特許第6559448号(P6559448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559448
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】コンポジット推進薬
(51)【国際特許分類】
   C06D 5/00 20060101AFI20190805BHJP
   C06B 29/22 20060101ALI20190805BHJP
   C06B 33/06 20060101ALI20190805BHJP
   C06B 43/00 20060101ALI20190805BHJP
   F02K 9/08 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C06D5/00 A
   C06B29/22
   C06B33/06
   C06B43/00
   F02K9/08
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-54787(P2015-54787)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-175778(P2016-175778A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩井 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】高塚 悠矢
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−050017(JP,A)
【文献】 特表2008−538219(JP,A)
【文献】 特表2006−508836(JP,A)
【文献】 特開2011−125934(JP,A)
【文献】 特開昭56−063898(JP,A)
【文献】 特開昭61−068383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B
C06D
F02K
C08G 18/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過塩素酸アンモニウムと、
金属粉末と、
水酸基末端液状ポリブタジエンと、硬化剤と、化学式(1)で表されるアミノアルコールとを含むバインダーと
を含有する混合物を硬化させて得られる
コンポジット推進薬。
【化1】
…(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のコンポジット推進薬であって、
前記過塩素酸アンモニウムと前記金属粉末と前記バインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、
前記過塩素酸アンモニウムの含有量が50〜88重量部であり、
前記金属粉末の含有量が2〜25重量部であり、
前記水酸基末端液状ポリブタジエンの含有量が8〜35重量部であり、
前記アミノアルコールの含有量が0.01〜5.0重量部である
コンポジット推進薬。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンポジット推進薬であって、
前記化学式(1)のRがエチレン基であり、Rがイソプロピレン基もしくはエチレン基であるコンポジット推進薬。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンポジット推進薬であって、
前記水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量が2000〜4000であり、その1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6である
コンポジット推進薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な物理特性を有するコンポジット推進薬に関する。
【背景技術】
【0002】
固体推進薬は、液体推進薬に比べ長期保存が可能であり、取り扱いが容易であり、初期より大きな推力が得られるという特長を有する。そのため、固体推進薬は、人工衛星打ち上げ用ロケットや軍事用ロケット等に広く利用されている。
【0003】
固体推進薬は、ダブルベース系固体推進薬と、コンポジット推進薬とに大別される。ダブルベース系固体推進薬は、ニトログリセリンと、ニトロセルロースとを主成分とする。コンポジット推進薬は、酸化剤と、燃料成分となるバインダーとを主成分とする。
【0004】
特許文献1〜4には、コンポジット推進薬に関する技術が開示されている。コンポジット推進薬としては、例えば、過塩素酸アンモニウムを酸化剤とし、アルミニウム粉末を助燃剤とし、水酸基末端液状ポリブタジエンをバインダーとするものが知られている。
【0005】
コンポジット推進薬では、強い応力を受けることにより内部に空隙が生じると、燃焼安定性の低下を引き起こす可能性がある。これを防ぐために、コンポジット推進薬は、十分な物理特性(例えば、応力歪み特性)を有している必要がある。特許文献1〜4では、推進薬に含まれるバインダー成分と酸化剤等その他の成分との接着性を高めるための添加剤(ボンディング剤)を用いて、コンポジット推進薬の物理特性を改善することが提案されている。
【0006】
このようなボンディング剤としては、例えば、アジリジン化合物であるトリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕フォスフィンオキシド(MAPO)や、米国3M社製の、MAPOへのアジピン酸及び酒石酸の付加体(MT−4)等が挙げられている。また、米国3M社製の、アミン化合物であるテトラエチレンペンタミンとアクリロニトリルとの反応生成物(HX−879)、テトラエチレンペンタミンとグリシドールとアクリロニトリルとの生成反応物(HX−878)等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−137707号公報
