【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的の一つは、上述の問題を緩和することである。
【0014】
本発明の一態様によれば、各々の既知の相対位置を維持すべく自由度無しで互いに機械的に接続された少なくともN個の三軸磁力計のネットワーク(Nは少なくとも2に等しい整数)に対する少なくとも1個の可動磁性体の位置を特定する方法を提供するものであり、本方法は、連続的に、
− 磁化可能な、すなわち磁化に付随する測定バイアスを含む測定値を出力として伝送可能な磁力計を検出するステップと、
− 補正バイアスにより、前記磁化可能な磁力計により伝送された測定値を補正するステップであって、前記補正バイアスが、位置特定フィルタリングへの入力として前記磁力計により提供された測定値と、前記磁力計により伝送されたデータの前記位置特定フィルタリング実行直後の推定値との偏差に対応している、補正するステップと、
− 前記磁化可能な磁力計の前記補正するステップを考慮することにより、前記磁力計が磁化不可能であると判定するステップとを含んでいる。
【0015】
考慮するバイアスはバイアスベクトルであり、すなわちこれらは単軸、二軸、または三軸であってよい。実際、磁化は、補正と同様に、二または三であってよい。
【0016】
従って、センサの近くある磁力計および強磁性成分の、連続的に補正される可動磁性体または磁性体群による磁化を考慮する。更に、このような方法により、装置の起動時の磁化を考慮することが可能になる。
【0017】
一実装において、本方法は、前記位置特定フィルタリングにおいて、前記磁化可能な磁力計により提供された測定値の影響を抑制する影響抑制ステップを含んでいる。
【0018】
従って、位置特定装置の精度および信頼性は、磁力計または磁力計群、および磁化可能な強磁性体の影響を抑制することにより向上する。
【0019】
一実装によれば、影響抑制ステップは、カルマンフィルタを用いる前記位置特定フィルタリングにおいて、前記磁化可能な磁力計の測定値に関連付けられた分散を拡大させることを含んでいる。
【0020】
従って、位置特定フィルタリングの実行中になされた推定は、直接磁化可能であるかまたは強磁性成分の影響を受け得る磁力計に付与された重みまたは重要性を表す。
【0021】
一変型において、影響抑制ステップは、前記位置特定フィルタリングにおいて、前記磁化可能な磁力計の測定値を考慮しない。
【0022】
従って、位置特定フィルタリングにおいて磁化可能な磁力計または磁力計群は考慮されない。このように考慮しないことで、必要な計算能力、従って例えば待機状態への切り替えに利用できる時間を使用できるシステムの消費を抑える利点をもたらす。
【0023】
一実装において、検出ステップは、前記磁化可能な磁力計により直接提供された状態情報のレジスタの飽和情報を利用する。この状態情報は、磁力計の1個以上の軸の飽和を記述することができる。
【0024】
従って、磁化可能な磁力計の1個以上の軸の飽和を検出することが可能である。
【0025】
一実装によれば、検出ステップは、前記磁化可能な磁力計により提供された測定値のノルムが第1の閾値よりも大きい場合に、磁化可能な磁力計を検出する。
【0026】
第1の閾値は例えば、完全な測定スケールの半分、または換言すれば、磁力計により測定可能な最大値の半分のオーダーであってよい。この閾値は、最下位ビットすなわちLSBとして表すことができる。
【0027】
従って、磁力計が飽和前に磁化されていた場合、当該磁力計が磁化されていることを検出することができる。更に、センサに対する顕著な磁場はまた、同じく磁化可能であるために磁力計上でオフセットまたはバイアスを示す近傍成分に対する顕著な磁場を反射する。
【0028】
一実装において、検出ステップは、前記磁化可能な磁力計により伝送されたデータの前記位置特定フィルタリング実行直後の推定値のノルムが、磁化可能性が検出されなかった他の磁力計により伝送されたデータの前記位置特定フィルタリング実行直後の推定値から計算された前記伝送データの推定値のノルムよりも第2の閾値だけ大きい場合に、磁化可能な磁力計を検出する。
【0029】
第2の閾値は、例えば、磁力計のフルスケールの2倍の値を有していてよく、LSBと表すことができる。
【0030】
従って、磁化可能な磁力計が、顕著な磁場が存在する場合に誤ったデータを返したならば、推定値により当該センサの磁化を検出することが可能になる。
【0031】
更に、量子化ノイズを抑制すべくより低いフルスケールを備えた磁力計の使用が望まれる場合、本方法によりセンサの測定範囲外であっても正確に磁化を検出することが可能になる。実際、推定された測定値はセンサの最大目盛まで振り切れることはない。
【0032】
一実装によれば、検出ステップが磁化可能な磁力計を検出するのは、磁力計の測定値の誤差のノルムが、他の磁力計の測定値の誤差の各々のノルムよりも第3の閾値だけ大きい場合であり、磁力計の測定値の誤差は、位置特定フィルタリングへの入力として前記磁力計により提供された測定値と、前記磁力計により伝送されたデータの前記位置特定フィルタリング実行直後の推定値との偏差に対応する。
