.56nm)に対して、並びに1,3,5−TIPBはBEA(〜0.70nmの開口)及びFAU(0.74nmの開口)に対して、ゼオライトの開口(apertures)を通して拡散し、活性サイトに接近することができなかった。速度は、水素化学吸着取込量から決定された表面の金属原子数により正規化された水素化速度として定義される、ターンオーバー速度として報告される。反応物及び生成物の濃度は、水素炎イオン化検出器に接続されたメチル−シリコンキャピラリーカラム(HP−1;50m×0.25mm、膜厚0.25μm)を用いて、ガスクロマトグラフィー(Agilent 6890GC)により測定した。石英、フュームドSiO
2、又は金属を含まないゼオライトからは、これらの反応物のいずれについても検出可能な水素化速度を得られず、測定された速度は、希釈の程度又はいかなる触媒の稼働時間にも依存せず、これらは、温度又は濃度勾配がないこと、及び検出可能な失活がないことと一致している。
【0044】
最初に金属前駆体又は金属クラスター、とりわけより多価の金属前駆体を含有させるために、より低い骨格密度及びより大きい開口(apertures)のゼオライトを使用することができる場合、ゼオライト転換は、ゼオライト空隙内に金属クラスターを内包させるための代替の合成経路を提供することができる。次いで、そのような材料は、その後、ゼオライト空隙内に内包された種を保持しつつ、より高い骨格密度及びより小さい開口を有するゼオライトに転換させることができる。
【0045】
ゼオライト転換は、より低い骨格密度を有する構造を、熱力学的により安定な傾向にある、より高い骨格密度を有するものに転換することができる。これらの転換は、高価な有機テンプレートを回避し、且つ/又は結晶化回数を低減し得る。これは、より高いSi/Al比、例えば10を超えるか、さらには50を超えるSi/Al比を有する、より高骨格密度のゼオライトの調製において特に価値のあるものとなる。ゼオライト転換は、クラスターをゼオライト内に内包するための一般的な経路をも提供し得る。もしそうでなければ、保護リガンドを含有する前駆体であっても、水熱合成の間に金属前駆体の分解をもたらす合成温度を必要とするであろう。熱力学は、一般的には、ゼオライト骨格密度(FD;本明細書においてはT原子数/nm
3として報告される)を増大させる転換を可能とするが、そのようなプロセスの全てが、子構造の合成のために必要とされる水熱条件下で速度論的に利用可能であるわけではない。
【0046】
BEA(FD15.3)、及びFAU(FD13.3)は、NaOH水溶液中で、水熱条件下において非晶質シリカ−アルミナ前駆体からそれらの各自の結晶化を引き起こす温度を超える温度(360〜400K)で、より高い骨格密度を有するゼオライトに再結晶化することができる。423K、自己圧力下で、NaOH水溶液を用いて、MFI種結晶の存在下又は非存在下で、結晶質MFI(FD18.4)試料をBEAから合成することに成功した(モル組成、表1)。したがって、この転換は、顕著な速度論的障害なく、MFI種結晶又は有機構造規定剤(SDA)の非存在下においても自発的に生じることができると結論付ける。
【0047】
親BEA及び子MFIゼオライトの骨格構造及びコンポジットビルディングユニット(CBU)として、共通のmor構造モチーフが挙げられるが、一方でFAU及びMFIはそのような共通のCBUを持たない。したがって、BEA中に存在し、MFI形成に必要とされるCBUは、そのMFIへの転換の間、BEA由来の中間体内で基本的にインタクトな状態を維持し、このCBUはMFIの局所的な核形成を補助し得、且つそうすることで速度論的障害を低減し、その結果、種結晶がなくてもBEAのMFIへの転換を可能とするという説明が妥当であると思われる。結果として、共通ビルディングユニットとしてmorを含む、BEAからMFIへの転換(X線回折図、
