(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を説明するための図である。
図1(a)は、当該インバータ装置を複数備えた分散電源が電力系統に連系している状態を示しており、
図1(b)は、当該インバータ装置の内部構成を示している。
【0026】
図1(a)に示すように、図示しない太陽電池が接続されたインバータ装置11〜1kが並列接続された分散電源(太陽光発電所)が、連系点aで、連系用変圧器を介して、三相(U相,V相,W相)の配電系統に連系している。配電系統は、負荷も接続されており、SVR(Step Voltage Regulator:自動電圧調整器)を介して上位系統に連系している。分散電源は、発電した電力を電力系統に出力している。計測装置2は、連系点aに配置されており、連系点aで有効電力、無効電力、電圧および電流を計測し、計測値である有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vおよび電流値Iを、各インバータ装置11〜1kに出力する。各インバータ装置11〜1kは、計測装置2より入力される各計測値に基づいて、自身が出力した有効電力による連系点電圧の上昇を、無効電力を出力することで補償する。
【0027】
インバータ装置11は、いわゆるパワーコンディショナであり、
図1(b)に示すように、直流電源3より入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ装置11は、有効電力を出力するだけでなく、出力した有効電力による連系点電圧の上昇を補償するための無効電力も出力する。インバータ装置11は、インバータ回路4、制御回路5、電流センサ61、および、電圧センサ62を備えている。なお、インバータ装置12〜1kも、インバータ装置11と同様の構成である。
【0028】
直流電源3は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源3は、生成された直流電力を、インバータ装置11に出力する。なお、本実施形態においては、分散電源が太陽光発電所なので、直流電源3が太陽電池により直流電力を生成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、直流電源3は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池などであってもよい。また、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0029】
インバータ回路4は、直流電源3から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路4は、図示しないPWM制御インバータとフィルタとを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路5から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタは、スイッチングによる高周波成分を除去する。
【0030】
電流センサ61は、インバータ回路4の三相の出力電流の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電流センサ61は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電流信号i
u,i
v,i
wとして制御回路5に出力する。電圧センサ62は、インバータ回路4の三相の出力電圧の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電圧センサ62は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電圧信号v
u,v
v,v
wとして制御回路5に出力する。
【0031】
制御回路5は、インバータ回路4を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路5は、電流センサ61より入力される電流信号i
u,i
v,i
w、電圧センサ62より入力される電圧信号v
u,v
v,v
w、および、計測装置2より入力される有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路4に出力する。
【0032】
図2は、制御回路5を説明するための図であり、
図2(a)は、制御回路5の内部構成を説明するための機能ブロック図である。
【0033】
制御回路5は、直流電源3からインバータ回路4に入力される直流電圧を制御する有効電力制御系と、インバータ回路4が出力する無効電力を制御する無効電力制御系と、インバータ回路4が出力する電流を制御する電流制御系とを備えている。なお、
図2(a)においては、有効電力制御系の記載を省略している。制御回路5は、電力算出部51、推定部52、フィードフォワード制御部53、無効電力制御部54、電流制御部55、および、PWM信号生成部56を備えている。
【0034】
電力算出部51は、インバータ回路4が出力する有効電力および無効電力を算出するものである。電力算出部51は、電流センサ61より入力される電流信号i
u,i
v,i
wと電圧センサ62より入力される電圧信号v
u,v
v,v
wとに基づいて、有効電力値P
1および無効電力値Q
1を算出する。なお、計測装置2によって計測された有効電力値Pおよび無効電力値Qと区別するために、インバータ装置11のインバータ回路4が出力する有効電力および無効電力を計測したものは、有効電力値P
1および無効電力値Q
1としている。電力算出部51は、有効電力値P
