(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[燃料電池装置]
以下、本発明に係る台座の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1〜
図3に示すように、燃料電池装置1(電気化学装置の一例)は、台座150と、セルスタック装置とを備えている。セルスタック装置は、マニホールド100と、複数の燃料電池セル200(電気化学セルの一例)と、第1接合材3とを含んでいる。マニホールド100は、台座150上に配置されている。各燃料電池セル200は、マニホールド100によって支持されている。第1接合材3は、マニホールド100と、各燃料電池セル200とを接合する。
【0018】
[台座]
台座150は、電流が流れるセルスタック装置を載置する。
図1〜
図3に示すように、台座150は、マニホールド100及び燃料電池セル200を下方から支持する。
【0019】
台座150は、本体部151と、複数の突出部152と、を備えている。本体部151上に、複数の突出部152が配置されている。
【0020】
本体部151は、平板状である。本体部151を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、絶縁性材料である。本体部151は、突出部152と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0021】
図4に示すように、本体部151は、上面151aと、下面151bとを有する。上面151aは、鉛直方向上側の面であり、セルスタック装置と対向する。下面151bは、鉛直方向下側の面である。上面151a及び下面151bは、平坦な面である。
【0022】
複数の突出部152は、本体部151から上方に突出する。突出部152は、本体部151の上面151a上に配置されている。複数の突出部152は、本体部151上に、偏析せずに、分散している。
【0023】
複数の突出部152の少なくとも1つは、セルスタック装置に接触する。詳細には、突出部152は、底壁110の下面112と接触する。
図2及び
図3では、複数の突出部152が、底壁110の下面112下に、偏析せずに、分散している。台座150とセルスタック装置との間には、間隙が設けられる。なお、突出部152は、セルスタック装置に接合されていてもよい。
【0024】
セルスタック装置に接触する突出部152は、セルスタック装置における接触する部分を構成する材料よりも電気抵抗率が高い材料で構成されている。つまり、突出部152の電気抵抗率は、セルスタック装置において突出部152と接触する部材(本実施の形態では、底壁110)の電気抵抗率よりも大きい。突出部152を構成する材料は、高抵抗材料で構成されることが好ましく、絶縁性材料で構成されることがより好ましい。
【0025】
なお、本明細書では、高抵抗材料とは、電気抵抗率が1000Ω・cm以上を指す。具体的には、突出部152の電気抵抗率は、1000Ω・cm以上であることが好ましく、10000Ω・cm以上であることがより好ましい。電気抵抗率は、突出部152を構成する材料で棒状のサンプルを作製し、そのサンプルに微小の電流を流したときに測定される電圧から求められる値である。
【0026】
絶縁性材料は、特に限定されないが、例えば無機材料であり、珪素、アルミニウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含むことが好ましい。具体的には、突出部152は、SiO
2(二酸化珪素)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、CaO(酸化カルシウム)、MgO(酸化マグネシウム)、MgAl
2O
4(スピネル)などを含むことが好ましい。
【0027】
突出部152を構成する材料は、珪素、アルミニウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を50mol%以上含有することが好ましい。突出部152における珪素、アルミニウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有率は、全構成元素のうち酸素を除く元素の総和に対する各元素のモル分率の百分率で定義される。
【0028】
また、セルスタック装置に接触する突出部152の熱伝導率は、セルスタック装置において突出部152と接触する部材の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。具体的には、突出部152の熱伝導率は、40W/m・K以下であることが好ましく、20W/m・K以下であることがより好ましい。突出部152の熱伝導率の下限値は、例えば0.01W/m・Kである。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により750℃で測定される値である。
【0029】
セルスタック装置の下面(
図2及び
図3では底壁110の下面112)の面積に対して、突出部152と下面とが接触する面積の比は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0030】
図4に示すように、突出部152の高さHは、2.0μm以上10000μm以下であることが好ましく、5.0μm以上5000μm以下であることがより好しい。マニホールドから台座への熱損失をより抑制できる観点から、2.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。電気化学装置の大型化を抑制できる観点から、10000μm以下が好ましく、5000μm以下がより好ましい。突出部152の高さHは、台座150のセルスタック装置を載置する領域において、本体部151の上面151aに対して垂直に伸びる方向における最大の高さである。
【0031】
図2〜
図4に示す複数の突出部152は、本体部151と非接合である。つまり、本体部151と突出部152とは、互いに別部材である。本体部151と突出部152とは、接している。
【0032】
少なくとも1つの突出部152は、本体部151と接合されていてもよい。
