特許第6559240号(P6559240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559240リン含有難燃剤を含むポリマー組成物の加工安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559240
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】リン含有難燃剤を含むポリマー組成物の加工安定化
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20190805BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20190805BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190805BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/51
   C08K3/22
   C08K3/38
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-536344(P2017-536344)
(86)(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公表番号】特表2018-501384(P2018-501384A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】US2015031751
(87)【国際公開番号】WO2016111717
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】62/101,789
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517219306
【氏名又は名称】ランクセス ソリューションズ ユーエス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストックデイル、ザッカリー、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ティンバーレイク、ラリー、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン、マーク、ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィールディング、ウィリアム、アール.
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−063843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱硬化性又は熱可塑性のポリマー;
b)200℃以上の温度で0.01時間〜20時間、1種以上の式(I)の化合物
【化1】

(式中、RはC1〜12アルキル、C6〜10アリール、C7〜18アルキルアリール、又はC7〜18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは無置換であるか、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、C1〜4アルコキシ、カルボキシ、又はC2〜5アルコキシカルボニルで置換されており;Mは金属であり;yは1〜4の数であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示し、pは1〜4の数である)を加熱することを含む方法によって1種以上の式(I)の化合物を熱変換することによって得られる、難燃性ポリマー組成物の総重量基準で1重量%〜50重量%の難燃性材料;並びに
c)ハイドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物からなる群から選択される1種以上の化合物;
を含有し、前記金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物の前記金属が亜鉛又はカルシウムである、難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
d)ハロゲン化難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフェート難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホネート、アルキル若しくはアリールホスフィネート、アルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコーン;ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、金属の水酸化物、酸化物、水酸化酸化物及びホウ酸塩であって前記金属が亜鉛とカルシウム以外のもの、炭酸塩、硫酸塩、硫化物、リン酸塩、亜リン酸塩、カルボン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、及び金属塩混合物、からなる群から選択される1種以上の追加的な難燃剤、1種以上の相乗剤、及び/又は1種以上の難燃性補助剤を含有する、請求項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
(d)が、ハロゲン化難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフェート難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホネート、アルキル若しくはアリールホスフィネート、アルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコーン;ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、又はメラミン塩のうちの1種以上を含む、請求項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記難燃性材料(b)が、
i)1種以上のホスホン酸化合物を1種以上の適切な金属化合物と処理することで、R及び/若しくはMについて複数の値を含む式(I)に対応する中間塩錯体を得て、その後前記中間塩錯体を200℃以上の温度で0.01時間〜20時間加熱することにより、前記中間塩錯体を合成すること;又は、
ii)R及び/若しくはMについて異なる値を有する2種以上の個別の式(I)の金属ホスホン酸塩を1つにまとめた後、均質な塩混合物を200℃以上の温度で0.01時間〜20時間加熱することにより、均質な塩混合物を合成すること;又は、
iii)R及び/若しくはMについて異なる値を有することで異なる2種以上の別々の式(I)の金属ホスホン酸塩を200℃以上の温度で0.01時間〜20時間加熱することで別個の難燃性材料を形成し、これらを引き続き互いに混ぜ合わせることでブレンドされた難燃剤組成物を形成すること;
を含む方法によって得られる、請求項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項5】
