(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルからなる群より選ばれた一種または二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の栄養組成物のメイラード反応抑制方法。
グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの二種であることを特徴とする請求項1または2に記載の栄養組成物のメイラード反応抑制方法。
【背景技術】
【0002】
高齢者や各種疾病を持つ患者において、咀嚼機能や嚥下機能、その他消化機能が低下し、通常の食事による栄養補給が困難となることが問題になっている。このような患者等における栄養補給を助けるため、従来、経口的または経管的に摂取し易い物性に調製した流動食等の栄養組成物が利用されている。
【0003】
これら栄養組成物は、通常、レトルト殺菌等の加熱殺菌処理を行い、長期保存を可能にして製品化される。しかし、上記栄養組成物はタンパク質類や糖質等の栄養素を多く含むため、加熱殺菌処理時や長期に亘る保存の過程でメイラード反応(アミノ酸等のアミノ化合物と還元糖とが反応し褐色物質(メラノイジン)を生成する反応)が生じやすく、外観や風味を損なう場合があった。
【0004】
栄養組成物におけるメイラード反応を抑制する方法としては、例えば、アミノ酸類および/またはペプチドからなる窒素源、脂溶性ビタミンを含む油脂およびビタミンCとB1を含む水溶性ビタミン類よりなる乳化液(第1液)と、糖質、ミネラル類およびビタミンCとB1を除く水溶性ビタミン類よりなる水溶液(第2液)との2液から構成され、これらが滅菌されている、沈殿と色調変化の少ないキット形態の液状経腸栄養剤(特許文献1)、乳タンパク質、糖質、および乳化剤を含む水中油型乳化物である乳性食品であって、該水中油型乳化物の50%粒子径が0.2〜1.0μmである、乳性食品(特許文献2)、大豆粉と、蛋白質素材を含有することを特徴とする液状経腸栄養組成物(特許文献3)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法はメイラード反応を避ける為に窒素源と糖質源とを別々に調製、滅菌しなければならず、煩雑である。また、特許文献2に記載の方法も高圧での均質化処理工程を必須とすることから、これらの方法は製造工程に制約を受ける点で問題がある。一方、特許文献3に記載の方法は製造工程への制約は少ないが、栄養組成物の主原料であるタンパク質源に大豆粉を使用しなければならず、処方が制約されるため好ましくない。従って、このような製造工程や処方上の制約がより少なく、かつメイラード反応を十分に抑制できる方法が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、栄養組成物において、製造工程や処方上の制約が少なく、かつメイラード反応を十分に抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、栄養組成物にグリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加することにより、メイラード反応を抑制することができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、次の(1)〜(3)からなっている。
(1)グリセリン有機酸脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする栄養組成物用メイラード反応抑制剤。
(2)グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルからなる群より選ばれた一種または二種以上であることを特徴とする前記(1)に記載のメイラード反応抑制剤。
(3)前記(1)または(2)に記載のメイラード反応抑制剤をタンパク質類および糖質を含む栄養組成物に添加することを特徴とする栄養組成物のメイラード反応抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメイラード反応抑制剤を栄養組成物に添加することにより、加熱殺菌処理時や保存期間中におけるメイラード反応による品質劣化を抑制することができる。
本発明のメイラード反応抑制剤を添加して栄養組成物を製造する場合、製造工程や処方上の制約が少なく、容易にメイラード反応抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられるグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリンと有機酸と脂肪酸のエステル化生成物であり、例えばグリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルまたはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルが好ましく、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルがさらに好ましい。これらグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、一種類のみを単独で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0012】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)および不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸および/またはステアリン酸を70質量%以上含有する脂肪酸の混合物がより好ましい。
【0013】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステルと有機酸(または有機酸の酸無水物)との反応、またはグリセリンと有機酸と脂肪酸との反応により得ることができる。例えば、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの製造方法の概略は以下の通りである。
