特許第6559454号(P6559454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559454
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】レーザ溶接ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/14 20140101AFI20190805BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20190805BHJP
【FI】
   B23K26/14
   B23K26/70
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-75980(P2015-75980)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-196011(P2016-196011A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 大治
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】前原 剛
(72)【発明者】
【氏名】山口 修
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−033188(JP,A)
【文献】 特開2014−087809(JP,A)
【文献】 特開2012−110945(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/108338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面にレーザ光を照射するとともに、シールドガスを供給するシールドガス噴射ノズルと、前記施工面に溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給ノズルとを備えたレーザ溶接ヘッドにおいて、
前記シールドガス噴射ノズル及び前記溶接ワイヤ供給ノズルを超硬合金もしくはセラミックで構成し、
前記シールドガス噴射ノズル及び前記溶接ワイヤ供給ノズルの内周面にそれぞれ形成された所望の厚さを有する高熱伝導性の第1金属部材と、前記第1金属部材に接続され、前記レーザ溶接ヘッドの基部内側端面に形成された高熱伝導性の第2金属部材を備えることを特徴とするレーザ溶接ヘッド。
【請求項2】
前記第2金属部材に放熱フィンを設けたことを特徴とする請求項に記載のレーザ溶接ヘッド。
【請求項3】
前記超硬合金は、タングステンカーバイト又はタングステンカーバイトとコバルト系との合金であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ溶接ヘッド。
【請求項4】
前記セラミックは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、サイアロン、炭化珪素の何れかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ溶接ヘッド。
【請求項5】
前記第1金属部材及び第2金属部材は、銅合金、アルミニウム合金、金や銀の地金又は合金の何れかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ溶接ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーザ溶接ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の補修作業を行う場合、狭隘部などの部位はアクセス性が困難な部位であることから、アクセス性を高めるため低入熱であって小型化が可能なレーザ溶接装置の開発が進められている。原子炉補修におけるレーザ溶接作業に用いられるレーザ溶接ヘッドとしては、母材からの反射光および溶融池からの輻射熱によってレーザ溶接ヘッドに損傷が生じるのを低減させるため、各種の構成が提案されている。
【0003】
この種の構成を採用したものとしては、水中溶接装置(特許文献1参照)や、肉盛溶接装置及び原子炉炉内構造物の肉盛溶接方法(特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1に記載された発明では、レーザ溶接ヘッド(特許文献1では、溶接チャンバーを構成する筐体)を熱伝導率の高いアルミ合金や銅合金で構成することで、機械的及び熱的に耐え得る構造にしている。
【0004】
また、特許文献2に記載された発明では、シールドガス噴射ノズルの出口におけるシールドガスの流速を6〜14m/sにすることで、溶融池が凹みレーザ光が母材に近い位置に照射されることができ、溶け込み深さを増加させている。そして、入熱量を増やすことなく、融合不良や溶接割れの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−128832号公報
【特許文献2】特開2014−87809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された発明では、シールドガス噴射ノズルの出口と溶融池の距離が離れると、シールドガスの流速は遅くなり溶け込み深さを増加させる効果は少なくなる。そのため、シールドガス噴射ノズルを溶融池に近づけた配置でレーザ溶接作業を行うことになる。
【0007】
シールドガス噴射ノズルを介して母材等に照射したレーザ光は、母材等によって反射されてシールドガス噴射ノズル部に戻ってくる。そのため、シールドガス噴射ノズルを溶融池に近づけた配置構成にすると、このときの反射光の影響が大きくなるため、溶接ヘッド(シールドガス噴射ノズルを含む)が、溶融・変形・欠損などによって損傷してしまうことを防止しなければならないという課題が生じる。
【0008】