(図1A))は、速度論的に実現可能となる。この共通CBUは、子構造の核を形成するための速度論的メディエータとしての役割を果たし得、共通CBU成分を含有するゼオライトは、それらがゼオライトの熱力学的傾向によって決定づけられる方向に転換することを妨げる速度論的障害を乗り越え、より大きい骨格密度を有する構造を形成できる可能性があることを示す。
【0048】
親ゼオライトと生成物ゼオライトの間の共通CBUの存在、又はその非存在下においては、生成物種結晶は、合成においてMFI結晶の核形成を補助し、この補助は、非晶質シリカ及びアルミナゲルからの核形成よりも、親ゼオライトから形成された中間体からの核形成でより効果的であり、結果として合成時間が顕著に短縮される。その結果、そのような手順は一部のゼオライトを合成する代替経路を提供し得、そのような経路は、結晶化時間を短縮し得、且つ有機部分に関連する費用及び環境影響を低減し得る。
【0049】
(例5〜8)
この項における例は、合成、構造的特性評価、並びにBEA及びFAU親ゼオライト内のPt、Ru、及びRh金属クラスターの触媒性能を、これらの材料を続くMFIへの転換で使用する目的で記載する。金属を含有するBEA及びFAU(それぞれM/BEA及びM/FAU、M=Pt、Ru、Rh)を、353Kで、[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2、[Ru(NH
3)
6]Cl
3、又は[Rh(NH
2CH
2CH
2NH
2)
3]Cl
3・3H
2O水溶液中での、Pt、Rh、及びRu前駆体とのイオン交換を介して(例2に記載の手順を用いて)合成した。
【0050】
交換、並びに空気流中で623K、3時間の熱処理、及びH
2中で573K、2時間の熱処理後に、BEA及びFAUゼオライト上に分散するPtクラスターのTEM画像を
図3A、図3C、及び図3Eに示す。これらの画像は、BEA中(d
TEM=1.6nm;下記表2、式2を用いて算出)、及びFAU中(d
TEM=1.7nm;表2)の小さいPtクラスターの存在を示し、これらのクラスターは、狭いサイズ範囲に分布(BEA及びFAUに関し、それぞれDI=1.07及び1.03;表2、式3より)し、ゼオライト結晶全域にわたって存在する。
H
2を用いた金属表面の化学吸着滴定により、Pt/BEAについて0.88、及びPt/FAUについて0.78のPt部分分散が得られた(表2)。これらの値は、クラスターが球状であり、且つPt金属の嵩密度を有する場合、それぞれ1.3及び1.4nmの平均クラスター径(d
chem)に対応する。一方、同じ金属前駆体を用いてメソ多孔SiO
2のインシピエントウェットネス含浸によって調製された、類似の担持量のPtクラスターは、Pt/BEA及びPt/FAU試料の場合よりも大きく(d
TEM=2.4nm、d
chem=1.8nm;表2)、且つより広範囲に分布(DI=1.96;表2)し、小さいゼオライト空隙内への閉じ込めは、焼結及び付随するクラスターサイズ分布の広がりを抑制することを示す。これらのゼオライト試料における化学吸着由来のPtクラスター径(1.3〜1.4nm)は、TEMにより測定されたクラスター径(1.4〜1.7nm)によく一致し、顕微鏡で検出可能なクラスターは、H
2滴定剤による化学吸着に利用可能な、清浄な表面を含むこと、及び合成中に存在するリガンドは、使用された熱処理により完全に除去されたことを示唆する。同様に、BEA内に分散するRuクラスター、並びにFAU内に分散するRu及びRhクラスターは、それぞれ1.4、1.7、及び1.5nmのd
TEM値、1.08、1.16、及び1.09のDI値、並びに1.4、1.5、及び1.3nmのd
chem値を示し、同様にBEA及びFAU親ゼオライト全域にわたって分散する、小さく、均一で、清浄な金属クラスターの存在に一致する。
【表2】
【0051】
(例5)
