特許第6559411号(P6559411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和アルミニウム缶株式会社の特許一覧

特許6559411印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置
<>
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000002
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000003
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000004
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000005
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000006
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000007
  • 特許6559411-印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559411
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】印刷用版の成形方法及び印刷用版の円筒状成形装置
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/18 20060101AFI20190805BHJP
   B41C 1/04 20060101ALI20190805BHJP
   B41N 1/22 20060101ALI20190805BHJP
   B41N 3/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B41C1/18
   B41C1/04
   B41N1/22
   B41N3/00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-224282(P2014-224282)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-87911(P2016-87911A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186854
【氏名又は名称】昭和アルミニウム缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】戸島 斉
(72)【発明者】
【氏名】奥 智宏
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−000753(JP,A)
【文献】 特開2010−162879(JP,A)
【文献】 特開2010−253794(JP,A)
【文献】 特開2006−035560(JP,A)
【文献】 特表2014−515322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/18
B41C 1/04
B41N 1/22
B41N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の版胴の外周に装着される印刷用版の成形方法であって、
版部となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シートに位置決め用切欠部を形成する切欠部加工工程と、
前記位置決め用切欠部が形成された前記弾性材料製シートを、前記版胴と同一形状のシリンダー部材の位置決め用突部に前記位置決め用切欠部を係合させて巻き付けて丸め、前記弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状に接合する円筒材成形工程と、
円筒状に成形された前記弾性材料製シートを版胴に装着して前記版部に印刷用模様を彫刻する版部彫刻工程と、
を備えることを特徴とする印刷用版の成形方法。
【請求項2】
前記位置決め用切欠部は、前記弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部以外に設けられることを特徴とする請求項1に記載の印刷用版の成形方法。
【請求項3】
前記円筒材成形工程は、
所定の加工度となるまで前記弾性材料製シートを丸めて塑性変形させる第1加工と、
前記弾性材料製シートを更に丸めて、前記弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状にする第2加工と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用版の成形方法。
【請求項4】
前記第1加工では、接合後の前記弾性材料製シートの径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで前記弾性材料製シートを塑性変形させることを特徴とする請求項3に記載の印刷用版の成形方法。
【請求項5】
前記第1加工は、前記弾性材料製シートの一端部側と他端部側とで加工度を異なる設定にすることを特徴とする請求項3または4に記載の印刷用版の成形方法。
【請求項6】
円筒状に成形された前記弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部の両側部に、前記版胴の外周の一部が取り除かれてなる平坦部の幅寸法と略同等の間隔で屈曲部が設けられ、
前記印刷用版及び前記版胴は、前記屈曲部と前記平坦部によって位置決めされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷用版の成形方法。
【請求項7】
前記位置決め用切欠部は、前記接合部を含む前記屈曲部間以外の部位に設けられることを特徴とする請求項6に記載の印刷用版の成形方法。
【請求項8】
長方形状の弾性材料製シートに形成された位置決め用切欠部が係合する位置決め用突部と、円筒状に形成された外周の一部が取り除かれてなる平坦部と、を有するシリンダー部材と、
