特許第6559486号(P6559486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559486フラックス及び白金るつぼを使用したXRFのためのサンプルの準備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559486
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】フラックス及び白金るつぼを使用したXRFのためのサンプルの準備
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20190805BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20190805BHJP
   G01N 23/2204 20180101ALI20190805BHJP
   G01N 23/2202 20180101ALI20190805BHJP
【FI】
   G01N1/28 S
   G01N23/223
   G01N23/2204
   G01N23/2202
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-135245(P2015-135245)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2016-17965(P2016-17965A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】14176193.2
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503310327
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】マーク インガム
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−325258(JP,A)
【文献】 特開平11−064186(JP,A)
【文献】 実公平05−025709(JP,Y2)
【文献】 中国特許出願公開第102331364(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102426122(CN,A)
【文献】 特開平06−249768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
G01N 23/00 − 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼライナを製造する方法であって、
ホウ酸リチウム粒子を液体と混ぜてペーストを形成すること、
該ホウ酸リチウムペーストを型の内表面に配置すること、及び
前記ホウ酸リチウムペーストを焼き、前記ホウ酸リチウムペーストを乾燥させて、その形状及び厚さを維持する独立的なるつぼライナを形成することを含む、
方法。
【請求項2】
前記ホウ酸リチウムは、実質的に純粋なテトラホウ酸リチウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホウ酸リチウム粒子の少なくとも50%は、100μmより少ない大きさを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記型は、少なくとも2つの部分を有する、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記型は、シリコーンで製造される、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ホウ酸リチウムペーストを焼くステップの前に、前記型の内表面で前記ホウ酸リチウムペーストを乾燥させるステップを更に含む、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホウ酸リチウムを乾燥させるステップは、少なくとも5時間に亘って70℃〜200℃の温度で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ホウ酸リチウムペースを焼くステップは、
炉内の前記ホウ酸リチウムを第1の時間の期間に亘って第1の温度で点火すること、及び
前記炉内の前記温度を第2の時間の期間に亘って第2の温度まで上昇させることを含む、
請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の温度は、400℃〜600℃であり、前記第1の時間の期間は、1〜10分である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の温度は、600℃〜700℃であり、前記第2の時間の期間は、5〜20分である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載の方法により製造されるるつぼライナであって、当該るつぼライナはカップ形状の形態を有し且つ独立型のるつぼライナである、るつぼライナ。
【請求項12】
前記るつぼライナは、前記カップ形状の形態を作り上げるよう接合させられる粒状構造の粒子を有する、請求項11に記載のるつぼライナ。
【請求項13】
蛍光X線サンプル準備法において請求項11又は12に記載のるつぼライナを使用する方法であって、
前記るつぼライナを白金るつぼ内に配置すること、
サンプルを前記るつぼライナ内に配置すること、
前記るつぼ内の前記サンプルの温度を反応温度まで上昇させて、前記るつぼライナと実質的に反応せずに前記サンプルを酸化させること、及び
前記るつぼ内の前記サンプルの温度を、前記るつぼライナがフラックスとして作用し且つ前記酸化サンプルを溶かす溶融温度まで上昇させることを含む、
方法。
【請求項14】
