特許第6559421号(P6559421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000002
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000003
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000004
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000005
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000006
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000007
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000008
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000009
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000010
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000011
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000012
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000013
  • 特許6559421-車両の側部構造 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559421
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】車両の側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20190805BHJP
   B62D 33/06 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B62D35/00 B
   B62D33/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-262010(P2014-262010)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-120826(P2016-120826A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ピエロン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】中林 和史
(72)【発明者】
【氏名】中里 潤
(72)【発明者】
【氏名】三宅 徳之
(72)【発明者】
【氏名】上田 威一郎
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−015775(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/096873(WO,A1)
【文献】 実開昭62−076775(JP,U)
【文献】 実公昭48−008813(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 31/00−39/00
B62D 33/06
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられたコーナーパネルと、
前記車両の車高方向に延設され、前記コーナーパネルとの間に前記車両の前方から後方に向かう走行風通路を形成するコーナーベーンと
から形成される側部構造であって、
前記コーナーパネルは、前記走行風通路において、前記車両の車体内方に向けて凹となる凹み部を有し、
前記凹み部は、前記車両の前方から見て前記コーナーベーンにより全て覆われている、車両の側部構造。
【請求項2】
前記コーナーベーンは、
前記走行風通路における走行風の入口部を形成する入口端と、
前記走行風通路における前記走行風の通路部を形成する中間壁と、
前記走行風通路における前記走行風の出口部を形成する出口端と
を有し、
前記凹み部は、
前記入口部側に位置付けられる入口縁と、
前記出口部側に位置付けられる出口縁と
を有し、
前記中間壁は、前記走行風通路側に、前記車両の車体外方に向けて凹となる凹曲面を有し、
前記凹曲面は、前記凹曲面にて最も曲率が大きい曲率最大部を有し、