図5では、本体部151と突出部152とは、互いに別部材である。突出部152は、突出体152aと、接合層152bとを含む。接合層152bは、突出体152aと本体部151とを接合する。
【0033】
なお、1つの突出部152は、
図4に示すように1層で構成されてもよく、
図5に示すように2層で構成されてもよく、3層以上で構成されてもよい。
【0034】
図6では、本体部151と突出部152とは、1つの部材で形成されている。
【0035】
また、
図7に示すように、少なくとも1つの突出部152cは本体部151と1つの部材で形成されており、少なくとも1つの突出部152dは本体部151と非接合であってもよい。つまり、突出部152は、本体部151と一つの部材で形成されている第1突出部152cと、本体部151と非接合である第2突出部152dとを含む。
図7では、第1突出部152cと本体部151とで形成されている溝に、第2突出部152dが配置されている。
【0036】
第1突出部152cの高さH1は、第2突出部152dの高さH2よりも高い。詳細には、第1突出部152cの最大の高さH1は、第2突出部152dの最大の高さH2よりも高い。
図7では、第1突出部152cの最小の高さは、第2突出部152dの最大の高さH2よりも高い。このため、第1突出部152cがセルスタック装置に接触する。
【0037】
なお、複数の突出部152のそれぞれは、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0038】
また、突出部152の形状は、限定されない。例えば、
図4、
図5及び
図7では、粒状の突出部152、152dが分散している。
図6の突出部152及び
図7の第1突出部152cは、平面視(x軸方向視)において、ストライプ状、格子状などにパターニングされてもよい。
【0039】
[マニホールド]
図1〜
図3に示すように、マニホールド100は、燃料電池セル200に反応ガスを供給する。マニホールド100は、中空状であり、内部空間を有している。
図1に示すように、マニホールド100の内部空間には、導入配管101を介して燃料ガスなどのガスが供給される。
図2に示すように、マニホールド100は、この内部空間と外部とを連通する複数の挿入孔131を有している。
【0040】
マニホールド100は、実質的に直方体状である。マニホールド100は、
図3に示すように、上方が開口する箱状のマニホールド本体と、開口を塞ぐ板状部材とを備えている。詳細には、マニホールド本体は、底壁110と、側壁120と、第1フランジ部140と、を備えている。マニホールド本体の開口を塞ぐ板状部材は、上壁130である。
【0041】
底壁110、側壁120、及び第1フランジ部140は、一体成形されている。一体成形された底壁110、側壁120及び第1フランジ部140と、上壁130とは、互いに別部材であり、接合されている。
【0042】
底壁110、側壁120、上壁130、及び第1フランジ部140は、例えば、耐熱性を有するような金属で構成されている。このような金属は、例えばクロム及び鉄を含む金属であり、具体的にはステンレス鋼などである。なお、上壁130は、無機材料で構成されてもよい。無機材料は、例えばガラス材料、酸化物材料などである。上壁130は、単一または複数の酸化物材料で構成されることが好ましい。
【0043】
底壁110は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。底壁110は、平面視において、長手方向(z軸方向)と幅方向(y軸方向)を有している。
【0044】
底壁110は、上面111と、下面112とを有している。上面111は、鉛直方向上側の面であり、上壁130と対向する。下面112は、鉛直方向下側の面であり、台座150と対向する。
図3では、上面111及び下面112は、平坦な面である。
【0045】
側壁120は、底壁110から上方に延びる。側壁120は、
図1に示すように、一対の第1側壁121と、一対の第2側壁122とを有している。
【0046】
一対の第1側壁121は、底壁110の対向する一対の縁部のそれぞれから上方に延びている。詳細には、各第1側壁121は、底壁110の縁部のうち、長手方向(z軸方向)に延びる一対の縁部から上方に延びている。第1側壁121は、マニホールド100の長手方向(z軸方向)に延びている。すなわち、複数の燃料電池セル200の並ぶ方向に延びている。一対の第1側壁121は、マニホールド100の幅方向(y軸方向)において、互いに対向している。
【0047】
一対の第2側壁122は、底壁110の残りの対向する縁部から上方に延びている。詳細には、各第2側壁122は、底壁110の縁部のうち、幅方向(y軸方向)に延びる一対の縁部から上方に延びている。また、各第2側壁122は、マニホールド100の幅方向(y軸方向)に延びている。すなわち、各第2側壁122は、燃料電池セル200の幅方向に延びている。各第2側壁122は、マニホールド100の長手方向(z軸方向)において、互いに対向している。一対の第2側壁122のうち、一方の第2側壁122に導入配管101が接続されている。このため、一方の第2側壁122は、導入配管101が接続されるための貫通孔を有している。
【0048】
第1フランジ部140は、側壁120の上端部から外方に延びている。詳細には、第1フランジ部140は、各第1側壁121及び各第2側壁122の上端から外方に延びている。第1フランジ部140は、環状である。
【0049】
第1側壁121と第2側壁122との第1境界部102は、R形状である。具体的には、第1側壁121と、第2側壁122との第1境界部102の内側面及び外側面は、R形状である。この第1境界部102の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば3〜30mmである。4つの第1境界部102は、マニホールド100の高さ方向に延びる。
【0050】
図3に示すように、底壁110と側壁120との第2境界部103は、R形状である。具体的には、底壁110と、第1側壁121及び第2側壁122との第2境界部103の内側面及び外側面は、R形状である。この第2境界部103の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば2〜20mmである。第2境界部103は、環状である。
