(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559457
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/01 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
A01K85/01 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-86848(P2015-86848)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-202062(P2016-202062A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年1月30日 有限会社バスメイトインフィニティに釣り用ルアーの製品案内書を送付 平成27年2月6日 ウェブサイトアドレス「http://www.megabass.co.jp/site/products/i−jack/」を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】595015214
【氏名又は名称】メガバス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩一
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第2909863(US,A)
【文献】
登録実用新案第3025453(JP,U)
【文献】
米国特許第4380132(US,A)
【文献】
実開平4−133172(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0034349(US,A1)
【文献】
米国特許第7325357(US,B1)
【文献】
米国特許第5201784(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小魚を模した外観形態を持つように形成された中空構造を有するルアーボディの先端部にリップを付設してなる釣り用ルアーであって、
前記ルアーボディ内部に架設した支軸と、この支軸に設定された支点に対して少なくとも左右方向に揺動可能に支持されるアームと、このアームの先端に取り付けた錘球とを有し、
前記錘球が前記アームを介して、前記ルアーボディ内部で少なくとも左右方向に振子式に移動可能に構成され、前記ルアーボディの左右内壁面に当接するようにし、
前記支軸の支点は、当該ルアーのウォブリングアクションのアクション支点に対して前方にオフセットされていると共に、前記錘球が前記ウォブリングアクションのアクション支点に対応位置することを特徴とする釣り用ルアー。
【請求項2】
前記アームは、前記支軸の支点のまわりに回動自在に支持されることを特徴とする請求項1に記載の釣り用ルアー。
【請求項3】
前記アームは、その基端が前記支軸の支点に固着した弾性部材でなり、更に上下方向に揺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用ルアー、特に魚に対して優れたアピール効果を発揮する音を発生可能な釣り用ルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルアー釣りにおいて、対象魚の種類等に応じて様々な形態や工夫が施されたルアーが考案されている。例えば、所謂フィッシュイーターと呼ばれる主に小魚を常食餌とする大型の対象魚の場合、小魚に似せた形態のルアーが使用される。対象魚を誘い、つまり対象魚に対して強くアピールする集魚効果を得るために、ルアーの形や色彩等につき工夫がなされている。
【0003】
この種のルアーにおける対象魚に対するアピール効果は形態ばかりでなく、音を発生させることで、バスの捕食を促す効果を狙ったものがある。
【0004】
具体的には例えば特許文献1に記載のルアーでは、深く沈めて上下に踊らせるジギング釣り用のルアーであつて、中実金属によって形成されて、外観が疑似餌となっているルアーが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−182994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の釣り用ルアーでは対象魚に対して高いアピール効果を持つ音を発生させることが必ずしも容易でなかった。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、効果的に音を発生させて魚に対して優れたアピール効果を発揮する釣り用ルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の釣り用ルアーは、小魚を模した外観形態を持つように形成された中空構造を有するルアーボディの先端部にリップを付設してなる釣り用ルアーであって、前記ルアーボディ内部に架設した支軸と、この支軸に設定された支点に対して少なくとも左右方向に揺動可能に支持されるアームと、このアームの先端に取り付けた錘球とを有し、前記錘球が前記アームを介して、前記ルアーボディ内部で少なくとも左右方向に振子式に移動可能に構成され、前記ルアーボディの左右内壁面に当接するようにし
、前記支軸の支点は、当該ルアーのウォブリングアクションのアクション支点に対して前方にオフセットされていると共に、前記錘球が前記ウォブリングアクションのアクション支点に対応位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所謂、振子式サウンドシステムを採用する釣り用ルアーが構成され、高デシベル低周波音を一定周期で安定的に発生させることができる。この音により魚を刺激し、バイト確率を大幅に向上することができ、高い釣果を実現することができる。
