【文献】
Hierarchical SAPO-5 catalysts active in acid-catalyzed reactions,Journal of Catalysis,2010年,272(1),37-43
【文献】
Unique Mesoporous Silicoaluminophosphate Assembled from Faujasite-type SAPO-37 Precursor: A Potential Catalyst for Isomerization,Chemistry Letters,2013年,42(10),1160-1162
【文献】
Synthesis of hierarchical MeAPO-5 molecular sieves-Catalysts for the oxidation of hydrocarbons with efficient mass transport,Microporous and Mesoporous Materials,2012年,161,76-83
【文献】
Polyethyleneimine templated synthesis of hierarchical SAPO-34 zeolites with uniform mesopores,RSC Advances,2014年,4(86),46093-46096
【文献】
Tetramethylguanidine-templated synthesis of aluminophosphate-based microporous crystals with AFI-type structure,Microporous and Mesoporous Materials,2008年,117(3),561-569
【文献】
Design of a "green" one-step catalytic production of ε-caprolactam (precursor of nylon-6),PNAS,2005年,102(39),13732-13736.
【文献】
Synthesis of hierarchical porous silicalite-1 and its catalytic performance in Beckmann rearrangement,Microporous and Mesoporous Materials,2015年,202,133-137,[Available online 2 September 2014]
【文献】
The Synthesis of Hierarchical SAPO-34 and its Enhanced Catalytic Performance in Chloromethane Conversion to Light Olefins,Catalysis Letters,2014年,144(9),1609-1616
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マイクロ多孔性骨格及びメソ多孔性骨格を有する階層構造多孔性アルミノホスフェートを含む触媒の存在下、オキシムを反応させてラクタムを作製する工程を含む、ベックマン転位反応を行う方法であって、前記触媒がHP Ti AlPO−5及びHP Co Ti AlPO−5から成る群より選択される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1-1】
図1Aは、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムへの反応を示す。
図1Bは、シクロドデカノンオキシムからω−ラウロラクタムへの反応を示す。
図1Cは、シクロオクタノンオキシムからカプリロラクタムへの反応を示す。
【
図1-2】
図1Dは、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムへのベックマン転位反応に対応する考え得る反応段階を示す。
【
図2】
図2は、代表的なゼオライト、代表的なメソ多孔性シリカ、及び代表的なSAPO物質、並びに代表的な階層構造SAPO物質の活性部位及びポア径を示す。
【
図3】
図3は、AlPO物質におけるI型、II型、及びIII型の同形置換を示す。
【
図4-1】
図4Aは、代表的なマイクロ多孔性SAPO−5物質のポア径を示す。
図4Bは、代表的なマイクロ多孔性SAPO−34物質のポア径を示す。
【
図4-2】
図4Cは、代表的なマイクロ多孔性SAPO−37物質のポア径を示す。
【
図5】
図5は、代表的な階層構造SAPO物質における考え得るマイクロポア及びメソポア活性部位を示す。
【
図6】
図6は、階層構造AlPO物質を形成するための代表的なソフトテンプレート法を示す。
【
図7-1】
図7Aは、例4に関し、SAPO−5及びHP SAPO−5に対するX線回折スペクトルを示す。
図7Bは、例4に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34に対するX線回折スペクトルを示す。
【
図7-2】
図7Cは、例4に関し、SAPO−37及びHP SAPO−37に対するX線回折スペクトルを示す。
【
図8】
図8Aは、例4に関し、SAPO−5物質に対するCellRef精密化値(refinement values)を提供する。
図8Bは、例4に関し、HP SAPO−5物質に対するCellRef精密化値を提供する。
【
図9】
図9Aは、例4に関し、SAPO−34物質に対するCellRef精密化値を提供する。
図9Bは、例4に関し、HP SAPO−34物質に対するCellRef精密化値を提供する。
【
図10-1】
図10Aは、例4に関し、SAPO−5及びHP SAPO−5に対するBET吸着及びBJH吸着ポア体積曲線を示す。
図10Bは、例4に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34に対するBET吸着及びBJH吸着ポア体積曲線を示す。
【
図10-2】
図10Cは、例4に関し、SAPO−37及びHP SAPO−37に対するBET吸着及びBJH吸着ポア体積曲線を示す。
【
図11】
図11Aは、例4に関し、SAPO−5のSEM画像を示す。
図11Bは、例4に関し、HP SAPO−5のSEM画像を示す。
図11Cは、例4に関し、SAPO−34のSEM画像を示す。
図11Dは、例4に関し、HP SAPO−34のSEM画像を示す。
【
図13】
図13は、例4に関し、HP SAPO−34のSEM画像及びEDSデータを示す。
【
図14】
図14は、例4に関し、HP SAPO−5のSEM画像及びEDSデータを示す。
【
図15】
図15は、例4に関し、HP SAPO−5のTEM画像及び元素分析を示す。
【
図16】
図16は、例4に関し、HP SAPO−5のTEM画像及び元素分析を示す。
【
図17】
図17は、例4に関し、HP SAPO−34のTEM画像及び元素分析を示す。
【
図18】
図18は、例4に関し、HP SAPO−34のTEM画像及び元素分析を示す。
【
図19】
図19は、例4に関し、HP SAPO−34のTEM画像及び元素分析を示す。
【
図20-1】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図20-2】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図20-3】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図20-4】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図20-5】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図20-6】
図20A〜
図20Iは、例5に関し、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-1】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-2】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-3】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-4】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-5】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図21-6】
図21A〜
図21Iは、例5に関し、シクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位におけるSAPO−5、HP SAPO−5、SAPO−34、HP SAPO−34、H−ZSM−5、及びMCM−41の変換率、選択性、及び収率を示す。
【
図22】
図22A〜
図22Cは、例5に関し、様々な温度でのHP SAPO−5を用いたシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位における変換率及び選択性を示す。
【
図23】
図23A〜
図23Cは、例5に関し、様々な温度でのHP SAPO−34を用いたシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位における変換率及び選択性を示す。
【
図24】
図24A〜
図24Cは、例5に関し、様々なWHSVでのHP SAPO−5を用いたシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位における変換率及び選択性を示す。
【
図25】
図25A〜
図25Cは、例5に関し、様々なWHSVでのHP SAPO−34を用いたシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位における変換率及び選択性を示す。
【
図26】
図26は、例6に関し、異なる触媒を用いたシクロドデカノンオキシムの変換率を示す。
【
図27-1】
図27Aは、例6に関し、異なる触媒量でHP SAPO−5を用いた液相でのシクロドデカノンオキシムの変換率を示す。
【
図27-2】
図27Bは、例6に関し、異なる触媒量でHP SAPO−34を用いた液相でのシクロドデカノンオキシムの変換率を示す。
【
図27-3】
図27Cは、例6に関し、異なる触媒量でHP SAPO−37を用いた液相でのシクロドデカノンオキシムの変換率を示す。
【
図28】
図28A〜
図28Cは、例6に関し、液体再循環機構を用いた場合の、それぞれ、HP SAPO−34、HP SAPO−5、及びHP SAPO−37の変換率を示す。
【
図30-1】
図30A〜
図30Eは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34のNMRスペクトルを示す。
【
図30-2】
図30A〜
図30Eは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34のNMRスペクトルを示す。
【
図30-3】
図30A〜
図30Eは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34のNMRスペクトルを示す。
【
図32-1】
図32Aは、例7に関し、SAPO−5及びHP SAPO−5のFT−IRスペクトルを示す。
図32Bは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34のFT−IRスペクトルを示す。
【
図32-2】
図32Cは、例7に関し、HP SAPO−5及びHP SAPO−34のFT−IRスペクトルの比較を示す。
【
図33-1】
図33Aは、例7に関し、SAPO−5及びHP SAPO−5のTPD−NP
3の結果を示す。
図33Bは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34のTPD−NP
3の結果を示す。
【
図33-2】
図33Cは、例7に関し、SAPO−37及びHP SAPO−37のTPD−NP
3の結果を示す。
【
図34】
図34Aは、例7に関し、HP SAPO−5のCO吸着の結果を示す。
図34Bは、例7に関し、HP SAPO−34のCO吸着の結果を示す。
【
図35】
図35Aは、例7に関し、HP SAPO−5のコリジン吸着の結果を示す。
図35Bは、例7に関し、SAPO−5及びHP SAPO−5物質における酸部位の分布を比較する。
【
図36】
図36Aは、例7に関し、HP SAPO−34のコリジン吸着の結果を示す。
図36Bは、例7に関し、SAPO−34及びHP SAPO−34物質におけるコリジン吸着によって特定された酸部位の分布を比較する。
【
図37】
図37は、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対する粉末X線回折スペクトルを示す。
【
図38】
図38Aは、例8に関し、HP Co AlPO−5のSEM画像を示す。
図38Bは、例8に関し、HP Ti AlPO−5のSEM画像を示す。
図38Cは、例8に関し、HP Co Ti AlPO−5のSEM画像を示す。
【
図39-1】