前記弾性材料製シートの前記位置決め用切欠部と前記位置決め用突部を係合させた状態で、前記弾性材料製シートの前記位置決め用切欠部の近傍を押え付けて前記シリンダー部材の外周に固定する固定手段と、
前記シリンダー部材の軸方向左右に設けられたローラーによって、前記弾性材料製シートを円筒状に加工するローラー手段と、
前記弾性材料製シートの両端部を前記平坦部の位置で重ね合わせて押圧する押圧手段と、
前記押圧手段によって前記弾性材料製シートが押圧された状態で、前記弾性材料製シートの前記両端部を接合する接合手段と、
を備えることを特徴とする印刷用版の円筒状成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製、特にアルミニウム製またはアルミニウム合金製の缶体の印刷に用いられる印刷用版の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置の版胴に装着されて使用され、画像パターンを有する印刷用版を用いて、金属製の缶体に印刷することが知られている。
【0003】
特許文献1には、外周に溝が設けられたシリンダー部材を備え、板状の基材の端部に曲げ加工を施し、厚み方向に向かって突出した折曲部が形成され、当該折曲部がシリンダー部材の溝に係合した状態でシリンダー部材を回転させて基材を巻き取ることによって、基材を円筒状の印刷用版に成形する筒状体製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−159066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような装置では、端部に折曲部が形成されていない基材をシリンダー部材に巻き付けて、成形加工時における版部の配置ズレなどによる個体差が生じない高精度な円筒状の印刷用版に成形することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、金属製、特にアルミニウム製またはアルミニウム合金製の缶体の印刷に用いられる、高精度に成形される円筒状の印刷用版の成形方法の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[8]に記載の構成を有する。
【0008】
[1] 円筒状の版胴の外周に装着される印刷用版の成形方法であって、
版部となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シートに位置決め用切欠部を形成する切欠部加工工程と、
前記位置決め用切欠部が形成された前記弾性材料製シートを丸め、前記弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状に接合する円筒材成形工程と、
円筒状に成形された前記弾性材料製シートの前記版部に印刷用模様を彫刻する版部彫刻工程と、
を備えることを特徴とする印刷用版の成形方法。
【0009】
[2] 前記位置決め用切欠部は、前記弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部以外に設けられることを特徴とする前項1に記載の印刷用版の成形方法。
【0010】
[3] 前記円筒材成形工程は、
所定の加工度となるまで前記弾性材料製シートを丸めて塑性変形させる第1加工と、
前記弾性材料製シートを更に丸めて、前記弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状にする第2加工と、
を有することを特徴とする前項1または2に記載の印刷用版の成形方法。
【0011】
[4] 前記第1加工では、円筒状に成形後の前記弾性材料製シートの径が、前記第1加工で成形した前記弾性材料製シートの径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで前記弾性材料製シートを塑性変形させることを特徴とする前項3に記載の印刷用版の成形方法。
【0012】
[5] 前記第1加工は、前記弾性材料製シートの一端部側と他端部側とで加工度を異なる設定にすることを特徴とする前項3または4に記載の印刷用版の成形方法。
【0013】
[6] 円筒状に成形された前記弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部の両側部に、前記版胴の外周の一部が取り除かれてなる平坦部の幅寸法と略同等の間隔で屈曲部が設けられ、
前記印刷用版及び前記版胴は、前記屈曲部と前記平坦部によって位置決めされることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の印刷用版の成形方法。
【0014】
[7] 前記位置決め用切欠部は、前記接合部を含む前記屈曲部間以外の部位に設けられることを特徴とする前項6に記載の印刷用版の成形方法。
【0015】
[8] 長方形状の弾性材料製シートに形成された位置決め用切欠部が係合する位置決め用突部と、円筒状に形成された外周の一部が取り除かれてなる平坦部と、を有するシリンダー部材と、
前記弾性材料製シートの前記位置決め用切欠部と前記位置決め用突部を係合させた状態で、前記弾性材料製シートの前記位置決め用切欠部の近傍を押え付けて前記シリンダー部材の外周に固定する固定手段と、
前記シリンダー部材の軸方向左右に設けられたローラーによって、前記弾性材料製シートを円筒状に加工するローラー手段と、
前記弾性材料製シートの両端部を前記平坦部の位置で重ね合わせて押圧する押圧手段と、
前記押圧手段によって前記弾性材料製シートが押圧された状態で、前記弾性材料製シートの前記両端部を接合する接合手段と、
を備えることを特徴とする印刷用版の円筒状成形装置。
【発明の効果】
【0016】
上記[1]に記載の発明によれば、円筒状の版胴の外周に装着される印刷用版の成形方法であって、版部となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シートに位置決め用切欠部を形成する切欠部加工工程と、位置決め用切欠部が形成された弾性材料製シートを丸め、弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状に接合する円筒材成形工程と、円筒状に成形された弾性材料製シートの版部に印刷用模様を彫刻する版部彫刻工程と、を備えるので、弾性材料製シートに予め位置決め用切欠部を形成しておくことにより、シリンダー部材などに巻き付けて印刷用版を成形する際にも、弾性材料製シートをシリンダー部材などに対して周方向に位置決めさせることができるため、形状精度に優れ、容易に円筒形状の印刷用版に加工することができ、印刷精度の向上した印刷用版を得られる。