ゼオライト内の小さな開口(apertures)は、反応物及び生成物を、それらの分子サイズに基づきふるい分けすることが可能である。利用可能な位置及び利用不可能な位置に存在するサイトにおける、小さな反応物及び大きな反応物に関する相対反応速度は、ゼオライト空隙内に存在する金属表面積の分率を評価するために使用することができる。トルエン及び1,3,5−TIPB反応物(動的分子径は、それぞれ0.59nm及び0.84nm)の水素化速度を使用し、親BEA(〜0.7nmの開口)及び親FAU(0.74nmの開口)材料内の主たる金属(Pt、Ru、Rh)クラスターの存在を確認した。トルエンは、BEA及びFAUの相互接続する空隙及び開口を通して拡散することにより、BEA及びFAUの空隙内に内包される活性金属サイトに接近することができるが、1,3,5−TIPBは接近することができない。
【0052】
最初に、SiO
2上に分散する自由なクラスターについて、小さな反応物(トルエン)及び大きな反応物(1,3,5−TIPB)の水素化速度を測定することにより、内包選択性を決定した(χ
SiO2=r
トルエン/r
1,3,5−TIPB)。この速度比は、拡散抑制がない場合の、これら2つの反応物分子の相対的反応性を反映する。次いで、金属−ゼオライト試料についての、この比の同様な測定結果(χ
ゼオライト)を使用し、内包選択性パラメータ(φ=χ
ゼオライト/χ
SiO2)を決定することができ、これは、ゼオライト結晶外の(完全に接近可能な)位置に存在するクラスターの表面積に対する、試料中の全クラスターの表面積比を反映する。したがって、内包選択性は、トルエンが接近することができる(ただし、1,3,5−TIPBは接近することができない)微小孔網内に含有される活性表面の程度に関する厳密な指標である。ゼオライト外表面のクラスターのような、反応物の接近が制限されないクラスターに関しては、この内包選択性パラメータは1に近づく。一方、1よりもはるかに大きいφ値(〜10、90%を超える活性金属表面がゼオライト空隙内に存在することを示唆する)は、金属クラスターが、大きな反応物の接近を制限する領域内に主として存在することを証明し、したがって、本明細書において良好な内包の証拠であると捉えられる。
【0053】
トルエン及び1,3,5−TIPBの水素化反応は、それぞれ、全ての試料において、メチルシクロヘキサン、並びに(cis−及びtrans−)1,3,5−トリ−イソプロピルシクロヘキサンの、排他的な形成をもたらした。下記表3は、BEA(M/BEA)、FAU(M/FAU)、及びSiO
2(M/SiO
2)上に分散するPt、Ru、Rhクラスターについての、アレーンの水素化ターンオーバー速度を示す。トルエンの水素化ターンオーバー速度は、Pt/SiO
2よりもPt/BEA及びPt/FAUで非常に類似しており(表3)、トルエンの反応に関し、クラスターサイズ効果又は拡散の制約がないことと一致する。一方、1,3,5−TIPBのターンオーバー速度は、Pt/SiO
2よりもPt/BEA及びPt/FAUではるかに低く(それぞれ44及び38倍、表3)、1,3,5−TIPBはBEA及びFAU試料内のほとんどのクラスターに接近することができないことを示唆する。したがって、トルエンの1,3,5−TIPBに対する水素化ターンオーバー速度比は、Pt/SiO
2(4.4)よりもPt/BEA及びPt/FAUではるかに高く(それぞれ180及び160倍)、内包選択性パラメータ(φ)は、それぞれ、Pt/BEAに関して40.9、Pt/FAUに関して36.4という結果になる(表3)。内包選択性パラメータ(表3)は、BEA及びFAU親ゼオライト内のRuクラスターに関してそれぞれ14.3及び15.4であり、FAU試料内のRhクラスターに関して21.8であった。これらの高い内包選択性値は、これら全ての金属のクラスターがBEA又はFAUゼオライトの空隙構造内に、そのような試料が本明細書に報告される交換及び還元手順を用いて調製される場合、選択的に存在することを裏付ける。したがって、これらの材料は、内包された金属クラスターが(i)MFIへのFAU又はBEAの転換と整合できるか否か、及び/又は(ii)ゼオライト転換の間に残存できるか否かの評価によく適している。さらに、金属錯体がシリカ支持体上に単に堆積する操作(run)では、内包保護は提供されないことに留意すべきである。したがって、表3における選択性は1.0である。
