特許第6559485号(P6559485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6559485-トルク変動吸収ダンパ 図000002
  • 特許6559485-トルク変動吸収ダンパ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559485
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】トルク変動吸収ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/126 20060101AFI20190805BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20190805BHJP
   F16H 55/36 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   F16F15/126 B
   F16F15/126 C
   F16F15/12 S
   !F16H55/36 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-135152(P2015-135152)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-15227(P2017-15227A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】下玉利 大夢
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−320613(JP,A)
【文献】 特開2007−107637(JP,A)
【文献】 特開2007−100852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/12
F16F 15/126
F16H 55/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパ部におけるダンパゴムおよびカップリング部におけるカップリングゴムをハブに対し直列に連結したトルク変動吸収ダンパであって、
前記ダンパゴムを前記カップリングゴムより外周側に配置するとともに前記カップリングゴムを前記ダンパゴムより内周側に配置したことを特徴とするトルク変動吸収ダンパ。
【請求項2】
請求項1記載のトルク変動吸収ダンパにおいて、
前記ダンパゴムおよび前記カップリングゴムを、少なくともその一部が軸方向にオーバーラップするように配置したことを特徴とするトルク変動吸収ダンパ。
【請求項3】
請求項1または2記載のトルク変動吸収ダンパにおいて、
ハブの筒状部の内周側に前記ダンパゴムを配置するとともに前記ダンパゴムの内周側にダンパマスを配置し、
前記ダンパマスは、前記ダンパゴムに接続された外周筒部、端面部および内周筒部を一体に備え、
前記ダンパマスにおける前記外周筒部の内周側であって前記内周筒部の外周側に前記カップリングゴムを配置したことを特徴とするトルク変動吸収ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ部およびカップリング部を有するトルク変動吸収ダンパに関する。本発明のトルク変動吸収ダンパは例えば、エンジンのクランクシャフトに装着され、またはその他の回転軸に装着される。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンのクランクシャフト等の回転軸の捩り共振による振動を低減するダンパ部と、回転軸のトルク変動による振動伝達を低減するカップリング部とを有するトルク変動吸収ダンパが知られており、この種のトルク変動吸収ダンパには、ダンパ部のダンパゴムおよびカップリング部のカップリングゴムをハブに対し並列に連結した構造の並列式のトルク変動吸収ダンパと、ダンパ部のダンパゴムおよびカップリング部のカップリングゴムをハブに対し直列に連結した構造の直列式のトルク変動吸収ダンパとがある。
【0003】
図2は、このうち後者の、直列式のトルク変動吸収ダンパの従来例を示し、すなわち回転軸に取り付けられるハブ51に対し、ダンパゴム52、ダンパマス53、カップリングゴム54およびプーリ55がこの順序で直列に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−320613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記図2のトルク変動吸収ダンパは、ダンパゴム52を備えるダンパ部およびカップリングゴム54を備えるカップリング部の双方ともに十分な機能を発揮するが、ダンパゴム52がカップリングゴム54より内周側に配置されるとともにカップリングゴム54がダンパゴム52より外周側に配置されているため、以下の点で改良の余地がある。
