(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559261
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】電気機械式のブレーキ装置で制御ストロークを算出するための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20190805BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20190805BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20190805BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20190805BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20190805BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
F16H25/20 Z
F16D121:24
F16D125:40
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-563252(P2017-563252)
(86)(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公表番号】特表2018-516206(P2018-516206A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2016059238
(87)【国際公開番号】WO2016206832
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】102015211468.6
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ベールレ―ミラー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】エングラート,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】プッツァー,トビアス
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/156176(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/018256(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/149743(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/007414(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012205576(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102011004704(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012206223(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00 − 13/74
F16D 49/00 − 71/04
F16H 25/20
F16D 121/24
F16D 125/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式のブレーキモータ(3)を備えた、車両の電気機械式のブレーキ装置(1)で制御ストロークを算出するための方法において、前記ブレーキモータ(3)のモータ軸がスピンドル(4)を駆動し、該スピンドル(4)にスピンドルナット(5)が取り付けられていて、該スピンドルナット(5)が前記スピンドル(4)の回転運動によってブレーキピストン(6)に向かう方向に位置調節されるようになっており、この場合、スピンドルナットストローク(xstart)を、まずモータ定数初期値(KM,start)およびモータ全抵抗初期値(Rges,start)を考慮して算出し、次いで、評価の実施後に、モータ定数評価値(KM,est)およびモータ全抵抗評価値(Rges,est)を考慮して、前記スピンドルナットストローク(xstart)の修正を実施する、電気機械式のブレーキ装置で制御ストロークを算出するための方法。
【請求項2】
前記スピンドルナットストローク(xstart)を、供給電圧(US)およびモータ電流(iA)を考慮して、前記モータ定数初期値(KM,start)および前記モータ全抵抗初期値(Rges,start)を用いて、
【数1】
に従って演算し、この式中、
SSp スピンドルピッチ
iGetr ブレーキモータに後置接続された伝動装置の伝達比
である、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
修正ストローク(xdelta)を、
【数2】
