特許第6559371号(P6559371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559371点火プラグ、制御システム、内燃機関、内燃機関システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559371
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】点火プラグ、制御システム、内燃機関、内燃機関システム
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/16 20060101AFI20190805BHJP
   H01T 13/14 20060101ALI20190805BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20190805BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01T13/16
   H01T13/14
   H01T13/20 Z
   F02P13/00 301J
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-8610(P2019-8610)
(22)【出願日】2019年1月22日
(62)【分割の表示】特願2017-533047(P2017-533047)の分割
【原出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-91706(P2019-91706A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-153660(P2016-153660)
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友聡
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−155839(JP,A)
【文献】 特開昭57−151015(JP,A)
【文献】 特開昭59−165392(JP,A)
【文献】 特開平06−096836(JP,A)
【文献】 特開2014−175094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00 − 13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記絶縁体の軸孔に配置される中心電極と、
前記主体金具の先端に接続され、前記中心電極と対向する接地電極と、
を備える点火プラグであって、
前記主体金具は、内燃機関の取付孔のネジ山に嵌められるネジ部を有し、
前記主体金具の外周面のうち前記ネジ部の後端から前記ネジ部の先端までの部分の表面積を表面積Ssとし、
前記主体金具のうちの前記内燃機関の燃焼ガスに曝される部分の表面積を表面積Saとし、
前記絶縁体のうち前記燃焼ガスに曝される部分の表面積を表面積Sbとする場合に、
Ss/(Sa+Sb)≧2.6、が満たされ
前記主体金具は、先端側に向かって内径が小さくなる縮内径部を有し、
前記絶縁体は、先端側に向かって外径が小さくなる縮外径部を有し、
前記点火プラグは前記縮外径部と前記縮内径部とに接触するパッキンを備える、または、前記縮外径部は前記縮内径部に直接的に接触し、
前記絶縁体の前記外周面と、前記縮内径部または前記パッキンと、の接触部分の先端から、前記主体金具の先端までの、前記軸線の方向の距離をFとする場合に、
F≧5.0mm、が満たされる、
点火プラグ。
【請求項2】
請求項に記載の点火プラグであって、
前記主体金具は、先端側に向かって内径が小さくなる縮内径部を有し、
前記絶縁体は、先端側に向かって外径が小さくなる縮外径部を有し、
前記点火プラグは前記縮外径部と前記縮内径部とに接触するパッキンを備える、または、前記縮外径部は前記縮内径部に直接的に接触し、
前記主体金具のうち前記ネジ部の後端から前記主体金具の先端までの部分である先端側部分を中実と仮定した場合の前記先端側部分の体積を体積Vvとし、
前記主体金具の内周面と前記絶縁体の外周面とに挟まれた空間のうち、前記絶縁体の前記外周面と、前記縮内径部または前記パッキンと、の接触部分の先端よりも先端側の部分の体積を体積Vcとする場合に、
(Vv−Vc)≦2000mm、が満たされる、点火プラグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の点火プラグと、前記点火プラグを冷却する冷却液路とを備える内燃機関を制御するための制御システムであって、
前記冷却液路を流れる冷却液の単位時間当たりの流量を制御する流量制御部と、
前記内燃機関の温度を測定する温度センサと、
を備え、
前記流量制御部は、前記温度センサによって測定された温度が閾値以下である場合には、前記温度が前記閾値よりも高い場合と比べて、前記流量を小さくする、
制御システム。
【請求項4】
内燃機関であって、
冷却液が流れるための冷却液路と、
点火プラグを取り付けるための取付孔を形成する孔形成部と、
前記取付孔に取り付けられた請求項1または2に記載の点火プラグと、
を備え、
前記孔形成部は、前記冷却液路を貫通する前記取付孔を形成し、
前記点火プラグの前記主体金具の一部分は、前記冷却液路内に露出している、
内燃機関。
【請求項5】
内燃機関システムであって、
請求項に記載の内燃機関と、
前記内燃機関を制御するための請求項に記載の制御システムと、
を備える、
内燃機関システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関などの燃焼室における混合気に点火するために点火プラグが用いられている。点火プラグとしては、例えば、筒状の絶縁体と、絶縁体の外周に配置される主体金具と、を備えるものが、用いられている。このような点火プラグとしては、例えば、主体金具の外周面に雄ねじが形成されたものが、用いられている。主体金具の雄ねじは、内燃機関の取付孔に形成された雌ねじに、係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−245716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の設計自由度を向上するためには、点火プラグの小径化が好ましい。ところが、点火プラグが小径化されると、不具合が生じる場合があった。例えば、耐熱性が低下する場合があった。
【0005】
本明細書は、点火プラグに関する不具合を抑制できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、例えば、以下の適用例を開示する。
【0007】
[適用例1]
軸線の方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記絶縁体の軸孔に配置される中心電極と、
前記主体金具の先端に接続され、前記中心電極と対向する接地電極と、
を備える点火プラグであって、
前記主体金具は、内燃機関の取付孔のネジ山に嵌められるネジ部を有し、
前記主体金具の外周面のうち前記ネジ部の後端から前記ネジ部の先端までの部分の表面積を表面積Ssとし、
前記主体金具のうちの前記内燃機関の燃焼ガスに曝される部分の表面積を表面積Saとし、
前記絶縁体のうち前記燃焼ガスに曝される部分の表面積を表面積Sbとする場合に、
Ss/(Sa+Sb)≧2.6、が満たされる、点火プラグ。
【0008】
この構成によれば、耐熱性を向上できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の点火プラグであって、
前記主体金具は、先端側に向かって内径が小さくなる縮内径部を有し、
前記絶縁体は、先端側に向かって外径が小さくなる縮外径部を有し、
前記点火プラグは前記縮外径部と前記縮内径部とに接触するパッキンを備える、または、前記縮外径部は前記縮内径部に直接的に接触し、
前記絶縁体の前記外周面と、前記縮内径部または前記パッキンと、の接触部分の先端から、前記主体金具の先端までの、前記軸線の方向の距離をFとする場合に、
F≧5.0mm、が満たされる、点火プラグ。
【0010】
この構成によれば、絶縁体の外周面のうちの縮内径部またはパッキンとの接触部分における温度変化が抑制されるので、耐久性を向上できる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2に記載の点火プラグであって、
前記主体金具は、先端側に向かって内径が小さくなる縮内径部を有し、
前記絶縁体は、先端側に向かって外径が小さくなる縮外径部を有し、
前記点火プラグは前記縮外径部と前記縮内径部とに接触するパッキンを備える、または、前記縮外径部は前記縮内径部に直接的に接触し、
前記主体金具のうち前記ネジ部の後端から前記主体金具の先端までの部分である先端側部分を中実と仮定した場合の前記先端側部分の体積を体積Vvとし、
前記主体金具の内周面と前記絶縁体の外周面とに挟まれた空間のうち、前記絶縁体の前記外周面と、前記縮内径部または前記パッキンと、の接触部分の先端よりも先端側の部分の体積を体積Vcとする場合に、
(Vv−Vc)≦2000mm、が満たされる、点火プラグ。
【0012】
この構成によれば、耐汚損性を向上できる。
【0013】
[適用例4]
適用例1から3のいずれかに記載の点火プラグであって、
前記主体金具は、先端側に向かって内径が小さくなる縮内径部を有し、
前記絶縁体は、先端側に向かって外径が小さくなる縮外径部を有し、
前記点火プラグは前記縮外径部と前記縮内径部とに接触するパッキンを備える、または、前記縮外径部は前記縮内径部に直接的に接触し、
前記絶縁体の先端側の一部分は、前記主体金具の先端よりも先端側に配置されており、
前記軸線の方向と垂直な方向に、前記絶縁体のうちの前記主体金具の先端よりも先端側に配置されている部分を投影したときの投影面積を、投影面積Sdとし、
前記絶縁体の前記外周面と、前記縮内径部または前記パッキンと、の接触部分の先端を通り前記軸線の方向に垂直な前記絶縁体の断面積を、断面積Seとする場合に、
Sd/Se≦0.46、が満たされる、点火プラグ。
【0014】
この構成によれば、耐久性を向上できる。
【0015】
[適用例5]
適用例1から4のいずれかに記載の点火プラグと、前記点火プラグを冷却する冷却液路とを備える内燃機関を制御するための制御システムであって、
前記冷却液路を流れる冷却液の単位時間当たりの流量を制御する流量制御部と、
前記内燃機関の温度を測定する温度センサと、
を備え、
前記流量制御部は、前記温度センサによって測定された温度が閾値以下である場合には、前記温度が前記閾値よりも高い場合と比べて、前記流量を小さくする、
