特許第6559529号(P6559529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559529
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   E02F9/26 B
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-198854(P2015-198854)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-71942(P2017-71942A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中城 健太
(72)【発明者】
【氏名】辻村 舜
(72)【発明者】
【氏名】平出 博司
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−304441(JP,A)
【文献】 特開2010−163995(JP,A)
【文献】 特開2014−129676(JP,A)
【文献】 特開2014−190091(JP,A)
【文献】 特開平10−001968(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0128868(US,A1)
【文献】 特開2002−146846(JP,A)
【文献】 特開2009−173195(JP,A)
【文献】 特開2010−018141(JP,A)
【文献】 特開平10−018355(JP,A)
【文献】 特開平10−060948(JP,A)
【文献】 特開2014−227676(JP,A)
【文献】 特開2000−027243(JP,A)
【文献】 特開平09−151491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室と、前記運転室の前方に配置され、車体に対して上下方向へ回動するブーム、前記ブームの先端に回動可能に設けられて前記車体に対して上下方向へ回動するアーム、及び前記アームの先端に回動可能に装着されたアタッチメントを含む作業装置と、圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油により、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御するバルブ装置と、前記バルブ装置を切換えるためのパイロット圧油を吐出するパイロットポンプと、前記パイロットポンプから前記バルブ装置へ供給されるパイロット圧油の圧力を調整し、前記作業装置を操作する操作装置と、を備えた建設機械において、
前記運転室内の前側に設けられ、作業に関する情報を示す作業情報を表示する透過型の表示装置と、
前記アタッチメントの位置を取得する位置取得器と、
作業対象に対して前記アタッチメントで行う掘削作業及び均し作業のいずれかの状態を検出する作業状態検出装置と、
前記位置取得器によって取得された前記アタッチメントの位置に基づいて、前記表示装置のうち前記運転室内から見て前記アタッチメントの周辺に前記作業情報を表示する制御を行う表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記作業状態検出装置によって前記掘削作業の状態が検出されたとき、前記作業情報の表示を、予め設定された文字による表示に切換え、前記作業状態検出装置によって前記均し作業の状態が検出されたとき、前記作業情報の表示を、予め設定された色を含む表示に切換える表示切換部を有し、
前記作業状態検出装置は、
前記操作装置によって調整された前記ブーム側のパイロット圧油の圧力を検出するブーム用圧力検出器と、
前記操作装置によって調整された前記アーム側のパイロット圧油の圧力を検出するアーム用圧力検出器と、
前記ブーム用圧力検出器及び前記アーム用圧力検出器によって検出された各パイロット
圧油の圧力に基づいて、前記作業装置の作業状態を判定する作業状態判定部と、から構成され、
前記作業状態判定部は、
前記アーム用圧力検出器によって検出された前記アーム側のパイロット圧油の圧力が所定の第1閾値以上であり、かつ前記ブーム用圧力検出器によって検出された前記ブーム側のパイロット圧油の圧力が所定の第2閾値未満であるとき、前記作業装置の作業状態が前記均し作業の状態であると判定する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、特に、運転室内に設けられた表示装置に各種の情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等に代表される建設機械の運転室内には、オペレータにとって必要な各種の情報を表示するための表示装置が備えられている。この表示装置は、従来より、オペレータの前方視界から離れたスペースに配置されるので、オペレータが前方の作業装置を見ながら作業を行っている最中に、表示装置に表示された情報を確認する場合には、視点を前方位置から表示装置の位置まで動かす必要があり、建設機械の作業効率が低下することが懸念されていた。