【特許文献2】特開2009−292685号公報
【特許文献3】特開平8−109093号公報
【特許文献4】特開2011−20880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ボンディング剤として用いられるアジリジン化合物は、高い毒性を有しており、使用に際して健康を害するという問題があった。また、アミン化合物であるHX−879やHX−878は高価であり、しかも、これらを使用しても必ずしも十分な物理特性が得られないという問題があった。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、良好な物理特性を有するコンポジット推進薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るコンポジット推進薬は、過塩素酸アンモニウムと、金属粉末と、バインダーとを含有する混合物を硬化させて得られる。上記バインダーは、水酸基末端液状ポリブタジエンと、硬化剤と、化学式(1)で表されるアミノアルコールとを含む。
【0011】
【化1】
…(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0012】
この構成では、低分子のアミン化合物であるアミノアルコールをボンディング剤として機能させ、酸化剤である過塩素酸アンモニウムとバインダーの成分である水酸基末端液状ポリブタジエンとの接着性を高めることができる。これにより、良好な物理特性を有するコンポジット推進薬を提供することができる。
【0013】
上記過塩素酸アンモニウムと上記金属粉末と上記バインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、
上記過塩素酸アンモニウムの含有量が50〜88重量部であり、
上記金属粉末の含有量が2〜25重量部であり、
上記水酸基末端液状ポリブタジエンの含有量が8〜35重量部であり、
上記アミノアルコールの含有量が0.01〜5.0重量部であってもよい。
この構成では、特に良好な物理特性を有するコンポジット推進薬が得られる。
【0014】
上記化学式(1)のRがエチレン基であり、Rがイソプロピレン基もしくはエチレン基であってもよい。
この構成により、特に良好な物理特性を得ることができる。
【0015】
上記水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量が2000〜4000であり、その1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6であってもよい。
この構成では、良好な物理特性を得るための特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンではなく、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンをバインダーとして用いつつ、コンポジット推進薬の物理特性を向上させることができる。これにより、良好な物理特性を有するコンポジット推進薬を安価で製造可能となる。
【発明の効果】
【0016】
バインダーと酸化剤との接着性を高め、良好な物理特性を有するコンポジット推進薬を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るコンポジット推進薬は、主として、酸化剤である過塩素酸アンモニウムと、助燃剤である金属粉末と、燃料成分であるバインダーとを含有する。
以下、本実施形態に係るコンポジット推進薬の各構成について詳細に説明する。
【0018】
[過塩素酸アンモニウム]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、酸化剤として、酸素の供給性能に優れる過塩素酸アンモニウムが用いられる。
【0019】
過塩素酸アンモニウムの含有量は、過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーの含有量の合計を100重量部とすると、50〜88重量部であることが好ましく、60〜87重量部であることが更に好ましい。
【0020】
過塩素酸アンモニウムの含有量を50重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼時に酸素の供給が良好に行われるようになる。また、過塩素酸アンモニウムの含有量を60重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼時に酸素の供給が更に良好に行われるようになる。
【0021】
コンポジット推進薬では、燃焼剤であるバインダーが不足すると、良好な燃焼が得られなくなる。その点、過塩素酸アンモニウムの含有量を、88重量部以下、更には87重量部以下に留めることにより、コンポジット推進薬におけるバインダーの不足を防止することができる。
【0022】
更に、スラリーの粘度を調整し注型工程を容易にする観点、及び、嵩密度を大きくする観点から、過塩素酸アンモニウムは、複数の異なる粒子径を有する粒子により構成されていることが好ましい。例えば、過塩素酸アンモニウムの粒子として、メディアン径10〜100μmの小粒子、メディアン径150〜250μmの中粒子、及びメディアン径350〜450μmの大粒子の中から、2種類又は3種類を混合して用いることが好ましく、嵩密度を大きくする観点から3種類を混合することが更に好ましい。
【0023】
[金属粉末]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、助燃剤として、燃焼時のエネルギー効率が良好な金属粉末が用いられる。金属粉末は、特定の種類に限定されない。しかし、金属粉末は、取り扱いの容易さの観点から、マグナリウムとアルミニウムとのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0024】