【0017】
また、円筒状に成形された印刷用版に位置決め用切欠部を形成する場合よりも容易に位置決め用切欠部を形成することができる。
【0018】
上記[2]に記載の発明によれば、位置決め用切欠部は、弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部以外に設けられるので、先に形成された位置決め用切欠部が接合部の接合の邪魔になることがない。
【0019】
上記[3]に記載の発明によれば、円筒材成形工程は、所定の加工度となるまで弾性材料製シートを丸めて塑性変形させる第1加工と、弾性材料製シートを更に丸めて、弾性材料製シートの両端部を重ね合わせて円筒状にする第2加工と、を有するので、第1加工によって、弾性材料製シートが丸みを帯びるように予め塑性変形がなされてから第2加工が施されることにより、弾性材料製シートが元に戻ろうとする反発力が低下する。
【0020】
これにより、弾性材料製シートの重ね合わせた両端部は、例えば、溶接などの接合のみでよく、接着剤と溶接を併用して接合するなど強力な接合力が必要なくなり接合作業が簡素になる。
【0021】
第1加工及び第2加工によって弾性材料製シートを段階的に円筒状に成形することにより、精度よく印刷用版を円筒状に成形することができる。
【0022】
上記[4]に記載の発明によれば、第1加工では、円筒状に成形後の弾性材料製シートの径が、第1加工で成形した弾性材料製シートの径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで弾性材料製シートを塑性変形させるので、第1加工において印刷用版が好適な範囲内で加工されるため、その後に施される第2加工が行い易くなる。
【0023】
上記[5]に記載の発明によれば、第1加工は、弾性材料製シートの一端部側と他端部側とで加工度を異なる設定にするので、加工度の大きい端部が加工度の小さい端部の内側に入りこんで重なり合うような形状となるため、その後の接合工程が行い易くなる。
【0024】
上記[6]に記載の発明によれば、円筒状に成形された弾性材料製シートの両端部を重ねて接合した接合部の両側部に、版胴の外周の一部が取り除かれてなる平坦部の幅寸法と略同等の間隔で屈曲部が設けられ、印刷用版及び版胴は、屈曲部と平坦部によって位置決めされるので、印刷用版の接合部は弾性材料製シートの両端部が重なり合っているために曲がり難く、その他の部位よりも低い曲率となることにより屈曲部が形成されるため、印刷用版を版胴の外周に装着させる際に、印刷用版の屈曲部と版胴の平坦部とを位置合わせして案内させ易くなり、印刷用版の装着がより正確且つ容易になる。
【0025】
上記[7]に記載の発明によれば、位置決め用切欠部は、接合部を含む屈曲部間以外の部位に設けられるので、位置決め用切欠部が版胴の曲率と略等しく設定された部位に設けられることにより、印刷用版を版胴に装着させる際に、位置決め用切欠部と係合する版胴の部位に係合させやすい。
【0026】
上記[8]に記載の発明によれば、長方形状の弾性材料製シートに形成された位置決め用切欠部が係合する位置決め用突部と、円筒状に形成された外周の一部が取り除かれてなる平坦部と、を有するシリンダー部材と、弾性材料製シートの位置決め用切欠部と位置決め用突部を係合させた状態で、弾性材料製シートの位置決め用切欠部の近傍を押え付けてシリンダー部材の外周に固定する固定手段と、シリンダー部材の軸方向左右に設けられたローラーによって、弾性材料製シートを円筒状に加工するローラー手段と、弾性材料製シートの両端部を平坦部の位置で重ね合わせて押圧する押圧手段と、押圧手段によって弾性材料製シートが押圧された状態で、弾性材料製シートの両端部を接合する接合手段と、を備えるので、位置決め用切欠部により弾性材料製シートをシリンダー部材に対して周方向に位置決めさせ、更に固定手段により弾性材料製シートを固定させることができるため、ローラー手段、押圧手段及び接合手段による加工作業中にも弾性材料製シートが周方向にずれるなどすることがなく、形状精度に優れ、容易に円筒形状に加工することができる。
【0027】
また、弾性材料製シートを円筒状に成形した後、円筒状成形装置のシリンダー部材と同一形状の版胴を用いて印刷模様を彫刻して、同一形状の版胴を用いて印刷が行われるので、画像位置決め精度が高く、見当合わせが不要になり、印刷精度の向上した印刷用版を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の印刷用版について説明するための説明図である。
図2】本発明の印刷用版の版胴への装着を説明するための説明図である。
図3】本発明の印刷用版を円筒状に成形する円筒状成形装置の正面図である。
図4】本発明の印刷用版を円筒状に成形する円筒状成形装置の側面図である。
図5】本発明の印刷用版を円筒状に成形する円筒状成形装置の平面図である。
図6】本発明の印刷用版の成形方法について説明するための説明図である。
図7】本発明の印刷用版の湾曲部を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
図1は、印刷用版1について説明するための説明図、図2は、印刷用版1の版胴2への装着を説明するための説明図、図3は、印刷用版1を円筒状に成形する円筒状成形装置の正面図、図4は、印刷用版1を円筒状に成形する円筒状成形装置の側面図、図5は、印刷用版1を円筒状に成形する円筒状成形装置の平面図、図6は、印刷用版1の成形方法について説明するための説明図、図7は、印刷用版1の湾曲部15を説明するための拡大図である。
【0031】
以降では、図2に示す版胴2の上下を上下とし、左側を前面或いは先端、右側を後面或いは後端とし、前面から見て左右を左右として説明する。
【0032】
まず、図1〜7を参照して、円筒状の印刷用版1が装着される版胴2を備える、金属製の缶体の印刷をするための版装着装置について説明する。
