(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るフォークリフトについて図面に基づき説明する。
図1に示すように、フォークリフト1は、下部に走行用車輪2が設けられるとともに上方に運転席3が設けられた車両本体4と、車両本体4の前部に傾動自在に支持された外側マスト部材5と、この外側マスト部材5に昇降可能に保持された内側マスト部材6とを有する。また、フォークリフト1は、内側マスト部材6に昇降可能に設けられたキャリッジ7と、キャリッジ7の前面側に設けられて荷物を載置可能な左右一対のフォーク8と、内側マスト部材6の上部に設けられたガイド輪であるシーブ9と、シーブ9に巻き付けられてキャリッジ7を吊り下げるチェーン10と、内側マスト部材6を外側マスト部材5に対して上昇・下降させる昇降シリンダ11とを有する。さらに、フォークリフト1は、外側マスト部材5の傾斜状態を変化させる傾斜油圧シリンダ12と、フォークリフト1の様々な動作を制御するための制御部25と、を有する。
【0011】
フォーク8を上昇または下降させるには、オペレーターが、リフトレバー21を上昇側または下降側に操作する。リフトレバー21の操作は昇降操作センサ51(
図3参照)により検出される。昇降操作センサ51は、たとえばポテンショメータである。昇降操作センサ51からは、リフトレバー21の操作位置に基づく検出信号が出力される。昇降操作センサ51からの出力に応じて、昇降油圧シリンダ11への作動油の吸排を制御する昇降制御弁54(
図3参照)が動作する。これにより、昇降油圧シリンダ11内のピストンロッドが動作してシーブ9が上昇または下降し、チェーン10を介してキャリッジ7が上昇または下降する。これにより、キャリッジ7に設けられたフォーク8も上昇または下降する。
【0012】
フォークの傾斜状態を変化させるには、オペレーターが、ティルトレバー22をマストの前傾側または後傾側に操作する。ティルトレバー22の動きは、傾斜操作センサ52(
図3参照)により検出される。傾斜操作センサ52は、たとえばポテンショメータである。傾斜操作センサ52から出力される検出信号に応じて、傾斜油圧シリンダ12への作動油の吸排を制御する傾斜制御弁55(
図3参照)が作動する。その結果、傾斜油圧シリンダ12の動作に伴って外側マスト部材5の傾斜状態が変化する。内側マスト部材6は、上記の通り外側マスト部材5に昇降可能に保持されているので、外側マスト部材5および内側マスト部材6(両者を併せて指す場合、以下、単にマストという)は共に傾斜状態が変化し、これに伴ってフォーク8の傾斜状態が変化する。
【0013】
本発明の実施の形態に係るフォークリフト1のリフトレバー21には、フォーク8の水平出し、すなわち、フォーク8が水平となる動作を、自動で行わせる自動モードを選択するためのモード選択スイッチ23が備えられている。モード選択スイッチ23としては、自動復帰型の押しボタンスイッチが用いられ、押しボタンが押されている間は自動モードが選択される。また、フォーク8の傾斜状態を検出する傾斜センサ24がフォーク8の内部に備えられている。傾斜センサ24は公知の種々のタイプの傾斜センサ、たとえば、重力加速度式傾斜センサを用いることができる。さらに、昇降油圧シリンダ11の駆動圧を検出する圧力センサ53(
図3参照)も設けられている。この圧力センサ53は、昇降油圧シリンダ11の負荷を検出する負荷センサである。
【0014】
本発明の実施の形態に係るフォークリフト1の荷役作業について
図2を参照して説明する。
図2は、フォークリフト1について、車両本体4、マスト31(外側マスト部材5および内側マスト部材6)、およびフォーク8の関係をわかり易く説明するために、これらの動作を簡略化して示したものである。
【0015】
フォークリフト1は、フォーク8に荷物Wを載荷すると、その負荷により車両本体4の前輪側が沈み込んで前傾し、フォーク8は前側に向けて下り勾配となる。そのため、オペレーターは、マスト31を後傾させる方向に傾動させ、フォーク8が水平となるようにする。
図2(a)は、この状態のフォークリフト1の様子を模式的に示している。
図2(a)において、車両本体4の前傾角度をθで示している。
【0016】
フォークリフト1は、荷物Wをフォーク8に載荷した状態で走行する際には、フォーク8上の荷物Wの落下を防止する観点から、マスト31を後傾姿勢とする。この状態を
図2(b)に示す。この状態における車両本体4に対するマスト31の傾斜角度は、たとえば、(θ+α)である。すなわち、フォーク8はその先端から基端にかけて下り勾配の傾斜角を有する。このような姿勢は、載荷状態でフォークリフト1を走行する際にオペレーターにより操作される。
