特許第6559456号(P6559456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559456
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】クランプ式センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20190805BHJP
   G01R 15/06 20060101ALI20190805BHJP
   G01R 1/22 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
   G01R15/06 A
   G01R1/22 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-80476(P2015-80476)
(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公開番号】特開2016-200482(P2016-200482A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】池田 大桂
(72)【発明者】
【氏名】永井 明博
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 浩一
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05426360(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0312895(US,A1)
【文献】 特開2009−041925(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076343(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0097056(US,A1)
【文献】 特開平09−080082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸部材によって一端部がそれぞれ軸支された一対の第1クランプアームを備えて測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に、当該両第1クランプアームによってクランプした当該測定対象電線の電圧を検出可能に構成された第1センサ部と、
第2軸部材によって一端部がそれぞれ軸支された一対の第2クランプアームを備えて前記測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に、当該両第2クランプアームによってクランプした当該測定対象電線を流れる電流を検出可能に構成された第2センサ部とを有するクランプ式センサであって、
前記第1軸部材と前記第2軸部材とが同心の状態および互いに平行な状態のいずれかの状態となるように前記第1センサ部および前記第2センサ部が並んで配設され前記両第1クランプアームのいずれか一方と前記両第2クランプアームのいずれか一方とが一体形成されて当該両クランプアームの幅方向で連続する測定対象電線支持部が形成され、かつ当該両第1クランプアームの他方と当該両第2クランプアームの他方とが別体形成されて前記第1軸部材および前記第2軸部材を中心として独立して回動可能に構成されると共に、
前記他方の第1クランプアームを開操作可能に当該他方の第1クランプアームの前記一端部に延設された第1操作用アームと、
前記他方の第2クランプアーム、前記他方の第1クランプアームおよび前記第1操作用アームのいずれかに配設されて、当該第1操作用アームに対する開操作によって当該他方の第1クランプアームに連動して当該他方の第2クランプアームを回動させる第1開操作連動部材とを備え、
前記第1開操作連動部材は、前記両第2クランプアームの他端部同士が当接させられている状態で当該他端部同士を離間させることなく前記他方の第1クランプアームを単独で回動可能な単独回動範囲が生じるように配設されているクランプ式センサ。
【請求項2】
記他の第2クランプアームを開操作可能に当該他方の第2クランプアームの前記一端部に延設された第2操作用アームと、
