(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の結合端部を有した第1分割ケースと、該第1の結合端部に対応する第2の結合端部を有した第2分割ケースとから構成され内部に空気流路の形成される空調ケースを備えた車両用空調装置において、
前記第1の結合端部と前記第2の結合端部とを連結する連結構造を有し、
前記連結構造は、前記第1分割ケースに形成され前記第2分割ケース側に向かって延在した係止枠体と、前記第2分割ケースに形成され前記係止枠体が係合される爪部とからなると共に、
前記第1分割ケースと前記第2分割ケースの外壁に跨って設けられる外装部材を備え、
前記外装部材には、前記空調ケースの外壁表面に対して所定間隔離れた固定部を有し、
前記第1分割ケース又は前記第2分割ケースの前記結合端部近傍には前記外壁表面から前記固定部に向かって突出する突出部を有し、
前記突出部を挟んで前記外装部材と対向する位置に、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとに跨るように第2の外装部材が設けられ、
前記第2の外装部材は前記外壁表面と所定間隔離れた第2の固定部を有し、前記固定部と前記第2の固定部とが締結部材により前記突出部に共締めされることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両用空調装置の軽量化を目的として、空調ケースにおけるケース壁を薄くしたり、左右に分割される分割ケース同士の締結をねじ締結から爪構造として係合させ互いに連結することが行われている。
【0006】
しかしながら、上述したような車両用空調装置においてケース壁を薄くした場合、空調ケースを成形した際にケース壁が内側に向かって撓んでしまい、爪構造による連結だけでは左右の分割ケース同士を強固に締結することができないため、前記空調ケースの撓みの補正が困難になってしまった。これにより、左右の分割ケース同士を結合させた結合部位に隙間が生じ、内部の空気が該隙間を通じて外部へと漏れてしまうと共に異音が発生してしまう場合がある。
【0007】
また、空調ケースの外部へ送風する送風口近傍において、該送風口の開閉を行なうドアとの当接部(シール面)が形成されている場合、前記空調ケースの撓みに伴ってシール面も撓んでしまうため、前記ドアが前記シール面から離れた微小開度の際、前記ドアと前記シール面との間隔が車両幅方向において異なってしまう。これにより、上述した隙間を通過する送風量にばらつきが生じ、最も大きく撓んでいる幅方向中央において送風の流速が速くなることで異音が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、分割構造の空調ケースを確実に連結することで、外部への空気の漏れ及び異音の発生を防止することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、第1の結合端部を有した第1分割ケースと、第1の結合端部に対応する第2の結合端部を有した第2分割ケースとから構成され内部に空気流路の形成される空調ケースを備えた車両用空調装置において、
第1の結合端部と第2の結合端部とを連結する連結構造を有し、連結構造は、第1分割ケースに形成され第2分割ケース側に向かって延在した係止枠体と、第2分割ケースに形成され係止枠体が係合される爪部とからなると共に、
第1分割ケースと第2分割ケースの外壁に跨って設けられる外装部材を備え、
外装部材には、空調ケースの外壁表面に対して所定間隔離れた固定部を有し、
第1分割ケース又は第2分割ケースの結合端部近傍には外壁表面から固定部に向かって突出する突出部を有し、
突出部を挟んで外装部材と対向する位置に、第1分割ケースと第2分割ケースとに跨るように第2の外装部材が設けられ、
第2の外装部材は外壁表面と所定間隔離れた第2の固定部を有し、固定部と第2の固定部とが締結部材により
突出部に共締めされることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、分割可能な空調ケースを有した車両用空調装置において、第1分割ケースの第1の結合端部と第2分割ケースの第2の結合端部とを連結する連結構造を有すると共に、第1分割ケースと第2分割ケースの外壁に跨って設けられる外装部材を備え、この外装部材には、空調ケースの外壁表面に対して所定間隔離れた固定部を有し、結合端部近傍において外壁表面から固定部に向かって突出した突出部と固定部とが締結部材により締結される。