図39Aは、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対する窒素吸着等温線を示す。
【
図39-2】
図39Bは、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対するBJHポア分布曲線を示す。
【
図40-1】
図40Aは、例8に関し、HP Co AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。
【
図40-2】
図40Bは、例8に関し、HP Ti AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。
【
図40-3】
図40Cは、例8に関し、HP Co Ti AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。
【
図41】
図41は、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5のDR UV/可視スペクトルを示す。
【
図42】
図42は、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5におけるOH−伸縮領域のFTIRスペクトルを示す。
【
図43】
図43Aは、例8に関し、焼成HP Co AlPO−5上に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。
図43Bは、例8に関し、焼成HP Ti AlPO−5上に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。
図43Cは、例8に関し、焼成HP Co Ti AlPO−5上に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。
【
図44】
図44Aは、例8に関し、焼成HP Co AlPO−5、焼成HP Ti AlPO−5、及び焼成HP Co Ti AlPO−5上に80kで吸着された0.02ccのCOのFTIRスペクトルを示す。
図44Bは、例8に関し、焼成HP Co AlPO−5、焼成HP Ti AlPO−5、及び焼成HP Co Ti AlPO−5上に80kで吸着された0.08ccのCOのFTIRスペクトルを示す。
図44Cは、例8に関し、焼成HP Co AlPO−5、焼成HP Ti AlPO−5、及び焼成HP Co Ti AlPO−5上に80kで吸着された0.16ccのCOのFTIRスペクトルを示す。
【
図45】
図45は、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対するTPD窒素吸着の結果を示す。
【
図46】
図46は、例8に関し、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対するコリジンプローブによるFTIRの概要を示す。
【
図47-1】
図47Aは、例9に関し、様々な触媒の場合のシクロヘキサノンオキシムのε−カプロラクタムへの液相ベックマン転位における変換率パーセント、選択性パーセント、及び収率パーセントを示す。
【
図47-2】
図47Bは、例9に関し、様々な触媒の場合のシクロドデカノンオキシムのラウロラクタムへの液相ベックマン転位における変換率パーセント、選択性パーセント、及び収率パーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、環状オキシム化合物からラクタムを形成するための方法に関する。代表的な反応を
図1に示す。
図1Aに示されるように、シクロヘキサノンオキシムが反応して、ε−カプロラクタムを形成し、そして、これが重合して、ナイロン−6を形成することができる。
図1Bに示されるように、シクロドデカノンオキシムが反応して、ω−ラウロラクタムを形成し、そして、これが重合して、ナイロン−12を形成することができる。
図1Cに示されるように、シクロオクタノンオキシムが反応して、カプリロラクタムを形成し、そして、これが重合して、ナイロン−8を形成することができる。1つの代表的な実施形態では、少なくは5、6、8個から、多くは10、12、18個、又はそれ以上の炭素原子を有する環状オキシムが反応して、対応するオキシムを形成する。
【0039】
本発明はまた、その他のベックマン転位反応の実施にも有用である。
オキシムは、
図1A〜1Cに示される例などのように、触媒との接触を通してラクタムに変換される。本開示は、様々なアルデヒド及びケトンから生成されたいかなるオキシムにも一般的に適用可能であると考えられる。代表的なオキシムとしては、これらに限定されないが、シクロヘキサノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、4−ヒドロキシアセトフェノンオキシム、並びにアセトフェノン、ブチルアルデヒド、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、ベンズアルデヒドから形成されるオキシムが挙げられる。
【0040】
ある代表的な実施形態では、反応は、溶媒の非存在下で行われる。ある代表的な実施形態では、反応は、溶媒の存在下で行われる。溶媒の非存在下で行われる反応では、生成物が、反応によって発生する発熱の吸収に用いられる。このような実施形態では、反応によって発生するエネルギーを吸収するために、反応領域におけるオキシムに対するラクタムの比率が大きい状態で維持される。
【0041】
代表的な溶媒としては、式:
R
1−CN
の有機ニトリルが挙げられ、式中、R
1は、C
1〜C
8−アルキル、C
1〜C
8−アルケニル、C
1〜C
8−アルキニル、C
3〜C
8−シクロアルキル、C
6芳香族環を含むC
3〜C
8−アラルキルを表す。代表的なニトリルとしては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、及び前述のニトリルのいずれかの混合物が挙げられる。
【0042】
その他の代表的な溶媒としては、式:
R
2−Ar
の芳香族化合物が挙げられ、式中、Arは、芳香族環であり、R
2は、H、CH
3、F、Cl、又はBrを表す。芳香族環は、1つ以上のR
2基で置換されていてもよい。代表的な芳香族溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクロロベンゼンが挙げられる。
【0043】
さらに他の代表的な溶媒としては、水、及び式:
R
3−OH
のアルコールが挙げられ、式中、R
3は、水素、C
1〜C
8−アルキル、C
1〜C
8−アルケニル、C
1〜C
8−アルキニル、C
3〜C
8−シクロアルキル、C
3〜C
8−アリールアルキルを表す。代表的なアルコールとしては、8個以下の炭素原子のアルコールが挙げられ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、フェノール、及び前述のアルコールのいずれかの混合物などである。
【0044】
代表的な実施形態では、溶媒は、触媒との接触の前に、厳密に乾燥される。本明細書で用いられる場合、厳密に乾燥されるとは、100ppm以下の水分レベルまで乾燥されることを意味するものと理解される。代表的な乾燥方法としては、活性化4Aモレキュラーシーブなどのモレキュラーシーブを用いた水分の吸着が挙げられる。本明細書で用いられる場合、水の非存在下で行われる反応とは、水が反応体の質量の0.01質量%未満を成す反応を意味する。
【0045】
反応は、液相反応又は気相反応として行われる。本明細書で用いられる場合、液相反応とは、反応してラクタムを形成する際に、オキシムの実質的にすべてが液相中に存在する反応である。本明細書で用いられる場合、気相反応とは、反応してラクタムを形成する際に、オキシム及び溶媒の実質的にすべてが気相又は蒸気相中に存在する反応である。
【0046】
気相反応として行われる場合、反応は、典型的には、350℃よりも低い温度で行われる。より特定の実施形態では、反応は、約130℃から約300℃の温度で行われる。さらに他の実施形態では、反応は、低くは、約90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、135℃、若しくは高くは、約140℃、150℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、275℃、290℃、300℃、325℃、350℃の、又は90℃から350℃、100℃から325℃、若しくは130℃から300℃など、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい温度で行われてよい。
【0047】
気相反応として行われる場合、反応は、典型的には、約0.1バールから約1バールの圧力で行われる。ある実施形態では、高沸点成分を、成分を分解することなく気相中に提供するために、比較的低い圧力が用いられてよい。より特には、気相反応として行われる反応の代表的な実施形態では、圧力は、低くは、0.005バール、0.01バール、0.02バール、0.05バール、0.1バール、高くは、0.5バール、1バール、10バール、若しくはそれ以上、又は0.005バールから10バール、0.05バールから1バール、若しくは0.1バールから1バールなど、前述の値のいずれかのペア間で定められる範囲内であってもよい。
【0048】
液相反応として行われる場合、反応は、典型的には、250℃よりも低い温度で行われる。より特定の実施形態では、反応は、約100℃から約170℃の温度で行われる。さらに他の実施形態では、反応は、低くは、約90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、若しくは高くは、約140℃、150℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃の、又は90℃から250℃、100℃から220℃、若しくは100℃から170℃など、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい温度で行われてよい。
【0049】
液相反応として行われる場合、反応は、典型的には、約1バールから約5バールの圧力で行われる。より特には、ある代表的な実施形態では、圧力は、低くは、0.5バール、1バール、高くは、1バール、2バール、5バール、10バール、15バール、20バール、25バール、30バール、35バール、又は0.5バールから35バール、0.5バールから10バール、若しくは1バールから5バールなど、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい。液相反応として行われる反応のある代表的な実施形態では、溶媒は、典型的には、反応温度で気体であるが、高い圧力で反応を行うことによって、液相中に維持される。
【0050】
液相反応として行われる場合、反応は、典型的には、溶媒の臨界点よりも低い温度及び圧力で行われ、ここで、圧力は、低くは、1バール、高くは、2バール、5バール、10バール、15バール、20バール、25バール、30バール、35バール、又は1バールから35バール、1バールから10バール、若しくは1バールから5バールなど、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい
反応の効率は、オキシムの変換率、所望される生成物の選択性、又は収率という点で表されてよい。変換率は、反応によって消費されるオキシム反応体の量の尺度である。変換率が高い程、より望ましい。変換率は、以下のように算出される:
【0052】
選択性は、すべての反応生成物に対する生成された所望される生成物の量の尺度である。選択性が高い程、より望ましい。より低い選択性は、より高い割合の反応体が所望されるラクタム以外の生成物の形成に使われたことを示す。選択性は、以下のように算出される:
【0054】
収率は、選択性と変換率とを組み合わせた尺度である。収率は、どのような量の投入オキシムが反応して、所望されるラクタムを形成したかを示す。収率は、以下のように算出される:
収率(%)=選択性(%)×変換率(%)/100%
本開示に従う方法は、高い変換率及び所望されるラクタムの高い選択性が得られる結果となる。
【0055】
典型的な実施形態では、変換率は、50%以上である。より特定の実施形態では、変換率は、約50%から約100%である。例えば、変換率は、低くは、約50%、60%、70%、75%、若しくは高くは、約80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%、100%近辺、若しくは100%であってよく、又は50%から100%、75%から99.5%、若しくは80%から99%など、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい。
【0056】
典型的な実施形態では、選択性は、50%以上である。より特定の実施形態では、選択性は、低くは、約50%、55%、60%、65%、若しくは高くは、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%、100%近辺であり、又は50%から100%、75%から99.5%、若しくは80%から99%など、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい。
