特許第6559476号(P6559476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本信号株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6559476-検査装置 図000002
  • 特許6559476-検査装置 図000003
  • 特許6559476-検査装置 図000004
  • 特許6559476-検査装置 図000005
  • 特許6559476-検査装置 図000006
  • 特許6559476-検査装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559476
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20190805BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20190805BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20190805BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H04N7/18 D
   G01B11/30 A
   G01B11/16 H
   G01N21/88 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-123560(P2015-123560)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-11429(P2017-11429A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−281100(JP,A)
【文献】 特開2000−180371(JP,A)
【文献】 特開2002−228417(JP,A)
【文献】 特開2002−083283(JP,A)
【文献】 特開平08−005337(JP,A)
【文献】 特開平08−278116(JP,A)
【文献】 特開2009−085621(JP,A)
【文献】 特開2006−284393(JP,A)
【文献】 特開2016−180637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G01B 11/16
G01B 11/30
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象を覆うように取り付けられ、かつ前記監視対象を外界から隔離する二重壁構造を有する筐体と、
二重壁構造の前記筐体の内部に配置され前記監視対象からその現状情報を取得する現状情報取得手段と、
を備えて成ることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記筐体は密閉された内部を有し、前記現状情報取得手段は画像取得手段であることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記画像取得手段は撮像装置であり、さらに、前記筐体の内部に照明装置および送信装置を備え、前記照明装置の照明の下で前記撮像装置によって取得された前記監視対象に係る画像は前記送信装置によって外部の管理部へ送信されることを特徴とする請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記監視対象は、社会基盤設備の亀裂部、前記社会基盤設備の所定箇所に備えられた応力可視化部材、または、軸力に応じて色変化する頂部を有するボルトであることを特徴とする請求項3記載の検査装置。
【請求項5】
前記監視対象に係る画像に基づいて定量測定を行うことを特徴とする請求項3または4記載の検査装置。
【請求項6】
前記現状情報取得手段で取得された前記現状情報に基づき前記監視対象の状況を判断する判断手段を内蔵することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項7】
前記現状情報取得手段で取得された前記現状情報に関する信号を外部へ送信し、外部で前記現状情報に基づき前記監視対象の状況を判断する判断手段を備えることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置に関し、特に、インフラ(社会基盤設備)の監視システムにおいて、巡回する人為的点検に代えて、監視対象ごとについて外界から隔離し外界の影響を排除して画像情報等を取得し検査を行える検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、過去に作られたインフラの経年変化に鑑みて当該インフラの保全が問題となっており、このためインフラの劣化部分を監視する監視システムが注目されている。従来のインフラの点検方法としては、一般的に、人為的な点検方法が主流であり、目視検査や打音検査等が用いられていた。さらに、監視システムとしては、カメラによる画像撮影による監視システムや、衝撃を与えてその振動の周波数解析を行う監視システム等が提案されていた。
