特許第6559384号(P6559384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6559384
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】合成樹脂表皮材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20190805BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   D06N3/00
   B32B27/12
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-519421(P2019-519421)
(86)(22)【出願日】2018年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2018038681
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-20513(P2018-20513)
(32)【優先日】2018年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢治
(72)【発明者】
【氏名】石山 倫行
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−81377(JP,A)
【文献】 特開昭58−65074(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/006556(WO,A1)
【文献】 特開平2−61181(JP,A)
【文献】 特開平5−25780(JP,A)
【文献】 特開2006−233392(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/033437(WO,A1)
【文献】 特開平10−266079(JP,A)
【文献】 特開平6−264369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00−7/06
B32B1/00−43/00
B29C59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、前記基布の一方の面に、接着剤層と、軟化点が145℃以上の樹脂を含む表皮層とをこの順に有し、表皮材形成用積層体を形成する工程と、
得られた表皮材形成用積層体に対して、前記表皮層側に凹凸を有するエンボスロールを、前記基布側にバックアップロールを、それぞれ接触させ、前記エンボスロールの加熱温度をA(℃)とし、前記バックアップロールの加熱温度をB(℃)とした場合、AとBとが下記条件(I)、条件(II)及び条件(III)を満たす温度条件下でエンボス加工し、前記表皮材形成用積層体に、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部を形成する工程と、を有する合成樹脂表皮材の製造方法。
条件(I):130℃≦A≦180℃
条件(II):180℃≦B≦250℃
条件(III):表皮層に含まれる樹脂の軟化点−15℃≦A<表皮層に含まれる樹脂の軟化点
【請求項2】
前記軟化点が145℃以上の樹脂が、ウレタン樹脂である請求項1に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項3】
前記基布が、融点が150℃以上260℃以下の合成繊維を含む請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項4】
前記表皮層の、前記接着剤層側とは反対側の面上に、樹脂を含む表面処理層を形成する工程をさらに有し、
前記表面処理層に含まれる樹脂は、軟化点が、前記表皮層に含まれる樹脂の軟化点より高い樹脂である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項5】
前記エンボス加工により形成された凹部の底面が、前記表皮材形成用積層体の表皮層側から接着剤層を介して積層された基布内に至る深さである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項6】
前記エンボス加工する工程に先立ち、前記表皮層の、前記接着剤層側とは反対側の面上に、凹部底面と凸部頂面との距離が150μm以下のシボ模様を形成する工程をさらに有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項7】
前記合成樹脂表皮材が、乾式樹脂表皮材又は湿式樹脂表皮材である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項8】
前記合成樹脂表皮材が湿式樹脂表皮材であり、前記湿式樹脂表皮材における表皮層をバフ加工する工程をさらに含む請求項7に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項9】
前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材の厚さ方向に、前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材に対し、前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材を貫通する複数の孔を穿孔する工程をさらに有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合成樹脂表皮材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネル、ドアトリム、座席、天井などの自動車内装部品、トリム、座席、天井などの鉄道車輌及び航空機内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、壁装材などには、天然皮革や繊維製シートに代えて、耐久性に優れる合成皮革が多用されている。このような合成皮革は、最表面に天然皮革に類似した凹凸模様、即ち、絞(シボ)模様(grain pattern)を有している。
近年、自動車用シート、椅子等に用いる合成皮革として、従来汎用されている皮革様のシボ模様としての浅い凹凸を有する合成皮革よりも、さらに深い凹凸を有する立体形状の表皮材が求められている。
また、例えば、自動車用内装材等に用いる場合には、長期の耐久性が求められ、長期間深い凹凸を有する立体形状が保持されることが必要となる。深い凹凸を有する合成樹脂表皮材としては、クッション層としての厚みのあるウレタンフォーム層を形成し、形成されたウレタンフォーム層をエンボス加工した深い凹凸を有する層を備えるものが一般的である。しかし、深い凹凸を形成する目的でウレタンフォーム層を厚くした場合、自動車用シートなどの場合には、深い凹凸に起因して耐引っ掻き性能が劣り、耐久性が十分ではない場合がある。
【0003】
深い凹凸を有する表皮材としては、例えば、凹凸模様を深くはっきりと形成させることができ、長期間使用しても凹凸形状の変形の生じない凹凸表皮材の製造方法として、定荷重伸びが2%〜50%である表地に、特定の物性を有する軟質ポリウレタンフォーム材を積層一体化してラミネートシートを得た後、上下一対の熱盤間に、ラミネートシートと、型押部が多数個突設された成形型とを配置して、熱プレスを行う方法が提案されている(特開2003−326598号公報参照)。
また、加熱されたエンボスロールと、エンボスロールの受けロールとの間に、長尺材を通過させてエンボスロールのベース面から立設するように形成した凸部を、長尺材表面を押圧することによって、長尺材表面にエンボス模様を形成する際に、エンボスロールのベース面に長尺材凸部表面が接触しない条件でエンボス加工を行う、長尺材の製造方法が提案されている(特開2013−59881号公報)。
