(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームとしては、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、整泡剤からなる原料を反応させてなり、除膜処理を施さずに通気量が150ml/cm
2/s以上であり、75%圧縮残留ひずみが3.0%以下で、硬さ低下率が20%以下である。
【0012】
前記ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール(I)及びポリエーテルポリオール(II)の少なくとも2種を含む。
【0013】
前記ポリエーテルポリオール(I)は、アルキレンオキサイド単位の全量を10
0%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率(以下EO含有率と記載)が60%以上であり、数平均分子量が3000〜5000、平均官能基数が2〜4である。また、前記EO含有率は70%以上とすると好ましい。
【0014】
次いで前記ポリエーテルポリオール(II)は数平均分子量が2000〜4000、平均官能基数が2〜4、EO含有率が20%以下である。
【0015】
前記ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の配合比率は、ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の合計量を100重量%とした場合に、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)が60〜90重量%/40〜10重量%である。
また、ポリオール成分全体におけるEO含有率を45〜68%とすると好ましい。EO含有率が高すぎる場合、発泡時にコラップスが生じやすく、一方、低すぎる場合は、収縮が起こり易い。
【0016】
なお、前記ポリオール成分としては、本発明の効果を損なわない程度であれば、一般に軟質ポリウレタンフォームに用いられている公知のポリオールを併用してもよい。例えば、架橋剤となりえる低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0017】
前記イソシアネート成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いる。
なお、ポリオール成分とイソシアネート成分との配合比率としては、イソシアネートインデックスで90〜105とすることが好ましい。前記イソシアネートインデックスが低い場合、フォームの弾性が低くなりやすく、一方、高すぎる場合、発泡の際に収縮し易い。90〜105の範囲であれば、軟質ポリウレタンフォームの発泡も良好であり、且つマットレスとして有用な硬さ等の物性を得ることができるため好ましい。
【0018】
なお、前記イソシアネート成分として、本発明の効果を損なわない程度であれば、軟質ポリウレタンフォームに使用されている公知のイソシアネートを併用してもよい。
公知のイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートや、更に、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを用いることもできる。これらの他、プレポリマー型のポリイソシアネートを用いることもできる。
【0019】
発泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものが使用できる。例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド、液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等、熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等がある。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、好ましくは、水とメチレンクロライドを併用することが挙げられる。水とメチレンクロライドを併用することで軟質ポリウレタンフォームが良好に発泡させられるため好ましい。
【0020】
また、前記発泡剤として水を用いる場合は、ポリオール成分100重量%に対し1.5〜5重量%含有させることが好ましい。更に、メチレンクロライドを併用する場合は、11重量%以下で含有させることが好ましい。メチレンクロライドを前記範囲で併用することでマットレスとして適した硬さを得られやすい。
【0021】
整泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものが使用できる。例えば、各種シロキサン−ポリエーテルブロック共重合体のシリコーン系整泡剤等を用いることができる。
【0022】
なお、前記整泡剤の配合量としては、前記ポリオール成分100重量%に対して0.5〜3重量%とすると好ましい。少ない場合、整泡効果が得られ難く、一方、多すぎる場合は通気量及び圧縮残留ひずみが悪化するおそれがある。
【0023】
触媒としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものが使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール等の3級アミン化合物などのアミン系触媒を用いることができる。また、スタナスオクトエート等の有機錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等の有機ニッケル化合物などの金属系触媒を用いることもできる。これら触媒としては単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、触媒の配合量は、前記ポリオール成分を100重量%とした場合に、0.1〜1.5重量%とすることができる。
【0024】
また、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を併用することもできる。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びウレタンフォーム原料の粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための希釈剤等が挙げられる。
【0025】
本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームは、除膜処理を施さずに通気量が150ml/cm
2/s以上であり、圧縮残留ひずみが3.0%以下である。除膜処理が施されていないためへたり難い。また、通気量が150ml/cm
2/s以上と通気性も高く、且つ圧縮残留ひずみも3.0%以下なため、圧力がかかった状態から開放されれば周囲の空気を容易に取り込み元の状態へすばやく戻るといった復元性が高い。更に、前記の通り通気性が高いため使用時における蒸れを良好に解消でき、マットレスといった寝具関係の用途に非常に適している。なお、前記通気量が200ml/cm