制御システム。
【0016】
この構成によれば、耐熱性と耐汚損性とを向上できる。
【0017】
[適用例6]
内燃機関であって、
冷却液が流れるための冷却液路と、
点火プラグを取り付けるための取付孔を形成する孔形成部と、
前記取付孔に取り付けられた適用例1から4のいずれかに記載の点火プラグと、
を備え、
前記孔形成部は、前記冷却液路を貫通する前記取付孔を形成し、
前記点火プラグの前記主体金具の一部分は、前記冷却液路内に露出している、
内燃機関。
【0018】
この構成によれば、耐熱性を向上できる。
【0019】
[適用例7]
内燃機関システムであって、
適用例6に記載の内燃機関と、
前記内燃機関を制御するための適用例5に記載の制御システムと、
を備える、
内燃機関システム。
【0020】
この構成によれば、耐熱性と耐汚損性とを向上できる。
【0021】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、点火プラグ、点火プラグを有する内燃機関、内燃機関の制御システム、内燃機関と制御システムとを有する内燃機関システム、内燃機関システムを有する車両、等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態としての点火プラグ100の断面図である。
図2】評価試験の結果を示す説明図である。
図3】評価試験の結果を示す説明図である。
図4】評価試験の結果を示す説明図である。
図5】パラメータDn、Ss、Ls、Sa、Sb、Vvの説明図である。
図6】パラメータVc、Sd、Seの説明図である。
図7】評価試験の結果を示す説明図である。
図8】パラメータFの説明図である。
図9】一実施形態としての内燃機関600の断面構成を示す概略図である。
図10】内燃機関システムの説明図である。
図11】内燃機関の別の実施形態の断面構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施形態:
A−1.点火プラグ100の構成:
図1は、一実施形態としての点火プラグ100の断面図である。図中には、点火プラグ100の中心軸CL(「軸線CL」とも呼ぶ)と、点火プラグ100の中心軸CLを含む平らな断面と、が示されている。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。軸線CLに垂直な方向を、「径方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から中心電極20に向かう方向である。また、図1における先端方向Df側を点火プラグ100の先端側と呼び、図1における後端方向Dfr側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
【0024】
点火プラグ100は、軸線CLに沿って延びる貫通孔12(軸孔12とも呼ぶ)を有する筒状の絶縁体10と、貫通孔12の先端側で保持される中心電極20と、貫通孔12の後端側で保持される端子金具40と、貫通孔12内で中心電極20と端子金具40との間に配置された抵抗体74と、抵抗体74と中心電極20とを電気的に接続する第1シール部72と、抵抗体74と端子金具40とを電気的に接続する第2シール部76と、絶縁体10の外周側に固定された筒状の主体金具50と、一端が主体金具50の先端面55に接合されるとともに他端が中心電極20とギャップgを介して対向するように配置された接地電極30と、を有している。
【0025】
絶縁体10の軸線方向の略中央には、外径が最も大きな大径部14が形成されている。大径部14より後端側には、後端側胴部13が形成されている。大径部14よりも先端側には、後端側胴部13よりも外径の小さな先端側胴部15が形成されている。先端側胴部15よりもさらに先端側には、縮外径部16と、脚部19とが、先端側に向かってこの順に形成されている。縮外径部16の外径は、前方向Dfに向かって、徐々に小さくなっている。縮外径部16の近傍(図1の例では、先端側胴部15)には、前方向Dfに向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部11が形成されている。絶縁体10は、機械的強度と、熱的強度と、電気的強度とを考慮して形成されることが好ましく、例えば、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。
【0026】
中心電極20は、後端側から先端側に向かって延びた棒状の部材である。中心電極20は、絶縁体10の貫通孔12内の前方向Df側の端部に配置されている。中心電極20は、外径が最も大きい部分である頭部24と、頭部24の前方向Df側に形成された軸部27と、軸部27の先端に接合(例えば、レーザ溶接)された第1チップ29と、を有している。頭部24の外径は、絶縁体10の縮内径部11よりも前方向Df側の部分の内径よりも大きい。頭部24の前方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部11によって、支持されている。軸部27は、軸線CLに平行に前方向Dfに向かって延びている。軸部27は、外層21と、外層21の内周側に配置された芯部22と、を有している。外層21は、例えば、ニッケルを主成分として含む合金で形成されている。ここで、主成分は、含有率(重量%)が最も高い成分を意味している。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、銅を主成分として含む合金)で形成されている。第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。中心電極20のうち第1チップ29を含む先端側の一部分は、絶縁体10の軸孔12から前方向Df側に露出している。なお、芯部22と第1チップ29との少なくとも一方は、省略されてもよい。また、中心電極20の全体が軸孔12内に配置されてもよい。
【0027】
絶縁体10の貫通孔12の後端側には、端子金具40の前方向Df側の一部が挿入されている。端子金具40は、軸線CLに平行に延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性材料を用いて形成されている(例えば、鉄を主成分として含む金属)。端子金具40は、前方向Dfに向かって順番で並ぶ、キャップ装着部49と、鍔部48と、軸部41と、を有している。キャップ装着部49は、絶縁体10の後端側で、軸孔12の外に露出している。キャップ装着部49には、高圧ケーブル(図示せず)に接続されたプラグキャップが装着され、火花放電を発生するための高電圧が印加される。キャップ装着部49は、高圧ケーブルが接続される部分である端子部の例である。軸部41は、絶縁体10の軸孔12の後方向Dfr側の部分に挿入されている。鍔部48の前方向Df側の面は、絶縁体10の後方向Dfr側の端である後端10eに接している。
【0028】
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための抵抗体74が配置されている。抵抗体74は、導電性材料(例えば、ガラスと炭素粒子とセラミック粒子との混合物)を用いて形成されている。抵抗体74と中心電極20との間には、第1シール部72が配置され、抵抗体74と主体金具50との間には、第2シール部76が配置されている。これらのシール部72、76は、導電性材料(例えば、金属粒子と抵抗体74の材料に含まれるものと同じガラスとの混合物)を用いて形成されている。中心電極20は、第1シール部72、抵抗体74、第2シール部76によって、端子金具40に電気的に接続されている。以下、絶縁体10の軸孔12内で端子金具40と中心電極20とを電気的に接続する第1シール部72と抵抗体74と第2シール部76の全体を、接続部200とも呼ぶ。
【0029】
点火プラグ100の製造の際には、絶縁体10の後方向Dfr側の開口10qから中心電極20が挿入される。中心電極20は、絶縁体10の縮内径部11に支持されることにより、貫通孔12内の所定位置に配置される。次に、第1シール部72、抵抗体74、第2シール部76のそれぞれの材料粉末の投入と投入された粉末材料の成形とが、部材72、74、76の順番に、行われる。粉末材料は、開口10qから貫通孔12内に投入される。次に、絶縁体10を、部材72、74、76の材料粉末に含まれるガラス成分の軟化点よりも高い所定温度まで加熱し、所定温度に加熱した状態で、開口10qから、端子金具40の軸部41を貫通孔12に挿入する。この結果、部材72、74、76の材料粉末が圧縮および焼結されて、部材72、74、76が形成される。そして、端子金具40が、絶縁体10に固定される。
【0030】
主体金具50は、軸線CLに沿って延びる貫通孔59を有する筒状の部材である。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入され、主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50は、導電材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。絶縁体10の前方向Df側の一部は、貫通孔59の外に露出している。また、絶縁体10の後方向Dfr側の一部は、貫通孔59の外に露出している。
【0031】
主体金具50は、工具係合部51と、胴部52と、を有している。工具係合部51は、点火プラグ用のレンチ(図示せず)が嵌合する部分である。胴部52は、主体金具50の先端面55を含む部分である。胴部52の外周面には、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)の取付孔に螺合するためのネジ部57が形成されている。ネジ部57は、雄ねじであり、螺旋状のネジ山を有している(図示省略)。
【0032】
主体金具50の工具係合部51と胴部52との間には、径方向外側に突き出たフランジ状の鍔部54が形成されている。胴部52のネジ部57と鍔部54との間には、環状のガスケット90が配置されている。ガスケット90は、例えば金属の板状部材を折り曲げることによって形成されており、点火プラグ100がエンジンに取り付けられた際に押し潰されて変形する。このガスケット90の変形によって、点火プラグ100と(具体的には、鍔部54の前方向Df側の面)、エンジンと、の隙間が封止され、燃焼ガスの漏出が抑制される。
【0033】