【0003】
そこで、作業中のオペレータの視点の移動を少なくするために、オペレータに提供する情報を運転室の前方景色に重ねて表示するようにした装置が提案されている。この種の装置の従来技術の1つとして、本体部に対する作業装置の位置情報を検出するストロークセンサと、実像表示部と、コンバイナと、表示コントローラとを備え、表示コントローラは、作業装置の位置情報に基づいて、作業支援情報のコンバイナの表面に沿った表示位置及び運転室の前方への奥行き表示位置を制御する建設機械の表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−129676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された従来技術は、作業支援情報の投影像を運転室内から見て作業装置の周囲に表示できるので、作業中のオペレータの視点の移動を少なくすることができるが、作業支援情報が文字によって表示されている。そのため、作業装置を用いて地面を均す均し作業のように、通常の掘削作業よりも高い集中力が要求される作業が行われているときには、オペレータは、作業装置のアタッチメントを注視しているので、作業装置の周囲に映し出された文字から必要な情報を容易に把握することができず、オペレータに対する利便性が低いことが問題になっている。特に、上述のような高い集中力が要求される作業中に、運転室内から見て作業装置の周囲に文字が表示されると、オペレータはその文字を読むことに気を取られることにより、却って作業支援情報の表示が煩雑になる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、オペレータが集中力を要する作業を行っても、必要な情報を容易に把握することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械は、運転室と、前記運転室の前方に配置され、車体に対して上下方向へ回動するブーム、前記ブームの先端に回動可能に設けられて前記車体に対して上下方向へ回動するアーム、及び前記アームの先端に回動可能に装着されたアタッチメントを含む作業装置と、圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油により、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御するバルブ装置と、前記バルブ装置を切換えるためのパイロット圧油を吐出するパイロットポンプと、前記パイロットポンプから前記バルブ装置へ供給されるパイロット圧油の圧力を調整し、前記作業装置を操作する操作装置と、を備えた建設機械において、前記運転室内の前側に設けられ、作業に関する情報を示す作業情報を表示する透過型の表示装置と、前記アタッチメントの位置を取得する位置取得器と、作業対象に対して前記アタッチメントで行う掘削作業及び均し作業のいずれかの状態を検出する作業状態検出装置と、前記位置取得器によって取得された前記アタッチメントの位置に基づいて、前記表示装置のうち前記運転室内から見て前記アタッチメントの周辺に前記作業情報を表示する制御を行う表示制御部とを備え、前記表示制御部は、前記作業状態検出装置によって前記掘削作業の状態が検出されたとき、前記作業情報の表示を、予め設定された文字による表示に切換え、前記作業状態検出装置によって前記均し作業の状態が検出されたとき、前記作業情報の表示を、予め設定された色を含む表示に切換える表示切換部を有し、前記作業状態検出装置は、前記操作装置によって調整された前記ブーム側のパイロット圧油の圧力を検出するブーム用圧力検出器と、前記操作装置によって調整された前記アーム側のパイロット圧油の圧力を検出するアーム用圧力検出器と、前記ブーム用圧力検出器及び前記アーム用圧力検出器によって検出された各パイロット圧油の圧力に基づいて、前記作業装置の作業状態を判定する作業状態判定部と、から構成され、前記作業状態判定部は、前記アーム用圧力検出器によって検出された前記アーム側のパイロット圧油の圧力が所定の第1閾値以上であり、かつ前記ブーム用圧力検出器によって検出された前記ブーム側のパイロット圧油の圧力が所定の第2閾値未満であるとき、前記作業装置の作業状態が前記均し作業の状態であると判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、オペレータが集中力を要する作業を行っても、必要な情報を容易に把握することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る建設機械の一実施形態として挙げた油圧ショベルの構成を示す全体図である。
図2図1に示す油圧ショベルの旋回体の内部の構成を説明する図である。
図3図2に示すコントローラの主な機能を示す機能ブロック図である。
図4図3に示すバケット位置演算部によるバケットの位置の演算処理を説明する図である。
図5図3に示す作業状態判定部による作業状態の判定処理を説明する図である。
