(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具の1つとして、軸筒内に支持された筆記体の後方にノック部材を設け、このノック部材を軸筒に対して軸方向前方に押圧操作(ノック操作)することによって、軸筒の前端から筆記体のペン先を出没させる、というノック式の筆記具が知られている。
【0003】
ノック部材は、軸筒の後端から突出するように設けられていることが一般的であるが、例えばWO2011/096357A1(特許文献1)では、軸筒の側面に取り付けられたクリップがノック部材としても機能する筆記具(サイドスライド式の筆記具)が提案されている。この場合、軸筒の後端領域にはノック部材が存在しないため、当該後端領域が軸筒に対して軸方向に相対移動することが無い。このことは、軸筒の後端領域に、例えばタッチパネルをタッチ操作するための導電体を取り付けた場合、安定したタッチ操作を可能とする。
【0004】
特許文献1の筆記具においては、
図10及び
図11に示すように、クリップ207をノック部材として利用するために、中間軸204の後方領域と後軸205の前方領域とに、それぞれ、第1の長孔244及び第2の長孔251が設けられている。そして、組立時に、クリップ207の基部272が中間軸204の後端の開口から第1の長孔244に沿って中間軸204内に挿入される。この挿入の際、基部272の外周面に形成された突条と中間軸204の内周面に形成された凹条とが係合するように、基部272を中間軸204に対して周方向に正確に位置決する必要がある。そして、基部272が中間軸204内に挿入された状態で、中間軸204の後端領域に後軸205の前端領域が外嵌される。この時、第1の長孔244と第2の長孔251とが連なって、1つのスライド孔221が形成されるようになっている。クリップ207は、スライド孔221内を軸筒202に対して軸方向に相対移動可能であり、中間軸204内に設けられるカム機構と協働してノック部として機能するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1の筆記具は、前述の通り、クリップが軸筒の後端に形成された開口部を介して当該軸筒に取り付けられる際に、正確な位置決めが必要とされるため、その位置決めに時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題に鑑みて創案されたものである。本発明の目的は、サイドスライド式の筆記具を組み立てる際に、ノック部としてのクリップをスムーズに軸筒に組み付けることができる筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筆記体を収容する軸筒と、前記軸筒の側面に軸方向に延びるように設けられたスライド孔と、前記スライド孔内に軸方向にスライド可能に挿入されたスライド部と、前記スライド部と一体に成形され、前記筆記体を前記軸筒の前端から出没させるノック部と、前記スライド部と一体に成形され、前記軸筒の前記スライド孔の外側に露出された操作部と、を備え、前記軸筒は、前記スライド孔の後方側に、少なくとも1mmの軸長を有する後端筒部を一体的に有していることを特徴とする筆記具である。
【0009】
本発明によれば、スライド部を軸筒の側面からスライド孔の後方領域に挿入可能であるため、筆記具を組み立てる際に、スライド部の軸筒に対する径方向の位置決めが容易であり、当該スライド部を軸筒にスムーズに組み付けることができる。更に、軸筒は、スライド孔の後方側に、少なくとも1mmの軸長を有する後端筒部を一体的に有しているため、軸筒の後端領域の強度を高めることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記軸筒は、導電性を有する材料から構成されており、前記軸筒の後端領域には、導電体が取り付けられている。
【0011】
この場合、操作者が軸筒を把持した状態において導電体から当該操作者の指までの導電性が確保されるため、この状態で導電体をタッチパネルに接触させることによって、タッチパネルのタッチ操作を行うことができる。また、軸筒の後端領域がノック部ではないため、当該後端領域が軸筒に対して軸方向に移動することが無く、安定したタッチ操作を行うことができる。更に、軸筒の後端領域の強度が高められているため、前記タッチ操作の際に良好な操作感が実現される。
【0012】
好ましくは、前記導電体は、導電性を有するシリコンゴムである。この場合、タッチパネルをタッチ操作した際に導電体が適度に弾性変形するため、操作感が良い導電体を提供することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記軸筒は、前記スライド孔の前方領域を取り囲み当該軸筒の肉厚方向に延びる周壁に、軸方向に延びるガイド部を有しており、前記スライド部は、前記周壁に面した領域に前記ガイド部に軸方向に摺動可能に係合する被ガイド部を有しており、前記スライド孔は、後方領域の幅が前記被ガイド部を除く前記スライド部の幅よりも広くなっている。