式(I)中のMがLi、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Sn又はSbである、請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項6】
式(I)中のMがAl又はCaである、請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項7】
式(I)中のRが無置換のC1〜6アルキル、Cアリール、C7〜10アルキルアリール、又はC7〜12アリールアルキルである、請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項8】
Rがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ベンジル、又はフェニルである、請求項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性又は熱可塑性のポリマーが、ポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンコポリマー、ゴム、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー、スチレンコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、生分解性ポリマー、又はこれらのブレンド物のうちの1種以上を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記熱硬化性又は熱可塑性のポリマーが、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、又はポリウレタンのうちの1種以上を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性又は熱可塑性のポリマーが強化剤を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性又は熱可塑性のポリマーが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス充填ポリブチレンテレフタレート、ガラス充填ポリエチレンテレフタレート、ガラス強化エポキシ樹脂、熱可塑性ポリアミド、又はガラス充填熱可塑性ポリアミドを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項13】
難燃性ポリマー組成物の作製方法であって、前記方法が、
200℃以上の温度で0.01時間〜20時間、1種以上の式(I)の化合物
【化2】

(式中、RはC1〜12アルキル、C6〜10アリール、C7〜18アルキルアリール、又はC7〜18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは無置換であるか、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、C1〜4アルコキシ、カルボキシ、又はC2〜5アルコキシカルボニルで置換されており;Mは金属であり;yは1〜4の数であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示し、pは1〜4の数である)を加熱することを含む方法によって1種以上の式(I)の化合物を熱変換することによって得られる、前記難燃性ポリマー組成物の総重量基準で1重量%〜50重量%の難燃性材料;並びに
ハイドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物からなる群から選択される1種以上の化合物;
をポリマー樹脂に添加し、その後得られた混合物を高温で溶融加工することを含む、方法。
【請求項14】
前記金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物の前記金属がカルシウム又は亜鉛である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年1月9日に出願された米国仮特許出願第62/101,789号明細書の優先権を主張する。
【0002】
高い応力条件下で加工され、かつ200℃を超える温度でホスホン酸塩を加熱することで得られる難燃剤材料を含有する、例えばポリアミド、HIPS、ポリエステル等を含む組成物などのポリマー組成物の加工安定性は、選択した粘土又はカルシウム又は亜鉛のホウ酸塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物等などの金属化合物を添加することによって向上する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及び他の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー樹脂などのポリマーへの難燃性添加剤の使用は長年知られている。得られる難燃剤/ポリマーの組成物の安定性、例えば短期又は長期の熱安定性、他の環境要因又は他の化学成分への曝露等に対する安定性は、使用される樹脂及び具体的な難燃剤に依存して損なわれ得ることも周知である。例えば熱可塑性、エラストマー性、又は熱硬化性のポリマーなどのポリマーの熱加工では、多くの場合、ポリマー組成物は過酷な条件下で高温に曝露される。
【0004】
例えば、いくつかのポリマーは例えば200℃、220℃、250℃以上の高温で加工されるが、多くの公知の難燃剤は、揮発性が高過ぎ、熱安定性が不十分であり、樹脂の化学的特性又は機械的特性等に悪影響を及ぼすことから、これらの条件下での使用に適していない。いくつかのリン酸エステルなどの特定の有機リン系難燃性化合物も、これらが添加されるポリマーの機械的特性に悪影響を与え得る可塑化効果を示す場合がある。いくつかの化合物は加工条件下で特定のポリマー中で安定ではなく、例えばいくつかのリン酸塩は加水分解に対して比較的不安定であり、これが難燃剤を枯渇させるだけでなく、望ましくない様々なリン酸化合物の生成や樹脂の劣化も生じさせる場合がある。
【0005】
リン含有酸の塩は公知の難燃性添加剤であり、例えば、米国特許第3,894,986号明細書には、リン酸のアルカリ塩を含む難燃性熱可塑性ポリエステルが開示されており、米国特許第4,972,011号明細書には、アルキルホスホン酸のアルミニウム塩、又はアルカン−ホスホン酸のモノアルキルエステル、すなわち式(Ia)の化合物の塩(式中、Rは例えばメチル、エチル、プロピル、又はイソプロピル等であり、R’は水素、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである)が開示されている。
【化1】
【0006】
独国特許第3833977号明細書には、ジメチルメチルホスフィン酸塩と、金属酸化物又は水酸化物との、高圧かつ120〜200℃の温度での水中での反応による式(Ia)の化合物の金属塩の合成、及びこれらの塩とアミン(エチレンジアミン及びメラミンなど)との付加体、及びこの付加体の熱可塑性物質中での難燃剤としての使用が開示されている。
【0007】