記他の第1クランプアーム、前記他方の第2クランプアーム、前記第1操作用アームおよび前記第2操作用アームのいずれかに配設されて、当該第2操作用アームに対する開操作によって当該他方の第2クランプアームに連動して当該他方の第1クランプアームを回動させる第2開操作連動部材とを備えている請求項1記載のクランプ式センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象電線をクランプして測定対象電線を流れる電流および測定対象電線の電圧を検出可能に構成されたクランプ式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ式センサとして、出願人は、クランプ部およびセンサ本体部を備えて測定対象電線を流れる電流および測定対象電線の電圧を検出可能に構成されたクランプ式センサを下記の特許文献に開示している。この場合、クランプ部は、測定対象電線を流れる電流を検出するための環状の磁路を形成する磁気コアと、磁気コアに巻回された検出コイルと、測定対象電線の電圧を検出するための検出電極とを備えると共に、測定対象電線をクランプ可能に構成されている。
【0003】
具体的には、クランプ部は、磁気コア、検出コイルおよび検出電極が配設されると共に一端部がセンサ本体部に固定された固定センサアームと、磁気コアおよび検出コイルが配設されると共に一端部がセンサ本体部に回動自在に取り付けられた可動センサアームと、固定センサアームおよび可動センサアームの間に配設されて一端部が可動センサアームの一端部と共にセンサ本体部に回動自在に取り付けられると共に固定センサアームと相俟って測定対象電線をクランプして検出電極の近傍に測定対象電線を押さえ付ける押さえアームとを備えている。この場合、可動センサアームの一端部には、可動センサアームとは逆方向に延出する第1操作レバーが配設され、押さえアームの一端部には、押さえアームとは逆方向に延出する第2操作レバーが配設されている。
【0004】
また、第2操作レバーは、第1操作レバーを覆った状態で配設され、第1操作レバーは、センサ本体部に配設されたバネによってセンサ本体部の開口部から突出する方向に付勢されている。これにより、出願人が開示しているクランプ式センサでは、第1操作レバーを付勢しているバネの付勢力によって可動センサアームが固定センサアームの側に回動するように常時付勢されている。さらに、第2操作レバーは、第1操作レバーとの間に配設されたバネによって第1操作レバーから離反する方向に付勢されている。これにより、出願人が開示しているクランプ式センサでは、第1操作レバーに対して第2操作レバーを付勢しているバネの付勢力によって押さえアームが固定センサアームの側に回動するように常時付勢されている。
【0005】
このクランプ式センサを用いて測定対象電線を流れる電流および測定対象電線の電圧を測定する際には、まず、クランプ部によって測定対象電線をクランプする。具体的には、一例として、第2操作レバーに指を掛けるようにしてセンサ本体部を握ることで可動センサアームをセンサ本体部に対して回動させ、可動センサアームの先端部(他端部)と固定センサアームの先端部(他端部)とを相互に離間させる(クランプ部を開く)。この際には、両操作レバーの間に配設されているバネの付勢力によって第2操作レバーが第1操作レバーから離反する方向に回動させられる結果、押さえアームがセンサ本体部に対して回動させられてその先端部が固定センサアームの内周面から離間させられる。これにより、測定対象電線をクランプ可能な状態となる。
【0006】
次いで、測定対象電線を可動センサアームおよび押さえアームと固定センサアームとの間に導入し、第2操作レバーに掛けていた指を離す。これにより、センサ本体部と第1操作レバーとの間に配設されているバネの付勢力によって可動センサアームが固定センサアームの側に回動させられ、両センサアームの先端部同士(他端部同士)が接触した状態になると共に、両操作レバーの間に配設されているバネの付勢力によって押さえアームが固定センサアームの側に回動させられ、固定センサアームにおける検出電極の近傍に測定対象電線が押し付けられた状態となる。これにより、測定対象電線のクランプが完了する。この後、クランプ式センサが接続されている測定装置本体(本体ユニット)の操作部を操作して測定処理を実行させることにより、測定対象電線を流れている電流、および測定対象電線の電圧が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−41925号公報(第4−13頁、第1−9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、出願人が開示している上記のクランプ式センサには、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示しているクランプ式センサでは、測定対象電線を流れる電流や測定対象電線の電圧を検出する際に、固定センサアームおよび可動センサアームの間に配設されている押さえアームによって固定センサアームにおける検出電極の近傍に測定対象電線を押し付けた状態とする構成が採用されている。この場合、図14に示すように、出願人が開示しているクランプ式センサ1x(以下、このクランプ式センサ1xの構成要素については、符号の末尾に「x」を付して説明する)では、固定センサアーム2xが、磁気コア5xや検出電極6xを収容するのに必要十分な幅Wxに形成されている。また、固定センサアーム2xと相俟って測定対象電線Xをクランプする押さえアーム4xも、固定センサアーム2xと同程度の幅Wxに形成されている。
