(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559230
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】高温圧力センシング
(51)【国際特許分類】
G01L 9/12 20060101AFI20190805BHJP
G01L 19/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
G01L9/12
G01L19/04
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-517104(P2017-517104)
(86)(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公表番号】特表2017-534860(P2017-534860A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015050584
(87)【国際公開番号】WO2016053631
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】14/501,617
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,ジョン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】タイソン,デヴィッド・グレン
【審査官】
大森 努
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02848710(US,A)
【文献】
米国特許第03318153(US,A)
【文献】
国際公開第2007/068283(WO,A1)
【文献】
特開平06−288851(JP,A)
【文献】
米国特許第03869676(US,A)
【文献】
特開2011−107086(JP,A)
【文献】
米国特許第04025912(US,A)
【文献】
特開2014−109572(JP,A)
【文献】
特開平07−049276(JP,A)
【文献】
特開2010−133956(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0231292(US,A1)
【文献】
特開平11−258074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32,27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力検知システムであって、
供給された圧力および基準コンデンサの関数として変化する容量を有する可変コンデンサを含む容量性圧力センサ、及び前記容量性圧力センサへ発振信号を供給する発振器を有し、少なくとも前記可変コンデンサの容量に関する第1のDCセンサ信号および前記基準コンデンサの容量に関する第2のDCセンサ信号を供給する高温ゾーン電子機器モジュール、
前記DCセンサ信号を圧力値に変換し、且つDC電力信号を供給する低温ゾーン電子機器モジュール、及び
高温ゾーン電子機器モジュールを低温ゾーン電子機器モジュールへ接続し、且つ前記DC電力信号を高温ゾーン電子機器モジュールへ伝達する複数の導体、を含み、
前記複数の導体は長尺の導体を含み、前記高温ゾーン電子機器モジュールは、前記低温ゾーン電子機器モジュールに対して遠隔位置に配置される
圧力検知システム。
【請求項2】
前記複数の導体のそれぞれは、100フィートを超える長さを有する、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項3】
前記複数の導体のそれぞれは、10000フィートを超える長さを有する、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項4】
高温ゾーン電子機器モジュールは、225℃の温度で動作可能である、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項5】
少なくとも1つのダイオードをさらに含み、前記少なくとも1つのダイオード及び前記容量性圧力センサは、ダイオード検出器の少なくとも一部分を形成する、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのダイオードは、低漏洩電流に関して最適化された少なくとも1つのダイオードを含む、請求項5に記載の圧力検知システム。