マグナリウムは、マグネシウムとアルミニウムとの合金であるが、マグネシウムとアルミニウムとの組成割合は任意である。しかし、マグナリウムは、マグネシウム成分による着火性と、アルミニウム成分による燃焼性とが良好に発現されるような組成割合のマグネシウム及びアルミニウムを含むことが好ましい。
【0025】
また、マグナリウムとアルミニウムとの混合物を用いる場合にも、この混合物が、マグネシウム成分による着火性と、アルミニウム成分による燃焼性とが良好に発現されるような組成割合のマグナリウム及びアルミニウムを含むことが好ましい。
【0026】
更に、マグナリウムは、過塩素酸アンモニウムの燃焼によって発生する塩化水素の量を低減させる機能を有する。そのため、低公害化の観点から、コンポジット推進薬の金属粉末にはマグナリウムが含まれることが好ましい。
【0027】
金属粉末の含有量は、過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、2〜30重量部であることが好ましく、2〜25重量部であることが更に好ましい。
【0028】
金属粉末の含有量を2重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼速度の温度依存性を低減させることができる。また、金属粉末の含有量を30重量部以下とすることにより、金属粉末とバインダーとの混合性が良好になる。更に、金属粉末の含有量を25重量部以下とすることにより、金属粉末とバインダーとの混合性が更に良好になる。
【0029】
金属粉末の平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、1〜50μmであることが更に好ましい。
【0030】
金属粉末の平均粒子径を100μm以下とすることにより、金属粉末の燃焼効率が良好になる。また、金属粉末の平均粒子径を50μm以下とすることにより、金属粉末の燃焼効率が更に良好になる。更に、金属粉末の平均粒子径を1μm以上とすることにより、コンポジット推進薬の製造時のハンドリング性が向上する。
【0031】
[バインダー]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、燃料成分として、バインダーが用いられる。コンポジット推進薬の製造に用いられる硬化前のバインダーには、樹脂成分と、硬化剤と、ボンディング剤とが含まれる。樹脂成分は、主として、水酸基末端液状ポリブタジエンにより構成される。また、硬化前のバインダーには、各種添加剤(バインダー添加剤)が含まれていてもよい。
【0032】
過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、バインダーに含まれる水酸基末端液状ポリブタジエンの含有量は、8〜35重量部であることが好ましい。これにより、コンポジット推進薬において良好な燃焼が得られるようになる。
【0033】
以下、バインダーの成分の詳細について説明する。
【0034】
(1)水酸基末端液状ポリブタジエン
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを用いることが可能である。汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンでは、1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6個であり、ヒドロキシル基が付加された3官能以上の多官能成分が多く含まれる。このような汎用品の水酸基末端液状ポリブタジエンは、ブタジエンを原材料とし、イソプロパノール中で過酸化水素を触媒としてラジカル重合により製造される。
【0035】
また、本実施形態に係るコンポジット推進薬では、多官能成分が少なくなるように調整された特殊品である水酸基末端液状ポリブタジエンを用いることも可能である。特殊品である水酸基末端液状ポリブタジエンの1分子中の平均水酸基数は1.9〜2.2個である。このような特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンは、汎用品の水酸基末端液状ポリブタジエンを繰り返し精製する手法や、アニオン重合等の特殊な重合方法を用いる手法を用いて製造される。
【0036】
一般的なコンポジット推進薬の製造方法では、水酸基末端液状ポリブタジエンをイソシアネート系硬化剤によって硬化させる。多官能成分の含有量が少ない特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンは、イソシアネート系硬化剤によって硬化させられても、汎用品に比べて柔らかく伸びの大きい樹脂となる。そのため、一般的なコンポジット推進薬の製造方法では、コンポジット推進薬の物理特性を向上させる観点から、特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンを用いることが多かった。
【0037】
これに対して、本実施形態に係るコンポジット推進薬では、後述するように、特定のボンディング剤を用いることによって物理特性を向上させることができる。このため、本実施形態に係るコンポジット推進薬では、汎用品の水酸基末端液状ポリブタジエンをイソシアネート系硬化剤によって硬化させても、十分に良好な物理特性を得ることが可能である。したがって、特殊品を用いる場合よりも安価で製造可能となるという観点から、安価で入手しやすい汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量は2000〜4000である。水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量を2000以上とすることによって、混和した酸化剤や金属粉末が分散した後の再凝集を抑制することができる。また、水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量を4000以下とすることによって、未硬化スラリーの粘度が高くなりすぎないため注型がしやすく、また、気泡の混入が発生しにくくなる。
【0039】
(2)バインダー添加剤