【0011】
従って、第1分割ケースと第2分割ケースとが連結構造で連結された状態において、第1及び第2分割ケースの外壁に内部側へ向かって反りが生じている場合でも、締結部材の締結作用下に突出部が外装部材の固定部側に向かって引き上げられるため、空調ケースに生じた反りを好適に調節することができる。
【0012】
その結果、第1分割ケースにおける第1の結合端部と第2分割ケースにおける第2の結合端部との間に反りに起因した隙間が生じてしまうことが防止され、該隙間を通じて空調ケース内からの空気の漏れや異音の発生が防止されると同時に、外装部材を介して第1分割ケースと第2分割ケースとを確実に連結することができる。
【0013】
ここで、空調ケースの外壁表面と固定部とを所定間隔離すことで、例えば、締結部材の締結時に内部側への反りを空調ケースの外側まで反らせることが可能な調整代を確保している。
【0014】
また、空調ケースには、第1分割ケースと第2分割ケースとに跨って形成され内部と外部とを連通する開口部と、内部に設けられ開口部を開閉するドアと、を有し、外装部材が、開口部近傍となる外壁に設けられ、開口部に臨む外壁の空気流路側にドアと当接するシール面を形成するとよい。
【0015】
これにより、空調ケースにおける外壁の反りを調節することで同時にシール面の反りを調節することが可能となるため、例えば、ドアが微小開度の際にドアとシール面との間隔のばらつきが生じることが防止され、間隔のばらつきに起因した異音の発生を防止できると共に、送風量、温度バランスのばらつきを抑制することで安定した送風温度で車室内への送風を行うことが可能となる。
【0016】
この際、外壁は必ずしも平坦にする必要はなく、車両幅方向の送風量や温度バランスの状況によっては、結合部位から送風の漏れる隙間が生じることのない範囲内において、空調ケースの内部側への反りをあえて残したり、反対に、空調ケースの外側へ反るように引き上げるようにしてもよい。
【0017】
さらに、外装部材は、開口部に臨むように設けられ開口部を分割する開口分割部材とすることにより、開口分割部材を利用して空調ケースの外壁に生じる反りを調節できるため、反り調節手段を別に設ける場合と比較し、製造コスト並びに部品点数の増加を回避することができ好適である。
【0018】
さらにまた、空調ケースは、開口部から第1及び第2の結合端部の延在方向に沿って所定間隔離れた第2の開口部を有し、開口部と第2の開口部との間となる外壁に突出部
を形
成するとよい。
【0019】
これにより、空調ケースの突出部を2つの第1及び第2の外装部材と締結部材によって共締めすることにより、単一の外装部材を利用して空調ケースを引き上げて反りの調節を行う場合と比較し、より一層強力に空調ケースの外装部材側への引き上げを行って反りの調節を行うことが可能となる。
【0020】
またさらに、外装部材を、空調ケースの車両幅方向端部において固定することにより、空調ケースに対する外装部材の固定をより強固なものとし、外壁の反った空調ケースをより強力に外装部材側へと引き上げることが可能となる。
【0021】
また、突出部に隣接して係止枠体又は爪部を形成し、突出部の高さを、係止枠体又は爪部よりも高く形成するとよい。これにより、係止枠体と爪部とが係合された状態で、第1又は第2分割ケースに設けられた突出部を外装部材側へと引き上げることで、突出部の設けられていない他方の分割ケースを同時に引き上げることが可能となるため、単一の引き上げ手段によって第1及び第2分割ケースの反りを調節することができ好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0023】
すなわち、分割可能な空調ケースを有した車両用空調装置において、第1分割ケースの第1の結合端部と第2分割ケースの第2の結合端部とを連結する連結構造を有すると共に、第1分割ケースと第2分割ケースの外壁に跨って設けられる外装部材を備え、この外装部材には、空調ケースの外壁表面に対して所定間隔離れた固定部を有し、結合端部近傍において外壁表面から固定部に向かって突出した突出部と固定部とが締結部材により締結される。従って、第1分割ケースと第2分割ケースとが連結構造で連結された状態において、空調ケースの外壁に対して内部側に向かって反りが生じている場合でも、締結部材の締結作用下に突出部が外装部材の固定部側へ向かって引き上げられるため、外装部材を利用して空調ケースに生じた反りを好適に調節することができる。