【0017】
フォークリフト1が荷物Wを降ろす地点に到着すると、オペレーターは、フォーク8が水平となるようにマストを傾動させる。すなわち、フォークリフト1は、車両本体4に対するマストの傾斜角度はθに戻され、
図2(a)と同様の状態となる。この状態で、オペレーターはフォーク8を所定位置まで下降させて荷物Wを接地させる。荷物Wの接地に伴って、荷物Wが車両本体4に作用する力は減少して最終的に実質的にゼロになるため、車両本体4の前傾は解消され水平な状態となる。しかし、車両本体4に対するマスト31の傾斜角度はθのままなので、マスト31は鉛直方向に対して角度θだけ後傾した状態となる。すなわち、フォーク8は角度θだけ後傾した状態となる。この状態を
図2(c)に示す。
【0018】
図2(c)に示した状態において、フォークの傾斜を検出する傾斜センサ24からの検出信号に基づいてフォーク8が予め定めた水平度になったと判定されるまで傾斜油圧シリンダ12を駆動して、フォーク8が水平な状態に相当するまでマスト31の傾斜を自動的に変化させる。すなわち、フォーク8の水平出しを自動で行う。その結果、フォークリフト1は、
図2(d)に示した状態となる。
【0019】
フォーク8の水平出しを自動で行う動作について、
図3に示す制御システムと
図4に示すフローチャートとを参照して説明する。
図3に示す制御システムは、CPU、メモリなどを備える制御部25を有する。制御部25は、昇降操作センサ51と、傾斜操作センサ52と、傾斜操作センサ52と、圧力センサ53と、モード選択スイッチ23と、傾斜センサ24とから検出信号を入力して、昇降制御弁54と傾斜制御弁55とに信号を出力する。昇降制御弁54と傾斜制御弁55においては、それぞれに入力される信号に基づいて弁が操作され、その結果、昇降油圧シリンダ11と傾斜油圧シリンダ12とが動作する。
【0020】
図4のフローチャートを参照して、実施の形態によるフォークリフトの動作を説明する。なお、
図4にフローチャートとして示す処理手順は、制御部25のメモリに格納したプログラムをCPUが実行して行われる。ステップS1において、制御部25は、オペラーターがリフトレバー21をフォーク下降側に操作されたかどうか判定する。ステップS1において肯定判定された場合、すなわち、オペレーターがリフトレバー21をフォーク下降側に操作した場合には、ステップS2に進む。ステップS1において否定判定された場合、すなわち、オペレーターがリフトレバー21をフォーク下降側に操作していない場合には、本ルーチンは終了する。
【0021】
ステップS2において、制御部25は、リフトレバー21の操作位置を昇降操作センサ51からの出力に基づいて、昇降油圧シリンダ11を作動させるように昇降制御弁54を動作させる信号を生成して出力する。これにより、昇降油圧シリンダ11が動作してキャリッジ7を下降させることでフォーク8が下降する。
【0022】
ステップS3において、制御部25は、圧力センサ53からの出力に基づいて、荷物Wが接地したかどうかを判定する。フォークリフト1は荷物Wをパレットに積んで搬送するので、荷物Wの接地とはパレットの接地である。以下では便宜上荷物の接地と呼ぶ。ステップS3において肯定判定された場合、すなわち、荷物Wが接地したと判定された場合、ステップS4に進む。ステップS3において否定判定された場合、すなわち、荷物Wは接地していないと判定された場合、ステップS2に戻る。
【0023】
ステップS3において、荷物Wが接地したかどうかの判定は、本実施の形態においては次のように行う。すなわち、昇降油圧シリンダ11の下降駆動圧を圧力センサ53により検出し、制御部25は、下降駆動圧が予め定めた値を越えて低下した時点において荷物Wが接地したと判定する。
【0024】
ステップS4において、制御部25は、フォーク8を自動的に水平とする自動モードがモード選択スイッチ23により選択されているかどうかを判定する。ステップS4において肯定判定された場合、すなわち、自動モードが選択されたと判定された場合、ステップS5に進む。ステップS4において否定判定された場合、すなわち、自動モードが選択されていないと判定された場合、本ルーチンは終了する。
【0025】
ステップS4において、自動モードが選択されているかどうかの判定は、本実施の形態においては次のように行う。すなわち、制御部25は、モード選択スイッチ23が自動モード選択側に操作されているかどうかを、モード選択スイッチ23からの出力に基づいて判定する。モード選択スイッチ23はリフトレバー21に設けられた自動復帰型の押しボタンスイッチである。オペレーターは、フォーク8を水平にする動作を自動モードで行わせる場合、モード選択スイッチ23の押しボタンを押しながらリフトレバー21を操作する。