【請求項7】
高温ゾーン電子機器モジュールは、前記複数の導体上のLCリンギングから前記容量性圧力センサ及び前記発振器を切り離すために、前記複数の導体の各々について受動ラインフィルタをさらに含む、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項8】
前記発振器は、弛張型発振器を含む、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項9】
高温ゾーン電子機器モジュールは、ハイブリッドマイクロ回路設計を用いて製造される、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項10】
低温ゾーン電子機器モジュールは、前記DCセンサ信号から前記圧力値を形成するために、レシオメトリック法を利用する、請求項1に記載の圧力検知システム。
【請求項11】
前記圧力値は、前記発振信号のピークツーピーク電圧に対して感受性がない、請求項10に記載の圧力検知システム。
【請求項12】
前記圧力値は、前記発振信号の周波数に対して感受性がない、請求項10に記載の圧力検知システム。
【請求項13】
センサ装置であって、
発振器、及びプロセス変数および基準に関する2つのDC信号を供給する容量性センサを含み、高温環境で用いられるセンサ電子機器、
前記センサ電子機器から遠隔に設置され、前記センサ電子機器からの少なくとも2つのDC信号を用いてプロセス変数についての値を形成し、低温環境で用いられる変換電子機器、及び
前記センサ電子機器から前記変換電子機器への前記少なくとも2つのDC信号を与える少なくとも2つの導体を含む長尺多導体ケーブル、
を含む、
センサ装置。
【請求項14】
センサ電子機器は、225℃で動作可能である、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項15】
センサ電子機器は、前記少なくとも2つの導体上のインダクタンス・キャパシタンス・リンギングからセンサ電子機器を切り離すために、前記少なくとも2つの導体の各々についてのラインフィルタをさらに含む、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記多導体ケーブルは、少なくとも100フィートの長さである、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記発振器は、不安定な発振周波数を有する弛張型発振器を含む、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記弛張型発振器は、比較器弛張型発振器を含む、請求項17に記載のセンサ装置。
【請求項19】
方法であって、
200℃を超える温度でダイオード検出器を用いて少なくとも2つのDCセンサ信号を形成すること、
前記少なくとも2つのDCセンサ信号を、長尺多導体ケーブルを通して前記ダイオード検出器から遠隔に設置されたプロセス変数計算電子機器へ伝達し、前記少なくとも2つのDCセンサ信号が感知されたプロセス変数に関する第1のDCセンサ信号および基準に関する第2のDCセンサ信号を含むこと、
100℃未満である温度でプロセス変数計算電子機器を用いて、前記少なくとも2つのDCセンサ信号をプロセス変数値へ変換すること、
を包含する、
方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つのDCセンサ信号を決定することは、200℃を超える温度で発振器を用いて発振信号を生成すること、及び200℃を超える温度で前記発振信号を前記ダイオード検出器へ印加すること、を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多導体ケーブルは、100フィート長を超える、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載された実施態様は、プロセスフィールド装置に関する。特に、実施態様は、プロセス環境における容量性センサに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子回路部品の中には、85℃以下の周囲温度において用いられるべきであると決められているものもある。しかし多くのプロセス制御環境において、周囲の温度又はプロセスの温度は200℃を超えることがある。その結果、標準の電子機器は、これら高温環境において、プロセス変数、例えば圧力、動き、湿度、近接性、及び化学的濃度の計測に用いることができない。その代わりに、200℃を超える環境に耐えるように特別に設計される高温電子機器が使用されなければならない。残念なことにそのような高温電子機器は、標準電子機器よりもかなり高価である。