外観を損なわない表皮材の製造方法として、ベース面に型押部が突設された加熱エンボスロールと、該加熱エンボスロールに対向配置されるヒートロールとの間に前記積層シートを通過させて、前記クッション材を加熱により圧縮して前記積層シートの裏面に凹み形状を形成し、前記凹み形状における圧縮されたクッション材に引っ張られるようにして、前記表地における前記凹み形状に対応する位置に凹部を形成する方法が提案されている(特開2016−147432号公報)。ここで、加熱温度条件としては、ヒートロールの加熱温度を、クッション材に主成分として含まれる合成樹脂の軟化点温度より高く、かつ、クッション材に主成分として含まれる合成樹脂の溶融温度より低く設定することが好ましいとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開2003−326598号公報に記載の製造方法により得られた表皮材は、基布側にエンボス加工を行うため、凹凸の形状保持性に優れるが、凹凸の形状が基布の物性のみに依存するため、深く立体的であり、且つ、凹凸のR面がシャープな意匠性を達成し得ないという問題がある。
また、特開2013−59881号公報に記載の製造方法では、長尺材にエンボスロール底面が接触しないため、熱による形状の欠陥は防止できるが、特開2003−326598号公報に記載の技術と同様に、深く立体的であり、意匠性に優れた表皮材を得るには至っていない。
特開2016−147432号公報に記載の方法では、設計値どおりの凹凸を形成するためには、圧縮条件の調整が必要であり、且つ、ヒートロールの加熱温度を、クッション材に主成分として含まれる合成樹脂の軟化点温度より高く設定することで、凹凸形状側の樹脂が軟化してしまい、シャープな凹凸形状を形成し難いという問題がある。
【0005】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、深く立体的な凹凸模様を有し、経時的な凹凸模様の変形が抑制され、耐久性が良好な合成樹脂表皮材を得ることができる合成樹脂表皮材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段は以下に示す実施形態を含む。
<1> 基布と、前記基布の一方の面に、接着剤層と、軟化点が145℃以上の樹脂を含む表皮層とをこの順に有し、表皮材形成用積層体を形成する工程と、得られた表皮材形成用積層体に対して、前記表皮層側に凹凸を有するエンボスロールを、前記基布側にバックアップロールを、それぞれ接触させ、前記エンボスロールの加熱温度をA(℃)とし、前記バックアップロールの加熱温度をB(℃)とした場合、AとBとが下記条件(I)、条件(II)及び条件(III)を満たす温度条件下でエンボス加工し、前記表皮材形成用積層体に、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部を形成する工程と、を有する合成樹脂表皮材の製造方法。
条件(I):130℃≦A≦180℃
条件(II):180℃≦B≦250℃
条件(III):表皮層に含まれる樹脂の軟化点−15℃≦A<表皮層に含まれる樹脂の軟化点
【0007】
<2> 前記軟化点が145℃以上の樹脂が、ウレタン樹脂である<1>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
<3> 前記基布が、融点が150℃以上260℃以下の合成繊維を含む<1>又は<2>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【0008】
<4>前記表皮層の、前記接着剤層側とは反対側の面に、樹脂を含む表面処理層を形成する工程をさらに有し、前記表面処理層に含まれる樹脂は、軟化点が、前記表皮層に含まれる樹脂の軟化点より高い樹脂である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
<5> 前記エンボスロール加工により形成された凹部の底面が、前記表皮材形成用積層体の表皮層側から接着剤層を介して積層された基布内に至る深さである<1>〜<4>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
<6> 前記エンボス加工する工程に先立ち、前記表皮層の、前記接着剤層側とは反対側の面上に、凹部底面と凸部頂面との距離が150μm以下のシボ模様を形成する工程をさらに有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【0009】
<7> 前記合成樹脂表皮材が、乾式樹脂表皮材又は湿式樹脂表皮材である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
<8> 前記合成樹脂表皮材が湿式樹脂表皮材であり、前記湿式樹脂表皮材における表皮層をバフ加工する工程をさらに含む<7>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
<9> 前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材の厚さ方向に、前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材に対し、前記表皮材形成用積層体又は前記合成樹脂表皮材を貫通する複数の孔を穿孔する工程をさらに有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、深く立体的な凹凸模様を有し、経時的な凹凸の変形が抑制され、耐久性が良好な合成樹脂表皮材を得ることができる合成樹脂表皮材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の合成樹脂表皮材の製造方法により得られた合成樹脂表皮材の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の合成樹脂表皮材の製造方法により得られた、表面に微細な凹凸模様をさらに有する合成樹脂表皮材の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「〜」を用いて記載した数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
さらに、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における「基布」とは、合成樹脂表皮材の基材として用いられる、繊維を含んで形成される布(生地)を指す。本明細書における「基布」は、織布、編布、及び不織布を含む。
本明細書において、皮革様模様に代表される、表皮層の一方の面上に形成された、凹部底面と凸部頂面との距離が150μm以下の凹部を有する凹凸模様を「シボ模様」と称し、エンボス加工により形成され、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部を有する「深い凹凸模様」と区別している。
【0013】
以下、本開示の合成樹脂表皮材の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明は態様の一例を示すものであり、これらに限定されず、主旨を超えない限り、種々の変型例を実施しうる。
【0014】
[合成樹脂表皮材の製造方法]