【0009】
したがって、出願人が開示しているクランプ式センサ1xでは、測定対象電線Xの周面に接する固定センサアーム2xおよび押さえアーム4xの幅Wxがやや狭くなっており、図15に示すように、クランプしている測定対象電線Xに対してクランプ式センサ1xが傾いた状態となることがある。このような状態では、検出電極6xが配設されている固定センサアーム2xと測定対象電線Xとの間に隙間が生じる結果、測定対象電線Xの近傍に位置させるべき検出電極6xが測定対象電線Xからやや離れた状態となり、測定対象電線Xの電圧検出精度が低下するおそれがある。
【0010】
また、測定対象電線Xに対するクランプ式センサ1xの傾きの度合いに応じて、固定センサアーム2x内の検出電極6xと測定対象電線Xとの距離が変化するため、クランプの状態によって測定値(電圧値)が僅かに変化するおそれもある。さらに、測定対象電線Xに対するクランプ式センサ1xの傾きの度合いに応じて、固定センサアーム2x内の磁気コア5xや可動センサアーム3x内の磁気コア5xと測定対象電線Xとの距離が変化するため、クランプの状態によって測定値(電流値)が僅かに変化するおそれもある。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0011】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、測定対象電線に対する傾きを生じさせることなくクランプし得るクランプ式センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく請求項1記載のクランプ式センサは、第1軸部材によって一端部がそれぞれ軸支された一対の第1クランプアームを備えて測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に、当該両第1クランプアームによってクランプした当該測定対象電線の電圧を検出可能に構成された第1センサ部と、第2軸部材によって一端部がそれぞれ軸支された一対の第2クランプアームを備えて前記測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に、当該両第2クランプアームによってクランプした当該測定対象電線を流れる電流を検出可能に構成された第2センサ部とを有するクランプ式センサであって、前記第1軸部材と前記第2軸部材とが同心の状態および互いに平行な状態のいずれかの状態となるように前記第1センサ部および前記第2センサ部が並んで配設され前記両第1クランプアームのいずれか一方と前記両第2クランプアームのいずれか一方とが一体形成されて当該両クランプアームの幅方向で連続する測定対象電線支持部が形成され、かつ当該両第1クランプアームの他方と当該両第2クランプアームの他方とが別体形成されて前記第1軸部材および前記第2軸部材を中心として独立して回動可能に構成されると共に、前記他方の第1クランプアームを開操作可能に当該他方の第1クランプアームの前記一端部に延設された第1操作用アームと、前記他方の第2クランプアーム、前記他方の第1クランプアームおよび前記第1操作用アームのいずれかに配設されて、当該第1操作用アームに対する開操作によって当該他方の第1クランプアームに連動して当該他方の第2クランプアームを回動させる第1開操作連動部材とを備え、前記第1開操作連動部材は、前記両第2クランプアームの他端部同士が当接させられている状態で当該他端部同士を離間させることなく前記他方の第1クランプアームを単独で回動可能な単独回動範囲が生じるように配設されている。
【0013】
請求項2記載のクランプ式センサは、請求項1記載のクランプ式センサにおいて、前記他の第2クランプアームを開操作可能に当該他方の第2クランプアームの前記一端部に延設された第2操作用アームと、前記他の第1クランプアーム、前記他方の第2クランプアーム、前記第1操作用アームおよび前記第2操作用アームのいずれかに配設されて、当該第2操作用アームに対する開操作によって当該他方の第2クランプアームに連動して当該他方の第1クランプアームを回動させる第2開操作連動部材とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のクランプ式センサによれば、一対の第1クランプアームを軸支する第1軸部材と一対の第2クランプアームを軸支する第2軸部材とが同心の状態および互いに平行な状態のいずれかの状態となるように第1センサ部および第2センサ部を並べて配設すると共に、両第1クランプアームのいずれか一方と両第2クランプアームのいずれか一方とを一体形成して両クランプアームの幅方向で連続する測定対象電線支持部を形成したことにより、クランプに際して測定対象電線の長手方向に沿った十分に長い範囲に測定対象電線支持部を接触させてこれを支持することができるため、測定対象電線に対するクランプ式センサの傾きを好適に回避することができる。