【表3】
【0054】
(例6)
本例において、例3及び4に記載され、金属クラスターの非存在下で成功することが示された水熱手順を用いてMFIを形成するための前駆体材料として、金属クラスターを含有するM/BEA及びM/FAU(M=Pt、Ru、Rh)ゼオライトを使用する。本例において結果として得られる試料を、M/MFI
B(M/BEAに由来する)及びM/MFI
F(M/FAUに由来する)と表す。水熱転換手順の間にSDA種がクラスターを結晶間MFI空隙から除去する原因となり得る、静電及びファンデルワールス相互作用を避けるため、M/BEAからM/MFIへのゼオライト転換においては種結晶もSDAも使用せず、M/FAUからM/MFIへのゼオライト転換においてはMFI種結晶(SDAの代わりに)を使用した。
【0055】
親ゼオライト内に内包されたクラスターの有無にかかわらず(X線回折図、
図1A及び図1B:金属なし、
図2A及び図2B:金属あり)、BEA及びFAUゼオライトは良好にMFIに転換した。空気流中673Kで3時間、次いでH
2流中623Kで2時間の後続の処理は、MFIの結晶化度に検出可能な変化をもたらさなかった。623Kで2時間のH
2処理後、X線回折図も、M/MFI(M=Pt、Rh、Ru、
図2A及び図2B)において金属又は酸化物相のいかなるラインも示さず(金属0.64〜1.23重量%、表2)、MFI子構造中に大きな金属結晶子が無いことと一致した。
【0056】
還元及び不動態化されたM/MFI試料(M=Pt、Ru、Rh)のTEM画像は、大きさが均一な小さなクラスターを検出した(
図4A及び図4BにPt/MFI
B、並びに図4C及び図4DにPt/MFI
F、
図5AにRu/MFI
B、
図5BにRu/MFI
F、及び
図5CにRh/MFI
F)。TEM測定から得られた表面平均クラスター径及びDI値(表2)は、Pt/MFI
Bについては1.7nm及び1.41(対して親Pt/BEAにおいては1.6nm及び1.07)、Pt/MFI
Fについては1.0nm及び1.09(対して親Pt/FAUにおいては1.7nm及び1.03)であった。親ゼオライトのDI値は、対応する生成物ゼオライトよりもわずかに大きく、ゼオライト転換の間に顕著な焼結又は合一(coalescence)が起きなかったことを示した。Pt/MFIのH
2化学吸着測定から、Pt/MFIがPt/BEA(d
chem=1.3)から調製された場合は1.4、Pt/MFIがPt/FAU(d
chem=1.1)由来の場合は1.5、の平均クラスター径が得られた。これらの化学吸着由来の平均クラスター径は、TEMによる表面平均クラスター径(0.8〜1.6;表2)とよく一致し、合成混合物から堆積し、合成後の処理の間に除去されなかった残渣がないことを示す。一方で、Pt/SiO
2は、2.4nmのd
TEM値、1.8nmのd
chem値、及び1.96のDI値を示した。これらの大きさ及び分散度は、親(Pt/BEA及びPt/FAU)並びに生成物(Pt/MFI)ゼオライト試料上に分散したクラスターに関する値よりも著しく大きく、小さく均一な金属クラスターを合成するために閉じ込め環境が必要であることを示唆している。
【0057】
同様に、Ru/MFI
B、Ru/MFI
F、及びRf/MFI
Fに関する、DI値(1.09〜1.16、対して親試料に関しては1.08〜1.16;表2)、TEM由来の表面平均クラスター径(1.3〜1.5、対して親試料に関しては1.4〜1.5;表2)、及び、化学吸着由来の平均クラスター径(1.2〜1.5、対して親試料に関しては1.1〜1.2;表2)も、MFI空隙内に、小さく均一で且つ清浄な金属クラスターが存在すること、及び親BEA又はFAU材料からの転換の間に内包が保持されることと一致した。
【0058】
(例7)