1を、フィードフォワード制御部53に出力し、無効電力値Q
1を、無効電力制御部54に出力する。
【0035】
推定部52は、系統インピーダンスを推定するものである。推定部52は、計測装置2より入力される有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vおよび電流値Iに基づいて、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定して、フィードフォワード制御部53に出力する。
【0036】
図2(b)は、推定部52を説明するための制御ブロック図である。
【0037】
当該制御ブロック図に示すように、推定部52は、有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vに基づいて、連系点aの計算上の電圧変化分ΔV
bを算出し、電圧変化分ΔV
bと、実際の電圧変化分ΔV
a(=V−Vref)とから、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3の最適解を非線形最適化の手法によって探索する。
【0038】
電圧変化分ΔV
bは、下記(1)式によって算出される。有効電流Id(=P/V)および無効電流Iq(=Q/V)は、有効電力値P、無効電力値Qおよび電圧値Vより算出される。パラメータρ
1は系統インピーダンスの抵抗成分であり、パラメータρ
2は系統インピーダンスのリアクタンス成分である。また、パラメータρ
3は、SVRのタップ比などに応じて定常的に発生する電圧変化分である。
ΔV
b=ρ
1・Id+ρ
2・Iq+ρ
3 ・・・ (1)
【0039】
最適化のための評価関数として下記(2)式を用いて、n回の各計測値に基づいて算出される評価値J
nが最小になるパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を、非線形最適化の手法を用いて探索する。なお、評価関数は、これに限定されず、適宜設計すればよい。
【数4】
【0040】
非線形最適化の手法としては、例えば、ニュートン法、準ニュートン法、ガウス・ニュートン法、レーベンバーグ・マーカート法、共役勾配法、最急降下法、最小二乗法、忘却係数込の再帰的最小二乗法、カルマンフィルタなどのいずれかを、計算量と精度との兼ね合いに応じて用いるようにすればよい。ただし、ニュートン法などの場合、計測装置2より入力される各計測値を、メモリにn回分記憶しておき、それぞれの計測値からΔV
aおよびΔV
bを算出して、上記(2)式によりJ
nを算出する必要がある。したがって、計算量が多くなるので、バッチ処理を行うか、処理能力が高いCPUを用いる必要があり、また、メモリの記憶容量も大きくする必要がある。本実施形態では、推定部52を、各インバータ装置11〜1kの制御回路5に組み込んで、リアルタイムでパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定する必要から、計算量を少なくできる忘却係数込み再帰的最小二乗法を用いている。
【0041】
忘却係数込み再帰的最小二乗法の場合、上記(1)式および(2)式より、評価関数J
nを下記(3)式とすると、下記(4)式に示す漸化式を用いて計算を行うことができる。
【数5】
【数6】
【0042】
なお、λは忘却係数であり、0以上1以下の値が設定される。また、初期値として、下記(5)式および(6)式が設定されている。mは任意の整数であり、大きいほど推定が速くなる。
【数7】
【0043】
本実施形態においては、忘却係数込み再帰的最小二乗法を用いて、前回のパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3の推定値と今回の計測値とから推定を行うので、計算量を少なくしてリアルタイムでの推定を行うことができる。また、メモリの記憶容量も節約することができる。なお、忘却係数込み再帰的最小二乗法以外の手法を用いて推定を行うようにしてもよい。
【0044】
次に、
図3〜
図8を参照して、推定部52において、忘却係数込み再帰的最小二乗法を用いた場合の推定処理のシミュレーションについて説明する。
【0045】
電力系統のモデルに系統インピーダンスを設定し、各計測値に基づいて、系統インピーダンスを正しく推定することができるかを確認した。なお、忘却係数をλ=0.5とし、初期値として、m=6とした上記(5)式および上記(6)式を設定した。また、推定処理のサンプリング周期を1[s]とした。
【0046】
まず、電力系統のモデルに系統インピーダンスのパラメータ値として、ρ
1=0.396、ρ
2=0.858、ρ
3=66を設定し、各計測値を
図3に示すように入力した。
図3(a)は有効電流Id(=P/V)の時間応答であり、
図3(b)は無効電流Iq(=Q/V)の時間応答であり、
図3(c)は実際の電圧変化分ΔV
a(=V−Vref)の時間応答である。
図4(a)、(b)、(c)は、このシミュレーションで推定されたパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3の時間応答を示している。それぞれ設定されたパラメータ値が正しく推定されている。
【0047】
次に、計測値にノイズが重畳されている場合について、シミュレーションを行った。電力系統のモデルに系統インピーダンスのパラメータ値として、ρ
1=0.396、ρ
2=0.858、ρ
3=66を設定し、各計測値を
図5に示すように入力した。
図5(a)は有効電流Id(=P/V)の時間応答であり、
図5(b)は無効電流Iq(=Q/V)の時間応答であり、
図5(c)は実際の電圧変化分ΔV
a(=V−Vref)の時間応答である。