【0033】
版装着装置は、印刷対象物に対して印刷を行う印刷機、印刷機に用いられる印刷用版1に対して印刷模様を彫刻する彫刻機に共通して備えられるものである。
【0034】
版胴2に装着される印刷用版1としては、円筒状に形成された印刷用版1、特に、小径の印刷用版1が用いられる。
【0035】
印刷される被印刷物は飲料用金属缶であり、特にアルミニウム又はアルミニウム合金製の平板を、ドロー&アイアニング(DI)成形した有底円筒状の飲料用金属缶が好適に印刷される。
【0036】
版装着装置は、印刷機の機枠から前方に突出するように設けられた図示しない版駆動軸と、版駆動軸の先端部側から嵌め込まれて、版駆動軸の外周面に固定される版胴2と、を備えている。
【0037】
版駆動軸は、その基端部側が印刷機の機枠に回転支持され、公知の駆動手段により所定方向に所定速度で回転させられる。
【0038】
版胴2は、円筒状に形成され、版駆動軸が挿通させられる挿通孔がその中心に設けられている。
【0039】
版胴2の外周には、版駆動軸と同心の円筒状の版装着面22が形成されており、版装着面22には、円筒状に形成された印刷用版1、特に、小径の印刷用版1が着脱可能に取り付けられる。
【0040】
版胴2は、重量軽減のために内部が取り除かれて空洞になっており、外周に版装着面22が形成された円筒部と、版胴2の前面を覆う蓋部24と、を備えている。
【0041】
版胴2は、挿通孔に版駆動軸を嵌め合わせた状態で版駆動軸に固定され、版駆動軸と一体となって回転する。
【0042】
版装着面22は、装着された印刷用版1の内面との摩擦抵抗による固定力を確保するため、その表面粗さはRa1μm以下程度で静摩擦を保つことが望ましい。
【0043】
また、その表面粗さを小さく保ち、かつ表面に傷が付きにくい点を考慮すると、版装着面22は、ハードクロム塗装(メッキ)することが好ましい。
【0044】
版胴2には、円筒部の一部が取り除かれて、平坦な面が形成されてなる版固定部材装着面が設けられており、円筒部の外周の版固定部材装着面を除く部分が印刷用版1の装着される版装着面22となっている。
【0045】
版固定部材装着面は、版装着面22を含む円筒面よりも径方向内側に位置しており、版胴2の外周面において径方向内外へ移動可能に設けられ、印刷用版1を固定するための版固定部材を設けている。
【0046】
版装着面22の外径と、印刷用版1の内径は、略同等の寸法となるように設定されている。
【0047】
版固定部材は、例えば、版胴2の軸方向に長い方形状に形成され、版胴2の径方向外側に移動させることによって版固定部材の径方向外側の端面が印刷用版1の内周面に当接するように構成されている。
【0048】
版胴2が版固定部材装着面を有しているため、版装着面22と版固定部材装着面を合計した周長は、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より短くなる。
【0049】
印刷用版1の内周面の周長は、版胴2の版装着面22と版固定部材装着面を合計した周長よりも僅かに大きく、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より僅かに小さい寸法に設定されている。
【0050】
これにより、版胴2に対する印刷用版1の挿入を容易なものとするとともに、版固定部材に押された部位が印刷用版1の他の部位より径方向外側に突出する事態を回避することができるようになっている。
【0051】
版固定部材装着面には、版胴2の軸方向長さの大部分にわたり、軸方向に長い方形状に形成された溝部が形成されている。
【0052】
当該溝部は、横断面形状が方形状で、両側壁及び底壁は平坦面に形成されており、溝部には、版固定部材が版胴2の径方向に移動可能に嵌め込まれている。
【0053】
版装着面22の外径と、印刷用版1の内径は、略同等の寸法となるように設定されている。
【0054】
版固定部材は、印刷用版1の版部12を含む外表面が形成する円筒面の内側の範囲内で、版胴2に装着された印刷用版1の一部を径方向内側から径方向外側に押して拡径するようになっている。
【0055】
版固定部材には、版胴2の軸方向に延びる回転軸が設けられ、版固定部材の内部において回転可能に構成された回転軸が回転操作されることによる回転に伴って、版胴2の内部で版胴2の径方向に位置移動可能に構成されている。
【0056】
版胴2の円筒部の後端面の外周部には、印刷用版1の軸方向の装着位置を決めるためのエンドストッパー23が固定されている。
【0057】
エンドストッパー23は、版装着面22より径方向外側に少し張り出した円環状に形成され、印刷用版1を版胴2の先端側から嵌め込むと、印刷用版1の後端部側が円環状面に当接するように構成されている。
【0058】
エンドストッパー23が設けられることにより、印刷用版1の後端部を版胴2の所定位置に正確に且つ簡単に取付けられるようになる。
【0059】
版胴2の下側且つエンドストッパー23の手前側には、少なくとも印刷用版1の周方向の位置決めをするための位置決め用段部21が設けられている。
【0060】
位置決め用段部21は、例えば、版胴2の径方向外側へ僅かに突出し、平面視で略半円形状の段部として形成されている。
【0061】
印刷用版1には、弾性材料で円筒状に形成された版本体11と、版本体11の外周部の一部に形成された版部12とが備えられている。
【0062】
尚、版部12とは、印刷模様が彫刻された後及び印刷模様が彫刻される前の両方を含む意味で用いる。
【0063】
版本体11は、円筒状に丸められ、重ね合わせられた両端部111,112が接合されることにより印刷用版1に成形される。
【0064】
版本体11の両端部111,112が接合されてなる接合部13は、その幅寸法が短過ぎると接合の強度を保つことが困難になり、一方、幅寸法が長過ぎると材料コストが嵩むことから、少なくとも接合の強度が保たれる程度の幅寸法で重ねられて接合される。
【0065】
尚、接合部13の接合方法としては、溶接による接合が最も好ましいが、弾性材料製シートの両端部111,112が容易に剥がれない接着方法が採用されるのであれば特に限定されるものではない。
【0066】
版本体11は、円筒状に成形された印刷用版1におけるその他の部位(版胴2の版装着面22と当接する部位)の曲率よりも低い曲率で形成された湾曲部15を有している。