これにより、測定対象電線に対して電圧検出用の電極を好適に近接配置させることができる結果、測定対象電線の電圧を高精度に検出することができると共に、電流を検出するための磁性コアに対する測定対象電線の位置がクランプさせる都度変化する事態も好適に回避される結果、測定対象電線を流れる電流についても高精度に検出することができる。
また、両第1クランプアームのうちの他方を開操作可能に他方の第1クランプアームにおける一端部に延設された第1操作用アームと、両第2クランプアームのうちの他方の第2クランプアーム、他方の第1クランプアームおよび第1操作用アームのいずれかに配設されて、第1操作用アームに対する開操作によって他方の第1クランプアームに連動して他方の第2クランプアームを回動させる第1開操作連動部材とを備えたことにより、第1開操作連動部材を設けず、両クランプアームにそれぞれ延設した操作用アームを別個に開操作して両センサ部をそれぞれ開く構成と比較して、第1操作用アームに対する1回の開操作によって両センサ部をそれぞれ開くことができるため、測定対象電線のクランプ作業時に利用者にかかる負担を十分に軽減することができる。
【0015】
請求項2記載のクランプ式センサによれば、両第2クランプアームのうちの他方を開操作可能に他方の第2クランプアームにおける一端部に延設された第2操作用アームと、他方の第1クランプアーム、他方の第2クランプアーム、第1操作用アームおよび第2操作用アームのいずれかに配設されて、第2操作用アームに対する開操作によって他方の第2クランプアームに連動して他方の第1クランプアームを回動させる第2開操作連動部材とを備えたことにより、第2開操作連動部材を設けず、両クランプアームにそれぞれ延設した操作用アームを別個に開操作して両センサ部をそれぞれ開く構成と比較して、第2操作用アームに対する1回の開操作によって両センサ部をそれぞれ開くことができるため、測定対象電線のクランプ作業時に利用者にかかる負担を十分に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】クランプアーム3,4を閉じた状態のクランプ式センサ1の外観斜視図である。
図2】クランプアーム3,4を閉じた状態のクランプ式センサ1の平面図である。
図3】クランプ式センサ1の分解斜視図である。
図4】クランプアーム3,4を開いた状態のクランプ式センサ1の外観斜視図である。
図5】クランプアーム3,4を閉じた状態のクランプ式センサ1の他の外観斜視図である。
図6】クランプアーム3の内部構造を示す外観斜視図である。
図7】クランプアーム4の内部構造を示す外観斜視図である。
図8】クランプアーム3,4を閉じた状態のクランプ式センサ1の左側面図である。
図9】クランプアーム4の突出片36がクランプアーム3の操作部3bに当接し、かつクランプアーム4の当接片35がクランプアーム3のクランプ部3aに当接するまでクランプアーム4を開いた状態のクランプ式センサ1の左側面図である。
図10】クランプアーム3,4を完全に開いた状態のクランプ式センサ1の左側面図である。
図11】測定対象電線Xをクランプしている状態のクランプ式センサ1の左側面図である。
図12】操作部3bを操作して両クランプアーム3,4を開いた状態のクランプ式センサ1の左側面図である。
図13】測定対象電線Xをクランプしている状態のクランプ式センサ1の断面図である。
図14】測定対象電線Xを正常にクランプしている状態のクランプ式センサ1xの断面図である。
図15】測定対象電線Xに対してクランプ式センサ1xが傾いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るクランプ式センサの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すクランプ式センサ1は、「クランプ式センサ」の一例であって、測定対象電線X(図10〜13参照)をクランプ可能に構成されると共に、図示しない測定装置に接続されて測定対象電線Xを流れる電流および測定対象電線Xの電圧を検出することができるように構成されている。具体的には、図1〜5に示すように、クランプ式センサ1は、ケーシング2、クランプアーム3,4、回動軸5、スプリング6a,6b、信号処理部7および信号ケーブル8a,8bを備えている。