図6図3に示す表示装置の表示例を説明する図であり、(a)図は文字による表示を示す図、(b)図は文字に色を付加した表示を示す図、(c)図はカラーバーの表示を示す図である。
図7】本実施形態に係るコントローラによる作業情報の表示の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建設機械を実施するための形態を図に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰返しの説明は省略する。また、以下の実施形態では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明を原則として繰返さない。
【0011】
本発明に係る建設機械の一実施形態は、例えば、図1に示す油圧ショベル1から構成されている。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2上に旋回フレーム3aを介して旋回可能に設けられた旋回体3と、この旋回体3の前方に取付けられ、上下方向に回動して作業を行う作業装置としてのフロント作業機4とを備えている。
【0012】
旋回体3は、前部に配置され、フロント作業機4を操作するオペレータが搭乗する運転室6と、後部に配置され、車体が傾倒しないように車体のバランスを保つカウンタウェイト7と、車体の動作全体を制御するための各種の情報の処理を行うコントローラ8(図2参照)と、運転室6内に設けられ、コントローラ8で処理された各種の情報を表示する表示装置9(図3参照)とを含んで構成されている。なお、旋回体3の内部の構成の詳細については後述する。
【0013】
フロント作業機4は、基端が旋回フレーム3aに回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に装着され、車体に対して上下方向へ回動するバケット4Cとを含んでいる。
【0014】
また、フロント作業機4は、旋回体3とブーム4Aとを接続し、伸縮することによりブーム4Aを回動させるブームシリンダ4aと、ブーム4Aとアーム4Bとを接続し、伸縮することによってアーム4Bを回動させるアームシリンダ4bと、アーム4Bとバケット4Cとを接続し、伸縮することによってバケット4Cを回動させるバケットシリンダ4cとを含んでいる。これらのブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、及びバケットシリンダ4cは、ブーム4A、アーム4B、及びバケット4Cをそれぞれ駆動する油圧アクチュエータを構成する。
【0015】
ブーム4Aの両端のうち旋回体3側の一端の回動中心には、ブーム4Aが上下方向に回動した角度を検出する角度センサ4A1が取付けられている。アーム4Bの両端のうちブーム4A側の一端の回動中心には、アーム4Bが回動した角度を検出する角度センサ4B1が取付けられている。バケット4Cの回動中心には、バケット4Cが回動した角度を検出する角度センサ4C1が取付けられている。
【0016】
コントローラ8は、例えば図示されないが、車体の動作全体を制御するための各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアから構成されている。
【0017】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD、もしくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAMに読出され、CPUの制御に従って動作することによりプログラム(ソフトウェア)とハードウェアとが協働して、コントローラ8の機能を実現する機能ブロックが構成される。なお、コントローラ8の機能構成の詳細については後述する。
【0018】
表示装置9は、例えば、運転室6の前面に形成されたフロントガラス6A(図6参照)の内側に配置され、このフロントガラス6Aと重ね合わせて設置された透過型の液晶ディスプレイや液晶モニタ等から構成されている。そして、表示装置9は、作業に関する情報を示す作業情報W(図6参照)として、例えば、バケット4Cにより掘削される予定の目標施工面(作業対象)からのバケット4Cの高さを示すバケット高さ情報、車体の燃費を示す燃費情報、車体の周囲に架線等の障害物や作業員が接近したり、あるいは車体の周囲の地形及び地質が急変化した場合に、その旨の警告を示す周囲警告情報、並びに車体の部品が破損等により故障した場合に、その旨の警告を示す車体警告情報を画面に表示する。なお、表示装置9の詳細な表示例については後述する。
【0019】
次に、このように構成された油圧ショベル1の旋回体3の内部の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図2に示すように、旋回体3は、原動機としてのエンジン11と、このエンジン11の燃料噴射量を調整するガバナ12と、エンジン11の出力軸に接続され、圧油を吐出する油圧ポンプ13と、後述のバルブ装置16を切換えるためのパイロット圧油を吐出するパイロットポンプ14と、コントローラ8に接続され、油圧ポンプ13の容量を調節するポンプ容量調節装置15とを含んでいる。