本開示の合成樹脂表皮材の製造方法(以下、単に「製造方法」と称することがある)は、基布と、前記基布の一方の面に、接着剤層と、軟化点が145℃以上の樹脂を含む表皮層とをこの順に形成し、表皮材形成用積層体を形成する工程(工程a)と、得られた表皮材形成用積層体(以下、「積層体」と称することがある)に対して、前記表皮層側に凹凸を有するエンボスロールを、基布側にバックアップロールを、それぞれ接触させ、前記エンボスロールの加熱温度をA(℃)、前記バックアップロールの加熱温度をB(℃)とした場合、AとBとが下記条件(I)、条件(II)及び条件(III)を満たす温度条件下でエンボス加工する工程(工程b)と、を有し、上記工程bにより工程aで得られた表皮材形成用積層体に、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部が形成された合成樹脂表皮材が得られる。
条件(I):130℃≦A≦180℃
条件(II):180℃≦B≦250℃
条件(III):表皮層に含まれる樹脂の軟化点−15℃≦A<表皮層に含まれる樹脂の軟化点
【0015】
本開示の製造方法における作用機構は明確ではないが、以下のように考えている。
本開示の製造方法により製造される合成樹脂表皮材(以下、「表皮材」と称することがある)は、表皮層に軟化点が145℃以上の樹脂を含むため、加熱エンボス加工を行う際に、熱による所望されない変形が抑制される。ここで、エンボス加工に用いる凹凸を有するエンボスロールの加熱温度に対し、バックアップロールの加熱温度をより高い条件に設定すること、及び、エンボスロールの加熱温度を、表皮層に含まれる樹脂の軟化点に対し、所定の範囲でより低く設定することで、表皮層のエンボス加工が良好に行われる。エンボス加工時に、積層体は、バックアップロール側の加熱により基布側から十分に加熱されるために、積層体に深い凹凸を形成する場合、基布側の温度が十分に高まる。このため、表皮材の深部、即ち、凹部の深さを250μm以上とする際、より好ましくは、凹部の深さを表皮層と接着剤層との厚みよりも大きくし、凹部の底面が基布内に至る深さとする際に、基布側から十分に加熱され、基布側近傍の凹部の形成性が良好となると考えられる。

上記加熱条件を達成することにより、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部を有する立体形状が形成され、設計値どおりのシャープで意匠性に優れた深い形状のエンボス加工を容易に行うことができ、得られた表皮材は経時的な劣化が生じ難いと推定される。
このため、通常、深い立体形状を形成するために用いられる厚みのある発泡樹脂層を有しない表皮材においても、深い立体形状が容易に形成され、且つ、厚みのある発泡樹脂層を有する表皮材に比較して、経時的な変形、劣化等がより抑制されるという利点をも有すると考えている。
【0016】
以下、本開示の合成樹脂表皮材の製造方法の一例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
図1は、本開示の一実施形態である合成樹脂表皮材の製造方法により得られた合成樹脂表皮材10の一例である概略断面図を示す。
合成樹脂表皮材10は、基布18の一方の面に、接着剤層16と、表皮層14とをこの順に有する。なお、図1において、表皮層14の、接着剤層16と接する側とは反対側の面に位置する表面処理層12は、後述するように、表皮材10の耐久性向上のために設けられる任意の層である。
図1に示すように、表皮材10における凹部は、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の深さで形成されている。図1に一例として示す好ましい態様では、凹部の底面は、表皮材10の表皮層14の厚みと接着剤層16の厚みとの総厚みよりも深く、基布18と接着剤層16との界面を超えて、基布18の内部に至る深さで形成されている。
図1に示すように、本開示の製造方法により得られる表皮材10は、好適には、基布18の内部に至る深い凹凸立体形状を有する表皮材とすることができる。
なお、接着剤層16は、後述するように、基布18と表皮層14との密着性をより向上させ、形成された凹凸の形状保持性に寄与する層である。
【0017】
<表皮材の構成>
(1.表皮層)
本開示の製造方法により得られる表皮材は、軟化点が145℃以上の樹脂を含む。樹脂の軟化点は145℃以上であり、150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。軟化点の上限には特に制限はないが、加工性の観点からは、180℃以下であることが好適である。
樹脂の軟化点は、JIS K 7196(2012年)に記載の軟化温度試験方法(TMA分析)により測定することができる。また、表皮層の形成に市販の樹脂を用いる場合、市販の樹脂のカタログに記載された樹脂の軟化点、即ち、カタログ値を採用する。
本開示において、表皮層等に含まれる樹脂としては、2種以上の樹脂を併用した場合には、表皮層に含まれる樹脂の軟化点は、2種以上の樹脂混合物の軟化点とする。
【0018】
表皮層に含まれる軟化点が145℃以上の樹脂としては、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
表皮層は、表皮材の基布とは反対側の面、即ち、表皮材の外観に影響を与える面の近傍に存在するため、加工性に加え、感触、外観などが良好であることが好ましい。
そのような観点からは、表皮層に含まれる樹脂としては、ウレタン樹脂が好ましい。
表皮層におけるウレタン樹脂は、軟化点が145℃以上であること以外は特に制限はなく、公知のウレタン樹脂を用いることができる。
【0019】
表皮層に含まれるウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、及びこれらの変性物等が挙げられる。なかでも、本開示の製造方法により得られる表皮層が、例えば、自動車用内装材、椅子等の長期耐久性が必要な用途に用いられる場合には、ポリカーボネート系ポリウレタンが好適である。
ポリウレタンは市販品を用いてもよく、例えば、DIC(株)製のクリスボン(登録商標、以下同様)NY−324等が好適に用いられる。
【0020】
表皮層に含まれるウレタン樹脂としては、JIS K 6772(1994年)に準じて測定した硬さが、100%モジュラスで49N/cm〜980N/cmであり、100%モジュラスで196N/cm〜588N/cmであるウレタン樹脂が好適である。
なお、ウレタン樹脂の硬さ(100%モジュラス)を調整する方法としては、例えば、柔らかくする場合には、ソフトセグメントとなるポリオール成分比率を増加するか、又はポリオールの分子量をより大きくする方法が挙げられる。また、ウレタン樹脂をより硬くする場合には、ハードセグメントとなるウレタン結合、ウレア結合を増加させるか、またヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の架橋剤を添加してエネルギーを付与し、架橋構造を形成する方法等が挙げられる。
ウレタン樹脂は、水系ポリウレタン、無溶剤系ポリウレタン、及び溶剤系ポリウレタンから、適宜選択して使用することができる。
【0021】
表皮層は、樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでいてもよい。
例えば、1種のウレタン樹脂のみを含んでもよく、互いに異なる複数のウレタン樹脂を含んでもよく、ウレタン樹脂と他の樹脂、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル等を含んでいてもよい。
【0022】
表皮層の接着剤層側とは反対側の面上には、所望により、予め皮革様等の任意の微細な凹凸模様、所謂絞(シボ)模様を設けることができる。本明細書におけるシボ模様は、凹部の深さが150μm以下の凹凸模様を指す。
【0023】