【0006】
すなわち、ダンパゴム52が内周側に配置されていると、このダンパゴム52はそのバネ定数が低く設定されやすい。したがって高周波対応の共振ダンパ部を設定する場合、ダンパゴム52のバネ定数を高くすべく、ダンパゴム52を軸方向に拡大する必要がある。
【0007】
一方、カップリングゴム54は回転変動を絶縁すべくそのバネ定数が低いことが望まれるが、カップリングゴム54が外周側に配置されていると、このカップリングゴム54はそのバネ定数が高く設定されやすい。したがってカップリングゴム54のバネ定数を低くすべく、カップリングゴム54の径方向厚みを薄くする必要がある。また、カップリングゴム54を薄くするとカップリングゴム54が撓み変形する可能性もある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、ダンパ部のダンパゴムおよびカップリング部のカップリングゴムをハブに対し直列に連結した直列式のトルク変動吸収ダンパにおいて、ダンパゴムのバネ定数を高く設定しやすく、カップリングゴムのバネ定数を低く設定しやすい構造のトルク変動吸収ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、以下の手段を採用した。
すなわち本発明のトルク変動吸収ダンパは、ダンパ部におけるダンパゴムおよびカップリング部におけるカップリングゴムをハブに対し直列に連結したトルク変動吸収ダンパであって、前記ダンパゴムを前記カップリングゴムより外周側に配置するとともに前記カップリングゴムを前記ダンパゴムより内周側に配置したことを特徴とする。
【0010】
トルク変動吸収ダンパの製品としての大きさがほぼ一定であるとして、ダンパゴムをカップリングゴムより外周側に配置するとともにカップリングゴムをダンパゴムより内周側に配置すると、ダンパゴムはそのバネ定数が比較的高く設定され、カップリングゴムはそのバネ定数が比較的低く設定される。ダンパゴムは内周側に配置される場合と比較してその周長が長くなるため、バネ定数が比較的高く設定され、カップリングゴムは外周側に配置される場合と比較してその周長が短くなるため、バネ定数が比較的低く設定される。したがって、ダンパゴムを軸方向に拡大したりカップリングゴムの径方向厚みを薄くしたりすることなく、各ゴムのバネ定数を適切に設定することが可能とされる。
【0011】
ダンパゴムおよびカップリングゴムは、少なくともその一部が軸方向にオーバーラップするように配置するのが好ましく、これによれば両ゴムが径方向に並ぶため、トルク変動吸収ダンパの製品としての軸方向幅が拡大せず、よって同方向にダンパ製品をコンパクト化することが可能とされる。
【0012】
また、ダンパゴムを外周側に配置するとともにカップリングゴムを内周側に配置するための具体的な構造としては例えば、ハブの筒状部の内周側にダンパゴムを配置するとともにダンパゴムの内周側にダンパマスを配置し、ダンパマスをダンパゴムに接続された外周筒部、端面部および内周筒部を一体に備えるものとし、このダンパマスにおける外周筒部の内周側であって内周筒部の外周側にカップリングゴムを配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダンパ部のダンパゴムおよびカップリング部のカップリングゴムをハブに対し直列に連結した直列式のトルク変動吸収ダンパにおいて、ダンパゴムのバネ定数を比較的高く設定し、カップリングゴムのバネ定数を比較的低く設定し、各ゴムのバネ定数を適切に設定することが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係るトルク変動吸収ダンパの断面斜視図
図2】従来例に係るトルク変動吸収ダンパの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)従来の直列タイプの配置からして反対に、ダンパゴムを外側、カップリングゴムを内側になるように形状を変更する。
(2)上記構成により、直列の配置でもダンパゴムを高バネ化、カップリングゴムを低バネ化することができる。
(3)ダンパゴムを外側としたため、軸方向長さを拡大することなく高周波対応の共振ダンパを製作することができる。また、カップリングゴムを厚く短くても柔らかくすることができるため、コンパクト化することができる。また、カップリングゴムが厚くなることで、カップリングゴムの変形を防ぐこともできる。
【実施例】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