トルエン及び1,3,5−TMB(動的分子径0.59nm及び0.74nm)の水素化速度を使用し、MFI生成物ゼオライト(〜0.55nmの開口)内へのPt、Ru、及びRhクラスターの閉じ込めの程度を評価した。トルエンは、MFIの空隙内に内包される活性サイトに、それらの相互接続する空隙及び開口を通して拡散することにより接近することができる(ただし、1,3,5−TMBは接近することができない)。
【0059】
1,3,5−TMB水素化反応は、全ての触媒において、(cis−及びtrans−)1,3,5−トリメチルシクロヘキサンの排他的な形成をもたらした。表4は、SiO
2(M/SiO
2)並びにMFI(M/MFI
B及びM/MFI
F)上に分散する金属クラスター(M=Pt、Ru、Rh)クラスターに対する、これらのアレーンの水素化に関するターンオーバー速度を示す。トルエンの水素化ターンオーバー速度は、Pt/SiO
2試料よりも、Pt/MFI
B及びPt/MFI
F試料でやや小さく(それぞれ1.2及び2.7倍、表4)、これは、トルエンの大きさ(動的分子径0.59nm[4])に近いMFI開口(〜0.55nm)を通した拡散により金属クラスターへの接近が制約されたことが原因であったか、又はこれらの材料中に少量存在する、非晶質固体による細孔入口の部分的な閉塞が原因であった可能性がある。一方、1,3,5−TMBターンオーバー速度は、Pt/SiO
2試料よりも、Pt/MFI
B及びPt/MFI
F試料ではるかに小さく(それぞれ10及び50倍、表4)、ほぼ全ての活性表面が、1,3,5−TMBが接近することができないMFI空隙内に存在することを示した。それぞれPt/BEA及びPt/FAUのゼオライト転換により合成されたPt/MFI
B及びPt/MFI
Fにより、トルエン及び1,3,5−TMBの選択的水素化に関して、SiO
2上に分散するPtクラスター(χ
SiO2=2.7;表4)に関してよりも、はるかに高いχ値(Pt/MFI
B及びPt/MFI
Fに関して、それぞれ22.4及び50.0)が得られた。これらの値は、次いで高い内包選択性(それぞれφ=8.3及び18.5、表4)をもたらし、MFI空隙内へのPtクラスターの選択的な内包と一致する。内包選択性値は、Pt/MFI
Bに関して8.3(対してPt/BEAに関しては40.9)、Pt/MFI
Fに関して18.5(対してPt/FAUに関しては36.4)であった。これらの生成物ゼオライトの内包選択性は、これらの各親ゼオライトの値よりも低く、転換の間、ほぼ全てのクラスターがゼオライト細孔内に残存したことを示し、親ゼオライトから生成物ゼオライトへDI値がわずかに増加したことと一致する。合成されたRu/MFI
B、Ru/MFI
F、及びRh/MFI
Fによっても、SiO
2上に分散する各金属に関して(Ru及びRhに関して、それぞれ6.6及び2.1;表4)よりもはるかに大きなχ値が(それぞれ150、60、及び17;表4)、結果として水素化反応に関して高い内包選択性(それぞれ22.7、9.1、及び8.1(対してそれらの対応する親ゼオライトに関しては14.3、15.4、yy);表4)が得られ、これらのゼオライト試料上のRu及びRhクラスターが、主としてより小さなトルエン反応物のみが接近できる位置内に確かに存在すること、及びゼオライト空隙内へのこれらのクラスターの内包が、ゼオライト転換の間に維持されたことが示唆された。
【表4】
【0060】
M/MFI試料の高い内包選択性値(8〜23;表4)は、これらの試料全てに関し、88%を超える金属表面積が、トルエンは接近することができるが1,3,5−TMBは接近することができない位置内に含まれることも示唆する。TEM及び化学吸着由来の平均クラスター径、並びに大きさの均一性と統合すると、これらのデータは、最初にBEA又はFAUの空隙内に存在する金属クラスターの大部分が、転換の間、ゼオライト細孔の内部に残存し、分子の大きさに基づき反応物を選択することができ、且つMFIの開口の大きさよりも小さい反応物のみが活性サイトへ接近することを可能とする、結果として得られるMFI試料内の内包を保持していることを示唆している。