図5に示すように、入力される有効電流Id、無効電流Iq、電圧変化分ΔV
aには、ノイズが重畳されている。
図6(a)、(b)、(c)は、このシミュレーションで推定されたパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3の時間応答を示している。それぞれ設定されたパラメータ値が正しく推定されている。計測値にノイズが重畳されている場合でも、正しく推定できることが確認できた。
【0048】
次に、系統インピーダンスのパラメータが変化した場合について、シミュレーションを行った。電力系統のモデルに系統インピーダンスのパラメータ値として、初めにρ
1=0.396、ρ
2=0.858、ρ
3=66を設定し、10秒後にρ
1=0.198、ρ
2=1.254、ρ
3=0に変更した。また、各計測値を
図7に示すように入力した。
図7(a)は有効電流Id(=P/V)の時間応答であり、
図7(b)は無効電流Iq(=Q/V)の時間応答であり、
図7(c)は実際の電圧変化分ΔV
a(=V−Vref)の時間応答である。
図8(a)、(b)、(c)は、このシミュレーションで推定されたパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3の時間応答を示している。パラメータの変更後、約25秒で、それぞれ設定されたパラメータ値が正しく推定されている。系統インピーダンスのパラメータが変化した場合でも、正しく推定できることが確認できた。
【0049】
図2に戻って、フィードフォワード制御部53は、インバータ回路4が出力する無効電力の目標値を設定するものである。フィードフォワード制御部53は、電力算出部51より入力される有効電力値P
1と、推定部52より入力される系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3とに基づいて、無効電力目標値Qrefを設定し、無効電力制御部54に出力する。
【0050】
図2(c)は、フィードフォワード制御部53を説明するための制御ブロック図である。フィードフォワード制御部53は、電力算出部51より入力される有効電力値P
1に、係数Aを乗算して係数Bを加算した値を、無効電力目標値Qrefとして出力する。係数Aおよび係数Bは、推定部52より入力される系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3から算出される。本実施形態においては、インバータ装置11が出力した有効電力による連系点電圧の変化分だけを補償するので、A=−ρ
1/ρ
2、B=0としている。インバータ装置11が出力した有効電力による連系点電圧の変化分と、定常的に発生している電圧変化分も合わせて補償する場合には、A=−ρ
1/ρ
2、B=−ρ
3・V/ρ
2とすればよい。
【0051】
無効電力制御部54は、インバータ回路4が出力する無効電力の制御を行うためのものである。無効電力制御部54は、電力算出部51より無効電力値Q
1を入力され、フィードフォワード制御部53より無効電力目標値Qrefを入力されて、偏差(Qref−Q
1)をゼロにするための無効電力補償信号i
qrefを電流制御部55に出力する。無効電力制御部54は、例えば、PI制御を行っている。
【0052】
電流制御部55は、インバータ回路4の出力電流の制御を行うためのものである。電流制御部55は、電流センサ61より入力される電流信号i
u,i
v,i
wに基づいて補償信号を生成し、PWM信号生成部56に出力する。
【0053】
電流制御部55は、電流信号i
u,i
v,i
wを、三相/二相変換処理(αβ変換処理)および回転座標変換処理(dq変換処理)により、d軸電流信号i
dおよびq軸電流信号i
qに変換する。そして、q軸電流信号i
qを無効電力制御部54より入力される無効電力補償信号i
qrefに制御するための補償信号を生成し、d軸電流信号i
dを図示しない有効電力制御部より入力される有効電力補償信号i
drefに制御するための補償信号を生成する。電流制御部55は、これら2つの補償信号を、静止座標変換処理(逆dq変換処理)および二相/三相変換処理(逆αβ変換処理)により、三相の補償信号に変換して、PWM信号生成部56に出力する。なお、電流制御部55の構成は、これに限られない。
【0054】
PWM信号生成部56は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部56は、電流制御部55より入力される三相の補償信号に基づいて、インバータ回路4の各相の出力電圧の波形を指令するための指令信号を生成し、指令信号とキャリア信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路4に出力される。なお、PWM信号生成部56は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。
【0055】
次に、本実施形態に係るインバータ装置11の作用および効果について説明する。
【0056】
本実施形態によると、推定部52は、連系点aで測定された有効電力値、無効電力値および電圧値に基づいて、系統インピーダンスのパラメータを、非線形最適化により推定する。したがって、電力系統に不要な高調波電流を注入することなく、系統インピーダンスを推定することができる。また、非線形最適化の手法として、忘却係数込み再帰的最小二乗法を用いることで、リアルタイムにパラメータの推定を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態によると、フィードフォワード制御部53は、推定部52によって推定された系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3と、出力する有効電力を検出した有効電力値P