【0014】
この場合、スライド部を軸筒の側面からスライド孔の後方領域に挿入して当該軸筒に対して軸方向前方に相対移動させることにより、容易に被ガイド部をガイド部にスライド可能に係合させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スライド部を軸筒の側面からスライド孔の後方領域に挿入可能であるため、筆記具を組み立てる際に、スライド部の軸筒に対する径方向の位置決めが容易であり、当該スライド部を軸筒にスムーズに組み付けることができる。更に、軸筒は、スライド孔の後方側に、少なくとも1mmの軸長を有する後端筒部を一体的に有しているため、軸筒の後端領域の強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面を参照して本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態の筆記具100の概略側面図であり、
図2は、
図1の筆記具100の概略的な縦断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の筆記具100は、筆記体40を収容する軸筒10と、軸筒10(後軸20)の側面に軸方向に延びるように設けられたスライド孔21と、スライド孔21内に軸方向にスライド可能に挿入されたスライド部51と、スライド部51と一体に成形され、筆記体40を軸筒10(前軸30)の前端から出没させるノック部としての軸部52と、スライド部51と一体に成形され、スライド孔21の外側に露出された操作部としてのクリップ本体55と、を備えている。本実施の形態では、スライド部51、軸部52及びクリップ本体55によって、クリップ50が構成されている。
【0019】
本実施の形態の軸筒10は、後軸20の前端領域に前軸30の後端領域が螺着されて構成されている。本実施の形態の後軸20は、カーボンが混入されたポリカーボネートから製造されており、導電性を有している。
【0020】
また、本実施の形態の筆記体40は、内部にインキが充填されたインキタンク43と、インキタンク43の前端領域に固定されたペン先42と、を有している。ペン先42としては、例えば、前端に回転可能なボールを有する金属性のボールペンチップが採用され得る。インキタンク43の外径は、ペン先42の後方領域の外径よりも大きくなっており、インキタンク43の前端に、径方向外側に張り出した張出部41が設けられている。この張出部41よりも軸方向前方には、前軸30の内周面に突出した突出部31が設けられている。そして、張出部41と突出部31との間に、伸縮可能な弾性体としてのコイルバネ60が圧縮状態で配置されており、筆記体40を前軸30に対して軸方向後方に付勢している。
【0021】
筆記体40の軸方向後方には、
図2に示すように、後述されるカム機構70の一部である回転部材71及び押圧部材72を介して、クリップ50のスライド部51が配置されている。このスライド部51は、前述のコイルバネ60の付勢力によって、回転部材71及び押圧部材72を介して、筆記体40と共に軸方向後方に付勢されている。
【0022】
次に、
図3は、
図1の筆記具100の後軸20の概略的な縦断面図であり、
図4は、
図3のA−A線断面図であり、
図5は、
図3のB−B線断面図である。
図3乃至
図5に示すように、本実施の形態の後軸20は、後端領域が他の領域よりも小径の縮径部22となっている。当該縮径部22の後端には、導電性のシリコンゴム90を取り付けるための台座23が設けられている。また、後軸20の側面の後方領域に、軸方向に延びる長さ17.75mmの開口であるスライド孔21が形成されている。このスライド孔21は、軸方向後方の長さ6.2mmの領域である後方領域21aが縮径部22に設けられており、軸方向前方の長さ11.55mmの領域である前方領域21bが縮径部22よりも軸方向前方に設けられている。また、本実施の形態では、縮径部22は、スライド孔21の後方側に、2.4mmの軸長を有する後端筒部29を一体的に有している。スライド孔21の幅は、後方領域21aにおいては2.16mmであり、前方領域21bにおいては2.1mmである。更に、後軸20の外周面には、スライド孔21の前端から軸方向前方に向かって27.75mmの溝24が形成されている。
【0023】
本実施の形態では、
図4に示すように、スライド孔21の後方領域21aは、後軸20の径方向内側に向かって次第に幅狭となっている。一方、
図5に示すように、スライド孔21の前方領域21bは、後軸20の径方向内側に向かって略同じ幅を維持している。更に、本実施の形態では、スライド孔21の前方領域21bを取り囲み後軸20の肉厚方向に延びる周壁28には、軸方向に延びるガイド部としての案内溝26が設けられている。具体的には、本実施の形態では、後方領域21aを取り囲み後軸20の肉厚方向に延びる周壁25が、前方領域21bの前端部近傍まで軸方向前方に延びている。この周壁25の径方向外側の幅は、前方領域21bの周壁28の幅よりも大きいため、当該周壁25によって軸方向に延びる案内溝26が形成されている。更に、