また、かかる振子式サウンドシステムを、ウォブリングアクションを行うルアーに適用することで、ウォブリングアクションによる水圧変化と高デシベル低周波音との相乗効果を発揮し、バイト確率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る釣り用ルアーの内部構造例を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る釣り用ルアーの内部構造例を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る釣り用ルアーにおけるウォブリングアクションの説明する上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る釣り用ルアーにおけるウォブリングアクションの水圧変化の挙動を模式的に示す上面図である。
【
図5】本発明の比較例としてのルアーの内部構造例を示す側面図である。
【
図6】本発明の比較例としてのルアーの内部構造例を示す上面図である。
【
図7】本発明の比較例としてのルアーにおけるウォブリングアクションの説明する上面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る釣り用ルアーの内部構造例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による釣り用ルアーの好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面に基づき、本発明における釣り用ルアーの好適な実施の形態を説明する。
図1はこの実施形態における釣り用ルアー10の内部構造例を示す側面図、
図2は該釣り用ルアー10の上面図である。なお、
図1及び
図2を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて前方を矢印Frにより、後方を矢印Rrによりそれぞれ示し、また、側方右側を矢印Rにより、側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
【0015】
図1及び
図2において、11はルアーボディであり、このルアーボディ11は合成樹脂製(ABS樹脂等が好適であるが、その他のものでもよい)の材料により小魚に似せた外観形状となるように形成されている。この場合、ルアーボディ11の長手方向(前後方向)中央に沿って左右二分した2つのボディハーフを相互に当接させることで一体化し、中空構造を有する。
【0016】
また、12はルアーボディ11の先端部付近に設けた糸環であり、この例では糸環12はルアーボディ11の先端部の下面側に設けられる。糸環12には釣糸もしくはライン13が結び付けられる。更に、14,15はそれぞれフックハンガであり、これらのフックハンガ14,15にそれぞれスプリットリング(図示せず)を介してフロントフック(釣針)16及びリヤフック17が係着する。18はルアーボディ11の先端部付近下側に付設したリップ(潜水板)である。このリップ18は薄い板状に形成され、ルアーボディ11に対して比較的大きな傾斜角度(例えば60°程度)で下方へ突出するように設けられる。糸環12に結び付けたライン13を引くことで、リップ18が受けた水流抵抗によりルアー10は例えば適度に前傾しながらの遊泳姿勢をとることができる。
【0017】
本発明のルアー10は、ルアーボディ11内部に架設した支軸19と、この支軸19に設定された支点(あるいは支軸線)19Aに対して少なくとも左右方向に揺動可能に支持されるアーム20と、このアーム20の先端に取り付けた錘球21とを有する。
【0018】
具体的には
図1に示されるようにルアーボディ11の上内壁面11a(実魚の背部側)と下内壁面11b(実魚の腹部側)のそれぞれ所定部位に、支軸19の上端部19a及び下端部19bが結合する支持部22,23を有する。支軸19は好適には金属製の棒状部材により構成され、ルアーボディ11内で左右方向中央にて配置される。なお、支軸19を合成樹脂材により形成することも可能であり、本例では支持部22,23により上下方向に支持される。また、アーム20の上下にビーズ24を装着し、アーム20の動きを円滑化することができる。
【0019】
アーム20は好適には金属製の薄板材により構成され、支軸19から後方へ延出し、その支点19Aのまわりに回動可能に支持される。なお、アーム20を合成樹脂材により形成することも可能である。この場合、アーム20を反射板として構成し、アーム20に反射機能を持たせることで、特にルアーボディ11の腹部まわりをクリアな色にした場合にアーム20の動きが実魚の内臓の動きに似せるようにすることができる。つまりアーム20を可動とすることで、より特徴的なフラッシング効果が得られるようにできる。支軸19によるアーム20の支持構造において、アーム20の前端には支軸19が挿通する挿通孔が形成され、この挿通孔を介してアーム20が支点19Aに対してガタつきなく回動可能である。
【0020】
錘球21は好適には鉛あるいは錫等の比重の大きい金属製の球体により構成され、アーム20の先端に固着する。なお、鉛及び錫等と同等な物理的性質を持つその他の金属等であってもよい。重い錘球21とすることで、ルアーボディ11の内壁面に当接した際に衝突音の高デシベル化に効果的に作用する。また、錘球21の大きさとしては、直径7mm以上とするのが好適であり、ルアーボディ11の内壁面に当接した際に衝突音の低周波化に効果的に作用する。
【0021】
図2に示されるように錘球21がアーム20を介して、支点19Aに対して左右方向に振子式に移動可能であり(
図2、矢印X)、ルアーボディ11の右内壁面11c及び左内壁面11dに当接可能となっている。この場合、錘球21がルアーボディ11の右内壁面11c及び左内壁面11dに対して言わばジャストミートするかたちで点接触することにより、ルアーボディ11の内壁面に当接した際に衝突音の高デシベル化に効果的に作用する。
【0022】
ルアーボディ11内には更に図
1に示されるように腹部側に、複数の金属製の錘もしくはウェイト25,26,27,28等を設けてもよい。この場合、例えば鉛製のウェイト25,26とステンレス鋼製のウェイト27,28とし、これらのウェイト25〜28はウェイトルームあるいはガイドリブによって収容又はガイドされる。
【0023】
ここで、
図3は本発明のルアー10におけるウォブリングアクションの様子を模式的に示している。このウォブリングアクションではルアー10の遊泳中に、ルアーボディ11を上下方向に通る軸(ウォブリング軸Zとする)のまわりに