【0067】
湾曲部15は、接合部13及びその近傍、具体的には、接合部13の両側部分を含んでなる。
【0068】
湾曲部15とそれ以外の部位との境界部分には、境界部分を挟んだ両側の曲率が異なることにより僅かに屈曲が生じてなる屈曲部15aが形成されており、湾曲部15は、接合部13の両側部に設けられた屈曲部15a間の領域と定義される。
【0069】
湾曲部15は、版胴2の外周の一部が取り除かれてなる平坦部の幅寸法と略同等の幅寸法に設定されることが好ましい。
【0070】
このように構成されることにより、印刷用版1の屈曲部15aと版胴2の平坦部の端部を位置合わせしながら印刷用版1を版胴2に装着させることができる。
【0071】
円筒状に成形された弾性材料製シートの両端部111,112を重ねて接合した接合部13の両側部に、版胴2の外周の一部が取り除かれてなる平坦部の幅寸法と略同等の間隔で屈曲部15aが設けられ、印刷用版1及び版胴2は、弾性材料製シート(印刷用版1)の屈曲部15aと版胴2の平坦部によって位置決めされると、印刷用版1の接合部13は弾性材料製シートの両端部が重なり合っているために曲がり難く、その他の部位(版胴2の版装着面22に当接する部位)よりも低い曲率となることにより屈曲部15aが形成されるため、印刷用版1を版胴2の外周に装着させる際に、印刷用版1の屈曲部15aと版胴2の平坦部とを位置合わせして案内させ易くなり、印刷用版1の装着がより正確且つ容易になる。
【0072】
版部12は、湾曲部15を除く版本体11の外周面の所定箇所に設けられ、印刷用版1が版胴2に装着されたときに版装着面22に密着する版本体11の外面部分に形成されている。
【0073】
弾性材料製シートは、磁性あるいは非磁性の適当な金属等の長方形状の弾性材料製シートからなり、例えば、市販のブリキ板(Fe)が採用され、シートの厚さは、円筒状に形成できて、かつ弾性力により円筒状を保持できる程度であればよく、この例では、約0.26mmである。
【0074】
版本体11には、版部12となる樹脂層がその片面に形成されており、この樹脂層は、例えばポリビニルアルコール系、ビニルエステル系またはポリアミド系等の樹脂を採用することができ、ショアD硬度で例えば硬化後D20〜80程度のものが好適である。
【0075】
例えば、通常のオフセット印刷用のUV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)を採用すると、それ以外の硬化樹脂のような溶剤や高圧スチームによる煩雑な洗浄作業を必要とせず、一般に水洗浄で容易に洗浄作業を行うことができる。
【0076】
樹脂層の厚さは、印刷の版部12として必要な厚みがあればよく、この例では、弾性材料製シートの片面に厚さ0.4〜0.6mmの層を接着させている。
【0077】
円筒状に形成された印刷用版1は、版胴2の先端側から嵌め込まれることによって、版胴2の外周面である版装着面22に装着される。
【0078】
印刷用版1は、一方の長手方向端部、具体的には、版胴2の版装着面22に装着された際の後端側となる端部に位置決め用切欠部14が形成されている。
【0079】
位置決め用切欠部14は、版胴2の位置決め用段部21と係合するようになっており、印刷用版1の軸方向に延びる切欠きが形成され、その奥端部に周方向位置決め用段部21の外周形状と一致する曲率を有する円弧が形成されている。
【0080】
位置決め用切欠部14は、例えば、印刷用版1が版胴2の後端側まで装着されると、位置決め用切欠部14の端部が位置決め用段部21の外周面と当接することによって、印刷用版1の周方向及び版胴2の軸方向の位置決めができるようになっている。
【0081】
位置決め用切欠部14は、弾性材料製シートの両端部111,112を重ねて接合した接合部13以外に設けられるので、先に形成された位置決め用切欠部14が接合部13の接合の邪魔になることがない。
【0082】
更に、位置決め用切欠部14は、接合部13を含む屈曲部15a間以外の部位に設けられる、即ち、位置決め用切欠部14は、版胴2の版装着面22に当接する部位に設けられると、位置決め用切欠部14が版胴2の曲率と略等しく設定された部位に設けられることにより、印刷用版1を版胴2に装着させる際に、位置決め用切欠部14と係合する版胴2の部位(例えば、位置決め用段部21)に係合させやすい。
【0083】
弾性材料製シートは、例えば、第1加工及び第2加工の2段階の加工を経て円筒状の印刷用版に成形される。
【0084】
円筒状の印刷用版1を成形するために必要な寸法で切断した弾性材料製シートをロールプレス加工機にかけて、弾性材料製シートに第1加工を施す。
【0085】
弾性材料製シートは、ロールプレス機に設けられた一対のロール間に挟まれて押圧されることにより丸みを帯びるように加工される。
【0086】
第1加工では、弾性材料製シートを所定の加工度、例えば、円筒状に成形後の弾性材料製シートの径が、第1加工で成形した弾性材料製シートの径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで塑性変形させる。
【0087】
具体的に説明すると、接合後の印刷用版1の内径が125.45mm〜125.50mmである場合、第1加工における弾性材料製シートの内径は、接合後の印刷用版1の内径が約1.2倍〜約3倍の範囲となるよう、半径約150mm〜370mmとなるように加工を施す。
【0088】
第1加工における所定の加工度は、好ましくは、印刷用版1の内径の約1.2倍〜約2.8倍の範囲(150mm〜350mm)、より好ましくは、印刷用版1の内径の約1.4倍〜約2.5倍の範囲(180mm〜310mm)に設定されるとよい。
【0089】
第1加工では、円筒状に成形後の弾性材料製シートの径が、第1加工で成形した弾性材料製シートの径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで弾性材料製シートを塑性変形させるので、第1加工において印刷用版1が好適な範囲内で加工されるため、その後に施される第2加工が行い易くなる。
【0090】
また、第1加工における弾性材料製シートの両端部111,112は、それぞれ異なる加工度、即ち、それぞれ異なる曲率となるように曲げ加工される。