主体金具50の胴部52には、先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部56が形成されている。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の縮外径部16と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。本実施形態では、先端側パッキン8は、例えば、鉄製の板状リングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
【0034】
主体金具50の工具係合部51より後端側には、薄肉のカシメ部53が形成されている。また、鍔部54と工具係合部51との間には、薄肉の座屈部58が形成されている。主体金具50の工具係合部51からカシメ部53にかけての内周面と、絶縁体10の後端側胴部13の外周面との間には、円環状のリング部材61,62が挿入されている。さらにこれらのリング部材61,62の間には、タルク70の粉末が充填されている。点火プラグ100の製造工程において、カシメ部53が内側に折り曲げられて加締められると、座屈部58が圧縮力の付加に伴って外向きに変形(座屈)し、この結果、主体金具50と絶縁体10とが固定される。タルク70は、この加締め工程の際に圧縮され、主体金具50と絶縁体10との間の気密性が高められる。また、パッキン8は、絶縁体10の縮外径部16と主体金具50の縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。
【0035】
接地電極30は、棒状の本体部37と、本体部37の先端部34に取り付けられた第2チップ39と、を有している。本体部37の一端部33(基端部33とも呼ぶ)は、主体金具50の先端面55に接合されている(例えば、抵抗溶接)。本体部37は、主体金具50に接合された基端部33から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部34に至る。第2チップ39は、先端部34の後方向Dfr側の部分に固定されている(例えば、レーザ溶接)。接地電極30の第2チップ39と、電極20の第1チップ29とは、ギャップgを形成している。第2チップ39は、本体部37よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。本体部37は、外層31と、外層31の内周側に配置された内層32と、を有している。外層31は、内層32よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを含む合金)で形成されている。内層32は、外層31よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。なお、内層32と第2チップ39との少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0036】
B.評価試験:
図2図4は、点火プラグのサンプルを用いた評価試験の結果を示す説明図である。図2(A)は、1番から7番のサンプルのそれぞれの構成を示す表である。この表は、各サンプルの、呼び径Dn[mm]と、ネジ長Ls[mm]と、金具接触面積Ss[mm]と、金具露出面積Sa[mm]と、絶縁体露出面積Sb[mm]と、第1面積割合R1(=Ss/(Sa+Sb))と、を示している(カギ括弧内は、単位)。1番から7番のサンプルの間では、Ss、Sa、Sbの少なくとも1つが互いに異なっている。図2(B)は、1番から7番のサンプルのそれぞれのプレイグニションの発生進角AG(以下、単に、発生進角AGとも呼ぶ)を示すグラフである。縦軸は、サンプルの番号を示し、横軸は、発生進角AGを示している。図2(B)では、発生進角AGは、クランク角度で表されており、その単位は、度である。1番から7番のサンプルを用いて、プレイグニションの発生のし難さ(すなわち、耐熱性)が、評価された。
【0037】
図5(A)は、呼び径Dnと、ネジ長Lsと、金具接触面積Ssと、の説明図である。図中には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。呼び径Dnは、主体金具50のネジ部57の呼び径である。ネジ長Lsは、ネジ部57の後端57rから、主体金具50の先端(ここでは、先端面55)までの、軸線CLに平行な方向の長さである。ネジ部57の後端57rは、ネジ部57の山と谷とのうちの最も後方向Dfr側の部分である。図中には、ネジ部57の先端57fも示されている。ネジ部57の先端57fは、ネジ部57の山と谷とのうちの最も前方向Df側の部分である。
【0038】
金具接触面積Ssは、主体金具50の外周面のうち、ネジ部57の後端57rからネジ部57の先端57fまでの部分の表面積である(図5(A)では、この部分が、太線で示されている)。金具接触面積Ssは、主体金具50のうち、他の部材(例えば、内燃機関の取付孔を形成する孔形成部)に接触する部分の面積を表している。内燃機関の駆動時には、燃焼ガスが点火プラグ100の前方向Df側の部分に接触する。そして、燃焼ガスから点火プラグ100に熱が伝わり、点火プラグ100からネジ部57を通じて内燃機関の孔形成部に熱が伝わる。金具接触面積Ssが大きいほど、点火プラグ100から内燃機関へ熱が伝わり易いので、点火プラグ100は冷却され易い。なお、螺旋状の山と谷とを有するネジ部57の表面積は、IEC62321のAnnexBに記載された表面積算定式を用いて算出された。
【0039】
図5(B)は、金具露出面積Saの説明図である。図中には、内燃機関600の取付孔680に装着された状態の点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。点火プラグ100の前方向Df側の一部分は、燃焼室630内の燃焼ガスに曝される。金具露出面積Saは、主体金具50の表面のうちの燃焼ガスに曝される部分50xの表面積である。図中では、この部分50xが、太線で示されている(露出部分50xとも呼ぶ)。内燃機関の駆動時には、露出部分50xに燃焼ガスが接触する。そして、燃焼ガスから主体金具50へ熱が伝わる。金具露出面積Saが大きいほど、燃焼ガスから主体金具50へ熱が伝わり易いので、主体金具50(ひいては、点火プラグ100)の温度が高くなり易い。
【0040】
露出部分50xは、主体金具50の内周面上の第1位置P1から、主体金具50の先端面55を通って、主体金具50の外周面上の第2位置P2までの部分である。図5(B)の上部には、パッキン8を含む部分の拡大断面が示されている。第1位置P1は、主体金具50の内周面50iとパッキン8との接触部分のうちの最も前方向Df側の部分(すなわち、先端)の位置である。第2位置P2は、主体金具50の外周面と内燃機関600の孔形成部688との接触部分のうち最も前方向Df側の部分(すなわち、先端)の位置である。孔形成部688は、点火プラグ100を取り付けるための取付孔680を形成する部分である。
【0041】
図5(C)は、絶縁体露出面積Sbの説明図である。図中には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。絶縁体露出面積Sbは、絶縁体10の表面のうちの燃焼ガスに曝される部分10xの表面積である。図中では、この部分10xが、太線で示されている(露出部分10xとも呼ぶ)。内燃機関の駆動時には、露出部分10xに燃焼ガスが接触する。そして、燃焼ガスから絶縁体10へ熱が伝わる。絶縁体露出面積Sbが大きいほど、燃焼ガスから絶縁体10へ熱が伝わり易いので、絶縁体10(ひいては、点火プラグ100)の温度が高くなり易い。
【0042】
露出部分10xは、絶縁体10の外周面上の第3位置P3から、絶縁体10の先端17を通って、絶縁体10の内周面上の第4位置P4までの部分である。図2(C)の上部には、パッキン8を含む部分の拡大断面が示されている。第3位置P3は、絶縁体10の外周面10oとパッキン8との接触部分のうちの最も前方向Df側の部分(すなわち、先端)の位置である。
【0043】
図5(C)の下部には、絶縁体10と中心電極20との間の隙間の先端部の拡大断面が示されている。図中の距離dは、絶縁体10の内周面10iと中心電極20の外周面20oとの間の軸線CLに垂直な方向の距離である。絶縁体10の内周面10iと中心電極20の外周面20oとの間の隙間には、燃焼ガスが侵入し得る。ここで、距離dが、所定の閾値dt(ここでは、0.1mm)よりも大きい場合には、燃焼ガスが侵入し易く、距離dが閾値dt以下である場合には、燃焼ガスは侵入し難い。第4位置P4は、絶縁体10の内周面10iの距離dが閾値dt以下である部分のうちの最も前方向Df側の部分の位置である。
【0044】
図5(C)の例では、中心電極20の軸部27は、絶縁体10の軸孔12の内から前方向Df側の外に向かって外径が小さくなる縮外径部26を有している。従って、第4位置P4は、縮外径部26の後方向Dfr側の端部に対向する位置である。このような縮外径部26が省略される場合、露出部分10xの内周側の端の位置である第4位置P4は、絶縁体10の内周面10i上ではなく、絶縁体10の先端17の内周側の縁の位置であり得る。
【0045】
図2(A)の表の第1面積割合R1(=Ss/(Sa+Sb))は、点火プラグ100の表面のうち、燃焼ガスから熱を受ける部分50x、10xの総面積(Sa+Sb)に対する、他の部材(ここでは、内燃機関600の孔形成部688)へ熱を伝える部分(主に、ネジ部57)の面積Ssの割合である。この第1面積割合R1が大きいほど、点火プラグ100は冷却され易いので、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。
【0046】
図2(B)の試験結果は、JIS D1606に基づくプレイグニション試験の結果を示している。プレイグニション試験の概要は以下の通りである。各サンプルを排気量1.3L、4気筒のDOHC(Double OverHead Camshaft)エンジンに取付け、そして、回転速度が6000rpm、スロットル全開、という条件下でエンジンを動作させる。この状態で、点火時期を正規の点火時期から所定角度ずつ進角させる。各点火時期ごとに、点火時期よりも前のタイミングで電極20、30を流れる電流(イオン電流とも呼ばれる)を測定する。通常は、点火時期よりも前のタイミングでのイオン電流は、おおよそゼロである。点火時期よりも前のタイミングでのイオン電流が大きい場合には、電極20、30の近傍にイオンが生じている、すなわち、電極20、30の近傍に炎(すなわち、プレイグニション)が生じている。各サンプルについて、電極20、30を流れる電流の波形に基づいて、プレイグニションが発生した点火時期(発生進角AG)を特定した。尚、発生進角AGが大きいほど、プレイグニションが発生しにくい、すなわち耐熱性が良好である。
【0047】