【0051】
側壁120と第1フランジ部140との第3境界部104は、R形状である。具体的には、第1側壁121及び第2側壁122と、第1フランジ部140との第3境界部104の内側面及び外側面は、R形状である。この第3境界部104の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば1〜10mmである。第3境界部104は、環状である。
【0052】
なお、本明細書における「R形状」とは、円弧状に湾曲している形状である。また、第1〜第3境界部102〜104の内側面とは、マニホールド100の内部空間を臨む面である。第1〜第3境界部102〜104の外側面とは、マニホールド100の外側を臨む面である。
【0053】
上壁130は、側壁120の上端部を塞ぐように構成されている。具体的には、上壁130は、側壁120の上面を閉じる。上壁130の外周縁部は、第1フランジ部140上に配置されており、第1フランジ部140に接合されている。上壁130は、例えば、接合材、溶接などによって、第1フランジ部140に接合されている。
【0054】
上壁130には、燃料電池セル200が接合される。本実施の形態では、
図8に示すように、上壁130は、複数の挿入孔131を有している。各挿入孔131には、各燃料電池セル200の下端部が挿入される。各挿入孔131は、マニホールド100の幅方向(y軸方向)に延びている。また、各挿入孔131は、マニホールド100の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0055】
図3に示すように、マニホールド100の内部空間の高さ方向(x軸方向)において、第3境界部104と上壁130との間に隙間部が形成されている。すなわち、上壁130の下面と第1フランジ部140の上面とは接触している一方、上壁130の下面と第3境界部104の内側面とは接触していない。隙間部は、全周に亘って形成されている。
【0056】
[燃料電池セル]
本実施の形態の燃料電池セル200は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。
図1〜
図3に示すように、各燃料電池セル200は、マニホールド100から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル200は、マニホールド100の上壁130から上方に延びている。燃料電池セル200の下端部201は、マニホールド100の挿入孔131内に挿入されている。なお、燃料電池セル200の下端部201が挿入孔131内に挿入された状態において、燃料電池セル200の下端部201の外周面と挿入孔131の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材3が充填されている。
【0057】
各燃料電池セル200は、マニホールド100の長手方向(z軸方向)に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。
図2に示すように、各燃料電池セル200は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル200の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル200を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル200に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体または金属などによって形成されている。
【0058】
図9に示すように、燃料電池セル200は、支持基板210と、複数の発電素子部220とを備えている。各発電素子部220は、支持基板210の両面に支持されている。なお、各発電素子部220は、支持基板210の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部220は、燃料電池セル200の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施の形態に係る燃料電池セル200は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0059】
各発電素子部220は、電気的接続部260(
図10参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル200の上端部202側において、支持基板210の一方面に形成された発電素子部220と他方面に形成された発電素子部220とが第2集電部材6(
図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部220は、直列に接続されている。
【0060】
支持基板210は、燃料電池セル200の長手方向に延びる複数のガス流路211を内部に有している。ガス流路211は、マニホールド100の挿入孔131を介して、マニホールド100の内部空間と連通している。
【0061】
支持基板210の長手方向(x軸方向)は、燃料電池セル200の長手方向と同じ方向である。各ガス流路211は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路211は、燃料電池セル200の長手方向の両端部において開口している。
【0062】
図10に示すように、支持基板210は、複数の第1凹部212を有している。各第1凹部212は、支持基板210の両面に形成されている。各第1凹部212は支持基板210の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0063】
支持基板210は、絶縁性である。すなわち、支持基板210は、電子伝導性を有していない。支持基板210は、例えば、セラミックスで形成される。具体的には、支持基板210は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板210は、多孔質である。支持基板210の気孔率は、例えば、20〜60%である。
【0064】