【0057】
典型的な実施形態では、収率は、30%以上である。より特定の実施形態では、収率は、低くは、約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、若しくは高くは、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%、100%近辺であり、又は50%から100%、75%から99.5%、若しくは80%から99%など、前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい。
【0058】
本開示に従う方法は、触媒の存在下でオキシム反応体にベックマン転位反応を施すことを含む。
図2を参照すると、代表的な触媒としては、天然及び合成の物質が挙げられ、モレキュラーシーブ、ゼオライト102、アルミノホスフェート(AlPO)物質(図示せず)、及びシリコアルミノホスフェート(SAPO)物質104などのマイクロ多孔性物質、並びにメソ多孔性シリカ106などのメソ多孔性物質を含む。
図2に示されるように、ゼオライト102及びSAPO104などのマイクロ多孔性物質は、説明のために、1つ以上のマイクロポア110を含み、メソ多孔性シリカ106などのメソ多孔性物質は、説明のために、1つ以上のメソポア112を含む。
図2に示されるように、マイクロポア110及びメソポア112は、水素原子又はヒドロキシル基などの複数の活性部位114を含んでよい。
【0059】
アルミノホスフェート(AlPO)触媒は、触媒として有用であることが公知であるマイクロ多孔性物質である。AlPO触媒は、AlO
4及びPO
4の繰り返し四面体構造含む。例えば、トポロジーの選択、同形置換、堆積(deposition)、グラフト化などによって、あるAlPO触媒の触媒特性を修飾することが可能である。
図3に示されるように、格子中のアルミニウム及び/又はリン原子は、同形置換されてもよい。アルミニウム原子の(+2)又は(+3)金属による同形置換は、I型置換として示され、リン原子の(+4)又は(+5)金属による同形置換は、II型置換として示され、及びアルミニウム及びリン原子の両方の(+4)金属による同形置換は、III型置換として示される。同形置換してI型置換を形成し得る代表的な金属としては、コバルト、銅、ニッケル、及び亜鉛が挙げられる。同形置換してII型置換を形成し得る代表的な金属としては、チタン、バナジウム、ケイ素、ゲルマニウム、及びスズが挙げられる。
【0060】
触媒として有用であることが公知であるAlPO触媒の1つのクラスは、ケイ素含有シリコアルミノホスフェート(SAPO)触媒である。特定のSAPO触媒を作製する代表的な方法は、Lok, et al.に対する米国特許第4,440,871号、Levy, et al.に対する米国特許第8,772,476号、N. Jappar, Y. Tanaka, S. Nakata, and T. Tatsumi, "Synthesis and Characterization of a New Titanium Silicoaluminophosphate: TAPSO-37," Microporous and Mesoporous Materials, Vol. 23, Issues 3-4, August 1998, pp. 169-178、J. Paterson, et al., "Engineering Active Sites for Enhancing Synergy in Heterogeneous Catalytic Oxidations," Chemical Communications, 47, p. 517-519, 2011、及びM. E. Potter, et al., "Role of Isolated Acid Sites and Influence of Pore Diameter in the Low-Temperature Dehydration of Ethanol," ACS Catal., 4(11), pp. 4161-4169に記載されており、各々の開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0061】
形成された触媒中のケイ素の質量パーセントも特定することができる。ケイ素の質量パーセントを特定するための代表的な方法は、誘導結合プラズマによる。典型的には、ケイ素は、触媒の総質量の約1質量%から約10質量%を成す。さらに他の実施形態では、ケイ素は、少なくは、1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%から、多くは、6質量%,7質量%,8質量%,9質量%,10質量%の、又は前述の値のいずれかのペア間で定められるいずれの範囲内であってもよい触媒の総質量に対する質量パーセントを成す。
【0062】
1つの代表的なマイクロ多孔性SAPO触媒であるSAPO−5が、
図4Aに示される。SAPO−5は、その開示内容全体が参照により本明細書に援用されるAtlas of Zeolite Framework Types, 6
th ed., Baerlocher, et al., Elsevier, Amsterdam (2007)に記載の国際ゼオライト学会(IZA)骨格コードAFIを有するケイ素含有アルミノホスフェート又はシリコアルミノホスフェート触媒である。SAPO−5触媒は、7.3Åのポア開口径を有する複数のマイクロポア110を含む。この触媒は、骨格中のリンを同形置換した複数のケイ素原子116を含み、これが、活性部位114の形成に繋がっている。
【0063】
1つの代表的なマイクロ多孔性SAPO触媒であるSAPO−34が、
図4Bに示される。SAPO−34は、国際ゼオライト学会(IZA)骨格コードCHAを有するケイ素含有アルミノホスフェート又はシリコアルミノホスフェート触媒である。SAPO−34触媒は、3.8Åのポア開口径を有する複数のマイクロポア110を含む。この触媒は、骨格中のリンを同形置換した複数のケイ素原子116を含み、これが、活性部位114の形成に繋がっている。
【0064】
1つの代表的なマイクロ多孔性SAPO触媒であるSAPO−37が、
図4Cに示される。SAPO−34は、その開示内容全体が参照により本明細書に援用されるAtlas of Zeolite Framework Types, 6th ed., Christian Baerlocher, Lynne B. McCusker and David H. Olson, Elsevier, Amsterdam (2007)に記載の国際ゼオライト学会(IZA)骨格コードFAUFAUを有するケイ素含有アルミノホスフェート又はシリコアルミノホスフェート触媒である。SAPO−37触媒は、6,6(ダブル−6)二次構造単位を通して一緒に連結されたソーダライトケージを含む。そして、これらのソーダライトケージのうちの12個を用いて、スーパーケージ構造が作り出され、そのポア開口径110は、7.4Åであり、スーパーケージの内径は、12〜14Åの範囲である。この触媒は、骨格中のリンを同形置換した複数のケイ素原子116を含み、これが、活性部位114の形成に繋がっている。
【0065】
その他の代表的なマイクロ多孔性触媒としては、AlPO−11(IZA骨格コードAEL)、AlPO−18(IZA骨格コードAEI)、AlPO−31(IZA骨格コードATO)、AlPO−37(IZA骨格コードFAU)、AlPO−41(IZA骨格コードAFO)、AlPO−44(IZA骨格コードCHA)、及び対応する一金属(monometallic)及び二金属(bimetallic)構造が挙げられ、ここで、金属は、Mn、Fe、Cu、Mg、Cr、Co、Cu、Zn、Si、Ti、V、及びSnから選択される。1つのより特定の実施形態では、触媒は、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−18、SAPO−31、SAPO−34、SAPO−37、SAPO−41、又はSAPO−44などのSAPO触媒である。
【0066】
1つの実施形態では、AlPO触媒又はSAPO触媒は、階層構造多孔性(HP)触媒である。HP AlPO触媒又はHP SAPO触媒は、2つ以上の長さスケールのポアを含み、
図2に示される図示した階層構造SAPO触媒108などである。より特定の実施形態では、HP AlPO触媒又はHP SAPO触媒は、ポアの双峰分布を含み、複数のマイクロポアを含む第一の多孔性骨格110及び複数のメソポアを含む第二の多孔性骨格112などである。1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、小さくは、3Å、4Å、5Å、6Å、大きくは、7Å、8Å、9Å、10Åの、又は3Åから10Å、3Åから6Å、3Åから4Å、7Åから10Å、若しくは7Åから8Åなど、前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい複数のマイクロポアを含む。1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、小さくは、15Å、20Å、25Å、30Å、大きくは、35Å、40Å、45Å、50Åの、又は15Åから50Å、20Åから40Å、若しくは15Åから40Åなど、前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい複数のメソポアを含む。
【0067】
マイクロポア骨格110及びメソポア骨格112は、相互接続されている。マイクロ多孔性骨格110及びメソ多孔性骨格112はいずれも、水素原子又はヒドロキシル基などの活性部位114を含んでよい。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、マイクロポアは、ベックマン転位反応を触媒するための活性部位を有し、一方メソポアは、活性部位への、及び活性部位からの分子の拡散を補助するものと考えられる。
【0068】
代表的な階層構造AlPOとしては、Zhou, et al., "Synthesis of hierarchical MeAPO-5 molecular sieves - Catalysts for the oxidation of hydrocarbons with efficient mass transport," Microporous and Mesoporous Materials, Vol 161 , pp. 76-83, 2012に報告されているHP Mn AlPO−5及びDanilina, et al, "Influence of synthesis parameters on the catalytic activity of hierarchical SAPO-5 in space-demanding alkylation reactions," Catalysis Today, Vol. 168(1), pp. 80-85, 2011に報告されているHP SiAlPO−5が挙げられる。
【0069】
次に、
図5を参照すると、代表的な階層構造SAPO触媒108が示される。
図5に示されるように、代表的な階層構造SAPO触媒は、複数のマイクロポア110及び1つ以上のメソポア112の両方を含む。
図5に示されるマイクロポアは、ケイ素原子116によって同形置換されていてもよいAlO
4及びPO
4の繰り返し四面体構造の結晶格子によって形成される。
図5に示されるように、SAPO触媒は、マイクロポアにII型置換を含んでよく、潜在的ブレンステッド酸活性部位114として格子からマイクロポア中へ伸びる利用可能なプロトンを提供する。
図5にさらに示されるように、SAPOは、非常により大きいメソポアにもII型置換を含んでよく、潜在的ブレンステッド酸活性部位114として働く格子から伸びるプロトン及び/又はヒドロキシル基の両方を提供する。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、シラノールの存在が、さらなる親水性、さらなる酸部位、他の活性部位を官能化する能力、表面積の変化、酸部位密度の改善、及び酸部位強度の改善などの触媒において望ましい特性を提供し得るものと考えられる。
【0070】
図5に示されるように、マイクロポア骨格110及びメソポア骨格112は、相互接続されている。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、マイクロポア110は、ベックマン転位反応を触媒するための活性部位を有し、一方メソポア112は、活性部位への、及び活性部位からの分子の拡散を補助するものと考えられる。マイクロポア110は、この階層構造触媒がベースとするマイクロ多孔性SAPO触媒と同じポア開口径を有する。対照的に、
図5に示される階層構造SAPO触媒108のメソポア112は、周囲にあるマイクロポア110のポア開口径よりも大きいポア径を有する。
【0071】
1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、小さくは、0.05cm
3/g、0.07cm
3/g、0.10cm
3/g、0.12cm
3/g、大きくは、0.14cm
3/g、0.19cm
3/g、0.20cm
3/gの、又は0.05cm
3/gから0.20cm
3/g若しくは0.10cm
3/gから0.14cm