【0033】
換言すれば、各磁力計について、実際の測定値と推定された測定値またはデータとの差異を最初に計算し、次いでこの差異を正規化して、磁化可能な磁力計毎に他のセンサの差異と比較する。
【0034】
従って、磁石が近くに存在しない場合、推定された磁場が顕著でない場合、または磁力計が飽和していない場合であっても、磁力計の磁化を検出することができる。
【0035】
一変型として、差異のノルムを閾値に比較する(当該ノルムを他のセンサの測定誤差に関連付けることなく)ことができる。
【0036】
一実装において、そこで前記磁化可能な磁力計が飽和していない場合に、補正ステップを実行する。
【0037】
上述の方法は、磁力計が飽和した場合、磁力計から返された測定値は(センサが飽和しているため)実際の磁場を表さないため、補正の信頼性を向上させることができる。
【0038】
一実装によれば、前記磁化可能な磁力計により伝送された測定値が第4の閾値を下回る場合に、補正ステップを実行する。
【0039】
第4の閾値は、磁力計のノイズまたはRMSノイズ(二乗平均平方根ノイズ)の5倍となるように選択可能であって、テスラを単位として表すことができる。
【0040】
上の条件が一般に満たされるのは、磁気発生源がセンサから遠く、当該センサを再び磁化するリスクが無い場合である。
【0041】
一変型において、補正ステップは、前記磁化可能な磁力計により伝送されたデータの推定値が第4の閾値を下回る場合に実行される。
【0042】
推定データを考慮する利点は、測定バイアスが生じず、閾値との比較の信頼性が高まることである。
【0043】
一実装において、補正ステップは、前記磁化可能な磁力計と可動磁性体または磁性体群とを分離する距離が第5の閾値よりも大きい場合に実行される。
【0044】
上述の閾値は、磁性体の最大寸法の倍数、例えば磁性体の最大寸法の3倍であるように選択することができる。
【0045】
従って、推定された磁場が当該センサについて計算されていなくても、磁化された磁力計を補正することができる。例えば、磁化されていることが検出された磁力計については、当該センサが補正されるまで推定された磁場を計算しなくてもよい。
【0046】
一実装によれば、補正ステップは、可動磁性体または磁性体群が安定な位置に存在する場合に実行される。
【0047】
従って、推定された測定値は、位置特定フィルタリングの位置特定アルゴリズムが可動磁性体の実際の位置に収束している場合に信頼性が高くなる。実際、高速移動に際して、測定誤差はアルゴリズムの収束誤差も含んでいる。
【0048】
上述の閾値は例えば10
−6mm
2であってよい。
【0049】
一実装において、補正ステップは、可動磁性体または磁性体群の推定位置の分散が複数の連続する推定値にわたり第6の閾値を下回る場合に実行される。
【0050】
実際、低い分散は可動磁性体の僅かな動きを記述しており、従って位置特定アルゴリズムは可動磁性体の位置に向かって収束するのに時間を要した。
【0051】
一実装によれば、補正ステップは、磁化可能性が検出されなかった磁力計の測定誤差の分散が複数の連続する推定値にわたり第7の閾値を下回る場合に実行される。
【0052】
上述の閾値は、Tesla
2で表す、磁力計のノイズまたはRMSノイズの2乗の25倍であるように選択することができる。
【0053】
従って、測定誤差は、位置特定フィルタリングの収束の状態をも記述する。低い測定誤差は、フィルタが可動磁性体の位置に向かって収束したことを意味する。
【0054】
また、本発明の別の態様によれば、
− 各々の既知の相対位置を維持すべく自由度無しで互いに機械的に接続された少なくともN個の三軸磁力計のネットワーク(Nは少なくとも2に等しい整数)と、
− 当該ネットワークの磁力計により提供された測定値および位置特定フィルタに基づいて、可動磁性体または磁性体群の位置を判定することに適した電子処理ユニットとを含み、
前記電子処理ユニットが、
− 磁化可能な、すなわち磁化に付随する測定バイアスを含む測定値を出力として伝送可能な磁力計を検出する手段と、
− 補正バイアスにより、前記磁化可能な磁力計により伝送された測定値を補正する手段であって、前記補正バイアスが、位置特定フィルタリングへの入力として前記磁力計により提供された測定値と、前記磁力計により伝送されたデータの前記位置特定フィルタリング実行直後の推定値との偏差に対応している補正する手段と、
− 前記磁化可能な磁力計の前記補正するステップを考慮することにより、前記磁力計が磁化不可能であると判定する手段とを含む少なくとも1個の可動磁性体の位置を特定するシステムをも提案する。
【0055】
本発明は、非限定的な例として記述され、添付図面で示すいくつかの実施形態を精査することにより理解が深まろう。