各発電素子部220は、燃料極230、電解質240、及び空気極250を有している。また、各発電素子部220は、反応防止膜221をさらに有している。
【0065】
燃料極230は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極230は、燃料極集電部231と、燃料極活性部232とを有する。燃料極集電部231は、第1凹部212内に配置されている。各燃料極集電部231は、第2凹部231a及び第3凹部231bを有している。燃料極活性部232は、第2凹部231a内に配置されている。
【0066】
燃料極集電部231は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部231の厚さ、すなわち第1凹部212の深さは、50〜500μmである。
【0067】
燃料極活性部232は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部232の厚さは、5〜30μmである。
【0068】
電解質240は、燃料極230上を覆うように配置されている。詳細には、電解質240は、あるインターコネクタ261から他のインターコネクタ261まで燃料電池セル200の長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル200の長手方向において、電解質240とインターコネクタ261とが交互に配置されている。
【0069】
電解質240は、イオン伝導性を有し、かつ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質240は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成されてもよいし、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質240の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0070】
反応防止膜221は、緻密な材料から構成される焼成体であり、平面視(z軸方向視)において、燃料極活性部232と略同一の形状であり、燃料極活性部232と略同じ位置に配置されている。反応防止膜221は、電解質240内のYSZと空気極250内のSrとが反応して電解質240と空気極250との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜221は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成される。反応防止膜221の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0071】
空気極250は、反応防止膜221上に配置されている。空気極250は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極250は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成されてもよいし、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極250は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極250の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0072】
電気的接続部260は、隣り合う発電素子部220を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部260は、インターコネクタ261及び空気極集電膜262を有する。インターコネクタ261は、第3凹部231b内に配置されている。インターコネクタ261は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ261は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成されてもよいし、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ261の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0073】
空気極集電膜262は、隣り合う発電素子部220のインターコネクタ261と空気極250との間を延びるように配置される。空気極集電膜262は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜262は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成されてもよいし、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよいし、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜262の厚さは、例えば、50〜500μmである。
【0074】
図11に示すように、燃料電池セル200の下端部201は、緻密膜222によって覆われている。詳細には、緻密膜222は、支持基板210を覆っている。緻密膜222は、下端部側に形成された発電素子部220と電気的に接続されている。詳細には、緻密膜222は、電気的接続部260と電気的に接続されている。緻密膜222は、空気極集電膜262と支持基板210との間から近位側に向かって延びている。
【0075】
緻密膜222は、緻密膜222の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜222の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜222の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜222は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0076】