3/gなど、前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい合計体積を有する複数のマイクロポア、並びに、小さくは、0.08cm
3/g、0.10cm
3/g、0.11cm
3/g、大きくは、0.12cm
3/g、0.15cm
3/g、0.17cm
3/g、0.20cm
3/gの、又は0.08cm
3/gから20cm
3/g若しくは0.10cm
3/gから0.15cm
3/gなど、前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい合計体積を有する複数のメソポアを含む。1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、対応するマイクロ多孔性物質よりも大きい表面積及び/又はポア体積を有する。
【0072】
1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、HP AlPO−5、HP AlPO−11、HP AlPO−18、HP AlPO−31、HP AlPO−34、HP AlPO−37、HP AlPO−41、HP AlPO−44、並びにこれらの一金属及び二金属構造から選択されるAlPOであり、ここで、金属は、Mn、Fe、Cu、Mg、Cr、Co、Cu、Zn、Si、Ti、V、及びSnから選択される。1つの代表的な実施形態では、金属は、コバルトである。より特定の実施形態では、階層構造触媒は、HP Co AlPO−5などの階層構造多孔性(HP)コバルトAlPO触媒である。1つの代表的な実施形態では、金属は、チタンである。より特定の実施形態では、階層構造触媒は、HP Ti AlPO−5などの階層構造多孔性チタンAlPO触媒である。1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、二金属であり、ここで、金属は、コバルト及びチタンである。より特定の実施形態では、階層構造触媒は、HP Co Ti AlPO−5、HP Co Ti AlPO−11、HP Co Ti AlPO−18、HP Co Ti AlPO−31、HP Co Ti AlPO−34、HP Co Ti AlPO−37、HP Co Ti AlPO−41、HP Co Ti AlPO−44から成る群より選択される階層構造多孔性二金属コバルト及びチタンAlPO触媒である。より特定の実施形態では、階層構造触媒は、HP Co Ti AlPO−5などの階層構造多孔性二金属コバルト及びチタンAlPO触媒である。
【0073】
1つの代表的な実施形態では、階層構造触媒は、HP SAPO−5、HP SAPO−11、HP SAPO−18、HP SAPO−31、HP SAPO−34、HP SAPO−37、HP SAPO−41、及びHP SAPO−44などの階層構造多孔性(HP)SAPO触媒である。
【0074】
1つの代表的な実施形態では、階層構造SAPO触媒は、階層構造SAPO−5触媒、階層構造SAPO−34触媒、及び階層構造SAPO−37触媒から選択される。1つの代表的な実施形態では、階層構造SAPO触媒は、階層構造SAPO−5触媒及び階層構造SAPO−34触媒から選択される。1つの代表的な実施形態では、階層構造SAPO触媒は、階層構造SAPO−5触媒である。1つの代表的な実施形態では、階層構造SAPO触媒は、階層構造SAPO−34触媒である。1つの代表的な実施形態では、階層構造SAPO触媒は、階層構造SAPO−37触媒である。
【0075】
1つの実施形態では、階層構造AlPO及びSAPO触媒などの階層構造触媒は、
図6に示されるように、ソフトテンプレート法を用いて形成することができる。
図6に示されるように、ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)などのオルガノシラン界面活性剤120が、構造指向剤(SDA)122及び金属前駆体124と組み合わせて用いられた。代表的な構造指向剤122としては、トリエチルアミン及び水酸化トリエチルアンモニウムが挙げられる。代表的な金属前駆体としては、アルミニウムイソプロポキシドが挙げられる。DMODは、18炭素鎖及びケイ素含有ヘッドを含有する実例としての界面活性剤120である。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、界面活性剤のシリカ部分が、SAPO骨格中に組み込まれ、有機疎水性テールの焼成によって、さらなるシラノール部位が形成され得るものと考えられる。これらのさらなる部位も、ベックマン転位のための活性部位を提供することができる。
【0076】
図6を参照すると、代表的な実施形態では、シリカなどのケイ素源が、界面活性剤120、SDA122、及び金属前駆体124の混合物に滴下され、撹拌される。得られた物質が結晶化されて、SAPO結晶構造からの複数のマイクロポア110及び界面活性剤からの複数のメソポア112の両方を含む階層構造多孔性SAPO物質108が形成される。
【0077】
1つの代表的な実施形態では、界面活性剤は、少なくは、5炭素、8炭素、10炭素、15炭素、多くは、18炭素、20炭素、25炭素、30炭素、若しくはそれ以上の、又は5から30炭素、8から25炭素、若しくは15〜20炭素など、前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい炭素鎖を含む。1つの代表的な実施形態では、界面活性剤は、ケイ素含有ヘッド基を含む。別の代表的な実施形態では、界面活性剤は、炭素、窒素、ケイ素、及びリンのうちの少なくとも1つを含有する極性ヘッド基を含む。
【0078】
1つの実施形態では、階層構造触媒は、約1 Al:1 P:1 SDA:65 H
2O:0.15 Si:0.05 界面活性剤のアルミニウム:リン:SDA:水:シリカ:界面活性剤比から形成される。1つの実施形態では、階層構造触媒は、約1 Al:1 P:0.8 SDA:50 H
2O:0.15 Si:0.05 界面活性剤のアルミニウム:リン:SDA:水:シリカ:界面活性剤比から形成される。代表的なSDAとしては、トリエチルアミン及び水酸化トリエチルアミンが挙げられる。代表的な界面活性剤としては、DMODが挙げられる。
【0079】
1つの実施形態では、階層構造触媒は、約200℃の温度で、約24時間にわたって結晶化される。
1つの実施形態では、階層構造触媒は、純相である。ある実施形態では、階層構造触媒は、少なくは、1質量%、0.5質量%、0.1質量%、0.05質量%、0.01質量%、0質量%の、又は前述の値のいずれか2つの間で定められるいずれの範囲内であってもよい量のアモルファスケイ素を含有するSAPO物質である。
【0080】
1つの実施形態では、階層構造AlPO及びSAPO触媒などの階層構造触媒は、マイクロ多孔性骨格の合成後脱金属によって形成することができる。ゼオライトマイクロ多孔性骨格の脱金属のための代表的な反応体としては、水酸化ナトリウムなどの塩基性試薬、及び塩酸などの酸性試薬が挙げられる。1つの代表的な実施形態では、マイクロ多孔性触媒は、水酸化ナトリウム、臭化テトラプロピルアンモニウムを含む水酸化テトラプロピルアンモニウムなどの塩基に添加されるか、又は塩酸などの酸に添加される。1つの実施形態では、マイクロ多孔性触媒は、界面活性剤の存在下で塩基又は酸に添加される。1つの実施形態では、マイクロ多孔性触媒は、界面活性剤なしで塩基又は酸に添加される。物質は、298Kから373Kの温度で約30分間など、部分的に消化される。処理の後、部分消化された物質は、約550℃の温度で16時間など、空気下で焼成されて、メソ多孔性物質が形成される。
【0081】
1つの実施形態では、階層構造多孔性物質の吸着試験により、ヒステリシスを示すIV型等温線が得られ、多孔性吸着体の多分子吸着が示唆される。
1つの実施形態では、階層構造多孔性物質は、対応するマイクロ多孔性物質の単位格子と一致する単位格子を有する。
【0082】
1つの実施形態では、階層構造多孔性物質は、孤立した弱ブレンステッド酸部位を有する。1つの実施形態では、階層構造多孔性物質は、ルイス酸性を有しない。
1つの実施形態では、階層構造多孔性物質は、孤立した四面体ケイ素部位を有する。ある実施形態では、これらの部位は、対応するマイクロ多孔性物質の孤立した四面体ケイ素部位と類似していてよい。ある実施形態では、階層構造多孔性物質は、シラノール活性部位を含む。
【0083】
実施例
例1:マイクロ多孔性SAPO−5(SAPO−5)、階層構造多孔性SAPO−5(HP SAPO−5)の合成
階層構造多孔性AFI骨格中へのSiの同形置換のための合成プロトコルを以下に記載する。同等の方法を、界面活性剤ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)を含めることなく、マイクロ多孔性類似体の合成のために実施した。
【0084】
アルミニウムイソプロポキシド(6.807g、Aldrich社)を、リン酸(2.28ml、H
2O中85%、Aldrich社)及び水(10ml)と共にテフロンビーカーに添加し、均一な溶液が形成されるまで、1.5時間にわたって激しく撹拌した。DMOD(1.2ml、H
2O中72%、Aldrich社)を滴下し、続いてすぐに、トリエチルアミン(3.7ml、Aldrich社)を滴下し、続いて水(20ml)を添加した。得られた濃い溶液を、1時間撹拌した。シリカゾル(0.771ml、水中40%、Aldrich社)を滴下し、このゲルをさらに1.5時間撹拌して、1 Al:1P:0.8 TEA:50 H
2O:0.15 Si:0.05 DMODの組成を有する白色ゲルを得た。
【0085】
このゲルを、3つの23mlテフロンライニングステンレス鋼オートクレーブに分割し、これらを、予熱しておいたファン付きオーブン(WF−30 Lenton社)に200℃で24時間移した。
【0086】
各オートクレーブからの白色固体生成物を、ろ過によって回収し、500mlの脱イオン水で洗浄した。生成物を80℃で一晩乾燥させた。合成したままの状態の触媒を、空気流下、550℃で16時間にわたって管状炉で焼成して、白色固体を得た。
【0087】
例2:マイクロ多孔性SAPO−34(SAPO−34)、階層構造多孔性SAPO−34(HP SAPO−34)の合成
階層構造多孔性CHA骨格中へのSiの同形置換のための合成プロトコルを以下に記載する。同等の方法を、界面活性剤ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)を含めることなく、マイクロ多孔性類似体の合成のために実施した。
【0088】
アルミニウムイソプロポキシド(4.5450g、Aldrich社)を、水酸化テトラエチルアンモニウム(TeaOH)(9.14ml、H
2O中35%、Aldrich社)と共にテフロンビーカーに添加し、1時間撹拌した。ヒュームドシリカ(0.2g)をゆっくり添加し、10分間撹拌した。DMOD(0.8ml、水中72%、Aldrich社)を滴下し、白色不透明ゲルを1時間撹拌した。脱イオン水(14ml)を滴下し、続いてすぐにリン酸(1.5ml、H
2O中85%、Aldrich社)を添加した。このゲルを2時間激しく撹拌して、1 Al:1 P:1 TeaOH:65 H
2O:0.15 Si:0.05 DMODの組成を有する白色ゲルを得た。
【0089】
ゲルの内容物を、2つの23mlテフロンライニングステンレス鋼オートクレーブに分割し、これらを、予熱しておいたファン付きオーブン(WF−30 Lenton社)に200℃で24時間移した。
【0090】
各オートクレーブからの白色固体生成物を、ろ過によって回収し、500mlの脱イオン水で洗浄した。生成物を80℃で一晩乾燥させた。合成したままの状態の触媒を、空気流下、550℃で16時間にわたって管状炉で焼成して、白色固体を得た。
【0091】
例3:マイクロ多孔性SAPO−37(SAPO−34)、階層構造多孔性SAPO−37(HP SAPO−37)の合成
階層構造多孔性FAU骨格中へのSiの同形置換のための合成プロトコルを以下に記載する。同等の方法を、界面活性剤ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)を含めることなく、マイクロ多孔性類似体の合成のために実施した。
【0092】
ベーマイト(5.5844g)を、テフロンビーカー中のリン酸(85質量%、9.251g)及び脱イオン水(10g)の溶液にゆっくり添加した。この濃い白色混合物を、マグネティックスターラーで7時間撹拌し、溶液Aと標識した。
【0093】
水酸化テトラプロピルアンモニウム、TPAOH(40質量%、38.689g)及び水酸化テトラメチルアンモニウム、TMAOH(0.365g)の溶液へ、DMOD(72質量%、2ml)を滴下し、続いてヒュームドシリカ(1g)を添加することによって溶液Bを作製した。溶液Bを、2時間撹拌した。
【0094】
両溶液A及びBが均一となったところで、溶液Bを溶液Aに滴下して、非常に濃い混合物を作製した。これを、68時間撹拌した。次に、オートクレーブへ移し、200℃で24時間結晶化させた。
【0095】
得られた白色固体を、1リットルの脱イオン水でろ過し、オーブン(80℃)で一晩乾燥させた。次に、触媒を、空気流下、550℃で16時間焼成して、白色固体を得た。
例4:触媒の特性決定
粉末X線回折
粉末X線回折(pXRD)パターンを、λ=1.54056のCu Kα1線を用いたBruker D2回折計を用いて得た。低角度X線回折パターンを、Bruker C2 GADDS回折計を用いて得た。階層構造触媒は、pXRDにより、元の単位格子を維持していることが確認された(