【0091】
両端部111,112の加工度は、弾性材料製シートの端部111,112それぞれの内径の比率(内径大/内径小)が低過ぎる(1に近い)と、両端部111,112が自然に重なり合うようにならないため、後述する第2加工における押圧手段において作業者によって両端部111,112を重ね合わせなければならなくなるため好ましくない。
【0092】
一方、加工度の比率が高過ぎると、一方の端部のみの加工度が高くなり過ぎてしまい、歪が生じる虞があるため好ましくない。
【0093】
そこで両端部111,112の加工度の比率は、約1.1倍〜約2倍の範囲となるように設定され、好ましくは、約1.3倍〜約1.7倍の範囲となるように設定される。
【0094】
第1加工は、弾性材料製シートの一端部111側と他端部112側とで加工度を異なる設定にするので、加工度の大きい(内径の小さい)端部が加工度の小さい(内径の大きい)端部の内側に入りこんで重なり合うような形状となるため、その後の接合工程が行い易くなる。
【0095】
第1加工を施した後になされる第2加工では、弾性材料製シートを完全な円筒状にして、重ね合わせられた端部111,112同士を接合して接合部13を形成することによって、円筒状の印刷用版1に成形する。
【0096】
例えば、第1加工を施すことにより丸みを帯びた弾性材料製シートは、円筒状成形装置3によって円筒状の印刷用版1に成形される。
【0097】
印刷用版1の内径は、第2加工によって、版装着面22の外径と略同等の寸法となるように設定される。
【0098】
以下では、図3〜5に基づいて、印刷用版1を円筒状に成形するための円筒状成形装置3について説明する。
【0099】
円筒状成形装置3は、基台3aと、長方形状の弾性材料製シートが巻き付けられるシリンダー部材31と、シリンダー部材31に巻き付けた弾性材料製シートを押え付けてシリンダー部材31に固定する固定手段と、弾性材料製シートを円筒状に加工するためのローラー手段と、を備えている。
【0100】
シリンダー部材31は、円筒状に形成され、円筒状の外周の一部が取り除かれてなる平坦部311を有している。
【0101】
シリンダー部材31の平坦部311の対向側には、弾性材料製シートに形成された位置決め用切欠部14が係合する位置決め用突部312が形成されている。
【0102】
即ち、シリンダー部材31の位置決め用突部312は、版胴2の位置決め用段部21と同様の機能を果たすものである。
【0103】
弾性材料製シートは、位置決め用切欠部14を位置決め用突部312に係合させてシリンダー部材31と位置合わせされた後、シリンダー部材31に巻き付けられることによって円筒状に成形される。
【0104】
シリンダー部材31は、弾性材料製シートの位置決め用切欠部14が係合する位置決め用突部312を有するので、シリンダー部材31に弾性材料製シートを位置決めすることができ、加工作業中にも弾性材料製シートが周方向にずれるなどすることがないため、精度のよい加工により印刷用版1を成形することができる。
【0105】
固定手段は、弾性材料製シートを押え付けてシリンダー部材31に固定する固定用部材32を備えている。
【0106】
固定用部材32は、シリンダー部材31の下方の下部枠体354に設けられ、例えば、シリンダー部材31の外周面に対して接離可能に上下動するよう構成されている。
【0107】
固定用部材32の上面321は、シリンダー部材31の外周面に当接するためシリンダー部材31の外周面の曲率と同等に形成されており、シリンダー部材31の外周に巻かれた弾性材料製シートを押え付ける際にも弾性材料製シートの変形などが生じることがない。
【0108】
固定用部材32は、弾性材料製シートの位置決め用切欠部14と位置決め用突部312を係合させた状態で、弾性材料製シートの位置決め用切欠部14の近傍を押え付けてシリンダー部材31の外周に固定する。
【0109】
ローラー手段は、基端側に可動部341と、先端側に伸縮自在の伸縮部342を設けた軸体34と、伸縮部342の先端に取り付けられ、弾性材料製シートを円筒状に加工するためのローラー33と、を備えている。
【0110】
軸体34は、回動部材により回動動作する可動部341が基端側に設けられることによって、シリンダー部材31の外周面に対して接離方向に可動可能に構成されている。
【0111】
ローラー33は、シリンダー部材31の軸方向長さと略同等の長さ寸法に設定され、シリンダー部材31の軸方向左右両側にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0112】
シリンダー部材31の軸方向両側には、枠体35が設けられており、各枠体35は、シリンダー部材31の前面側及び後面側に設けられた一対の側板351と、前面側及び後面側の側板351に横架する天板352と、を備えている。
【0113】
一対の側板351は、ローラー33を間に挟み込むように配置されており、高さ方向に長い孔である長孔355がそれぞれ対称位置に形成されている。
【0114】
長孔355は、シリンダー部材31の外周の曲率に合わせてやや湾曲した形状に形成されている。
【0115】
ローラー33の端部は、固定手段の枠体35の長孔355にそれぞれ遊嵌され、伸縮部342が伸縮することにより、シリンダー部材31に取り付けられた弾性材料製シートの外周面に当接しながら長孔355の範囲内で移動するように構成されている。
【0116】
ローラー33は、長孔355の範囲内で移動することにより、シリンダー部材31に巻き付けた弾性材料製シートの下部から湾曲部15となる部位にかけて、シリンダー部材31の平坦部311を除く外周面の少なくとも一部に圧接して、弾性材料製シートを円筒状に加工を施す。
【0117】
弾性材料製シートをシリンダー部材31に取り付ける際、及び成形した印刷用版1をシリンダー部材31から取り外す際には、ローラー33とシリンダー部材31の外周面との間に隙間を形成するために、ローラー33を長孔355の最下部位置まで移動させる。
【0118】
ローラー33は、シリンダー部材31の平坦部311を除く外周面に沿って移動して加工がなされるので、弾性材料製シートを円筒状に形成する際に、シリンダー部材31の外周面に沿って移動するローラー33がシリンダー部材31の平坦部311を移動することがないため、弾性材料製シートを凹みなどのない高精度な円筒状に成形することができる。