【0061】
(例8)
内包されたクラスターの良好な合成は、必要とされる高いpHにおいて金属前駆体とOH
−種が反応して不溶性コロイド状水酸化物を形成する前に、まず塩基性媒体からMFIの良好な核形成及び成長が起きる必要がある。ここで、金属前駆体の早期析出を抑制しつつ、核形成及び成長を促進する合成条件を模索する。どのような合成戦略及び条件がそのような目的を達成し得るかを表す模式図を
図6A〜図6Dに示す。以下では、ゼオライト核形成と前駆体析出の相対速度を制御する目的で、
図6A〜図6Dに図示される領域に従い、これらの合成パラメータを分析する(例えば、OH
−又はF
−のいずれを鉱化剤として使用するかどうか)。使用したこれらの合成条件のさらなる詳細を、形成された触媒材料の内包選択性値と共に表5に示す。これらの金属−ゼオライト材料の内包選択性は、BEA又はFAUのMFIへのゼオライト転換によって調製された材料に関して行われたように、トルエン及び1,3,5−TMBの水素化速度に基づき報告される。
【0062】
領域III(
図6B)において、合成は、速い核形成及びMFIの結晶化だけでなく、金属前駆体からの不溶性水酸化物の急速な形成にも有利な、高pH及び高温度(pH12、433K)で行われた。これらの条件で形成された生成物の内包選択性パラメータは、ほぼ1であり、ゼオライト外のクラスターが広く分布していることを示した。SDA部分(臭化テトラプロピルアンモニウム)の使用も、速く且つ選択的なMFIの結晶化を促進するが、そのような種は結晶間の空隙を塞ぐ可能性があり、したがって、溶媒和モノマーとしてであっても金属前駆体の内包を妨げる。この場合の生成物の選択性パラメータもやはり、ほぼ1(Ptを用いるPt(NH
3)
4(NO
3)
2前駆体に関し0.85)であり、形成したクラスターが結晶間MFI空隙の間に存在しないことを示唆した。結果として、金属前駆体のコロイド状水酸化物の形成に不利な条件を維持しつつ、合成の間、SDA種の使用を避けなければならない(又はその濃度を非常に低く保たなければならない)。温度を低く(383K)、しかしOH
−レベルを高く(pH12.9)保ちつつ、結晶間空隙を満たすために必要とされる最少量のSDAの使用することは、MFI構造(M4、表5)の結晶化をもたらさず、形成された非晶質構造は接近に関しいかなる制約ももたらさなかった。
【0063】
より低い温度、及びOH
−濃度を検討した。領域Iの低い温度及びpH(403〜523K、7〜11、
図6A)において、金属前駆体は安定であるが、MFI骨格を形成するケイ酸塩種も安定であり、この場合は合成時間が非常に長くなる原因となり、報告されるいくつかの事例において合成時間は数カ月のオーダーで長くなる。
【0064】
内包は、ゼオライト合成後期に金属前駆体を導入することによるか、又は鉱化剤としてOH
−の代わりにF
−を用いてpHを減少させることにより、直接水熱合成手順を介して達成することができるものの、これらの方法は、前駆体を遅らせて添加するため内包選択性はわずかであり、フッ素合成を用いるため内包の収率は低い。一方で、本発明の方法に従うゼオライト転換手順は、直接水熱合成における内包の課題を回避し、そうすることで、高い選択性、及び高い金属含有量で、MFI結晶の空隙内に金属クラスターを内包させるための一般的な方法を提供する。そのような手順は、そのようなカチオンが、MFI又は他の子ゼオライトよりも大きな空隙を有する親ゼオライト内に交換され得ることのみ、を必要とする。親ゼオライト(ここではBEA又はFAU)は、より低い骨格密度を示し、その後、交換又はより直接的な内包方法を実施することができない子ゼオライト(ここではMFI)に転換される。そのような金属クラスターを閉じ込めるためのゼオライト転換手法は、水性媒体中でカチオン性錯体を構成するあらゆる金属へ広く拡張することができ、また転換が水熱条件下で自発的に起きるか速度論的助剤(例えば、種結晶又は有機構造規定剤)の使用を通して起きるかにかかわらず、ゼオライト骨格密度が増大するあらゆる転換へ広く拡張することができると推察することが妥当であると考えられる。