図4及び
図5に示すように、縮径部22を含む後軸20の内周面には、スライド孔21から後軸20の周方向に略半周した位置に、軸方向に延びる案内溝26aが形成されている。
【0024】
更に、
図3に示すように、後軸20は、縮径部22よりも軸方向前方の内周面にカム本体部27を有している。本実施の形態のカム本体部27は、軸方向に延びる複数のカム歯27a及びカム溝27bが円周方向に沿って交互に配置されて構成されている。このカム本体部27は、後述される回転部材71及び押圧部材72と協働して、筆記体40のペン先42が軸筒10(前軸30)の前端から突出した状態と、筆記体40のペン先42が軸筒10(前軸30)内に没入した状態と、を交互に実現させるようになっている。
【0025】
次に、
図6は、
図1の筆記具100のクリップ50の概略側面図である。
図7は、
図1の筆記具100の回転部材71の概略図であり、
図7(a)は、回転部材71の概略底面図であり、
図7(b)は、回転部材71の概略的な縦断面図であり、
図7(c)は、回転部材の概略平面図である。また、
図8は、
図1の筆記具100の押圧部材72の概略図であり、
図8(a)は、押圧部材72の概略底面図であり、
図8(b)は、押圧部材72の概略的な縦断面図であり、
図8(c)は、押圧部材72の概略平面図である。
【0026】
図6に示すように、本実施の形態のクリップ50は、樹脂製であり、軸方向に延びるクリップ本体55と、クリップ本体55の後方領域に一体的に形成されたスライド部51と、スライド部51の軸方向前方(
図6における左方)に一体的成形され、前端領域に係合部54が設けられたノック部としての軸部52と、を有している。クリップ本体55は、軸筒10(後軸20)に面する側(
図6における下側)に玉部56が一体に成形されている。この玉部56は、後軸20の外周面に設けられた溝24内を軸筒10(後軸20)に対して軸方向に相対移動可能であると共に、当該溝24との間で被挟持物を挟持可能となっている。
【0027】
また、スライド部51は、側面(
図6における手前側の面及び奥側の面)に軸方向に伸びる被ガイド部としての突条53を有していて、この突条53が後軸20の案内溝26に摺動可能に係合されることにより、クリップ50が後軸20に対して軸方向に相対移動され得るようになっている。更に、ガイド部51は、クリップ本体55が一体に成形されている側とは反対側(
図6の下側)の端部に突条57を有していて、この突条57が後軸20の案内溝26aに摺動可能に係合されるようになっている。
【0028】
本実施の形態では、軸部52に回転部材71及び押圧部材72が取り付けられており(
図2参照)、これら押圧部材72及び回転部材71とカム本体部27とによって、カム機構70が構成されている。
【0029】
具体的には、回転部材71は、例えばポリアセタール樹脂製であり、
図7(c)に示すように、外周面にカム本体部27のカム歯27aまたはカム溝27bに交互に係合可能な3つの突条73を周方向に等間隔で有していると共に、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、後端領域に複数のカム歯74を有している。また、回転部材71の内部には、軸方向(
図7(a)及び
図7(c)における奥行方向、
図7(b)における左右方向)に貫通孔75が形成されており、内周面の軸方向の一部において、径方向内側に突出した係合部76が設けられている。
【0030】
また、本実施の形態の押圧部材72は、例えばポリアセタール樹脂製であり、
図8(a)及び
図8(c)に示すように、外周面にカム本体部27のカム溝27bに軸方向に摺動可能に係合される6つの突条77が周方向に等間隔で形成されていると共に、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、前端領域に複数の押圧面78を有している。また、押圧部材72の内部には、軸方向(
図8(a)及び
図8(c)における奥行方向、
図8(b)における左右方向)に貫通孔79が形成されている。
【0031】
図2に戻って、本実施の形態では、クリップ50の軸部52に、押圧部材72及び回転部材71が軸方向前方に向かってこの順で外嵌されている。更に、回転部材71の被係合部76は、軸部52の係合部54に係合されており、これによって、当該回転部材71及び押圧部材72の軸部52からの抜け落ちが防止されている。
【0032】
また、本実施の形態では、
図2に示すように、後軸20の台座23に、導電体として導電性を有するドーム状のシリコンゴム90が外嵌されている。また、シリコンゴム90の前方領域と後軸20の縮径部22とを取り囲むようにして、当該縮径部22に、樹脂製の筒状の頭冠80が外嵌されている。
【0033】
本実施の形態の頭冠80の概略図が、
図9に示されている。