【0024】
その結果、第1分割ケースにおける第1の結合端部と第2分割ケースにおける第2の結合端部との間に反りに起因した隙間が生じてしまうことが防止され、該隙間を通じて空調ケース内からの空気の漏れや異音の発生が防止されると同時に、外装部材を介して第1分割ケースと第2分割ケースとを確実に連結することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。
【0027】
この車両用空調装置10は、
図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、該空調ケース12の内部に配設され前記空気を冷却するエバポレータ14と、該空気を加熱するヒータコア16と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換えるドア機構18とを有する。なお、ドア機構18は、図示しない駆動部の駆動作用下にそれぞれ回動動作する。
【0028】
空調ケース12は、例えば、略対称形状で車両の幅方向(
図3中、矢印A方向)に分割可能な第1及び第2分割ケース20、22から構成され、該第1及び第2分割ケース20、22は、それぞれ樹脂製材料で成形されることで所定厚さを有した箱状に形成される。
【0029】
この空調ケース12の上方(矢印B方向)には、乗員の顔近傍に送風を行うベント送風口(開口部)24と、該ベント送風口24と隣接し車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うデフロスタ送風口(開口部)26とが開口している。このベント送風口24及びデフロスタ送風口26は、
図4に示されるように、空調ケース12の幅方向(矢印A方向)となる第1分割ケース20と第2分割ケース22とに跨るように開口すると共に、前記ベント送風口24は鉛直上方(矢印B方向)に開口し、前記デフロスタ送風口26は、前記ベント送風口24に対して車両後方側(矢印D方向)に所定角度だけ傾斜した斜め方向に開口している。
【0030】
一方、空調ケース12の内部において、後方側(矢印D方向)には下方(矢印C方向)に向かって開口して乗員の足元近傍に送風を行うフット送風口28が形成される。
【0031】
第1分割ケース20の上部には、
図1〜
図4に示されるように、ベント送風口24とデフロスタ送風口26との間に、幅方向(矢印A方向)に沿って延在する第1ケース壁(外壁表面)30が形成され、その第2分割ケース22側となる結合端部20a近傍には固定用ボス(突出部)32が形成される。換言すれば、固定用ボス32は、第1分割ケース20と第2分割ケース22とが組み合わされた空調ケース12の幅方向中央となる位置に形成される。
【0032】
この固定用ボス32は、第1ケース壁30に対して立設し鉛直上方向(矢印B方向)に向かって所定高さだけ突出し、ねじ穴34を中心に有した断面円形状の本体部36と、該本体部36の外周面から径方向外側、且つ、第1分割ケース20の幅方向(矢印A方向)へと延在した一組のリブ38とからなる。また、固定用ボス32は、第1ケース壁30に対する本体部36の高さH1がリブ38の高さH2よりも高く形成されている(H1>H2)。
【0033】
さらに、第1分割ケース20の上部には、
図3及び
図4に示されるように、固定用ボス32よりさらに結合端部20a側に断面L字状の係止枠体40が設けられ、該係止枠体40は前記第1分割ケース20の第1ケース壁30から鉛直上方(矢印B方向)へと延在した後、略水平方向に延在し前記結合端部20aより前記第2分割ケース22側へと所定長さだけ突出するように形成される。この係止枠体40の水平部分には矩形状の係合孔42(
図3参照)が形成され、第2分割ケース22に設けられた後述する爪部46が係合される。
【0034】
一方、第2分割ケース22の上部には、ベント送風口24とデフロスタ送風口26との間に、幅方向(矢印A方向)に沿って延在し第1ケース壁30と一直線状となる第2ケース壁(外壁表面)44が形成され、この第2ケース壁44には、第1分割ケース20側となる結合端部22a近傍に、上方(矢印B方向)に向かって突出した断面三角形状の爪部46が形成される。
【0035】
そして、第1分割ケース20と第2分割ケース22とが連結される際、前記爪部46の上端部が第1分割ケース20の係止枠体40の係合孔42へと係合されることで、互いに結合端部20a、22aが結合された状態で幅方向への相対移動が規制された状態となり連結される(