ホスフィン酸の塩、すなわち式(II)の化合物であってR及びRがアルキル又は炭素系芳香族である化合物も、熱可塑性ポリマー用の公知の難燃性添加剤である。
【化2】
【0008】
MがMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Li、Na、K、又はプロトン化された窒素塩基から選択される塩は公知である。例えば、米国特許第5,780,534号明細書及び米国特許第6,013,707号明細書には、式(II)のホスフィン酸カルシウム及びホスフィン酸アルミニウムが、ポリエステルに特に有効であるとされることが記載されている。
【0009】
多くの難燃剤系で一般的なように、リン含有酸誘導体の性能は、他の難燃剤、相乗剤、及び補助剤の存在によって高めることができる。米国特許第6,472,448号明細書には、難燃剤としてのオキシアルキル化アルキルホスホン酸とポリリン酸アンモニウムとの組み合わせが存在する難燃性の硬質ポリウレタンフォームが開示されている。
【0010】
米国特許第6,365,071号明細書には、A)上の式(II)のホスフィン酸塩と、B)アラントイン、ベンゾグアナミン、グルコールウリル、シアヌル酸尿素、シアヌル酸メラミン、及びリン酸メラミンなどの窒素化合物と、を含む熱可塑性ポリマー用の相乗的な難燃剤の組み合わせが開示されている。
【0011】
米国特許第6,255,371号明細書には、A)上の式(II)のホスフィン酸塩と、B)例えばポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、及びポリリン酸メレムなどのメラミンの縮合生成物又は反応生成物と、を含む難燃剤の組み合わせが開示されている。米国特許第6,547,992号明細書には、ホスフィン酸塩と、窒素を含まない少量の無機及び/又は鉱物性の化合物を含む熱可塑性ポリマー用の難燃剤の組み合わせが開示されている。
【0012】
例えば米国特許第6,365,071号明細書及び米国特許第6,255,371号明細書に列挙されているホスフィン酸塩は熱的に安定であるとされているが、これらの材料は、全てのポリマー系での使用に必ずしも適してはおらず、より厳しい条件下での加工についての問題を生じさせる場合があり、あるいは特定のポリマーに必要とされる難燃効果が不足している場合がある。
【0013】
式(Ia)の化合物の金属塩は熱的に安定であることも報告されているものの、これは当然相対的な言葉である。米国特許出願公開第2007/0029532号明細書に開示されているように、ポリエステル及びポリアミドの加工の際に遭遇する温度でのそのようなホスホン酸塩の分解は周知であり、加工中にポリマーにダメージを与える。
【0014】
米国特許第5,053,148号明細書には、例えば電気絶縁材料及び/又は断熱材料として有用な、ホスホン酸金属塩又はホスホン酸金属塩の前駆体を200℃より高い温度まで加熱することによって得られる耐熱性の発泡体が開示されている。この反応を多孔質の他の基質に拡張又は与えるための使用も開示されている。例えば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリシロキサン、又はポリホスファゼンなどの熱可塑性ポリマー又はプラスチックを含むそのような基質は、ホスホン酸金属塩及び/又はそれらの前駆体との混合物として発泡工程の中に導入することができる。
【0015】
米国特許第5,053,148号明細書には、「発泡工程」に従ってホスホン酸金属塩とポリアミドとの混合物を加熱することによって多孔質ポリアミドを製造し得ることが示唆されているかもしれないが、米国特許第5,053,148号明細書おいては、高温でそのようなホスホン酸塩が分解して熱可塑性のエンジニアリングプラスチックとしては「使用に適さない脆い組成物」が得られるという米国特許出願公開第2007/0029532号明細書の開示に対処することも反論することもなされていない。多孔質発泡体がホスホン酸金属塩とポリアミドなどのポリマーとを加熱することによって製造され得ることの示唆の他に、米国特許第5,053,148号明細書には、そのような例示されていない材料の特性がどのようなものとなり得るのかの記述が含まれていない。
【0016】
アルキルホスホン酸金属塩の存在下で特定の熱可塑性樹脂を熱的に加工することの難しさ、及びそれによって得られるポリマー組成物の乏しい物理特性は、実験によって確認されている。
【0017】
同時係属中の米国特許出願第14/337,500号明細書及び米国特許出願第14/592,472号明細書には、特定のアルキルホスホン酸の金属塩(アルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩等など)を、200℃を超える温度で加熱することによって得られる製品が、400℃より高い温度で熱的に安定であり、上述した塩の多くで観察されたポリマーの物理特性に対する悪影響なしで、多くの熱可塑性ポリマー樹脂に熱的に組み込めることが開示されている。しかし、非常に過酷な条件で加工される米国特許出願第14/337,500号明細書及び米国特許出願第14/592,472号明細書の難燃剤を含む特定のポリマーは、一層の処理安定化が有益な場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
1種以上のホスホン酸塩、すなわち式(I)の化合物
【化3】

(式中、Rはアルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、pは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4であり、Mは金属であり、yは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4、多くの場合2又は3であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示す)を、200℃以上、例えば220℃以上の温度、通常は250℃以上、例えば250℃〜400℃、又は260℃〜360℃の温度で加熱することによって得られるリン含有難燃性材料を含むポリマー組成物に、金属ホウ酸塩、酸化物、水酸化物、又は水酸化酸化物などの、例えば特定の金属酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、硫化物、スズ酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩などの特定の選択される無機化合物を添加すると、高温加工条件下で容易に加工される難燃性組成物が得られ、その結果とてもよく保持された物理特性を有するポリマー組成物及び物品が得られることが見出された。
【0019】