図7A〜7C)。対応する格子パターンは、マイクロ多孔性類似体に類似しており(例えば、
図8A、8B、9A、及び9B参照)、階層構造触媒は、純相であり、その結晶性を維持していることが確認された。
【0096】
図7A〜7Cに示されるように、すべての物質の純相及び結晶性が、粉末X線回折によって確認された。すべてのシグナルは、IZAデータベースに従って、対応するAFI、CHA、又はFAU構造に帰することができる。焼成AFI及びCHA触媒に対するCellRef精密化値を、
図8及び9に提示する。これらの結果は、SAPO−5及びHP SAPO−5に対して予測されたAFI骨格、並びにSAPO−34及びHP SAPO−34に対して予測されたCHA骨格と一致していた。
【0097】
図7A及び7Bのインサートに示される階層構造サンプルの低角度XRD測定により、マイクロ多孔性サンプルには存在しなかった低角度でのピークが現れた。このピークは、階層構造サンプル中にメソポアが存在することを示している。
【0098】
BET表面積
窒素吸脱着実験を、Gemini 2575 ブルナウアー−エメット−テラー(BET)装置を用い、77Kで吸着ガスとして窒素を用いて行った。
【0099】
各触媒に対するBET測定値を表1に提示する。表1に示されるように、階層構造触媒は、対応するマイクロ多孔性物質よりも高い全表面積(S
BET)、高いマイクロポア体積(V
micro)、及び高いメソポア体積(V
meso)を有していた。
【0101】
図10A〜10Cに示されるHP SAPO−5、HP SAPO−34、及びSAPO−37のN
2吸脱着等温線は、ヒステリシスを伴う典型的なIV型等温線である。階層構造多孔性物質に対する示されたヒステリシスを伴うIV型等温線は、対応する階層構造骨格にメソポアが存在することと一致している。
【0102】
図10A〜10Cのインサートとして示されるBJH吸着ポア体積曲線から、階層構造系に約20Åから約60Åの直径を有するメソポアが存在すること、並びにマイクロ多孔性物質にはそのようなメソポアが存在しないことがさらに確認される。
【0103】
階層構造触媒は、ヒステリシスを伴うIV型等温線を示し(
図10A〜10C)、これは、メソポアの存在と一致している。表面積及びメソポア体積も、マイクロ多孔性類似体と比較して、階層構造触媒の方が高く、このことは、階層構造骨格へのメソポアの組み込みと一致している(表1)。BJH吸着ポア分布曲線も、階層構造系でのメソポアの存在及びマイクロ多孔性触媒でのそのようなメソポアの非存在をさらに裏付けている(
図10A〜10C)。
【0104】
走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡画像
階層構造物質の多孔性を、走査型電子顕微鏡(SEM)によってさらに評価した(
図11〜14)。
図11Aは、マイクロ多孔性SAPO−5の縦長の六方晶を示す。
図11Bは、階層構造多孔性HP SAPO−5の結晶を示す。
図11Cは、マイクロ多孔性SAPO−34の立方晶を示す。
図11Dは、階層構造多孔性HP SAPO−34の結晶を示す。
図11B及び11Dの階層構造多孔性物質の画像は、
図11A及び11Cの対応するマイクロ多孔性物質よりも大きい粒子を示している。階層構造物質は、より小さい結晶の集合体を含んでいると思われる。
【0105】
図12A及び12Bに示されるように、HP SAPO−34は、塊状の良好に分散した結晶、並びに群生した可能性があり分散がそれほど良好ではない結晶のより大きい凝集体から成る。
【0106】
SEM画像は、サンプルが、サンプル全体を通して相当に均一な組成を有することを示した。
図13のSEM画像及び対応するエネルギー分散(EDS)データに示されるように、HP SAPO−34の組成は、相当に均一である。
図14のSEM画像及び対応するエネルギー分散(EDS)データに示されるように、HP SAPO−5の組成は、相当に均一である。
【0107】
階層構造物質の多孔性を、透過型電子顕微鏡(TEM)によってさらに評価した(
図15〜19)。TEM画像は、両方の結晶HP SAPOにおいて、サンプルが、サンプル全体を通して相当に均一な組成を有することを示し、微細なメソ多孔性を明らかにした(
図17〜19参照)。
【0108】
図15のTEM画像及び元素分析に示されるように、HP SAPO−5物質は、欠陥領域130にメソ多孔性領域を有していた。元素分析によるAl:Si:Pの比は、SAPO物質に対して予測された通りであった。
【0109】
HP SAPO−5及びHP SAPO−34の各々の格子結晶構造を確認した。
図16に示されるように、HP SAPO−5物質の選択された部分の回折パターンは、AFIであることが確認された。
図15の元素分析は、SAPO物質に対して予測されたAl:P:Siの比と一致している。
【0110】
HP SAPO−34のTEM及び回折パターンから、メソポアのロッド状で縦長の形状、並びに菱面体晶基本ベクトル(rhombohedral basis vectors)に対して垂直及び平行のそれらの位置関係を解明することができた。これらのメソポアは、マイクロポアネットワーク内で充分に接続されていることが明らかであった(
図17、18)。
図17に示されるように、HP SAPO−5物質の選択された部分の回折パターンは、AFIであることが確認された。
図17の元素分析は、SAPO物質に対して予測されたAl:P:Siの比と一致している。2つの反射(101)(RHS ref1)及び(−1,1,1)(RHS ref2)は、(100)及び(101)に相当し、従って、これらのポアは、いずれかの菱面体晶基本ベクトルに対して平行で縦長いロッド状の形態を有すると思われる。同じ位置からのHP SAPO−34のTEM画像及び回折パターンを含む
図18に示されるように、指数は、ポアが、縦長く(101)面に対して垂直であることを示している。これは、菱面体晶型単位格子の(100)に相当する。
【0111】
図19のHP SAPO−34のTEM画像及びEDSは、さらに、ある程度の二次多孔性(secondary porosity)132の存在も示している。
例5:シクロヘキサノンオキシム及びシクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位
階層構造HP SAPO−5及びHP SAPO−34サンプルの触媒性能を、マイクロ多孔性SAPO−5及びSAPO−34サンプルと比較した。シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位(
図1A参照)を、階層構造及びマイクロ多孔性触媒の各ペアに対して行った。
【0112】
石英フリットを備えた円筒型石英固定床反応器(直径4mm)に、0.5cm層のガラスビーズ(1mm)、4cm層のペレット化触媒(0.2g)、及びさらなる20cmのガラスビーズ(1mm)を充填し、反応器アセンブリのヒーターユニット内部に配置した。次に、サンプルを、50ml/分のヘリウム気流下、673Kで1時間前処理した。次に、温度を598Kに低下させ、ヘリウムの流量を、33.3ml/時間に低下させた。100g/リットルのエタノール中シクロヘキサノンオキシムの液体フィードを反応器へ供給し、電子シリンジポンプで制御して0.79時間
−1のWHSVを維持した。定常状態に到達した時点で、1時間ごとのサンプルを採取した。サンプルを、FIDを備えたPerkinElmer Clarus 480ガスクロマトグラムを用い、及びElite5カラムを用いて分析し、ピーク面積を、内部標準としてのメシチレンで予め特定した応答ファクターを用いて検量した。
【0113】
メシチレンを内部標準として用いて炭素収支を評価するためのフィード溶液は、メシチレン:0.444g;シクロヘキサノンオキシム:4.10g;EtOH:36.000gから構成した。
【0114】
上述したものと同一の手順を行って、598K、0.79時間
−1のWHSVにて、HP SAPO−5の場合の以下のGCデータが得られ、応答ファクターを用いることにより、ピーク面積からモル数を算出することができた。
【0115】
図20Aは、マイクロ多孔性SAPO−5及び階層構造HP SAPO−5の変換率を示し、
図20Bは、反応のε−カプロラクタムに対する選択性を示す。
図20Cは、反応の対応する収率を示す。
【0116】
図20Dは、マイクロ多孔性SAPO−34及び階層構造HP SAPO−34の変換率を示し、
図20Eは、反応のε−カプロラクタムに対する選択性を示す。
図20Fは、反応の対応する収率を示す。
【0117】
図20A〜20Fに示されるように、階層構造触媒は、マイクロ多孔性触媒と比較して、優れた性能を示した。階層構造触媒は、一定の変換率(
図20A、20D)及び比較的一定の選択性(
図20B、20E)の両方を維持可能であったのに対し、対応するマイクロ多孔性触媒は、明らかに失活した。例えば、HP SAPO−5は、>97%の変換率を維持しているのに対し、SAPO−5の活性は、71%で開始し、7時間の間に僅かに33%まで大きく低下した。
【0118】
工業用マイクロ多孔性触媒H−ZSM−5及びメソ多孔性MCM−41触媒の性能についても調べた。H−ZSM−5及びMCM−41の変換率を、
図20Gに示し、ε−カプロラクタムに対する選択性を、
図20Hに示す。
図20Iは、反応における対応する収率を示す。
【0119】
マイクロ多孔性H−ZSM−5触媒は、マイクロ多孔性SAPO−5及びSAPO−34と同様に、明らかに素早く失活した。メソ多孔性触媒MCM−41は、素早く失活し、階層構造触媒よりも非常に低い初期変換率及び選択性を示した。
【0120】
階層構造物質は、全体として、高い変換率及び選択性、並びに残りの物質と比較して全体として改善された寿命を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、階層構造触媒のマイクロ多孔性骨格が、ベックマン転位反応のための活性部位を提供し、接続されたメソポアが、環状オキシム及び/又はラクタムの活性部位への並びに活性部位からの高められた拡散を提供したものと考えられる。
【0121】
同一のプロトコルに従って、より立体障害の要求の高いシクロオクタノンオキシムの気相ベックマン転位による対応するカプリロラクタムの形成を行った(
図1C参照)。
図21Aは、マイクロ多孔性SAPO−5及び階層構造HP SAPO−5の変換率を示し、
図21Bは、所望されるラクタムに対する選択性を示す。
図21Cは、反応における対応する収率を示す。
【0122】
図21Dは、マイクロ多孔性SAPO−34及び階層構造HP SAPO−34の変換率を示し、
図21Eは、所望されるラクタムに対する選択性を示す。
図21Fは、反応における対応する収率を示す。
【0123】
図21Gは、マイクロ多孔性H−ZSM−5及びメソ多孔性MCM−41の選択性を示し、
図21Hは、所望されるラクタムに対する選択性を示す。
図20Iは、反応における対応する収率を示す。
【0124】
シクロオクタノンオキシムの反応において、いずれの階層構造触媒も、比較的良好な選択性を示した。
SAPO−5及びHP SAPO−5に関して、選択性の経時での上昇が見られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、このことは、元の強酸部位の一部が、反応が進む過程でブロックされ、所望される弱い活性部位が残ってより多くが反応に関与するようになり、その結果、ラクタムに対するより高い選択性が得られることを示唆し得るものである。また、酸部位が、反応が進む過程で修飾又は調節され、それによって、経時で所望される選択性に対してより適する/貢献するようになるということも考えられる。SAPO−34及びHP SAPO−34に関しては、ラクタムに対する選択性は、反応が進む過程で相当に一定に維持されている。
【0125】
シクロヘキサノンオキシムの反応の場合と同様に、階層構造触媒は、7時間にわたって、シクロオクタノンオキシムとの高い活性を維持したが、一方マイクロ多孔性触媒の活性は、大きく低下した。特に、HP SAPO−34は、シクロオクタノンオキシムの転位の場合、シクロヘキサノンオキシムの転位と同様に活性であるが、比較のマイクロ多孔性SAPO−34のシクロオクタノンオキシムの転位における活性は、H−ZSM−5に類似して非常に低い。
【0126】
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これは、反応が触媒のポアマウス(pore mouth)で発生し、より大きいシクロオクタノンオキシムの場合はそこにアクセスできないことに起因し得るものと考えられる。従って、触媒中にメソポアを含めることにより、かさ高い基質にとっての活性部位のアクセス性を高めることが可能であり、その結果、マイクロ多孔性類似体よりも高い変換率が得られる。別の選択肢として、又は上記に加えて、階層構造触媒で見られた改善は、追加のシラノール部位の存在に帰する可能性があり、それは、このような部位が、両階層構造触媒に共通する特徴であると考えられるからである。このようなシラノールは、触媒の疎水性を弱め得るものであり、この結果として、触媒は、失活に対する保護を有し得る。
【0127】
図20及び21に示されるように、階層構造触媒は、それらのマイクロ多孔性類似体と比較して類似の活性部位を提供したが、観察された反応時間にわたって、高い変換率レベルを維持した。