【0014】
例えば、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにコハク酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとコハク酸の酸無水物との比率は質量比で1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色および臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとコハク酸の酸無水物との反応物は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの他に、コハク酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル等を含む混合物である。
【0015】
本発明では、商業的に製造・販売されているグリセリン有機酸脂肪酸エステルを用いることができ、例えば、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルとしては、ポエムK−30(製品名;理研ビタミン社製)、ポエムK−30V(製品名;理研ビタミン社製)等、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとしては、ポエムB−10(製品名;理研ビタミン社製)、ポエムB−30(製品名;理研ビタミン社製)、サンソフトNo.681SPV(製品名;太陽化学社製)、ステップSS(製品名;花王社製)等、またグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとしては、ポエムW−60(製品名;理研ビタミン社製)、パノダンAMV/B(製品名;ダニスコ社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明のメイラード反応抑制剤は、グリセリン有機酸脂肪酸エステルのみをそのまま用いても良く、あるいは少なくともグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する組成物として調製しても良い。本発明のメイラード反応抑制剤をこのような組成物として調製する場合、グリセリン有機酸脂肪酸エステル以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を配合することができる。例えば、カゼインナトリウム、デキストリン、結晶セルロール等の賦形剤、グリセリン有機酸脂肪酸エステル以外の乳化剤等を配合することができる。
【0017】
本発明のメイラード反応抑制剤は、栄養組成物に添加して使用される。本発明で言うところの栄養組成物とは、タンパク質類、糖質、脂質、ミネラル類、ビタミン類等の各種栄養素を含有し、主に咀嚼機能や嚥下機能、その他消化機能が低下し、通常の食事が困難な者における栄養補給を目的として、経口的または経管的に摂取されるものである。このような栄養組成物としては、例えば、経腸栄養剤、流動食、濃厚流動食、半固形化栄養剤、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤、総合栄養食品等が挙げられる。
【0018】
タンパク質類としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、乳タンパク質、鶏卵タンパク質、各種食肉由来のタンパク質等の動物性タンパク質;とうもろこしタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、えんどう豆タンパク質、その他各種豆タンパク質、菜種タンパク質等の植物性タンパク質;鶏卵タンパク質分解物、魚タンパク質分解物、肉タンパク質分解物、コラーゲンペプチド、食肉ペプチド等の動物性タンパク質分解物;砂糖大根分解物等の植物性タンパク質分解物;およびアスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、アルギニン等のアミノ酸が挙げられる。これらの中でも、原料の供給が容易かつ安価である点から、乳タンパク質および大豆タンパク質等が好ましい。なお、上記タンパク質分解物およびアミノ酸は、常法によりタンパク質を酵素または酸等を用い加水分解して製造したものであって良く、科学的合成、醗酵による合成により製造したものであっても良い。
【0019】
また、タンパク質類は、タンパク質含有物の形態で栄養組成物に含まれていても良い。該タンパク質含有物は、タンパク質類を含有するものであれば本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、公知の方法により乳、卵、動物または植物等から水分および他の成分を除去してタンパク質成分を濃縮および/または乾燥したもの、並びに公知の方法により乳、卵、動物または植物等に含まれるタンパク質成分を分離し分解処理をした後、水分を除去して濃縮および/または乾燥したもの等が挙げられる。このようなタンパク質含有物としては、例えば、乳タンパク質濃縮物、脱脂乳、脱脂粉乳、全脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、ホエイタンパク質濃縮物、カゼインナトリウム、粉末豆乳、粉末状大豆タンパク質、脱脂大豆等が挙げられる。
【0020】
糖質としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、澱粉類;グルコース、フラクトース等の単糖類;マルトース、蔗糖等の二糖類;キシリトール、ソルビトール、グリセリン、エリスリトール等の糖アルコール類;デキストリン、難消化性デキストリン、シクロデキストリン等の多糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース等のオリゴ糖類が挙げられる。
【0021】