【0021】
また、旋回体3は、油圧ポンプ13から各油圧アクチュエータ4a〜4cへ供給する圧油の流れを制御する前述のバルブ装置16と、このバルブ装置16の左右に形成された操作部(図示せず)にパイロット管路を介して接続され、パイロットポンプ14からバルブ装置16へ供給されるパイロット圧油の圧力(以下、便宜的にパイロット圧と称する)を調整して各油圧アクチュエータ4a〜4cの所望の動作を可能とする操作装置17とを含んでいる。
【0022】
さらに、旋回体3は、バルブ装置16と各油圧アクチュエータ4a〜4cのボトム室4a1〜4c1とを接続する管路にそれぞれ取付けられ、これらの管路を流通する作動油の圧力、すなわちブームシリンダ4aのボトム側の圧力(以下、便宜的にボトム圧と称する)、アームシリンダ4bのボトム圧、バケットシリンダ4cのボトム圧をそれぞれ検出するボトム圧センサ18A〜18Cと、操作装置17の後述の操作レバー17A,17Bとバルブ装置16の操作部とを接続するパイロット管路にそれぞれ取付けられ、これらのパイロット管路を流通する作動油の圧力、すなわちパイロット圧を検出するパイロット圧センサ19A,19Bとを含んでいる。本実施形態では、パイロット圧センサ19Aは、操作装置17によって調整されたアーム側のパイロット圧を検出するアーム用圧力検出器として機能し、パイロット圧センサ19Bは、操作装置17によって調整されたブーム側のパイロット圧を検出するブーム用圧力検出器として機能する。
【0023】
油圧ポンプ13は、可変容量機構として、例えば、斜板(図示せず)を有し、この斜板の傾斜角を調整することによって圧油の吐出流量を制御している。以下、油圧ポンプ13を斜板ポンプとして説明するが、圧油の吐出流量を制御する機能を有するものであれば、油圧ポンプ13は斜軸ポンプ等であってもよい。なお、油圧ポンプ13には、図示されないが、油圧ポンプ13の吐出圧を検出する吐出圧センサ、油圧ポンプ13の吐出流量を検出する吐出流量センサ、及び斜板の傾斜角を計測する傾斜角センサが設けられており、これらの各センサから得られた情報は、作業情報Wとしてコントローラ8に入力される。また、上述した角度センサ4A1〜4C1、ボトム圧センサ18A〜18C、及びパイロット圧センサ19A,19Bから得られた情報も作業情報Wとしてコントローラ8に入力される。
【0024】
ポンプ容量調節装置15は、コントローラ8から出力される操作信号に基づいて、油圧ポンプ13の容量(押しのけ容積)を調節するものである。具体的には、ポンプ容量調節装置15は、斜板を傾転可能に支持するレギュレータ15Aと、コントローラ8の指令値に応じて、レギュレータ15Aに制御圧を加える電磁比例弁15Bとを有している。レギュレータ15Aは、電磁比例弁15Bから制御圧を受けると、この制御圧によって油圧ポンプ13の斜板の傾斜角を変更することにより、油圧ポンプ13の容量が調節され、油圧ポンプ13の吸収トルクを制御することができる。
【0025】
バルブ装置16は、油圧アクチュエータ4a〜4cと油圧ポンプ13との間に接続され、図示されないが、外殻を形成するハウジング内でストロークすることにより、油圧ポンプ13から吐出された圧油の流量及び方向を調整するスプールを有している。そして、バルブ装置16は、パイロットポンプ14からパイロット管路を介して左右の操作部にそれぞれ流入したパイロット圧油の圧力に応じて、スプールのストローク量を変更するように構成されている。
【0026】
従って、油圧ポンプ13、パイロットポンプ14、ポンプ容量調節装置15、及びバルブ装置16が、旋回体3の内部において油圧アクチュエータ4a〜4cを動作させる油圧回路を構成している。このような構成の油圧回路では、油圧ポンプ13がエンジン11の駆動力で動作することにより、油圧ポンプ13から吐出された圧油がバルブ装置16に供給され、パイロットポンプ14から吐出されたパイロット圧油が操作装置17に供給される。
【0027】
このとき、運転室6内のオペレータが後述の操作レバー17A,17Bを操作すると、操作装置17は、操作レバー17A,17Bの操作量に応じて減圧したパイロット圧油を、パイロット管路を介してバルブ装置16の左右の操作部へそれぞれ供給する。これにより、バルブ装置16内のスプールの位置がパイロット圧油によって切換えられるので、油圧ポンプ13からバルブ装置16を流通した圧油が油圧アクチュエータ4a〜4cへ供給されることにより、油圧アクチュエータ4a〜4cが動作してブーム4A、アーム4B、及びバケット4Cをそれぞれ駆動することができる。
【0028】
操作装置17は、運転室6内においてオペレータの左側の近傍に設置され、オペレータが左手で把持する左手側の操作レバー17Aと、運転室6内においてオペレータの右側の近傍に設置され、オペレータが右手で把持する右手側の操作レバー17Bとから構成されている。
【0029】
操作レバー17Aは、前後方向に操作されると、その操作量に対応して旋回体3を左右に旋回させるように設定されている。操作レバー17Aの後側への操作は、旋回装置(図示せず)を介して旋回体3を左旋回させる操作であり、操作レバー17Aの前側への操作は、旋回装置(図示せず)を介して旋回体3を右旋回させる操作である。