【0003】
さらに、これら高温環境におけるフィールド装置は、計測しているプロセス変数を伝達するために制御室と通信できなければならない。いくつかの構成において、高温環境とより冷たい環境との間に延在している非常に長い導体が、通信のために用いられる。例えば、深ガス掘削は、15000フィートを超える深さで行われる。そのような井戸の底での環境状態を監視するために、センサアセンブリが、そこに置かれる必要がある。しかし、そのようなセンサアセンブリと井戸の頂部との間の通信は、井戸の全長に延在しているケーブルを通してである。そのようなケーブルは、固有の線路インダクタンス、容量及び抵抗を有し、ケーブルを超えて送られた信号を劣化させ、且つケーブルにおける信号リンギングを引き起こす場合がある。ケーブルのインダクタンス、容量及び抵抗の量は、ケーブルの長さの関数である。ケーブル長が増すにつれて、インダクタンス、容量及び抵抗は増し、そして信号の劣化も増加する。このことは、計測環境から制御室へプロセス変数値を伝達することを困難にする。
【0004】
上での検討は、単に一般的な背景情報についてなされ、請求事項の範囲を決定する助けとして用いられることを意図していない。請求事項は、背景に記された何らかの又は全ての欠点を解決するところの実装に限定されるものではない。
【発明の概要】
【0005】
圧力検知システムは、高温ゾーン電子機器モジュール、低温ゾーン電子機器モジュール、及び高温ゾーン電子機器を低温ゾーン電子機器へ接続する複数の導体を含む。高温ゾーン電子機器モジュールは、容量性圧力センサ、及び前記容量性圧力センサへ発振信号を供給する発振器を含む。高温ゾーン電子機器は、少なくとも1つのDCセンサ信号を供給する。低温ゾーン電子機器モジュールは、前記少なくとも1つのDCセンサ信号を圧力値に変換し、且つDC電力信号を供給する。前記複数の導体は、前記DC電力信号を高温ゾーン電子機器へ伝達し、且つ前記少なくとも1つのDCセンサ信号を低温ゾーン電子機器へ伝達する。
【0006】
別の実施態様において、発振器、及び容量性センサを含むセンサ電子機器を含むセンサ装置が提供される。センサ装置はまた、プロセス変数についての値を形成するためにセンサ電子機器からの少なくとも2つのDC信号を用いる変換電子機器を含む。多導体ケーブルは、センサ電子機器から変換電子機器への前記少なくとも2つのDC信号を与える少なくとも2つの導体を含む。
【0007】
別の実施態様によると、方法は、200℃を超える温度でダイオード検出器を用いて少なくとも2つのDCセンサ信号を形成すること、前記少なくとも2つのDCセンサ信号を、多導体ケーブルを通してプロセス変数計算電子機器へ伝達すること、100℃未満である温度でプロセス変数計算電子機器を用いて、前記少なくとも2つのDCセンサ信号をプロセス変数値へ変換すること、を包含する。
【0008】
発明の概要及び要約は、簡単化された形態における概念の選択を導入するために提供され、それらはさらに以下詳細な説明で記載される。発明の概要及び要約は、請求された主題の鍵となる特徴又は必須の特徴を同定することは意図されておらず、請求された主題の範囲を決定する助けとして用いられることも意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1実施態様による容量性センサ計測システムのブロック図である。
【
図2】1実施態様によるセンサアセンブリの回路図である。
【
図4】伝達関数値と圧力値との間の関係を示す様々な温度での複数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載される実施態様は、高温容量性検知モジュールを提供し、このモジュールは、多数の高温電子機器を使用せずに高温環境において使用でき、一方、センサアセンブリは導体を通してセンサ信号をより低温環境に送信することを可能にする。
【0011】
図1は、1実施態様によるプロセス環境100における容量性計測システムのブロック図である。プロセス環境100において、スパン106によって低温ゾーン104から分離された高温ゾーン102がある。高温ゾーン102は、例えば、温度が200℃を超える場合がある化石燃料井内に置かれうる。低温ゾーン104は、例えば、温度が85℃未満の地上に置かれうる。プロセス制御環境100は、スパン106が2万フィートまである環境を含む。スパン106は望まれるだけ短くなりうるが、様々な実施態様による容量性計測システムは、スパン106が100フィートよりも長い環境において特に有益がある。