前記曲率最大部は、前記走行風通路において、前記入口縁よりも前記出口縁に近い位置に設けられている、請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記凹み部は、前記走行風通路において、前記入口部よりも前記出口部に近い位置に設けられている、請求項に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記凹み部は、前記車体内方に向けて凹となる凹曲面から形成される、請求項1から3の何れか一項に記載の車両の側部構造。
【請求項5】
前記車両はトラックである、請求項1から4の何れか一項に記載の車両の側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のフロントコーナーに設けられたコーナーパネルと、コーナーパネルに支持されるとともに車両の車高方向に延設され、コーナーパネルとの間に車両の前方から後方に向かう走行風の走行風通路を形成するコーナーベーンとを備えた車両のフロントコーナー構造が開示されている。
【0003】
このフロントコーナー構造により、車両のフロントコーナーにエアディフレクタが形成される。このエアディフレクタは、トラック等のキャブの側面に発生した負圧によってタイヤに付着した水や泥が吸い上げられ、車両のパネルや窓ガラスが汚れるという問題を解消することができる。また、エアディフレクタによってフロントコーナーに走行風通路が形成されるため、エアディフレクタを設けたことによる走行抵抗の増大を抑制し、車両の走行性能を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のコーナーパネルとコーナーベーンとの間に走行風通路を形成するためには、コーナーベーンをコーナーパネルからある程度の距離を離して取り付ける必要がある。しかし、コーナーベーンが車両の前方に突出し過ぎると、車両の美観低下を招く可能性が増大するとともに、エアディフレクタを設けない場合に比して車両の走行抵抗が却って増大するおそれがある。すなわち、上記従来技術では、コーナーベーンが車両の前方に突出し過ぎることに起因した車両の美観低下の可能性を低減しながら、車両の走行抵抗を効果的に低減することができる、最適なコーナーベーンの形状及び配置、ひいては走行風通路の形状については依然として課題が残されている。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の美観低下の可能性を低減しながら、車両の走行抵抗を効果的に低減することができる車両の側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
(1)本適用例に係る車両の側部構造は、車両の前部に設けられたコーナーパネルと、前記車両の車高方向に延設され、前記コーナーパネルとの間に前記車両の前方から後方に向かう走行風通路を形成するコーナーベーンとから形成される側部構造であって、前記コーナーパネルは、前記走行風通路において、前記車両の車体内方に向けて凹となる凹み部を有し、前記凹み部は、前記車両の前方から見て前記コーナーベーンにより全て覆われている
【0009】
(2)前記本適用例に係る車両の側部構造において、前記コーナーベーンは、前記走行風通路における走行風の入口部を形成する入口端と、前記走行風通路における前記走行風の通路部を形成する中間壁と、前記走行風通路における前記走行風の出口部を形成する出口端とを有し、前記凹み部は、前記入口部側に位置付けられる入口縁と、前記出口部側に位置付けられる出口縁とを有し、前記中間壁は、前記走行風通路側に、前記車両の車体外方に向けて凹となる凹曲面を有し、前記凹曲面は、前記凹曲面にて最も曲率が大きい曲率最大部を有し、前記曲率最大部は、前記走行風通路において、前記入口縁よりも前記出口縁に近い位置に設けられている。
【0010】
(3)前記本適用例に係る車両の側部構造において、前記凹み部は、前記走行風通路において、前記入口部よりも前記出口部に近い位置に設けられている。
(4)前記本適用例に係る車両の側部構造において、前記凹み部は、前記車体内方に向けて凹となる凹曲面から形成される。
【0011】
(5)前記本適用例に係る車両の側部構造において、前記車両はトラックである。
【発明の効果】
【0012】
前記適用例を用いる本発明の車両の側部構造によれば、車両の美観低下の可能性を低減しながら、車両の走行抵抗を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るトラックのキャブの前部を示した斜視図である。
図2図1のトラックの側部を前方から拡大して示した正面図である。