【0026】
ステップS5において、制御部25は、昇降油圧シリンダ11の動作が停止するように昇降制御弁54の動作させるための信号を生成する。生成された信号は昇降制御弁54に出力される。これにより、昇降油圧シリンダ11の動作は停止してキャリッジ7の下降は停止する。その結果、フォークの下降は停止し、ステップS6に進む。ステップS6において、制御部25は、フォーク8が水平となったかどうか判定する。ステップS6において肯定判定された場合、すなわち、フォーク8が水平となったと判定された場合、ステップS7に進む。ステップS6において否定判定された場合、すなわち、フォーク8が水平となっていないと判定された場合、ステップS7に進む。フォーク8が水平となったかどうかの判定は、傾斜センサ24から制御部25に入力される信号に基づいて行われる。
【0027】
ステップS7において、制御部25は、マスト31が前傾する方向に傾斜油圧シリンダ12を作動させるように傾斜制御弁55を動作させるための信号を生成する。生成された信号は傾斜制御弁55に出力される。これにより、傾斜油圧シリンダ12が動作してフォーク8が前傾するように動作する。
【0028】
フォーク8が水平となったと判定された場合に進むステップS8において、制御部25は、傾斜油圧シリンダ12の動作が停止するように傾斜制御弁55を動作させるための信号を生成する。生成された信号は傾斜制御弁55に出力される。これにより、傾斜油圧シリンダ12の動作を停止させてフォーク8の前傾動作を停止させ、本ルーチンを終了する。
【0029】
以上の処理手順により制御されるフォークリフト1の特徴的な動作を説明する。
上述したように、フォーク8に荷物Wが載荷されると、車両本体4は前輪側が沈み込む。そのため、オペレーターは、フォーク8に荷物Wを載荷したとき、ティルトレバー22を操作して傾斜油圧シリンダ12によりマスト31を後傾させフォーク8を水平にする。オペレーターは、ティルトレバー22を操作してマスト31をさらに後傾させて荷物Wが落下しにくい状態として、荷物Wを所定位置に移動させるためフォークリフト1を走行させる。オペレーターは、所定位置でフォークリフト1を停車させる。オペレーターは、ティルトレバー22を操作してマスト31を前傾する方向に動作させフォーク8を水平にする。オペレーターは、リフトレバー21を操作して、昇降油圧シリンダ11によりキャリッジ7、すなわちフォーク8を下降させる。このとき、モード選択スイッチ23により自動モードが選択されていれば、制御部25は、圧力センサ53と傾斜センサ24の検出信号をモニタしながら傾斜制御弁55を操作する。これにより、傾斜油圧シリンダ12の動作が制御されて、フォーク8の下降動作に伴ってマスト31が後傾側から前傾側に動作する。傾斜センサ24からの信号によりフォーク8が水平になったことが判定されると、制御部25は、昇降油圧シリンダ11と傾斜油圧シリンダ12の動作が停止するように、昇降制御弁54と傾斜制御弁55への操作を停止する。
【0030】
以上説明した実施の形態の作用効果は次の通りである。
(1)実施の形態のフォークリフト1は、フォーク8の昇降操作を検出する昇降操作センサ51と、フォーク8の昇降動作を行う昇降アクチュエータ11と、フォーク8の傾斜動作を行う傾斜アクチュエータ12と、昇降アクチュエータ11の負荷を検出する負荷センサ53と、フォーク8の傾斜を検出する傾斜センサ24と、昇降操作センサ51と負荷センサ53と傾斜センサ24との検出信号に基づき、傾斜アクチュエータ12を駆動制御して、フォーク8の水平度を調節する制御部25とを備える。ここで、水平度の調節とは、フォーク8が概ね水平姿勢になることであり、水平±δを含む概念である。ただし、δはフォーク8をパレットから抜き取るあるいはパレットに差し込む際に支障を来さない程度の値である。
このように構成したフォークリフトによれば、荷物Wを降ろす際にフォーク8に水平度が自動的に制御される。従来は、荷物Wを降ろす際、パレットにフォーク8が引っかからないように手動でティルト操作する必要があったが、この実施の形態のフォークリフトでは、手動でティルト操作することが不要となり、熟練者でなくても荷役作業を高効率かつ安全に行うことが可能となる。
【0031】