【0012】
高温ゾーン102において、センサアセンブリ108(センサ電子機器とも呼ばれる)は、プロセス変数、例えば圧力、湿度、近接性、動き、振動、及び化学的組成物を検知するように配設される。センサアセンブリ108は、高温ゾーン102から低温ゾーン104まで延びる多導体ケーブル110によって、電力を受け取り且つ1以上のセンサ信号を提供する。高温ゾーン102は任意的に、多導体ケーブル110の1以上の導体を用いて温度値を与える抵抗温度検出器(RTD)112を含みうる。RTD112及びセンサアセンブリ108は共に、高温ゾーン電子機器114を形成し、単一の回路基板に搭載されてもよく、又は複数の回路基板にわたり分散されてもよい。
【0013】
低温ゾーン104において、低温ゾーン電子機器116(プロセス変数計算電子機器又は変換電子機器とも呼ばれる)は、高温ゾーン電子機器114へ電力を供給し、高温ゾーン電子機器114からケーブル110を介してセンサ信号を受信し、且つ高温ゾーン電子機器114からのセンサ信号に基づいてプロセス変数値134を生成する。1つの実施態様によると、低温ゾーン電子機器116は、センサアセンブリ108によって与えられたDC(直流)センサ信号を検知するために用いられる電流計118、120、及び任意的に電流計122を含む。1つの実施態様によると、DCセンサ信号を伝達する導体は、低温ゾーン電子機器116において、センサアセンブリ108の回路コモン(circuit common)に近い電圧で終端される。これを実現するために、各電流計118、120、及び122の一方の入力端子は、DCセンサ信号を伝達する導体へ接続され、そして他方の端子は、電流計への入力端子での導体の電圧がセンサアセンブリ108の回路コモンに可能な限り近いような電圧へ接続される。温度計算回路126は、高温ゾーン102内の温度を決定するために、RTD112へ接続された導体上の信号を用いる。3又は4本のワイヤ接続が、正確な計測のためにRTD112に対して要求されうることに留意されたい。DC電源128は、さらに以下で記載されるように、センサアセンブリ108へDC電圧及びDC電流を供給する。電流計118、120、及び122によって計測された電流値は、伝達関数計算回路130へ提供され、この回路130は電流から伝達関数を決定する。伝達関数は、その後、温度ベース伝達関数変換ユニット132へ提供され、この変換ユニット132はまた、温度計算ユニット126によって決定された温度を受け取る。変換ユニット132は、温度ベース係数及び温度計算ユニット126によって与えられた温度を用いて、伝達関数計算回路130からプロセス変数134へ伝達関数を変換する。プロセス変数134の例は、圧力、動き、振動、近接性、湿度、及び化学的組成分を包含する。
【0014】
図2は、1実施態様によるセンサアセンブリの回路図を示す。
図2において、第1コンデンサCs(容量性センサ又は容量性圧力センサとも呼ばれる)、第2コンデンサCr(容量性センサ又は容量性圧力センサとも呼ばれる)及びダイオードD1、D2、D3、及びD4の集合は、ダイオード検出器を形成し、この検出器は、発振器212からの発振信号を受け取り、導体214、216、及び218上にDC電流信号を生成する。発振器212は、導体220及び222上のDC電源信号を受け取る。1つの実施態様により、コンデンサCr及びコンデンサCsは、サファイアセンサ201の一部分である。
【0015】
ダイオードD1のカソードは、ダイオードD3のアノード及びコンデンサCsの1つの側に接続される。ダイオードD3のカソードは、ダイオードD4のアノードに接続され、ダイオードD4のカソードは、ダイオードD2のアノード及びコンデンサCrの1つの側に接続されている。コンデンサCs及びコンデンサCrのダイオードへ接続されていない他の側は、発振器212の出力を受信する共通ノード210で一緒に接続されている。
【0016】