図2(B)に示すように、1番から5番のそれぞれの発生進角AGは、56度以上であり、6番と7番のそれぞれの発生進角AGは、48度以下であった。このように、1番から5番のサンプルの耐熱性は、6番と7番の耐熱性と比べて、大幅に良好であった。また、図2(A)に示すように、1番から5番の第1面積割合R1は、番号の順に、4.1、3.3、2.7、2.6、2.6であり、いずれも2.6以上であった。6番と7番の第1面積割合R1は、2.1、1.8であり、2.6よりも小さかった。このように、第1面積割合R1が2.6以上である場合には、第1面積割合R1が2.6未満である場合と比べて、耐熱性が大幅に改善された。第1面積割合R1が大きい場合に耐熱性が良好である理由は、上述したように、第1面積割合R1が大きい場合には、点火プラグ100が冷却され易く、点火プラグ100の昇温が抑制されるからだと推定される。
【0048】
なお、56度以上の発生進角AGを実現した第1面積割合R1は、2.6、2.7、3.3、4.1であった。第1面積割合R1の好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、これらの4個の値を用いて定めてもよい。具体的には、上記の4個の値のうちの任意の値を、第1面積割合R1の好ましい範囲の下限として採用してよい。例えば、第1面積割合R1は、2.6以上であってよい。また、これらの値のうちの下限以上の任意の値を、第1面積割合R1の好ましい範囲の上限として採用してよい。例えば、第1面積割合R1は、4.1以下であってよい。なお、第1面積割合R1が大きいほど、点火プラグ100の昇温を抑制できるので、第1面積割合R1が大きいほど、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。従って、第1面積割合R1は、上記の4個の値のうちの最大値である4.1よりも、大きくてもよい。なお、低温環境下において点火プラグ100の昇温を促進するためには、第1面積割合R1が小さいことが好ましい。例えば、第1面積割合R1は、5.2以下であることが好ましい。
【0049】
なお、本評価試験で評価された耐熱性は、点火プラグの冷却のし易さに関するので、第1面積割合R1から大きな影響を受け、他のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Sa、Sbなど)からの影響は、比較的小さいと推定される。従って、第1面積割合R1の上記の好ましい範囲は、種々の値のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Sa、Sbなど)を有する点火プラグに適用できると推定される。
【0050】
図3は、8番から13番のサンプルの構成と試験結果を示す表である。この表は、各サンプルの、呼び径Dn[mm]と、ネジ長Ls[mm]と、金具接触面積Ss[mm]と、中実体積Vv[mm]と、金具露出面積Sa[mm]と、絶縁体露出面積Sb[mm]と、空間体積Vc[mm]と、第1面積割合R1と、体積差Dv[mm]と、試験結果(具体的には、サイクル数Ncとその評価結果)と、を示している(カギ括弧内は、単位)。8番から13番のサンプルの間では、Vv、Vcの少なくとも1つが互いに異なっている。8番から13番のサンプルを用いて、後述する耐汚損性の評価試験を行った。
【0051】
図5(D)は、中実体積Vvの説明図である。図中には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。中実体積Vvは、主体金具50のうちネジ部57の後端57rから主体金具50の先端(ここでは、先端面55)までの部分である先端側部分50fを中実と仮定した場合の、先端側部分50fの体積である。すなわち、中実体積Vvは、主体金具50の貫通孔59のうち先端側部分50fに含まれる部分の全体が埋まっていると仮定した場合の、先端側部分50fの体積である。以下、中実体積Vvに対応する部分を、先端側仮想部分300とも呼ぶ。
【0052】
図6(A)は、空間体積Vcの説明図である。図中には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。空間体積Vcは、主体金具50の内周面50iと絶縁体10の外周面10oとに挟まれた空間のうちの上述した第3位置P3よりも前方向Df側の部分である先端側空間部分300fの体積である。図中では、先端側空間部分300fにハッチングが付され、他の部材からはハッチングが省略されている。先端側空間部分300fは、主体金具50の内周面50iと絶縁体10の外周面10oとに挟まれた空間のうち、燃焼ガスが入り得る部分である。このような先端側空間部分300fは、図5(D)で説明した先端側仮想部分300のうちの点火プラグ100の部材が配置されていない空間部分と、おおよそ同じである。なお、第3位置P3は、先端側空間部分300fの後方向Dfr側の端でもある。
【0053】
図3の表の体積差Dv(=Vv−Vc)は、点火プラグ100の先端側仮想部分300(図5(D))から、点火プラグ100の部材が配置されていない先端側空間部分300f(図6(A))を除いた残りの部分300m(図6(A))の体積を表している。この部分300mは、先端側仮想部分300のうちの点火プラグ100の部材が配置されている部分と、おおよそ同じである(以下、先端側部材部分300mとも呼ぶ)。体積差Dvは、この先端側部材部分300mのおおよその体積を示している(以下、体積差Dvを、単に、体積Dvとも呼ぶ)。
【0054】
点火プラグ100の先端側部材部分300m(図6(A))は、燃焼ガスから熱を受け、そして、内燃機関の孔形成部688(図5(B))へ熱を伝える部分である。このような熱の伝達を行う先端側部材部分300mの体積Dvが小さいことは、先端側部材部分300mの熱容量が小さいことを示している。従って、体積Dvが小さいほど、点火プラグ100の先端側部材部分300mの温度が高くなり易いので、点火プラグ100の温度が低いことに起因する不具合(例えば、カーボンによる汚損)を抑制できる。
【0055】
図3の試験結果(サイクル数Ncと評価結果)は、JIS D1606に基づく耐汚損性評価試験の結果を示している。この評価試験の概要は以下の通りである。摂氏−10度の低温試験室内のシャシダイナモメータ上に、排気量が1.6L、4気筒、自然吸気、MPI(Multipoint fuel injection)のエンジンを有する試験用自動車を置いた。この試験用自動車のエンジンに、スパークプラグのサンプルを、各気筒に組み付けた。そして、第1運転と、第1運転に続く第2運転と、で構成される運転を、1サイクルの試験運転として行った。第1運転は、「3回の空吹かし」と、「3速、35km/hでの40秒間の走行」と、「90秒間のアイドリング」と、「3速、35km/hでの40秒間の走行」と、「エンジンの停止」と、「冷却水の温度が摂氏−10度になるまでの自動車の冷却」とを、この順番に行う運転である。第2運転は、「3回の空ふかし」と、「30秒間のエンジン停止を挟みつつ、1速、15km/hでの20秒間の走行を3回行うこと」と、「エンジンの停止」と、「冷却水の温度が摂氏−10度になるまでの自動車の冷却」とを、この順番に行う運転である。
【0056】
このような第1運転と第2運転とで構成される試験運転を、繰り返した。そして、1サイクルの試験運転が終了するたびに、点火プラグのサンプルの中心電極20と主体金具50との間の絶縁抵抗を測定した。なお、端子金具40と中心電極20との間の電気抵抗は、絶縁抵抗と比べて十分に小さいので、端子金具40と主体金具50との間の絶縁抵抗の測定結果を、中心電極20と主体金具50との間の絶縁抵抗として採用した。そして、エンジンに装着された4個のサンプルの4個の絶縁抵抗の平均値が10MΩ以下となった段階でのサイクル数Ncを、8番から13番の各サンプルについて、特定した。内燃機関の駆動によって、絶縁体10の表面にカーボンが付着し得る(汚損とも呼ばれる)。このような汚損が進行し易い場合には、絶縁抵抗は低下し易く、サイクル数Ncは少ない。サイクル数Ncが多いことは、点火プラグ100の汚損が抑制されていることを示している。図3のA評価は、サイクル数Ncが6以上であることを示し、B評価は、サイクル数Ncが5以下であることを示している。
【0057】
図3に示すように、8番から10番のそれぞれのサイクル数Ncは、6以上であり(A評価)、11番から13番のそれぞれのサイクル数Ncは、5以下であった(B評価)。このように、8番から10番の耐汚損性は、11番から13番の耐汚損性と比べて、良好であった。また、図3に示すように、8番から10番の体積差Dvは、番号の順に、1882、1938、1960(mm)であり、いずれも、2000mm以下であった。11番から13番の体積差Dvは、番号の順に、2083、2296、2824(mm)であり、いずれも、2000mmより大きかった。このように、体積差Dvが2000mm以下である場合には、体積差Dvが2000mmより大きい場合と比べて、耐汚損性が大幅に改善された。
【0058】
体積差Dvが小さい場合に耐汚損性が良好である理由は、以下のように推定される。上述したように、体積差Dvが小さい場合には、点火プラグ100の先端側部材部分300m(図6(A))が小さいので、低温環境下においても、先端側部材部分300mの温度(ひいては、絶縁体10の燃焼ガスに接触する部分)の温度が上昇し易い。絶縁体10の温度が高い場合には、絶縁体10の表面に付着したカーボンは、容易に焼失できる。これにより、体積差Dvが小さい場合に耐汚損性が向上する。
【0059】
なお、A評価のサイクル数Ncを実現した体積差Dvは、1882、1938、1960(mm)であった。体積差Dvの好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、これらの3個の値を用いて定めてもよい。具体的には、上記の3個の値のうちの任意の値を、体積差Dvの好ましい範囲の上限として採用してよい。例えば、体積差Dvは、1960mm以下であってよい。また、これらの値のうちの上限以下の任意の値を、体積差Dvの好ましい範囲の下限として採用してよい。例えば、体積差Dvは、1882mm以上であってよい。なお、体積差Dvが小さいほど、絶縁体10の昇温が促進されるので、体積差Dvが小さいほど、点火プラグ100の温度が低いことに起因する不具合(例えば、カーボンによる汚損)を抑制できる。従って、体積差Dvは、上記の3個の値のうちの最小値である1882mmよりも、小さくてもよい。なお、点火プラグ100の先端側部材部分300mに対応する部分の耐久性を向上するためには、先端側部材部分300mの体積Dvが大きいことが好ましい。例えば、体積差Dvは、1000mm以上であることが好ましい。
【0060】