【0128】
反応に対する温度の影響について調べた。
図22Aに示されるように、重量毎時空間速度(WHSV)0.79時間
−1のシクロヘキサノンオキシムを、エタノール中のオキシムの10質量%溶液として、0.2gの触媒を含有する反応器に提供した。反応を、300℃、325℃、350℃、及び400℃で実行した。時間の関数としての反応のε−カプロラクタムに対する変換率及び選択性を、
図22B及び22Cに示す。
【0129】
図23Aに示されるように、類似の実験を、HP SAPO−34を触媒として用いて行った。反応を、300℃、325℃、350℃、及び400℃で実行した。時間の関数としての反応のε−カプロラクタムに対する変換率及び選択性を、
図23B及び23Cに示す。
【0130】
図22A〜22C及び23A〜23Cに示されるように、HP SAPO−5及びHP SAPO−34は、様々な温度にわたるシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位において安定である。反応時間全体にわたって高い選択性及び変換率が維持されており、触媒の構造的完全性も保持された。
【0131】
反応に対するオキシム濃度の影響について調べた。
図24Aに示されるように、シクロヘキサノンオキシムを、エタノール中のオキシムの10質量%溶液として、0.2gの触媒を含有する反応器に提供した。反応は、325℃で実行した。
【0132】
シクロヘキサノンオキシムの流速は、0.8時間
−1から1.6時間
−1まで変化させた。時間の関数としての反応のε−カプロラクタムに対する変換率及び選択性を、
図24B及び24Cに示す。
【0133】
図23Aに示されるように、類似の実験を、HP SAPO−34を触媒として用いて行った。反応を、0.8時間
−1及び1.6時間
−1のシクロヘキサノンオキシムで実行した。時間の関数としての反応のε−カプロラクタムに対する変換率及び選択性を、
図25B及び25Cに示す。
【0134】
図24及び25に示されるように、HP SAPO−5及びHP SAPO−34は、様々なWHSV値にわたって高い変換率及び選択性を維持しており、この触媒の安定性及び自由度がさらに裏付けられる。
【0135】
例6:シクロヘキサノンオキシム及びシクロオクタノンオキシムの液相ベックマン転位
シクロヘキサノンオキシム(0.1g)、内部標準無水クロロベンゼン(0.1g)、及び新たに焼成した触媒(0.1g)を、三口バッチ反応器フラスコ中の無水ベンゾニトリル(20ml)へ、130℃、還流及び窒素気流下で添加した。得られた懸濁液を、この反応温度でマグネティックスターラーにより撹拌した。反応が進む過程にわたって、反応混合物のアリコートを採取し、GCで分析した。
【0136】
HP SAPO−5、HP SAPO−34、及びHP SAPO−37触媒のシクロドデカノンオキシムのラウロラクタムへの液相転位における時間の関数としての変換率を、
図26に示す。反応は、PhCN(20ml)を溶媒として用い、130℃、窒素下で実行した。0.1gの触媒を、0.1gのオキシムと共に反応器に入れ、7時間還流させた。
【0137】
図26に示されるように、シクロドデカノンオキシムの液相ベックマン転位においてマイクロ多孔性及び階層構造触媒は同等の性能であり、階層構造類似体の方が、より短い接触時間で、向上された率を示している。加えて、より小さいポア(3.8Å)のマイクロ多孔性SAPO−34は、その階層構造類似体と比較して非常に性能が劣っており(物質移動及び拡散による制限)、それによって、後者のよりかさ高い基質分子との触媒としての可能性が強調される。HP SAPO−5、HP SAPO−34、及びHP SAPO−37はすべて、シクロドデカノンオキシムのラウロラクタムへの液相ベックマン転位において活性である。これらは、各々、5時間までに、100%の選択性での100%の変換率に到達する。HP SAPOはすべて、そのマイクロ多孔性類似体よりも活性であり、階層構造多孔性骨格内により多くのアクセス可能活性部位を有することの有益性が示される。
【0138】
シクロドデカノンオキシムの反応に対する触媒量の影響について調べた。
図27A〜27Cに示されるように、触媒の量を、0.1gのオキシムあたり0.02gの触媒から0.1gのオキシムあたり0.1gの触媒まで変化させた。
図27Aは、HP SAPO−5の場合の結果を示す。
図27Bは、HP SAPO−34の場合の結果を示す。
図27Cは、HP SAPO−37の場合の結果を示す。
【0139】
HP SAPO−34で触媒されたシクロドデカノンオキシムの反応に対する温度の影響について調べた。結果を表2に示す。
【0141】
表2に示されるように、HP SAPO−34を、110℃、130℃、及び150℃を含む様々な反応温度にわたって試験した。反応速度は、温度上昇に応じて大きく改善された。すべての条件下で、触媒は、所望されるラクタムへの100%の選択性と共に最大変換率に到達する。
【0142】
次に
図28A〜28Cを参照すると、各触媒について、シクロドデカノンオキシムのベックマン転位における再利用実験を行った。シクロヘキサノンオキシム、内部標準無水クロロベンゼン、及び新たに焼成した回収触媒を、三口バッチ反応器中の無水ベンゾニトリルへ、それぞれ、1:1:1:30.6の質量比で、130℃、還流及び窒素気流下で添加した。得られた懸濁液を、この反応温度でマグネティックスターラーにより撹拌した。反応が進む過程にわたって、反応混合物のアリコートを採取し、GCで分析した。7時間後に変換率を特定した。
図28Aは、HP SAPO−34触媒を用いた各再利用における変換率パーセントの変化を示す。
図28Bは、HP SAPO−5触媒を用いた各再利用における変換率パーセントの変化を示す。
図28Cは、HP SAPO−34触媒を用いた各再利用における変換率パーセントの変化を示す。
【0143】
図28A〜28Cに示されるように、HP SAPO−5、HP SAPO−34、及びHP SAPO−37はすべて、構造的完全性を維持しており、再利用試験後に、触媒性能の維持(ほぼ100%の変換率)を示した。
【0144】
例7:触媒酸性特性の特性決定
例4から、階層構造触媒が、反応において改善された寿命を示すことが観察された。このことは、このような系で発生するコーキングが最小限であることを示唆している。コーキングは、酸部位が強すぎるために生成物を脱着させない場合に発生し得るものであり、又はそれは、拡散が妨げられるために生成物の脱出が妨害される場合に発生し得る。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、階層構造触媒の酸性がメソポアの存在によって弱められており、並びにメソポアが基質及び生成物の物質移動を補助しているものと考えられる。
【0145】
従って、これらの改善の元をさらに確立するために、触媒の構造特性(N
2吸脱着等温線及び電子顕微鏡)、並びに酸性特性(NMR、プローブ分子としてCO及びコリジンを用いたTPD−NH
3FT−IR)についてさらに調べた。
【0146】
固体NMR
図29Aは、SAPO−5の
27Al MAS NMRスペクトルを示す。
図29Bは、HP SAPO−5の
27Al MAS NMRスペクトルを示す。
図30Aは、SAPO−34の
27Al MAS NMRスペクトルを示す。
図30Bは、HP SAPO−34の
27Al MAS NMRスペクトルを示す。
【0147】
図29Cは、SAPO−5の
31P MAS NMRスペクトルを示す。
図29Dは、HP SAPO−5の
31P MAS NMRスペクトルを示す。
図30Cは、SAPO−34の
31P MAS NMRスペクトルを示す。
図30Dは、HP SAPO−34の
31P MAS NMRスペクトルを示す。
【0148】
これらの
27Al及び
31P MAS NMRは、完全縮合結晶AlPO骨格の形成を裏付けている。
27Al MAS/NMRは、四面体アルミニウムの存在を示す強いシグナルを−35から−37ppm近辺に有する。もっとも、それぞれ八面体及び五配位である水和アルミニウム中心の存在を示すより弱いシグナルが、−16及び8ppm近辺に存在する。
【0149】
図29Eは、SAPO−5及びHP SAPO−5の
29Si MAS NMRスペクトルを示す。これらのスペクトルは、界面活性剤の存在がシリコン島(silicon islands)の形成を促進し、シリカネスト(silica nests)をもたらす結果となることを示唆し得るものであり、これらは、マイクロ多孔性系には存在しない。
【0150】
図30Eは、SAPO−34及びHP SAPO−34の
29Si MAS NMRスペクトルを示す。このSi NMRは、マイクロ多孔性類似体と同等である孤立したケイ素部位の形成を裏付けている。
【0151】
図31Aは、HP SAPO−37の
27Al MAS NMRスペクトルを示す。
図31Bは、SAPO−37の
31P MAS NMRスペクトルを示す。
図31Cは、SAPO−37の
29Si MAS NMRスペクトルを示す。
【0152】
FT−IR、NH
3、CO、及びコリジンプローブ
得られた階層構造触媒の酸性特性をさらに調べるために、プローブ分子(CO及びコリジン)によるFT−IRを用いた。FT−IRにより、階層構造SAPOのヒドロキシル領域の直接の観察が可能となった。
【0153】
SAPO−5及びHP SAPO−5のFT−IRスペクトルを、
図32Aに示し、SAPO−34及びHP SAPO−34のFT−IRスペクトルを、
図32Bに示す。両触媒共に、POH/AlOH欠陥部位に帰することができるバンド(3678cm
−1)及び骨格中へのケイ素の置換(Si−OH−Al)に起因するバンド(3628〜3600cm
−1)を有していた。また、欠陥Si−OH基に割り当てられた3746cm
−1の追加のバンドも存在し、これは、マイクロ多孔性触媒のFT−IRでは非常に小さく、これらのシラノール部位が界面活性剤の焼成によって形成されたことを示している。
【0154】
HP SAPO−5及びHP SAPO−34に対するFT−IRスペクトルの比較を、
図32Cに提示する。
図32Cに示されるように、階層構造多孔性物質は、対応するマイクロ多孔性SAPO−5及びSAPO−34のスペクトルの場合よりも非常に大きい共通のSi−OHピーク(約3750cm
−1)を共有している(
図32A及び32B参照)。
【0155】
酸部位の量及び強度を、アンモニアの昇温脱離法(TPD)を用いて調べ、SAPO−5及びHP SAPO−5については、その結果を
図33Aに提示し、SAPO−34及びHP SAPO−34については、その結果を
図33Bに提示し、並びにSAPO−37及びHP SAPO−37については、その結果を
図33Cに提示した。
【0156】
すべてのTPD測定は、注文製作のシステムで行い、TCD検出器を用いてアンモニア濃度をモニタリングした。サンプルは、20% O
2/ヘリウム混合物中、10℃/分で550℃まで2時間加熱することによって前処理した。サンプルをアンモニアに暴露し、150℃で8時間平衡化させた。脱着は、気流中、10℃/分で600℃まで、及び600℃で40分間保持することで行った。
【0157】
これらの結果は、SAPO−5とHP SAPO−5との間(
図33A参照)、SAPO−34とHP SAPO−34との間(
図33B参照)、及びSAPO−37とHP SAPO−37との間(
図33C参照)で酸強度が類似していることを示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、
図33Bの250〜300℃での僅かな追加的特徴が、弱酸性シラノール部位に帰することができるものであり得、階層構造触媒にSiOH部位が存在することをさらに示唆し得るものであると考えられる。
【0158】
FT−IRスペクトルは、存在するヒドロキシル基の種類に関する情報を提供した一方で、階層構造多孔性物質に存在する酸部位の強度及び種類に関しての区別は成されなかった。これらの物質の酸強度は、結果として得られる物質の触媒特性に関連するものと考えられる。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、固体酸触媒を用いたベックマン転位は、活性部内での酸性の微妙なバランスに依存しているものと考えられ、それは、反応を起こさせるほどに充分に強い必要があるが、過剰反応、コーク形成、及び失活を起こす前に塩基性のラクタムが脱着可能であるほどに充分に弱い必要がある。
【0159】
酸部位の強度の特性決定について、CO及び2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン)などのプローブ分子を用いたFT−IRで調べ、物質の酸性を間接的に研究した。
図34A及び34Bで≧2190cm
−1に吸収が存在しないことは、HP SAPO−5又はHP SAPO−34物質のいずれにおいてもルイス酸性が見られなかったこと、及びブレンステッド酸部位のみが存在したことを示している。COとの相互作用後におけるブレンステッド酸部位の260から286cm
−1のバンドシフトの評価から、両サンプルが、主として中程度の強度のブレンステッド酸部位を含むことが明らかとなった。ブレンステッド酸ピークの面積を積分することにより、HP SAPO−5サンプルと比較して、HP SAPO−34がより高い全ブレンステッド酸性、さらにはいくつかのより強い酸部位(より大きいピークシフト)を有することを確認することができた。これらの結果は、