図2は、表皮層に予め微細な凹凸模様、即ち、シボ模様を設けた表皮材の一例を示す概略断面図である。図2に示す例では、合成樹脂表皮材20は、基布18の一方の面に、接着剤層16と、表皮層24とをこの順に有し、表皮層24の、接着剤層16と接する側とは反対側の面には、微細な凹凸模様を有する。即ち、合成樹脂表皮材20は、シボ模様を有する表皮層24を備える。図2に示す表皮材20の例では、表皮層24の接着剤層16と接する側とは反対側の面上には、任意の層である表面処理層22を有する。図2に示す合成樹脂表皮材20における表面処理層22は、表皮層24に予め形成されたシボ模様を反映した外観を有する。
図2に示す表皮材20の製造に際しては、表皮材20における表皮層24に予め微細な凹凸模様であるシボ模様を形成し、その後、後述するようにエンボス加工により、深い凹凸模様を形成する。ここで、表皮層24に含まれる樹脂の軟化点が145℃以上であることで、表皮層に形成されたシボ模様の保持性が良好となり、エンボス加工により形成された深い凹凸模様を有する表皮材20の表皮層24上に形成された微細なシボ模様がエンボス加工後も維持される。表皮材20における深い凹部は、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上であり、図2に示す如く、好ましくは、接着剤層16と基布18との界面を超えて、基布18の内部に至る深さで形成されている。
図2に示す例における本開示の製造方法により得られる表皮材20は、基布18の内部に至る深い凹凸が形成された立体形状を有し、且つ、表皮層24上に形成された表面処理層22を介して微細な凹凸模様、即ちシボ模様が観察され、複雑で意匠性に優れた表皮材となる。
【0024】
表皮層には、主剤となる樹脂に加え、効果を損なわない限りにおいて、意匠性、感触向上、強度向上等種々の機能を付与する目的で、合成樹脂表皮材に用いられる公知の添加剤を加えてもよい。
表皮層が含みうる添加剤としては、架橋剤、架橋促進剤、着色剤、感触向上剤、成膜助剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
例えば、表皮層が着色剤を含有することで、得られる表皮材の意匠性が向上する。また、表皮層に、リン系、ハロゲン系、無機金属系等の公知の難燃剤を添加することで表皮材の難燃性向上が図れる。
【0025】
表皮層の厚みは、合成樹脂表皮材の使用目的に応じて適宜選択される。本開示の合成樹脂表皮材は深い凹部を有するため、表皮層の厚みは、凹部を形成する際の加工性の観点から、20μm〜300μmの範囲が好ましく、30μm〜200μmの範囲がより好ましい。
なお、既述のシボ模様における凹部深さは、凹部底面と凸部頂面との距離が150μm以下であるため、上記の深い凹凸を有する立体形状を形成する場合においても、シボ模様の保持性が良好となる。
【0026】
なお、ウレタン樹脂を用いて、表皮層を形成する場合、乾式法で形成してもよく、湿式法で形成してもよい。
本開示における乾式法とは、基布に加工を施さず、ウレタン樹脂を含む表皮層と貼り合せる方法を指し、湿式法とは、基布に後述の湿式加工を施し、湿式ベースを形成した後、表皮層と貼り合せる方法を指す。
即ち、本開示の製造方法により得られる表皮材は、乾式樹脂表皮材であっても、湿式樹脂表皮材であってもよい。
乾式法により表皮層を形成した表皮材(即ち、乾式樹脂表皮材)は、軽量で柔軟性に優れる。
他方、基布に樹脂を含浸した後、表皮層を貼り合わせる湿式法により表皮層を形成した表皮材(即ち、湿式樹脂表皮材)は、含浸した樹脂により基布の強度が向上し、かつ、後述の貫通孔を穿孔する場合における基布の糸ほつれが抑制され、また、基布に含浸した樹脂が形成する多孔層により、柔らかい触感が得られる。
【0027】
(2.接着剤層)
本開示の製造方法により得られる合成樹脂表皮材は、基布と表皮層との間に接着剤層を有する。接着剤層は、基布と表皮層との密着性を向上させる。
接着剤層に含まれる樹脂、即ち、接着剤又は粘着剤の主材となる樹脂には、特に制限はなく、公知の接着剤又は粘着剤用の樹脂を用いることができる。
なかでも、接着剤層に含まれる樹脂としては、熱溶融温度が160℃以上の樹脂であることが好ましく、熱溶融温度が180℃以上の樹脂であることがより好ましい。
接着剤層に含まれる樹脂の熱溶融温度の上限には特に制限はないが、エンボス加工性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
接着剤層に含まれる樹脂の熱溶融温度が160℃以上であることで、表皮材形成用積層体を加熱エンボス加工する際に、接着剤層が溶融して基布へ浸み込むことによる表皮材の風合い低下が抑制される。また、接着剤層に含まれる樹脂の熱溶融温度が高いことで、形成された深い凹凸模様の保持性がより良好となる。
熱溶融温度は、JIS K7244−4(1999年)の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率(E’)より求める。試料である樹脂を、動的粘弾性測定装置を用いて、温度を変えながら貯蔵弾性率を測定し、試料を樹脂の軟化点以上に加熱したときに貯蔵弾性率(E’)の値が大きく低下した際の温度を熱溶融温度とする。
【0028】
接着剤層の形成に用い得る樹脂としては、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の接着剤に用いられる樹脂が挙げられる。
より具体的には、接着剤層は、例えば、(1)2液硬化型ポリエステル系接着剤、(2)2液硬化型ポリウレタン接着剤、(3)2液硬化型アクリル接着剤等の接着剤を含むことが好ましい。
なお、接着剤層の形成に使用される接着剤は市販品としても入手可能であり、例えば、接着剤No.3660(商品名)〔2液硬化型ポリウレタン接着剤:ノーテープ工業(株)〕、ダイカラック(登録商標)7250NT〔2液硬化型ポリエステル接着剤:大同化成工業(株)〕、クリスボンTA265〔2液硬化型ポリエーテル系接着剤:DIC(株)、クリスボンTA205〔ポリカーボネート系ポリウレタン接着剤:DIC(株)〕等が好適である。
【0029】
接着剤層の厚みは40μm〜100μmの範囲が好ましく、50μm〜90μmの範囲がより好ましい。接着剤層の厚みが上記範囲であることで、基布と表皮層との密着性、及び表皮層における凹凸模様の保持性がより良好となる。
【0030】
〔3.基布〕
本開示の製造方法により得られる表皮材に用いる基布には特に制限はなく、公知の合成樹脂表皮材に用いられる基布を適宜選択して用いることができる。
基布としては、織布、編布、不織布などが挙げられる。表皮材の基材として基布を用いることで、得られる表皮材の柔軟性と強度が良好となる。なかでも、表皮材を車両内装材に用いる場合には、編布が好適である。
編布は、片面編布でもよく、両面編布でもよく、パイル生地でもかまわない。また、基布に用い得る編布は、起毛加工を施してあってもよい。
【0031】
基布は繊維を含むことが好ましい。
基布に含まれる繊維は、必要な強度と柔軟性とを有すれば特に制限はない。
基布に用いる繊維は、合成樹脂表皮材の使用目的により、適宜選択することができる。例えば、基布の編み地に用いる繊維の一部としてポリウレタン繊維を含むことで、基布の伸縮性がより向上する。また、ポリエステル繊維、ケブラー繊維等を含むことで基布の強度がより向上する。
柔軟性及び強度が良好であるとの観点から、基布に含まれる繊維としては、ポリエステル、レーヨン、麻、綿、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アラミド、アクリル、フェノール、ポリウレタン、炭素系繊維等の繊維、及び上記繊維を2種類以上組合せた混紡繊維等が挙げられる。
なかでも、耐久性、柔軟性及びエンボス加工性が良好であり、低コストであるなどの観点から、繊維としては、ポリエステル繊維を含むことが好ましい。
【0032】
エンボス加工性及びエンボス加工により形成された深い凹凸模様の保持性がより良好であるという観点から、基布は、融点が150℃以上260℃以下の合成繊維を含むことが好ましい。