前記反応した酸化サンプルに対して蛍光X線測定を実施することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホウ酸リチウムるつぼライナに関し、ホウ酸リチウムるつぼライナを製造する方法及びホウ酸リチウムるつぼライナを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線測定、即ち、XRF測定を行うために、サンプル(試料)を準備する必要がある。サンプルを粉末状にしてフラックス(flux)を備える白金るつぼ又は金るつぼ内に配置し得る。フラックスが液体になる温度までるつぼを加熱し、サンプルはフラックス中に溶ける。次に、溶解物(melt)を冷却し、るつぼの内側にガラス質の「ビード」又はサンプルの成分が溶液のような堆積物の内側に分散させられた鋳造ディッシュを残す。次に、堆積物又はビード上でXRF測定を行い得る。
【0003】
しかしながら、極めてよく反応する一部の材料を使用するときに問題が起こり得る。具体的には、サンプルが極めてよく反応する場合、サンプルは白金るつぼに損傷を引き起こす酸素を伴う極めて発熱的な反応プロセスを経ることがあり得る。
【0004】
この問題に取り組むために、ある処置がRutherfordによって提案された。フラックス材料をサンプルのない白金るつぼ内に配置し、フラックスが溶解する温度より上まで炉内で加熱する。次に、るつぼを炉から取り除き、ガラス質のフラックス表面がるつぼ内に生じるのに十分な時間に亘って周囲空気によって冷却されるよう回転させる。次に、サンプルをガラス質のフラックス表面の内側に加え、炉内で加熱する。
【0005】
しかしながら、この処置は困難であり且つ危険である。何故ならば、1000℃を超える極めて高温のるつぼは、典型的には、炉の外側で手で回転させられるからである。従って、この方法は、最も熟練した科学者による以外、希にしか使用されない。
【0006】
従って、反応性材料の解析のためのXRFサンプルを準備するより安全且つより容易な方法の必要がある。
【0007】
特許文献1は、アルミニウムマグネシウムカルシウム鉄合金サンプルを準備するための溶解サンプリング方法を教示している。白金るつぼのテトラホウ酸リチウム壁が先ず準備される。特許文献2は、ホウ酸リチウムを含むX線フラックスの組成を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第CN102331364A号明細書
【特許文献2】豪州特許出願公開第AU2010249195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、請求項1に従ったるつぼライナを製造する方法が提供される。
【0010】
フラックスの独立型のるつぼライナをこのように製造することによって、改良されたXRFサンプル準備が可能である。通常、フラックスはサンプルと共に白金るつぼ内に配置される。しかしながら、本発明者は、保護ライナ内にフラックスを形成することが可能であり、フラックスの溶解温度(melting temperature)まで温度を上昇させてサンプルがフラックス内に取り込まれるのを可能にする前に白金るつぼを損傷から守るために保護ライナを用い得ることに気付いた。
【0011】
具体的には、改良されたXRFサンプル準備方法は、
ホウ酸リチウムライナを白金るつぼ内に配置すること、
ホウ酸リチウムライナ内にサンプルを配置すること、
るつぼ内のサンプルの温度を反応温度まで上昇させ、ホウ酸リチウムライナと実質的に反応せずにサンプルを酸化させること、及び
るつぼ内のサンプルの温度を、ホウ酸リチウムライナがフラックスとして作用し且つ酸化サンプルを溶かす溶融温度(fusing temperature)まで上昇させることを含み得る。
【0012】
このようにして、白金るつぼライナは、白金るつぼを反応温度で起こる如何なる反応からも保護する。反応が完了した後、温度を再び溶融温度まで上昇させて、フラックス中に溶かされた(dissolved)サンプルを得る。
【0013】
サンプルを準備した後、サンプル上でXRF測定を行い得る。
【0014】
多数の異なるフラックス材料が知られているが、実験が示唆することは実質的に純粋な事前融解(pre-fused)ホウ酸リチウム(Li)から特定の効果的なるつぼライナを作製し得ることである。
【0015】
るつぼライナが独立型(free-standing)であること、即ち、るつぼライナを型から除去し得るよう焼成ステップの後にその形状及び厚さを維持することを可能にするために、粒子径は高過ぎてはならない。従って、ホウ酸リチウム粒子の少なくとも50%が100μm未満の大きさを有する。好ましくは、ホウ酸リチウム粒子の少なくとも80%が100μm未満の大きさを有する。ホウ酸リチウム粒子が大過ぎるならば、それらを粉砕して正しい粒子径をもたらし得る。
【0016】
型は、焼成した後に分離して焼成した後のるつぼライナの取外しを可能にし得るよう、二部型であり得る。よって、好適な実施態様は少なくとも2つの部分を備える型を用いる。代替的な実施態様はスラリ(slurry)又はスリップ(slip)の注入を用いる。
【0017】
型のために如何なる適切な材料をも用い得るが、特定の実施態様はシリコーン(silicone)を用いる。
【0018】
好適な実施態様において、本方法は、ホウ酸リチウムペーストを焼くステップの前に、型の内表面にホウ酸リチウムペーストを乾燥させる別個のステップを更に含む。
【0019】
ホウ酸リチウムを乾燥させるステップを、少なくとも5時間に亘って、例えば、最大20時間まで、70℃〜200℃の温度で実施する。このステップを夜通し行い得る。次に、更なる処置の前に、フラックスライナを型から取り除き得る。本発明者は、この初期的な乾燥ステップがより良好な構造を有するフラックスライナをもたらすことを見出した。理論によって縛られることを欲しないが、本発明者は、後続の処理ステップにおける水の存在が問題を引き起こし得ると考える。何故ならば、水は蒸発して気泡を形成するからである。ホウ酸リチウムを初めに乾燥させることによって、これらの問題を低減させ得る。
【0020】
二段階焼成プロセスを用い得る。その場合、ホウ酸リチウムペーストを焼くステップは、
炉内のホウ酸リチウムを第1の時間の期間に亘って第1の温度で点火すること、及び