【0065】
上記の例1〜8に基づいて、金属前駆体の添加時期を制御する低温水熱合成によって、及びフッ化物媒体中の直接水熱合成によって、金属含有BEA又はFAUゼオライトのゼオライト転換を介して、MFI空隙内への金属クラスター(Pt、Ru、Rh)の良好な内包が達成されたと結論付けることができる。ゼオライト転換は、所望の生成物ゼオライトの核形成を補助し且つ合成中の有機構造規定剤の使用を避けることにより、直接水熱合成方法と比較して、より短時間、低コストでゼオライトを合成する好機を提供し、且つより経済的で環境に配慮した手法を提示する。これらのゼオライト転換方法は、リガンド安定化金属前駆体及び合成後交換を用いる直接水熱合成を伴う他の開発された手順では内包を実現することができなかった、MFIゼオライト内への金属クラスターの良好な内包ももたらす。X線回折、電子顕微鏡観察、及びH
2化学吸着測定を組み合わせて、親ゼオライトのMFIへの転換、及び小さく、均一で且つ清浄な金属クラスターの存在を確認した。MFI及びSiO
2上に分散する金属クラスターについてのトルエン及び1,3,5−TMBの水素化相対速度は、ゼオライト試料内の金属クラスターが、より小さいトルエン反応物のみが金属クラスターに接近することができるMFI空隙内に主として存在することを示した。内包された金属クラスターを用いる/用いないMFI合成のための、開発されたゼオライト転換手法は、種々の骨格、空隙環境及び骨格組成のゼオライト、並びに触媒として重要な、他の金属、金属酸化物及び金属硫化物クラスターを内包することに、さらに拡張することができると期待される。
【表5】
【0066】
(例9〜12)
例9〜12において下記の材料を使用した。
【0067】
NaOH(99.994%、Sigma Aldrich)、FAU(CBV780、Zeolyst、H−FAU、Si/Al=40)、Cu(acac)
2(>99.99%、Sigma Aldrich)、及び[Cu(NH
3)
4]SO
4H
2O(98%、Sigma Aldrich)を受け取った状態で使用した。本例において、種結晶として使用した材料は、CHA(チャバザイト)
1、STF(SSZ−35)
2、及びMTW(ZSM−12)
3ゼオライトに関して先に記載した合成手順を用いて調製した。
(1)Zones S. I.、US8,007,763B2、2011年8月30日;(2)Musilova−Pavlackova S.、Zones S. I.、Cejka J.、Top. Catal.、2010年、53巻、273頁;(3)Jones A. J.、Zones S. I.、Iglesia E.、J. Phys. Chem. C、2014年、118巻、17787頁。
【0068】
(例9)
CHA、STF、及びMTWゼオライトの合成が、FAUを親ゼオライトとするゼオライト転換によって達成された。モル組成がxNaOH:1.0SiO
2;95H
2O(x=0.50、0.68、0.85)となるよう、FAU(0.5〜1.0g)をNaOH水溶液に添加し、そこに10重量%(親FAUに基づく重量%)の種結晶(CHA、STF、又はMTW)を添加し、下記表6に記載されるモル組成を有する最終混合物を調製した。これらの混合物を密封されたポリプロピレン容器(Nalgene、125cm
3)内に入れ、周囲温度で1時間、マグネチックスターラーで激しく攪拌(400rpm、IKA RCTベーシック)することにより均質化した。次いで混合物をテフロン(登録商標)でライニングされたステンレス鋼製オートクレーブへ移し、静的条件下で、所望の結晶化温度(423、428、又は433K)で40時間保持した。結果として得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水(抵抗率17.9MΩ)で洗浄した。試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理した。次いで、試料を管状炉内で、乾燥空気流(1.67cm