基布がポリエステル繊維を含む場合のポリエステル繊維としては、例えば、融点が255℃〜260℃の汎用タイプのポリエステル繊維、融点が150℃〜200℃の低融点タイプのポリエステル繊維のいずれも好適に使用できる。
【0033】
基布の厚みは、表皮材の使用目的に応じて、適宜選択される。本開示の製造方法により得られる表皮材は、好ましくは、基布の内部に達する深い凹部を有することから、基布の厚みとしては、0.5mm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、0.8mm〜1.5mmの範囲であることがより好ましい。
【0034】
湿式樹脂表皮材を形成する場合には、まず、基布に樹脂溶液を含浸させ、樹脂溶液中の溶剤と水を置換し、乾燥することで、多孔質構造が形成された湿式表皮材形成用の基布を得ることができる。
湿式法において基布の含浸に用いる樹脂としては、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン等が挙げられる。湿式法において基布の含浸に用いる樹脂としては、耐加水分解性、耐熱劣化性等の点から、ポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。
【0035】
基布に含浸させる樹脂溶液は、主剤となる樹脂及び溶剤に加え、必要に応じて種々の成分を含有することができる。
例えば、樹脂溶液が難燃剤を含むことで、表皮材の難燃性が向上する。
難燃剤としては、有機難燃剤、例えば、リン系難燃剤、窒素−リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
また、樹脂溶液は、例えば、着色剤、レベリング剤などを含有してもよい。
【0036】
〔4.その他の層〕
本開示の製造方法により得られる表皮材は、表皮層、接着剤層及び基布に加え、効果を損なわない限り、さらに、その他の層を設けてもよい。
その他の層としては、表皮層の表面物性及び外観の少なくともいずれかを制御する機能を有する層、例えば、表面処理層、中間層、中間発泡層等が挙げられる。
【0037】
(表面処理層)
表面処理層は、表皮材における表皮層の、基布側とは反対側の面(表皮層の表面と称することがある)に設けられる層である。表面処理層は、表皮層の強度、耐久性、凹凸模様の保持性をより向上させ得るという観点から、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等を含むことが好ましく、ウレタン樹脂を含むことがより好ましい。
表面処理層に含まれる樹脂は、加熱エンボス加工時の艶変化による外観の低下が抑制されるという観点から、熱溶融温度が180℃以上の樹脂であることが好ましく、熱溶融温度が185℃以上の樹脂であることがより好ましい。熱溶融温度の上限には特に制限はないが、エンボス加工性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
表皮層表面に表面処理層を形成することで、外観がより良化する。
表面処理層には、樹脂に加え、架橋剤、有機フィラー、シリカ、滑剤、難燃剤等を含有させることができる。例えば、表面処理層に有機フィラー、滑剤等を含有することで、表皮材に滑らかな感触が付与され、表皮材の耐摩耗性がより向上する。
表皮材が表面処理層を有する場合の、表面処理層の厚みは2μm〜10μmであることが好ましく、3μm〜8μmであることがより好ましい。
【0038】
<表皮材の製造方法の各工程>
次に、既述の如き表皮層を形成しうる本開示の製造方法について、工程順に説明する。
〔工程a〕
工程aは、基布と、基布の一方の面に、接着剤層と、軟化点が145℃以上であり、且つ、好ましくは軟化点が180℃以下の樹脂を含む表皮層とをこの順に形成し、表皮材形成用積層体を形成する工程である。
ここで、各層の形成に用いる素材、及び各層の厚みは、既述の通りである。
表皮層の形成方法には特に制限はない。例えば、表皮層形成用組成物を、少なくとも片面が離型処理された離型材の、離型処理された面に塗布して、表皮層形成用組成物層を形成することができる。このようにして得られた表皮層形成用組成物層を、接着剤を塗布した基布にラミネートすることにより、基布上に、接着剤層を介して表皮層が形成された表皮材形成用積層体を得ることができる。
基布は、予め別工程で製造されたものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0039】
表皮層の形成にウレタン樹脂を用いる場合を例に挙げて、工程aをさらに詳細に説明する。
表皮層形成用組成物におけるポリウレタンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。例えば、好ましいポリウレタンであるポリカーボネート系ポリウレタンと、ポリカーボネート系ポリウレタン以外のポリウレタンとを併用してもよい。
【0040】
水系ポリウレタンとしては、ポリエーテル又はポリカーボネート系の水系ポリウレタンの単独重合体あるいはポリエーテル系ポリウレタンとポリカーボネート系ポリウレタンとの混合物又は共重合体を用いた場合におけるウレタン主剤の分子鎖の一部に、水系ポリウレタン主剤に対して、質量比で、0.01%〜10%、好ましくは0.05%〜5%、より好ましくは0.1%〜2%のカルボキシル基が導入されたポリウレタンが挙げられる。既述の質量比の範囲でカルボキシル基が導入された場合、カルボキシル基の存在に起因して、水系ポリウレタンは、充分な水分散性と乾燥成膜性とを有することができる。
溶剤系ポリウレタンとしては、有機溶剤に溶解可能なポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤系ポリウレタンが挙げられる。溶剤系ポリウレタンは1液系であっても、2液系であってもよい。
【0041】
形成される表皮層の膜強度がより良好となるという観点からは、硬化後のポリウレタンが架橋構造を有することが好ましい。
水系ポリウレタンに架橋構造を導入する態様を例に挙げれば、例えば、表皮層形成用組成物が、ポリウレタン主剤にカルボキシル基が導入された樹脂と架橋剤とを含むことにより、表皮層形成用組成物を用いて得られる表皮層において、カルボキシル基と架橋剤とが反応して架橋構造が形成され、架橋構造を有する表皮層を得ることができる。
架橋構造を形成するために表皮層形成用組成物に用い得る架橋剤としては、従来公知の架橋剤を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等が挙げられる。なかでも、表皮層形成用組成物に、カルボジイミド架橋剤を用いることが、ポリウレタンの加水分解を抑制する観点から好ましい。
【0042】
また、溶剤系ポリウレタンに架橋構造を導入する態様を例に挙げれば、例えば、溶剤系ポリウレタンを主剤として用い、架橋成分としてのポリイソシアネートと併用する態様が挙げられる。ポリイソシアネートを併用することで、ポリウレタンの加熱硬化時にポリウレタンに架橋構造を形成することができる。
【0043】
表皮層形成用組成物は、主剤となる樹脂、及び溶剤に加え、さらに他の成分を含んでもよい。
表皮層形成用組成物に含まれ得る他の成分としては、例えば、架橋剤、着色剤、感触向上剤等が挙げられる。
【0044】
表皮層形成用組成物は、着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、例えば、ウレタン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子等から選ばれる有機樹脂微粒子に着色剤が含まれてなる着色有機樹脂粒子等が挙げられ、なかでも、分散媒となるポリウレタン系樹脂に対する親和性、均一分散性の観点からポリカーボネート系の着色樹脂粒子を含有することが好ましい。