また、図3に示すように、8番から13番のサンプルのいずれの第1面積割合R1も、2.6以上である。従って、8番から13番のサンプルは、いずれも、図2(A)の評価試験のように点火プラグ100の温度が高くなりやすい条件下において、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できると推定される。さらに、8番から10番のサンプルは、図3の評価試験のように点火プラグ100の温度が高くなり難い条件下において、点火プラグ100の温度が低いことに起因する不具合(例えば、カーボンによる汚損)を抑制できる。
【0061】
なお、本評価試験で評価された耐汚損性は、点火プラグ(特に、先端側部材部分300m)の昇温のし易さに関するので、体積差Dvから大きな影響を受け、他のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、R1)からの影響は、比較的小さいと推定される。従って、体積差Dvの上記の好ましい範囲は、種々の値のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、R1)を有する点火プラグに適用できると推定される。ただし、体積差Dvは、上記の好ましい範囲外であってよく、例えば、2000mmより大きくてもよい。
【0062】
図4は、14番から18番のサンプルの構成と評価試験の結果を示す表である。この表は、各サンプルの、金具接触面積Ss[mm]と、中実体積Vv[mm]と、金具露出面積Sa[mm]と、絶縁体露出面積Sb[mm]と、空間体積Vc[mm]と、投影面積Sd[mm]と、断面積Se[mm]と、第2面積割合R2(=Sd/Se)と、試験結果と、を示している(カギ括弧内は、単位)。14番から18番のサンプルの間では、Sd、Seの少なくとも1つが互いに異なっている。14番から18番のサンプルを用いて、後述する耐久性の評価試験を行った。
【0063】
図6(B)は、投影面積Sdの説明図である。図中には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の外観が示されている。この外観は、軸線CLに垂直な方向を向いて見た外観である。図示するように、絶縁体10の前方向Df側の一部分は、主体金具50の先端(ここでは、先端面55)よりも前方向Df側に位置している。ハッチングが付された部分10fは、絶縁体10のうちの主体金具50の先端(先端面55)よりも前方向Df側に配置されている部分である(先端部10fとも呼ぶ)。投影面積Sdは、この先端部10fを、軸線CLに垂直な方向に向かって、軸線CLに平行な投影面上に投影して得られる投影図の面積(投影面積とも呼ぶ)である。
【0064】
内燃機関の駆動時には、燃焼室内で、ガス(例えば、燃焼ガス)が流動し、また、圧力波がガスを介して伝播する。流動するガスや圧力波は、絶縁体10に接触することによって、絶縁体10に力を印加する場合がある。例えば、ガスや圧力波が、絶縁体10の先端部10fの近傍で、軸線CLに交差する方向に向かって移動する場合がある。このようなガスや圧力波は、絶縁体10の先端部10fに接触することによって、絶縁体10に、軸線CLに交差する方向の力を印加し得る。ここで、投影面積Sdが大きいほど、絶縁体10のうちのガスや圧力波から力を受ける部分が大きい。従って、絶縁体10が受ける力は、投影面積Sdが大きいほど、強い。なお、図示された先端部10fの形状は、先端部10fの投影図の形状と同じである。従って、投影面積Sdは、このような外観図を用いて算出可能である。
【0065】
図6(C)は、断面積Seの説明図である。図中に左部には、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。図中の右部には、絶縁体10の軸線CLに垂直な断面10zが示されている。この断面10zは、上述した第3位置P3(図5(C))を含む断面である。断面積Seは、絶縁体10のこの断面10zの面積である。図6(B)で説明したように、絶縁体10の先端部10fに、軸線CLに交差する方向の力が印加される場合がある。また、絶縁体10は、パッキン8を介して、主体金具50に支持されている。従って、絶縁体10の先端部10fに力が印加される場合、絶縁体10の第3位置P3の部分に、大きな力が作用する。従って、絶縁体10の第3位置P3を通る断面10zの断面積Seが大きいほど、絶縁体10は、大きな力に耐えることができる。
【0066】
図4の表の第2面積割合R2は、絶縁体10の断面10zの断面積Seに対する、絶縁体10の先端部10fの投影面積Sdの割合である。この第2面積割合R2が小さいことは、絶縁体10のうちの力に耐える部分の断面10zの断面積Seに対する、絶縁体10のうちの力を受ける先端部10fの投影面積Sdの割合が小さいことを示している。すなわち、第2面積割合R2が小さいほど、力に耐える部分の断面10zの単位面積当たりの力が、小さくなる。従って、第2面積割合R2が小さいほど、耐久性が向上すると推定される。
【0067】
耐久性の評価試験の概要は、以下の通りである。各サンプルを、排気量1.6L、直噴ターボエンジンに取り付け、そして、回転速度が2000rpm、スロットル全開、過給圧が100kPaという条件下で、エンジンを動作させる。諸説あるが、このような低負荷、高吸気圧の条件下では、ピストンクレビス部に溜まったエンジン潤滑油の油滴や添加剤が燃焼することで、生成される化合物が自己着火する異常燃焼が生じる場合がある。そして、このような異常燃焼に起因して、燃焼室内で、大きな圧力波が伝播する場合があった。このような圧力波を引き起こすような異常燃焼は、スーパーノックとも呼ばれる。本評価試験では、燃焼室内の圧力を測定する圧力センサを用いて、圧力が、通常の燃焼時の圧力よりも大きな閾値を超える場合に、異常燃焼(具体的には、スーパーノック)が発生したと判定した。そして、各サンプルについて、異常燃焼の発生回数が100回となった段階でエンジンを停止させ、サンプルをエンジンから取り外し、サンプルの絶縁体10を観察した。図4の試験結果のA評価は、絶縁体10の異常が見つからなかったことを示し、B評価は、サンプルの絶縁体10の第3位置P3の近傍が割れたことを示している。
【0068】
図4に示すように、14番から16番の評価は、A評価であり、17番、18番の評価は、B評価であった。このように、14番から16番の耐久性は、17番、18番の耐久性と比べて、良好であった。また、図4に示すように、14番から16番の第2面積割合R2は、番号の順に、0.29、0.35、0.46であり、いずれも、0.46以下であった。17番、18番の第2面積割合R2は、番号の順に、0.51、0.58であり、いずれも、0.46よりも大きかった。このように、第2面積割合R2が0.46以下である場合には、第2面積割合R2が0.46よりも大きい場合と比べて、耐久性が大幅に改善された。第2面積割合R2が小さい場合に耐久性が良好である理由は、上述したように、第2面積割合R2が小さい場合には、力に耐える部分の断面10zの単位面積当たりの力が小さくなるからだと推定される。
【0069】
なお、A評価を実現した第2面積割合R2は、0.29、0.35、0.46であった。第2面積割合R2の好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、これらの3個の値を用いて定めてもよい。具体的には、上記の3個の値のうちの任意の値を、第2面積割合R2の好ましい範囲の上限として採用してよい。例えば、第2面積割合R2は、0.46以下であってよい。また、これらの値のうちの上限以上の任意の値を、第2面積割合R2の好ましい範囲の下限として採用してよい。例えば、第2面積割合R2は、0.29以上であってよい。なお、第2面積割合R2が小さいほど、絶縁体10の耐久性が向上すると推定される。従って、第2面積割合R2は、上記の3個の値のうちの最小値である0.29よりも、小さくてもよい。また、絶縁体10の先端部の全体が、主体金具50の先端(ここでは、先端面55)よりも後方向Dfr側に配置されていてもよい。すなわち、絶縁体10の先端部の全体が、主体金具50の貫通孔59内に配置されていてもよい。この場合、投影面積Sdはゼロであり、第2面積割合R2はゼロである。このように、投影面積Sdは、ゼロ以上の種々の値であってよい。そして、第2面積割合R2は、ゼロ以上の種々の値であってよい。
【0070】
なお、本評価試験で評価された絶縁体10の耐久性は、機械的な耐久性であるので、第2面積割合R2から大きな影響を受け、他のパラメータ(例えば、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、Sd、Se)からの影響は、比較的小さいと推定される。従って、第2面積割合R2の上記の好ましい範囲は、種々の値のパラメータ(例えば、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、Sd、Se)を有する点火プラグに適用できると推定される。
【0071】
図7は、点火プラグのサンプルを用いた評価試験の結果を示す説明図である。図中には、19番から23番のサンプルの構成と試験結果を示す表が、示されている。この表は、各サンプルの、呼び径Dn[mm]と、ネジ長Ls[mm]と、金具接触面積Ss[mm]と、金具露出面積Sa[mm]と、絶縁体露出面積Sb[mm]と、第1面積割合R1(=Ss/(Sa+Sb))と、距離F[mm]と、試験結果と、を示している(カギ括弧内は、単位)。19番から23番のサンプルの間では、距離Fが互いに異なっている。図8は、距離Fの説明図である。図中には、図6(C)と同じ、点火プラグ100の前方向Df側の一部分の軸線CLを含む断面が示されている。距離Fは、上述した第3位置P3と、主体金具50の先端(ここでは、先端面55)と、の間の、軸線CLに平行な方向の距離である。図7の19番から23番のサンプルの間では、この距離Fを異ならせることに伴って、金具露出面積Saと絶縁体露出面積Sbとが、互いに異なっている。呼び径Dnは、共通の12mmである。また、21番のネジ長Lsと金具接触面積Ssとは、他のサンプルのLs、Ssと、それぞれ異なっている。いずれのサンプルについても、第1面積割合R1は、図2(A)、図2(B)で説明した好ましい範囲の例である2.6以上の範囲内である。このような19番から23番のサンプルを用いて、絶縁体10の耐久性が、評価された。
【0072】