図33A及びBに示されるアンモニア昇温脱離法の結果、並びに
図35A及び35Bに示されるFT−IRコリジンのデータに類似していた。階層構造触媒の酸性の強度は、マイクロ多孔性触媒の酸強度に類似しており、このことは、階層構造多孔性物質が、対応するマイクロ多孔性物質に類似する活性部位を有することを示している。
【0160】
COを用いたFT−IRにより、HP SAPO−5(
図34A参照)及びHP SAPO−34(
図34B参照)のいずれにもルイス酸性が見られないことが示され、それは≧2190cm
−1の吸収が存在しないことによって特徴付けられる。そうではなく、ブレンステッド酸部位のみが存在していた。COとの相互作用後におけるブレンステッド酸部位の260〜286cm
−1のバンドシフトの評価から(表2)、両サンプルが、主として中程度の強度のブレンステッド酸部位を含むことが明らかとなった。表3は、HP SAPO−34、HP SAPO−5、及びこれらのマイクロ多孔性類似体におけるOHブレンステッド部位のピークの位置、及び80KでのCO吸着後のそれらのシフト(Δv
OH)を示す。
【0162】
ブレンステッド酸ピークの面積を積分することにより、HP SAPO−5サンプルと比較して、HP SAPO−34がより高い全ブレンステッド酸性、さらにはいくつかのより強い酸部位(より大きいピークシフト)を有することを確認することができた。この傾向は、アンモニア昇温脱離法の結果(
図33A及び33B)と良く一致していた。表3の結果はさらに、階層構造触媒が、対応するマイクロ多孔性触媒に類似する活性部位を有することを示していた。
【0163】
階層構造SAPO内の酸部位をさらに調べるために、コリジンをFT−IRのプローブとして用いた。コリジンは:i)立体障害の要求の高いプローブであることから、酸性部位のアクセス性に関する見識が得られること、ii)1652cm
−1及び1637cm
−1のバンドを定量することによって、OH...N間の相互作用の強さを評価することができ、従って、ベックマン転位における基質間の相互作用の強さが示唆されること、及び3つめとしてiii)高温で安定であることから、反応条件に典型的である温度にわたって相互作用の強さをスクリーニングすることができること、という3つの重要な理由で選択された。
【0164】
図35Aは、HP SAPO−5に対するコリジン吸着の結果を示す。コリジンは、150℃の脱着後、すべての種類のOH基と相互作用している。本質的にすべてのコリジンが、450℃までに脱着される。
図35Bは、SAPO−5及びHP SAPO−5触媒中の弱、中、及び強酸部位の分布を示す。
図35Bに示されるように、HP SAPO−5触媒は、一般的に、SAPO−5触媒よりも多い数の弱、中、及び合計酸部位を含有する。HP SAPO−5の場合、コリジンは、150℃の脱着後、すべての種類のOH基(Si−OH、P−OH、Si−OH−Al、及びHが結合したもの)と相互作用することができ、それらのアクセス性は、マイクロ多孔性類似体SAPO−5と比較して大きく向上している。
【0165】
図36Aは、HP SAPO−34に対するコリジン吸着の結果を示す。コリジンは、150℃の脱着後、主としてSi−OH及びP−OH基と相互作用している。
図36Bは、SAPO−34及びHP SAPO−34触媒中の弱、中、及び強酸部位の分布を示す。
図36Bに示されるように、HP SAPO−34触媒は、SAPO−5触媒と比較して、類似の酸部位分布を有する。
図36Aに示されるように、マイクロ多孔性構造に類似して、架橋ヒドロキシ基の減衰が非常に最小限であることから、架橋OH基の非常に少ない割合しかアクセス可能ではない。
【0166】
2つの階層構造触媒の活性部位のアクセス性の相違は、それらの非常に異なるマイクロ多孔性構造によって説明することが可能である(
図4A及び4B参照)。SAPO−5は、SAPO−34の3.8Åよりも非常に大きい7.3Åのポアを有している。階層構造物質は、大部分がマイクロ多孔性であることから、マイクロポア系によって取り囲まれていることに起因して、すべてのメソポアがアクセス可能というわけではない可能性が高く、従って、FT−IR−コリジンは、存在するすべての種類の酸部位を正確に表していない可能性がある。いずれの場合でも、すべてのコリジンは、450℃までに脱着される。FT−IR−COの結果に類似して、コリジン吸着は、コリジンが、主として中から弱酸部位に吸着することを示している。
【0167】
HP SAPO−5及びHP SAPO−34などの階層構造触媒は、それらの対応するマイクロ多孔性類似体と同等の酸性を有していたが、選択性を損なうことなく、寿命、酸性、及びベックマン転位における基質自由度のうちの1つ以上の改善を提供した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、メソポアを含めることにより、基質の活性部位へのアクセス性が高められ、さらには反応に関与することができる追加の活性部位(シラノール)が形成される結果となったものと考えられる。
【0168】
例8:さらなる階層構造多孔性AlPO触媒の合成及び特性決定
アルミニウムイソプロポキシド(6.807g、Aldrich社)を、リン酸(2.28ml、H2O中85%、Aldrich社)及び水(10ml)と共にテフロンビーカーに添加し、均一な溶液が形成されるまで、1.5時間にわたって激しく撹拌した。ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)(1.2ml、H
2O中72%、Aldrich社)を滴下し、続いてすぐに、トリエチルアミン(3.7ml、Aldrich社)を滴下し、続いて水(20ml)を添加した。得られた濃い溶液を、1時間撹拌した。表4に示した通りの金属前駆体を滴下し、このゲルをさらに1.5時間撹拌した。
【0169】
マイクロ多孔性類似体を、同じ方法を用いて、しかしDMDOを含めることなく形成した。
【0171】
ゲルの内容物を、3つの23ml テフロンライニングステンレス鋼オートクレーブに分割し、これらを、予熱しておいたファン付きオーブン(WF−30 Lenton社)に200℃で24時間移した。各オートクレーブからの固体生成物を、ろ過によって回収し、500mlの脱イオン水で洗浄した。生成物を80℃で一晩乾燥させた。合成したままの状態の触媒を、空気流下、550℃で16時間にわたって管状炉で焼成して、白色固体を得た。
【0172】
多金属階層構造多孔性(HP)触媒での異なる金属の組み合わせの影響について、一連の分光分析技術を用いて調べた。すべての多金属HP触媒は、同じソフトテンプレート法を用いて合成し、これは、オルガノシラン界面活性剤、ジメチルオクタデシル[(3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOD)を、メソポアの形成を指向するために、トリエチルアミンを、マイクロポアの形成を指向するために用いた。DMODは、そのケイ素含有親水性ヘッド、並びにSi−O−Si及びSi−O−Al結合を形成する高い傾向のために適切な界面活性剤として選択し、従って、AlPO骨格全体でメソポアの形成が促進される。活性部位の固有の性質に対する異なる金属の組み合わせの影響を評価するために、触媒に対して同一の合成手順を用いた。触媒は、合成の性質に起因して、骨格にもケイ素を含有することになる。
【0173】
図37に示される粉末X線回折パターンに示されるように、HP AlPO−5骨格内の様々な金属の組み合わせ、コバルト、チタン、並びにコバルト及びチタンは、構造又は相の欠陥ももたらすことなく、意図する結晶AFI骨格が得られた。
【0174】
図38Aは、HP Co AlPO−5のSEM画像であり、
図38Bは、HP Ti AlPO−5のSEM画像であり、
図38Cは、HP Co Ti AlPO−5のSEM画像である。
図38A〜38Cに示されるように、走査型電子顕微鏡により、5〜30ミクロンの範囲の予測された球形状AlPO−5粒子が明らかとなり、AlPO−5骨格の良好な合成がさらに実証された。
【0175】
階層構造多孔性触媒の作製における発明者らの設計戦略の有効性を評価するために、BET測定を行った。
図39Aは、各触媒に対する窒素吸着等温線を示す。
図39Bは、各触媒に対するBJHポア分布曲線を示す。すべての階層構造多孔性サンプルは、IV型等温線を示しており、触媒内にメソポアが存在することを示している。
【0177】
BJH吸着ポア分布曲線は、さらに、すべてのHP触媒が、およそ40Åの直径であるメソポアを含有することを示した。表5に示されるように、すべてのHP触媒は、それらのマイクロ多孔性類似体よりも大きい全表面積及びメソポア体積を有していたが、それでも、類似のマイクロポア表面積及びマイクロポア体積を維持していた。BETデータは、階層構造多孔性骨格中にメソポアが良好に組み込まれていることを強く示すものである。
【0178】
Al(III)、P(V)、及びSi(IV)部位の局所的配位構造を調べるために、MAS NMRを実施した。
図40Aは、HP Co AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。
図40Bは、HP Ti AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。
図40Cは、HP Co Ti AlPO−5の
29Si MAS NMRを示す。これら3つの階層構造多孔性触媒の
29Si MAS NMRから、合成手順にオルガノシランを用いることによって骨格中にケイ素が組み込まれたことがさらに確認された。
29Si MAS NMRのシグナルは、3つすべてのHP触媒においてブロードであり、このことは、合成の性質に起因して予測されるケイ素のゾーニング(silicon zoning)の要素が存在することを示している。HP触媒に対して見られた主ピークは、約−90ppmであったが、これは、多くの場合、II型置換によって形成される孤立した部位である孤立した酸性Si(OAl)
4部位に割り当てられる。これは、実際は、Si AlPO−5骨格に対しては異例であり、典型的には、−100ppmに近いより低いppmにもっとブロードであるシグナルが予測される。従って、このことは、触媒的に及び合成的に非常に興味深く、それは、HP触媒が、それ以外では形成が困難であるAFIアルミノホスフェート骨格内の孤立したケイ素部位を作り出す方法を表しているからである。
【0179】
置換HP AlPO−5触媒中のコバルト及びチタン金属部位の性質を解明するために、拡散反射(DR)UV/可視を用いた。
図41は、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5のDR UV/可視スペクトルを示す。拡散反射UV可視測定により、AlPO骨格内での置換されたコバルト及びチタンイオンの分子環境を調べることができた。還元されたコバルト含有HP AlPOのDR UV/可視は、500から700nmの可視領域にトリプレットバンドを有しており、これは、四面体配位におけるCo(II)イオンのd−d遷移に帰することができる。還元されたHP Co Ti ALPO−5及びHP Ti AlPO−5のDR UV−可視スペクトルは、四面体Ti(IV)の骨格酸素リガンドとのLMCT遷移に起因する1つの強い吸収バンドを、200〜250nmの範囲に示す。このバンドのブロードな性質は、チタンが純粋な四面体ではないことを示している。そうではなく、チタン中心は、四面体及び八面体Ti(IV)の混合である可能性が高く、これは、チタン置換AlPO内で一般的に見られることが多い。もっとも、HP Co Ti AlPO−5のTi(IV)バンドが、HP Ti AlPO−5の場合よりもシャープであることには留意すべきであり、このことは、Ti(IV)イオンが、コバルト含有触媒の場合の方がより四面体に近い性質であることを示している。この現象は、第二の金属がチタンの骨格中への指向を補助することができるという「支援相乗作用(support synergy)」に帰することができ、これまでにマイクロ多孔性類似体で見られていた。
【0180】
I型置換によるCo(II)の及びII型置換によるTi(IV)の同形置換はいずれも、Si(IV)の組み込みと同様に酸部位の発生に繋がり、これらの部位の強度、種類、及び量は、触媒活性と密接に関連している。従って、
図42に示すように、FT−IRを用いて、階層構造多孔性骨格の酸性をさらに調べた。
図42は、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5のOH伸縮領域のFTIRスペクトルを示す。OH伸縮領域の直接の観察から、3つのスペクトルは、3つの触媒すべてにおいて非常に類似していることが示された。各々は、Al−OH及びP−OH欠陥に起因するバンド、並びにAlPO骨格へのケイ素の組み込みに起因するバンドを有していた。3つの階層構造多孔性骨格すべてにおいて、2型若しくは3型置換又はこれら両方の組み合わせによって骨格中へ同形置換されたケイ素に起因する触媒内のブレンステッド酸部位に対応するバンドが約3640cm
−1に存在していた。また、3750cm
−1にもさらなるバンドが存在し、これは、メソポア中の界面活性剤の焼成に由来する触媒中のシラノール部位に起因する。従って、FTIRデータは、
29Si MAS NMR(
