特許第6559373号(P6559373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6559373
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】複合電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20190805BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/36 C
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-13105(P2019-13105)
(22)【出願日】2019年1月29日
【審査請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】107105391
(32)【優先日】2018年2月14日
(33)【優先権主張国】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−136513(JP,A)
【文献】 特開2016−127005(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133566(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/073038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質、
前記活性物質を覆う人工不動態膜、
前記人工不動態膜を覆い、第1の固体電解質および第1のゲルまたは液体電解質を含み、前記第1ゲルまたは液体電解質の含有量は、前記第1の固体電解質の含有量よりも多い中間層、および、
前記中間層を覆い、第2の固体電解質および第2のゲルまたは液体電解質を含み、前記第2の固体電解質の含有量は、前記第2のゲルまたは液体電解質の含有量よりも多い外側層、を含む、
複合電極材料。
【請求項2】
前記人工不動態膜の厚さは、100ナノメートル未満であることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項3】
前記人工不動態膜は、前記活性物質を完全に覆う固体電解質で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項4】
前記人工不動態膜は、非固体電解質であることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項5】
前記人工不動態膜は、導電性材料、リチウム非含有セラミック材料およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記導電性材料は、炭素質材料または導電性ポリマーを含み、前記リチウム非含有セラミック材料は、ジルコニア、シリカ、アルミナ、チタニア、または酸化ガリウムを含むことを特徴とする、請求項4に記載の複合電極材料。
【請求項6】
前記中間層の前記第1の固体電解質および前記外側層の前記第2の固体電解質は、結晶質またはガラス質の固体電解質であることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項7】
前記中間層の厚さは、500ナノメートル以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項8】
前記外側層と前記人工不動態膜との距離は、500ナノメートルよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項9】
前記中間層の前記第1のゲルまたは液体電解質の容積は、前記中間層の前記第1のゲルまたは液体電解質および前記第1の固体電解質の総容積の50%よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項10】
前記中間層の前記第1のゲルまたは液体電解質の容積は、前記中間層の前記第1のゲルまたは液体電解質および前記第1の固体電解質の総容積の90%よりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の複合電極材料。
【請求項11】
前記外側層の前記第2の固体電解質の容積は、前記外側層の前記第2のゲルまたは液体電解質および前記第2の固体電解質の総容積の50%よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項12】
前記外側層の前記第2の固体電解質の容積は、前記外側層の前記第2のゲルまたは液体電解質および前記第2の固体電解質の総容積の90%よりも大きいことを特徴とする、請求項11に記載の複合電極材料。
【請求項13】
リチウム電池の正極または/および負極としての役目を果たすことを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【請求項14】