導体214、216、218、220、及び222は、ケーブル110の一部分を形成し、且つスパン106をわたって延在し、スパン106は多くの実施態様において100フィートを超える。これら導体の各々は、導体の長さが増加するにつれて増加する付随インダクタンスを有している。さらに、これら導体の各々は、導体と導体の回りの遮蔽との間の容量を有している。この容量はまた、ケーブル110の長さと共に増加する。導体の容量及びインダクタンスは一緒にLCリンギングを引き起こし、そこでは導体上の信号エネルギーは、インダクタンスと容量の間で振動する。このリンギングがダイオード検出器又は発振器212に影響を及ぼさないようにするために、抵抗器及びコンデンサから成るラインフィルタが、好ましくは各導体について設けられ、ラインフィルタは、センサアセンブリ108の別の構成要素をLCリンギングから切り離す。例えば、抵抗器RF1及びコンデンサCF1は、導体214上のリンギングがダイオードD1に達するのを防止する。同様に、抵抗器RF3及びコンデンサCF3は、導体216に対してラインフィルタとして働き、抵抗器RF2及びコンデンサCF2は、導体218に対してラインフィルタとして働き、そして抵抗器RF4及びRF5並びにコンデンサCF4は、導体220及び222に対してラインフィルタとして働く。
【0017】
動作において、発振器212は、導体220と222との間のDC電圧を受け取り、そしてこのDC電圧を発振信号に変換する。1つの実施態様によると、DC電圧は、10ボルトDCであり、そして発振信号Vexは、50kHzで、ピークツーピークで10ボルトである。発振電圧信号は、ダイオードD2及びD4の並列構成と直列につながるコンデンサCrを跨いで現れる。同様に、発振電圧は、ダイオードD3及びD1の並列構成と直列につながるコンデンサCsを跨いで現れる。発振信号の正部分の間は、電流は、コンデンサCs及びダイオードD3を通って流れ、電流I1を生成し、そして第
2の電流は、コンデンサCr及びダイオードD2を通過し、第2の電流I2を生成する。発振信号の負部分の間は、電流I1は、ダイオードD1及びコンデンサCsを通過し、そして電流I2はダイオードD4及びコンデンサCrを通過する。
【0018】
導体214、216、及び218の固有の抵抗及び容量は、導体上の電流信号を濾波し、導体214、216、及び218上にDC電流信号を生成する。DC電流I1は、VfC
Sに等しい。ここで、Vは、発振器212の出力のピークツーピーク電圧であって2つの順方向バイアスダイオード降下より小さく、そしてfは、発振器212の出力の周波数である。同様にDC電流I2は、VfCrに等しい。ここで、Crは、コンデンサCrの容量である。動作中、プロセス環境が変化すると、コンデンサCsの容量が変化する。例えば、コンデンサCsが圧力センサであるとき、環境の圧力は、コンデンサセンサCrの容量を変え、圧力が変化するので電流I1は変わる。理想的には、コンデンサCrの容量は、プロセス環境が変化するときも不変のままである。その結果、電流I2は、プロセス環境が変化しても変化しない。したがって、電流I1及び電流I2を用いて、CsとCrの相対容量、ひいてはプロセス環境の状態を決定することが可能である。そのような決定を行う技術は、さらに以下で検討する。
【0019】
高温で、ダイオードD1、D2、D3、及びD4は、性能劣化を受ける。特に漏洩電流は、ダイオードが逆方向バイアスのとき、温度変化に伴って著しく増加する。残念ながら高温で漏洩電流が小さいダイオードは、より長い逆回復時間(順方向バイアスから逆方向のバイアスへの過渡期における遅延)を有し、そしてより短い逆回復時間を有するダイオードは、高温でより大きな漏洩電流を有する。1つの実施態様によると、たとえ、より長い逆回復時間の犠牲を払うことになろうとも、高温でより少ない漏洩電流を有するダイオードが好ましい。1の具体的な実施態様によると、半導体会社フェアチャイルド(Fairchild)により販売されたBAS116ダイオードが用いられ、これは、150℃を超える温度で少漏洩電流を有するが、その温度では他のダイオードよりもより長い逆回復時間を有する。別の実施態様によると、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)製造プロセスを用いて製造された高温ダイオード、例えば半導体会社XRELによって販売されたXTR1N0450は、ダイオードD1、D2、D3、及びD4について用いられ、そして225℃以上の温度と見積もられている。
【0020】
1実施態様によると、ラインフィルタの抵抗器RF1、RF2、RF3、RF4、及びRF5は、それぞれ100Ωに設定され、ラインフィルタのコンデンサCF1、CF2、及びCF3は、0.01μFに設定され、ラインフィルタのコンデンサCF4は、0.56μFに設定される。当業者は、ケーブル110の特性に依存し別の値がこれらの構成要素について用いられうることを理解するであろう。
【0021】
1実施態様によると、発振器212は弛張型発振器として形成される。このタイプの発振器は、弛張型発振器が安定な発振周波数を持たないので水晶発振器ほど正確ではない。しかし、