炉内の温度を第2の時間の期間に亘って第2の温度まで上昇させることを含む。
【0021】
特定の方法において、第1の温度は、400℃〜600℃であり得るし、第1の時間の期間は、1〜10分であり得る。
【0022】
第2の温度は、600℃〜700℃であり得るし、第2の時間の期間は、5〜20分であり得る。
【0023】
他の特徴において、本発明は、カップ形状の形態を有し且つホウ酸リチウムで製造される、るつぼライナに関する。
【0024】
添付の図面を参照して、本発明の実施例を今や記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】るつぼライナが内側に形成された型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を使用する方法の具体的な実施例を今や記載する。
【0027】
事前溶融(prefused)ホウ酸リチウム(Li)フラックス(flux)の商業的サンプル(試料)を得た。次に、これを粉砕器内で粉砕し、ふるい法を使用して測定した粒子の91%が100μmより下である粒径分布を得た。
【0028】
スパチュラでひとすくいしたポリビニルアルコール(PVA)を100mlの逆浸透水(RO水)と混ぜた。
【0029】
7gの粉砕されたホウ酸リチウムフラックスを瑪瑙乳棒(agate pestle)及び乳鉢(mortar)内で2mlのPVA/水と混ぜ、ペーストを形成した。
【0030】
シリコーンの二部型は、2つの型部分2,4を有した。ペースト6を型の内面にほぼ均一な厚さに塗工した。次に、ホウ酸リチウムを夜通し型内で105℃で乾燥させた。フラックスライナを型から取り外し、焼くためにマッフル炉に移し、5分に亘って500℃で点火し、次に、10分に亘って温度を700℃まで上昇させた。
【0031】
この段階で、温度はフラックスの融点に達せず、よって、フラックスの粒子は元のままであることに留意のこと。しかしながら、使用される温度は、存在するあらゆる炭素を、例えば、PVAから焼き取る(burn off)のに十分である。
【0032】
使用される焼成温度に耐え得る型が使用される場合には、第1/焼成ステップの間、フラックスライナを型内に残し得る。
【0033】
フラックスライナが冷却させて取り除き、テトラホウ酸リチウムフラックスのるつぼライナを残す。ライナは自立型(self supporting)であり且つ独立型(free standing)である。使用されるプロセスの結果、ライナは側壁よりも厚い基部(ベース)を有し、その結果、次のステップのために必要とされるるつぼの基部により多量のフラックスをもたらした。
【0034】
フラックスライナを使用するために、ライナを白金るつぼの内側に配置した。粉砕したサンプルをライナの内側に配置した。
【0035】
次に、白金るつぼ及び内容物を炉内に配置して、サンプルを酸化させるのに十分な程に高いがフラックスライナは固体のままである温度まで加熱する。サンプルは激しく酸化した。しかしながら、白金るつぼはその反応によって損傷させられなかった。何故ならば、それはフラックスライナによって保護されたからである。
【0036】
サンプル反応が完了した後、フラックスが液化する温度よりも僅かに上まで温度を上昇させた。ホウ酸リチウムの融解温度は920℃であるので、少なくとも920℃から約1050℃までの或いは最大でも1100℃までの温度範囲が適切である。サンプルはフラックス中に溶けた。次に、温度が下げられ、XRF測定に適したガラス質の残留物を残した。
【0037】
ガラス質のサンプルをXRF装置内に配置して元素組成を得た。
【0038】
そのアプローチは、地球環境材料及び関連材料、セラミック、鉱物、工業鉱物、鉱石、建築材料、有機物、硫化物、金属、合金鉄、カーバイド、窒化物、及びその他を含む、広範なサンプルに適している。
【0039】
上記の方法は純粋に一例であり、代替が知られていることが理解されよう。
【0040】
必要に応じて使用される具体的なフラックス及び粉末粒子径を異ならせ得る。具体的には、メタホウ酸リチウム(LiBO)を使用し得るが、実験はこれが機械的な強度がより少ないフラックスライナをもたらすことを見出した。
【0041】
混合物も使用し得る。−使用するフラックスは、一例として臭化リチウムを含む、他のフラックス材料の追加物を含み得る。追加材料を追加してフラックスライナの一部を形成し得る。
【0042】
代替的に、追加的なフラックス材料をサンプルと共にるつぼ内のライナ内に加え得る。よって、テトラホウ酸リチウムのるつぼライナを蓄えることによって、サンプルと共に追加的なフラックスを単に追加することにより、可変の百分率のメタホウ酸リチウムのような追加的なフラックスをるつぼ内に提供し得る。例えば、ホウ酸リチウム80%及びメタホウ酸リチウム20%のフラックスを達成するために、結果として得られる溶解物(melt)においてフラックスの20%がメタホウ酸リチウムであるように、テトラホウ酸リチウムフラックスライナの質量の25%のメタホウ酸リチウムの質量をるつぼ内のフラックスライナの内側に配置し得る。
【0043】
焼成ステップにおいて使用する様々な温度は、実験によって決定されて適宜異なり得る。
【0044】
必要であるならば、異なる型材料を使用し得る。
【0045】
白金以外の材料の型がいずれかの用途のために用いられるならば、白金以外の材料の型のためにも、るつぼライナを使用し得る。
【0046】
ここに記載するプロセスは、2ステップ焼成プロセスを使用する。しかしながら、450℃からフラックスの溶解温度より十分に下の温度、好ましくは、750℃より下の温度の範囲内にあり得る単一の温度で、単一の焼成ステップのみを使用することが可能であり得る。
【0047】
混合物がフラックスとして使用される場合、フラックスの溶解温度は、純粋なテトラホウ酸リチウムの溶解温度と異なるかもしれず、従って、フラックスを溶かし、サンプルをフラックス中に溶かしてガラス質のサンプルを得るために、異なる温度を用い得る。
【0048】
製造されるサンプルはXRFに特に適するが、必要であるならば、それらを他の用途においても用い得る。
【符号の説明】
【0049】
2 型部分
4 型部分
6 ペースト
図1