【0019】
ケーシング2は、図3に示すように、ケーシング本体2aおよび蓋部2bを備え、信号処理部7などを収容可能な容器状に形成されている。この場合、本例のクランプ式センサ1では、ケーシング2における正面向かって左側部位(平面視においてクランプアーム3と対向する部位:図2における下側部位:図13における左側部位)の正面側に弧状の一対の磁性コア21の一方(図3参照)が収容されてクランプ部11(「一方の第2クランプアーム」の一例)が構成されている。また、このクランプ式センサ1では、ケーシング2における正面向かって右側部位(平面視においてクランプアーム4と対向する部位:図2における上側部位:図13における右側部位)の正面側に検出電極31およびシールド電極32(図3参照)が収容されてクランプ部12(「一方の第1クランプアーム」の一例)が構成されている。
【0020】
また、ケーシング2における背面側には収容部15が形成されている。さらに、ケーシング2における蓋部2bの上面には、図3に示すように、回動軸5によってクランプアーム3,4を軸支するための複数の軸孔付きリブ16が立設されている。
【0021】
クランプアーム3は、クランプ部3aおよび操作部3bが一体的に形成されて構成されている。クランプ部3aは、「他方の第2クランプアーム」の一例であって、側面視した状態での形状が、全体としてほぼ弧状に形成されて、一対の磁性コア21の他方(図3,6参照)が収容されている。操作部3bは、「第2操作用アーム」の一例であって、後述するクランプアーム4の突出片36が当接可能にクランプ部3aの一端部に延設されると共に、スプリング6aが収容されている。このクランプアーム3は、クランプ部3aおよび操作部3bの間に形成された軸孔を挿通させた回動軸5によってケーシング2(蓋部2bの軸孔付きリブ16)に軸支されている。
【0022】
クランプアーム4は、クランプ部4aおよび操作部4bが一体的に形成されて構成されている。クランプ部4aは、「他方の第1クランプアーム」の一例であって、シールド電極33(図3,7参照)が収容されている。操作部4bは、「第1操作用アーム」の一例であって、クランプ部4aに延設されると共に、スプリング6bが収容されている。このクランプアーム4は、クランプ部4aおよび操作部4bの間に形成された軸孔を挿通させた回動軸5によってケーシング2(蓋部2bの軸孔付きリブ16)に軸支されている。
【0023】
この場合、本例のクランプ式センサ1では、複数の「開操作連動部材」が設けられている。具体的には、本例のクランプ式センサ1では、クランプアーム4におけるクランプ部4aに形成された当接片35が「第1開操作連動部材」に相当する(「他方の第1クランプアーム」に「第1開操作連動部材」が配設された構成の一例)。また、本例のクランプ式センサ1では、クランプアーム3におけるクランプ部3aの一端部に延設された操作部3bと、クランプアーム4における操作部4bに形成された突出片36とが相俟って「第1開操作連動部材」を構成する(「他方の第2クランプアーム」および「第1操作用アーム」に「第1開操作連動部材」が配設された構成の一例)。
【0024】
さらに、本例のクランプ式センサ1では、クランプアーム3におけるクランプ部3aに形成された凸部25と、クランプアーム4における操作部4bに形成された突出片36とが相俟って「第2開操作連動部材」を構成する(「他方の第2クランプアーム」および「第1操作用アーム」に「第2開操作連動部材」が配設された構成の一例)。この場合、本例のクランプ式センサ1では、図8に示すように、クランプアーム3,4の双方が完全に閉じた状態において、クランプアーム3の凸部25がクランプアーム4の突出片36に近接または接した状態となっている。なお、これら「開操作連動部材」の機能については、後に詳細に説明する。
【0025】
また、本例のクランプ式センサ1では、ケーシング2のクランプ部11とクランプアーム3のクランプ部3aとが相俟って測定対象電線Xを流れる電流を検出可能なセンサ部Sa(「第2センサ部」の一例)が構成されている。また、このクランプ式センサ1では、ケーシング2のクランプ部12とクランプアーム4のクランプ部4aとが相俟って測定対象電線Xの電圧を検出可能なセンサ部Sv(「第1センサ部」の一例)が構成されている。
【0026】
さらに、ケーシング2における正面向かって左側部位の正面側にクランプ部11が構成され、かつケーシング2における正面向かって右側部位の正面側にクランプ部12が構成されている本例のクランプ式センサ1(「両第1クランプアームのいずれか一方と両第2クランプアームのいずれか一方とが一体形成され」との構成の一例)では、両クランプ部11,12によって「測定対象電線支持部」に相当する支持部10が構成されている。この場合、支持部10は、側面視した状態での形状が、この磁性コア21の形状に合わせて全体としてほぼ弧状に形成されている。本例のクランプ式センサ1では、図2に示すように、支持部10の幅W(後述するようにクランプされる測定対象電線Xの長手方向に沿った幅)がクランプアーム3の幅Waとクランプアーム4の幅Wbとを合計した十分に広い幅となっている。