【0003】
関連する従来の監視システムの一例として、下記の特許文献1に記載された無線カメラネットワークシステム等を挙げる。この無線カメラネットワークシステムは、屋外等において長時間に渡って安定的な画像監視を行うことができるシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−26832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目視検査や打音検査等の人為的な点検方法は、人が入れる所の箇所しか検査できないという制限がある。構造物の奥まった所にある部分の検査を行いたい場合には、構造物の一部を取り除いてから目視検査等を行い、点検終了後にまた元に戻すという作業が必要となり、多くの費用と時間がかかる。さらに、点検箇所が複数ある場合には、人は点検場所を巡回しなければならない。従って、人為的な点検方法については、点検効率が悪いという問題が提起される。
【0006】
また従来のインフラの監視システムにおいて、カメラによる画像撮影の場合、点検箇所は通常的に屋外にあるので、風雨等の天候、照明の変更の大きさ(直射日光、夜)等の環境の影響を強く受ける。例えば、照明が安定しない、暗くて撮影できない、または、レンズや撮影対象物が汚れる等の影響を受ける。このため、従来のインフラの監視システムについては、安定した画像等を取得することができないという問題が起きる。
【0007】
特許文献1に開示された前述の無線カメラネットワークシステムは、上記の2つの問題のうち、人為的な点検方法に関する第1の問題については、これを解決することができる。しかしながら、安定した画像等を取得することができないという第2の問題については、これを解決することができないという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、インフラの監視システムで利用され、日光や風雨等の天候の影響を排除して安定した画像情報等を取得し、点検コストの低減を図り、点検の効率を高めることができる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の検査装置(請求項1に対応)は、監視対象を覆うように取り付けられ、かつ監視対象を外界から隔離する二重壁構造を有する筐体と、二重壁構造の筐体の内部に配置され監視対象からその現状情報を取得する現状情報取得手段と、を備えて成ることを特徴とする。
【0011】
上記の検査装置では、監視対象を二重壁構造の筐体によって外界から隔離した状態で、当該筐体内に配置された現状情報取得手段によって当該監視対象の現状情報を取得するように構成したため、インフラの監視システムの検査装置として外界の天候の影響を排除でき、安定した画像情報等の現状情報を取得することが可能となる。さらに、この構成によれば、二重壁構造の筐体によって外部の影響を完全に遮断することが可能となる。作業員は定期的に巡回する必要がなくなり、監視作業が容易になり、監視の効率を高めることが可能となる。
【0012】
第2の検査装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、筐体は密閉された内部を有し、現状情報取得手段は画像取得手段であることを特徴とする。画像取得手段はセンシング装置として一例としてのカメラ装置であり、当該カメラ装置によって監視対象に関する画像データを現状情報として取得する。
【0013】
第3の検査装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、画像取得手段は撮像装置であり、さらに、筐体の内部に照明装置および送信装置を備え、照明装置の照明の下で撮像装置によって取得された監視対象に係る画像は送信装置によって外部の管理部へ送信されることを特徴とする。
【0015】
の検査装置(請求項に対応)は、上記の構成において、好ましくは、監視対象は、社会基盤設備の亀裂部、社会基盤設備の所定箇所に備えられた応力可視部材、または、軸力に応じて色変化する頂部を有するボルトであることを特徴とする。
【0016】
第6の検査装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、監視対象に係る画像に基づいて定量測定を行うことを特徴とする。人による目視ではなく、画像データに基づいて測定することが可能となるので、画像データに対する演算処理により、監視対象の状態を量的に計測することが可能となる。
【0018】