図9(a)は、頭冠80の概略底面図であり、
図9(b)は、頭冠80の概略側面図であり、
図9(c)は、
図9(b)のC−C線断面図である。
図9(b)に示すように、本実施の形態の頭冠80は、周方向の一部において、前方領域に幅2.2mm、長さ4.8mmの切り欠き81を有している。また、頭冠80の後方領域の外径は、縮径部22よりも軸方向前方における後軸20の外径と略同一である。頭冠80は、内周面の軸方向の一部において周方向に延びる被係合部82を有しており、この被係合部82は、縮径部22の外周面の軸方向の一部において周方向に延びる係合部22a(
図2及び
図3参照)と係合可能である。この係合によって、頭冠80が縮径部22に固定されるようになっている。
【0034】
更に、頭冠80は、内周面に軸方向に延びる複数の凹条83を有している。これに対し、縮径部22は、外周面に軸方向に延びる複数の突条22bを有しており、凹条83と突条22bとの係合によって縮径部22に対する頭冠80の周方向の位置決めがなされると共に、頭冠80が縮径部22に固定された際に、頭冠80の縮径部22に対する軸線回りの相対回転が防止されるようになっている。本実施の形態では頭冠80が縮径部22に取り付けられた状態において、頭冠80の切り欠き81とスライド孔21の前方領域21bとが連なるようになっている。更に、頭冠80の切り欠き81の幅は、スライド部51の突条53の幅よりも狭く形成されている。このため、スライド部51がスライド孔21内に挿入された状態で頭冠80が縮径部22に対して固定されることにより、スライド部51がスライド孔21から抜け落ちないようになっている。
【0035】
次に、本実施の形態の筆記具100の組立方法について説明する。
【0036】
まず、クリップ50のスライド部51が、後軸20の側面からスライド孔21内に挿入される。この時、スライド部51の突条57が後軸20の案内溝26aに係合される。そして、例えば後軸20の前端の開口が上方に向けられた状態で、必要に応じて適切な補助具を用いて、押圧部材72及び回転部材71が前記開口を介してこの順で後軸20内に入れられ、それぞれ、スライド部51の軸部52に外嵌される。この時、押圧部材72の突条77は、後軸20の内周面に形成されたカム本体部27のカム溝27bに係合される。そして、回転部材71が軸部52に対して軸方向後方(下方)に押圧されることにより、回転部材71の被係合部76が軸部52の係合部54に係合される。このことにより、回転部材71及び押圧部材72の軸部52からの抜け落ちが防止される。
【0037】
そして、筆記体40の後端が回転部材71の前端に当接するように、当該筆記体40が後軸20内に挿入される。そして、コイルバネ60が筆記体40のペン先42を取り囲むように配置される。この時、コイルバネ60は、後端が筆記体40の張出部41に当接される。この状態で、前軸30の後端領域の外周面に形成された雄ねじ部が後軸20の前端領域の内周面に形成された雌ねじ部に螺着され、前軸30が後軸20に対して固定される。これにより、筆記体40の前方領域及びコイルバネ60は、前軸30の内部に収容される。この時、コイルバネ60の前端は、前軸30の内周面に突出した突出部31に当接される。本実施の形態では、前軸30が後軸20に対して固定(螺着)された状態において、張出部41と突出部31との間の離間距離がコイルバネ60の自然長よりも短くなっている。このため、コイルバネ60は、圧縮状態で張出部41と突出部31との間に配置される。すなわち、筆記体40は、コイルバネ60の付勢力により、前軸30に対して軸方向後方に付勢される。
【0038】
そして、例えば後軸20の後端が上方に向けられ、後軸20の台座23に導電性を有するシリコンゴム90が外嵌される。そして、シリコンゴム90の前方領域と後軸20の縮径部22とを取り囲むように、当該縮径部22に頭冠80が外嵌される。この時、頭冠80の凹条と縮径部22の突条22bとの係合によって縮径部22に対する頭冠80の周方向の位置決めがなされると共に、頭冠80が縮径部22に固定された際における頭冠80の縮径部22に対する軸線回りの相対回転が防止される。この時、頭冠80の切り欠き81の後端によってスライド部51が後軸20に対して軸方向前方にわずかに相対移動されるため、スライド部51の突条53の前端領域が後軸20の案内溝26に係合される。
【0039】
次に、本実施の形態の筆記具100の作用について説明する。
【0040】
筆記具100は、初期状態において、筆記体40のペン先42が軸筒10(前軸30)内に没入されており、クリップ50のスライド部51の前方に位置する押圧部材72の突条77の後端が、コイルバネ60の付勢力によって、カム溝27bの後端の段部に当接されている(
図2及び
図3参照)。
【0041】