図3参照)。
【0036】
この空調ケース12の上部には、
図1〜
図2Bに示されるように、ベント送風口24に臨む位置に装着される第1外装部材48と、デフロスタ送風口26に臨むように装着される第2外装部材50とが設けられる。
【0037】
第1外装部材48は、例えば、樹脂製材料から形成され、空調ケース12の幅方向(矢印A方向)に沿って延在し、ベント送風口24に臨む第1開口部52を有している。この第1開口部52は、幅方向に長尺となる長方形状に開口している。
【0038】
そして、
図2B及び
図4に示されるように、第1外装部材48の幅方向に沿った両端部にそれぞれ設けられた第1フック54が第1及び第2分割ケース20、22の側壁(外壁)20b、22bにそれぞれ設けられた第1爪部56へとそれぞれ係合されることで、ベント送風口24と第1開口部52とが鉛直方向に一直線状となり連通した状態で前記第1外装部材48が前記空調ケース12の上部へと固定される(
図1参照)。換言すれば、この第1外装部材48は、ベント送風口24を分割する開口分割部材として機能する。
【0039】
また、第1外装部材48には、その幅方向略中央となり第2外装部材50側となる後方(矢印D方向)に向かって突出した第1固定用フランジ(固定部)58が形成される。この第1固定用フランジ58は、例えば、所定厚さを有した断面矩形状に形成され、第1開口部52の開口方向と略直交するように略水平方向に延在し、その中央には後述する固定ねじ(締結部材)74の挿通される挿通孔60が形成される。
【0040】
そして、第1固定用フランジ58は、第1外装部材48を空調ケース12の上部へと装着した際、固定用ボス32の上方(矢印B方向)となり、且つ、挿通孔60がねじ穴34と一直線状となるように配置される。
【0041】
第2外装部材50は、第1外装部材48と同様に樹脂製材料から形成され、空調ケース12の幅方向(矢印A方向)に沿って延在し、デフロスタ送風口26に臨む第2開口部62を有している。この第2開口部62は、幅方向に長尺となる長方形状に開口し、例えば、複数の仕切壁64(
図4参照)によって4分割されている。換言すれば、この第2外装部材50は、デフロスタ送風口26を分割する開口分割部材として機能する。
【0042】
そして、
図2B及び
図4に示されるように、第2外装部材50の幅方向に沿った両側部にそれぞれ設けられた第2フック66が第1及び第2分割ケース20、22の側壁20b、22bにそれぞれ設けられた第2爪部68へとそれぞれ係合されることで、デフロスタ送風口26と第2開口部62とが後方へと所定角度だけ傾斜した斜め方向に開口した状態で空調ケース12の上部へと固定される。
【0043】
また、第2外装部材50には、その幅方向略中央となり第1外装部材48側となる前方(矢印E方向)に向かって突出した第2固定用フランジ(固定部)70が形成される。この第2固定用フランジ70は、
図4に示されるように、例えば、断面U字状に形成され、前記第2外装部材50が空調ケース12へと装着された状態で略水平方向に突出し、その中央には後述する固定ねじ74の挿通される挿通溝72が形成される。この挿通溝72は、第2外装部材50から離れる方向、すなわち、第1外装部材48側(矢印E方向)が開口している。
【0044】
そして、
図3に示されるように、空調ケース12に対して第1及び第2外装部材48、50が装着された際、第2固定用フランジ70が固定用ボス32におけるリブ38の上端部に当接し、その挿通溝72に固定用ボス32の本体部36が挿通された状態で、該第2固定用フランジ70の上面に第1固定用フランジ58が当接するように配置される。
【0045】
すなわち、第2固定用フランジ70は、第1分割ケース20の固定用ボス32のリブ38と第1外装部材48の第1固定用フランジ58との間となるように配置され、且つ、前記固定用ボス32、挿通溝72、ねじ穴34が鉛直方向に沿って一直線状となるように配置された状態で、挿通孔60、挿通溝72に挿通させた固定ねじ74がねじ穴34へと螺合されることで、前記固定ねじ74の頭部と固定用ボス32との間に第1及び第2固定用フランジ58、70が挟持され保持される。
【0046】
また、