(2)実施の形態のフォークリフトは、モード選択スイッチ23をさらに有している。制御部25は、モード選択スイッチ23により自動モードが選択されているとき、傾斜センサ24の検出信号に基づいてフォーク8が予め定めた水平度になったと判定するまで傾斜アクチュエータ12を駆動し、フォーク8の傾斜を制御する。
【0032】
(3)実施の形態のフォークリフトは、さらに、フォーク8の傾斜操作を検出する傾斜操作センサ52を有している。制御部25は、モード選択スイッチ23により自動モードが選択されているときであっても、オペレーターがティルト操作を行った場合には、このティルト操作を受入れる。すなわち、傾斜操作センサ52の出力に基づいて傾斜アクチュエータ12を駆動制御する。
【0033】
(4)実施の形態のフォークリフトは、昇降操作センサ52がフォーク8の下降を指示する操作を示す検出信号を出力し、かつ、負荷センサ53が昇降アクチュエータ11の負荷の減少を示す検出信号を出力し、かつ、傾斜センサ24がフォーク8の非水平を示す検出信号を出力する場合、制御部35は、傾斜アクチュエータ12を制御してフォーク8が水平となるようにする。
【0034】
(変形例1)
上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1には、フォーク8を自動的に水平とする自動モードを選択するためのモード選択スイッチ23が設けられている。しかし、モード選択スイッチ23を設けない場合も本発明に含まれる。すなわち、荷役作業において、荷物Wをフォーク8に載せた状態で荷物Wが接地した場合に、必ず自動的にフォーク8の水平出しが行われるような構成も本発明に含まれる。その場合には、
図4に示したフローチャートにおけるステップS4は省略される。
【0035】
(変形例2)
上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1においては、昇降油圧シリンダと傾斜油圧シリンダとを用いたが、いずれか一方あるいは両方を電動モータにより構成してもよい。この場合、荷物Wの接地の判定(荷物の負荷ゼロの判定)は、モータの負荷電流を検出して行うことができる。この場合、負荷センサ53として電流センサが用いられる。
【0036】
(変形例3)
上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1においては、リフトレバー21およびティルトレバー22の操作をポテンショメータにより検出した。しかし、ポテンショメータを用いずに、リフトレバー21およびティルトレバー22の操作を機械的に伝達して昇降制御弁54や傾斜制御弁55を直接操作する構成も本発明に含まれる。
【0037】
(変形例4)
上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1において、荷物Wの質量が大きい場合には、荷物Wの負荷による車両本体4の前傾が大きくなる。この場合、荷物Wの接地に伴って、車両本体の前傾が解消する度合いが大きいため、荷物Wの鉛直方向の位置は大きく上方に変化する。その結果、荷物Wを降ろす作業に支障を来す可能性がある。
本変形例のフォークリフトにおいては、フォーク8の鉛直方向の高さを検出する高さセンサをさらに有し、制御部25は、圧力センサ53と傾斜センサ24と高さセンサの検出信号をモニタしながら、昇降制御弁54と傾斜制御弁55を操作する。これにより、昇降油圧シリンダ11と傾斜油圧シリンダ12の動作が同時に制御される。その結果、オペレーターがフォーク8を所定位置まで下降させた時点におけるフォーク8の高さを変化させることなくフォーク8の水平を保つことが可能となる。
【0038】
なお、上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1においては、モード選択スイッチ23として復帰型押しボタンスイッチを用いたが、これに代えて復帰型トグルスイッチを用いてもよい。また、保持型のスイッチを用いてもよい。また、上記説明の本発明の実施の形態に係るフォークリフト1においては、傾斜センサ24はフォーク8の内部に備えているが、マスト31に備えるようにしてもよい。ただし、フォーク8とマスト31とがなす角度を変化させることができる場合、たとえば、リーチフォークリフトでは、傾斜センサ24はフォークに備える必要がある。
【0039】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明の要旨を変更しない範囲で、具体的な構成材料、部品などを変更しても良い。また、本発明の構成要素を含んでいれば、公知の技術を追加し、あるいは公知の技術で置き換えることも可能である。