より算出し、この場合、修正されたスピンドルナットストローク(xwahr)を、前記スピンドルナットストローク(xstart)から前記修正ストローク(xdelta)を減算することによって算出する:
【数3】
ことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
実際とは異なるモータ定数評価値(KM,start)若しくはモータ全抵抗評価値(Rges,start)を有するスピンドルナットストロークの立ち上がりライン(xstart,steig)と、実際のモータ定数評価値(KM,est)若しくはモータ全抵抗評価値(Rges,est)を有するスピンドルナットストローク(xwahr)の立ち上がりライン(xwahr,steig)との間の偏差(xdef)を考慮し:
【数4】
この式中、
tparam 前記実際のモータ定数評価値(KM,est)および前記モータ全抵抗評価値(Rges,est)が得られるまでの時間間隔、
を意味することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記偏差(xdef)を考慮して、前記スピンドルナット(5)の前記修正された全ストローク(xges)を算出する:
【数5】
ことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
モータ定数初期値(KM,start)およびモータ全抵抗初期値(Rges,start)として、前記電気機械式のブレーキ装置(1)の締付過程または解除過程の評価値を用いることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法を、前記電気機械式のブレーキ装置(1)の締付過程時に実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法を、前記電気機械式のブレーキ装置(1)の解除過程時に実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記スピンドルナットストローク(xstart)を、前記ブレーキモータ(3)のアイドリング段階の開始時に初めて算出することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための閉ループ制御装置(12)。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための開ループ制御装置(12)。
【請求項12】
請求項10記載のブレーキ装置(1)の調節可能な構成要素を制御するための閉ループ制御装置(12)を有する、電気式のブレーキモータ(3)を備えた、車両の電気機械式のブレーキ装置。
【請求項13】
請求項11記載のブレーキ装置(1)の調節可能な構成要素を制御するための開ループ制御装置(12)を有する、電気式のブレーキモータ(3)を備えた、車両の電気機械式のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電気機械式のブレーキ装置で制御ストロークを算出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車ブレーキ若しくはパーキングブレーキは公知であり、この駐車ブレーキ若しくはパーキングブレーキを介して、車両を停止状態で固定する締付力が生ぜしめられる。駐車ブレーキは、電気式のブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置として構成されており、電気式のブレーキモータのモータ軸はスピンドルを駆動し、このスピンドルにスピンドルナットが取り付けられていて、このスピンドルナットがスピンドルの回転運動によってブレーキピストンに向かう方向に位置調節されるようになっている。ブレーキピストンは、ブレーキライニングの支持体であって、ブレーキモータの駆動運動時にブレーキディスクに向かって負荷される。このような形式の電気機械式のブレーキ装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
締付力を決定するために、電気式のブレーキモータのモータ定数を知る必要があり、モータ定数の値は、製造公差に基づいていて、しかも劣化条件および温度条件に依存して変動する。特許文献1によれば、モータ定数を算出するために、アイドリング段階中にブレーキモータの電圧およびモータ電流が測定され、しかもモータ電流はダイナミックな電流変動段階中に算出される。
【0004】