このような有機樹脂微粒子の平均粒径は、一般的には、0.10μm〜1.50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.15μm〜1.00μmの範囲である。
【0045】
離型材表面に表皮層形成用組成物を付与する方法には特に制限はなく、公知の付与法を適用できる。付与方法としては、密閉式または開放式コーティングヘッドにて塗布する方法が挙げられる。
表皮層形成用組成物の塗布量、及び形成される表皮層の膜厚には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。
一般的には、強度及び外観の観点から、表皮層形成用組成物の乾燥前の塗布量として、50g/m〜300g/mの範囲であることが好ましく、150g/m〜300g/mの範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
表皮層形成用組成物の乾燥は公知の方法で行なうことができる。
乾燥条件としては、温度80℃〜150℃が好ましく、90℃〜120℃がより好ましい。この温度条件下での乾燥時間は、1分間〜5分間とすることができ、2分間〜3分間が好ましい。
既述のように、表皮層の乾燥後の厚みは、20μm〜300μmの範囲が好ましく、30μm〜200μmの範囲がより好ましい。
【0047】
離型材は、表皮層形成用組成物を付与する面が平滑なものを用いてもよく、微細な凹凸模様であるシボ模様が形成されたものでもよい。
所望により実施される、表皮層にシボ模様を有する工程については、後述する。
離型材の離型処理を施した面に表皮層形成用樹脂組成物を適用する方法は、離型材表面に表皮層形成用樹脂組成物を塗布し、乾燥する方法でもよく、転写に支障がない場合には、転写法を用いてもよい。
【0048】
ここでは、乾式法による表皮層の形成について説明したが、既述のように、表皮層は湿式法で形成することもできる。湿式法における基布に対する樹脂の含浸方法は既述の通りである。
【0049】
〔工程b〕
工程bは、工程aで得られた積層体に対して、表皮層側に凹凸を有するエンボスロールを、基布側にバックアップロールを、それぞれ接触させ、エンボスロールの加熱温度をA(℃)、バックアップロールの加熱温度をB(℃)とした場合、AとBとが下記条件(I)、条件(II)及び条件(III)を満たす温度条件下でエンボス加工する工程である。
条件(I):130℃≦A≦180℃
条件(II):180℃≦B≦250℃
条件(III):表皮層に含まれる樹脂の軟化点−15℃≦A<表皮層に含まれる樹脂の軟化点
【0050】
エンボス加工は、エンボスロールと、バックアップロールとの一対のロールを、それぞれ独立に加熱して、ロール間の距離、即ち、クリアランスを調整して、積層体を一対のロール間を通過させることにより行われる加熱エンボス加工である。
エンボスロールとバックアップロールとのクリアランスは、製造する表皮材の厚みよりも0.1mm〜1.5mm狭く設定することが凹凸模様の形成性の観点から好ましい。
【0051】
工程bでは、エンボスロールを130℃〜180℃の範囲となる条件で加熱し〔条件(I)〕、且つ、バックアップロールを180℃〜250℃の範囲に加熱する〔条件(II)〕。このとき、エンボスロールの加熱温度は、表皮層に含まれる樹脂の軟化点(軟化温度)よりも低く、且つ、軟化点−15℃以上の温度範囲に調整される〔条件(III)〕。
上記温度条件にてエンボス加工することにより、表皮材に深く立体的な凹凸模様が形成され、形成された凹凸模様は、形状がシャープで形状保持性に優れる。
なお、エンボス加工におけるエンボスロールの加熱温度は、バックアップロールの加熱温度よりも低いことが好ましい。
エンボスロール及びバックアップロールの温度は、表皮層に含まれる樹脂の軟化点(軟化温度)に応じて、上記条件(I)、条件(II)及び条件(III)を満たす温度に適宜調整すればよい。
【0052】
なお、ここでエンボス加工時のエンボスロールの温度(A)とは、エンボスロールの凸部頂部の加熱温度、即ち、積層体の表皮層を有する側に侵入し接触するエンボスロールの表面温度を指す。積層体の凹部の底面の温度は、エンボスロールにおける凸部頂部の加熱温度に依存する。
また、バックアップロールの温度(B)は、積層体の基布と接触する面の加熱温度を指す。
【0053】
表皮材に形成する凹部の深さは、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上に設定される。好ましくは、表皮層と隣接する接着剤層と基布との界面よりも基布側にエンボス型の凸部が侵入する深さとすることが好ましい。
上記好ましい態様では、エンボス加工の際には、エンボスロールの凸部頂面が表皮層に侵入し、前記積層体の表皮層側から接着剤層を介して積層された基布内に至る深さまで侵入し、深い凹部が形成されるエンボス加工が行われる。
ここで、エンボスロールの凸部の高さは、バックアップロールとのクリアランスを考慮して、表皮材に形成される凹部の深さよりも高く設定されてもよい。
エンボス加工時の圧力は、30kN/m〜150kN/mの範囲であることが好ましく、50kN/m〜120kN/mの範囲であることがより好ましい。
なお、形成される深い立体形状の外観上の観点から、エンボスロールの凹凸における凹部底面と凸部頂面との距離は、250μmよりも大きいことが好ましい。
エンボスロールの凸部高さ、即ち、表皮材に形成される凹部の深さが、250μmよりも大きいことで、表皮材に形成される凹部は、設計値どおりの凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上である十分な深さを有する立体形状となる。
【0054】
〔任意の工程〕
本開示の製造方法は、既述の工程a及び工程bに加え、他の工程を有してもよい。
任意に行われる他の工程(任意の工程)として、例えば、表皮層にシボ模様を形成する工程、表皮層の面上に表面処理層を形成する工程、表皮材が湿式樹脂表皮材である場合、湿式樹脂表皮材の表面をサンドペーパーなどでバフ加工する工程、積層体又は表皮材に貫通孔を穿孔する工程等が挙げられる。
【0055】
〔表皮層にシボ模様を形成する工程(工程c)〕
本開示の製造方法は、エンボス加工する工程(工程b)に先立ち、表皮層の、接着剤層側とは反対側の面上に、凹部底面と凸部頂面との距離が150μm以下のシボ模様を形成する工程をさらに有してもよい。工程cを含むことにより、本開示の製造方法により得られる表皮材は、表皮層の、基布側とは反対側の面に微細な凹凸模様であるシボ模様を有するものとなる。
シボ模様の形成方法としては、離型材に予め微細な凹凸模様であるシボ模様を有するシボ型転写用離型材を使用して表皮層の表面にシボ模様を転写する方法が挙げられる。
予めシボ模様が形成されたシボ型転写用離型材のシボ型形成面に、表皮層形成用組成物層を、塗布法などで形成し、加熱乾燥して表面にシボ模様が形成された表皮層を得る。その後、得られた表皮層を、接着剤層を介して基布に密着させて加熱乾燥した後、離型材を剥離することで表皮層の面上に微細なシボ模様を有する表皮材形成用積層体を得ることができる。
【0056】
シボ型転写用離型材は、所望される微細な凹凸模様が形成されたものであれば特に制限はない。シボ型転写用離型材は、例えば、市販品を用いてもよく、コンピュータグラフィックス等により、離型材の表面に所望のパターンを形成したものを用いてもよい。
シボ型転写用離型材表面に表皮層形成用樹脂組成物を適用する方法は、離型材表面に表皮層形成用樹脂組成物を塗布し、乾燥する方法でもよく、転写に支障がない場合には、転写法を用いてもよい。
また、シボ型転写用離型材を用いないシボ模様の形成方法としては、表皮層を、接着剤層を介して基布にラミネートする際に、表皮層側に接触するラミネートロールとしてシボ型が形成されたシボロールを用いる方法が挙げられる。表皮層を、接着剤層を介して基布にラミネートする際に、シボロールとバックアップロールとで熱ラミネートすることで、表皮層表面にシボ模様が形成される。