3g
−1s
−1)中、0.03Ks
−1で873Kまで加熱し、この温度で3時間保持した。CHA、STF(SSZ−35)、及びMTW(ZSM−12)の種結晶を用いてFAUのゼオライト転換を介して合成された、結果として得られた処理後の試料を、CHA
F、STF
F、MTW
Fとそれぞれ表した。
【表6】
【0069】
(例10)
353Kで、24時間マグネチックスターラーで攪拌(400rpm、IKA RCTベーシック)することにより、Cu(acac)
2水溶液(〜1重量%のCu含有量を達成するためのH
2O;ゼオライト質量比10:1)からイオン交換を行い、FAU内に内包されたCu前駆体を調製した。得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水(抵抗率17.9MΩ)で洗浄した。次いで試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理し、結果として得られた試料をCu/FAUと表した。
【0070】
(例11)
CHA内へのCuの内包が、Cu/FAUのゼオライト転換によって達成された。Cu/FAU(0.5〜1.0g)を、10重量%のCHA種結晶(親FAUに基づく重量%)と共にNaOH水溶液に添加し(モル組成0.68NaOH:1.0SiO
2:95H
2O)、合成混合物を調製した。混合物を密封されたポリプロピレン容器(Nalgene、125cm
3)内に入れ、周囲温度で1時間、マグネチックスターラーで激しく攪拌(400rpm、IKA RCTベーシック)することにより均質化した。次いで混合物をテフロン(登録商標)でライニングされたステンレス鋼製オートクレーブへ移し、静的条件下で、423Kで40時間保持した。結果として得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水(抵抗率17.9MΩ)で洗浄した。試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理し、Cu/FAUのゼオライト転換を介して合成された、結果として得られた試料をCu/CHA
CuFと表した。
【0071】
(例12)
CHA内へのCuの内包が、FAUを親材料とするゼオライト転換によって、合成ゲル中に添加されたCu前駆体を用いて、達成された。10重量%のCHA種結晶(親FAUに基づく重量%)及び[Cu(NH
3)
4]SO
4H
2O(FAUに基づくCu含有量〜2重量%)と共にFAU(0.5〜1.0g)をNaOH水溶液に添加し(モル組成0.68NaOH:1.0SiO
2:95H
2O)、最終合成混合物を調製した。混合物を密封されたポリプロピレン容器(Nalgene、125cm
3)内に入れ、周囲温度で1時間、マグネチックスターラーで激しく攪拌(400rpm、IKA RCTベーシック)することにより均質化した。次いで混合物をテフロン(登録商標)でライニングされたステンレス鋼製オートクレーブへ移し、静的条件下で、423Kで40時間保持した。結果として得られた個体を、フリットディスクブフナー漏斗(Chemglass、150ml、F)を通してろ過により回収し、洗い流した液体のpHが7〜8に達するまで脱イオン水(抵抗率17.9MΩ)で洗浄した。次いで、試料を373Kで一晩、対流式オーブン内で処理した。FAUのゼオライト転換を介して合成された、結果として得られた試料をCu/CHA
Fと表した。
【0072】
上記の明細書、実施例及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用について完全な説明を提供する。本発明の多くの実施形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができるため、本発明は、添付の特許請求の範囲に属する。