本発明に係る実施形態では、上述した課題を解決するために、反射光による影響の低減を図ることのできるレーザ溶接ヘッドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るレーザ溶接ヘッドでは、施工面にレーザ光を照射するとともに、シールドガスを供給するシールドガス噴射ノズルと、前記施工面に溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給ノズルとを備えたレーザ溶接ヘッドにおいて、前記シールドガス噴射ノズル及び前記溶接ワイヤ供給ノズルを超硬合金もしくはセラミックで構成し、前記シールドガス噴射ノズル及び前記溶接ワイヤ供給ノズルの内周面にそれぞれ形成された所望の厚さを有する高熱伝導性の第1金属部材と、前記第1金属部材に接続され、前記レーザ溶接ヘッドの基部内側端面に形成された高熱伝導性の第2金属部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態に係るレーザ溶接ヘッドでは、反射光による影響の低減を図ることができ、レーザ溶接ヘッドが、溶融・変形・欠損などによって損傷してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】レーザ溶接ヘッドの概要を模式的に示した断面図である。(実施形態1)
図2】レーザ溶接ヘッドの概要を模式的に示した断面図である。(実施形態2)
図3】放熱フィンを設けたレーザ溶接ヘッドの概要を模式的に示した断面図である。(実施形態2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るレーザ溶接ヘッドの実施形態について、図を参照して説明する。なお、各図において、共通する部材には同一の部材符号を付与して、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
[実施形態1]
(構成)
図1を用いて実施形態1の構成を説明する。レーザ溶接ヘッド9は、その基部12にシールドガス3を供給するシールドガス供給部4と、シールドガス3及びレーザ光5を母材の施工面1に対して照射するシールドガス噴射ノズル2と、施工面1に対して溶接ワイヤ7を供給する溶接ワイヤ供給ノズル6と、施工面1を局所的に気中空間にするためのシールドガスカバー8を有して構成されている。
【0014】
このように構成されたシールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6を、融点が高い超硬合金もしくはセラミックにて構成している。超硬合金としては、タングステンカーバイト(WC)や、タングステンカーバイトとコバルト(Co)系との合金などを用いることができる。また、セラミックとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、サイアロン、炭化ケイ素等を用いることができる。
【0015】
(効果)
シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6を超硬合金もしくはセラミックを用いて構成しておくことにより、施工面1に照射したレーザ光が施工面1より反射した場合においても、シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6の損傷を防止することができる。そして、施工途中でのシールドガス噴射ノズル2もしくは溶接ワイヤ供給ノズル6の損傷による溶接品質の悪化を防ぐことができ、損傷による交換・段取り替えに要する作業時間を低減することができる。
【0016】
[実施形態2]
図2を用いて、本発明に係るレーザ溶接ヘッドの実施形態2の構成を説明する。なお、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0017】
(構成)
実施形態2では、超硬合金もしくはセラミックで製作されたシールドガス噴射ノズル2の内周面には円筒形状をした高熱伝導性の第1金属部材10aが形成されており、同じく超硬合金もしくはセラミックで製作された溶接ワイヤ供給ノズル6の内周面には円筒形状をした高熱伝導性の第1金属部材10bが形成されている。
【0018】
また、レーザ溶接ヘッド9の基部12における内側端面11には、第1金属部材10a、10bの端部側に接続した第2金属部材10cが形成されている。第1金属部材10a、10b及び第2金属部材10cは、熱伝導性を高めるため所望の厚さを有した構成になっている。
【0019】
第2金属部材10cの面には、図3に示すように放熱フィン13を形成しておくことができる。
なお、図2に示すように、レーザ溶接ヘッド9の基部12において、施工面1から離れた端部の面を内側端面11と称している。
【0020】
第1金属部材10a、10b及び第2金属部材10cとしては、銅合金、アルミニウム合金、金や銀の地金又は合金等を用いることができる。第1金属部材10a、10bは、シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6を構成している超硬合金もしくはセラミックに対して、機械的に結合した構成にしたり、蒸着や溶射によって所望の厚さとなるように付着させたりしておくことができる。逆に、第1金属部材10a、10b及び第2金属部材10cに対して、超硬合金もしくはセラミックを溶射により付着させた構成にしておくこともできる。
【0021】
(効果)
シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6を構成している超硬合金もしくはセラミックの内面に第1金属部材10a、10bを形成しておくことにより、レーザ反射光によってシールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6が熱の影響を受けたとしても、第1金属部材10a、10bを介して熱を外部に逃がすことができる。しかも、第1金属部材10a、10bの端部は、第2金属部材10cに接続しているので、放熱効果を高めている。
【0022】
しかも、第1金属部材10a、10b及び第2金属部材10cとしては、所望の厚さを有しているので、第1金属部材10a、10b及び第2金属部材10cを薄板とした場合に比べて熱の伝達性を大幅に向上させることができる。また、第2金属部材10cに放熱フィン13を設けておくことにより、放熱効果をより一層高めることができる。
【0023】
このように、シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6に生じた熱の影響を、第1金属部材10a、10bを介して外部に逃がすと共に、第2金属部材10cを介して外部に放熱させることができるので、シールドガス噴射ノズル2及び溶接ワイヤ供給ノズル6の温度が上昇して損傷するのを防止できる。
【0024】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…施工面、2…シールドガス噴射ノズル、3…シールドガス、4…シールドガス供給部、5…レーザ光、6…溶接ワイヤ供給ノズル、7…溶接ワイヤ、8…シールドガスカバー、9…レーザ溶接ヘッド、10a、10b…第1金属部材、10c…第2金属部材、11…内側端面、12…基部、13…放熱フィン
図1
図2
図3