【0057】
本開示の製造方法によれば、工程cにおいて表皮層の面上にシボ模様を形成した後、工程bにて、深い凹凸形状を形成するエンボス加工を行った場合も、エンボス加工における加熱条件が適切に制御されているため、深い凹凸模様を形成した後において表皮層に形成されたシボ模様が維持される。このようにして得られた表皮材は、表面の微細なシボ模様と、深く立体的な凹凸模様とを有する特徴的な外観の、意匠性に優れた表皮材となる。
【0058】
なお、既述のように、本開示の製造方法により得られる表皮材は、深い凹凸模様を有し、立体形状による外観に優れるため、必ずしも表皮材にシボ模様を形成する必要はない。
【0059】
〔表皮層の、接着剤層側とは反対側の面上に、樹脂を含む表面処理層を形成する工程(工程d)〕
本開示の製造方法は、工程aの後、工程bに先だって、表皮層の、接着剤層側とは反対側の面上に、樹脂を含む表面処理層を形成する工程〔工程d〕を有していてもよい。
表面処理層は、表皮材における表皮層の表面に設けられる層である。通常、表面処理層を設ける場合、表面処理層は表皮材の最外面に位置し、表皮層の保護、表皮材の耐久性の向上、凹凸模様の形成性の向上、凹凸模様の保持性の向上など、種々の機能を表皮材に付与することができる。
表面処理層は、表皮層の強度、耐久性、凹凸模様の保持性をより向上させ得るという観点から、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等を含むことが好ましく、ウレタン樹脂を含むことがより好ましい。
表面処理層に含まれる樹脂は、軟化点が、表皮層に含まれる樹脂の軟化点より高い樹脂であることが好ましい。さらに、加熱エンボス加工時の艶変化による外観の低下が抑制されるという観点から、熱溶融温度が180℃以上の樹脂であることがより好ましく、熱溶融温度が185℃以上の樹脂であることが好ましい。
熱溶融温度の上限には特に制限はないが、エンボス加工性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
【0060】
表面処理層には、樹脂に加え、目的に応じて、架橋剤、有機フィラー、滑剤、難燃剤等を含有させることができる。例えば、表面処理層に有機フィラー、滑剤等を含有することで、表皮材に滑らかな感触が付与され、表皮材の耐摩耗性がより向上する。
【0061】
表面処理層の厚みは2μm〜10μmであることが好ましく、3μm〜8μmであることがより好ましい。
表面処理層の厚みが上記範囲にあることで、表面処理層が備える機能が十分に発現される。
【0062】
〔湿式樹脂表皮材の表面をバフ加工する工程(工程e)〕
本開示の製造方法は、工程aの後、工程bに先だって、湿式樹脂表皮材の表面をバフ加工する工程〔工程e〕をさらに有してもよい。
本開示の合成樹脂表皮材が湿式樹脂表皮材である場合、工程eを行なうことにより、湿式樹脂表皮材の、表皮層の基布側とは反対側の面、即ち、天然皮革における銀皮面に相当する面に、ヌバックのような質感を与える微細な起毛を有する表皮材とすることができる。
バフ加工は公知の方法、例えば、表面に微細な砥粒を付与したバフ車、サンドペーパー等を表皮層の面上に押し当てて起毛させる方法が適用でき、なかでも、サンドペーパーを用いたバフ加工が好ましい。
バフ加工に使用するサンドペーパーは、200番〜1000番の中から適宜選択して用いることができる。バフ加工の具体的な方法としては、例えば、バッフィングマシンにてサンドペーパーを取り付けたバフ車を、回転数を500rpm〜1000rpm(回転/分)として湿式樹脂表皮材の表皮層の面上に接触させて削ることでバフ加工する方法が挙げられる。バフ加工により、湿式樹脂表皮材における表皮層の面上に、ヌバックのような質感及び起毛感を与えることができる。
なお、バフ加工は、必要に応じて1回のみ実施してもよく、目標の質感を得るために複数回、繰り返して実施してもよい。
【0063】
〔積層体又は表皮材の厚さ方向に貫通する複数の孔を穿孔する工程(工程f)〕
本開示の製造方法は、積層体又は表皮材の厚さ方向に貫通する複数の孔を穿孔する工程をさらに含んでもよい。
複数の孔は、積層体又は表皮材の厚さ方向に、積層体又は表皮材における表皮層から、表皮材の底面である基布に至るまで貫通する孔である。
積層体又は表皮材の厚さ方向に、積層体又は表皮材を貫通する多数の孔を有することにより、本開示の製造方法により得られる表皮材は、通気性、透湿性等が良好となる。また、外観がより良好となる。
積層体又は表皮材の厚さ方向に、積層体又は表皮材を貫通する複数の孔を穿孔する工程において、貫通孔を形成する方法は、一般に樹脂シートに穿孔する方法を任意に適用することができる。工程fは、例えば、パンチングロールにより積層体又は表皮材に所望の間隔で所望の径を有する孔を穿孔する工程であってもよい。
貫通孔の平面視における直径、隣接する貫通孔の間隔等は、目的に応じて適宜決定することができる。通常、貫通孔の存在により表皮層の強度低下を生じ難いという観点から、平面視における貫通孔の直径は、2mm以下であることが好ましい。また、目的とする通気性を得やすいという観点から、平面視における貫通孔の直径は、0.5mm以上であることが好ましい。
複数の孔を穿孔する工程〔工程f〕は、積層体の製造後、即ち、工程aの後、工程bに先だって行なってもよく、表皮材を形成した後、即ち、工程bの後に行なってもよい。
【0064】
本開示の合成樹脂表皮材の製造方法によれば、従来の合成樹脂表皮材よりも、より深い凹凸模様を有する立体形状を備え、形成された立体形状の形状保持性が良好であり、耐久性に優れた合成樹脂表皮材を製造することができる。
本開示の製造方法によれば、深く立体的な凹凸模様を有し、経時的な凹凸の変形が抑制され、耐久性が良好な合成樹脂表皮材を得ることができる。得られた表皮材は、深い凹部による良好な外観を長期に亘り保持することができ、耐久性に優れるため、自動車内装材などの耐久性を要求される用途に好適に使用される。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本開示の製造方法を具体的に説明する。以下に示す実施例は実施態様の一例を示すに過ぎず、本開示は以下の実施例に制限されない。
なお、特に断らない限り、以下の「%」及び「部」は質量基準である。
【0066】
〔実施例1〕
(表皮層の作製)
クリスボン(登録商標)NY−373(DIC(株)製、熱軟化温度(軟化点):160℃、熱溶融温度:180℃のポリカーボネート系ポリウレタン)を、固形分16%となる量の溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF)で希釈し、表皮層形成用組成物を調製した。得られた表皮層形成用組成物をナイフコーターで、離型紙ARX196M(商品名、旭ロール社製)表面に、塗布量250g/mとして塗工し、離型紙表面に表皮層形成用組成物層を形成した。
【0067】
(接着剤層の形成と積層体の製造)
接着剤層は、上記表皮層の一方の面に、接着剤層形成用の接着剤(ポリカーボネート系ウレタン接着剤:熱溶融温度:190℃、DIC(株)製、クリスボンTA−205FT)を、150g/mの量を塗布し、100℃にて2分間加熱、乾燥させて形成した。
その後、基布(220dtex/48fのポリエステル糸(融点:254℃)の編布、厚さ:1.1mm:林テレンプ(株)製、GHS009)を、表皮層の一方の面に形成した前記接着剤層と接する方向で貼り合わせ、その後、50℃で48時間熟成させて硬化させた。
表皮層の、基布とは反対側の面に、ウレタン樹脂(熱溶融温度:180℃、軟化温度:175℃)の水分散体を含む表面処理層形成用組成物を、乾燥後の厚みが5μmとなる量で塗布し、乾燥して表面処理層を形成し、厚み1.2mmの積層体を得た。〔工程(a)〕