内燃機関の駆動時には、絶縁体10(図8)の温度は、燃焼ガスからの熱によって、上昇する。パッキン8は、高温の絶縁体10から、主体金具50へ、熱を伝達できる。絶縁体10のうちパッキン8との接触部分よりも前方向Df側の部分の熱は、パッキン8を介して、主体金具50へ伝達される。これにより、絶縁体10は冷却される。ところで、内燃機関の駆動時には、ガスの燃焼と他の行程(例えば、新気の吸入)が繰り返される。これにより、ガスの燃焼による絶縁体10の昇温と、他の行程における絶縁体10の降温と、が繰り返される。絶縁体10のうちパッキン8との接触部分、すなわち、第3位置P3の近傍の部分は、冷却されやすいので、降温時に、温度が低くなりやすい。また、絶縁体10のうち、燃焼室に近い前方向Df側の部分は、高温の燃焼ガスに近いので、昇温時に、温度が高くなりやすい。従って、第3位置P3が燃焼室に近い場合、すなわち、距離Fが短い場合には、距離Fが長い場合と比べて、絶縁体10の第3位置P3の近傍の部分の温度の変化が、大きくなる。大きな温度変化が繰り返される場合、絶縁体10が破損し得る。従って、距離Fが長いことが好ましい。
【0073】
図7の表の試験結果は、点火プラグ100の熱衝撃試験の結果を示している。熱衝撃試験は、以下のように行われた。点火プラグ100のサンプルを、水冷ジャケットの取付孔に装着する。水冷ジャケットは、内燃機関の取付孔と同様の取付孔を形成する板状の部材である。水冷ジャケットには、冷却水のための流路が設けられており、水冷ジャケットは、流路を流れる冷却水によって、冷却される。この状態で、ブラストバーナを用いて、点火プラグ100のうち、水冷ジャケットの取付孔から露出する先端部を、加熱する。ここで、放射温度計を用いて、中心電極の先端の温度を測定する。加熱時には、中心電極の先端の温度が摂氏850度になるように、バーナの火力が調整される。そして、バーナによる1分間の加熱と、バーナを止めることによる1分間の空冷とを、繰り返す。水冷ジャケットの冷却水の温度は、バーナによる加熱時と空冷時とのそれぞれにおいて、点火プラグ100の主体金具50の温度が摂氏100度以下に維持されるように、調整される。1分間の加熱と1分間の空冷とで構成される1サイクルを、50回繰り返す。そして、50サイクルの加熱と空冷との実施後、絶縁体10を観察する。図7の表のA評価は、絶縁体10に割れが発生しなかったことを示し、B評価は、絶縁体10に割れが発生したことを示している。絶縁体10の割れは、パッキン8との接触部分の近傍で、発生した。
【0074】
図7に示すように、19番、20番、21番の評価は、A評価であり、22番、23番の評価は、B評価であった。このように、19番から21番の耐久性は、22番、23番の耐久性と比べて、良好であった。また、図7に示すように、19番から21番の距離Fは、番号の順番に、10.0、7.3、5.0(mm)であり、いずれも、5.0mm以上であった。22番と23番の距離Fは、番号の順に、4.8、4.0(mm)であり、いずれも、5.0mm未満であった。このように、距離Fが5.0mm以上である場合には、距離Fが5.0mm未満である場合と比べて、耐久性が大幅に改善された。距離Fが大きい場合に耐久性を向上できる理由は、上述したように、距離Fが長い場合には、絶縁体10のうち第3位置P3に近い部分(例えば、パッキン8との接触部分)の温度変化を抑制できるからだと推定される。
【0075】
なお、A評価を実現した距離Fは、5.0、7.3、10.0(mm)であった。距離Fの好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、これらの3個の値を用いて定めてもよい。具体的には、上記の3個の値のうちの任意の値を、距離Fの好ましい範囲の下限として採用してよい。例えば、距離Fは、5.0mm以上であってよい。また、これらの値のうちの下限以上の任意の値を、距離Fの好ましい範囲の上限として採用してよい。例えば、距離Fは、10.0mm以下であってよい。なお、距離Fが大きいほど、絶縁体10の第3位置P3の近傍の部分における温度変化が抑制されるので、距離Fが大きいほど、絶縁体10の破損を抑制できる。従って、距離Fは、上記の3個の値のうちの最大値である10.0mmよりも、大きくてもよい。
【0076】
また、本熱衝撃試験では、主体金具50の温度は、水冷ジャケットによる冷却によって、摂氏100度以下に維持される。一方、一般的な内燃機関の運転時には、主体金具50の温度は、摂氏100度よりも高い温度に維持され得る。本熱衝撃試験は、一般的な内燃機関の運転条件と比べて、温度変化が大きくなり易い厳しい条件下での試験である、といえる。従って、点火プラグ100を一般的な内燃機関に装着する場合には、距離Fが5.0mm未満であってもよい。
【0077】
また、図7に示すように、19番から23番のサンプルのいずれの第1面積割合R1も、2.6以上である。従って、19番から23番のサンプルは、いずれも、図2(A)の評価試験のように点火プラグ100の温度が高くなりやすい条件下において、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できると推定される。
【0078】
なお、本評価試験で評価された絶縁体10の耐久性は、絶縁体10の第3位置P3の近傍の部分の温度変化に関するので、距離Fから大きな影響を受け、他のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、R1、Dv、Sd、Se、R2など)からの影響は、比較的小さいと推定される。従って、距離Fの上記の好ましい範囲は、種々の値のパラメータ(例えば、Dn、Ls、Ss、Vv、Sa、Sb、Vc、R1、Dv、Sd、Se、R2など)を有する点火プラグに適用できると推定される。
【0079】
C.内燃機関システム:
C1.内燃機関:
図9は、一実施形態としての内燃機関600の断面構成を示す概略図である。図中には、1つの燃焼室630の点火プラグ100用の取付孔680を含む一部分が示されている。内燃機関600は、シリンダヘッド610と、シリンダブロック620と、を有している。シリンダブロック620には、シリンダ639が形成されている。シリンダ639内には、ピストン691が配置されている。ピストン691には、コネクティングロッド692の端部が接続されている。図示を省略するが、コネクティングロッド692の反対側の端部は、クランクシャフトに接続されている。
【0080】
シリンダヘッド610は、シリンダブロック620上に配置されている。シリンダヘッド610には、吸気路651と、排気路652と、が設けられている。また、シリンダヘッド610のうちのシリンダ639に対向する部分には、吸気路651に連通する吸気ポート631と、排気路652に連通する排気ポート632と、吸気ポート631と排気ポート632との間に配置された取付孔680と、が設けられている。取付孔680には、点火プラグ100が装着されている。図中では、点火プラグ100の外観の概略が示されている。取付孔680を形成する孔形成部688のうちのシリンダ639側の部分には、ネジ部682が形成されている。ネジ部682は、雌ねじであり、螺旋状のネジ山を有している(図示省略)。点火プラグ100のネジ部57は、孔形成部688のネジ部682にねじ込まれている。
【0081】
シリンダヘッド610には、さらに、吸気ポート631を開閉する吸気バルブ641と、吸気バルブ641を駆動する第1駆動部643と、排気ポート632を開閉する排気バルブ642と、排気バルブ642を駆動する第2駆動部644と、が設けられている。第1駆動部643は、例えば、吸気バルブ641を閉じる方向に付勢するコイルスプリングと、吸気バルブ641を開ける方向に移動させるカムと、を含んでいる。第2駆動部644も、例えば、排気バルブ642を閉じる方向に付勢するコイルスプリングと、排気バルブ642を開ける方向に移動させるカムと、を含んでいる。
【0082】
燃焼室630は、シリンダブロック620のシリンダ639の壁と、ピストン691と、シリンダヘッド610のうちのシリンダ639に対向する部分と、吸気バルブ641と、排気バルブ642と、点火プラグ100と、に囲まれた空間である。
【0083】
また、内燃機関600には、冷却水が流れるための流路661〜664、671、672が形成されている(このような流路は、ウォータジャケットとも呼ばれる)。以下、シリンダヘッド610に形成されている流路661〜664を、ヘッド流路661〜664とも呼び、シリンダブロック620に形成されている流路671、672を、ブロック流路671、672とも呼ぶ。
【0084】
第1ヘッド流路661は、シリンダヘッド610のうちの、取付孔680のネジ部682と吸気バルブ641との間に設けられている。第2ヘッド流路662は、シリンダヘッド610のうちの、取付孔680のネジ部682と排気バルブ642との間に設けられている。これらのヘッド流路661、662は、取付孔680のネジ部682とバルブ641、642との間に設けられている。従って、これらのヘッド流路661、662を流れる冷却水は、取付孔680に装着された点火プラグ100を、適切に、冷却できる。なお、第3ヘッド流路663と第4ヘッド流路664とは、シリンダヘッド610の別の位置に設けられている。
【0085】
第1ブロック流路671と第2ブロック流路672とは、燃焼室630を挟むように配置されている。なお、図9の例では、これらのブロック流路671、672の一部は、シリンダヘッド610に形成されている。ただし、ブロック流路671、672の全体が、シリンダブロック620に形成されていてもよい。
【0086】
C2.内燃機関システム:
図10(A)は、内燃機関システムの例を示すブロック図である。この内燃機関システム1000Aは、内燃機関600(図9)と、制御システム900Aと、ラジエータ700と、ポンプ730と、流路781〜786と、を含んでいる。制御システム900Aは、流量制御部910Aと、温度センサ750と、を含んでいる。流量制御部910Aは、制御装置500と、バルブ740と、を含んでいる。温度センサ750は、例えば、熱電対である。
【0087】
ラジエータ700の下流側には、第1流路781が接続されている。第1流路781は、第2流路782と第3流路783とに分岐している。第2流路782は、内燃機関600のヘッド流路660の上流側に接続されており、第3流路783は、内燃機関600のブロック流路670の上流側に接続されている。ヘッド流路660は、シリンダヘッド610(図9)に設けられた複数の流路を全体として1つの流路として表したものであり、例えば、図9のヘッド流路661〜664を含んでいる。ブロック流路670は、シリンダブロック620(図9)に設けられた複数の流路を全体として1つの流路として表したものであり、例えば、図9のブロック流路671、672を含んでいる。ヘッド流路660の下流側には、第4流路784が接続され、ブロック流路670の下流側には、第5流路785が接続されている。これらの流路784、785は、合流して、第6流路786に接続されている。第6流路786は、ラジエータ700の上流側に接続されている。
【0088】