前記中間層の前記第1のゲルまたは液体電解質および前記第1の固体電解質は、約500ナノメートル未満の直径を有する穴に充填されており、前記外側層の前記第2のゲルまたは液体電解質および前記第2の固体電解質は、約500ナノメートルよりも大きな直径を有する穴に充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合電極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料に関し、特にリチウムイオン二次電池系に適した複合電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のリチウムイオン二次電池では、リチウムイオン輸送の媒体として、通常は液体電解質が使用される。しかしながら、液体電解質には揮発性の性質があるため、人体および環境に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、液体電解質は可燃性であるため、電池ユーザには大きな安全性の懸念もある。
【0003】
さらに、リチウム電池の不安定化の1つの原因は、負極の表面活性が大きく、正極の電圧が高いことである。液体電解質が電極と直接接触すると、その間の界面が不安定化され、発熱反応が生じて不動態化層が形成される。そこでの反応は、液体電解質およびリチウムイオンを消費し、熱を発生させることになる。局所的な短絡が生じると、局所温度が急速に上昇する。不動態化層は不安定になり、熱を放出することになる。この発熱反応は累積的であり、電池全体の継続的な温度上昇を引き起こす。
電池使用の安全性懸念の1つは、電池温度が開始温度(トリガー温度)まで上昇すると、熱暴走が始まり、電池の発火または爆発を引き起こしてしまうことである。これは、使用にあたって、大きな安全上の問題となる。
【0004】
近年、固体電解質が研究の焦点となっている。固体電解質のイオン電導率は、液体電解質のイオン電導率と同様であるが、蒸発および燃焼という特性は持たない。また、固体電解質と活性物質の表面との界面は、化学的または電気化学的に関わらず、比較的安定している。しかしながら、液体電解質とは異なり、固体電解質と活性物質との接触面積が非常に少なく、接触表面が不良であり、電荷移動速度定数が低い。したがって、正極および負極との活性物質の電荷移動界面抵抗は大きい。これは、リチウムイオンの効率的な伝達には逆効果である。したがって、液体電解質を完全に固体電解質と置き換えることは依然として困難である。
【0005】
したがって、上述の問題を解決するために複合電極材料を向上させる必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述の欠点を克服するための複合電極材料を提供することである。液体電解質と活性物質との接触を効率的に防止するために、人工不動態膜(APF)を使用する。その結果、不必要なリチウムイオン消費およびリチウム電池の消耗を回避できる。
【0007】
また、本発明の別の目的は、異なる割合の固体電解質およびゲルまたは液体電解質で構築された中間層および外側層を含む複合電極材料を提供することである。その結果、固体電解質と活性物質とが直接接触することにより引き起こされる、高い電荷移動の抵抗および接触表面の不良という問題が解消される。有機溶媒の量が低減され、電池の安全性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を実現するため、本発明は、活性物質、人工不動態膜、中間層、および外側層を含む複合電極材料を開示する。人工不動態膜は活性物質を覆い、中間層および外側層は順に外側を覆う。中間層および外側層は両方とも、固体電解質およびゲルまたは液体電解質を含む。中間層では、ゲルまたは液体電解質の含有量が、固体電解質の含有量よりも多い。外側層では、固体電解質の含有量が、ゲルまたは液体電解質の含有量よりも多い。活性物質は、その表面が人工不動態膜でコーティングされ、電解質と活性物質との接触が効果的に阻止され、リチウム電池の消耗に結び付く場合があるリチウムイオンの不必要な消費が防止される。また、中間層および外側層は、異なる濃度比で形成される。したがって、より良好なイオン伝導が達成されると共に、電荷移動抵抗が低減され、有機溶媒の量が低減される。ゲルまたは液体電解質の量が、著しく低減される。固体電解質と活性物質とが直接接触することにより引き起こされる、高い電荷移動の抵抗および接触表面の不良という問題は解消される。より良好なイオン伝導が達成されると共に、安全性が向上する。
【0009】
本発明の応用可能性のさらなる範囲は、以下に示されている詳細な記載から明白になるだろう。しかしながら、当業者であれば、この詳細な記載から、本発明の趣旨および範囲内の種々の変更および修正が明白になるため、詳細な記載および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示すものの、例示のためのものに過ぎないことが理解されるべきである。
【0010】
本発明は、以下で例示のために示されているに過ぎず、したがって本発明を限定するものでない詳細な記載からより完全に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の複合電極材料の概略図である。
図2】本発明の複合電極材料を部分的に拡大した概略図である。
図3】本発明の複合電極材料の別の実施形態を部分的に拡大した概略図である。