【0027】
回動軸5は、「第1軸部材」および「第2軸部材」を一体化した「軸部材」の一例であって(「第1軸部材と第2軸部材とが同心の状態」との構成の一例)、図3に示すように、ピン5aおよびフランジ5bを備え、ケーシング2の各軸孔付きリブ16に対してクランプアーム3,4を軸支する。これにより、本例のクランプ式センサ1では、ケーシング2のクランプ部11およびクランプアーム3のクランプ部3aで構成されるセンサ部Saと、ケーシング2のクランプ部12およびクランプアーム4のクランプ部4aで構成されるセンサ部Svとがクランプ式センサ1の幅方向で並んで配設された状態となっている。
【0028】
スプリング6aは、前述したように、クランプアーム3の操作部3bに収容されると共に、操作部3bを付勢して図10に示す矢印B1の向きにクランプアーム3を回動させることで、クランプ部3aの先端部を矢印B2の向きでクランプ部11の先端部に押し付ける。また、スプリング6bは、前述したように、クランプアーム4の操作部4bに収容されると共に、操作部4bを付勢して図10に示す矢印B1の向きにクランプアーム4を回動させることで、クランプ部4aの先端部を矢印B2の向きでケーシング2の支持部10(クランプ部12)に押し付ける。
【0029】
信号処理部7は、センサ部Saから取得した電流検出信号、およびセンサ部Svから取得した電圧検出信号を信号処理可能な回路基板を備え、信号ケーブル8a,8bを介して接続される測定装置に対して両検出信号を出力可能にケーシング2の収容部15に収容されている。信号ケーブル8a,8bは、信号処理部7に接続されると共にケーシング2から引き出されている。
【0030】
このクランプ式センサ1を用いて測定対象電線Xを流れる電流および測定対象電線Xの電圧を測定する際には、両信号ケーブル8a,8bを図示しない測定装置に接続した状態において、両センサ部Sa,Svによって測定対象電線Xをクランプする。具体的には、一例として、人差し指から小指までの4本の指をケーシング2における収容部15の底面に添えると共に、親指の腹をクランプアーム4の操作部4bに添え、その状態で親指を他の指に近付ける。この際には、スプリング6bの付勢力に抗して操作部4bが図8に示す矢印Aa1の向きに回動軸5を中心として回動させられる。
【0031】
また、操作部4bが延設されているクランプ部4aが回動軸5を中心として矢印Aa2の向きに回動させられる結果、クランプ部4aの先端部がクランプ部12(支持部10)から離間させられる。この結果、図9に示すように、操作部4bに設けられた突出片36がクランプアーム3における操作部3bに当接すると共に、クランプ部4aに設けられた当接片35がクランプアーム3におけるクランプ部3aに当接させられる。
【0032】
また、同図に矢印Ab1で示すようにケーシング2に対して操作部4bがさらに回動させられたときには、突出片36が当接している操作部3bがスプリング6aの付勢力に抗して操作部4bと共に矢印Ab1の向きに回動させられる結果、操作部3bが延設されているクランプ部3aがクランプ部4aの回動に連動して矢印Ab2の向きに回動させられる。また、この際には、クランプ部3aの内側にクランプアーム4の当接片35が当接した状態が維持され、これにより、クランプ部4aの回動に連動したクランプ部3aの矢印Ab2の向きへの回動が補助される。
【0033】
次いで、同図に示すように、支持部10上(クランプ部11,12上)に測定対象電線Xが位置するように、クランプ部11,3aおよびクランプ部12,4aの間に測定対象電線Xを導入する。続いて、親指を他の指に近付けている力を弱める。この際には、スプリング6bの付勢力によって回動軸5を中心として操作部4bが矢印B1の向きに回動させられる結果、回動軸5を中心としてクランプ部4aが矢印B2の向きに回動させられると共に、スプリング6aの付勢力によって回動軸5を中心として操作部3bが矢印B1の向きに回動させられる結果、回動軸5を中心としてクランプ部3aが矢印B2の向きに回動させられる。
【0034】
これにより、図11に示すように、センサ部Saを構成するクランプ部11,3aの先端部同士が当接させられて、両クランプ部11,3a内の両磁性コア21(図3参照)が測定対象電線Xを取り囲むようにして環状に配置されると共に、センサ部Svを構成するクランプ部12,4aの間に挟み込まれるようにして測定対象電線Xが支持部10に押し付けられて、クランプ部12内の検出電極31が測定対象電線Xに近接対向配置された状態となる。これにより、測定対象電線Xのクランプ作業が完了する。