筆記具100を用いて紙面に筆記をする際、まず、使用者によって軸筒10が把持され、クリップ50が、コイルバネ60の付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向前方に押圧操作(ノック操作)される。この時、スライド部51の突条53、57が後軸20の案内溝26、26aに沿って軸方向にスライドされるため、押圧操作時のクリップ50のガタツキが抑制される。この押圧操作により、軸部52に外嵌された回転部材71のカム歯74が、押圧部材72の押圧面78により押圧され、軸筒10に対して軸方向前方に相対移動される。これに伴い、筆記体40のペン先42が、前軸30の前端から露出される。そして、回転部材71の突条73の後端がカム溝27bの前端よりも軸方向前方まで相対移動されると、押圧部材72の押圧面78と回転部材71のカム歯74との当接によって、回転部材71がカム本体部27に対して一定角度だけ回転される。そして、クリップ50に加えられている押圧力が弱められると、コイルバネ60の付勢力によって、筆記体40と共に回転部材71が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動される。この相対移動の途中で回転部材71の突条73がカム本体部27のカム歯27aに係合されることにより、ペン先42が軸筒10(前軸30)の先端から突出した状態が維持される。そして、使用者により前軸30が把持されて、紙面に対して軸筒10を所望に移動させることにより、筆記が行われる。
【0042】
次に、ペン先42が軸筒10(前軸30)の先端から突出した状態において、クリップ50がコイルバネ60の付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向前方に押圧操作(ノック操作)されると、ペン先42が軸筒10(前軸30)内に没入される。具体的には、クリップ50の押圧操作により、軸部52に外嵌された回転部材71のカム歯74が、押圧部材72の押圧面78により押圧され、軸筒10に対して軸方向前方に相対移動される。そして、回転部材71の突条73の後端がカム歯27aの前端よりも軸方向前方まで相対移動されると、突条73とカム歯27aとの係合が解除され、押圧部材72の押圧面78と回転部材71のカム歯74との当接によって回転部材71がカム本体部27に対して一定角度だけ回転される。そして、クリップ50に対して加えられている押圧力が弱められると、コイルバネ60の付勢力によって筆記体40と共に回転部材71がカム本体部27に対して軸方向後方に相対移動される。この時、回転部材71の突条73が、カム溝27bに案内されて軸方向後方に移動されることにより、ペン先42が軸筒10(前軸30)内に没入される。
【0043】
また、本実施の形態の筆記具100は、タブレット端末等の静電容量式のタッチパネルを操作するためにも使用され得る。この場合、軸筒10の後端領域に取り付けられた導電性のシリコンゴム90が操作対象のタッチパネルに向けられた状態で、使用者によって後軸20が把持され、タッチパネルが所望にタッチ操作される。このタッチ操作の際、操作対象のタッチパネルからシリコンゴム90及び後軸20を介して使用者の指まで通電されるため、タッチパネルを指で操作する時と同じような操作が実現される。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、スライド部51を軸筒10(後軸20)の側面からスライド孔21の後方領域21aに挿入可能であるため、筆記具100を組み立てる際に、スライド部51の軸筒10に対する径方向の位置決めが容易であり、スライド部51を軸筒10(後軸20)にスムーズに組み付けることができる。更に、軸筒10(縮径部22)は、スライド孔21の後方側に、2.4mmの軸長を有する後端筒部29を一体的に有しているため、後軸20の後端領域の強度を高めることができる。
【0045】
また、後軸20は、導電性を有する材料から構成されており、後軸20の後端領域には、導電性を有するシリコンゴム90が取り付けられている。このため、操作者が軸筒10を把持した状態においてシリコンゴム90から当該操作者の指までの導電性が確保でき、この状態でシリコンゴム90をタッチパネルに接触させることによって、タッチパネルのタッチ操作を行うことができる。また、軸筒10の後端領域がノック部ではないため、当該後端領域が軸筒10に対して軸方向に移動することが無く、安定したタッチ操作を行うことができる。更に、後軸20の後端領域の強度が高められているため、前記タッチ操作の際に良好な操作感が実現される。
【0046】
また、軸筒10は、スライド孔21の前方領域を取り囲み当該軸筒10の肉厚方向に延びる周壁28に、軸方向に延びる突条53を有しており、スライド部51は、周壁28に面した領域に突条53に軸方向に摺動可能に係合する案内溝26を有しており、スライド孔は21、後方領域の幅が突条53を除くスライド部51の幅よりも広くなっている。このため、スライド部51を軸筒10の側面からスライド孔21の後方領域に挿入して当該軸筒10に対して軸方向前方に相対移動させることにより、容易に突条53を案内溝26にスライド可能に係合させることができる。