図4】本発明のリチウム電池に適した複合電極材料の概略図である。
図5】本発明のリチウム電池に適した複合電極材料の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、複合電極材料を提供する。固体電解質およびゲルまたは液体電解質は両方とも、それ自体に利点および欠点がある。現在では、液体電解質を完全に固体電解質と置き換えることは依然として困難である。したがって、より適切な打開策は、固体電解質およびゲルまたは液体電解質を混合することである。
異なる割合で分布構成することにより、これら2種類の電解質の両方の利点を利用するとともに、これら電解質の欠点を除去または最小限に抑えて、より良好なイオン伝導を達成する。また、活性物質およびゲルまたは液体電解質は、不動態保護膜を形成すると考えられる。ゲルまたは液体電解質と活性物質との接触を効率的に防止するために、人工不動態膜(APF)を使用する。下記は、活性物質構造および電極構造の説明である。
【0013】
図1〜3を参照されたい。図1〜3は、本発明の複合電極材料の概略図、本発明の複合電極材料を部分的な拡大した概略図、および本発明の複合電極材料の別の実施形態を部分的に拡大した概略図である。
本発明の複合電極材料10は、活性物質11、中間層12、および外側層13を含む。人工不動態膜(APF)101が、活性物質11の外側表面に形成されており、活性物質11を覆って、ゲルまたは液体電解質と活性物質11との接触を防止または低減する。したがって、人工不動態膜(APF)101は、中間層とみなされる場合がある。APF101は、イオン移動に基づいて非固体電解質系および固体電解質系を含む。APF101の厚さは、実質的に100ナノメートル未満である。非固体電解質系は、導電性材料、リチウム非含有セラミック材料、およびそれらの組合せを含んでいてもよい。導電性材料は、炭素質材料または導電性ポリマーを含み、リチウム非含有セラミック材料は、ジルコニア、シリカ、アルミナ、チタニア、または酸化ガリウムを含む。さらに、APF101がリチウム非含有セラミック材料で構成されている場合、APF101は、機械的堆積、物理的/化学的蒸着、またはそれらの組合せにより形成できる。
機械的堆積の場合、ボールミルまたは流動床を使用することができる。APF101の厚さは、実質的に100ナノメートル未満である。また、物理的/化学的蒸着の場合、原子スケールで積層された膜構造が形成される。APF101の厚さは、実質的に20ナノメートル未満である。また、APF101が導電性材料で構成されている場合、APF101は、同じ方法により形成できる。
【0014】
非固体電解質系で構成されているAPF101では、APF101の厚さがより厚い場合、イオン移動の媒体として、さらなる電解質が必要とされる。原子スケール積層膜構造など、APF101の厚さがより薄い場合、イオン移動は、直接的に生じ得る。
【0015】
固体電解質系は、酸化物に基づく固体電解質、スルフィド固体電解質、リチウム−アルミニウム合金固体電解質、またはLiN固体電解質を含んでいてもよく、それらは結晶質であってもよくまたはガラス質であってもよい。APF101が炭素質材料の導電性材料で構成されている場合、炭素質材料は、グラファイトまたはグラフェンまたは導電性ポリマーであってもよい。実際、図2の構造は、図3の構造よりも良好である。また、図2では、APF101は、好ましくは、固体電解質系で構成されている。
【0016】
上述のように、イオン移動に基づいて、APF101は、活性物質11を完全に覆い(図2)、又はAPF101は、ゲルまたは液体電解質が活性物質11の表面と接触することを可能にするための細孔を有する(図3)。あるいは両者の組合せであってもよい。
【0017】
例えば、図2を参照する。APF101は、活性物質11を完全に覆って、ゲルまたは液体電解質と活性物質11との接触を防止する。
例えば、図3を参照する。APF101は、ゲルまたは液体電解質が活性物質11の表面と接触することを可能にするための細孔を有する。APF101は、粉末堆積非固体電解質系により形成されてもよい。粉末堆積構造は、ゲルまたは液体電解質と活性物質11との接触を低減するように細孔を形成できる。また、粉末堆積構造は、活性物質11の表面に形成される固体電解質界面(SEI)層を支持して、化学的、電気化学的、および熱的安定性を増加させることになる。したがって、SEI層の亀裂および再構築を回避して、リチウムイオン消費を減少できる。図2〜3では、APF101の厚さは、約数ナノメートル〜数十ナノメートルである。
【0018】
次に、以下の段落では、APF101の外側にある中間層12および中間層12の外側にある外側層13を説明する。
中間層12は、第1の固体電解質122および第1のゲルまたは液体電解質121を含み、外側層13は、第2の固体電解質132および第2のゲルまたは液体電解質131を含む。構造の理解を容易にするために、まず、電極の製造プロセスを説明する。一般的に言えば、電極10を、活性物質11、導電性材料、結合剤、ならびに有機溶媒およびリチウム塩を含むゲルまたは液体電解質と混合する。本発明では、APF101は、活性物質11の表面に形成される。APF101を有する活性物質11を、導電性材料、結合剤、ならびに有機溶媒およびリチウム塩を含むゲルまたは液体電解質と混合する。その後、ゲルまたは液体電解質を抽出し、ゲルまたは液体電解質の第1の容積M1を得る。
