特許第6559274号(P6559274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559274工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法、校正装置ならびに標準器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559274
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法、校正装置ならびに標準器
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20190805BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALN20190805BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   G01B5/00 P
   !B23Q17/22 D
   !B23Q17/24 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-12890(P2018-12890)
(22)【出願日】2018年1月29日
(65)【公開番号】特開2019-132612(P2019-132612A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜司郎
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−194451(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104108051(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC装置によって制御される工作機械のテーブルに取り付けられ、工具の寸法を測定するための工具測定エレメントと、工作機械の主軸に取り付けられ、テーブルに取り付けられたワークの寸法を測定するためのワーク測定エレメントとを有した工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法において、
寸法が既知の基準工具を主軸に取り付け、寸法が既知の標準器をテーブルに取り付けて、両者を接触させ、前記標準器の変形が要求する測定精度以下の変形量で両者の接触を検出し、そのときの前述工作機械の送り軸の座標を読み取る第1ステップと、
前記基準工具を前記工具測定エレメントにアプローチさせ、前記工具測定エレメントが反応したときの座標を読み取る第2ステップと、
主軸に前記ワーク測定エレメントを取り付け、前記標準器に接触させ、前述標準器が反応したときの座標を読み取る第3ステップと、
前記第1、第2および第3ステップで読み取った座標と、前記基準工具および標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する第4ステップと、
を含み、前記工具測定装置の校正と、前記ワーク測定装置の校正を共通の前記標準器を用いて行うことを特徴とした工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法。
【請求項2】
前記基準工具は、寸法が既知のワーク測定エレメントであり、前記第1ステップは、前記寸法が既知のワーク測定エレメントを主軸に取り付け、テーブルに取り付けられた前記標準器に接触させ、前記標準器が反応して前記ワーク測定エレメントの接触を検出したときの座標を読み取り、前記第2ステップは、前記寸法が既知のワーク測定エレメントを前記工具測定エレメントにアプローチさせ、前記工具測定エレメントが反応したときの座標を読み取り、前記第1と第2のステップで読み取った座標と、前記ワーク測定エレメントおよび前記標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する請求項1に記載の工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法。
【請求項3】
NC装置によって制御される工作機械のテーブルに取り付けられる工具の寸法を機上で測定する工具測定装置、およびテーブルに取り付けられるワークの寸法を機上で測定するワーク測定装置の校正装置において、
前記工作機械の主軸とテーブルとを相対移動させる送り軸の各座標を読み取る座標読取部と、
テーブルに取り付けられ、前記工具の寸法を測定するための工具測定エレメントと、
主軸に取り付けられ、前記ワークの寸法を測定するためのワーク測定エレメントと、
テーブルに取り付けられ、主軸に取り付けられた基準工具または前記ワーク測定エレメントとの接触を、要求する測定精度以下の変形量で検出し、前記座標読取部へ接触信号を出力する標準器と、