脂質としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、一般に食用として利用されている脂質を用いることができる。例えば、大豆油、コーン油、綿実油、シソ油、ヤシ油、菜種油、米油、ゴマ油、アマニ油等の植物油;イワシ油、タラ油、タラ肝油等の魚油;長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等の必須脂肪酸源;牛脂および豚脂等が挙げられる。
【0022】
ミネラル類としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、カルシウム、リン、硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウム、鉄、フッ素、ケイ素、亜鉛、マンガン、銅、セレン、ヨウ素、モリブデン、クロム、コバルト等が挙げられ、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄等が好ましく挙げられる。これらミネラルは、塩の形態で栄養組成物に含まれていても良い。
【0023】
ビタミン類としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、および葉酸等が挙げられる。
【0024】
上記各種栄養素は、本発明の効果を阻害しない範囲で、栄養組成物の摂取目的に応じて適宜必要なものを適当な割合で配合することができる。ただし、本発明は栄養組成物におけるメイラード反応を抑制することを目的とするため、本発明のメイラード反応抑制剤の使用対象となる栄養組成物としては、少なくともメイラード反応の原因となる成分、即ちタンパク質類および糖質を含むことを必須とする。
【0025】
本発明のメイラード反応抑制剤の使用対象となる栄養組成物は、上記各種栄養素以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していても良い。例えば、増粘剤、酸化防止剤、pH調整剤、保存料、香料、食塩、甘味料その他の調味料等を含有していても良い。また、栄養組成物はその処方または製造方法に応じて、液状、ゲル状、ゼリー状、ペースト状、クリーム状、ムース状、ピューレ状等いかなる性状を呈しても良い。
【0026】
本発明のメイラード反応抑制剤を添加して栄養組成物を製造する方法に特に制限はなく、慣用の装置を用いて、常法により製造することができる。例えば、本発明のメイラード反応抑制剤を添加した乳化液状の栄養組成物の製造方法の概略としては、本発明のメイラード反応抑制剤に用いるグリセリン有機酸脂肪酸エステルが水溶性であるか油溶性であるかに応じて、下記の方法1〜2を例示できる。
【0027】
[方法1:グリセリン有機酸脂肪酸エステルが水溶性である場合]
タンパク質類、糖質その他の水溶性原材料を水に加え、40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加温しながら分散または溶解する。該水相に本発明のメイラード反応抑制剤を加え、さらに40〜80℃、好ましくは50〜70℃で撹拌し溶解する。ここに、脂質その他の油溶性原材料を含む油相を加えて50〜80℃、好ましくは55〜75℃に加温しながら乳化することにより、水中油型乳化液状の栄養組成物を得る。得られた栄養組成物は、所望によりさらに均質化処理や加熱殺菌処理を行っても良い。
【0028】
[方法2:グリセリン有機酸脂肪酸エステルが油溶性である場合]
予め脂質その他の油溶性原材料を含む油相に本発明のメイラード反応抑制剤を加え、50〜80℃、好ましくは55〜75℃に加温しながら撹拌し溶解しておく。一方、タンパク質類、糖質その他の水溶性原材料を水に加え、40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加温しながら分散または溶解し水相とする。ここに上記油相を加えて50〜80℃、好ましくは55〜75℃に加温しながら乳化することにより、水中油型乳化液状の栄養組成物を得る。得られた栄養組成物は、所望によりさらに均質化処理や加熱殺菌処理を行っても良い。
【0029】
上記乳化のために使用する装置としては特に限定されず、例えば攪拌機、加熱用のジャケットおよび邪魔板などを備えた通常の攪拌・混合槽を用いることができる。装備する攪拌機としては、例えばTKホモミクサー(プライミクス社製)またはクレアミックス(エムテクニック社製)などの高速回転式ホモジナイザーが好ましく用いられる。該ホモジナイザーによる乳化条件としては、例えば実験室用の小型機では、回転数6000〜20000rpm、撹拌時間1〜60分間が例示できる。
【0030】
また、上記装置で乳化した栄養組成物にさらに均質化処理を行う場合、高圧式均質化処理機として、例えばAPVゴーリンホモジナイザー(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)ナノマイザー(大和製罐社製)、HV−OA−07−1.5S(イズミフードマシナリ社)などを好ましく使用することができる。該均質化処理機による乳化条件(圧力)としては、装置の仕様により異なり一様ではないが、例えば5〜50MPaを例示できる。均質化処理により、液中の脂質は微細化し、均一に分散した状態になる。また、上記均質化処理機に代えて、例えば超音波乳化機などの均質化処理機を用いてもよい。
【0031】
上記加熱殺菌処理の方法に特に制限はなく、例えば、レトルト殺菌、UHT(Ultra High Temperature)殺菌が挙げられる。栄養組成物が液状である場合、レトルト殺菌は、例えば、栄養組成物を金属容器、耐熱性パウチ袋等に充填して密封し、レトルト殺菌機により、通常121〜124℃、5〜40分間の加熱条件で行われ得る。UHT殺菌は、例えば、栄養組成物に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式、および栄養組成物を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式等の直接加熱方式、プレートやチューブ等表面熱交換器を用いる間接加熱方式等が挙げられる。これらの殺菌装置を用いるUHT殺菌は、通常130〜155℃で行われる。また、殺菌時間は通常2〜60秒程度で行われる。UHT殺菌された栄養組成物は、無菌的にPETボトルまたは紙、アルミ箔およびポリエチレン等のラミネート材で形成された容器等に充填され、密栓されるのが好ましい。