締付力を発生させるために、まずアイドリング段階を克服する必要がある。アイドリング段階中に、スピンドルナットがブレーキモータの駆動運動に基づいてディスクブレーキに向かって位置調節されるが、ブレーキライニングとブレーキディスクとはまだ接触していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102012205576号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明による方法は、電気式のブレーキモータを備えた、自動車の電気機械式のブレーキ装置の制御ストロークを算出するために若しくは調節するためにも用いられる。この方法によって、例えば、電気機械式のブレーキ装置によって制動力若しくは締付力が発生されていない間のアイドルストローク(エアギャップ)を場合によっては後続の締付過程のためのスピンドルナットの初期位置として、僅かに調節することができ、これによって、締付過程時に制動力が発生されるまでの時間間隔が短縮される。制御ストロークは高い精度で決定することができるので、例えばブレーキライニングとブレーキディスクとが間違って接触するブレーキの引き摺りは避けられる。一般的に、制御ストロークは、ブレーキ装置の締付過程においてもまた解除過程においても、それぞれアイドリング段階および/または制動力発生段階若しくは制動力低下段階に関連して決定することができる。制御ストロークは、電気式のブレーキモータの調節運動若しくはブレーキモータによって駆動される構成部分、例えばスピンドルナットの調節運動に関連している。
【0007】
この方法では、電気機械式のブレーキ装置の部分である、電気式のブレーキモータのモータ軸がスピンドルを駆動し、このスピンドルにスピンドルナットが取り付けられている。スピンドルナットは、スピンドルの回転運動によって軸方向でブレーキピストンに向かう方向に位置調節され、このブレーキピストンは、ブレーキライニングの支持体であって、ブレーキライニングは、所望の制動力を生ぜしめるためにブレーキディスクに押し付けられる。締付過程時には電気式のブレーキモータによってアイドルストロークを克服しなければならない。アイドルストロークは、スピンドルナットがブレーキピストンにぶつかる前のスピンドルナットストロークである。例えばアイドルストロークを減少させるために、高い精度で実際のスピンドルナット位置を知る必要がある。
【0008】
本発明の方法によれば、スピンドルナットストロークは、まずモータ定数の初期値およびモータ全抵抗の初期値(ブレーキモータおよびブレーキモータに通じる回路の個別抵抗の合計)を考慮して算出される。次いで、モータ定数およびモータ全抵抗の評価の実施後に、モータ定数およびモータ全抵抗のための評価値を考慮して、スピンドルナットストロークの修正が実施される。従って、スピンドルナットストロークは、初期位置、例えば引き戻されたストッパ位置に関連して得られる。
【発明の効果】
【0009】
このような方法は、スピンドルナットストロークを算出するために、モータ定数およびモータ全抵抗のための実際の値が考慮される、という利点を有している。従って、これらの値の例えば温度または劣化に依存した変化を検出して、初期値に対して改善することができる。それに応じて、スピンドルナットストロークも高精度で提供され、電気式のブレーキモータは、スピンドルナットの制御ストロークが所望の値に調節され、例えばブレーキピストンにぶつかるまでの、スピンドルナットのエアギャップ若しくはアイドルストロークが著しく減少されるように、制御され得る。
【0010】
まず、スピンドルナットの位置調節時にスピンドルナットストロークはさらに、モータ定数およびモータ全抵抗のための初期値を用いて算出される。スピンドルナット位置調節の開始後に、モータ定数およびモータ全抵抗が、特にブレーキモータ内のモータ電圧およびモータ電流に基づいて評価される。評価の実施後に、モータ定数およびモータ全抵抗のための実際の評価値により、算出されたスピンドルナットストロークの修正が実施される。
【0011】
スピンドルナットストロークの算出は、第1のステップで、モータ定数およびモータ全抵抗のための初期値により行われる。評価は、一般的な形式で、締付過程の開始後の短い時間間隔、例えば概ね0.2秒または0.3秒で行われる。モータ定数およびモータ全抵抗のための評価された値が得られると、修正が実施される。
【0012】
しかしながら、好ましくはモータ定数およびモータ全抵抗の評価後の例えば0.6秒である固定された時点で修正を実施することも可能である。
【0013】
好適な別の実施例によれば、スピンドルナットストロークの算出は修正を含めて、時間的に連続して実施される様々な段階で行われ、この場合、様々な段階で様々なエラー形式が補正される。第1のエラー形式は、モータ定数およびモータ全抵抗のための実際とは異なる値に基づくスピンドルナットストロークの算出によって、これらのパラメータのための評価値がまだ存在しない場合に生じる。モータ定数およびモータ全抵抗のための実際とは異なる値は、予備調整または早期の評価に由来する。第2のエラー形式は、修正が行われない場合に、モータ定数およびモータ全抵抗のための評価されたパラメータの提供後の時間間隔に関係する。本発明による方法を用いて、2つのエラー形式は補正することができる。
【0014】
好適な実施例によれば、制御ストロークを算出するための方法が、締付力若しくは制動力が発生される電気機械式のブレーキ装置の締付過程時に実施される。しかしながらこの方法は、発生した制動力が低下される、電気機械式のブレーキ装置の解除過程時に実施されてもよい。この方法がブレーキ装置の解除過程時に実施される場合、好適には、スピンドルナットストロークがまずブレーキモータのアイドルリング段階の開始と共に算出される。様々な方法ステップは、すべてが解除過程中だけに実施されるかまたは締付過程中だけに実施されてよい。1つの方法ステップを締め付け過程時に実施して、別の方法ステップを解除過程時に実施することも可能である。