【0119】
円筒状成形装置3は、更に、弾性材料製シートの両端部111,112を平坦部311の位置で重ね合わせた状態で押圧すると、押圧手段によって弾性材料製シートが押圧された状態で、弾性材料製シートの両端部111,112を接合する接合手段と、を備える。
【0120】
押圧手段は、弾性材料製シートの両端部111,112を重ね合わせた状態で、シリンダー部材31の径方向外側から弾性材料製シートの湾曲部15となる部位を押圧する押圧部材36と、押圧部材36が取り付けられた上部枠体353と、を有している。
【0121】
押圧部材36は、例えば、断面L字状に形成されてなり、側面が上部枠体353に取り付けられ、下面が湾曲部15となる部位を押圧する押圧面となる。
【0122】
押圧面には、例えば、楕円形の貫通孔361が複数整列した状態で形成されている。
【0123】
接合手段は、例えば、弾性材料製シートの両端部111,112を接合するための溶接棒を収容する溶接ガンなどを有する接合機37を備えている。
【0124】
接合機37は、弾性材料製シートの上方でシリンダー部材31の軸方向に移動可能に構成され、弾性材料製シートの重ね合わせられた両端部111,112が押圧部材36によって押圧されて仮止めされた状態で、押圧面の貫通孔361を介してスポット溶接などにより弾性材料製シートの両端部111,112を接合固定する。
【0125】
弾性材料製シートの湾曲部15となる部位を押圧した状態で接合作業が行われるので、弾性材料製シートの端部111,112がずれるなどすることなく作業を行い易い。
【0126】
また、接合部13は、弾性材料製シートの両端部111,112が重ね合わせられて接合されてなるので、弾性材料製シートの端面を突き合わせて溶接した場合と比較すると高い接合強度を有している。
【0127】
円筒状成形装置3は、シリンダー部材31に巻き付けた弾性材料製シートの反発力による広がりを抑止するためのストッパー手段を備えるのであってもよい。
【0128】
例えば、シリンダー部材31の軸方向両側に配置された枠体35は、ストッパー手段としてのストッパー部材38をそれぞれ備える。
【0129】
ストッパー部材38は、例えば、シリンダー部材31の軸方向に沿って伸びてなる板状部材であり、先端部がシリンダー部材31側へ突出するようにそれぞれシリンダー部材31の軸方向両側に配置されている。
【0130】
ストッパー部材38は、例えば、シリンダー部材31の外周面に対して水平方向に接離可能に枠体35の天板352に取り付けられている。
【0131】
ストッパー部材38の上面381は、シリンダー部材31の平坦部311と平行になるように配置されている。
【0132】
ストッパー部材38の下面には、シリンダー部材31の外周面に当接するような角度で、シリンダー部材31側の長手方向端部が下方に傾斜する傾斜面382が形成されている。
【0133】
傾斜面382は、シリンダー部材31の外周に弾性材料製シートが取り付けられた状態で、シリンダー部材31の外周に当接させることにより、弾性材料製シートをシリンダー部材31の外周面方向に押え付けるようにしてシリンダー部材31に固定する。
【0134】
シリンダー部材31の両側部にストッパー部材38が備えられることにより、シリンダー部材31に巻き付けた未接合の弾性材料製シートの端部に働く反発力によって、端部が左右方向に広がろうとするのを防止することができる。
【0135】
弾性材料製シートをシリンダー部材31に取り付ける際、及び成形した印刷用版1をシリンダー部材31から取り外す際には、ストッパー部材38をシリンダー部材31から離間する方向へ移動させる。
【0136】
上述したように、円筒材成形工程は、所定の加工度となるまで弾性材料製シートを丸めて塑性変形させる第1加工と、弾性材料製シートを更に丸めて、弾性材料製シートの両端部111,112を重ね合わせて円筒状にする第2加工と、を有するので、第1加工によって、弾性材料製シートが丸みを帯びるように予め塑性変形がなされてから第2加工が施されることにより、弾性材料製シートが元に戻ろうとする反発力が低下する。
【0137】
これにより、弾性材料製シートの重ね合わせた両端部111,112は、例えば、溶接などの接合のみでよく、接着剤と溶接を併用して接合するなど強力な接合力が必要なくなり接合作業が簡素になる。
【0138】
第1加工及び第2加工によって弾性材料製シートを段階的に円筒状に成形することにより、精度よく印刷用版1を円筒状に成形することができる。
【0139】
以下では、円筒状成形装置3を用いて印刷用版1を円筒状に成形する方法について説明する。
【0140】
版部12となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シートの長手方向端部に、位置決め用切欠部14を形成する。
【0141】
位置決め用切欠部14は、治具などに載置されて位置決め固定された状態で、所定の弾性材料製シートの位置決め用切欠部14の形成位置にポンチを押し当て、ハンマーで叩くなどすることによって形成される。
【0142】
この時、位置決め用切欠部14は、弾性材料製シートを円筒状に成形した際に、湾曲部15に対向する側に設けられるように形成する。
【0143】
このようにして位置決め用切欠部14が形成された弾性材料製シートは、第1加工が施されてやや湾曲した形状に成形される。
【0144】
例えば、弾性材料製シートは、ロールプレス機に設けられた一対のロール間に挟まれて押圧されることにより丸みを帯びるように加工される。
【0145】
弾性材料製シートの湾曲部15の一部となる各端部111,112は、それぞれ異なる加工度(異なる曲率)で加工が施される。
【0146】
例えば、弾性材料製シートの一端部111側が他端部112側よりも高加工度で加工されていると、高加工度で加工された一端部111が低加工度で加工された他端部112の下側に入り込んで重なり易くなる。
【0147】
第1加工がなされた状態で、弾性材料製シートは、やや丸みを帯びた略円筒状に塑性変形されている。
【0148】
続いて、第1加工がなされた弾性材料製シートに第2加工を施す。
【0149】
例えば、略円筒状に形成された弾性材料製シートを円筒状成形装置3のシリンダー部材31の先端側から挿し込み、シリンダー部材31の外周に取り付ける。