【0032】
本発明のメイラード反応抑制剤の栄養組成物への添加量は、栄養組成物の処方、加熱殺菌処理の条件等によって異なるが、栄養組成物100質量%に対して、グリセリン有機酸脂肪酸エステルの含有量が通常0.005〜1質量%、好ましくは0.01〜0.8質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%となるように添加することが、メイラード反応を十分に抑制する上で効果的である。
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[栄養組成物の製造]
(1)原材料
1)カゼインナトリウム(製品名:Sodium Caseinate 180;日成共益社製)
2)液状マルトデキストリン(製品名:シルバースイート;日本コーンスターチ社製)
3)ナタネ油(ボーソー油脂社製)
4)pH調整剤(重曹;鈴忠商店社製)
5)イオン交換水
6)供試乳化剤
6−1)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(製品名:ポエムB−15V;理研ビタミン社製)
6−2)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(製品名:ポエムW−60;理研ビタミン社製)
6−3)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(製品名:ポエムK−30;理研ビタミン社製)
6−4)グリセリンパルミチン酸エステル(製品名:エマルジーP−100;理研ビタミン社製)
6−5)ポリグリセリンオレイン酸エステル(製品名:ポエムJ−0381V;理研ビタミン社製)
6−6)ポリグリセリンステアリン酸エステル(製品名:ポエムJ−0081HV;理研ビタミン社製)
【0035】
(2)栄養組成物の配合割合
上記原材料を用いて製造した栄養組成物1〜11の配合割合を表1に示す。これらの内、栄養組成物1〜7はメイラード反応抑制剤としてグリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加した本発明の実施例であり、栄養組成物8〜10はグリセリン有機酸脂肪酸エステル以外の乳化剤を添加した比較例である。また、対照として栄養組成物11は乳化剤を添加せずに調製した。なお、各栄養組成物の製造に使用した原材料の全量は3kgとした。
【0036】
【表1】
【0037】
(3)栄養組成物の製造方法
<製造例1:栄養組成物1〜5および8〜10の製造>
表1に示した配合割合に基づき、カゼインナトリウム、液状マルトデキストリン、pH調整剤およびイオン交換水を5L容のステンレス製ビーカーに入れ、55℃に加温しながら攪拌機(製品名:TKホモミクサー;プライミクス社製)を使用して7500rpmで30分間撹拌・混合した。ここに供試乳化剤をそれぞれ規定量加えて70℃に加温しながら7500rpmで10分間撹拌し、溶解した。これを60℃まで降温した後、ナタネ油を加えて10000rpmで1分間撹拌し、予備乳化液とした。該予備乳化液を高圧式均質化処理機(製品名:HV−OA−07−1.5S;イズミフードマシナリ社製)を使用して第一段圧力45MPa、第二段圧力5MPaの条件で1回均質化処理し、瓶に充填して乳化液状の栄養組成物1〜5および8〜10各2kgを得た。
【0038】
<製造例2:栄養組成物6〜7の製造>
表1に示した配合割合に基づき、ナタネ油および規定量の供試乳化剤を200mL容のガラス製ビーカーに入れ、65℃に加温しながらガラス棒で撹拌・混合し、乳化剤溶液を得た。一方、別の5L容のステンレス製ビーカーにカゼインナトリウム、液状マルトデキストリン、pH調整剤およびイオン交換水を入れ、55℃に加温しながら攪拌機(製品名:TKホモミクサー;プライミクス社製)を使用して7500rpmで30分間撹拌・混合した。ここに上記乳化剤溶液を加え、60℃にて10000rpmで1分間撹拌し、予備乳化液とした。その後は上記製造例1と同様に処理して、乳化液状の栄養組成物6〜7各2kgを得た。
【0039】
<製造例3:栄養組成物11の製造>
供試乳化剤を添加しない以外は上記製造例1と同様に処理して、乳化液状の栄養組成物11を2kg得た。
【0040】
[色調の評価]
製造直後の栄養組成物1〜11の色調を目視にて観察したところ、いずれも乳白色であり、栄養組成物ごとに色調の差異は認められなかった。その後、栄養組成物1〜11をレトルト殺菌機(製品名:高温高圧調理殺菌試験機RCS−40RTGN;日阪製作所社製)を使用して121℃で10分間加熱殺菌処理し、常温で12時間保存した。保存後の各栄養組成物の色調を目視にて観察し、下記評価基準に従い製造直後と比較した褐変の度合いを評価した。結果を表2に示す。
[評価基準]
± :ほとんど褐変していない
+ :ごくわずかに褐変している
++ :わずかに褐変している
+++ :やや褐変している
++++ :褐変している
+++++:ひどく褐変している
【0041】
【表2】
【0042】
ここで、栄養組成物の褐変の度合いが大きいほど、メイラード反応が進行したことを示す。表2の結果から明らかなように、メイラード反応抑制剤としてグリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加した本発明の実施例である栄養組成物1〜7は、加熱殺菌処理後においても褐変がわずかであり、メイラード反応が十分に抑制されていた。一方、グリセリン有機酸脂肪酸エステル以外の乳化剤を添加した比較例の栄養組成物8〜10は明らかに褐変しており、メイラード反応抑制効果は認められなかった。特に、グリセリンパルミチン酸エステルを添加した栄養組成物8は、乳化剤無添加の対照である栄養組成物11よりも顕著にメイラード反応が進行していた。