主軸に取り付けられた基準工具と前記標準器とが接触したときの前記座標読取部が読み取った座標と、前記基準工具を前記工具測定エレメントにアプローチさせ、前記工具測定エレメントが反応したときの前記座標読取部が読み取った座標と、主軸に取り付けられた前記ワーク測定エレメントと前記標準器とが接触したときの前記標準器の出力による前記座標読取部が読み取った座標と、前記基準工具および前記標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する工具測定装置およびワーク測定装置と、
を具備し、NC装置に入力するNCプログラムの指令に従って、前記工具測定およびワーク測定装置を共通の標準器を用いて校正することを特徴とした工具測定装置およびワーク測定装置の校正装置。
【請求項4】
前記基準工具に代えて寸法が既知のワーク測定エレメントを用い、前記工具測定校正装置およびワーク測定校正装置に代えて、主軸に取り付けられた前記寸法が既知のワーク測定エレメント前記標準器とが接触したときの前記標準器の出力による前記座標読取部が読み取った座標と、前記ワーク測定エレメントおよび標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する請求項3に記載の工具測定装置およびワーク測定装置の校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の機上で工具寸法を測定する工具測定装置およびワーク寸法を測定するワーク測定装置を校正する校正方法と、その校正方法の一連のステップを自動的に実行する校正装置、ならびにその校正に用いる標準器に関する。
【背景技術】
【0002】
NC装置によって制御される工作機械では、加工に先立って、或いは加工中、更には加工後に、主軸に装着されている工具の寸法や刃先位置等の測定並びにテーブルに取り付けられているワークの原点位置や寸法等の測定が行われる。工具の測定には種々の方法が用いられる。特許文献1には、レーザ光線を照射する工具測定エレメントを用いた工具の測定方法が記載されている。工具測定エレメントは、製造者による校正に加えて、主軸の先端に取り付けられた基準工具を用いて測定前にユーザによっても校正される。
【0003】
ワークの測定は主軸の先端にワーク測定プローブ等のワーク測定エレメントを取り付けて、該ワーク測定エレメントをワークの所定の位置に接触させる等して行われる。ワーク測定装置は、製造者による校正に加えて、標準器を用いてワーク測定に先立ってユーザによっても行われる。特許文献2には、切削工具を設定するために使用される工具設定プローブに予め較正された寸法を有しスタイラス円板を取り付け、該スタイラス円板を用いて、主軸に取り付けられたワーク検知プローブを較正するようにしたワーク検知プローブの較正方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−138392号公報
【特許文献2】特表2017−518487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ユーザによる工具測定装置の校正と、ワーク測定装置の校正とは相互に関連しない方法で行われている。そのため、1つのワークを加工するときに、加工に用いる工具の寸法や刃先位置と、ワークの寸法や原点位置とが、異なる2つの基準に基づいて測定、決定されることになる。2つの基準の間には不可避的に寸法誤差があるために、従来技術で加工された製品には、この2つの基準間の寸法誤差に基づく加工誤差が含まれることとなる。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、工具測定装置の校正と、ワーク測定装置の校正とで共通して使用できる標準器を提供することを目的としている。更に、本発明は、該標準器を用いた工具測定装置およびワーク測定装置のための校正方法と校正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、NC装置によって制御される工作機械のテーブルに取り付けられ、工具の寸法を測定するための工具測定エレメントと、工作機械の主軸に取り付けられ、テーブルに取り付けられたワークの寸法を測定するためのワーク測定エレメントとを有した工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法において、寸法が既知の基準工具を主軸に取り付け、寸法が既知の標準器をテーブルに取り付けて、両者を接触させ、前記標準器の変形が要求する測定精度以下の変形量で両者の接触を検出し、そのときの前述工作機械の送り軸の座標を読み取る第1ステップと、前記基準工具を前記工具測定エレメントにアプローチさせ、前記工具測定エレメントが反応したときの座標を読み取る第2ステップと、主軸に前記ワーク測定エレメントを取り付け、前記標準器に接触させ、前述標準器が反応したときの座標を読み取る第3ステップと、前記第1、第2および第3ステップで読み取った座標と、前記基準工具および標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する第4ステップとを含み、前記工具測定装置の校正と、前記ワーク測定装置の校正を共通の前記標準器を用いて行う工