活性物質11を導電性材料および結合剤と混合した後、粒子のサイズおよび材料特性に起因して、様々なサイズを有する多数の穴が生じることになる。一般的に、スラリー溶媒および活性物質11は、乾燥中により大きな穴を形成するだろう。穴の直径は、約500ナノメートルよりも大きく、人工不動態膜101との距離は、500ナノメートルよりも大きい。活性物質11をより多くの導電性材料およびより多くの結合剤と混合すると、活性物質11の領域には、より小さな穴が形成されるだろう。穴の直径は、約500ナノメートル未満であり、活性物質10とより接近しており、人工不動態膜101から外側に約500ナノメートルの距離まで分布する。また、より小さな穴の総容積は、より大きな穴の総容積よりも小さい。好ましくは、より小さな穴の総容積は、より大きな穴の総容積よりも非常に小さい。
【0019】
より大きな穴または活性物質11から非常に遠くの穴を、より多くのまたはより高濃度の第2の固体電解質132で充填する。より小さな穴または活性物質11により近い穴を、より少ないまたはより低濃度の第1の固体電解質122で充填する。その後、第1のゲルまたは液体電解質121および第2のゲルまたは液体電解質131を距離に従って充填し、ゲルまたは液体電解質の第2の容積M2を得る。したがって、第1の固体電解質122および第1のゲルまたは液体電解質121を、APF101から約500ナノメートル以内の範囲の穴、および/または500ナノメートル未満の直径を有する穴に充填して、中間層12を形成する。
第2の固体電解質132および第2のゲルまたは液体電解質131を、約500ナノメートルを超える距離にある穴、および/または500ナノメートルよりも大きな直径を有する穴に充填して、中間層13を形成する。これら図面、例えば図1〜3における、活性物質11および関連する分布は、概略に過ぎず、材料の分布を限定することは意図されていない。ゲルまたは液体電解質により占められる一部の穴は、第1の固体電解質122および第2の固体電解質132で充填されているため、第2の容積M2は、第1の容積M1より大きくなることはない。好ましくは、第2の容積M2は、第1の容積M1よりも非常に少なく、ゲルまたは液体電解質の使用量が著しく低減されることになる。
第1のゲルまたは液体電解質121および第2のゲルまたは液体電解質131は、同じまたは異なる材料である。第1の固体電解質122および第2の固体電解質132は、同じまたは異なる材料である。
【0020】
したがって、中間層12では、第1のゲルまたは液体電解質121の含有量は、第1の固体電解質122の含有量よりも多い。外側層13では、第2の固体電解質132の含有量は、第2のゲルまたは液体電解質131の含有量よりも多い。中間層12および外側層13は両方とも、電極の形成過程において、導電性材料および結合剤を含んでいることは言うまでもない。一般的に、中間層12の第1のゲルまたは液体電解質121の容積は、中間層12の第1のゲルまたは液体電解質121および第1の固体電解質122の総容積の50%よりも大きく、好ましくは90%よりも大きい。
外側層13の第2の固体電解質132の容積は、外側層13の第2のゲルまたは液体電解質131および第2の固体電解質132の総容積の50%よりも大きく、好ましくは90%よりも大きい。したがって、安全性の向上、ゲルまたは液体電解質の量の低減、ならびにより良好なイオン伝導、ならびに固体電解質と活性物質との接触表面がより少なく不良であることおよび高い電荷移動の抵抗という問題の解決がいずれも達成される。
【0021】
中間層12は、活性物質11(またはAPF101)と直接接触し、イオンを移動させる。中間層12が、主に固体電解質で構成されている場合、固体電解質と活性物質との接触表面がより少なく不良であることおよび高い電荷移動の抵抗など、従来技術と同じ問題に直面することになるだろう。したがって、中間層12は、主にゲルまたは液体電解質で構成される。
第1のゲルまたは液体電解質121の含有量は、第1の固体電解質122の含有量よりも多い。より良好な無指向性イオン伝導をもたらすには、中間層12の第1のゲルまたは液体電解質121の容積は、中間層12の第1のゲルまたは液体電解質121および第1の固体電解質122の総容積の50%よりも大きく、好ましくは90%よりも大きい。また、第1のゲルまたは液体電解質121と活性物質11(またはAPF101)との接触表面の状態は、固体電解質と活性物質との接触表面よりも非常に良好である。電荷移動界面抵抗が低減される。
中間層12と人工不動態膜101との距離は、500ナノメートル以下であるか、または約500ナノメートル未満の直径を有する穴には、中間層12の第1のゲルまたは液体電解質121および第1の固体電解質122が充填されている。
【0022】
外側層13と人工不動態膜101との距離は、500ナノメートルよりも大きいか、または約500ナノメートルよりも大きな直径を有する穴には、外側層13の第2のゲルまたは液体電解質131および第2の固体電解質132が充填されている。したがって、中間層12は、主に固体電解質で構成される。