図3図2の上側支持部材の(a)上面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
図4図2の中間支持部材の(a)上面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
図5図2の下側支持部材の(a)上面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
図6図2のA−A方向断面図である。
図7図2のコーナーベーンの正面図である。
図8図7のB−B方向断面図である。
図9図2のコーナーパネルの正面図である。
図10図9のC−C方向断面図である。
図11図9の上側凹み部と下側凹み部とを仮想的に繋げた図である。
図12図6の走行風通路における走行風の圧力分布を示した図である。
図13図2の走行風通路における走行風の圧力分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の側部構造を図面に基づき説明する。
図1は、キャブオーバートラック1のキャブ2の前部を示した斜視図である。キャブ2のフロントガラス4の下方にはラジエータグリル6を有するフロントパネル10が形成されている。
【0015】
フロントパネル10の左右両側には、コーナーパネル12がそれぞれ形成されている。各コーナーパネル12は、上側パネル部12a、下側パネル部12b、上側パネル部12aと下側パネル部12bとの間の継ぎ目溝12cを有して一体に形成されている。また、コーナーパネル12は、キャブ2の左右両側部を形成するサイドパネル(ドアパネル)16に連なっており、コーナーパネル12の下側パネル12bには方向指示器8が取り付けられている。
【0016】
各コーナーパネル12の車両前方側には、車高方向Yにコーナーベーン(エアディフレクタ)20がそれぞれ延設されている。一対のコーナーパネル12及びコーナーベーン20は、キャブ2ひいてはトラック1の側部をそれぞれ形成している。
【0017】
図2はトラック1の側部を前方から拡大して示した正面図である。コーナーベーン20は、コーナーパネル12との間に、キャブ2の前方から後方に走行風が流れる走行風通路24を形成している。また、上側パネル部12aのコーナーベーン20と対向する領域には上側凹み部34が形成され、一方、下側パネル部12bのコーナーベーン20と対向する領域には下側凹み部36が形成されている。また、コーナーベーン20はコーナーパネル12からキャブ2の車体外方に向けて立設された例えば3つの上側支持部材50、中間支持部材52、及び下側支持部材54により支持されている。
【0018】
図3(a)〜(c)に示すように、上側支持部材50は、コーナーベーン20に取り付けられる取付面50a、コーナーパネル12に取り付けられる取付面50b、正面から見て略三角形状をなす前端50c、平面形状をなす後端50d、平面形状をなす上面50e、及び平面形状をなす下面50fから形成され、上側支持部材50内には中空部50gが形成されている。
【0019】
図4(a)〜(c)に示すように、中間支持部材52は、コーナーベーン20に取り付けられる取付面52a、コーナーパネル12に取り付けられる取付面52b、正面から見て略三角形状をなす前端52c、平面形状をなす後端52d、平面形状をなす上面52e、及び平面形状をなす下面52fから形成され、中間支持部材52内には中空部52gが形成されている。
【0020】
図5(a)〜(c)に示すように、下側支持部材54は、コーナーベーン20に取り付けられ、略台形形状をなす取付面54a、コーナーパネル12に取り付けられ、略台形形状をなす取付面54b、曲面形状をなす前端54c、平面形状をなす後端54d、前端54cよりも緩やかな曲面形状をなす上面54e、及び平面形状をなす下面54fから形成され、下側支持部材54内には中空部54gが形成されている。
【0021】
また、取付面50a、50b、52a、52b、54a、54bは、それぞれコーナーベーン20とコーナーパネル12に沿う曲面形状をなし、それぞれコーナーベーン20とコーナーパネル12とに溶接などの取付方法で接合される。
【0022】
また、図2又は図6に示すように、各支持部材50、52、54は、上面50e、52e、54e及び下面50f、52f、54fが走行風通路24における走行風Wの通風方向(キャブオーバートラック1の前進時の走行風の通風方向)に略平行となるように取り付けられている。また、各支持部材50、52、54は、略三角形状をなす前端50c、52c、及び曲面形状をなす前端54cが走行風Wの上流側になるように取り付けられている。これにより、各支持部材50、52、54は、コーナーベーン20をコーナーパネル12に支持しながら、走行風通路24を流れる走行風を整流することができる。また、各支持部材50、52、54にそれぞれ中空部50g、52g、54gを設けることにより、支持部材50、52、54ひいてはトラック1の軽量化を図ることができる。