第1流路781の途中には、ポンプ730が設けられている。ポンプ730は、ラジエータ700によって冷却された冷却水を、流路781、782、783を通じて、内燃機関600の流路660、670へ供給し、そして、内燃機関600の流路660、670から出力された冷却水を、流路784、785、786を通じて、ラジエータ700へ循環させる。ポンプ730は、内燃機関600の駆動力によって、駆動される。代わりに、ポンプ730は、駆動源としての電気モータを含んでもよい。
【0089】
内燃機関600には、内燃機関600の温度を測定する温度センサ750が固定されている。温度センサ750の固定位置は、内燃機関600の温度を測定可能な任意の位置であってよい。例えば、温度センサ750は、シリンダヘッド610に固定されている。これに代えて、温度センサ750は、シリンダブロック620に固定されてもよい。また、温度センサ750は、ヘッド流路660またはブロック流路670を流れる冷却水の温度を測定してもよい。冷却水の温度は、内燃機関600の温度と相関があるので、冷却水の温度を測定する温度センサ750は、間接的に、内燃機関600の温度を測定していると言える。
【0090】
第2流路782の途中には、バルブ740が設けられている。このバルブ740は、内燃機関600のヘッド流路660を流れる冷却水の単位時間当たりの流量を制御することができる。バルブ740の開度が小さいほど、ヘッド流路660(例えば、点火プラグ100(図9)を冷却する流路661、662)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量が小さい。バルブ740の開度は、制御装置500によって制御される。流量制御部910A(制御装置500とバルブ740との全体)は、点火プラグ100を冷却するヘッド流路661、662(図9)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量を制御する。
【0091】
制御装置500は、温度センサ750からの信号に応じて、バルブ740を制御する装置である。本実施形態では、制御装置500は、CPUなどのプロセッサ510と、RAMなどの揮発性記憶装置520と、ROMなどの不揮発性記憶装置530と、外部の装置を接続するためのインタフェース540と、を含んでいる。不揮発性記憶装置530には、プログラム535が、予め格納されている。インタフェース540には、バルブ740と温度センサ750とが接続されている。プロセッサ510は、プログラム535に従って動作することによって、バルブ740を制御する。
【0092】
図10(B)は、制御装置500による制御処理の例を示すフローチャートである。S10では、プロセッサ510は、温度センサ750からの信号を取得する。S20では、プロセッサ510は、温度センサ750からの信号に応じて、バルブ740の開度を調整する。温度センサ750からの信号によって表される測定値(例えば、温度センサ750のセンサ素子の電気抵抗値)と、バルブ740の開度と、の対応関係は、予め決められている(制御対応関係と呼ぶ)。制御対応関係を表すデータ(例えば、ルックアップテーブル)は、プログラム535に、組み込まれている。S20では、プロセッサ510は、制御対応関係に従って、温度センサ750からの信号によって表される測定値に対応付けられた開度に、バルブ740の開度を調整する。プロセッサ510は、このようなS10、S20を繰り返し実行する。
【0093】
図10(C)は、制御対応関係によって表される温度Tと開度Voとの関係を示すグラフである。横軸は、温度センサ750からの信号によって表される温度Tを示し、縦軸は、バルブ740の開度Voを示している。図示するように、温度Tが低いほど、開度Voは小さい。具体的には、温度Tが、第1温度T1以下である場合には、開度Voは、第1開度Vo1である(ここで、Vo1≧ゼロ)。温度Tが、第2温度T2以上である場合には、開度Voは、第2開度Vo2である(ここで、T2>T1、Vo2>Vo1)。そして、第1温度T1以上、第2温度T2以下の範囲内では、開度Voは、温度Tの上昇に応じて、第1開度Vo1から第2開度Vo2まで、連続的に増大する。プロセッサ510は、図10(B)のS20、S30を繰り返し実行する。これにより、内燃機関600の温度が変化した場合には、バルブ740の開度Voは、温度Tに対応付けられた開度Voに、調整される。
【0094】
温度Tが、第1温度T1と第2温度T2との間の予め決められた閾値Tt以下である場合には、温度Tが閾値Ttよりも高い場合と比べて、開度Voが小さい。すなわち、点火プラグ100を冷却するヘッド流路661、662(図9)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量が小さい。従って、温度Tが閾値Tt以下である場合には、点火プラグ100の過冷却を抑制できるので、点火プラグ100の温度が低いことに起因する不具合(例えば、カーボンによる汚損)を抑制できる。また、温度Tが閾値Ttよりも高い場合には、開度Voが大きい。すなわち、点火プラグ100を冷却するヘッド流路661、662(図9)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量が大きい。従って、点火プラグ100の昇温を抑制できるので、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。
【0095】
図10(D)は、別の内燃機関システム1000Bのブロック図を示している。図10(A)のシステム1000Aとは異なり、ヘッド流路660用の冷却水の流路と、ブロック流路670用の冷却水の流路とが、分離している。具体的には、内燃機関システム1000Bは、内燃機関600と、制御システム900Bと、第1ラジエータ710と、第2ラジエータ720と、第1ポンプ731と、第2ポンプ732と、流路791、792、793、794と、を含んでいる。制御システム900Bは、流量制御部910Aと、温度センサ750と、を含んでいる。流量制御部910Aは、制御装置500と、バルブ740と、を含んでいる。内燃機関システム1000Bの要素のうち、図10(A)の内燃機関システム1000Aの要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。例えば、温度センサ750は、内燃機関600に固定されており、内燃機関600の温度を測定する。
【0096】
第1ラジエータ710の下流側とヘッド流路660の上流側とは、第1流路791によって接続され、ヘッド流路660の下流側と第1ラジエータ710の上流側とは、第2流路792によって接続されている。第1流路791の途中には、第1ポンプ731と、バルブ740とが、設けられている。第1ポンプ731は、第1ラジエータ710とヘッド流路660との間で、冷却水を循環させる。バルブ740は、ヘッド流路660を流れる冷却水の単位時間当たりの流量を制御することができる。
【0097】
第2ラジエータ720の下流側とブロック流路670の上流側とは、第3流路793によって接続され、ブロック流路670の下流側と第2ラジエータ720の上流側とは、第4流路794によって接続されている。第3流路793の途中には、第2ポンプ732が設けられている。第2ポンプ732は、第2ラジエータ720とブロック流路670との間で、冷却水を循環させる。
【0098】
ポンプ731、732は、内燃機関600の駆動力によって、駆動される。代わりに、ポンプ731、732は、電気モータによって、駆動されてもよい。
【0099】
制御装置500のプロセッサ510は、図10(A)の実施形態と同様に、温度センサ750からの信号に応じて、バルブ740の開度Voを制御する。従って、温度Tが閾値Tt以下である場合には、流量が小さいので、点火プラグ100の過冷却を抑制できる。従って、点火プラグ100の温度が低いことに起因する不具合(例えば、カーボンによる汚損)を抑制できる。また、温度Tが閾値Ttよりも高い場合には、流量が大きいので、点火プラグ100の昇温を抑制できる。従って、点火プラグ100の昇温に起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。
【0100】
D.内燃機関の別の実施形態:
図11は、内燃機関の別の実施形態の断面構成を示す概略図である。図9の実施形態との差異は、点火プラグ100aの取付孔680aが、ヘッド流路661aを貫通している点である。取付孔680aとヘッド流路661aと点火プラグ100aと以外の部分の構成は、図9の内燃機関600の対応する部分の構成と同じである。内燃機関600aの要素のうち、図9の内燃機関600の要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0101】
ヘッド流路661aは、図9のヘッド流路661、662とおおよそ同じ部分に設けられている。取付孔680aとヘッド流路661aとの形状は、図9の取付孔680とヘッド流路661、662から取付孔680のネジ部682の中央部分を削除して、取付孔680とヘッド流路661、662とを連通させて得られる形状と、おおよそ同じである。
【0102】
図11の実施形態では、取付孔680aを形成する孔形成部688aのうちのシリンダ639側の部分には、第1ネジ部682dと第2ネジ部682uとが形成されている。これらのネジ部682d、682uは、それぞれ、雌ねじであり、螺旋状のネジ山を有している。第1ネジ部682dは、図9のネジ部682のうちシリンダ639側の端部と同じ位置に設けられている。第2ネジ部682uは、図9のネジ部682のうちシリンダ639側とは反対側の端部と同じ位置に設けられている。取付孔680aのうち第1ネジ部682dと第2ネジ部682uとの間の部分が、ヘッド流路661aに連通している。
【0103】
図中には、取付孔680aに装着された点火プラグ100aの外観の概略が示されている。主体金具50aには、第1ネジ部57dと第2ネジ部57uとが設けられている。第1ネジ部57dは、取付孔680aの第1ネジ部682dにねじ込まれ、第2ネジ部57uは、取付孔680aの第2ネジ部682uにねじ込まれている。主体金具50aの第1ネジ部57dと第2ネジ部57uとの間の部分の外周面の形状は、ネジ部が省略された円筒形状である。
【0104】
このように、図11の実施形態では、点火プラグ100aを取り付けるための取付孔680aを形成する孔形成部688aは、ヘッド流路661aを貫通する取付孔680aを形成する。そして、点火プラグ100aの主体金具50aの一部分(ここでは、第1ネジ部57dと第2ネジ部57uとの間の部分)は、ヘッド流路661a内に露出する。従って、ヘッド流路661aを流れる冷却水は、直接的に、主体金具50a(ひいては、点火プラグ100a)を冷却できる。この結果、点火プラグ100aの温度が過剰に高くなることを抑制できる。そして、点火プラグ100aの温度が過剰に高いことに起因する不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。