図1に示されるように、空調ケース12の内部には、前方側(矢印E方向)にエバポレータ14が収納されると共に、該エバポレータ14の下流側、すなわち、後方側(矢印D方向)にヒータコア16が収納される。そして、空調ケース12には、エバポレータ14の上流側となる位置に接続された図示しないダクトを通じて送風機から空気が導入され、前記エバポレータ14を通過することで空気が冷却され、一方、ヒータコア16を通過することで前記空気が加熱される。
【0047】
さらに、空調ケース12における通路は、エバポレータ14の配置される冷風通路76と、該冷風通路76の下流側に形成されヒータコア16の配置される温風通路78と、前記冷風通路76の下流側において前記ヒータコア16を迂回するバイパス通路80とを含み、前記冷風通路76は、空調ケース12の略中央部において温風開口82を介して温風通路78と接続され、冷風開口84を介してバイパス通路80と接続されている。
【0048】
ドア機構18は、エバポレータ14とヒータコア16との間に設けられ温風開口82を開閉する第1エアミックスドア86と、前記エバポレータ14の下流側においてバイパス通路80に設けられ冷風開口84を開閉する第2エアミックスドア88と、ベント送風口24及びデフロスタ送風口26の送風状態を切り替える切替ドア90と、前記ベント送風口24から車室内への空気の送風量を調整するベントドア92と、温風通路78からフット送風口28への送風状態を調整するフットドア94とを有する。
【0049】
第1エアミックスドア86は、例えば、回転軸を中心として径方向外側へ互いに離れる方向に遮蔽板が延在したバタフライドアであり、その回転軸の両端部が空調ケース12の外壁部にそれぞれ回転自在に支持される。
【0050】
そして、第1エアミックスドア86は、例えば、空調ケース12の外壁部から突出した回転軸の一端部に図示しない駆動源と接続され、その駆動力が伝達されることで所定角度だけ回動する。
【0051】
この第1エアミックスドア86は、その上端部及び下端部が空調ケース12の内壁部に当接した全閉状態から、前記上端部がエバポレータ14側、前記下端部がヒータコア16側に接近するように回動する。これにより、空調ケース12内において温風開口82が開閉し、エバポレータ14の下流側の冷風通路76とヒータコア16の上流側となる温風通路78との連通状態が切り換えられ、前記冷風通路76から前記温風通路78へと所定流量で空気が流通する。
【0052】
第2エアミックスドア88は、例えば、第1エアミックスドア86と同様に、回転軸を中心として互いに離れる方向に2枚の遮蔽板が延在したバタフライドアであり、空調ケース12の内部において前記第1エアミックスドア86の上方(矢印B方向)に設けられる。
【0053】
そして、第2エアミックスドア88は、空調ケース12の幅方向に沿って延在する回転軸の両端部が該空調ケース12の外壁部にそれぞれ回転自在に支持されると共に、その一端部に図示しない駆動源が接続され、その回転駆動力が伝達されることで所定角度だけ回動する。
【0054】
これにより、空調ケース12内において、冷風開口84を開閉することで
図1に示されるエバポレータ14の下流側に形成された冷風通路76とヒータコア16を迂回するバイパス通路80との連通状態が切り換えられ、前記冷風通路76から前記バイパス通路80へと所定流量で空気が流通する。
【0055】
切替ドア90は、空調ケース12に対して軸支された回転軸に対して径方向外側に一枚の遮蔽板が延在した片持ち構造で形成され、その回動作用下にベント送風口24とデフロスタ送風口26の開口状態を切り替えている。
【0056】
ベントドア92は、切替ドア90とベント送風口24との間に設けられ、その回動作用下に前記ベント送風口24を通じて車室内へと供給される送風量を調整している。また、フットドア94は、フット送風口28と連通したフット送風通路の開口部に設けられ、その回動作用下に前記フット送風口28とヒータコア16の下流側との連通状態を切り替える。
【0057】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に第1及び第2分割ケース20、22からなる空調ケース12の上部に第1及び第2外装部材48、50を組み付ける場合について説明する。
【0058】
先ず、第1分割ケース20と第2分割ケース22とを組み付ける際、お互いの開口した結合端部20a、22aを合わせるように接近させ、該結合端部20a、22aを結合させると同時に前記第1分割ケース20の係止枠体40を前記第2分割ケース22の爪部46へと係合させる。これにより、第1分割ケース20と第2分割ケース22とが互いの開口した結合端部20a、22a同士を閉塞するように結合された状態で固定される。