図40A〜40C参照)と同様に、界面活性剤が良好に骨格中に組み込まれたことを示している。
【0181】
FTIR分光分析を小さい基本COプローブ分子と組み合わせることで、
図43A〜Cに示されるように、骨格中に存在する酸部位の種類及び強度を解明することができた。
図43Aは、焼成HP Co AlPO−5に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。
図43Bは、焼成HP Ti AlPO−5に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。
図43Cは、焼成HP Co Ti AlPO−5に80kで吸着されたCOのFTIRスペクトルを示す。FTIRスペクトルのCO領域の観察から、コバルト含有触媒(HP Co AlPO−5及びHP Co Ti AlPO−5)が、ブレンステッド酸部位だけでなくルイス酸部位も含有することが明らかとなった。HP Ti AlPO−5も、ルイス及びブレンステッド酸部位の両方に配位されたCOに起因する吸収バンドも有していたが、コバルト含有サンプルと比較して、ルイス酸部位へのCO吸着は、非常に低く観察され、従って、HP Ti AlPO−5は、コバルト含有骨格よりも非常に低いルイス酸性を有することが示された。
【0182】
図44A〜44Cは、焼成HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に80kで吸着された、それぞれ、0.02cc、0.08cc、及び0.16ccのCOの添加後のFTIRスペクトルを示す。
図44A〜44C及び表6に示されるように、OH領域において、CO吸着の結果、Si−OH、P−OH、及びSi−OH−Alバンドが低周波数側へシフトした。
【0184】
図44A〜44C及び表6に示されるように、低CO被覆率では、すべてのサンプルが、ヒドロキシル領域において、3365cm
−1近辺にシフトしたSi−OH−Alバンドを示した。これは、SAPO触媒
8に典型的である275から278cm
−1のバンドシフトをもたらした。2つのコバルト含有サンプルは、>400cm−1のシフトを有する3235cm
−1近辺のさらなるバンドも有しており、これは、より強いブレンステッド酸部位と相互作用するCOに起因する。より高いCO被覆率では((0.08cc)、3つの触媒は、COとP−OH欠陥基との相互作用に起因する3470cm
−1近辺のさらなるシフトしたOHバンドを有していた。さらにより高いCO被覆率では(0.16cc)、3つのサンプルにおいて、3745cm
−1近辺にSi−OHバンドの少しの減衰が存在する。FTIR−COにより、コバルト含有HP AlPO−5が、HP Ti AlPO−5よりも非常に強く多い酸部位を含有することが明らかとなった。
【0185】
図45は、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5に対するTPD窒素吸着の結果を示す。
図45は、上記の観察結果をさらに裏付けるものであり、コバルト含有触媒が、本質的に同一の酸部位数及び強度分布を有するのに対し、HP Ti AlPO−5触媒は、全酸性が非常により低く、より強い部位が少ないことを示している。このことは、
29Si NMRより、ケイ素の局所環境が3つの触媒において本質的に同じであり(
図40A〜40C)、BET(
図39A及び39B)及びSEM(
図38A〜38C)により、多孔性及び粒子サイズが極めて類似していることが確認されたことから、非常に意味深いことである。従って、酸の強度及び種類におけるこれらの相違は、ドーパント金属に由来しているに違いなく、従って、特定の反応に対して活性部位を調節する実際の可能性が強調される。
【0186】
図46は、よりかさ高い基本プローブであるコリジンを用いて調べた結果を示す。
図46に示されるように、よりかさ高い基本プローブであるコリジンを用いたFTIRにより、ブレンステッド酸部位へのアクセス性、並びにそれらの強度及び量を評価することができた。酸部位の強度を調べるために、各触媒をコリジンで充填し、次に特定の温度まで加熱した。FTIRのヒドロキシル領域の観察により、コリジンが、すべての触媒内のすべてのヒドロキシル基と相互作用し、この結果、3300cm
−1近辺にN−H伸縮を有するプロトン化種が形成されたことが明らかとなった。コリジンを伴うサンプルの温度が上昇されるに従って、コリジンはサンプルから脱着し、450℃の脱着後は、ほとんど残っていなかった。3つのHP触媒の挙動は、非常に類似していた。全コリジン吸着は、コバルトのみのHP触媒で最も高く、それはまた、最も多い数の強部位も有していた。強度分布は、2つのコバルト含有サンプルにおいて非常に類似しており、チタンのみのサンプルと比較して、中部位の割合が高かった。
【0187】
様々な分光分析技術を用いることにより、HP AlPO内での酸部位の様々な強度及び種類を確認することができた。サンプルが類似の多孔性及びケイ素環境を有するとした場合、酸性の相違は、骨格中に同形置換されたコバルト及びチタンに起因すると仮定することは妥当である。これらの触媒をさらに調べるために、触媒反応での試験を行った。
【0188】
例9:シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位
シクロヘキサノンオキシムのε−カプロラクタムへのベックマン転位を、窒素下、三口丸底フラスコで行った。0.1gのシクロヘキサノンオキシム、0.1gのクロロベンゼン(内部標準)、及び0.1gの触媒を入れたフラスコに、ベンゾニトリル(20ml)を添加した。反応を130℃で行い、反応が進む過程をモニタリングするために、アリコートを多頻度で採取した。溶液を遠心分離し、Elite−5カラム及び水素炎イオン化検出器を用いたPerkin Elmer Calrus 480GCによって分析した。クロロベンゼンを内部標準として用い、検量法を用いて生成物を同定し、定量した。
【0189】
分光分析による研究から、3つのHP触媒すべてがブレンステッド酸部位を含有しており、コバルト含有部位は、ある程度のルイス酸性も有していることが確認された。従って、工業的に重要であるベックマン転位をプローブ反応として選択して、触媒活性部位についてさらに調べた。この転換を用いて、環状オキシムが、ナイロン合成のためのラクタム単量体構成要素に変換される。この反応には弱ブレンステッド酸部位が好ましく、より強い部位及びルイス酸部位は、多くの場合、望ましくないケトンの形成を促進することは公知である。従って、HP AlPO内の酸部位の性質は、その触媒活性及び選択性に影響を与えるはずである。
【0190】
3つのHP AlPO触媒すべてが、液相ベックマン転位において活性であった。
図47Aは、シクロヘキサノンオキシムのε−カプロラクタムへの液相ベックマン転位における種々の触媒に対する変換率パーセント、選択性パーセント、及び収率パーセントを示す。反応は、0.1gのシクロヘキサノンオキシム、0.1gの触媒、0.1gのクロロベンゼン(IS)、20mlの無水PhCNを用い、窒素下、130℃で7時間にわたって行った。HP Ti AlPO−5は、所望される生成物、ε−カプロラクタムに対して100%選択的であった。HP Co AlPO5及びHP Co Ti AlPO−5はいずれも、副生物としてシクロヘキサノンを生成した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、シクロヘキサノンの形成は、ルイス酸性、並びにより強い酸部位の存在に起因するものと考えられ、HP Co AlPO−5及びHP Co Ti AlPO−5の両方がこれらを有する(
図40A〜40C)。しかし、興味深いことに、両方共にほぼ同一の酸強度及び量を有するにも関わらず、HP Co Ti AlPO−5は、HP Co AlPO−5よりも選択的である。HP Co Ti AlPO−5は、71%の最も高い変換率も、従って、39%の最も高いε−カプロラクタムの収率も有しており、100%の選択性を有するHP Ti AlPO−5は、より低い29%の収率である。2つの触媒間のこれらの相違は、Co及びTi部位の相乗効果に起因する可能性がある。DR UV/可視(
図41)から、チタンは、二金属HP触媒の場合の方がより四面体に近い性質であると推測された。このより四面体に近い性質は、触媒に対してより適し得るものであり、従って、より高い変換率に、従ってより高いε−カプロラクタムの収率に繋がる。
【0191】
図47Aに示されるように、階層構造多孔性触媒は、触媒性能における高い活性及び改善された選択性を示す。
次に
図47Bを参照すると、HP触媒の効果をさらに試験するために、より大きい基質、シクロドデカノンオキシム(0.9nm)を、工業的に重要であるナイロン12への前駆体であるラウロラクタムへのベックマン転位に用いた。行った反応は、0.1gのシクロヘキサノンオキシム、0.1gの触媒、0.1gのクロロベンゼン(IS)、20mlの無水PhCN、窒素下、130℃で2時間という反応条件下での、シクロドデカノンオキシムからラウロラクタムへの液相ベックマン転位であった。
図47Bに示されるように、階層構造多孔性触媒は、マイクロ多孔性触媒よりも遥かにより活性であった。シクロドデカノンオキシム(0.9nm)は、AlPO−5のマイクロポア(0.7nm)よりも大きく、従って、マイクロ多孔性触媒がこの転位で活性であることから、外部及び内部の両方の部位が、この反応に対して活性である可能性が高い。階層構造多孔性触媒は、外部及び内部の両方の部位が基質にとってアクセス可能であり、このことが、僅か2時間後の極めて高い変換率(HP Ti AlPO−5において92%)に繋がっているが、一方マイクロ多孔性類似体の場合は、外部の部位のみが利用可能であり、従って、より低い変換率が観察されている(Ti AlPO−5において僅かに24%)。この反応において、階層構造多孔性触媒はすべて、100%の選択性で81〜92%という非常に高い変換率を有している。高い変換率の元を解明するために、MCM41及びHP AlPO−5の両方を、この反応で試験した。シクロヘキサノンオキシムの転位の場合とは異なり、MCM41は、この反応では活性であり、ラウロラクタムを形成することができ、同様にHP AlPO−5も活性であった。もっとも、これらはいずれも、多金属HP AlPO−5の場合ほど良好ではなく、従って、特定の反応に対して活性部位の固有の性質を微妙に調節するための骨格内の金属の重要性が強調される。
【0192】
本開示は、主としてシクロヘキサノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、及びシクロドデカノンオキシムのそれらの対応するラクタムへのベックマン転位に関するものであるが、本明細書で開示される特徴が、その他のラクタム及びその他のモノマーの生産に適用されることは理解されるべきである。
【0193】
本発明を、代表的な設計に関連して記載してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で、さらに改変されてもよい。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知の又は慣習的な実践の範囲に含まれるそのような本開示からの逸脱も含むことを意図している。
[1]マイクロ多孔性骨格及びメソ多孔性骨格を有する階層構造多孔性アルミノホスフェートを含む触媒の存在下、オキシムを反応させてラクタムを作製する工程を含む、ベックマン転位反応を行う方法。
[2]前記メソ多孔性骨格が、15Åから50Åのポア径を有し、前記マイクロ多孔性骨格が、3Åから10Åのポア径を有する、[1]に記載の方法。
[3]前記触媒が、マンガン、鉄、銅、マグネシウム、クロム、コバルト、銅、亜鉛、ケイ素、チタン、バナジウム、及びスズから成る群より選択される1若しくは2つの金属で同形置換された階層構造多孔性アルミノホスフェート触媒である、[1]に記載の方法。
[4]前記触媒が、HP SAPO−5、HP SAPO−34、及びHP SAPO−37から選択される、[1]に記載の方法。
[5]前記触媒が、コバルト及びチタンから成る群より選択される1若しくは2つの金属で同形置換された階層構造多孔性アルミノホスフェート触媒である、[1]に記載の方法。
[6]前記触媒が、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5から成る群より選択される、[1]に記載の方法。
[7]前記オキシムが、シクロヘキサノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、及びシクロドデカノンオキシムから選択される、[1]に記載の方法。
[8]AFI、CHA、及びFAUから成る群より選択されるIZA骨格コードを有するアルミノホスフェート骨格、各々が3から10Åのポア径を有する相互接続された複数のマイクロポア、及び,前記マイクロポアと相互接続された各々が15Åから50Åのポア径を有する複数のメソポア、を含む階層構造多孔性触媒。
[9]前記触媒が、HP SAPO−5、HP SAPO−34、及びHP SAPO−37から成る群より選択される階層構造多孔性シリコアルミノホスフェート触媒である、[8]に記載の階層構造多孔性触媒。
[10]前記触媒が、HP Co AlPO−5、HP Ti AlPO−5、及びHP Co Ti AlPO−5から成る群より選択される、[8]に記載の階層構造多孔性触媒。