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、NC装置によって制御される工作機械のテーブルに取り付けられる工具の寸法を機上で測定する工具測定装置、およびテーブルに取り付けられるワークの寸法を機上で測定するワーク測定装置の校正装置において、前記工作機械の主軸とテーブルとを相対移動させる送り軸の各座標を読み取る座標読取部と、テーブルに取り付けられ、前記工具の寸法を測定するための工具測定エレメントと、主軸に取り付けられ、前記ワークの寸法を測定するためのワーク測定エレメントと、テーブルに取り付けられ、主軸に取り付けられた基準工具または前記ワーク測定エレメントとの接触を、要求する測定精度以下の変形量で検出し、前記座標読取部へ接触信号を出力する標準器と、主軸に取り付けられた基準工具と前記標準器とが接触したときの前記座標読取部が読み取った座標と、前記基準工具を前記工具測定エレメントにアプローチさせ、前記工具測定エレメントが反応したときの前記座標読取部が読み取った座標と、主軸に取り付けられた前記ワーク測定エレメントと前記標準器とが接触したときの前記標準器の出力による前記座標読取部が読み取った座標と、前記基準工具および前記標準器の既知の寸法とに基づいて、前記工具測定装置および前記ワーク測定装置を校正する工具測定装置およびワーク測定装置とを具備し、NC装置に入力するNCプログラムの指令に従って、前記工具測定およびワーク測定装置を共通の標準器を用いて校正する工具測定装置およびワーク測定装置の校正装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工作機械の機上で工具測定装置の校正と、ワーク測定装置の校正を共通の標準器つまり同一の標準器を用いて行うようにした。これにより、工作機械の機上で工具測定装置とワーク測定装置のZ軸方向の校正に使用する基準を、両者ともに前述の標準器に取り付けられている標準となる要素の上端、例えば球の場合、球の最上天に設定するため、標準器の大きさや前述の基準工具の寸法に誤差があったとしても、工具測定装置およびワーク測定装置を用いて工具やワークの位置を測定した結果の相対的な関係が一定に保たれ、工具測定装置とワーク測定装置を用いて測定した、工具およびワークの位置に基づき加工した場合の加工誤差に影響を及ぼさないとの効果を奏する。
【0011】
また、本発明では、主軸に自動で着脱可能な基準工具またはワーク測定プローブを取り付けることができる自動工具交換装置などの要素と、テーブル上に設置した標準器と主軸に取り付けた基準工具などを相対的に自動運転させることができる送り軸や回転軸のような要素と、X軸、Y軸、Z軸の何れの方向にも基準となり得る高精度な球や円筒などの要素を持つ標準器と、標準器や工具測定装置およびワーク測定装置が測定時に信号を発生し、工作機械が信号を受け取ることができる要素を持つ工作機械を用いることで、自動で校正作業を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の工作機械の工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法を実施する工作機械を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明の工作機械の工具測定装置を模式的に示すブロック図である。
図3】本発明の工作機械のワーク測定装置を模式的に示すブロック図である。
図4】本発明の好ましい実施形態による標準器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において、工作機械10は、工場の床面に固定される基台としてのベッド21、ベッド21の上面に左右方向またはX軸方向(図1では左右方向)に往復動可能に設けられたコラム(図示せず)、該コラムの前面に鉛直方向またはZ軸方向(図1では上下方向)に往復動可能に設けられた主軸頭12、鉛直方向に延びる回転軸線Oを中心に回転可能に主軸頭12に支持された主軸14、ベッド21の上面に前後方向またはY軸方向に往復動可能に設けられ主軸14に対面するテーブル20を具備している。
【0014】
主軸14の先端部には、ワーク測定エレメントとしてのタッチプローブ18が工具ホルダ16を介して取り付けられる。タッチプローブ18は、また工具ホルダ16に装着された基準工具(図示せず)と交換することができる。基準工具は、工具長や工具径等の寸法が既知の、測定の基準とする工具である。タッチプローブ18と基準工具との交換は、工作機械10のオペレータが手動で行うこともできるが、好ましくは、NCプログラム42として校正プログラムを入力し、該校正プログラムに工具交換指令を記載することによって、工作機械10の自動工具交換装置(図示せず)を用いて行うようにする。テーブル20の上面には、工具測定エレメント28が取り付けられている。工具測定装置56およびワーク測定装置66の校正に際して、校正用の標準器30をテーブル20の上面に取り付けることができる。標準器30は、工具測定エレメント28と同様にテーブル20の上面に常に取り付けておいてもよい。