【0023】
図6図2のA−A方向断面図である。走行風通路24には、トラック1の前進時における走行風Wの入口となる入口部28と、サイドパネル16側であってトラック1の前進時における走行風Wの出口となる出口部30と、入口部28と出口部30との間における走行風Wの通路となる通路部32とが形成されている。
【0024】
図7はコーナーベーン20の正面図であり、図8図7のB−B方向断面図である。コーナーベーン20は、走行風通路24の入口部28を形成する入口端20aを有し、この入口端20aは、トラック1に取り付けられた状態で、入口端20aの下端が車幅方向Xの車両中心側になるように車高方向Yに対して傾斜するように形成されている。また、コーナーベーン20は、走行風通路24の出口部30を形成する出口端20bを有し、この出口端20bは、トラック1に取り付けられた状態で、車高方向Yに略平行になるように形成されている。
【0025】
また、コーナーベーン20は、走行風通路24の通路部32側にの面であって、トラック1の車体外方に向けて凹となる凹曲面20cと、凹曲面20cの反対側の凸曲面20dとから中間壁20eを形成し、更に、上側の端である上端20fと下側の端である20gとを有している。
【0026】
図8に示すように、凹曲面20c及び凸曲面20dは、複数の曲率を有し形成されており、また、図示しないが、三次元的にも、複数の曲率からなる滑らかな面で形成されている。また、コーナーベーン20の前述した各端部20a、20f、20f、20gにより、コーナーベーンの外周縁20hが形成される。
【0027】
図9は、コーナーパネル12の正面図であり、図10図9のC−C方向断面図である。図10に示すように、上側凹み部34は上側パネル部12aをキャブ2の車体内方に向けて凹ませて形成され、下側凹み部36は下側パネル部12bをキャブ2の車体内方に向けて凹ませて形成されている。また、上側パネル部12aと下側パネル部12bとの間に形成される継ぎ目溝12cもキャブ2の車体内方に向けて凹ませて形成されている。また、下側パネル部12bには、方向指示器8を取り付けるための取付穴8aが開口されている。
【0028】
上側凹み部34及び下側凹み部36は、それぞれ車幅方向Xのフロントパネル10側、すなわち入口部28側に位置付けられる入口縁34a、36aと、車幅方向Xのサイドパネル16側、すなわち出口部30側に位置付けられる出口縁34b、36bとを有している。
【0029】
図9に示すように、各入口縁34a、36aは、コーナーパネル12がトラック1に取り付けられた状態で、車高方向Yに対して傾斜するように延設されている。詳しくは、各入口縁34a、36aは、それぞれの下端が車幅方向Xの車両中心側になるように車高方向Yに対して傾斜し、コーナーベーン20の入口端20aと略平行になるように形成されている。
一方、各出口縁34b、36bは車高方向Yに略平行になるように形成されており、コーナーベーン20の出口端20bとも略平行になるように形成されている。
【0030】
図11は、上側凹み部34と下側凹み部36とを仮想的に繋げた図である。上側凹み部34は、入口縁34a、出口縁34bの他、通路部32の一部を形成するための上側凹曲面34e、車高方向Yで見て上側の縁である上側縁34c、車高方向Yで見て下側の縁である下側縁34dを有している。
【0031】
また、下側凹み部36は、入口縁36a、出口縁36bの他、通路部32の一部を形成するための下側凹曲面36e、車高方向Yで見て上側の縁である上側縁36c、車高方向Yで見て下側の縁である下側縁36dを有している。また、入口縁34aと入口縁36aとを仮想的に繋げると仮想入口線35aが形成され、出口縁34bと出口縁36bとを仮想的に繋げると仮想出口線35bが形成される。
【0032】
そして、仮想入口線35a及び仮想出口線35bと、前述した各縁34a、34b、34c、及び各縁36a、36d、36bとを繋げることにより、上側凹み部34及び下側凹み部36の外縁を繋げた仮想的な外周縁35cが形成される。図7に示したコーナーベーン20の外周縁20hは、図11に示す上側凹み部34及び下側凹み部36の外周縁35cと類似する形状に形成されている。
【0033】
図6に示すように、上側凹み部34は、走行風通路24において、入口部28よりも出口部30に近い位置に設けられている。上側凹み部34は、図6の断面で見て車体内方に向けて曲率が一定又は略一定の凹となる曲面に形成されている。上側凹み部34には車体内方に最も凹まされた最凹部40が位置付けられている。なお、図示しないが、下側凹み部36も上側凹み部34と同様に、図6の断面で見て曲率が一定又は略一定の凹となる曲面に形成されている。