バインダー添加剤は、バインダーを所望の物性とするために添加される。バインダー添加剤としては、例えば、可塑剤、ポリマー鎖延長剤、架橋剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0040】
可塑剤は、バインダーの低温での伸び特性を向上させ、未硬化スラリーの粘度を低下させる目的で添加される。
【0041】
本実施形態で利用可能な可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジペート(DOA)、イソデシルアジペート(DIDA)、イソデシルペラルゴネート(IDP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルセパケート(DOS)等のエステル類や1,2,4−ブタントリオールトリナイトレート(BTTN)、トリメチロールエタントリナイトレート(TMETN)等が挙げられる。
【0042】
可塑剤は特定の種類に限定されず、複数種類の可塑剤が併用されてもよい。可塑剤の添加量は、バインダー100重量部に対して、40重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることが更に好ましい。
【0043】
ポリマー鎖延長剤は、水酸基末端液状ポリブタジエンの架橋点間の平均分子量を制御する目的で添加される。ポリマー鎖延長剤は、後述する硬化剤と化学反応し、水酸基末端液状ポリブタジエンとの間にポリマー鎖を形成する。ポリマー鎖延長剤は、水酸基末端液状ポリブタジエンの末端に水酸基を有するポリマーを添加することができる。
【0044】
ポリマー鎖延長剤は、1分子中に2〜2.3個の水酸基を有するポリマーであることが好ましい。また、ポリマー鎖延長剤の数平均分子量は、80〜4000であることが好ましく、130〜3500であることが更に好ましい。
【0045】
ポリマー鎖延長剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロックポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、1,8−オクタンジオール、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等が挙げられる。
【0046】
ポリマー鎖延長剤は特定の種類に限定されず、複数種類のポリマー鎖延長剤が併用されてもよい。ポリマー鎖延長剤の添加量は、バインダー100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることが更に好ましい。
【0047】
架橋剤は、後述する硬化剤と化学反応し、3次元的にバインダー成分を架橋する分岐点となるポリオールであり、バインダーの物性を変化させるために添加される。
【0048】
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルトリオール、ポリエステルトリオール等の三官能以上のポリオール類等が挙げられる。架橋剤は特定の種類に限定されず、複数種類の架橋剤が併用されてもよい。
【0049】
(3)硬化剤
本実施形態では、硬化剤として、取り扱いの容易さの観点から、イソシアネート系硬化剤を用いる。
【0050】
イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレン(ビスシクロヘキシルイソシアネート)、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。また、これらのモノマー、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等を用いることができる。
【0051】
上記のうち、スラリーの経時的な粘度変化を小さく抑え、良好な物理特性を得ることができるという点で、イソフォロンジイソシアネート硬化剤を用いることが更に好ましい。
【0052】
なお、硬化剤は、水酸基末端液状ポリブタジエンの活性部位と熱処理において化学反応する硬化剤であれば特に限定されない。一分子中に二個以上の活性部位を有し、硬化により分子量の増大が可能である硬化剤が好ましい。
【0053】
硬化剤は、複数種類のイソシアネート系硬化剤を含んでいてもよく、イソシアネート系硬化剤以外の硬化剤を含んでいてもよい。
【0054】
硬化剤の含有量は、水酸基末端液状ポリブタジエンの活性部位及びアミノアミノアルコールのヒドロキシル基1分子に対して、硬化剤の活性部位が0.5分子以上となるように調整されていることが好ましく、硬化剤の活性部位が0.7分子以上となるように調整されていることが更に好ましい。硬化剤の活性部位を0.5分子以上、更には0.7分子以上とすることにより、水酸基末端液状ポリブタジエン及びアミノアミノアルコールの硬化性が向上する。
【0055】
なお、水酸基末端液状ポリブタジエン及びアミノアミノアルコールの硬化性は、硬化剤の活性部位が1.0分子を超えるとあまり向上しなくなり、硬化剤の活性部位が1.5分子を超えるとほとんど向上しなくなる。
【0056】
そのため、硬化剤の含有量は、コストの観点から、水酸基末端液状ポリブタジエンの活性部位及びアミノアミノアルコールのヒドロキシル基1分子に対して、硬化剤の活性部位が1.5分子以下となるように調整されていることが好ましく、硬化剤の活性部位が1.0分子以下となるように調整されていることが更に好ましい。
【0057】
(4)ボンディング剤
本実施形態に係るコンポジット推進薬には、ボンディング剤として、一級及び二級アミノ基とヒドロキシル基とを有するアミノアルコールが用いられる。本実施形態において、ボンディング剤としてのアミノアルコールは、下記化学式(1)で表される。化学式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。
【0058】
【化2】
…(1)
【0059】
炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびイソプロピレン基、イソブチレン基及びtert−ブチレン基等が挙げられる。しかし、R及びRは、これらのうち特定のものに限定されるわけではない。また、RとRとは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0060】
例えば、上記化学式(1)で表され、Rがエチレン基であり、Rがイソプロピレン基もしくはエチレン基であるアミノアルコールが用いられることが特に好ましい。このようなアミノアルコールをボンディング剤として用いた場合に、特に良好な物理特性を得ることができる。
【0061】
上記化学式(1)で表されるアミノアルコールをコンポジット推進薬のスラリーに添加すると、Rに結合している一級及び二級アミノ基は、過塩素酸アンモニウムと反応し得る。また、Rに結合しているヒドロキシル基は、イソシアネート系硬化剤と反応し得る。
【0062】
これにより、本実施形態では、上記化学式(1)で表されるアミノアルコールを、ボンディング剤として良好に機能させることができる。したがって、アジリジン化合物のような毒性の高いボンディング剤や、従来の高価なアミン化合物のボンディング剤を用いなくとも、コンポジット推進薬の物理特性を向上させることができる。
【0063】
過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、ボンディング剤としてのアミノアルコールの含有量は、0.01〜5.0重量部であることが好ましく、0.1〜1.0重量部であることが更に好ましい。ボンディング剤の含有量を0.01重量部以上とすることにより、十分な物理特性(特に、応力歪み特性)を得ることができ、0.1重量部以上とすることにより、更に良好な物理特性を得ることができる。また、ボンディング剤の含有量を5.0重量部以下に抑えることにより、経済効率よく、十分に、物理特性を向上させる効果を得ることができる。更に、ボンディング剤の含有量を1.0重量部以下とすることにより、十分に上記効果を得ることができ、経済性が向上する。
【0064】
なお、上記化学式(1)で表されるアミノアルコールがボンディング剤として良好な機能を発揮するのは、Rに結合している一級アミノ基が、過塩素酸アンモニウムに対して、プロトン(水素イオン)を引き抜くように働きかけるからであると推測される。その効果として、上記アミノアルコールの作用により、過塩素酸アンモニウムから過塩素酸イオンが生じ、イオン結合による高い結合力を得ることができるものと考えられる。
【0065】
また、本実施形態におけるコンポジット推進薬の製造工程では、少なくとも、イソシアネート系硬化剤をスラリーに添加するよりも前に、上記化学式(1)で表されるアミノアルコールと過塩素酸アンモニウムとを混合しておくことが好ましい。これは、アミノアルコールのアミノ基が、イソシアネート系硬化剤に対しても反応性を有することから、このアミノ基を先に過塩素酸アンモニウムと反応させて、上述した効果を得やすくするためである。
【0066】
[その他添加剤]
その他、コンポジット推進薬に求められる特性に応じ、上記以外の添加剤が添加されてもよい。上記以外の添加剤としては、例えば、燃焼速度調整剤、老化防止剤、硬化触媒、振動燃焼抑制剤が挙げられる。
【0067】
燃焼速度調整剤としては、例えば、酸化第二鉄、フェロセン、ビスエチルフェロセニルプロパン、フッ化リチウム等を採用可能である。
老化防止剤としては、例えば、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの反応生成物(ノンフレックスBA、精工化学社製)等が採用可能である。
硬化触媒としては、例えば、スズ化合物、ビスマス化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等の金属化合物等が採用可能である。
振動燃焼抑制剤としては、例えば、炭化ジルコニウム、酸化ジルコニウム等が採用可能である。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0069】
[コンポジット推進薬の製造]
まず、水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)と、可塑剤であるジオクチルアジペート(DOA)とを真空下60℃で10分間混合した。水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)としては、数平均分子量2800、1分子中の水酸基数2.32の汎用品を用いた。水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)の量はいずれの実施例及び比較例でも39.90gとした。ジオクチルアジペート(DOA)の量はいずれの実施例及び比較例でも2.10gとした。
【0070】
上記により得られた混合物に、常圧にて、メディアン系5μmのアルミニウム粉末を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。アルミニウム粉末の量はいずれの実施例及び比較例でも54.00gとした。
【0071】
上記により得られた混合物に、常圧にて、メディアン径400μmの過塩素酸アンモニウム(AP400)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。また、これにより得られた混合物に、常圧にて、メディアン径200μmの過塩素酸アンモニウム(AP200)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。更に、これにより得られた混合物に、常圧にて、メディアン径50μmの過塩素酸アンモニウム(AP50)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。
【0072】
各過塩素酸アンモニウム粉末AP400、AP200、AP50の量は、いずれの実施例及び比較例でも、それぞれ129.81g、55.65g、18.54gとした。
【0073】
以上により、いずれの実施例及び比較例についても、ボンディング剤等未添加のスラリーとして、300.00gのスラリーを得た。