【0015】
工具測定エレメント28は、一本のレーザ光線28aを発生する光学式の測定装置であり、図1、2において工具測定エレメント28は、レーザ光線28aをX軸に平行な方向に照射するようにテーブル20の上面に取り付けられている。工具測定エレメント28は上方に延びる一対の腕部を有して概ねU字形またはコの字形に形成されたフレームの間に細いレーザ光線28aを照射する投光器(図示せず)と、該レーザ光線28aを受信する受光器(図示せず)が、U字形のフレームの腕部に対設されている。また、工具測定エレメント28は、レーザ光線28aが遮断されたときに受信機44から座標読取部48にスキップ信号を出力する。
【0016】
図1、2にはX軸方向にレーザ光線28aを照射する工具測定エレメント28のみが図示されているが、工具測定エレメント28と対をなすY軸方向にレーザ光線を照射する工具測定エレメント(図示せず)もテーブル20の上面に取り付けられていてもよい。
【0017】
工作機械10は、また、主軸14とテーブル20とを相対移動させるためにX軸、Y軸およびZ軸の直線送り装置(図示せず)を具備している。該直線送り装置は、X軸、Y軸、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)、コラム、テーブル20、主軸頭12に取り付けられ前記ボールねじと係合するナット(図示せず)、および、X軸、Y軸、Z軸の各ボールねじの一端に結合され、NC装置40に入力されるNCプログラム42に基づき制御されるX軸、Y軸、Z軸のサーボモータ(図示せず)を含むことができる。
【0018】
工作機械10は、更に、X軸、Y軸、Z軸の各送り装置の座標を読み取るためのXスケール22、Yスケール24、Zスケール26を具備している。X軸、Y軸、Z軸の各スケール22、24、26の読みは、座標読取部48を介してNC装置40にフィードバックされ、これに基づいて、X軸、Y軸、Z軸の各サーボモータが制御される。
【0019】
タッチプローブ18は、先端部に例えば球状の接触子18aを備えたスタイラスと、無線送信機(図示せず)とを具備し、接触子18aがワークに接触したのち、スタイラスが所定の距離押し込まれたときに、無線送信機からタッチ信号が受信機46に出力されると共に、受信機46から座標読取部48にスキップ信号が出力されるようになっている。
【0020】
図4を参照すると、標準器30は、テーブル20の上面に載置、固定されるベースプレート32、ベースプレート32の上面に立設され上端に基準面を提供する球体34aを有した支柱34、ベースプレート32の上面と支柱34の下端面との間に挟持された接触センサ36とを具備している。本実施形態では、この接触センサとして、力センサである例えば圧電素子を用いている。
【0021】
接触センサ36は接触検出処理部38に接続されている。接触検出処理部38は、接触センサ36からの信号をフィルタ(図示せず)を通してノイズを除去したり、受信した信号をしきい値と比較する等の処理をして、受信した信号が球体34aに基準工具が接触したことを示しているか否かを判定する。接触検出処理部38で接触が検出されると、接触検出処理部38は、スキップ信号を座標読取部48に出力する。ここで、接触センサ36が力センサであり、接触検出部38からスキップ信号を発する際のしきい値(接触信号を出力する接触力の大きさを)を、測定精度に応じて変更可能にするのが望ましい。
【0022】
なお、接触センサ36は、基準工具が球体34aに接触したことを検知できるセンサであれば、圧電素子に限定されない。接触センサ36は、要求測定精度以下の標準器30の変形量で基準工具と球体34aとの接触を検知できるセンサであればよい。接触センサ36は、例えば基準工具と球体34aとの接触によって生じる振動を検知する音響センサや振動センサであってもよい。また、接触センサ36は、タッチプローブ18のスタイラスを浮動支持するばね(図示せず)のばね力よりも十分に大きな剛性を有し、タッチプローブ18との接触によって支柱34が変位しないようになっている。
【0023】
なお、標準器30に取り付けられた球体34aの寸法や、基準工具の工具長、工具径や、ワーク測定プローブの先端球の直径など、基準として使用する要素の寸法は、精密な座標測定機等を用いて予め測定された既知の値である。その測定に用いた座標測定機その他の機器は、校正経路が明らかなトレーサビリティのある基準に基づいて校正されたものであることが望ましい。外部の校正事業者の校正サービスを利用して校正しておくこともできる。校正事業者は、NITEのような審査機関の審査を受け、国際標準化機構および国際電気標準会議が定めた校正機関に関する基準(ISO/IEC 17025)の要求事項に適合していることが認定された校正事業者であることが望ましい。球体34aに代えて、円筒や直方体など他の形状の基準を用いてもよい。
【0024】
座標読取部48は、工作機械10の機械制御装置の1つの機能であり、NC装置40のみならず、工具測定校正装置50およびワーク測定校正装置52に接続されており、後述するように、工具測定校正プロセスおよびワーク測定校正プロセスでX軸、Y軸、Z軸の各スケール22、24、26から読み込んだ座標値が座標読取部48から工具測定校正装置50およびワーク測定校正装置52にそれぞれ出力される。