【0034】
一方、コーナーベーン20の凹曲面20cには、曲率半径が最も小さい、換言すると、湾曲具合(曲がり具合)が最もきつく曲率が最も大きい曲率最大部44が形成されている。曲率最大部44は、車高方向Yに延びる線状、或いは点状をなして形成され、走行風通路24において、上側凹み部34の入口縁34aよりも出口縁34bに近い位置に設けられている。
【0035】
走行路通路24の入口部28には、上側パネル部12aからコーナーベーン20の入口端20aに至る距離として第1距離D1が確保されている。第1距離D1は、入口端20aと上側パネル部12aとの最短距離である。また、走行路通路24の通路部32には、上側パネル部12aの上側凹み部34の最凹部40からコーナーベーン20の凹曲面20cに至る距離として第2距離D2が確保されている。第2距離D2は、通路部32において凹曲面20cと上側パネル部12aとの最長距離である。
【0036】
また、走行路通路24の出口部30には、上側パネル部12aからコーナーベーン20の出口端20bに至る距離として第3距離D3が確保されている。第3距離D3は、出口端20cと上側パネル部12aとの最短距離である。第1〜第3距離D1〜D3は、上側パネル部12aからの距離測定の基点が曲面にあるときは上側パネル部12aからの法線距離であり、当該基点が平面にあるときは上側パネル部12aからの垂線距離として規定される。
【0037】
第1〜第3距離D1〜D3には以下の大小の関係式が成立する。
D2>D1・・・(1)
D2>D3・・・(2)
D1>D3・・・(3)
【0038】
また、第1〜第3距離D1〜D3には以下の比率の関係式が成立する。
1<(D2/D1)<1.5・・・(4)
0.5<(D3/D1)<1・・・(5)
なお、より好ましくは、
(D2/D1)=1.13・・・(6)
(D3/D1)=0.57・・・(7)
の関係式が成立する。
【0039】
以上のように本実施形態のトラック1の側部構造は、上述した第1〜第3距離D1〜D3の関係式を満たす形状の走行風通路24を備えることにより、トラック1の走行抵抗を効果的に低減することができる。詳しくは、図12及び図13の走行風通路24における走行風Wの圧力分布を参照すると、走行風通路24に、曲率最大部44の近傍に走行風通路24内の他の領域に比して高圧となる高圧部46を形成することができる。
【0040】
この高圧部46は、走行風Wの風圧に抗して、コーナーベーン20をキャブ2の前方に向けて押圧する押圧力Fをコーナーベーン20に作用させ、キャブ2ひいてはトラック1の走行抵抗を全体として低減させる。
【0041】
また、コーナーパネル12に上下側凹み部34、36を設けることにより、コーナーベーン20をコーナーパネル12から過度に離し過ぎないで、上記(1)〜(5)の関係式、ひいては上記(6)及び(7)の関係式を満たす走行風通路24を形成することができる。これにより、コーナーベーン20をコーナーパネル12から離し過ぎ、コーナーベーン20がトラック1の前方に突出し過ぎることに起因したトラック1の美観低下の可能性を低減しながら、トラック1の走行抵抗を効果的に低減することができる。
【0042】
また、曲率最大部44は、走行風通路24において、上下側凹み部34、36のそれぞれの入口縁34a、36aよりも出口縁34b、36bに近い位置に設けられている。これにより、走行風通路24において、曲率最大部44と出口縁34b、36bとの距離を短くしつつ、第2距離Dの長さを極力長く確保し、第3距離Dを極力短くすることができる。したがって、上下側凹み部34、36を利用した流路絞り効果により、曲率最大部44の近傍に高圧の高圧部46を効率的に形成することができる。
【0043】
また、コーナーパネル12には、走行風通路24において車体内方に向けて凹となる上下側凹み部34,36が形成されるが、これら上下側凹み部34,36は、トラック1を前方や側方から見た場合、コーナーベーン20により覆われて外観上は視認困難となるため、トラック1の美観を損なう可能性を低減しながら、トラック1の走行抵抗を効果的に低減することができる。
【0044】
また、上下側凹み部34、36は、走行風通路24において、入口部28よりも出口部30に近い位置に設けられている。これにより、上下側凹み部34、36が走行風通路24の下流側に位置付けられることとなり、第2距離D2を規定する最凹部40と、第3距離D3を規定する出口端20bとの距離が近くなる。これにより、走行風通路24において、曲率最大部44と出口端20bとの距離を短くしつつ、第2距離Dの長さを極力長く確保し、第3距離Dを極力短くすることができる。したがって、上下側凹み部34、36を利用した流路絞り効果により、曲率最大部44の近傍に高圧の高圧部46を効率的に形成することができる。なお、コーナーベーン20の形状やトラック1へのコーナーベーン20の取り付け方等によっては、最凹部40により第2距離D2が規定されない場合もあり得る。