具体的には、緻密膜222は、上述した電解質240と反応防止膜221とによって構成することができる。緻密膜222を構成する電解質240は、支持基板210を覆っており、インターコネクタ261から支持基板210の下端近傍まで延びている。また、緻密膜222を構成する反応防止膜221は、電解質240と空気極集電膜262との間に配置されている。なお、緻密膜222は、電解質240のみで構成されていてもよいし、電解質240及び反応防止膜221以外の材料によって構成されていてもよい。
【0077】
[第1接合材]
第1接合材3は、燃料電池セル200をマニホールド100に固定する。詳細には、第1接合材3は、燃料電池セル200の下端部201とマニホールド100の上壁130とを接合している。また、第1接合材3は、緻密膜222と接触している。なお、燃料電池セル200がマニホールド100に固定された状態において、挿入孔131とガス流路211とが連通している。
【0078】
第1接合材3は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、またはSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、第1接合材3の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材3は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0079】
なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。
【0080】
[製造方法]
続いて、本実施の形態の燃料電池装置1の製造方法について
図1〜
図13を参照して説明する。
【0081】
まず、台座150を製造する。この工程では、本体部151を準備し、本体部151上に複数の突出部152を配置する。相対的に高さの高い突出部152は、例えば高抵抗材料により形成する。
【0082】
なお、
図5に示す台座150の場合には、本体部151に、接合層152bを介して突出体152aを接合する。
図6に示す台座150の場合には、金型で一体成形する。
図7に示す台座150の場合には、金型で本体部151と第1突出部152cとを一体成形した後に、本体部151の上面151a上に第2突出部152dを配置する。
【0083】
また、底壁110と、この底壁110から上方に延びる側壁120と、この側壁120の上端部を塞ぎ、挿入孔131を有する上壁130とを含むマニホールド本体を準備する。
【0084】
また、複数の燃料電池セル200を準備する。そして、
図12に示すように、第1集電部材4、及び第2接合材5によって、各燃料電池セル200を互いに接続し、セル集合体300を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各燃料電池セル200は互いに仮止めの状態である。
【0085】
次に、
図13に示すように、セル集合体300の各燃料電池セル200の下端部201をマニホールド100の各挿入孔131に挿入する。なお、各燃料電池セル200が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0086】
次に、
図2及び
図3に示すように、挿入孔131に挿入された燃料電池セル200とマニホールドの上壁130とを接合するように第1接合材3を塗布する。なお、第1接合材3は、燃料電池セル200の付け根に沿って塗布されている。また、第1接合材3は、燃料電池セル200の下端部201の外周面と挿入孔131の内壁面との隙間に充填されていてもよい。
【0087】
次に、第1接合材3及び第2接合材5を熱処理する。この熱処理によって、第1接合材3及び第2接合材5が固化され、セルスタック装置が完成する。詳細には、第2接合材5が焼成されることによって、各燃料電池セル200と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材3が焼成されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材3が機能を発揮し、各燃料電池セル200の下端部201がマニホールド100の上壁130に固定される。
【0088】
このように製造したマニホールド100と燃料電池セルとを備えるセルスタック装置を、台座150の突出部152上に配置する。これにより、燃料電池装置1を製造することができる。
【0089】
[動作]
本実施の形態の燃料電池装置1の動作について、
図1〜
図11を参照して説明する。燃料電池装置1は、例えば以下のように動作する。
【0090】
マニホールド100を介して各燃料電池セル200のガス流路211内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板210の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質240の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池装置1を外部の負荷に接続すると、空気極250において下記の式1に示す電気化学反応が起こり、燃料極230において下記の式2に示す電気化学反応が起こる。
(1/2)O
2+2e
−→O
2− ・・・(式1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− ・・・(式2)
さらに、支持基板210のガス流路211を流れる燃料ガスのうち発電に使用されなかった余剰燃料ガスは、ガス流路211の他端側に位置する排出口から外部に排出される。そして、排出口から排出される余剰燃料ガスと、酸素を含むガスとを混合して、燃焼する。
【0091】
変形例1
上述した実施の形態の台座150が載置するセルスタック装置は、支持基板210の1つの主面上に複数の発電素子部220が配置された横縞型を例に挙げて説明したが、本発明の台座が載置するセルスタック装置は、支持基板の1つの主面上に1つの発電素子が配置される縦縞型であってもよい。また、セルスタック装置は、円筒平板型の燃料電池セルを含んでいるが、本発明の台座が載置するセルスタック装置は、円筒型または平板型の燃料電池セルを備えていてもよい。さらに、本発明の台座が載置するセルスタック装置は、燃料電池セルを含むものに限定されるものではなく、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物形電解セル)などの電気化学セルを備えるセルスタック装置に適用可能である。