また、例えば上述の成分(b)の材料などのより熱的に安定な難燃性材料に前記化合物を化学的に変換する条件で式(I)の化合物を加熱することによって得られる材料と、金属酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、硫化物、スズ酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、粘土、カルボン酸塩、及びこれらの錯体からなる群からの1種以上の選択される化合物、例えばカルシウム若しくは亜鉛のホウ酸塩、酸化物、又は水酸化物と、をポリマー樹脂に添加すること、並びにその後、得られる混合物を押出などの例えば高温でポリマー及び難燃剤を溶融加工することによって高温で加工すること、を含む難燃性ポリマー組成物の作製方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ある幅広い実施形態においては、本発明は、樹脂の物理的特性が悪影響を受けることなしに、優れた難燃特性を有し、かつ例えば高温押出などの厳しい条件下で驚く程良好な加工性を示すポリマー組成物を提供し、例えば:
a)例えば熱可塑性ポリマーなどの熱硬化性又は熱可塑性のポリマー;
b)1種以上のホスホン酸塩、すなわち式(I)の化合物
【化4】

(式中、Rはアルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、pは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4であり、Mは金属であり、yは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4、多くの場合2又は3であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示す)を、200℃以上、例えば220℃以上の温度、通常は250℃以上、例えば約250℃〜約400℃、又は約260℃〜約360℃の温度で加熱することによって得られる、難燃剤組成物の総重量基準で1重量%〜50重量%の難燃性材料;並びに、
c)例えばハイドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物であって金属が亜鉛又はカルシウムである化合物からなる群から選択される1種以上の化合物などの、1種以上の粘土、金属酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、硫化物、スズ酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、又はこれらの錯体;
を含有する難燃性ポリマー組成物である。
【0021】
成分a)のポリマーは特には限定されないが、本発明の多くの実施形態においては、ポリマーは例えば熱可塑性ポリオレフィン、HIPS、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド等などの熱可塑性樹脂、並びにエポキシ樹脂及び他の同様の特性を有する樹脂から選択される。難燃剤b)としては、同時係属中の米国特許出願第14/337,500号明細書に記載されている材料が非常に効果的であることが示されている。成分c)の粘土及び金属化合物は、フィラー又は相乗剤等として他のポリマー組成物中にしばしば存在する、典型的には周知の市販されている材料である。しかし、厳しい加工条件下で、この群から選択される特定の材料がa)及びb)のポリマー/難燃剤組成物の安定化に有効であることが見出された。多くの実施形態は、上の成分b)及びc)に加えて、難燃剤、相乗剤、補助剤、及び他の一般的な添加剤を更に含有する。
【0022】
本組成物中の難燃剤b)として有用な材料は、例えば同時係属中の米国特許出願第14/337,500号明細書及び米国特許出願第14/592,472号明細書中で見ることができ、材料の合成方法はその中で見ることができる。これらの難燃剤は、ポリマー組成物中に組み込む前に式(I)の塩を熱変換することによって得られる。例えば米国特許出願第14/337,500号明細書中に示されているように、式(I)の化合物を高温で直接ポリマーの中に組み込もうとすると、ポリマーの劣化が生じる場合がある。通常、b)の難燃性材料は、1種以上のホスホン酸塩、すなわち式(I)の化合物
【化5】

(式中、Rはアルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、pは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4であり、Mは金属であり、yは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4、多くの場合2又は3であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示す)を、200℃以上、例えば220℃以上の温度、通常は250℃以上、例えば250℃〜400℃、又は260℃〜360℃の温度で加熱することによって得られる。
【0023】
例えば式(I)において、yが1であるM(+)yはLi、Na、又はKなどの一価カチオンを表し、yが2であるM(+)yはMg++、Ca++、又はZn++等などの二価カチオンを表し、yが3であるM(+)yはAl+++等などの三価カチオンを表す。有機金属種で一般的なように、化学式は理想化されており、出発物質は1つの酸素アニオンが2つの金属カチオン間で共有されている場合等のように特定の原子価が共有されている錯塩又は塩が含まれていてもよい。典型的には、出発塩は電荷を持ち釣り合いをとっている。すなわち式(I)の化合物であってp=y、例えばM(+)yがNaの場合はpが1、MがAl+++の場合はp=3等である。
【0024】
理論に拘束されることは望まないが、分析データは、記載されている温度で式(I)の化合物を加熱することによって生成する材料が化合物又は化合物の混合物を含み、そのうちの1種以上が概して経験式(IV)によって表されると考えられることを示唆している:
【化6】

(式中、R及びMは式(I)について定義された通りであり、qは1〜7の数、例えば1、2、又は3であり、rは0〜5の数、例えば0、1、又は2、多くの場合0又は1であり、yは1〜7の数、例えば1〜4、例えば1、2、3、又は4であり、nは1又は2である。ただし、2(q)+r=n(y)である)。典型的にはそのように生成した材料中には2種以上の化合物が存在すると考えられる。
【0025】
式(I)のホスホン酸塩は公知であり、それらの様々な合成方法は当該技術分野で述べられている。例えば、米国特許出願公開第2006/0138391号明細書には、式(I)の化合物であって、Rは水素、C1〜18アルキル、C5〜6シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C6〜10アリール、又はC7〜11アラルキルであり、アルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキルは無置換であってもよく、あるいはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、C1〜4アルコキシ、カルボキシ、又はC2〜5アルコキシカルボニルで置換されていてもよく;Mは例えばLi、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Ge、B、Al、Cu、Fe、Sn又はSb等の例えば周期律表のIA族、IB族、IIA族、IIB族、IIIA族、IVA族、VA族、又はVII族から選択することができる、化合物が開示されている。留意すべきは米国特許出願公開第2006/0138391号明細書の中では、上の式(I)に相当する化合物のいずれも200℃より高い温度に加熱されておらず、また高温でポリマー樹脂に配合されていないことである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態においては、式(I)の塩は、RがC1〜12アルキル、C6〜10アリール、C7〜18アルキルアリール、又はC7〜18アリールアルキル基である化合物を含み、前記基は米国特許出願公開第2006/0138391号明細書に記載されているように更に置換されているが、多くの場合Rは無置換のC1〜12アルキル、C6〜10アリール、C7〜18アルキルアリール、又はC7〜18アリールアルキルである。例えば、Rは置換又は無置換の、典型的には無置換の、C1〜6アルキル、Cアリール、C7〜10アルキルアリール、又はC7〜12アリールアルキル、例えばC1〜4アルキル、Cアリール、C7〜19アルキルアリール、又はC7〜10アリールアルキルである。