図1に示すように本発明の実施例に係るトルク変動吸収ダンパ1では、エンジンのクランクシャフト等の回転軸(図示せず)に取り付けられるハブ2に対し、ダンパゴム3、ダンパマス4、カップリングアングル5、カップリングゴム6およびプーリ7がこの順序で直列に連結されているため、直列式のトルク変動吸収ダンパが構成されている。
【0018】
また、ダンパゴム3がカップリングゴム6より外周側に配置されるとともに、カップリングゴム6がダンパゴム3より内周側に配置されている。
【0019】
また、ダンパゴム3およびカップリングゴム6は、その一部が軸方向にオーバーラップするように配置されている。
【0020】
各部品は、以下のように構成されている。
【0021】
ハブ2は、回転軸に取り付けられるボス部2aを備え、このボス部2aに対し径方向立ち上がりの端面部2bが一体成形され、端面部2bの外周端部から軸方向一方(図では左方)へ向けて筒状部2cが一体成形されている。
【0022】
ダンパゴム3は、円筒状に成形され、ハブ2の筒状部2cの内周側に配置(嵌合)されている。
【0023】
ダンパマス4は、ダンパゴム3の内周側に配置(嵌合)される外周筒部4aを備え、この外周筒部4aの軸方向他方(図では右方)の端部から径方向内方へ向けて端面部4bが一体成形され、端面部4bの内周端部から軸方向一方へ向けて内周筒部4cが一体成形されている。
【0024】
カップリングアングル5は、ダンパマス4の内周筒部4cの外周側に配置(嵌合)される筒状部5aを備え、この筒状部5aの軸方向他方の端部から径方向外方へ向けてフランジ部5bが一体成形されている。
【0025】
カップリングゴム6は、ほぼ円筒状に成形され、その軸方向他方の端部をもってカップリングアングル5のフランジ部5bに架橋接着されている。また、カップリングゴム6はその軸方向一方の端部をもってプーリ7に架橋接着されている。
【0026】
プーリ7は、カップリングゴム6の軸方向一方に配置(架橋接着)されるフランジ部7aを備え、このフランジ部7aの外周端部から軸方向他方へ向けて筒状部7bが一体成形されている。筒状部7bの外周面には、無端ベルトを巻架するためのプーリ溝7cが設けられている。
【0027】
尚、プーリ7のフランジ部7aは、ハブ2の筒状部2cの軸方向一方の側に非接触で配置されている。またプーリ7の筒状部7bは、ハブ2の筒状部2cの外周側に非接触で配置されている。ハブ2の筒状部2cとプーリ7の筒状部7bとの間にはラジアルベアリング8が介装されている。
【0028】
また、ダンパマス4の内周筒部4cの外周側にスラストアングル9が配置されている。スラストアングル9は、ダンパマス4の内周筒部4cの先端部外周面に配置(嵌合)される筒状部9aを備え、この筒状部9aの軸方向一方の端部から径方向外方へ向けてフランジ部9bが一体成形されている。スラストアングル9のフランジ部9bはプーリ7のフランジ部7aの軸方向一方の側に非接触で配置され、両フランジ部9b,7aの間にスラストベアリング10が介装されている。
【0029】
上記構成のトルク変動吸収ダンパ1は、回転軸に取り付けられるハブ2に対しダンパゴム3を介してダンパマス4が接続されているため、これらの部品によって、クランクシャフト等の回転軸の捩り共振による振動を低減するダンパ部(トーショナルダンパ部)が設定されている。また、ダンパマス4およびこれに取り付けられたカップリングアングル5に対しカップリングゴム6を介してプーリ7が接続されているため、これらの部品によって、回転軸のトルク変動による振動伝達を低減するカップリング部が設定されている。
【0030】
また、上記構成のトルク変動吸収ダンパ1では、ダンパゴム3がカップリングゴム6より外周側に配置されているため、ダンパゴム3はそのバネ定数が比較的高く設定されている。また、カップリングゴム6がダンパゴム3より内周側に配置されているため、カップリングゴム6はそのバネ定数が比較的低く設定されている。したがって、ダンパゴム3を軸方向に拡大したりカップリングゴム6の径方向厚みを薄くしたりすることなく、各ゴム3,6のバネ定数を適切に設定することが可能とされている。
【0031】
また、ダンパゴム3およびカップリングゴム6の一部が互いに軸方向にオーバーラップするよう配置されているため、同方向にコンパクトなダンパ製品とされている。
【0032】
また、ダンパマスの一部を構成することになるスラストアングル9にスラストベアリング10が接触しているため、摩擦による減衰作用を期待することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 トルク変動吸収ダンパ
2 ハブ
2a ボス部
2b,4b 端面部
2c,5a,7b,9a 筒状部
3 ダンパゴム
4 ダンパマス
4a 外周筒部
4c 内周筒部
5 カップリングアングル
5b,7a,9b フランジ部
6 カップリングゴム
7 プーリ
7c プーリ溝
8 ラジアルベアリング
9 スラストアングル
10 スラストベアリング
図1
図2