1とに基づいて、無効電力目標値Qrefを設定する。これにより、インバータ装置11は、自身が出力した有効電力による連系点電圧の上昇を、無効電力を出力することで補償することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、電圧変化分ΔV
bを上記(1)式によって算出する場合について説明したがこれに限られない。本実施形態の変形例について、以下に説明する。
【0059】
図9は、第1実施形態に係る推定部52の変形例を説明するための制御ブロック図である。
【0060】
当該制御ブロック図に示すように、推定部52は、有効電力値Pおよび無効電力値Qに基づいて、連系点aの計算上の電圧変化分ΔV
bを算出する。電圧変化分ΔV
bは、下記(7)式によって算出される。この場合、パラメータρ
1は有効電力成分に対する電圧変化係数であり、パラメータρ
2は無効電力成分に対する電圧変化係数である。また、パラメータρ
3は、SVRのタップ比などに応じて定常的に発生する電圧変化分である。
ΔV
b=ρ
1・P+ρ
2・Q+ρ
3 ・・・ (7)
【0061】
最適化のための評価関数として上記(2)式を用いて、忘却係数込み再帰的最小二乗法を用いて推定を行う場合、上記(7)式および上記(2)式より、評価関数J
nを下記(8)式とすると、計算に用いる漸化式は、上記(4)式になる。
【数8】
【0062】
本変形例は、パラメータρ
1が有効電力成分に対する電圧変化係数として推定され、パラメータρ
2が無効電力成分に対する電圧変化係数として推定される点が、上記第1実施形態の場合と異なる。したがって、フィードフォワード制御部53で使用される係数A=−ρ
1/ρ
2は変わらないが、定常的に発生している電圧変化分も合わせて補償する場合の係数Bは、B=−ρ
3/ρ
2となる。
【0063】
本実施形態においては、各インバータ装置11〜1kの制御回路5が、それぞれ、推定部52を備えている場合について説明したが、これに限られない。本実施形態の変形例について、以下に説明する。
【0064】
図10は、第1実施形態に係る計測装置2の変形例を説明するための図である。
図10(a)は
図1(a)に対応した図であり、
図10(b)は変形例に係る計測装置2の内部構成を説明するための図である。
【0065】
図10(b)に示すように、当該変形例においては、計測装置2が推定部52を備えて、パラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定し、推定したパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を各インバータ装置11〜1kに出力する。当該変形例においては、インバータ装置11〜1kごとに、推定部52を設ける必要がない。
【0066】
上記第1実施形態においては、連系点aに配置された計測装置2で計測された計測値を、各インバータ装置11〜1kに入力する場合(
図1(a)参照)について説明した。しかし、大規模な太陽光発電所の場合、各インバータ装置11〜1kが広大な敷地に点在するように設置されており、計測装置2がすべてのインバータ装置11〜1kに計測値を送信することが困難な場合がある。第2実施形態として、各インバータ装置11〜1kが近隣のインバータ装置とだけ通信を行うことで、連系点aでの有効電力値Pおよび無効電力値Qを入手する場合について、以下に説明する。
【0067】
図11および
図12は、第2実施形態に係るインバータ装置を説明するための図である。
図11は、当該インバータ装置を複数備えた分散電源が電力系統に連系している状態を示しており、
図1(a)に対応した図である。
図11においては、分散電源が5つのインバータ装置11〜15を備えている場合を例として示している。なお、実際には、より多くのインバータ装置が備えられているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。
図12は、第2実施形態に係るインバータ装置の内部構成を示しており、
図12(a)が
図1(b)に対応した図である。
図12において、第1実施形態に係るインバータ装置11(
図1(b)参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図11および
図12に示すように、第2実施形態に係るインバータ装置11(12〜15)は、内部に計測装置21(22〜25)を備えている点で、連系点aに計測装置2を備えている第1実施形態に係るインバータ装置11と異なる。
【0068】
図11に示すように、各インバータ装置11〜15は、それぞれ、計測装置21〜25を備えている。計測装置21〜25は、それぞれ、インバータ装置11〜15が出力する有効電力および無効電力を計測し、他の計測装置(21〜25)と通信を行うことで、インバータ装置11〜15全体として出力する有効電力および無効電力(すなわち、連系点aから出力される有効電力および無効電力)を計測するものである。各インバータ装置11〜15は、それぞれ、内蔵された計測装置21〜25によって計測された有効電力値Pおよび無効電力値Qを用いる。
【0069】
図11に示す実線矢印は、計測装置21〜25の通信状態を示している。計測装置21は計測装置22とだけ相互通信を行っており、計測装置22は計測装置21および計測装置23とだけ相互通信を行っている。また、計測装置23は計測装置22および計測装置24とだけ相互通信を行っており、計測装置24は計測装置23および計測装置25とだけ相互通信を行っており、計測装置25は計測装置24とだけ相互通信を行っている。このように、各計測装置21〜25は、自身以外の計測装置21〜25のうち、少なくとも1つの計測装置と通信を行っており、任意の2つの計測装置(21〜25)に対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、自身以外のすべての計測装置(21〜25)と通信を行う必要はない。