【0045】
また、上下側凹み部34,36のそれぞれの入口縁34a、36aは、車高方向Yに対して傾斜して形成されている。これにより、入口縁34a、36aを車高方向Yに平行に形成した場合に比して、入口縁34a、36aを長く確保することができるため、走行風通路24にて上下側凹み部34,36に流入する走行風Wの風量を増大させることができる。したがって、上下側凹み部34、36を利用して高圧部46の圧力を効果的に高めることができるとともに、高圧部46を広範囲に亘って形成することができ、トラック1の走行抵抗をさらに効果的に低減することができる。
【0046】
また、コーナーベーン20の外周縁20hは、上下側凹み部34、36の仮想的な外周縁35cの形状と類似形状に形成されている。これにより、走行風通路24の入口部28の段階で、走行風通路24に流入する走行風Wの風量を増大させることができ、しかも、高圧部46が広範囲に形成される走行風通路24の下部側、ひいては上下側凹み部34,36の下部側の走行風Wの風量を集中的に増大可能である。したがって、高圧部46の圧力をさらに効果的に高めることができ、トラック1の走行抵抗をさらに効果的に低減することができる。
【0047】
また、本実施形態のように、コーナーパネル12を上側パネル部12a、下側パネル部12bから形成し、上下側パネル部12a、12b間に継ぎ目溝12cが形成される場合であっても、上側パネル部12a、下側パネル部12bにそれぞれ上側凹み部34と下側凹み部36とを設けることにより、トラック1の走行抵抗を効果的に低減することができる。しかも、継ぎ目溝12cは、走行風通路24において整流機能を有することから、トラック1の走行抵抗をさらなる低減に貢献する。
【0048】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0049】
例えば、上記実施形態では、コーナーパネル12は、上側パネル部12aと下側パネル部12bとから構成され、上側及び下側パネル部12a、12bの間には継ぎ目溝12cが形成されている。そして、上側及び下側パネル部12a、12bには、それぞれ上側凹み部34、下側凹み部36が形成されている。しかし、これに限らず、支持部材26の設置箇所や設置の有無を適宜調整することにより、走行風通路24に形成される凹み部を3つ以上形成することが可能である。
【0050】
また、コーナーパネル12は、は継ぎ目溝12cが無いパネルで形成しても良いし、上側パネル部12a、下側パネル部12bを分離した別パネルで形成しても良い。また、コーナーパネル12は、フロントパネル10などの他のパネルと一体に形成されても良い。また、コーナーパネル12の凹み部は少なくとも1つの凹み部により1つの走行風通路24が形成されれば良い。また、コーナーパネル12に形成する凹み部は、図6に示したような一定又は略一定の曲率の曲面に限らず、例えば、複数の曲率を有する滑らかな曲面でから形成しても良い。
【0051】
また、コーナーベーン20の形状や配置によっては、上述した第1〜第3距離D1〜D3の関係式を満たすものの、凹み部を1つも有さない走行風通路24の実現も可能であり、すなわち、コーナーパネル12に凹み部が無くても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、上側凹み部34及び下側凹み部36の仮想的な外周縁35cの形状は、コーナーベーン20の外周縁20hと類似形状に形成されているが、これに限らず相似形状や同一形状であっても良い。
【0053】
また、上記実施形態のトラック1の側部構造は、上述したキャブオーバートラック1に限らず、他の商用車や乗用車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 キャブオーバートラック(トラック、車両)
12 コーナーパネル
20 コーナーベーン
20a 入口端
20b 出口端
20e 中間壁
20c 中間壁の凹曲面
24 走行風通路
28 入口部
30 出口部
32 通路部
34 上側凹み部(凹み部)
34a 入口縁
34b 出口縁
34e 上側凹曲面(凹曲面)
36 下側凹み部(凹み部)
36a 入口縁
36b 出口縁
36e 下側凹曲面(凹曲面)
44 曲率最大部
W 走行風
Y 車高方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13