【0027】
本発明の最も一般的な実施形態においてはM(+)yはほとんどのあらゆる金属カチオンであってもよいが、Mは通常Li、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn、又はSbから選択され、例えばLi、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Sn、又はSb等であり、多くの実施形態においては、MはLi、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Sn、又はSbであり、ある実施形態においては、MはAl、Zn、又はCaである。例えば、MがAl又はCaの場合に非常に優れた結果が得られる。
【0028】
アルキルとしてのRは、特定の数の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの非分岐アルキル、及びイソプロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、エチルヘキシル、t−オクチル等などの非分岐アルキルを含む。例えば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルであり、多くの場合Rはメチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルであり、例えばメチルである。
【0029】
Rがアリールの場合、典型的にはこれはフェニル又はナフチルであり、例えばフェニルである。アルキルアリールとしてのRの例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等から選択される基などの1つ以上のアルキル基で置換されたフェニルが挙げられる。アリールアルキルとしてのRの例としては、例えばベンジル、フェネチル、スチリル、クミル、フェンプロピル等が挙げられる。ある実施形態においては、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、又はベンジルであり、例えばメチル又はフェニルである。
【0030】
ある実施形態においては、例えば出発物質は式(I)の1種以上の化合物であって、Rがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ベンジル、又はフェニルであり、MがAl、Zn、又はCaであり、pが2又は3である化合物である。ある具体的な実施形態においては、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はフェニルであり、P=3であり、MはAlである。別の具体的な実施形態においては、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はフェニルであり、P=2であり、MはZn又はCa、例えばCaである。
【0031】
典型的には、上のような式(I)の化合物の熱処理によって、2種以上の化合物を含有する材料を生成し、そのうちの少なくとも1種が概して経験式(IV)で示されるもの及びその錯体脱水生成物であると考えられる。有機金属種で一般的なように、式(IV)は理想化されており、生成物には重合塩、錯塩、特定の原子価が共有されている塩等が含まれていてもよい。
【0032】
例えば、Mがアルミニウムである場合、すなわちMがAlである式(I)の化合物が本発明に従って加熱される場合、元素分析はqが1でありrが1でありnが1でありyが3である経験式(IV)を有する生成物の生成を示す。
【0033】
本発明の難燃剤は、典型的には化合物の混合物である。1種のR基及び1種の金属が存在する式(I)の化合物から形成される場合、化合物の組成物は典型的には少なくとも1種の式(IV)の化合物を含む形態であり、前記混合物及び前記化合物又は式(IV)の化合物は1種のR基及び1種の金属を含む。本発明のいくつかの実施形態においては、難燃性材料は2種以上のR基及び/又は2種以上の金属が存在する化合物の混合物を含み、2種以上のR基及び/又は2種以上の金属を含む式(IV)の化合物の混合物も存在する。2種以上のR基及び/又は2種以上の金属を含む化合物を含む本発明の難燃剤は、様々な方法で形成することができる。
【0034】
中間塩錯体法と呼ぶことができる第1の方法においては、1種以上のホスホン酸化合物が1種以上の適切な金属化合物で処理されて、式(I)に対応する中間塩錯体を与える。この錯体はR及び/又はMについて複数の値を含む。多くの場合、中間塩錯体の形成において使用される金属又は少なくとも1種の金属は二座又は多座金属であり、2種以上の中間錯体が形成され得る。その後この塩錯体を上述の通りに熱処理することで、
a)2種以上のR基及び/若しくは2種以上のM基を有する式(IV)に対応する少なくとも1種の化合物、並びに/又は
b)異なるR基及び/若しくは異なるM基を有する化合物を含む、式(IV)に対応する化合物が存在する混合物、
を含む難燃性材料が得られる。
【0035】
あるいは、均質塩混合法と呼ぶことができる第2の方法においては、式(I)の2種以上の金属ホスホン酸塩を1つにまとめることで、R及び/又はMについて異なる値を有する塩を含む均質な塩混合物が形成される。その後この混合物を上述の通りに熱処理することで、
a)2種以上のR基及び/若しくは2種以上のM基を有する式(IV)に対応する少なくとも1種の化合物、並びに/又は
b)異なるR基及び/若しくは異なるM基を有する化合物を含む、式(IV)に対応する化合物が存在する混合物、
を含む難燃性材料が得られる。
【0036】
R及び/又はMについて複数の値を有する式(IV)の化合物を含有する本発明の難燃性材料を得るための第3の方法は、上述のようなR及び/又はMについて異なる値を有することで異なる式(I)の2種以上の別個の金属ホスホン酸塩を、別々に加熱して2種以上の本発明の難燃性材料を別々に得ることを含み、これらは引き続き混ぜ合わされることでブレンドされた難燃剤組成物を形成する。
【0037】
前述の3つの方法、すなわち中間塩錯体法、均質塩混合法、及び別個に得られた難燃性材料のブレンド、によって得られる混合物の厳密な組成は、同じホスホン酸化合物及び金属から出発した場合であっても通常は異なるであろう。そのため、異なる方法の生成物についての物理特性、安定性、混和性、及び性能における相違に大抵は直面する。