【0025】
工具測定校正装置50およびワーク測定校正装置52は、差分器とメモリから形成することができる。工具測定校正装置50には、主軸14に取り付けられた基準工具やタッチプローブ18の工具長や工具径が入力装置54から正しい値として入力され、上記メモリに格納される。この基準工具またはタッチプローブ18を校正対象となる工具測定エレメント28で測定し、測定した際の測定値と正しい値との差分を校正値とする。ワーク測定校正装置52には、標準器30に取り付けられた球体34aの直径が、入力装置54から正しい値として入力され上記メモリに格納される。球体34aのX軸、Y軸方向の位置はタッチプローブ18により測定され、Z軸方向の位置は標準器30の接触検出により測定され、同様に上記メモリに格納される。球体34aの直径と位置を正しい値とすると、球体34aの表面の座標を正確に求めることができる。球体34aの表面を校正対象となるタッチプローブ18で測定し、測定値と先に定めた正しい値との差分を校正値としてワーク測定校正装置52に格納する。
【0026】
入力装置54は、工作機械10の制御パネル(図示せず)に取り付けられているキーボード(図示せず)やタッチパネル(図示せず)から形成することができる。工具測定校正装置50およびワーク測定校正装置52における校正結果は、それぞれ工具測定装置56およびワーク測定装置66に出力される。
【0027】
図2を参照すると、工具測定装置56は、工具測定校正装置50における校正結果を記憶する記憶部58を具備している。工具測定装置56は、工作機械10の主軸14の先端部に工具ホルダ16を介して装着されている工具Tを、X軸、Y軸、Z軸の送り装置によってテーブル20に対して相対移動させる。工具Tが工具測定エレメント28のレーザ光線28aを横切ると、工具測定エレメント28から光線遮断信号が受信機44に出力される。
【0028】
受信機44は光線遮断信号を受信すると、座標読取部48にスキップ信号を出力する。座標読取部48は、受信機44からのスキップ信号を受信したときのX軸、Y軸、Z軸の各スケール22、24、26からX軸、Y軸、Z軸の座標値を読み取る。読み取ったX軸、Y軸、Z軸の座標値は、加算器60において記憶部58に格納されている工具測定校正装置50における校正結果を加えることによって補正される。補正されたX軸、Y軸、Z軸の座標値が演算部62に出力され、演算部62において工具Tの工具長および工具径が演算される。演算部62における演算結果はNC装置40に出力され、測定された工具Tの工具長および工具径に基づいてX軸、Y軸、Z軸の送り装置が補正制御される。
【0029】
図3を参照すると、ワーク測定装置66は、ワーク測定校正装置52における校正結果を記憶する記憶部68を具備している。ワーク測定装置66は、工作機械10のテーブル20に固定されている主軸14の先端部に工具ホルダ16を介して装着されているタッチプローブ18を、X軸、Y軸、Z軸の送り装置によって、テーブル20に対して相対移動させる。タッチプローブ18の接触子18aがテーブル20に固定されているワークWに接触すると、タッチプローブ18からタッチ信号が出力される。
【0030】
受信機46はタッチ信号を受信すると、座標読取部48にスキップ信号を出力する。座標読取部48は、受信機46からのスキップ信号を受信したときのX軸、Y軸、Z軸の各スケール22、24、26からX軸、Y軸、Z軸の座標値を読み取る。読み取ったX軸、Y軸、Z軸の座標値は、加算器70において記憶部68に格納されているワーク測定校正装置52における校正結果を加えることによって補正される。補正されたX軸、Y軸、Z軸の座標値が演算部72に出力され、演算部72においてワークWの原点位置、X軸および/またはY軸に対するワークWの傾斜、Z軸方向のワークWの高さ等が演算される。演算部72における演算結果(ワークWの原点位置、傾斜、高さ等)はNC装置40に出力され、該演算結果に基づいてX軸、Y軸、Z軸の送り装置が補正制御される。ワーク測定エレメントは、タッチプローブ18に代えて、光学式や超音波式の非接触検出装置を用いてもよい。
【0031】
以下、本発明の工具測定装置およびワーク測定装置の校正方法を一層詳細に説明する。
まず、主軸14の先端部に工具ホルダ16を介して基準工具を装着する。基準工具の工具長と工具径は既知であり、値が工具測定校正装置50に入力されている。基準工具先端の位置は、主軸14が持つ基準の位置であるゲージラインに対して既知の工具長の値を加味することによって定めることができる。また、工具長と工具径が既知であり、測定による変形が問題にならないならば、ワーク測定エレメントのタッチプローブ18を基準工具として用いてもよい。こうすることによって、主軸14に基準工具を取り付ける手間が省け、校正時間が短縮できる。
【0032】