2/s以上であると前記復元性や蒸れの解消がより向上するため好ましい。
【0026】
また、本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームは、硬さ低下率が20%以下である。この為、繰返しの使用や、運搬・保存時における圧縮梱包等にさらされても、物性低下が低く、長期に亘って快適に使用し続けることができる。
【0027】
更に、本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームは、密度が30〜60kg/m
3であることが好ましい。密度が30kg/m
3未満の場合、ポリウレタンフォームがへたり易くなるおそれがあり、一方、60kg/m
3を超える場合、マットレスとした際に重量が大きくなるため、移動時等における使用者の負担が大きくなるおそれがある。
【0028】
また、本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームは、40%圧縮時の硬さが40〜70Nであることが好ましい。前記硬さが柔らかすぎる場合はマットレスとして使用した際に底付き感を感じるおそれがあり、一方、硬すぎる場合は感触や体圧分散性が悪化するおそれがある。
【0029】
本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームの製造方法としては、従来公知の方法により製造される。例えば、ポリオール成分に、発泡剤、整泡剤、触媒、その他助剤等のイソシアネート成分を除いた成分を混合し、その後イソシアネート成分と混合・発泡させること等の方法で得ることができる。
【0030】
本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームはそのままでも、他の部材に積層させて使用しても構わない。例えば、反発弾性や硬さの高い軟質ポリウレタンフォーム上に本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームを積層させることで、体圧分散性が良好で、且つ、蒸れを良好に抑制できるマットレスとして使用することができる。
また、必要に応じて、プロファイル加工や二次元加工等、従来公知の方法を用いて表面に凹凸形状を設けることもできる。
【0031】
なお、マットレスとして使用する際は、側材で被覆して使用する。側材としては、従来公知の素材を使用できるが、本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームの特性を発揮させるために通気性の高い素材からなるものを用いることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例1・2、参考例1・2
[試料]
<ポリオール成分>
ポリオールA:数平均分子量3360、官能基数3、EO含有率75%のポリエーテルポリオール(三井化学株式会社製、アクトコールEP−505S)
ポリオールB:数平均分子量3000、官能基数3、EO含有率0%のポリエーテルポリオール(旭硝子株式会社製、EXCENOL3030)
<イソシアネート成分>
イソシアネートA:NCO含有率が31.5%のポリメリックMDI(東ソー株式会社製、MR−200)
イソシアネートB:NCO含有率が42.8%のTDI(三井化学株式会社製、コスモネートT−80)
<発泡剤>
発泡剤A:水(イオン交換水)
発泡剤B:メチレンクロライド
<整泡剤>
整泡剤:シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH−192)
<触媒>
触媒A:第三級アミン触媒、トリエチレンジアミン33%のジプロピレングリコール溶液(東ソー株式会社製、TEDA−L33)
触媒B:スタナスオクトエート(日東化学株式会社製、ネオスタンU−28)
【0033】
表1に記載の配合比率にて、ポリオール成分に各種発泡剤、整泡剤、触媒を混合し、次いでイソシアネート成分と混合させ、発泡・硬化させてポリウレタンフォームを製造し、以下に記載の方法にて各種評価を行った。
[密度]
JIS K 7222に基づいて測定した。
[40%圧縮硬さ]
JIS K 6400−2 A法に基づいて測定した。
[通気量]
JIS K 6400−7 B法(フラジール式通気量)に基づいて測定した。
[75%圧縮残留ひずみ]
JIS K 6400−4 A法に基づいて測定した。
[硬さ低下率]
JIS K 6400−4(繰返し圧縮残留ひずみ試験、定荷重法)に基づき、測定前の40%圧縮硬さと、測定後の40%圧縮硬さの差から算出した。
[乾燥性能]
幅が150mm、長さが150mm、厚みが50mmのブロック状に裁断した軟質ウレタンフォームの上面中央に、十分に水を浸み込ませたφ90mmのろ紙を設置し、その上から前記ろ紙を完全に覆うように100mm×100mmのガラス板を被せて全体の重量を測定し、更に室温(24℃)で5時間放置した後に再度重量を測定した。前記測定結果から、軟質ウレタンフォームブロックと水を含んでいない状態のろ紙、及びガラス板の重量を差し引き、軟質ウレタンフォームを通して蒸発した水分量の変化による重量変化率を算出し、以下の基準で評価を行った。
○:80%を超える重量低下が確認された。
△:60〜80%の重量低下が確認された。
×:60%未満の重量低下が確認された。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例1〜7
本発明のマットレス用軟質ポリウレタンフォームは、通気量が150ml/cm
2/s以上と高く、また、ウレタンフォームを通して水分も逃がすことができる為、蒸れ感を良好に解消できる。また、75%圧縮残留ひずみも3%以下であり、且つ硬さ低下率も20%以下であるため、へたり難く、長期にわたって使用することができる。
【0037】
<比較例1>
イソシアネート成分としてTDIを使用した。
結果として、通気量が100ml/cm
2/sと低く、蒸れを解消し難いポリウレタンフォームとなった。また、75%圧縮残留ひずみも4.0%と高く、へたり易いものだった。
<比較例2>
ポリオール成分として、EO含有率が0%のポリオールBのみを使用した。
結果として、発泡時に収縮が生じ、良好なポリウレタンフォームが得られなかった。
<比較例3>
ポリオール成分として、EO含有率が75%のポリオールAのみを使用した。
結果として、発泡時にコラップスが生じ、良好なポリウレタンフォームが得られなかった。
<参考例1>
従来一般に用いられている軟質ポリウレタンフォームを検討した。硬さ等は自在に変更できるものの、通気量が60ml/cm
2/sと低く、蒸れを感じやすいものであった。また、硬さ低下率が23%と高いため、長期の使用などによって硬さが低下し、へたり易いものだった。
<参考例2>
通気性を高めるために前記参考例1で得られた軟質ポリウレタンフォームに除膜処理を施した無膜ポリウレタンフォームを検討した。除膜処理が施されているため、通気量が350ml/cm
2/sと高いが、一方で、75%圧縮残留ひずみは4.7%で、硬さ低下率は41%と高いため、長期の使用などによって硬さが低下し、へたり易いものだった。