【0015】
すべての方法は、車両の閉ループ制御装置若しくは開ループ制御装置で実施される。閉ループ制御装置若しくは開ループ制御装置は、電気機械式のブレーキ装置の部分であってよく、ブレーキ装置の調節可能な構成要素を制御するための調整信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】パーキングブレーキとして車両に取り付け可能な電気機械式のブレーキ装置の断面図であって、このブレーキ装置において制動力若しくは締付力を電気式のブレーキモータを介して生ぜしめることができる。
【
図2】
修正ありおよび修正なしの、時間に依存したスピンドルナットストロークの動きを示す線図である。
【
図3】
電気機械式のブレーキ装置でアイドルストロークを算出するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
その他の利点および好適な実施例は、以下の請求項、図面の説明および図面に記載されている。
【0018】
図1には、停止状態にある車両を固定するための電気機械式のブレーキ装置1が示されている。ブレーキ装置1は、ブレーキディスク10を把持するキャリパ9を備えたブレーキキャリパ2を有している。アクチュエータとして、ブレーキ装置1はブレーキモータ3である直流モータを有しており、この直流モータのモータ軸はスピンドル4を回転駆動し、このスピンドル4にスピンドルナット5が回転可能に支承されている。スピンドル4が回転すると、スピンドルナット5が軸方向に位置調節される。スピンドルナット5は、ブレーキライニング7の支持体であるブレーキピストン6内で移動し、ブレーキライニング7はブレーキピストン6によってブレーキディスク10に押し付けられる。ブレーキディスク10の反対側に、別のブレーキライニング8が配置されており、このブレーキライニングはキャリパ9に定置に保持されている。
【0019】
ブレーキピストン6内で、スピンドルナット5は、スピンドル4が一方の回転方向に回転すると軸方向で前方にブレーキディスク10に向かって移動することができ、若しくはスピンドル4が他方の回転方向に回転すると軸方向で後方にストッパ11に達するまで移動することができる。締付力を発生させるために、スピンドルナット5はブレーキピストン6の内側の端面側を負荷し、それによって、ブレーキ装置1内で軸方向移動可能に支承されたブレーキピストン6はブレーキライニング7で以って、ブレーキディスク10の対面する端面に押し付けられる。
【0020】
ブレーキモータ3は、ブレーキ装置1の一部である閉ループ制御装置若しくは開ループ制御装置12によって制御される。閉ループ制御装置若しくは開ループ制御装置12は、アウトプットとして供給電圧U
Sを提供し、この供給電圧U
Sによって電気式のブレーキモータ3が負荷される。
【0021】
パーキングブレーキは、必要であれば液圧式の車両ブレーキによって支援されてよいので、締付力は、電動モータ部分と液圧部分とから構成される。液圧式の支援において、ブレーキモータ側に向いた、ブレーキピストン6の後ろ側が圧力下にある液圧によって負荷される。
【0022】
図2は、制動力若しくは締付力を発生させるための締付過程の開始時における、時間に依存したスピンドルナットストロークxを示す。2つの異なる曲線x
startとx
wahrとが示されており、これらの曲線は、モータ定数およびモータ全抵抗の様々なパラメータに基づいて算出される。スピンドルナットストロークx
startは、モータ定数およびモータ全抵抗の実際とは異なるパラメータを用いたスピンドルナットの修正されていないストロークを表す。これに対してスピンドルナットx
wahrは、モータ定数および全抵抗のための実際のパラメータを使用して算出される修正されたスピンドルナットストロークを表す。モータのアイドリング時の供給電圧U
Sおよびモータ電流i
Aから算出される、モータ定数の実際の評価値が存在する時点はt
paramで示されている。
【0023】
スピンドルナットストロークは、アイドリング段階では、概ね直線として表示可能な一定の立ち上がりライン内にある。
図2には2つの時点t
1およびt
2が示されており、これらの時点t
1,t
2は、x
startおよびx
wahrの直線的な立ち上がりライン内にあって、これらの時点t
1,t
2間に時点t
paramが存在し、この時点t
paramでモータ定数およびモータ全抵抗の評価が提供される。
【0024】
図3には、スピンドルナットストロークを高精度で算出するためのフローチャートが示されている。これによって、スピンドルナットの制御ストロークを決定し、特にスピンドルナットのアイドルストロークを減少させることができるので、締付過程時に、ブレーキスリップの危険性なしに、目標制動力が発生されるまでの時間間隔が短縮される。
【0025】
ステップ20で、スピンドルナットストロークを算出するための方法が開始される。実際のモータ電流i
A並びに供給電圧U
Sが決定され、この実際のモータ電流i
A並びに供給電圧U
Sから、次の式に従って、
【数1】
アイドリング中の電気式のブレーキモータのモータ軸の角速度ωが演算され得る。角速度ωは、モータ定数K