外側層13の第2の固体電解質132の容積は、外側層13の第2のゲルまたは液体電解質131および第2の固体電解質132の総容積の50%よりも大きく、好ましくは90%よりも大きい。有機溶媒(ゲルまたは液体電解質)の使用量が低減され、より良好な熱的性能が得られ、安全性が維持される。外側層13では、イオン伝導の方向は、固体電解質の粒子の接触により決定される。したがって、イオン伝導は、方向が特定であり、リチウムイオンの高速および大量輸送の実施を可能にする。
【0023】
中間層12および外側層13の固体電解質は、APF101の上述の固体電解質と同じであってもよい。
【0024】
上記の固体電解質のさらなる材料例を下記に記載する。スルフィド固体電解質は、ガラス質LiS−P、結晶質Lix’y’PSz’、ガラス質セラミックLiS−P、またはそれらの組合せであってもよい。
式中、Mは、Si、Ge、Sn、またはそれらの組合せであり、x’+4y’+5=2Z’、0≦y’≦1である。
【0025】
ガラス質LiS−Pは、ガラス質70LiS−30P、75LiS−25P、80LiS−20P、またはそれらの組合せであってもよい。ガラス質セラミックLiS−Pは、ガラス質セラミック70LiS−30P、75LiS−25P、80LiS−20P、またはそれらの組合せであってもよい。Lix’y’PSz’は、LiPS、LiSnS、LiGeS、Li10SnP12、Li10GeP12、Li10SiP12、Li10GeP12、Li11、L9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、β−LiPS、LiSI、Li11、0.4LiI−0.6LiSnS、LiPSCl、またはそれらの組合せであってもよい。
【0026】
酸化物に基づく固体電解質は、蛍石構造の酸化物に基づく固体電解質であってもよい。例えば、モル分率が3〜10%のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)である。酸化物に基づく固体電解質は、ドーピングLaGaOなどの、ABO酸化物に基づく固体電解質であってもよい。酸化物に基づく固体電解質は、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12であってもよく、式中0≦x≦1および0≦y≦1である。さらに、酸化物に基づく固体電解質は、LiO−Al−SiO−P−TiO、LiO−Al−SiO−P−TiO−GeO、Na3.3Zr1.7La0.3SiPO12、Li3.5Si0.50.5、Li3xLa2/3xTiO、LiLaZr12、Li0.38La0.56Ti0.99Al0.01、Li0.34LaTiO2。94であってもよい。
【0027】
無論、上で詳細に列挙されていない残りの固体電解質も使用できる。上記のリストは、例示に過ぎず、本発明を前述の固体電解質に限定することは意図されていない。
【0028】
電池系に実際に適用する場合、本発明の複合電極材料10は、正極など、1つの電極としての役目を果たしてもよい。図4を参照する。複合電極材料10、別の電極30、セパレータ42、2つの電流コレクタ41、43が、電池系に形成されている。さらに、正極および負極の2つの電極の両方に、本発明の複合電極材料10が使用されていてもよい。図5を参照されたい。
【0029】
このように、本発明では、液体電解質と活性物質との接触を効率的に防止するために、人工不動態膜(APF)が使用されている。したがって、不必要なリチウムイオン消費およびリチウム電池の消耗を回避できる。また、中間層および外側層は、異なる固体電解質およびゲルまたは液体電解質の割合で構築される。外側層は、リチウムイオンの高速移動を可能にし、中間層は、無指向性イオン伝導を提供できる。したがって、より良好なイオン伝導が達成される。
有機溶媒(ゲルまたは液体電解質)の使用量が低減され、より良好な熱的性能が得られ、安全性が維持される。さらに、固体電解質およびゲルまたは液体電解質の二重電解質系は、イオン伝導を効果的に増加できる。特に、固体電解質が、酸化物に基づく固体電解質である場合、高い化学的安定性が維持され、イオン電導率および電極適合性が、この二重電解質系により増加される。
【0030】
本発明を以上のように記載したが、本発明を数多くの様式に変更できることは自明であろう。そのような変更は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者であれば自明であるようなそのような改変はすべて、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【要約】      (修正有)
【解決手段】活性物質11は、その表面が人工不動態膜101でコーティングされており、人工不動態膜の外側層13の中間層12および外側層が存在する。中間層および外側層は両方とも、ゲル/液体電解質および固体電解質で構成されているが、濃度比が異なる。
【効果】電解質と活性物質との接触が効果的に阻止され、リチウムイオンの不必要な消費が防止される。より良好なイオン伝導が達成されると共に、電荷移動抵抗が低減され、有機溶媒の量が低減される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5