(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
本実施形態の親水化剤は、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)を含有する。
【0014】
本発明に用いる糖類のアルキレンオキシド付加物(A)は、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量との総和が20〜100質量%である。上記範囲内とすることにより、親水性を長期にわたって維持することができる。糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量との総和は、30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において、糖類残基は、糖類からアルキレンオキシドが付加した水酸基の水素原子を除いた基を示す。
【0015】
本発明に用いる糖類のアルキレンオキシド付加物(A)は、オキシエチレン基を0〜80質量%含有することが好ましい。上記範囲内とすることにより、親水性を長期にわたって維持することができる。オキシエチレン基の含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いる糖類のアルキレンオキシド付加物(A)における糖類としては、例えば、糖および糖アルコールなどが挙げられる。糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトースおよびマンノースなどの単糖、スクロース、ラクトース、マルトースおよびトレハロースなどの二糖、セルロース、アミロースおよびキチンなどの多糖などが挙げられる。また、糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、マルチトールおよびエリスリトールなどが挙げられる。これらのうち、比較的低粘度であるため取り扱いが容易であること、また、親水性をより長期にわたって維持できることから、二糖および糖アルコールが好ましく、ショ糖がより好ましい。
【0017】
前記糖類に付加するアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、グリシドール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、親水性をより長期にわたって維持できることから、プロピレンオキシド単独またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせが好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせがより好ましい。なお、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとを組み合わせて用いる場合は、これらの混合物を付加してもよく、別々に付加してもよい。
【0018】
前記アルキレンオキシドを付加する方法は、例えば、糖類および触媒の存在下、アルキレンオキシドを70〜120℃、0〜0.3MPaとなるように反応容器に導入し、糖類と反応させる方法など、公知の方法を用いることができる。
【0019】
前記アルキレンオキシド付加反応に用いる糖類は、糖類単独でも使用可能であるが、反応溶液の粘度を低下させる観点から、糖類を溶解しうる化合物に溶解した糖類を用いることが好ましい。このような糖類を溶解しうる化合物としては、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの糖類以外の水酸基含有化合物が挙げられる。これらのうち、糖類の溶解性が高く、付加反応後の留去が容易であることから水が好ましい。また、糖類を溶解しうる化合物の使用量は、糖類に付加するアルキレンオキシドの割合を高める観点から、糖類100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。
【0020】
前記アルキレンオキシド付加反応に用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属類、ジエタノールアミン、トリエチルアミンなどのアミン類、カチオン重合触媒、複合金属シアン化物錯体触媒などが挙げられる。触媒の使用量は、例えば、糖類100質量部に対して0.01〜5.0質量部である。
【0021】
前記糖類のアルキレンオキシド付加物(A)におけるアルキレンオキシドの付加量は、糖類1モルあたり3〜200モルであることが好ましい。上記範囲内とすることにより、親水性をより長期にわたって維持することができる。上記アルキレンオキシドの付加量は、5〜100モルであることがより好ましく、7〜50モルであることがさらに好ましい。
【0022】
前記糖類のアルキレンオキシド付加物(A)は、平均水酸基価が30〜1000mgKOH/gであることが好ましい。上記範囲内とすることにより、親水性をより長期にわたって維持することができる。上記平均水酸基価は、70〜800mgKOH/gであることがより好ましく、120〜700mgKOH/gであることがさらに好ましい。なお、平均水酸基価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0023】
前記糖類のアルキレンオキシド付加物(A)は、数平均分子量が400〜10000であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、親水性をより長期にわたって維持することができる。上記数平均分子量は、500〜6000であることがより好ましく、700〜4000であることがさらに好ましく、700〜3000であることが特に好ましい。
【0024】