【0059】
次に、第1及び第2分割ケース20、22が連結された空調ケース12を固定用ボス32が上方となるように設置した状態で、先ず、第2外装部材50をデフロスタ送風口26の上部に当接させ、その第2フック66をそれぞれ空調ケース12の第2爪部68へと係合させると共に、挿通溝72に本体部36を挿通させる。
【0060】
最後に、第1外装部材48を空調ケース12のベント送風口24の上部に当接させ、その第1フック54をそれぞれ空調ケース12の第1爪部56へと係合させる。これにより、第1固定用フランジ58が第2固定用フランジ70の上面に当接した状態となる。
【0061】
なお、第1分割ケース20(第2分割ケース22)の第1ケース壁30(第2ケース壁44)が、その成形時に生じた反りによって下方へと撓んでいる場合、第1及び第2固定用フランジ58、70と固定用ボス32とが当接せずに鉛直方向(矢印B、C方向)に所定間隔離れた状態となる(
図3中、二点鎖線形状参照)。
【0062】
そして、第1固定用フランジ58の挿通孔60に固定ねじ74を挿通させ、固定用ボス32のねじ穴34へと螺合させ螺回させることで、前記固定ねじ74の頭部が前記第1固定用フランジ58の上面に当接した状態で、前記固定用ボス32が前記第1固定用フランジ58側、すなわち、上方(矢印B方向)へと引き上げられる。この固定用ボス32における本体部36の上面が第1固定用フランジ58の下面に当接することで、第1分割ケース20の第1ケース壁30が略水平に保持された状態となり、同時に、係止枠体40と爪部46とを介して連結された第2ケース壁44も一体的に上方へと引き上げられ、略水平に保持された状態となる。
【0063】
この際、固定用ボス32のリブ38が、第2固定用フランジ70の下面に当接する位置まで引き上げられることで第2ケース壁44が略平坦状に維持される。
【0064】
これにより、空調ケース12に対する第1及び第2外装部材48、50の組み付けが完了する。
【0065】
次に、上述したように組み付けられた車両用空調装置10の動作並びに作用効果について説明する。ここでは、車室内へ冷風を供給する冷房運転を行う場合について説明する。
【0066】
先ず、図示しない乗員の操作に基づいて、第1エアミックスドア86が全閉状態となり冷風通路76と温風通路78との連通が遮断され、且つ、第2エアミックスドア88が全開状態となり、前記冷風通路76とバイパス通路80とが冷風開口84を通じて連通した状態となる。また、
図1に示される切替ドア90がデフロスタ送風口26側へと回動し、ベント送風口24とバイパス通路80とを連通させた状態とする。
【0067】
これにより、図示しない送風機から空調ケース12へと供給されエバポレータ14によって冷却された空気が、冷風通路76からバイパス通路80を通じて開口したベント送風口24へと流通し、車室内における乗員の顔近傍へと送風される。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、幅方向に分割可能な空調ケース12を有した車両用空調装置10において、その第1及び第2分割ケース20、22の上部に跨るように第1及び第2外装部材48、50が装着され、前記第1分割ケース20の第1固定用フランジ58と、前記第2分割ケース22の第2固定用フランジ70とを挿通させた固定ねじ74を、第1分割ケース20と第2分割ケース22とを連結させた状態で、第1及び第2固定用フランジ58、70の下方に配置された固定用ボス32のねじ穴34へと螺合させることで、前記第1及び第2分割ケース20、22の第1及び第2ケース壁30、44を前記第1及び第2外装部材48、50側となる上方へと引き上げて固定することが可能となる。
【0069】
従って、空調ケース12の第1及び第2ケース壁30、44が薄肉化によって下方へと反ってしまっている場合でも、第1及び第2外装部材48、50とねじ締結して組み付けることで、前記空調ケース12における第1及び第2ケース壁30、44の幅方向中央部を上方へと引き上げ前記第1及び第2ケース壁30、44の反りを好適に調節することができる。
【0070】
その結果、第1分割ケース20の結合端部20aと第2分割ケース22の結合端部22aとの間に反りに起因した隙間が生じてしまうことが防止され、該隙間を通じて空調ケース12内からの空気の漏れが防止されると同時に、第1及び第2外装部材48、50を介して第1分割ケース20と第2分割ケース22とを確実に連結することができる。