【0038】
本発明の最も広い実施形態においては、成分c)の化合物の金属は特には限定されず、混合金属種を用いてもよい。化合物の多くは当業者に周知の市販の材料である。成分c)において有用な粘土は、ハイドロタルサイト及び他の層状複水酸化物、ベーマイト、カオリン、例えば部分的に脱水された合成ハイドロタルサイトDHT−4Aなどの天然粘土又は合成粘土であってもよい。
【0039】
厳密な粘土、金属化合物、又はこれらの組み合わせは、選択された特定のポリマー樹脂に応じて様々であってもよいことが見込まれる。具体的な実施形態においては、成分c)は、DHT−4などのハイドロタルサイト、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物であってこれらの金属が亜鉛又はカルシウムであるもの、から選択される1種以上の化合物である。多くの場合、本発明の組成物は粘土と、亜鉛又はカルシウムのホウ酸塩、酸化物、又は水酸化物の両方を含有するであろう。
【0040】
例えば、ホウ酸亜鉛、酸化カルシウム、又は水酸化カルシウムを含有するガラス充填ポリアミド組成物において非常に優れた結果が得られた。これらの粒子状材料は、例えばポリエステル、エポキシ樹脂等の他の樹脂の中でも有益であり得るが、特定の樹脂処方に対する最適な材料が樹脂に応じて変わっても驚くべきことではないであろう。安定化成分c)のための最適な選択は、標準的な実験室手順に従って本開示を踏まえて実施する者が確認できるであろう。
【0041】
本発明の難燃剤組成物のポリマーは、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、及び生物分解性ポリマーなどの当該技術分野で公知の任意のポリマーであってもよい。ポリフェニレンエーテル/スチレン樹脂ブレンド物、ポリ塩化ビニル/ABS若しくは他の耐衝撃性改質ポリマー(メタクリロニトリル及びα−メチルスチレン含有ABS等)、及びポリエステル/ABS、又はポリカーボネート/ABS、及びポリエステル+いくつかの他の耐衝撃性改質剤などの異なるポリマーの混合物も使用することができる。そのようなポリマーは市販されており、あるいは当該技術分野で周知の手段によって製造される。
【0042】
特定の実施形態は、例えばHIPSなどのスチレン系ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル等の高温で加工及び/又は使用される熱可塑性ポリマーを含有する組成物に関する。
【0043】
例えば、ポリマーはポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタンであってもよい。ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂であってもよく、例えばガラス強化などの強化がされていてもよい。2種以上のポリマー樹脂が存在していてもよい。具体的な実施形態においては、ポリマーはエンジニアリングポリマー、例えば熱可塑性又は強化された熱可塑性のポリマー、例えば任意選択的にガラス充填されていてもよいポリエステル、エポキシ樹脂、又はポリアミドなどのガラス強化熱可塑性ポリマー、例えばガラス充填ポリアルキレンテレフタレートなどのガラス充填ポリエステル又はガラス充填ポリアミドである。
【0044】
ポリエステル系樹脂としては、例えばジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、及びヒドロキシカルボン酸又はラクトン成分の重縮合によって得られるホモポリエステル及びコポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートなどの芳香族飽和ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0045】
ポリアミド系樹脂としては、ジアミンとジカルボン酸由来のポリアミド;必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わせられてもよい、アミノカルボン酸から得られるポリアミド;並びに必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わせられてもよい、ラクタム由来のポリアミド;が挙げられる。ポリアミドには、少なくとも2つの異なる種類のポリアミド構成成分由来のコポリアミドも含まれていてもよい。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、及びナイロン12などの脂肪族ポリアミド;例えばテレフタル酸及び/又はイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と、例えばヘキサメチレンジアミン又はノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンから得られるポリアミド;並びに、例えばテレフタル酸及びアジピン酸の両方などの芳香族と脂肪族の両方のジカルボン酸と、例えばヘキサメチレンジアミン及びその他などの脂肪族ジアミンから得られるポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは単独で使用されてもよいし、組み合わせて使用されてもよい。
【0046】
本発明のある実施形態においては、ポリマーには、例えば280℃以上、300℃以上、いくつかの実施形態においては320℃以上、例えば340℃以上、などの高温で融解するか典型的に加工されるポリアミドが含まれる。280℃以上の融点を有するポリアミドの例としては、ナイロン46、ナイロン4T;ポリアミドMXD,6;ポリアミド12,T;ポリアミド10,T;ポリアミド9,T;ポリアミド6,T/6,6;ポリアミド6,T/D,T;ポリアミド6,6/6,T/6,1及びポリアミド6/6,Tなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0047】
ポリマー組成物中の難燃剤b)及び成分c)の濃度は当然、最終ポリマー組成物中に見出される難燃剤、ポリマー、及び他の成分の厳密な化学組成に依存する。例えば、難燃剤b)は、最終組成物の総重量の1〜50重量%、例えば1〜30重量%の濃度で存在していてもよい。典型的には、少なくとも2%の難燃剤b)は、例えば3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、又は25%以上存在するであろう。多くの実施形態においては、難燃剤b)は最大45%の量で存在する一方で、他の実施形態においては、本発明の難燃剤の量はポリマー組成物の40%以下、例えば35%以下である。当然のことではあるが、他の難燃剤又は難燃剤相乗剤と組み合わせて使用される場合、より少ない難燃剤b)しか必要とされないはずである。
【0048】
成分c)は、組成物の加工特性及び物理特性を望ましく向上させる量で存在する。いくつかの組成物においては、少量の成分c)しか、例えば組成物の総重量基準で1%、2%、3%、4%、又は5%しか必要とされず、別の実施形態においては10%、15%、20%、25%、又はそれ以上が用いられてもよい。
【0049】