【0070】
図12(a)に示すように、インバータ装置11は、計測装置21を備えている。計測装置21は、電流センサ61より電流信号i
u,i
v,i
wを入力され、電圧センサ62より電圧信号v
u,v
v,v
wを入力され、分散電源全体が出力する有効電力および無効電力、すなわち、連系点aで計測される有効電力値Pおよび無効電力値Qを算出して、制御回路5に出力する。計測装置21は、電力算出部71、有効電力合計値算出部72、無効電力合計値算出部73、および、通信部74を備えている。なお、インバータ装置12〜15も、インバータ装置11と同様の構成であり、計測装置21〜25も、計測装置21と同様の構成である。
【0071】
電力算出部71は、制御回路5の電力算出部51と同様のものであり、インバータ回路4が出力する有効電力および無効電力を算出するものである。電力算出部71は、電流センサ61より入力される電流信号i
u,i
v,i
wと電圧センサ62より入力される電圧信号v
u,v
v,v
wとに基づいて、有効電力値P
1および無効電力値Q
1を算出し、有効電力値P
1を有効電力合計値算出部72に出力し、無効電力値Q
1を無効電力合計値算出部73に出力する。電力算出部71は、算出した有効電力値P
1および無効電力値Q
1を、所定のタイミング(例えば、1秒間隔)で、タイミング間の平均値を算出して、有効電力合計値算出部72および無効電力合計値算出部73に出力する。なお、電力算出部71を設けずに、制御回路5の電力算出部51が算出した有効電力値P
1および無効電力値Q
1を、有効電力合計値算出部72および無効電力合計値算出部73に出力するようにしてもよい。
【0072】
有効電力合計値算出部72は、有効電力値Pを算出するものである。有効電力合計値算出部72は、電力算出部71より入力される有効電力値P
1に基づいて、通信部74を介して他の計測装置(
図11の例では計測装置22)と通信を行うことで、有効電力値Pを算出する。有効電力合計値算出部72は、算出した有効電力値Pを、制御回路5に出力する。なお、有効電力合計値算出部72の詳細な説明は後述する。
【0073】
無効電力合計値算出部73は、無効電力値Qを算出するものである。無効電力合計値算出部73は、電力算出部71より入力される無効電力値Q
1に基づいて、通信部74を介して他の計測装置(
図11の例では計測装置22)と通信を行うことで、無効電力値Qを算出する。無効電力合計値算出部73は、算出した無効電力値Qを、制御回路5に出力する。なお、無効電力合計値算出部73の構成は、有効電力合計値算出部72の構成と同様である。
【0074】
通信部74は、他の計測装置との間で通信を行うものである。通信部74は、後述する平均値生成部82が生成した内部平均値X
iを入力され、他の計測装置の通信部74に送信する。また、通信部74は、他の計測装置の通信部74から受信した内部平均値X
jを、平均値生成部82に出力する。
図11の例の場合、計測装置21の通信部74は、平均値生成部82が生成した内部平均値X
1を計測装置22の通信部74に送信し、計測装置22の通信部74から内部平均値X
2を受信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0075】
次に、有効電力合計値算出部72の詳細について説明する。
【0076】
図12(b)は、有効電力合計値算出部72の内部構成を説明するための機能ブロック図である。有効電力合計値算出部72は、変化量算出部81、平均値生成部82、および、合計部87を備えている。なお。
図12(b)においては、計測装置21〜25を一般化した計測装置2i(
図11の例では、i=1〜5)の有効電力合計値算出部72として説明する。
【0077】
変化量算出部81は、電力算出部71より入力される有効電力値P
iの変化量ΔP
iを算出するものである。変化量算出部81は、電力算出部71より入力される有効電力値P
iが更新されていない間は変化量ΔP
iを「0」とし、有効電力値P
iが更新された時は、更新後の有効電力値P
iと更新前の有効電力値P
iとの差を変化量ΔP
iとして算出する。変化量算出部81は、変化量ΔP
iを平均値生成部82に出力する。
【0078】
平均値生成部82は、各計測装置21〜25がそれぞれ算出した有効電力値P
1〜P
5の内部平均値X
iを生成するものである。内部平均値X
iは、各計測装置2iの内部で仮に算出される、有効電力値P
1〜P
5の相加平均値である。後述するように、各計測装置21〜25の内部平均値X
iは、平均値生成部82での演算処理が繰り返されることで、有効電力値P
1〜P
5の相加平均値に収束する。平均値生成部82は、生成した内部平均値X
iを通信部74および合計部87に出力する。
【0079】
平均値生成部82は、生成した内部平均値X
iと、通信部74より入力される、他の計測装置の内部平均値X
jとを用いて、内部平均値X
iを生成する。内部平均値X
iと内部平均値X
jとが異なっていても、平均値生成部82での演算処理が繰り返されることで、内部平均値X
iと内部平均値X
jとが共通の値に収束する。平均値生成部82は、演算部83、乗算器84、加算器85および積分器86を備えている。
【0080】
演算部83は、下記(9)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部83は、通信部74より入力される各内部平均値X