図2のダイオード検出器は、もしもレシオメトリック(ratiometric)法(後述される)が用いられるならば、周波数に敏感ではない。さらに、
図2のダイオード検出器は、発振器の電圧出力に敏感ではなく、そうであるから発振器の電圧出力はまた安定である必要がない。
【0022】
図3は、
図2の発振器として使用されうる弛張型発振器の1つの実施態様のブロック図を示す。
図3の弛張型発振器は、導体220上の入力DC電源電圧Vddによって電力供給される演算増幅器U1で構成された比較器を用いる比較器弛張型発振器であり、導体222上に与えられたコモン電圧に接続されている。電源電圧Vddはまた、1実施態様では共に100kΩである抵抗器R3及びR4から成る分圧器に印加される。ノード302で分圧された電圧は演算増幅器U1の非反転入力304及び帰還抵抗器R2の一方の側へ供給される。帰還抵抗器R2の他方の側は、演算増幅器U1の出力306へ接続される。出力306は、負帰還抵抗器R1へも供給され、負帰還抵抗器R1の他方の側は演算増幅器U1の反転入力308へ接続されている。反転入力308は、コンデンサC1の一方の側に接続され、コンデンサC1の他方の側は、コモン電圧に接続される。
【0023】
動作において、演算増幅器U1の非反転入力304での電圧は、出力306を線路電圧Vddまで駆動する。これは順番に、反転入力308の電圧が非反転入力304の電圧に達するまで、コンデンサC1を充電させる。この入力点で、演算増幅器U1の出力306は、コモン電圧に降下する。その後、電流が、抵抗器R3及び抵抗器R4及びR2により形成された並列抵抗器を通って流れ、それにより、非反転入力304での電圧を下げる。コンデンサC1は、反転入力308での電圧が非反転入力304での電圧へ降下するまで抵抗器R1を介して放電し、それにより出力306がVddまでもう一度駆動される。こうして、発振器が、帰還抵抗器R2によって導入されたヒステリシスを用いながら、出力306上に発振信号を生成する。1実施態様によると、このヒステリシスは約1ボルトである。
【0024】
1の具体的な実施態様において、抵抗器R3及びR4は100kΩ、抵抗器R2は450kΩ、抵抗器R1は100kΩ、コンデンサC1は470pF、そして電圧Vddは、コモン電位の上位の10ボルトDCである。
【0025】
図3の発振器はまた、演算増幅器U1の出力306をバッファする第2の演算増幅器U2を含む。演算増幅器U2の非反転ノードは、ノード302へ接続され、且つ演算増幅器U2の反転入力は、演算増幅器U1の出力306へ接続される。演算増幅器U2の出力322は、抵抗器R0及びコンデンサC0から成る低域通過フィルタへ接続される。1実施態様において、抵抗器R0及びコンデンサC0の値はそれぞれ1kΩ及び1nFである。演算増幅器U2の出力322の低域通過フィルタは、出力のスルーレート(slew rate)を下げ、出力電圧Vexのよりゆるやかな変化を与える。R0及びC0によって形成された出力フィルタが過渡期の変化率を下げるけれども、依然として、発振の全振幅がダイオード検出器に達することを可能にする。
【0026】
図3の弛張型発振器の周波数は、積R1*C1及びヒステリシスのレベルによって設定された時定数に依存する。1実施態様によると、周波数は約50kHzである。
【0027】
演算増幅器U1及びU2は、コモン電圧から電源電圧Vddまで駆動することができるプッシュ/プル出力段を有すべきであり、且つ225℃まで又は越えて動作するように決定されるべきである。このタイプの演算増幅器は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)プロセスにおいて可能である。1つのそのような演算増幅器は、Cissoid 社のVolgaによって提供されている。さらに、
図3の弛張型発振器212における抵抗器及びコンデンサは、225℃を超える温度に耐えることができるべきである。
【0028】
発振器212における構成部品を含む
図2のセンサアセンブリにおける構成部品の全ては、225℃以上の動作温度に耐えることができなければならない。これら構成部品のアセンブリおよびパッケージは、同様に高温環境に適合していなければならない。そのようなパッケージは、金ワイヤ配線を有するセラミックPWB(プリント配線板)基板を含む。集積回路部品は、基板に直接取り付けられ、配線にワイヤボンディングされる。受動部品は、PWBに表面実装される。スルーホール組立も可能である。アセンブリ全体が、ガラス入りフィードスルーを有する密封金属パッケージに収容されている。このタイプのアセンブリは、ハイブリッドマイクロ回路であることが公知である。
【0029】