【0035】
この場合、本例のクランプ式センサ1では、上記のような操作方法とは異なる操作方法でも測定対象電線Xをクランプすることができる。具体的には、一例として、人差し指から小指までの4本の指をケーシング2における収容部15の底面に添えると共に、親指の腹をクランプアーム3の操作部3bに添え、その状態で親指を他の指に近付ける。この際には、スプリング6aの付勢力に抗して操作部3bが図8に示す矢印Aa1の向きに回動軸5を中心として回動させられる。また、操作部3bが延設されているクランプ部3aが回動軸5を中心として矢印Aa2の向きに回動させられる結果、クランプ部3aの先端部がクランプ部11(支持部10)から離間させられる。
【0036】
さらに、両クランプアーム3,4が閉じた状態においてクランプアーム3の凸部25がクランプアーム4の突出片36に近接または接した状態となっている本例のクランプ式センサ1では、矢印Aa2の向きへのクランプ部3aの回動に連動して、凸部25が突出片36を押動することで、突出片36が設けられているクランプアーム4の操作部4bがスプリング6bの付勢力に抗して矢印Aa1の向きに回動軸5を中心として回動させられる。この結果、操作部4bが延設されているクランプ部4aがクランプ部3aの回動に連動して回動軸5を中心として矢印Aa2の向きに回動させられる結果、図12に示すように、クランプ部4aの先端部がクランプ部12(支持部10)から離間させられる。
【0037】
次いで、同図に示すように、支持部10上(クランプ部11,12上)に測定対象電線Xが位置するように、クランプ部11,3aおよびクランプ部12,4aの間に測定対象電線Xを導入する。続いて、親指を他の指に近付けている力を弱める。この際には、スプリング6aの付勢力によって回動軸5を中心として操作部3bが矢印B1の向きに回動させられる結果、回動軸5を中心としてクランプ部3aが矢印B2の向きに回動させられると共に、スプリング6bの付勢力によって回動軸5を中心として操作部4bが矢印B1の向きに回動させられる結果、回動軸5を中心としてクランプ部4aが矢印B2の向きに回動させられる。
【0038】
これにより、図11に示すように、センサ部Saを構成するクランプ部11,3aの先端部同士が当接させられて、両クランプ部11,3a内の両磁性コア21(図3参照)が測定対象電線Xを取り囲むようにして環状に配置されると共に、センサ部Svを構成するクランプ部12,4aの間に挟み込まれるようにして測定対象電線Xが支持部10に押し付けられて、クランプ部12内の検出電極31が測定対象電線Xに近接対向配置された状態となる。これにより、測定対象電線Xのクランプ作業が完了する。
【0039】
この場合、本例のクランプ式センサ1では、センサ部Saおよびセンサ部Svが並んで配置されると共にセンサ部Saのクランプ部11とセンサ部Svのクランプ部12とが幅方向で連続するように一体化されて支持部10が形成されている。したがって、本例のクランプ式センサ1では、上記のいずれの操作方法で測定対象電線Xをクランプしたとしても、図13に示すように、クランプされた測定対象電線Xの十分に長い範囲(同図における幅Wの範囲)に支持部10が接した状態となるため、この測定対象電線Xに対するクランプ式センサ1の傾きが生じ難くなっている。
【0040】
この後、測定装置の操作部を操作して測定処理を開始させることにより、センサ部Sa,Svから出力されて信号処理部7によって信号処理されたセンサ信号に基づき、測定対象電線Xを流れる電流および測定対象電線Xの電圧がそれぞれ測定される。
【0041】
このように、このクランプ式センサ1によれば、クランプ部11,3aを軸支する「第1軸部材」とクランプ部12,4aを軸支する「第2軸部材」とが同心の状態となるようにこれらを回動軸5によって軸支してセンサ部Sa,Svを並べて配設すると共に、クランプ部11とクランプ部12とを一体形成して両クランプ部11,12の幅方向で連続する支持部10を形成したことにより、クランプに際して測定対象電線Xの長手方向に沿った十分に長い範囲に支持部10を接触させてこれを支持することができるため、測定対象電線Xに対するクランプ式センサ1の傾きを好適に回避することができる。これにより、測定対象電線Xに対して検出電極31を好適に近接配置させることができる結果、測定対象電線Xの電圧を高精度に検出することができると共に、両磁性コア21,21に対する測定対象電線Xの位置がクランプさせる都度変化する事態も好適に回避される結果、測定対象電線Xを流れる電流についても高精度に検出することができる。
【0042】