jから、平均値生成部82が生成した内部平均値X
iをそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果u
iを乗算器84に出力する。
【数9】
【0081】
例えば、計測装置22の場合(
図11参照)、演算部83は、下記(10)式の演算を行い、演算結果u
2を出力する。
【数10】
【0082】
乗算器84は、演算部83から入力される演算結果u
iに所定の係数εを乗算して加算器85に出力する。係数εは、0<ε<1/d
maxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。d
maxは、計測装置2iの通信部74が通信を行う他の計測装置の数であるd
iのうち、電力系統が備えているインバータ装置に内蔵されているすべての計測装置2iの中で最大のものである。つまり、計測装置2iのなかで、一番多くの他の計測装置2iと通信を行っているものの通信部74に入力される内部平均値X
jの数である。なお、係数εは、内部平均値X
iの変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果u
iに乗算されるものである。したがって、平均値生成部82での処理が連続時間処理の場合は、乗算器84を設ける必要はない。
【0083】
加算器85は、乗算器84からの入力に変化量算出部81より入力される変化量ΔP
iを加算して、積分器86に出力する。有効電力値P
iが更新されていない間は変化量ΔP
iが「0」なので、乗算器84からの入力がそのまま積分器86に出力される。一方、有効電力値P
iが更新された時は、更新前後の有効電力値P
iの変化量ΔP
iが乗算器84からの入力に加算されて、積分器86に出力される。積分器86は、加算器85から入力される値を積分(すなわち、前回生成した内部平均値X
iに加算器85から入力される値を加算する)することで内部平均値X
iを生成して出力する。内部平均値X
iは、通信部74、演算部83および合計部87に出力される。
【0084】
本実施形態において、平均値生成部82は、生成した内部平均値X
iと、通信部74より入力される、他の計測装置の内部平均値X
jとを用いて、内部平均値X
iを生成する。内部平均値X
iが各内部平均値X
jの相加平均値より大きい場合、演算部83が出力する演算結果u
iは負の値になる。そうすると、積分器86から出力される内部平均値X
iは小さくなる。一方、内部平均値X
iが各内部平均値X
jの相加平均値より小さい場合、演算部83が出力する演算結果u
iは正の値になる。そうすると、積分器86から出力される内部平均値X
iは大きくなる。つまり、内部平均値X
iは各内部平均値X
jの相加平均値に近づいていく。この処理が各計測装置2iそれぞれで行われることにより、各計測装置2iの内部平均値X
iは同じ値Xαに収束する。内部平均値X
iが同じ値に収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。また、収束値Xαが、下記(11)式に示すように、各計測装置2iの内部平均値X
iの初期値の相加平均値になることも証明されている。kは分散電源が備えているインバータ装置の数(すなわち、計測装置2iの数)であり、下記(11)式は、計測装置21〜2kの内部平均値X
1〜X
kの初期値をすべて加算してkで除算した相加平均値を算出することを示している。
【数11】
【0085】
初期値は、いずれかの計測装置2iの有効電力値P
iが更新された時に更新される。有効電力値P
iが更新された計測装置2iでは、加算器85で変化量ΔP
iが加算されることで、内部平均値X
iが更新された初期値になり、有効電力値P
iが更新されなかった計測装置2iでは、そのときの内部平均値X
iがそのまま初期値になる。なお、変化量算出部81が出力する変化量ΔP
iを加算器85で加算するのではなく、積分器86の出力に加算するようにしてもよい。
【0086】
図13は、有効電力値Pの更新による初期値の更新と、初期値の相加平均値への収束を説明するための図である。
【0087】
図13においては、2つの計測装置21および計測装置22の相加平均値を算出する場合について説明する。計測装置21で計測された有効電力値P
1、計測装置22で計測された有効電力値P
2、計測装置21の平均値生成部82で生成された内部平均値X
1、計測装置22の平均値生成部82で生成された内部平均値X
2を示している。また、P
1およびP
2の理論的な相加平均値をAveとして示している。P
1は、時刻t0からt1までが「40」で、時刻t1以降が「50」とし、P
2は、時刻t0からt2までが「20」で、時刻t2以降が「30」としている。理論的な相加平均値Aveは、時刻t0からt1までが「30」で、時刻t1からt2までが「35」で、時刻t2以降が「40」になっている。
【0088】
X
1およびX
2は、時刻t0においてそれぞれ「40」および「20」であるが、相加平均値「30」に収束する。その後、時刻t1でP
1が「40」から「50」に更新されるので、X
1が「10」増加されて「40」になり、X
2は「30」のままである。これらの値が初期値となって、X
1およびX
2は相加平均値「35」に収束する。次に、時刻t2でP
2が「20」から「30」に更新されるので、X
2が「10」増加されて「45」になり、X
1は「35」のままである。これらの値が初期値となって、X
1およびX
2は相加平均値「40」に収束する。
【0089】
以下に、
図11に示す各計測装置21〜25において、相加平均値が算出されることを確認するシミュレーションについて説明する。
【0090】