図3の矢印Yのように動作する。このウォブリングアクションは所謂、ヨーイング動作に対応する。支軸19の支点19Aは、ルアー10のウォブリングアクションのアクション支点であるウォブリング軸Zに対して、前方にオフセットされている。このように支軸19の支点19Aを設定することで、ルアー10のウォブリングアクションに連動するかたちで、錘球21がアーム20を介してルアーボディ11内で左右に移動することができる。
【0024】
上記の場合、錘球21はルアー10の遊泳姿勢等に特徴を持たせる所謂、バランスウェイトとして機能することもできる。この場合、本発明のルアー10ではルアーボディ11内部に、錘球21を収容しあるいはガイドするための収容部、隔壁あるいはリブ等を極力設けないようにしている。ルアーボディ11内部で隔壁等が、錘球21のルアーボディ11の内壁面との衝突音を吸収するのを抑止し、この点でも衝突音の高デシベル化に効果的である。
【0025】
本発明のルアー10は言わば振子式サウンドシステムを採用することで、高デシベル低周波音を一定周期で安定的に発生させることができる。音量の大きな低音の高デシベル低周波音による効能として、魚は側線器管で周囲の低周波音と水圧や水流の変化を敏感に感じ取るが、本発明のルアー10はそのような高デシベル低周波音を一定周期で安定的に発生させる。これにより魚の側線器管を過度に刺激し、威嚇攻撃によるバイト確率を大幅に向上することができ、後述する従来のスライド式と比較してバイト
確率を20%以上向上させることが可能である。
【0026】
また、本発明に係る振子式サウンドシステムを、ウォブリングアクションを行うルアー10に搭載適用することで、ウォブリングアクションによる水圧変化と高デシベル低周波音との相乗効果を発揮し、バイト確率を大幅に向上することができる。
【0027】
ここで、
図4はウォブリングアクションによる水圧変化の挙動を模式的に示している。ウォブリングアクションを行わせる場合、ライン13を引くことで(
図4、矢印D)、リップ18が水流Wを受けることにより、ルアー10はウォブリングアクションのアクション支点のまわりに回動動作をする(
図4、矢印Y)。このときルアー10の回動動作により、
図4に示すようにルアーボディ11後部まわりの水が攪拌されて攪拌流W′が生じ、これによりルアー10の後方に水圧変化が発生する。
【0028】
魚は側線器管で低周波音に加えて、水圧や水流の変化を敏感に感じ取ることができる。高デシベル低周波音と水圧変化を同時に発生させることで、魚の側線器管をより刺激することにより威嚇攻撃によるバイト確率を最大限に向上することができる。
【0029】
なお、本発明のルアー10では更に、アーム20を反射板として構成した場合、高デシベル低周波音及び水圧変化のそれぞれ、それらの相乗効果に加えて更に、特有のフラッシング効果による
重畳作用が得られる。
【0030】
ここで、従来のルアーの例を本発明のルアー10との関係で説明する。
図5〜
図7は従来のルアー100を示し、以下では要部についてのみ説明する。ルアー100においてそのルアーボディ101内部には左右の内壁面間に形成されたガイド102を有し、このガイド102内でウェイトもしくは錘球103が左右方向にスライド式に移動可能(
図6、矢印Y)に収容される。この場合、ガイド102は
図5のようにルアーボディ101の上下方向及び左右(前後方向)の中心部に形成される。
【0031】
従来のルアー100では、ウォブリングアクションのアクション支点(ウォブリング軸Z)が、錘球103を収容するガイド102のある位置と実質的に対応一致する。このためウォブリングアクションにおいてルアー100が
図7の矢印Yのように動作しても、錘球103が左右に動き難く、左右の内壁面との有効な衝突音が発生しない。
これに対して本発明のルアー10では前述のように、錘球21の揺動支点となる支点19Aがウォブリングアクションのアクション支点(ウォブリング軸Z)に対してオフセットされている。これによりルアー10のウォブリングアクションに連動して、錘球21がアーム20を介してルアーボディ11内で振子式に効率よく移動することができる。
【0032】
更に、
図8を用いて本発明の釣り用ルアー10の第2の実施形態を説明する。なお、上述の実施形態の場合と実質的に同一又は対応する部材には同一符合を用いるものとする。この第2の実施形態において、アーム20は
図8に示されるように、その基端が支軸19の支点19Aに固着した弾性部材でなり、これにより左右方向に加えて更に上下方向に揺動可能である。アーム20は弾性変形可能で、錘球21を支持するために必要な剛性強度を有する鋼線材等を用いて形成される。その他の構成は、実質的に第
1の実施形態の場合と同様である。
【0033】
第2の実施形態のルアー10によれば、ルアー10のウォブリングアクションに連動するかたちで、錘球21がアーム20を介してルアーボディ11内で左右に移動する。そして、ルアーボディ11の右内壁面11c及び左内壁面11dに当接する錘球21が、高デシベル低周波音を発生させる。
これに加えて、ルアー10の遊泳中にルアーボディ11の頭部が上下に首を振る所謂、ピッチング動作を行った場合等に錘球21がアーム20を介してルアーボディ11内で上下に移動する。そして、錘球21がルアーボディ11の上内壁面11a及び下内壁面11bに当接し、この場合にも高デシベル低周波音を発生させる。
【0034】
なお、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更等が可能である。
例えばアーム20や錘球21の具体的寸法等について、本発明を適用すべきルアーに応じて適宜設定することができる。
また、上述の実施形態における支軸19の支点19Aが、ルアー10のウォブリングアクションのアクション支点であるウォブリング軸Zに対して、後方にオフセットされる場合も含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 ルアー
11 ルアーボディ
12 糸環
13 ライン
14,15 フックハンガ
16 フロントフック
17 リヤフック
18 リップ
19 支軸
19A 支点
20 アーム
21 錘球