前記アルキレンオキシド付加反応物は、さらに精製処理を行ってもよい。精製処理を行うことにより、親水性をより長期にわたって維持することが可能となる。このような精製処理としては、例えば、吸着剤処理、蒸留処理などが挙げられる。これらのうち、製造工程が容易であることから吸着剤処理が好ましい。
【0025】
前記吸着剤処理の方法は特に限定されないが、例えば、前記アルキレンオキシド付加反応物と吸着剤とを攪拌機などを用いて混合する方法、吸着剤充填カラムに前記アルキレンオキシド付加反応物を通過させる方法などが挙げられる。これらのうち、操作が簡便であることから、アルキレンオキシド付加反応物と活性炭とを混合する方法が好ましい。また、水や有機溶媒などの溶媒を用いる場合は、予めアルキレンオキシド付加反応物と混合してから吸着剤を添加してもよく、吸着剤を溶媒に分散してからアルキレンオキシド付加反応物と混合してもよい。
【0026】
吸着剤は、アルキレンオキシド付加反応物に含まれる不純物を吸着させてこれを除去するためのものである。かかる吸着剤は、粉末状、粒状、ペレット状のいずれであってもよく、好ましくは粉末状である。このような吸着剤としては、活性炭、ゼオライトなどが挙げられ、特に、親水化剤の耐熱性がより優れることから、活性炭が好ましく、1質量%の水懸濁液におけるpHが4〜11である活性炭がより好ましく、該pHが4.5〜7.5である活性炭がさらに好ましい。
【0027】
前記吸着剤の使用量は、特に限定されないが、前記アルキレンオキシド付加反応物100質量部に対して0.1〜20.0質量部であることが好ましく、1.0〜10.0質量部であることがより好ましい。吸着剤の使用量を上記範囲内とすることにより、製造工程がより簡便なものとなる。
【0028】
また、前記吸着剤処理においては、溶媒を用いることが好ましい。溶媒を用いることにより、前記アルキレンオキシド付加反応物が低粘度化され、精製処理を簡便に行うことができる。
【0029】
また、前記吸着剤処理においては、前記溶媒以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤など、各種添加剤を使用してもよい。
【0030】
本発明に係る樹脂成形品は、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)および樹脂(B)を含有するものである。前記糖類のアルキレンオキシド付加物(A)は、本発明の親水化剤と使用可能なものと同一である。前記樹脂成形品は、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)と樹脂(B)とを混合状態で含有することが好ましい。
【0031】
本発明に使用し得る樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスルホン樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0032】
本発明の樹脂成形品における前記糖類のアルキレンオキシド付加物(A)の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、より高い親水性を長期にわたって維持することができる。上記含有量は、0.5〜5.0質量部であることがより好ましい。
【0033】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)とを混合できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、例えば、開放型2軸混錬機やニーダーなどの混錬機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0034】
前記製造方法において、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)と樹脂(B)との混合温度は140〜240℃であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)と樹脂(B)とをより均一に混合することができるため、より高い親水性を長期にわたって維持することができる。
【0035】
本発明の樹脂成形品は、樹脂(B)および糖類のアルキレンオキシド付加物(A)以外に、公知の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)として、下記製造例1〜5で得られる糖類のアルキレンオキシド付加物(a−1)〜(a−5)を用いた。
【0038】
(製造例1)
ステンレス製オートクレーブに、ショ糖342g(1モル)、水70g、水酸化カリウム3gを仕込み、反応器内を窒素置換した。80℃まで昇温してショ糖を溶解し、続いて、100℃に昇温し、エチレンオキシド352g(8モル)を内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。導入終了後、さらに100℃で2時間反応させた。続いて、プロピレンオキシド464g(8モル)を内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。プロピレンオキシドの導入終了後、100℃で2時間反応させることにより、アルキレンオキシド付加物を得た。
得られたアルキレンオキシド付加物100gと水30gとを混合して50℃に調整し、さらに酢酸を添加してpHを6に調整した。続いて、粉末状の活性炭(商品名:強力白鷺A(日本エンバイロケミカルズ社製、1%水溶液のpH:4.9)10gを加え、50℃で2時間攪拌した。その後、ろ過により活性炭を取り除き、減圧下90℃にて水を除去することにより、ショ糖−エチレンオキシド(8モル)−プロピレンオキシド(8モル)ブロック付加物(a−1)を得た。(平均水酸基価:445mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量:34重量%、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量の総和:66重量%、数平均分子量:1015)