図14は、当該シミュレーションを説明するための図である。同図(a)は、各計測装置21〜25の電力算出部71が出力する有効電力値P
i(すなわち、計測値)の時間変化を示している。各計測値は乱数を用いて1秒毎にランダムに変化させている。また、通信部74による通信周期は10ミリ秒としている。
【0091】
同図(b)は、各計測装置21〜25の平均値生成部82が出力する内部平均値X
iの時間変化を示している。実線Aveが計測値の理論的な相加平均値を示している。同図(b)に示すように、計測値の更新時には、各計測装置21〜25の内部平均値X
iが過渡的に変化するが、理論的な相加平均値に収束していることが確認できる。
【0092】
図12に戻って、合計部87は、平均値生成部82より入力される内部平均値X
iに基づいて、有効電力値Pを算出するものである。上述したように、内部平均値X
iは、有効電力値P
1〜P
5の相加平均値に収束する。したがって、内部平均値X
iの収束値Xαに、計測装置2iの数k(本実施形態では「5」)を乗算することで、有効電力値Pを算出することができる。合計部87は、平均値生成部82より入力される内部平均値X
iに、計測装置2iの数kを乗算した値を、有効電力値Pとして、制御回路5に出力する。なお、内部平均値X
iが収束値Xαになるまで(例えば、
図14(b)のシミュレーション結果では、0.5秒程度)は、前回算出した有効電力値Pを出力するようにすればよい。
【0093】
無効電力合計値算出部73も、有効電力合計値算出部72と同様にして、電力算出部71より入力される無効電力値Q
1に基づいて内部平均値X
iを算出し、内部平均値X
iに、計測装置2iの数kを乗算した値を、無効電力値Qとして、制御回路5に出力する。
【0094】
制御回路5の推定部52は、有効電力合計値算出部72より入力される有効電力値P、および、無効電力合計値算出部73より入力される無効電力値Qに基づいて、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定する。なお、インバータ回路4の出力電圧と、連系点aで測定される電圧値Vとがほぼ同じなので、本実施形態においては、電圧センサ62より入力される電圧信号v
u,v
v,v
wに基づいて算出した電圧実効値を、電圧値Vとして用いている。なお、計測装置21が、有効電力合計値算出部72および無効電力合計値算出部73と同様の手法(合計部87の処理を含まない)で、電圧実効値V
iの平均値を算出して、制御回路5に出力し、制御回路5の推定部52が当該平均値を用いるようにしてもよい。なお、電圧実効値V
iの平均値ではなく、最大値や最小値を用いるようにしてもよい。
【0095】
第2実施形態によると、分散電源に備えられている各インバータ装置に内蔵されている計測装置が、それぞれ少なくとも1つの計測装置(例えば、近隣に位置するものや、通信が確立されたもの)と相互通信を行っており、各計測装置の通信状態が連結状態であることで、すべての計測装置の内部平均値X
iが収束値Xαに収束する。収束値Xαは、各計測装置の内部平均値X
iの初期値の相加平均値である。有効電力合計値算出部72においては、有効電力値P
iが更新された時にその変化量ΔP
iが内部平均値X
iに加算されることで初期値が更新される。したがって、有効電力合計値算出部72の内部平均値X
iは、各計測装置の有効電力値P
iの相加平均値になる。有効電力合計値算出部72は、合計部87で、内部平均値X
iに計測装置の数kを乗算することで有効電力値Pを算出し、制御回路5に出力する。無効電力合計値算出部73も、同様にして、無効電力値Qを算出し、制御回路5に出力する。
【0096】
制御回路5の推定部52は、有効電力合計値算出部72より入力される有効電力値P、無効電力合計値算出部73より入力される無効電力値Q、および、制御回路5で近似的に算出された電圧値Vに基づいて、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定する。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0097】
また、第2実施形態においては、各インバータ装置11〜1kに内蔵されている計測装置21〜2kが、有効電力値Pおよび無効電力値Qを算出することができるので、連系点aに計測装置2を配置して、計測した有効電力値Pおよび無効電力値Qを各インバータ装置11〜1kに入力する必要がない。
【0098】
なお、上記第2実施形態においては、各計測装置2iが相互通信を行う場合について説明したが、これに限られず、片側通信を行うようにしてもよい。例えば、
図15に示すように、計測装置21が計測装置25から受信のみを行って、計測装置22に送信のみを行い、計測装置22が計測装置21から受信のみを行って、計測装置23に送信のみを行い、計測装置23が計測装置22から受信のみを行って、計測装置24に送信のみを行い、計測装置24が計測装置23から受信のみを行って、計測装置25に送信のみを行い、計測装置25が計測装置24から受信のみを行って、計測装置21に送信のみを行う場合でも、内部平均値X
iを相加平均値に収束させることができる。より一般的に言うと、ある計測装置から送信先をたどっていくと、任意の計測装置に到達することができる状態(グラフ理論における「全域木を含む」状態)であることが、内部平均値X
iを収束させるための条件であり、さらに、任意の計測装置から送信先をたどっていくと、任意の計測装置に到達することができる状態(グラフ理論における「強連結」状態)であり、すべての計測装置において、送信先の計測装置の数と送信元の計測装置の数が等しい状態(グラフ理論における「平衡グラフ」状態)であることが内部平均値X
iを相加平均値に収束させるための条件である。