【0068】
(凹凸模様の形成)
得られた積層体をエンボス加工した。エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の熱軟化点より5℃低くなる温度(155℃)に設定し、バックアップロール側の基布と接する面の温度を200℃に設定した。ロール間のクリアランスは0.9mmとし、圧力80kN/mにてエンボス加工することにより〔工程b〕、深い立体形状(凹部の深さ:800μm)が形成された合成樹脂表皮材を得た。
【0069】
得られた実施例1の製造方法により得られた表皮材は、厚みが1.2mmであり、表面処理層の厚みが5μmであり、表皮層の厚みが40μmであり、接着剤層の厚みが60μmであり、表皮材に形成された凹部の深さは、表皮材の凹部が形成されていない領域の面上、即ち、凸部の頂面と凹部底面との距離が800μmであることから、基布の内部に至る深い凹部が形成され、深く立体的な凹凸模様を有する表皮材であった。
【0070】
〔実施例2〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の熱軟化点より15℃低くなる温度(145℃)に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、実施例2の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0071】
〔実施例3〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の熱軟化点より10℃低くなる温度(150℃)に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、実施例3の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0072】
〔実施例4〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の熱軟化点と同じ温度(160℃)に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、実施例4の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0073】
〔実施例5〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のバックアップロール側の基布と接する面の温度を180℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、実施例5の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0074】
〔実施例6〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のバックアップロール側の基布と接する面の温度を250℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、実施例6の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0075】
〔比較例1〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の軟化点より20℃高くなる温度(180℃)に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、比較例1の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0076】
〔比較例2〕
実施例1の合成樹脂表皮材の製造方法と同様にして、積層体を形成した。
積層体に対する凹凸模様の形成において、エンボス加工機のエンボスロール温度は、積層体の表皮層側に接触するエンボスロールの凸部頂部の表面温度にて、表皮層に含まれる樹脂の軟化点より20℃低くなる温度(140℃)に設定した以外は、実施例1と同様にして、凹部を形成し、比較例2の製造方法により合成樹脂表皮材を得た。
【0077】
<合成樹脂表皮材の評価>
(1.立体性に係る外観評価)
得られた合成樹脂表皮材の凹部の形状を、目視にて観察し、エンボス加工に用いたエンボス型の転写状態を下記評価基準にて評価した。結果を下記表1に示す。なお、表1には、評価項目を「立体性」と記載している。
−評価基準−
A:凹部の角は、エンボス型の角R形状がシャープで、はっきりと転写されている
B:エンボス型の形状が転写されているが、凹部の角Rの形状はなだらかである
C:エンボス型の形状が殆ど転写されていない
【0078】
(耐久性)
得られた合成樹脂表皮材に対し、荷重2kgの平面摩耗試験を以下に示す方法にて実施し、下記評価基準にて合成樹脂表皮材の耐久性を評価した。結果を下記表1に示す。なお、表1には、評価項目を「2kg平面摩耗」と記載している。
試験方法は、JASO M 403/88/シート表皮用布材料の平面摩耗試験機(B法)を参考に試験を実施した。
試験条件は、JASO法における標準の条件を本試験条件とし、JASO法における押圧荷重9.8Nを19.6Nに変更した以外は同様にして実施した。
−評価基準−
A:平面摩耗10000回以上でも凹部形状が保持される
B:平面摩耗7500回以上10000回未満で凹部形状が崩れる
C:平面摩耗7500回未満で凹部形状が崩れる
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示す結果より、実施例1から実施例6の合成樹脂表皮材の製造方法により得られた表皮材は、深く、設計値どおりの凹部を有する立体形状を備え、形成された立体形状は、10000回以上の摩耗試験でも形状が保持されていた。このことから、実施例1の製造方法により得られた合成樹脂表皮材は、シャープな立体形状が形成され、形状保持性、即ち、耐久性が良好であることがわかる。
【0081】
他方、エンボス加工時のエンボスロールの加熱温度が、ウレタン樹脂の軟化点より高い条件である比較例1の製造方法により得られた合成樹脂表皮材は、凹部の形状の転写性は良好であるが、耐久性に劣っていた。また、エンボス加工時のエンボスロールの温度が、ウレタン樹脂の軟化点よりも20℃低い条件である比較例2の製造方法により得られた合成樹脂表皮材は、実施例1から実施例6の製造方法により得られた表皮材に比較し、凹部の形状転写性に劣っていた。
【0082】
(符号の説明)
10、20 合成樹脂表皮材
12 表面処理層
14 表皮層
16 接着剤層
18 基布
22 表面処理層
24 表皮層(シボ模様を有する表皮層)
【0083】
2018年2月7日に出願された日本国特許出願2018−020513の開示は参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【要約】
基布と、前記基布の一方の面に、接着剤層と、軟化点が145℃以上の樹脂を含む表皮層とをこの順に有し、表皮材形成用積層体を形成する工程と、得られた表皮材形成用積層体に対して、前記表皮層側に凹凸を有するエンボスロールを、前記基布側にバックアップロールを、それぞれ接触させ、前記エンボスロールの加熱温度をA(℃)とし、前記バックアップロールの加熱温度をB(℃)とした場合、AとBとが条件(I)〔130℃≦A≦180℃〕、条件(II)〔180℃≦B≦250℃〕及び条件(III)〔表皮層に含まれる樹脂の軟化点−15℃≦A<表皮層に含まれる樹脂の軟化点〕を満たす温度条件下でエンボス加工し、前記表皮材形成用積層体に、凹部底面と凸部頂面との距離が250μm以上の凹部を形成する工程と、を有する合成樹脂表皮材の製造方法。
図1
図2