の検査装置(請求項に対応)は、上記の構成において、好ましくは、現状情報取得手段で取得された現状情報に基づき監視対象の状況を判断する判断手段を内蔵することを特徴とする。
【0019】
の検査装置(請求項に対応)は、上記の構成において、好ましくは、現状情報取得手段で取得された前記現状情報に関する信号を外部へ送信し、外部で現状情報に基づき監視対象の状況を判断する判断手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、監視対象を筐体によって外界から隔離し、当該筐体内に配置されたカメラ装置等の現状情報取得手段によって監視対象の現状情報を取得するようにしたため、検査装置として外光等の天候の影響を排除でき、安定した画像情報等を取得することができ、人による定期的に巡回する目視点検等が不要となり、監視作業が容易になり、監視効率を高めることができるという効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る検査装置の第1実施形態の構成を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る検査装置のブロック図である。
図3】第1実施形態に係る検査装置の検査動作を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る検査装置の第2実施形態の構成を示す断面図である。
図5】本発明に係る検査装置の第3実施形態の構成を示す断面図である。
図6】本発明に係る検査装置の第4実施形態の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1図3を参照して本発明に係る検査装置の第1実施形態を説明する。この検査装置は、インフラ(社会基盤設備)である建造物(橋梁、トンネル、ビル、建物一般、高速道路等)が古くなり、その劣化部分の発生状態または進展状態を監視する監視システムにおいて用いられる。検査装置は、監視すべき対象領域に対して固定的に設置され、定点監視または定点的な点検を所要の検査タイミングで行う。図1において、11は監視対象であり、例えば橋梁等の古い構造物12において生じる可能性の高い亀裂である。構造物12に対して、当該監視対象11を例えば密閉して覆うごとく、検査装置13が取り付けられている。検査装置13を構造物12に取り付けるための手段としては、締結手段(ボルトやネジ)や接着剤等の任意の手段を用いることができる。検査装置13の監視手段は、本実施形態の場合には撮像装置であり、カメラ装置14が検査装置13の筐体15の内部に備えられている。箱状容器の形態を成す筐体15の一壁面の箇所に開放部分を有している。検査装置13の筐体15は、当該開放部分が構造物13の壁面に対向するように、構造物13の外面に取り付けられている。検査装置13の筐体15の大きさは、監視対象11の大きさに応じて任意の大きさに設計される。例えば一辺が10cm程度の箱体として形成される。
【0024】
検査装置13の取付け状態において、カメラ装置14の撮像部14Aは、監視対象11に向けられている。これにより、カメラ装置14は、指令された撮像タイミングに基づいて、監視対象11を撮像することができる。
【0025】
検査装置13の筐体15は、本実施形態の構造では、取付け状態において外部の環境を完全に遮断し、内部を外部から隔離した密閉の構造を有している。すなわち、外部の光(太陽光等)、風雨等が筐体15の内部に入ることは完全に阻止される。従って、検査装置13の筐体15の内部は完全な密閉した暗箱の状態になっている。またこの実施形態に係る筐体15は、外部筐体15Aと内部筐体15Bから成る二重構造を有し、外部からの影響の排除機能を高め、さらに野外に設置された検査装置13における結露を防いでいる。筐体15の外部筐体15Aと内部筐体15Bは、通常的に電波を通す非金属材質で作られている。筐体15に金属材質を用いる場合には、無線装置18のアンテナ部分を筐体13の外に引き出す構造が必要になる。
【0026】
上記の形状および構造を有する筐体15の内部において、カメラ装置14が撮像動作を行うときには、監視対象11を見えるようにすることが必要となる。そのため、筐体15の内部には照明装置16が設けられている。照明装置16の個数は任意である。照明装置16は、カメラ装置14が撮像動作を行うときに、点灯タイミング指令に基づいて点灯し、照明動作を行う。
【0027】