【0099】
次に、分散電源の上位にSVRが設置されている構成(
図16(a)参照)を考える。なお、インバータ装置11〜1kは、第1実施形態または第2実施形態に係るインバータ装置11〜1kであってもよいし、連系点電圧の上昇を無効電力を出力することで補償する、その他のインバータ装置であってもよい。この場合、インバータ装置11〜1kが無効電力を出力して、連系点電圧の上昇を抑制するので、SVR9でのタップの切り替えによる、連系点電圧の上昇抑制の必要がなくなる。しかしながら、インバータ装置11〜1kに無効電力を出力させるより、SVR9でタップを切り替えて、連系点電圧の上昇を抑制する方がよい。以下に、インバータ装置11〜1kと協調して連系点電圧の上昇を抑制するSVR9を、第3実施形態として説明する。
【0100】
図16は、第3実施形態に係るSVR9を説明するための図である。
図16(a)は、当該SVR9を複数備えた分散電源が電力系統に連系している状態を示しており、
図16(b)は、当該SVR9の内部構成を示している。
図16において、第1実施形態と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0101】
図16(b)に示すように、SVR9は、計測装置2、推定部52、算出部91、タップ比算出部92、および、タップ切替部93を備えている。
【0102】
計測装置2は、第1実施形態に係る計測装置2と同様のものであり、連系点aで計測された有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vおよび電流値Iを、推定部52に出力する。また、計測装置2は、無効電力値Qおよび電圧値Vを算出部91にも出力する。推定部52は、第1実施形態に係る推定部52と同様のものであり、計測装置2より入力される有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vおよび電流値Iに基づいて、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定する。推定部52は、推定したパラメータρ
2を、算出部91に出力する。算出部91は、推定部52より入力されるパラメータρ
2と、計測装置2より入力される無効電力値Qおよび電圧値Vとから、無効電力による電圧変化分ΔV
Q(=ρ
2・Iq=ρ
2・Q/V)を算出し、電圧変化分ΔV
Qをタップ比算出部92に出力する。タップ比算出部92は、算出部91より入力される電圧変化分ΔV
Qをできるだけ補償するためのタップ比を算出してタップ切替部93に出力する。タップ切替部93は、タップ比算出部92より入力されるタップ比に基づいて、タップの切り替えを行う。
【0103】
SVR9によるタップ切替によって、無効電力による電圧変化分ΔV
Qが補償されるので、タップ切替後は、インバータ装置11〜1kは、電圧変化分ΔV
Qを補償するための無効電力の出力を抑制することができる。これにより、SVR9は、インバータ装置11〜1kと協調して連系点電圧の上昇を抑制することができる。
【0104】
次に、推定部52によって推定される系統インピーダンスを利用した、系統インピーダンスのマップを作成するシステムについて、第4実施形態として以下に説明する。
【0105】
推定部52は、分散電源の連系点での系統インピーダンスを推定することができる。これを利用して、各地に設置された分散電源の連系点での系統インピーダンスをそれぞれ推定して、クラウドなどのサーバで管理すれば、系統インピーダンスのマップを、リアルタイムで確認することができる。
【0106】
図17は、第4実施形態に係る系統インピーダンスマップ作成システムを説明するための図である。インバータ装置1は、各地に設置されている分散電源が備えているインバータ装置(パワーコンディショナ)である。各インバータ装置1は、推定部52が推定した系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を、定期的に、サーバ10に送信する。サーバ10は、各インバータ装置1より受信した系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を、インバータ装置1の位置情報とともに記録する。これにより、サーバ10で、系統インピーダンスのマップを作成することができる。電力系統上の所望の位置の系統インピーダンスを、リアルタイムで確認することができるので、高品質な系統運用を行うことができる。なお、第1実施形態の変形例(
図10参照)に係る計測装置2が、系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を、サーバ10に送信するようにしてもよい。また、分散電源に備えられたインバータ装置1や計測装置2だけでなく、電力系統上の電力線(送電線や配電線など)に配置された計測装置2と、推定部52と、通信部とを備えた系統インピーダンス推定装置を利用することで、より詳細な系統インピーダンスマップを作成するようにしてもよい。また、サーバ10が推定部52を備えるようにして、各計測装置2の各計測値をサーバ10に入力して、サーバ10で系統インピーダンスのパラメータρ
1,ρ
2,ρ
3を推定するようにしてもよい。
【0107】
本発明に係る系統インピーダンス推定装置、インバータ装置、および、系統インピーダンス推定方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る系統インピーダンス推定装置、インバータ装置、および、系統インピーダンス推定方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。