【0074】
実施例1〜3及び比較例2〜4では、上記により得られたスラリーに、常圧にてボンディング剤として添加剤(アミノアルコール)を添加し、真空下にて60℃で20分間混合した。添加剤のアミノアルコールの種類及び量は各実施例及び比較例ごとに異なる。比較例1については、この添加剤を添加する工程を行わなかった。
【0075】
そして、上記により得られた混合物に、常圧にて、硬化剤であるイソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合して、コンポジット推進薬の前駆体である未硬化スラリーを得た。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は、各実施例及び比較例ごとに異なる。
【0076】
上記により得られた未硬化スラリーの一部をスチロール角型ケース(180×70×45mm)に充填し、60℃で7日間保持することにより硬化させて、各実施例及び比較例に係るコンポジット推進薬が得られた。
【0077】
[引っ張り試験]
各実施例及び比較例に係るコンポジット推進薬を、社団法人火薬学会の火薬学会規格(V)プロペラント計測方法に記載の単軸引張計測方法により、50mm/分、試験温度20℃にて引っ張り試験を行い、最大真応力[kg・f/cm]、及び最大応力時の歪み(伸び)[%]を測定した。
【0078】
[実施例1]
添加剤のアミノアルコールは、化学式(1)で表され、R及びRが炭素数2のエチレン基であるN−(β―アミノエチル)エタノールアミンである。N−(β―アミノエチル)エタノールアミンの量は0.60gである。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は、NCO/OH=0.9となるように調整した。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は3.90gである。
【0079】
【化3】
…(1)
【0080】
[実施例2]
添加剤のアミノアルコールは、化学式(1)で表され、Rが炭素数2のエチレン基であり、Rが炭素数3のイソプロピレン基であるN−(β―アミノエチル)イソプロパノールアミンである。N−(β―アミノエチル)イソプロパノールアミンの量は0.60gである。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は、NCO/OH=0.9となるように調整した。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は3.81gである。
【0081】
[実施例3]
添加剤のアミノアルコールは、化学式(1)で表され、Rが炭素数2のエチレン基であり、Rが炭素数3のイソプロピレン基であるN−(β―アミノエチル)イソプロパノールアミンである。N−(β―アミノエチル)イソプロパノールアミンの量は0.90gである。また、イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は4.08gである。
【0082】
[比較例1]
比較例1は、アミノアルコールの添加がされなかったという点で、実施例1〜3に係るコンポジット推進薬と異なる。また、イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は、NCO/OH=0.9となるように調整した。イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は3.30gである。
【0083】
[比較例2]
比較例2に係るコンポジット推進薬は、実施例1に係るコンポジット推進薬と、添加剤のアミノアルコールの種類が異なる。添加剤は、化学式(2)で表されるN−ブチルエタノールアミンである。N−ブチルエタノールアミンの量は0.60gである。また、イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は3.84gである。
【0084】
【化4】
…(2)
【0085】
[比較例3]
比較例3に係るコンポジット推進薬は、実施例1に係るコンポジット推進薬と、添加剤のアミノアルコールの種類が異なる。添加剤は、化学式(3)で表されるN−メチルジエタノールアミンである。N−メチルジエタノールアミンの量は0.60gである。また、イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は4.32gである。
【0086】
【化5】
…(3)
【0087】
[比較例4]
比較例4に係るコンポジット推進薬は、実施例1に係るコンポジット推進薬と、添加剤のアミノアルコールの種類が異なる。添加剤は、化学式(4)で表されるヒドロキシエチルピペラジンである。ヒドロキシエチルピペラジンの量は0.60gである。また、イソフォロンジイソシアネートモノマー(IPDI)の量は3.78gである。
【0088】
【化6】
…(4)
【0089】
[評価結果]
表1は、実施例1〜3、及び比較例1〜4に係るコンポジット推進薬について、原料の成分と、引っ張り試験の結果とを示している。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1〜3では、いずれも比較例1と比較して、最大真応力、及び最大応力時の歪の大幅な上昇が確認された。つまり、実施例1〜3に係るコンポジット推進薬は、化学式(1)で表されるアミノアルコールを含有することで、良好な物理特性を有するものとなった。
【0092】
また、比較例2〜4は、アミノ基及びヒドロキシル基を有する添加剤として、化学式(1)で表されるアミノアルコールとは異なる構造のアミノアルコールを用いたコンポジット推進薬の物理特性を示すものである。比較例2〜4に係るコンポジット推進薬では、比較例1と比較すると、物理特性が改善する傾向にあったものの、実施例1〜3と比較すると、物理特性を向上させる効果は小さかった。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。