図1に示した検査装置13において、さらに、17は制御装置、18は無線装置、19は電源装置である。制御装置17は、CPUおよびメモリを含むチップで構成され、カメラ装置14の撮像動作や照明装置16の照明動作を制御し、さらにカメラ装置14の撮像動作で取得された画像データ等をメモリに保存し、その後、外部への送信等の処理を行う。無線装置18は、電波による送受信機能を有しており、外部の上位の管理装置の無線通信部との間で無線を介して適宜なタイミングで接続され、管理装置からの制御指令を制御装置17に提供し、または制御装置17に保存された画像データ等を外部の管理装置へ送信する等の機能を有している。電源装置19は、例えば電池や太陽電池であり、カメラ装置14、照明装置16、制御装置17、および無線装置18等に必要な電力を供給する。太陽電池の場合には、筐体15の外部の日の当たる箇所に取り付けられ、筐体15の内部に電線が配線される。通常の電池の場合には、交換可能な構造が筐体15に付加される。また電源装置19の代わりに、外部の商用電源から有線で電力を供給する構成にすることもできる。
【0028】
上記の検査装置13の筐体15の内部に設けられるカメラ装置14、照明装置16、制御装置17、無線装置18、および電源装置19等は、好ましくは、1枚の基板20の上に配置されている。
【0029】
図2において、検査装置13の内部構成のブロック図を示す。構造物12の監視対象11に対してカメラ装置14の撮像部14Aが臨んでおり、さらに当該監視対象11を照明する照明装置16が配置されている。制御装置17は、無線装置18および電波(無線)21を介して、外部の管理装置22とつながっている。制御装置17は、例えば通常的に外部の管理装置22からの制御指示に従って、カメラ装置14と照明装置16の各動作を制御すると共に、カメラ装置14から撮像データを受け取る。制御装置17は、取得した撮像データをメモリに保存し、さらに当該画像データを適宜な送信タイミングで、無線装置18および電波21を介して外部に管理装置22に送信する。制御装置17と管理装置22の各々は、監視対象11に関する所要の判断処理を行うための判断手段を備えている。この判断手段は、例えば監視対象である亀裂の劣化状態を判断し、保守や修理等が必要であるか否かを判断する等の機能を有している。保守や修理等が必要である場合には、緊急に管理担当者等に連絡・通知を行う。このような判断は、通常的には、外部の管理装置22の判断手段で行われるが、制御装置17に設けた判断手段で行うように構成することもできる。
【0030】
図3に示したフローチャートに基づいて検査装置13の検査動作を説明する。最初の段階では、検査装置13の全体はスリープ状態にあり、待機状態に保持されている(ステップS11)。ステップS11では、具体的に、外部の管理装置22から無線を介して点検起動トリガー23を受けたか否かが判断する判断ステップS12を有している。判断ステップS12でNOの場合には定期的に判断ステップS12が繰り返される。判断ステップS12でYESの場合には、点検起動トリガー23を受けたときである。点検起動トリガー23を受けると、制御装置17が起動し(ステップS13)、照明装置16を点灯(ON動作)し(ステップS14)、さらにカメラ装置14の撮像動作を実行させる(ステップS15)。カメラ装置14の撮像動作に伴って、制御装置17は撮像した監視対象11に係る画像データをメモリに保存する(ステップS16)。撮像が完了した後は、当然のことながら照明装置16の点灯動作はOFFの状態になる。その後、さらに制御装置17は、メモリに保存した画像データを無線装置18および電波を介して外部の管理装置22へ送信する。監視対象11についての撮像点検が終了すると、制御装置17は実質的にOFF状態(スリープ状態)にされ(ステップS18)、装置待機状態のステップS11に移行する。
【0031】
上記の実施形態に係る検査装置13によれば、カメラ装置14による撮像によって定期的に監視対象11の発生状態または進展状態の情報(現状情報)を取得し、これを監視することができる。このとき、検査装置13は予め構造物12の監視対象11の領域に設置し、固定しておき、定点監視を行うことができる。検査装置13の筐体15は密閉構造であるので、撮像時に照明装置16による照明を利用して撮像でき、外部環境(日光、大気、風等)からの影響を完全に排除でき、精度の高い画像データを得ることができ、その後の保全等の判断を適切に行うことができる。検査装置13を、監視したい箇所に取り付けることにより、最初の段階を除き、人がアクセスしやすい場所かアクセスしにくい場所かに拘わらず、野外であっても環境の影響を受けない安定した監視対象11の画像データを遠隔にて取得することができる。
【0032】
上記の実施形態では、筐体15の二重構造によって完全密閉とし、外部環境の影響を完全に遮断して完全な隔離を行ったが、外部環境の影響の排除(隔離の程度)を緩和して設定するという不完全な隔離を行うように構成することも可能である。例えば、筐体15を二重構造とせず、1つの壁部だけで構成することもできる。さらに、筐体を1つの壁部だけで形成し、かつ当該筐体の壁部に外部の光(日光等)を内部に導けるように開口部や投光部を設けるように構成することもできる。この構成図を、第2実施形態に係る検査装置13として図4に示す。図4において、筐体24は1つの壁部だけで形成されている。筐体24の壁部には、例えば開口部24aが形成されている。開口部24aを通して外部の光を取り込むことができる。この場合には、外部の光を利用して撮像を行うことができるため、照明装置16を設置することを省略することが可能となる。その他の構成は、第1実施形態に係る検査装置13と同じであるので、図1等で説明した要素と同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