【0039】
(製造例2)
ステンレス製オートクレーブに、ショ糖342(1モル)、水70g、水酸化カリウム3gを仕込み、反応器内を窒素置換した。80℃まで昇温してショ糖を溶解し、続いて、100℃に昇温し、プロピレンオキシド928g(16モル)を内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。導入終了後、さらに100℃で2時間反応させることにより、アルキレンオキシド付加物を得た。得られたアルキレンオキシド付加物を、製造例1と同様の方法で精製することにより、ショ糖−プロピレンオキシド(16モル)ブロック付加物(a−2)を得た。(平均水酸基価:367mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量:0重量%、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量の総和:27重量%、数平均分子量:1241)
【0040】
(製造例3)
エチレンオキシドの使用量を1320g(30モル)とし、プロピレンオキシドの使用量を1160g(20モル)とした以外は製造例1と同様の操作を行い、ショ糖−エチレンオキシド(30モル)−プロピレンオキシド(20モル)ブロック付加物(a−3)を得た。(平均水酸基価:167mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量:47重量%、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量の総和:59重量%、数平均分子量:2753)
【0041】
(製造例4)
プロピレンオキシドに代えて、エチレンオキシド440g(10モル)とプロピレンオキシド580g(10モル)の混合物を用いた以外は製造例2と同様の操作を行い、ショ糖−(エチレンオキシド(10モル)/プロピレンオキシド(10モル))ランダム付加物(a−4)を得た。(平均水酸基価:341mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量:32重量%、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量の総和:47重量%、数平均分子量:1320)
【0042】
(製造例5)
ショ糖に代えてマルチトール344g(1モル)を用い、エチレンオキシドの使用量を440g(10モル)、プロピレンオキシドの使用量を580g(10モル)とした以外は製造例1と同様の操作を行い、マルチトール−エチレンオキシド(10モル)−プロピレンオキシド(10モル)ブロック付加物(a−5)を得た。(平均水酸基価:342mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量:32重量%、糖類残基の含有量とオキシエチレン基の含有量の総和:58重量%、数平均分子量:1315)
【0043】
(平均水酸基価の測定方法)
JIS K0070に準じて測定した。
【0044】
(数平均分子量の測定方法)
下記条件でGPC法にて測定し、ポリエチレン換算の数平均分子量を算出した。
[測定条件]
測定サンプル:1重量%テトラヒドロフラン溶液
装置:LC−10AD(商品名、島津製作所社製)
カラム:GPC KF−801、GPC KF−801およびGPC KF−803(
商品名、いずれも昭和電工社製)を直列に接続したもの
移動相:テトラヒドロフラン(流量:0.8mL/min)
カラム温度:25℃
【0045】
また、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)以外の原料として、下記のものを使用した。
・樹脂(B)
(b−1)低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックLL UF442、日本ポリエチレン社製)
・その他の成分(C)
(c−1)ラウリル硫酸ナトリウム(商品名:エマール0、花王社製)60gとラウリルモノエタノールアミド40gとをメタノール30gに溶解し、メタノールを留去した混合物
(c−2)アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名:ライポンPS−230、ライオン社製)80gとラウリルジエタノールアミン20gとをメタノール50gに溶解し、メタノールを留去した混合物
【0046】
(実施例1〜7)
表1に記載の割合で、糖類のアルキレンオキシド付加物(A)および樹脂(B)を開放型2軸混錬機を用いて150℃で10分間混錬した。得られた混練物を、金型(直径10cm、厚み1mm)にて150℃でプレス成型を行うことにより、試験片を作製した。この試験片を用いて、下記の方法により親水性を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(親水性)
得られた試験片を恒温恒湿器(設定温度:60℃、設定湿度:70%RH)で所定期間(1日間、14日間または30日間)静置した。この試験片を用いて、JIS R3257に準じて接線法による接触角(度)を測定した。
【0048】
(比較例1および2)
糖類のアルキレンオキシド付加物(A)を用いず、表1に記載のその他の成分(c−1)または(C−2)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から明らかなとおり、本発明の親水化剤は、長期にわたって親水性を維持することができる。一方、比較例1および2のように糖類のアルキレンオキシド付加物(A)を用いない場合は、短期間で親水性が大きく低下することがわかる。