また、このクランプ式センサ1によれば、クランプアーム4のクランプ部4aを開操作可能にクランプ部4aの一端部に延設された操作部4bと、クランプ部3a,4aおよび操作部4bに配設されて、操作部4bに対する開操作によってクランプ部4aに連動してクランプ部3aを回動させる「第1開操作連動部材」としての当接片35、突出片36および操作部3bとを備えたことにより、当接片35、突出片36および操作部3bなどの「第1開操作連動部材」を設けずに、両「クランプアーム」にそれぞれ延設した「操作用アーム(例えば、クランプ式センサ1における操作部3b,4b)」を別個に開操作して両センサ部Sa,Svをそれぞれ開く構成と比較して、1回の開操作(本例では、操作部4bに対する開操作)によって両センサ部Sa,Svをそれぞれ開くことができるため、測定対象電線Xのクランプ作業時に利用者にかかる負担を十分に軽減することができる。
【0043】
さらに、このクランプ式センサ1によれば、クランプアーム3のクランプ部3aを開操作可能にクランプ部3aの一端部に延設された操作部3bと、クランプ部3aおよび操作部4bに配設されて、操作部3aに対する開操作によってクランプ部3aに連動してクランプ部4aを回動させる「第2開操作連動部材」としての凸部25および突出片36とを備えたことにより、凸部25および突出片36などの「第2開操作連動部材」を設けずに、両「クランプアーム」にそれぞれ延設した「操作用アーム(例えば、クランプ式センサ1における操作部3b,4b)」を別個に開操作して両センサ部Sa,Svをそれぞれ開く構成と比較して、1回の開操作(本例では、操作部3bに対する開操作)によって両センサ部Sa,Svをそれぞれ開くことができるため、測定対象電線Xのクランプ作業時に利用者にかかる負担を十分に軽減することができる。
【0044】
なお、「クランプ式センサ」の構成は、上記のクランプ式センサ1の構成の例に限定されない。例えば、「測定対象電線支持部」としてのクランプ部12内に検出電極31を配設した構成を例に挙げて説明したが、この検出電極31については、クランプ部4a内に配設したり、クランプ部12,4aの双方に配設したりすることができる。
【0045】
また、「第2クランプアーム」としてのクランプ部3aの内側に当接可能な当接片35を「第1クランプアーム」としてのクランプ部4aに「第1開操作連動部材」として配設した構成を例に挙げて説明したが、「第1クランプアーム(例えば、クランプ式センサ1におけるクランプ部4a)」の外側に当接可能な「当接片(図示せず)」を「第1開操作連動部材」として「第2クランプアーム(例えば、クランプ式センサ1におけるクランプ部3a)」に配設することで「第1クランプアーム」の回動に連動させて「第2クランプアーム」を回動させる構成を採用することもできる。
【0046】
さらに、上記のクランプ式センサ1における操作部3bに、クランプアーム4の操作部4bに当接可能な「突出片」を形成することにより、クランプアーム4の操作部4bと、操作部3bに形成した「突出片」とが相俟って「第2開操作連動部材」として機能するように構成することもできる。また、「第1開操作連動部材」や「第2開操作連動部材」の数については、1つ、2つ、および4つ以上のうちの任意の数とすることができる(図示せず)。この場合、「第2開操作連動部材」を配設せずに上記の当接片35だけを「第1開操作連動部材」として配設する構成を採用するときには、上記のクランプ式センサ1における操作部4bだけを「第1操作用アーム」として配設し、操作部3b(第2操作用アーム)を不要とすることもできる。
【0047】
また、1本の回動軸5を「第1軸部材」および「第2軸部材」として兼用することでを両「軸部材」を同心の状態とした例について説明したが、「第1軸部材」および「第2軸部材」を別部材で構成しつつ同心の状態としたり、「第1軸部材」および「第2軸部材」を別部材で構成しつつ互いに平行な状態としたりすることもできる(図示せず)。さらに、「測定装置」とは別体に形成したクランプ式センサ1を例に挙げて説明したが、「クランプ式センサ」を「測定装置」の構成の一部として「測定装置本体」と一体的に形成することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0048】
1 クランプ式センサ
2 ケーシング
2a ケーシング本体
2b 蓋部
3,4 クランプアーム
3a,4a,11,12 クランプ部
3b,4b 操作部
5 回動軸
5a ピン
5b フランジ
6a,6b スプリング
7 信号処理部
8a,8b 信号ケーブル
10 支持部
15 収容部
16 軸孔付きリブ
21 磁性コア
25 凸部
31 検出電極
32,33 シールド電極
35 当接片
36 突出片
Sa,Sv センサ部
W,Wa,Wb 幅
X 測定対象電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15