また上記の実施形態に係る検査装置13では、監視手段としてカメラ装置14の撮像手段を用いたが、監視手段はこれに限定されない。例えば、超音波によるセンサ、X線や赤外線等によるセンサ、MEMSデバイスによるセンサ、打音装置によるセンサ等のセンシング手段を用いることも可能である。
【0034】
次に、図5を参照して本発明に係る検査装置の第3実施形態を説明する。この検査装置13は、第1実施形態と同様に構造物12の監視対象31を覆うごとく、筐体32によって、密閉状態で構造物12に取り付けられている。また検査装置13の筐体32は、第2実施形態の検査装置13の筐体24と同様に、二重構造ではなく、1つの壁部だけで形成されている。監視対象31は、構造物12に生じた亀裂そのものではなく、亀裂が生じるおそれのある箇所に取り付けられた応力可視化部材である。「応力可視化部材」は、取り付けた構造物12の表面に応力が加わると、色が変わるという特性を有する部材である。応力可視化部材に関しては、近年、例えば、「オパール薄膜を用いたアルミニウム試験体の歪み可視化」という技術が提案されている。検査装置13のカメラ装置14の撮像部14Aは監視対象31を撮像するように配置されている。その他の構成や動作は第1実施形態で説明した構成や動作と同じであり、同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
第3実施形態に係る検査装置13によれば、応力可視化部材で形成された監視対象31をカメラ装置14によって適宜なタイミングで撮像することにより監視対象31の色の変化に関する画像データを得ることができる。そして当該画像データに基づいて監視対象31の色の変化を検出し、監視対象31の色の変化に基づいて構造物12における監視対象31の取付け箇所の劣化の発生状態または進展状態を判断するように構成される。こうして、応力可視化を利用して監視対象31の定量評価を行うことができる。
【0036】
次に、図6を参照して本発明に係る検査装置の第4実施形態を説明する。この検査装置13は、基本的に第3実施形態に係る検査装置13と同様な構成を有しており、監視対象だけが異なっている。監視対象41は、構造物12を固定するためのボルトである。従って、カメラ装置14の撮像部14Aは、ボルトである監視対象41の頂部(ボルト頂部)を撮像するように配置されている。その他の構成は第1実施形態で説明した構成4と同じであり、同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0037】
第4実施形態に係る検査装置13では、よく知られたDTI(Direct Tension Indicating)のシステムを利用することを前提としている。すなわち「DTIシステム」とは、軸力によるボルトの伸びに連動する歪みを検知する仕組みをボルト内部に盛り込み、その歪みの度合いを色の変化により軸力として表示させるようにした軸力検知システムである。この監視対象41であるボルトは、DTIの仕組みを盛り込んだボルトである。
【0038】
第4実施形態に係る検査装置13によれば、DTIの仕組みを盛り込んだボルトである監視対象41をカメラ装置14によって適宜なタイミングで撮像することにより監視対象41の色の変化に関する画像データを得ることができる。ボルトの軸力が変わると、ボルト頂部の色が変わるので、カラー画像データを得ることにより、軸力の変化、すなわち監視対象41の締結力(弛み)を評価することができる。このように、画像データに基づいて監視対象31の頂部の色の変化を検出し、監視対象31の頂部の色の変化に基づいて監視対象41の軸力の状態を判断するように構成される。
【0039】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る検査装置は、インフラの監視システムの検査部として利用され、人為的な目視点検等に比較して定点検査を行い、巡回する目視点検等の問題を解消するのに利用される。
【符号の説明】
【0041】
11 監視対象
12 構造物
13 検査装置
14 カメラ装置
14A 撮像部
15 筐体
15A 外部筐体
15B 内部筐体
16 照明装置
17 制御装置
18 無線装置
19 電源装置
20 基板
22 管理装置
23 点検起動トリガー
24 筐体
24a 開口部
31 監視対象
32 筐体
41 監視対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6