【0092】
変形例2
図14及び
図15に示すように、マニホールド本体において、底壁110の下面112にコーティング膜160が形成されていてもよい。台座150の突出部152は、コーティング膜160に接している。
【0093】
コーティング膜160は、露出する表面全体に形成されていてもよい。具体的には、コーティング膜160は、底壁110、側壁120、上壁130及び第1フランジ部140の表面全体に形成されている。詳細には、コーティング膜160は、底壁110の上面111、下面112及び側面の全体に形成されている。また、コーティング膜160は、側壁120の内側面及び外側面の全体に形成されている。また、上壁130の上面、下面、側面、及び挿入孔131を構成する内壁面の全体に形成されている。また、コーティング膜160は、第1フランジ部140の上面、下面及び側面の全体に形成されている。なお、マニホールドの各部材を被覆するコーティング膜は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0094】
コーティング膜160は、例えばガラス、セラミックスなどで構成されており、ガラスで構成されていることがより好ましい。ガラスとしては、例えば結晶化ガラスを用いることができる。この結晶化ガラスは、第1接合材3と同様の材料であってもよい。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ペロブスカイト系材料、スピネル系材料などを用いることができる。コーティング膜160は、複数の層で構成されてもよい。
【0095】
コーティング膜160の厚みは、例えば3〜200μmである。コーティング膜160の気孔率は、例えば0〜30%である。
【0096】
また、突出部152は、コーティング膜160と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0097】
本変形例の燃料電池装置7の製造方法は、コーティング膜160を形成する工程をさらに含む。具体的には、マニホールド本体の表面全体、つまり露出する面全体に、コーティング膜160となるペーストを形成する。ペーストは、例えばガラス粉末を含み、クロムは含まない。ペーストは、例えば、塗布、ディッピング法などによって形成される。その後、焼成することによって、本変形例のマニホールド107を製造できる。
【0098】
マニホールド本体を構成する材料がクロムを含んでいる場合、コーティング膜160により、クロムが揮発することを防止できる。このため、燃料電池セル200の発電素子部220及び第1接合材3にクロムが付着することを防止できる。したがって、燃料電池セル200の発電素子部220及び第1接合材3の劣化を防止できる。
【0099】
このように、本発明の台座は、上述した実施の形態のように底壁110の下面112に接してもよく、本変形例のように下面112に形成されたコーティング膜160に接してもよい。
【0100】
変形例3
図16に示すように、側壁120及び上壁130が一体であるマニホールド108であってもよい。本変形例のマニホールド108においては、側壁120の下面が開口し、その下面を底壁110が塞いでいる。
【0101】
詳細には、マニホールド本体は、上壁130、側壁120、及び第2フランジ部141を有している。上壁130には、上述した複数の挿入孔131が形成されている。側壁120は、上壁130の周縁部から下方に延びている。第2フランジ部141は、側壁120の下端部から外方に延びている。
【0102】
上壁130、側壁120及び第2フランジ部141は、一体成形されている。一体成形された上壁130、側壁120及び第2フランジ部141と、底壁110とは、互いに別部材である。底壁110は、第2フランジ部141に接合されている。
【0103】
上壁130と側壁120との第4境界部105は、R形状である。具体的には、上壁130と、第1側壁121及び第2側壁122との第4境界部105の内側面及び外側面は、R形状である。この第4境界部105の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば2〜20mmである。第4境界部105は、環状である。
【0104】
側壁120と、第2フランジ部141との第5境界部106は、R形状である。具体的には、第1側壁121及び第2側壁122と、第2フランジ部141との第5境界部106の内側面及び外側面は、R形状である。この第5境界部106の側面及び外側面の曲率半径は、例えば1〜10mmである。第5境界部106は、環状である。
【0105】
なお、第4境界部105及び第5境界部106の内側面とは、マニホールド100の内部空間を臨む面である。第4境界部105及び第5境界部106の外側面とは、マニホールド100の外側を臨む面である。
【0106】
変形例4
また、導入配管101は、マニホールド100の側壁120に取り付けられているが、導入配管101の取り付け位置はこれに限定されない。例えば、導入配管101は、マニホールド100の上壁130に取り付けられていてもよい。また、導入配管101は、マニホールド100の底壁110に取り付けられていてもよい。この場合、台座150は、導入配管101と干渉しない形状である。
【0107】
変形例5
図17に示すように、マニホールド本体において、角部が他の部分よりも薄くなるように構成されていてもよい。詳細には、マニホールド本体は、複数の平板部と、この平板部を連結する角部とを有している。平板部は、平坦な板状の部分である。なお、角部は、角を形成する部分、すなわち、角近傍である。本変形例では、複数の平板部は、底壁110の大部分を占める矩形状の平板部と、第1側壁121及び第2側壁122の大部分を占める4つの矩形状の平板部と、第1フランジ部140の大部分を占める環状の平板部とを有している。角部は、第1〜第3境界部102〜104であるので、環状の隅角部を含む。このように、本実施の形態のマニホールド本体は、複数の平板部と、複数の角部とからなる。