本発明の難燃性ポリマー組成物を作製するために、任意の公知の配合技術を使用することができ、例えば成分b)及びc)はブレンド、押出、繊維成形若しくはフィルム成形等によって溶融ポリマーに組み込まれてもよい。いくつかの例においては、b)とc)のうちの一方又は両方がポリマーの成形時又は硬化時にポリマーの中に組み込まれ、例えば、架橋前のポリウレタンプレポリマーに添加されるか、ポリアミド形成前のポリアミン若しくはアルキル−ポリカルボニル化合物に、又は硬化前のエポキシ混合物に添加される。
【0050】
ある具体的な実施形態においては、ポリマー、成分b)、c)、及び、追加的な難燃剤、相乗剤、補助剤等などの他の任意選択的な添加剤を含有するバスターバッチを作製し、その後マスターバッチは追加的なポリマー及び他の任意選択的な成分の中に配合される。例えば、100部のポリアミド、130部の難燃剤b)、市販のEXOLIT OP 1230(Clariantから、ジエトキシホスフィン酸アルミニウム塩含有)などの45部の追加的な難燃剤、及び18部のホウ酸亜鉛を含有するマスターバッチを作製し、その後追加的なポリアミド+ガラス繊維と共に押出機の中に入れることで加工され安定化された難燃性のガラス充填ポリアミドが得られる。
【0051】
多くの実施形態においては、本発明の難燃性ポリマー組成物は、(a)ポリマー、(b)難燃剤、(c)安定化粘土又は金属化合物、並びに(d)1種以上の追加的な難燃剤、及び/又は1種以上の相乗剤若しくは難燃性補助剤を含有し、これには、例えばハロゲン化難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールリン酸塩難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホン酸塩、アルキル若しくはアリールホスフィン酸塩、アルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩(例えばトリス(ジエトキシホスフィネート)アルミニウムなどのトリス(ジアルキトホスフィネート)アルミニウム)などの他の難燃剤;並びに、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコーン;ポリフェニレンエーテル(PPE)、ホスフィンオキシド、及び例えばベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド等のポリホスフィンオキシドなどの相乗剤又は補助剤;メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、メラミンリン酸塩、メラミン金属リン酸塩等(ただしこれらに限定されない)などの、メラミン、メラミン誘導体及び縮合生成物、メラミン塩;粘土、金属塩(水酸化物、酸化物、水酸化酸化物、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、金属塩混合物等)、例えばタルク及び他のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩(DRAGONITE)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、HALLOYSITE若しくはリン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、モリブデン酸亜鉛(KEMGARD 911A/B)、リン酸亜鉛(KEMGARD 981)、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化アンチモン水和物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び/又は水酸化ジルコニウム等などの成分c)に加えて添加される無機化合物;
が含まれる。
【0052】
別段の規定がない限り、本出願の文脈において、金属リン酸塩、メラミンリン酸塩、メラミン金属リン酸塩等などの「リン酸の塩」における成分として使用される場合の用語「リン酸塩(ホスフェート)」は、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、又はリン酸縮合生成物アニオン若しくはポリアニオンのことをいう。
【0053】
同様に、別段の規定がない限り、本出願の文脈において、金属亜リン酸塩等などの「亜リン酸の塩」における成分として使用される場合の用語「亜リン酸塩(ホスファイト)」は、亜リン酸塩又は亜リン酸水素塩のことをいう。
【0054】
例えば、本発明の具体的な実施形態としては、
a)熱硬化性又は熱可塑性のポリマー;
b)200℃以上の温度で0.01時間〜20時間、1種以上の式(I)の化合物
【化7】

(式中、RはC1〜12アルキル、C6〜10アリール、C7〜18アルキルアリール、又はC7〜18アリールアルキル基であり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは無置換であるか、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、C1〜4アルコキシ、カルボキシ、又はC2〜5アルコキシカルボニルで置換されており;Mは金属であり;yは1〜4の数であり、その結果M(+)yは金属カチオンであり、(+)yは形式的にカチオンに付与される電荷を示し、pは1〜4の数である)を加熱することを含む方法によって得られる、難燃性ポリマー組成物の総重量基準で1重量%〜50重量%の難燃性材料;
c)ハイドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物であって金属は亜鉛又はカルシウムである群から選択される1種以上の化合物;並びに
d)1種以上の追加的な難燃剤、1種以上の相乗剤、及び/又は1種以上の難燃性補助剤(例えば、ハロゲン化難燃剤、アルキル若しくはアリールリン酸塩難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホン酸塩、アルキル若しくはアリールホスフィン酸塩及び例えばトリス(ジエトキシホスフィネート)アルミニウムなどのトリス(ジアルキトリホスフィネート)アルミニウムなどのアルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコーン;ポリフェニレンエーテル(PPE)、例えばベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド;メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、メラミンリン酸塩、メラミン金属リン酸塩等などの、メラミン、メラミン誘導体及び縮合生成物、メラミン塩;ハイドロタルサイト以外の粘土、金属塩(水酸化物、酸化物、水酸化酸化物、ホウ酸塩であって金属が亜鉛とカルシウム以外のもの、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、金属塩混合物等)、例えばタルク及び他のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩(DRAGONITE)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、HALLOYSITE若しくはリン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、モリブデン酸亜鉛(KEMGARD 911A/B)、リン酸亜鉛(KEMGARD 981)、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化アンチモン水和物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、並びに/又は水酸化ジルコニウム等などの1種以上の化合物);