次に、基準工具もしくはタッチプローブ18の測定対象のZ軸方向先端の位置と、工具径を工具測定エレメント28を用いて測定する。工具径について詳細には、X軸方向に照射されるレーザ光線28aに対してY軸に沿って、例えば正方向から測定対象を接近させ、測定対象がレーザ光線28aを遮ったときのY軸の座標値が座標読取部48によって読み取られる。更に、測定対象を負の方向から接近させ、測定対象がレーザ光線28aを遮ったときのY軸の座標値を座標読取部48によって読み取り、2つの座標値の差分を工具径とすることができる。工具径の測定値を入力された既知の工具径と比較し、その差分を工具径の校正値として工具測定校正装置50に記憶する。この作業は、Y軸方向に照射されるレーザ光線28aに対してX軸方向から行うこともできる。
【0033】
測定対象のZ軸方向の位置について詳細には、レーザ光線28aに対して、Z軸方向から測定対象を接近させ、測定対象がレーザ光線28aを遮ったときの位置の座標を座標読取部48により読み取ることで実施できる。測定した先端位置と工具径を既知である工具の位置や工具径と比較し、その差分を校正値として記憶部58に格納する。
【0034】
次に、テーブル20の上に設置されている標準器30の球体34aの正確な径をワーク測定校正装置52に入力する。また、ワーク測定用のタッチプローブ18を主軸14に取り付ける。タッチプローブ18の既知の工具長と工具径とを工具測定装置の校正に用いていない場合、タッチプローブ18を工具測定エレメント28により測定し、工具長と工具径とをワーク測定校正装置52に入力する。タッチプローブ18の既知の工具長と工具径とを工具測定装置の校正に用いている場合は、その工具長と工具径をワーク測定校正装置52に入力する。
【0035】
次に、標準器30に取り付けた球体34aにタッチプローブ18をZ軸方向から接触させ、標準器30の接触センサ36により接触を検出する。この接触において、タッチプローブ18の長さは、工具測定装置の校正を行った際の長さと同一であることが望ましい。また、標準器30は接触力により変形しないことが望ましい。この両者が成り立つ場合、工具測定エレメント28が工具を測定するZ軸方向の位置と、球体34aのZ軸方向の基準点は、タッチプローブ18の先端という同一点により、その相対位置が工作機械10のZ軸方向のスケール26により特定される。接触を検出した位置の座標を座標読取部48により読み取って、タッチプローブ18の工具長を加味してZ軸方向の基準面の座標値とし、ワーク測定校正装置52に記憶させる。
【0036】
接触検出時の力について補足する。標準器30はレーザ光線のような非接触式の工具測定エレメント28と同時に用いる場合、工具測定エレメント28側の接触力が0(零)であるため、可能な限り0に近い接触力で必要とする測定精度より小さい変形量となるように接触を検出する必要がある。また、工具測定エレメント28が接触式である場合、標準器30の接触検出は工具測定エレメント28の接触力に近い接触力で接触を検出させることが望ましい。これは、工具測定エレメント28の接触力によるタッチプローブ18の変形を加味した上で、球体34a上のZ軸方向基準点を定めるためである。これも、接触センサ36が接触信号を出力する接触力の大きさを変更可能にする望ましい理由である。
【0037】
次に、球体34aにタッチプローブ18をX軸方向の何れか一方向から接触させ、接触を検出し、接触した座標を座標読取部48により読み取る。この場合の接触の検出は、標準器30の接触センサ36を用いてもよく、タッチプローブ18のセンサを用いてもよい。更に、タッチプローブ18を主軸14を用いて180°回転させ、停止させる。その後、X軸方向の先ほどとは反対方向から、球体34aにタッチプローブ18を接触させ、同様に接触点の座標を読み取る。読み取った2つの座標の中心をX軸方向の球体34aの中心とし、ワーク測定校正装置52に記憶させる。この作業をY軸方向にも行う。こうして、球体34aのX軸、Y軸方向の中心座標がワーク測定校正装置52に記憶される。
【0038】
以上の作業により、ワーク測定校正装置52には標準器30の球体34aについて、その中心のX軸、Y軸、Z軸方向の座標と正確な直径が格納されている。これにより、球体34aの表面は、その座標を正確に定めることができる。次に、ワークを測定する際に必要とする方向から球体34aに対してタッチプローブ18を接触させ、タッチプローブ18のセンサにより接触を検出し、接触した際の座標を座標読取部48で読み取り、測定結果とする。測定結果と先に得られた正しい値とを比較してその差分を校正値とし、ワーク測定校正装置52に格納する。一般的には、X軸、Y軸、Z軸方向から測定し、その校正値を得ることが多い。得られた校正値をワーク測定校正装置52に保存する。以上の一連の作業はNCプログラム42により自動的に実行することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 工作機械
14 主軸
18 タッチプローブ
20 テーブル
22 X軸スケール
24 Y軸スケール
26 Z軸スケール
28 工具測定エレメント
30 標準器
48 座標読取部
50 工具測定校正装置
52 ワーク測定校正装置
図1
図2
図3
図4