【0108】
なお、角部はR形状であるが、角部の形状は特に限定されない。角部は、複数の平面部が直交してなる直角であってもよく、複数の平面部の交差部分を平面状に湾曲している形状(C面取りされた形状)であってもよい。
【0109】
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さい。このため、角部は、平面部よりも優先して変形する部位であり、変形可能部である。複数の平板部の厚さが異なる場合には、最小の厚さを厚さT1とする。マニホールド本体は複数の角部を有し、複数の角部の厚さが異なる場合には、最小の厚さをT2とする。本変形例では、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さい。なお、厚さT1、T2は、板厚である。
【0110】
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1の70.0%以上99.5%以下であることが好ましく、75.0%以上98.0%以下であることがより好ましい。70.0%以上の場合、マニホールドの強度を向上でき、75.0%以上の場合、マニホールドの強度をより向上できる。99.5%以下の場合、変形しやすいので、第1接合材3の変形を抑制することで、第1接合材3におけるクラックを抑制でき、98.0%以下の場合、第1接合材3におけるクラックを効果的に抑制できる。また、70.0%以上の場合、加工時にマニホールドの角部が破断することを防止できる。
【0111】
平板部の厚さT1は、例えば、0.5mm以上4.0mm以下である。角部の厚さT2は、例えば、0.35mm以上3.9mm以下である。
【0112】
なお、
図17のマニホールド本体は複数の角部を有しており、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さいが、本発明のマニホールドはこれに限定されない。マニホールドが複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さい。この場合であっても、厚さの小さい角部が優先的に変形するので、同様の効果を有する。
【0113】
また、マニホールド100が複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さければ、他の角部が平板部の厚さと同じであっても、大きくてもよい。マニホールド100において、底壁110と側壁120との第2境界部103の厚さが平板部の厚さよりも小さいことが好ましい。この場合、側壁120と第1フランジ部140との第3境界部104の厚さは、平板部の厚さよりも大きくてもよい。
【0114】
本変形例の製造方法において、上方が開口する箱状のマニホールド本体を準備する工程では、例えば、角部となる部分が平板部となる部分よりも薄い板状の材料を準備して、箱状にプレス成形する。具体的には、例えば以下のように実施する。マニホールド本体となる平板状の材料を準備する。この材料において、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くなるように加工する。加工された材料に対して、深絞り加工を行って、底壁110と側壁120と第1フランジ部140とからなるマニホールド本体を形成する。なお、上方が開口する箱状のマニホールド本体を準備する工程において、プレス加工により箱状に成型した後に、切削加工により、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くしてもよい。
【0115】
変形例6
図18に示すように、側壁120及び上壁130が一体であって、側壁120の下面が開口し、その下面を底壁110が塞いでいる構造の場合であっても、マニホールド本体において、角部が他の部分よりも薄くなるように構成されていてもよい。
【0116】
具体的には、上壁130と側壁120との第4境界部105は、R形状であり、角部を構成する。すなわち、上壁130と側壁120との第4境界部105の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さいことが好ましい。この場合、側壁120と第2フランジ部141との第5境界部106は、R形状であるが、平板部の厚さよりも小さくてもよく、大きくてもよい。
【0117】
変形例7
また、本変形例では、第1側壁121及び第2側壁122は底壁110から略垂直に上方に延びているが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、第1側壁121及び第2側壁122の少なくとも一方は、上方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。また、例えば、第1側壁121及び第2側壁122の少なくとも一方は、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。
【0118】
なお、実施の形態のように上方が開口するマニホールド本体の側壁120は、底壁110から上方に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。変形例3のように下方が開口するマニホールド本体の側壁120は、上壁130から下方に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。
【0119】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、実施の形態及び変形例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び変形例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】台座150は、セルスタック装置を載置するための台座である。台座150は、本体部151と、複数の突出部152と、を備えている。複数の突出部152は、本体部151から上方に突出する。少なくとも1つの突出部152は、セルスタック装置に接触し、接触する部分を構成する材料よりも電気抵抗率が高い材料で構成されている。