を含有する難燃性ポリマー組成物を含む組成物が挙げられる。
【0055】
いくつかの具体的な実施形態においては、難燃性ポリマー組成物は、例えばメラミン、メラミン誘導体及び縮合生成物、メラミン塩、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド;金属の水酸化物、酸化物、水酸化酸化物、ホウ酸塩であって金属が亜鉛とカルシウム以外のもの;リン酸塩、亜リン酸塩、ケイ酸塩等、例えば亜リン酸水素アルミニウム、メレム、メラム、メロン、又はメラミン金属リン酸塩、例えばメラミン金属リン酸塩であって金属がアルミニウム、マグネシウム、又は亜鉛を含むもの、から選択される1種以上の相乗剤又は難燃性補助剤を含有する。
【0056】
具体的な実施形態においては、1種以上の追加的な難燃剤、相乗剤、又は難燃剤補助剤には、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)などのアルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート)、亜リン酸水素アルミニウム、メチレンジフェニルホスフィンオキシドで置換されたポリアリールエーテル、キシレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)−1,1’−ビフェニル、エチレンビス−1,2−ビス−(9,10−ジヒドロ−9−オキシ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)エタン、メレム、又はジメラミン亜鉛ピロホスフェートが含まれる。
【0057】
存在する場合、追加的な難燃剤、相乗剤、又は補助剤d)は、100:1〜1:100の範囲の、難燃剤b)の重量:追加的な難燃剤と相乗剤と補助剤の総重量で存在する。追加的な難燃剤、相乗剤、又は補助剤に応じて、重量基準で難燃剤b):追加的な難燃剤、相乗剤、及び/又は補助剤が10:1〜1:10の範囲を使用することで非常に優れた結果を得ることができ、例えば優れた利益のために7:1〜1:7、6:1〜1:6、4:1〜1:4、3:1〜1:3、及び2:1〜1:2の範囲の重量比が使用される。
【0058】
本発明の難燃性ポリマー組成物は、典型的には、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸塩、ホスホナイト、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、三級アミンオキシド、ラクトン、三級アミンオキシドの熱反応生成物、チオ相乗剤、例えばメラミン、メレム等の塩基性共安定化剤、ポリビニルピロリドン、ジシンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩(例えばステアリン酸Ca、ステアロイル乳酸カルシウム、酪酸カルシウム、ステアリン酸Zn、オクタン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na、及びパルミチン酸K)、ピロカテコール酸アンチモン若しくはピロカテコール酸亜鉛、造核剤、清澄剤等などの、当該技術分野でしばしば見られる1種以上の一般的な安定化剤又は他の添加剤も含有するであろう。
【0059】
例えば可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、染料、光沢剤、他の防炎剤、帯電防止剤、発泡剤、ドリップ防止剤(例えばPTFE)等の他の添加剤も存在していてもよい。
【0060】
任意選択的には、ポリマーは、本発明の成分c)として選択されるもの以外の金属化合物及び粘土、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及びグラファイト、などのフィラー及び強化剤を含んでいてもよい。そのようなフィラー及び強化剤は、フィラー及び強化剤が最終組成物の重量基準で50重量%超の濃度で存在する処方など、多くの場合は比較的高濃度で存在していてもよい。より典型的には、フィラー及び強化剤はポリマー組成物の総重量基準で5〜50重量%、例えば10〜40重量%又は15〜30重量%存在する。
【0061】
高温及び/又は大きい機械的応力下での様々な難燃性ポリマー組成物の加工は、難燃剤及び/又はポリマーの劣化をもたらし、不十分な特性を有する最終組成物を生成させ得る。成分b)のリン含有難燃剤を含むポリマー組成物に本発明の成分c)を添加することによって、高温加工の応力下でポリマー難燃性組成物が安定化され、望ましい物理特性が高く保持された、複合難燃性ポリマー組成物及び物品が円滑に得られる。
【実施例】
【0062】
比較例1:
100部のポリアミド66と、米国特許出願第14/377,500号明細書に従って280℃でアルミニウムトリス(メチルホスホネート)を加熱処理することによって得た26.8部の難燃剤と、9.7部のEXOLIT OP 1230と、0.3部のLUWAX OPとのブレンド物をLeistrizの18mmの二軸押出機で混ぜ合わせ、30%のガラスで強化された配合物を作製するために、これに58.6部のガラスを下流で添加したところ、背圧の増加、オフガスの発生、変色、膨潤、及び硬い材料の生成を特徴とするポリマーの劣化が生じた。
【0063】
実施例1:
Hake Rheocord 90を使用して、100部のポリアミド66と、米国特許出願第14/377,500号明細書に従って280℃でアルミニウムトリス(メチルホスホネート)を加熱処理することによって得た132.4部の難燃剤と、44.1部のEXOLIT OP 1230と、17.6部のホウ酸亜鉛とのマスターバッチを作製した。引き続き100部のこのマスターバッチを、133.8部のポリアミド66と共にLeistrizの18mmの二軸押出機の中に入れ、下流で100.2部のガラスを添加したところ、よくストランド状にされた白色物質として、30%のガラスで強化されたポリアミド配合物を得ることに成功した。
【0064】
実施例2:
ポリアミド66と、ガラスと、米国特許出願第14/377,500号明細書に従って280℃でアルミニウムトリス(エチルホスホネート)を加熱処理することによって得た難燃剤と、EXOLIT OP 1230と、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムから選択される化合物との混合物をLeistrizの18mmの二軸押出機で混ぜ合わせることで、30%のガラスで強化されたポリアミドを製造する。
【0065】
ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化カルシウム、又は水酸化カルシウムを除いた混合物で実施例2を繰り返そうとすると、ポリマー配合物が分解する。