【0150】
弾性材料製シートは、位置決め用切欠部14がシリンダー部材31の位置決め用突部312に嵌め込まれることによってシリンダー部材31に対して位置決めした状態で取り付けられる。
【0151】
弾性材料製シートが位置決めされると、シリンダー部材31の下方に設けられた固定用部材32を上昇させて弾性材料製シートに当接させ、シリンダー部材31に押え付けて弾性材料製シートを固定する。
【0152】
固定用部材32は、シリンダー部材31の位置決め用突部312に嵌め込まれた位置決め用切欠部14の近傍を押え付けるように設けられている。
【0153】
弾性材料製シートは、位置決め用切欠部14が位置決め用突部312に係合されていることにより、周方向へずれることがなく、更に固定用部材32よって弾性材料製シートが固定されていることにより、軸方向へもずれるなどすることがない。
【0154】
この時点では、弾性材料製シートの両端部111,112は、未接合の遊端となっている。
【0155】
弾性材料製シートは、シリンダー部材31の下方側の左右両側で待機していたローラー33が上昇し、シリンダー部材31の外周に沿って移動することによって円筒状に成形される。
【0156】
例えば、ローラー33は、シリンダー部材31の外周に巻き付けられた弾性材料製シートに当接した状態で、シリンダー部材31の下方側からストッパー部材38が設けられた手前まで上昇移動して弾性材料製シートに第2加工を施す。
【0157】
ローラー33がシリンダー部材31の外周沿って徐々に移動することにより、弾性材料製シートの形状が円筒状に近づいていく。
【0158】
ローラー33をストッパー部材38の手前まで上昇させると、弾性材料製シートが元の形状に戻ろうとする反発力を抑えるため、円筒状成形装置3に設けられたストッパー部材38をシリンダー部材31に近接させて、シリンダー部材31の外周面に押え付けるようにして弾性材料製シートの端部側近傍を固定する。
【0159】
この状態で、シリンダー部材31の上部に位置していた押圧部材36を下降させ、弾性材料製シートの重なり合った両端部111,112(弾性材料製シートの湾曲部15となる部位)を押圧部材36によって仮止め状態に押え付ける。
【0160】
押圧部材36で弾性材料製シートの湾曲部15となる部位が仮止めされた状態のままで、接合工程が行われる。
【0161】
接合機37のガンは、弾性材料製シートの上方でシリンダー部材31の軸方向に移動して、押圧部材36の貫通孔361を介してスポット溶接を施すことにより弾性材料製シートの両端を接合する。
【0162】
押圧部材36によって押さえ付けられる部位は、接合部13を含む部位であり、シリンダー部材31の平坦部311の幅寸法と略等しく設定され、押圧部材36で押え付けられていない部位の曲率よりも低い曲率に設定された湾曲部15である。
【0163】
湾曲部15の両端には、湾曲部15と連続する面との曲率が異なることによって屈曲が生じてなる屈曲部15aが形成されている。
【0164】
このようにして、円筒状に成形された印刷用版1が得られる。
【0165】
尚、上述した同様の工程を経ることにより本願発明の印刷用版1を得られるのであれば、上述したような円筒状成形装置3を用いることに限定されるものではない。
【0166】
上述した円筒状成形装置3は、位置決め用切欠部14により弾性材料製シートをシリンダー部材31に対して周方向に位置決めさせ、更に固定手段により弾性材料製シートを固定させることができるため、ローラー手段、押圧手段及び接合手段による加工作業中にも弾性材料製シートが周方向にずれるなどすることがなく、形状精度に優れ、容易に円筒形状に加工することができる。
【0167】
また、弾性材料製シートを円筒状に成形した後、円筒状成形装置3のシリンダー部材31と同一形状の版胴2を用いて印刷模様を彫刻して、同一形状の版胴2を用いて印刷が行われるので、画像位置決め精度が高く、見当合わせが不要になり、印刷精度の向上した印刷用版1を成形することができる。
【0168】
上述では、第1加工及び第2加工の2段階の加工を経て弾性材料製シートを円筒状に成形するように説明したが、1度の加工のみで円筒状に成形可能であれば第1加工は必ずしも必要とされるものではない。
【0169】
また、ロールプレス加工機や円筒状成形装置3を用いて弾性材料製シートを円筒状に加工するように説明したが、上述したロールプレス加工機や円筒状成形装置3は一例であり、これ等以外の装置などを用いて弾性材料製シートを円筒状に加工するのであってもよい。
【0170】
以上説明したような印刷用版1の成形方法は、円筒状の版胴2の外周に装着される印刷用版1の成形方法であって、版部12となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シートに位置決め用切欠部14を形成する切欠部加工工程と、位置決め用切欠部14が形成された弾性材料製シートを丸め、弾性材料製シートの両端部111,112を重ね合わせて円筒状に接合する円筒材成形工程と、円筒状に成形された弾性材料製シートの版部12に印刷用模様を彫刻する版部彫刻工程と、を備えるので、弾性材料製シートに予め位置決め用切欠部14を形成しておくことにより、シリンダー部材31などに巻き付けて印刷用版1を成形する際にも、弾性材料製シートをシリンダー部材31などに対して周方向に位置決めさせることができるため、形状精度に優れ、容易に円筒形状の印刷用版1に加工することができ、印刷精度の向上した印刷用版1を得られる。
【0171】
また、円筒状に成形された印刷用版1に位置決め用切欠部14を形成する場合よりも容易に位置決め用切欠部14を形成することができる。
【0172】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、金属缶体を印刷するための印刷用版の成形に用いられる。
【符号の説明】
【0174】
1…印刷用版
2…版胴
11…版本体
12…版部
13…接合部
14…位置決め用切欠部
15…湾曲部
15a…屈曲部
31…シリンダー部材
32…固定部材
33…ローラー
36…押圧部材
37…接合機
312…位置決め用突部
111,112…端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7