【0105】
E.変形例:
(1)点火プラグの構成としては、上記の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、主体金具のうちの内燃機関の取付孔のネジ山に嵌められるネジ部は、図11の主体金具50aのように2つのネジ部57d、57uで構成されていてもよく、3以上のネジ部で構成されていてもよい。いずれの場合も、第1面積割合R1(=Ss/(Sa+Sb))は、図2を参照して説明した好ましい範囲内であることが好ましい。さらに、体積差Dvは、図3を参照して説明した好ましい範囲内であることが好ましい。また、第2面積割合R2は、図4を参照して説明した好ましい範囲内であることが好ましい。また、距離Fは、図7を参照して説明した好ましい範囲内であることが好ましい。ここで、金具接触面積Ssの算出に用いられるネジ部の先端としては、複数のネジ部のうちの最も前方向Df側のねじ部の先端を採用すればよい(例えば、図11の例では、第1ネジ部57dの先端57fd)。また、パラメータSs、Vvの算出に用いられるネジ部の後端としては、複数のネジ部のうちの最も後方向Dfr側のねじ部の後端を採用すればよい(例えば、図11の例では、第2ネジ部57uの後端57ru)。
【0106】
また、中心電極の側面(軸線CLに垂直な方向側の面)と、接地電極とが、放電用のギャップを形成してもよい。また、放電用のギャップの総数が2以上であってもよい。また、中心電極20と端子金具40との間には、磁性体が配置されてもよい。また、抵抗体74が省略されてもよい。
【0107】
いずれの場合も、図2(A)、図3の1番から13番のサンプルや、図7の19番から23番のサンプルのように、主体金具のネジ部の呼び径Dnが12mm以下である細い点火プラグを用いる場合であっても、適切に、不具合(例えば、プレイグニション)を抑制できる。
【0108】
(2)点火プラグからパッキン8(図1)が省略されてもよい。この場合、絶縁体10の縮外径部16は、主体金具50の縮内径部56に、直接的に接触すればよい。ここで、金具露出面積Saの算出に用いられる第1位置P1としては、主体金具50の内周面のうちの絶縁体10の外周面と接触する部分の最も前方向Df側の端の位置を採用すればよい。この場合、通常は、第1位置P1は、主体金具50の縮内径部56と絶縁体10の縮外径部16との接触部分の最も前方向Df側の端の位置である。また、パラメータSb、Vc、Se、Fの算出に用いられる第3位置P3としては、絶縁体10の外周面のうち主体金具50の内周面と接触する部分の最も前方向Df側の端の位置を採用すればよい。この場合、通常は、第3位置P3は、主体金具50の縮内径部56と絶縁体10の縮外径部16との接触部分の最も前方向Df側の端の位置である。図11の点火プラグ100aのように他の構成を有する点火プラグに関しても、同様である。
【0109】
(3)図10(A)、図10(D)の実施形態において、制御対応関係によって表される温度Tと開度Voとの対応関係としては、図10(C)に示す対応関係に代えて、他の種々の対応関係を採用可能である。例えば、温度Tの上昇に応じて、開度Voが単調増加してもよい。また、温度Tの変化に対して、開度Voが階段状に変化してもよい。いずれの場合も、温度Tが高いほど、開度Voが大きくなることが好ましい。ここで、温度Tが低い場合には、開度Voがゼロに設定されてもよい。すなわち、点火プラグ100を冷却する流路(例えば、図9のヘッド流路661、662)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量が、ゼロに調整されてもよい。例えば、図10(C)の第1開度Vo1がゼロであってもよい。
【0110】
また、点火プラグ100を冷却する流路の流量を制御する流量制御部の構成としては、制御装置500とバルブ740を含む構成に代えて、流量を制御可能な任意の構成を採用可能である。例えば、図10(D)の実施形態において、バルブ740を省略し、代わりに、第1ポンプ731に、駆動源としての電気モータを設けてもよい。制御装置500のプロセッサ510は、温度Tが高いほど電気モータの回転速度が速くなるように、第1ポンプ731の電気モータを制御してよい。この場合、制御装置500と、電気モータを備える第1ポンプ731と、の全体が、流量制御部に相当する。
【0111】
一般的には、流量制御部の構成としては、温度Tが閾値Tt以下である場合には、温度Tが閾値Ttよりも高い場合と比べて、点火プラグを冷却する流路(例えば、図9のヘッド流路661、662や、図11のヘッド流路661a)を流れる冷却水の単位時間当たりの流量を小さくすることが可能な任意の構成を採用可能である。なお、流路を流れる冷却液としては、水に代えて、任意の液体(例えば、油)を採用可能である。
【0112】
(4)点火プラグを冷却する冷却液路の構成としては、図9の流路661、662の構成や、図11の流路661aの構成に代えて、点火プラグを冷却可能な任意の構成を採用可能である。例えば、点火プラグの軸線CLに平行な方向の位置が、点火プラグの主体金具と重なり、かつ、軸線CLに垂直な方向の位置が、シリンダ639と重なるような位置を通る流路を採用すれば、その流路を流れる冷却液は、点火プラグを適切に冷却できる。いずれの場合も、点火プラグを冷却する冷却液路は、シリンダヘッド610のみを通るように構成されていてもよく、シリンダヘッド610とシリンダブロック620との両方を通るように構成されていてもよい。
【0113】
(5)点火プラグの構成と内燃機関の構成としては、図9図11に示す構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、図11の内燃機関600aの取付孔680aに、図1図9の点火プラグ100を装着してもよい。この場合も、主体金具50のネジ部57の一部(具体的には、孔形成部688aの第1ネジ部682dと第2ネジ部682uとの間に位置する部分)は、ヘッド流路661a内に露出して、直接的に、冷却液に接触する。
【0114】
また、内燃機関システムの構成としては、図10(A)、図10(D)に示すシステム1000A、1000Bの構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、図10(A)、図10(D)に示すシステム1000A、1000Bにおいて、内燃機関600の代わりに、図11の内燃機関600aを用いてもよい。
【0115】
(6)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図10(A)、図10(D)の制御装置500によるバルブ740の開度Voを制御する機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0116】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0117】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、点火プラグに、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0119】
8...先端側パッキン、10...絶縁体、10e...後端、10f...先端部、10i...内周面、10o...外周面、10q...開口、10x...露出部分、10z...断面、11...縮内径部、12...貫通孔(軸孔)、13...後端側胴部、14...大径部、15...先端側胴部、16...縮外径部、17...先端、19...脚部、20...中心電極、20o...外周面、21...外層、22...芯部、24...頭部、26...縮外径部、27...軸部、29...第1チップ、30...接地電極、31...外層、32...内層、33...基端部、34...先端部、37...本体部、39...第2チップ、40...端子金具、41...軸部、48...鍔部、49...キャップ装着部、50、50a...主体金具、50f...先端側部分、50i...内周面、50x...露出部分、51...工具係合部、52...胴部、53...カシメ部、54...鍔部、55...先端面、56...縮内径部、57...ネジ部、57d...第1ネジ部、57f...先端、57r...後端、57u...第2ネジ部、57fd...先端、57ru...後端、58...座屈部、59...貫通孔、61...リング部材、70...タルク、72...第1シール部、74...抵抗体、76...第2シール部、90...ガスケット、100、100a...点火プラグ、200...接続部、300...先端側仮想部分、300f...先端側空間部分、300m...先端側部材部分、500...制御装置、510...プロセッサ、520...揮発性記憶装置、530...不揮発性記憶装置、535...プログラム、540...インタフェース、600、600a...内燃機関、610...シリンダヘッド、620...シリンダブロック、630...燃焼室、631...吸気ポート、632...排気ポート、639...シリンダ、641...吸気バルブ、642...排気バルブ、643...第1駆動部、644...第2駆動部、651...吸気路、652...排気路、660...ヘッド流路、661a...ヘッド流路、661...第1ヘッド流路、662...第2ヘッド流路、663...第3ヘッド流路、664...第4ヘッド流路、670...ブロック流路、671...第1ブロック流路、672...第2ブロック流路、680、680a...取付孔、682...ネジ部、682d...第1ネジ部、682u...第2ネジ部、688、688a...孔形成部、691...ピストン、692...コネクティングロッド、700...ラジエータ、710...第1ラジエータ、720...第2ラジエータ、730...ポンプ、731...第1ポンプ、732...第2ポンプ、740...バルブ、750...温度センサ、781...第1流路、782
...第2流路、783...第3流路、784...第4流路、785...第5流路、786...第6流路、791...第1流路、792...第2流路、793...第3流路、794...第4流路、900A、900B...制御システム、910A...流量制御部、1000A、1000B...内燃機関システム、g...ギャップ、CL...中心軸(CL)、Df...先端方向(前方向)、Dfr...後端方向(後方向)
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