【0071】
また、空調ケース12の第1及び第2ケース壁30、44と第1及び第2外装部材48、50の第1及び第2固定用フランジ58、70とは、上下方向(矢印B、C方向)に所定間隔離れるように配置されているため、前記第1及び第2固定用フランジ58、70に対する前記第1及び第2ケース壁30、44(固定用ボス32)の引き上げ度合を自在に調整することができる。
【0072】
換言すれば、空調ケース12の第1及び第2ケース壁30、44と第1及び第2固定用フランジ58、70とを所定間隔離すことで、例えば、固定ねじ74の締結時に内部側(下方)への反りを前記空調ケース12の外側(上方)まで反らせることが可能な調整代を確保している。
【0073】
さらに、薄肉化で反ってしまった第1及び第2分割ケース20、22の内側にベントドア92や切替ドア90のシール面がある場合、前記第1及び第2分割ケース20、22の上部の反りを調節することで、前記シール面の反りを調節することが可能となる。そのため、例えば、切替ドア90やベントドア92の全閉時にシール面に対して確実に当接させることができ空気の漏れを防止できると同時に、該空気の漏れに起因した異音の発生を防止することができる。
【0074】
また、切替ドア90やベントドア92がシール面から離れた微小開度の場合でも、該シール面との間に生じる隙間が、空調ケース12の幅方向において略一定となるため流速が速い場合でも異音の発生が防止でき、しかも、送風量のばらつきを抑制できるため安定した送風温度で車室内への送風を行うことが可能となる。
【0075】
なお、第1及び第2ケース壁30、44は、上述したように必ずしも略平坦状にする必要はなく、空調ケース12の幅方向における送風量や温度バランスの状況によっては、結合部位から送風の漏れる隙間が生じることのない範囲内において、前記空調ケース12の内部側への反りをあえて残したり、反対に、前記空調ケース12の外側へ反るようにさらに引き上げるようにしてもよい。
【0076】
さらにまた、ベント送風口24に装着される第1外装部材48、デフロスタ送風口26に装着される第2外装部材50を利用して空調ケース12の上部に生じる反りを調節できるため、反り調節手段を別に設ける場合と比較し、製造コスト並びに部品点数の増加を回避することができ好適である。
【0077】
またさらに、空調ケース12の上部を2つの第1及び第2外装部材48、50と固定ねじ74によって共締めすることにより、単一の外装部材を利用して前記空調ケース12の上部を引き上げて反りの調節を行う場合と比較し、より一層強力に前記空調ケース12の第1及び第2ケース壁30、44の引き上げを行うことができる。
【0078】
また、第1及び第2外装部材48、50は、その幅方向両端部に設けられた第1及び第2フック54、66によって空調ケース12に対して幅方向外側で固定することにより、前記第1及び第2外装部材48、50の前記空調ケース12に対する固定をより強固とし、第1及び第2ケース壁30、44の反った前記空調ケース12の上方(矢印B方向)への引き上げをより強力とすることができる。
【0079】
さらに、第1分割ケース20と第2分割ケース22とを係止枠体40と爪部46との係合作用下に幅方向に連結することで、前記第1分割ケース20の固定用ボス32が第1及び第2外装部材48、50側(矢印B方向)へと引き上げられるのに伴って、固定用ボス32の設けられていない前記第2分割ケース22も共に引き上げられるため、単一の引き上げ手段によって前記第1及び第2分割ケース20、22の下方(矢印C方向)への反りを調節することができ好適である。
【0080】
さらにまた、
図3に示されるように、第1ケース壁30からの固定用ボス32の高さH2を、係止枠体40及び第2分割ケース22の爪部46の高さH3よりもそれぞれ高くなるように設定し(H2>H3)、且つ、前記固定用ボス32に隣接するように前記係止枠体40及び爪部46を設けることで、第1及び第2外装部材48、50側へと固定用ボス32が引き上げられる際、該固定用ボス32を有した第1分割ケース20と共に、該第1分割ケース20に連結された第2分割ケース22も一体的に引き上げることが可能となる。
【0081】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。