図2に示された実施態様において、5つの導体があり、発振器212に対し電源電圧を供給する導体220及び222、及びDCセンサ電流を供給する導体214、216、及び218である。上に記したように、導体214、216、及び218は、低温ゾーン電子機器116において、センサアセンブリ108内部の回路コモンに出来るだけ近い電圧で終端される。導体214は電流I1を供給し、導体218は電流I2を供給し、導体216は、コンデンサCsを通る電流I1とコンデンサCrを通る電流I2との間の差分である差分電流を供給する。別の実施態様において、導体216は外され、ダイオードD3のカソードとダイオードD4のアノードとの間のノードは、センサアセンブリ108内部の回路コモンに接続される。そのような実施態様において、4つだけの導体が、センサアセンブリ108を低温ゾーン電子機器116に接続するために必要とされる。そのような実施態様において、電流I1とI2との間の差異が、導体214上の電流I1の値と導体218上の電流I2の値とを用いて低温ゾーン電子機器116内で計算されうる。
【0030】
上で記されたように、コンデンサCsを通る電流I1は、fC
S(V
ex−2*0.5)に等しい。ここで、fは発振器信号の周波数であり、信号V
exは発振器によって与えられたピークツーピーク電圧であり、C
Sはコンデンサの容量であり、そして0.5は順方向バイアスのダイオードを跨ぐ電圧降下である。これは、電流I1がコンデンサCsの容量変化だけでなく、発振信号の周波数及びピークツーピーク電圧にも影響を受けることを意味する。上で記されたように、
図3に示されたような弛帳型発振器は、安定な周波数又は電圧を有する発振信号を生成しない。1実施態様によると、弛帳型発振器に関連した周波数及びピークツーピーク電圧の変化の影響を取り除くために、実施態様はここで、コンデンサCrに相対的なコンデンサCsの容量を表現する伝達関数を作るためにレシオメトリック表現を利用する。そのようなレシオメトリック表現は、発振信号の周波数又はピークツーピーク電圧の変化によって影響を受けない。なぜなら、周波数及びピークツーピーク電圧の変化は、コンデンサCs及びCrに等しく影響を与えるからである。例えば、1つのそのようなレシオメトリック表現は、
【数1】
ここで、項f及び項C
S(V
ex−2*0.5)が、消去されることが判りうる。サファイアセンサについては、代わりの伝達関数
【数2】
が用いられうる。方程式2の伝達関数は、サファイアセンサについて圧力で線形である出力を生成する。
【0031】
図4は、様々な温度での圧力の集合についての方程式1の伝達関数のグラフを与える。
図4において、伝達関数の値が、垂直軸400上に示され、且つ圧力値が、水平軸402上に示されている。グラフ404は225℃の温度についてのものであり、グラフ406は150℃の温度についてのものあり、グラフ408は25℃の温度についてのものある。
図4に示されたように、伝達関数は、温度が変えられると変化する。1つの実施態様によると、
図1の温度ベース伝達関数変換ユニット132が、伝達関数計算ユニット130によって計算された伝達関数を圧力値134に変換するために、温度の関数である係数を有する多項式が、伝達関数値134に適用される。特に、前記圧力値は次式のように決定される。
【数3】
ここで、Pは圧力値であり、Hは伝達関数であり、C
0(T),C
1(T),C
2(T),C
3(T),C
4(T),及びC
5(T)は温度依存係数であり、Tは温度である。温度依存係数は、特性化プロセスを介して決定されうる。
【0032】
高温ゾーン電子機器114及び低温ゾーン電子機器116は、エンジン圧力計測、海洋計測、地熱エネルギー計測、プラスチック押出しの決定を含む多数の環境、及び他の高温/高圧環境において用いられうる。
【0033】
さらに、発振器212の出力のピークツーピーク電圧が、DC電源128によって与えられた供給電圧と同じであるように示されているけれども、別の実施態様においては、変換器が、発振器212の出力で与えられ、ピークツーピーク電圧を上昇させる。
【0034】
要素は、上の別の実施態様として図示され又は記載されたが、それぞれの実施態様の部分は、上で記載された別の実施態様の全て又は部分と組み合されてもよい。
【0035】
本発明の主題は、構造的特徴及び/又は方法的動作を仕様化する言語で記載されてきたが、上で記載された具体的な特徴又は動作に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。むしろ上に記載の具体的な特徴及び動作は、本請求を実装するための例示的形態として開示されている。