Mおよびモータ全抵抗R
gesに依存しており、これらのパラメータは、実際とは異なる初期値K
M,startおよびR
ges,startとして供給されるか、または時点t
paramの後に実際の評価値K
M,est若しくはR
ges,estとして供給される。それぞれ実際の時点の後で、モータ定数およびモータ抵抗は、ブロック22から実際とは異なる値として、またはブロック23から実際の評価値として供給され、ブロック21で角速度を演算するために考慮され、この場合、相応にブロック24および25で角速度ω
start若しくは評価された角速度ω
estが提供される。
【0026】
それぞれの角速度値は次のブロック26に供給され、このブロック26でスピンドルナット速度V
Spが演算される。演算は次の式に従って行われる。
【数2】
これらの式は、ω
startに依存するスピンドルナット速度の初期値v
Sp,start、および評価された角速度ω
estに依存する評価された値v
Sp,estのためのものである。この場合、ブレーキモータに後置接続された伝動装置の伝達比i
Getr並びにスピンドルピッチS
Spが考慮される。
【0027】
スピンドルナットの初期速度v
Sp,startおよびスピンドルナットの評価された速度v
Sp,estは、ブロック27、28に従って、エラー補正の開始を表す次のステップ29に供給される。ステップ30で、スピンドルナットの評価された速度と初期速度との差が算出され、ステップ31で、時間に関する速度差の積分が次の式に従って行われ、
【数3】
この式から修正ストロークx
deltaが得られる。次の式と組み合わせて、
【数4】
モータ定数若しくはモータ全抵抗の実際とは異なるパラメータK
M,startおよびR
ges,startに基づいて演算されるスピンドルナットストロークx
startから、ステップ31で、時間に関する積分が実施される。その結果から、ステップ32および33で、スピンドルナットストロークx
start並びに修正ストロークx
deltaが得られ、これらのスピンドルナットストロークx
startおよび修正ストロークx
deltaから、次のステップ34で、
【数5】
に従って、修正されたスピンドルナットストロークx
wahrが得られる。
【0028】
修正されたスピンドルナットストロークx
wahrは、ステップ35に転送され、次のステップ36で、
【数6】
に従って、モータ定数およびモータ全抵抗の実際とは異なるパラメータに基づいてスピンドルナットストロークの立ち上がりラインx
start,steigを演算するために、並びにモータ定数およびモータ全抵抗の実際のパラメータに基づいて立ち上がりラインx
wahr,steigを演算するために考慮される。立ち上がりラインx
start,steig若しくはx
wahr,steigは、x
wahr、x
startの曲線に近似する、
図2に示した直線に相当する。
【0029】
x
start,steigおよびx
wahr,steigの値は、ステップ37、38および後続のステップ39に転送され、このステップ39で、
【数7】
に従って、x
start,steigとx
wahr,steigとの差分にモータ定数およびモータ全抵抗の評価が行われる時点t
paramが乗算されて、偏差x
defが得られる。時間パラメータt
paramは、ステップ23からステップ39に供給される。
【0030】
次のステップ40で、
【数8】
に従って、x
wahrとx
defとの差分形成によってスピンドルナットストロークの修正された全値x
gesの算出が行われる。これによって、初期値に関連したスピンドルナットの絶対的な位置が固定され、ブレーキピストンの前に僅かな遊びを有するスピンドルナット位置を調節することができるので、ブレーキモータの操作時に、制動力の発生まで最小限の時間が経過するだけである。
【符号の説明】
【0031】
1 ブレーキ装置
2 ブレーキキャリパ
3 ブレーキモータ
4 スピンドル
5 スピンドルナット
6 ブレーキピストン
7,8 ブレーキライニング
9 キャリパ
10 ブレーキディスク
12 閉ループ若しくは開ループ制御装置
20,29〜40 ステップ
21,22,23,24,25,26,27,28 ブロック
i
A モータ電流
i
Getr 伝動装置の伝達比
K
M モータ定数
K
M,start モータ定数初期値
R
ges,start モータ全抵抗初期値
K
M,est モータ定数評価値
R
ges,est モータ全抵抗評価値
R
ges モータ全抵抗
S
Sp スピンドルピッチ
t
1,t
2 時点
t
param 時間パラメータ
U
S 供給電圧
V
Sp スピンドルナット速度
V
Sp,est スピンドルナットの評価された速度
V
Sp,start スピンドルナットの初期速度
x スピンドルナットストローク
x
def 偏差
x
delta 修正ストローク
x
ges スピンドルナットストローク
x
start,x
wahr スピンドルナットストローク
x
start,steig スピンドルナットストロークの立ち上がりライン
x
wahr,steig 実際の立ち上がりライン
ω モータ軸の角速度
ω
start 角速度
ω
est 評価された角速度