【0030】
また、操作レバー17Aは、左右方向に操作されると、その操作量に対応してアーム4Bを上下方向へ回動させるように設定されている。操作レバー17Aの左側への操作は、アームシリンダ4bが伸長することでアーム4Bを車体側へ引き寄せるアームクラウドの操作であり、操作レバー17Aの右側への操作は、アームシリンダ4bが短縮することでアーム4Bを車体側から遠ざける(離れさせる)アームダンプの操作である。
【0031】
操作レバー17Bは、前後方向に操作されると、その操作量に対応してブーム4Aを上下方向へ回動させるように設定されている。操作レバー17Bの前側への操作は、ブームシリンダ4aが短縮することでブーム4Aを下方へ回動させるブーム下げの操作であり、操作レバー17Bの後側への操作は、ブームシリンダ4aが伸長することでブーム4Aを上方へ回動させるブーム上げの操作である。
【0032】
操作レバー17Bは、左右方向に操作されると、その操作量に対応してバケット4Cを上下方向へ回動させるように設定されている。操作レバー17Bの左側への操作は、バケットシリンダ4cが伸長することでバケット4Cを車体側へ引き寄せるバケットクラウドの操作であり、操作レバー17Bの右側への操作は、バケットシリンダ4cが短縮することでバケット4Cを車体側から遠ざける(離れさせる)バケットダンプの操作である。
【0033】
このように、油圧ショベル1の旋回体3、ブーム4A、アーム4B、及びバケット4Cに対する操作には、左旋回、右旋回、ブーム下げ、ブーム上げ、アームクラウド、アームダンプ、バケットクラウド、及びバケットダンプの各操作があり、これらの操作を組み合わせることにより、作業対象としての地面等を掘削する掘削作業、この掘削作業前にバケット4Cを所定の目標施工面まで移動させる移動作業、及び地面等を均して平滑に整える均し作業等の作業を行うことができる。
【0034】
そして、本実施形態は、掘削作業、移動作業、及び均し作業等の作業中において、運転室6内のオペレータに提供する作業情報Wを表示装置9に表示する機能をコントローラ8に備えている。以下、本実施形態の特徴をなすコントローラ8の機能構成について、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図3に示すように、コントローラ8は、角度センサ4A1〜4C1によって検出された各回動角、及び予め記憶装置に記憶されたフロント作業機4を含む車体の寸法情報に基づいて、バケット4Cの位置を演算するバケット位置演算部21と、ボトム圧センサ18A〜18Cによって検出された各ボトム圧、及びパイロット圧センサ19A,19Bによって検出された各パイロット圧に基づいて、フロント作業機4の作業状態を判定する作業状態判定部22と、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置に基づいて、表示装置9のうち運転室6内から見てバケット4Cの周辺に作業情報Wを表示する表示制御部23とを含んで構成されている。
【0036】
次に、バケット位置演算部21によるバケット4Cの位置の演算処理について、図4を用いて説明する。
【0037】
図4では、フロント作業機4が回動する回動面(鉛直面)において、ブーム4Aの回動支点を原点O(0,0)とし、車体の前方に伸びる水平方向の軸をX軸、車体の上下方向に伸びる鉛直方向の軸をY軸としたXY座標系が設定されている。バケット位置演算部21は、バケット4Cの位置として、図4に示すXY座標系におけるバケット4Cの先端Eの座標(X1,Y1)を下記のように算出する。
【0038】
具体的には、ブーム4Aの回動角として、ブーム4Aの回動支点とアーム4Bの回動支点とを結ぶブーム4Aの軸BMがY軸から回動した角度をα、アーム4bの回動角として、アーム4Bの回動支点とバケット4Cの回動支点とを結ぶアーム4Bの軸AMがブーム4Aの軸BMから回動した角度をβ、バケット4Cの回動角として、バケット4Cの回動支点とバケット4Cの先端Eとを結ぶバケット4Cの軸BKがアーム4Bの軸AMから回動した角度をγとする。
【0039】
また、ブーム4Aの回動支点とアーム4Bの回動支点との距離をL1、アーム4Bの回動支点とバケット4Cの回動支点との距離をL2、バケット4Cの回動支点とバケット4Cの先端Eとの距離をL3とする。このように、ブーム4Aの回動角α、アーム4Bの回動角β、バケット4Cの回動角γ、ブーム4Aの回動支点とアーム4Bの回動支点との距離L1、アーム4Bの回動支点とバケット4Cの回動支点との距離L2、バケット4Cの回動支点とバケット4Cの先端Eとの距離L3を定義すると、バケット4Cの先端Eの座標(X1,Y1)は、これらの回動角α,β,γ及び距離L1〜L3を用いて下記の数式(1)、(2)により表される。
【数1】

【数2】
【0040】
バケット位置演算部21は、角度センサ4A1によって検出されたブーム4Aの回動角α、角度センサ4B1によって検出されたアーム4Bの回動角β、及び角度センサ4C1によって検出されたバケット4Cの回動角γ、並びに予め記憶装置に記憶されたブーム4Aの回動支点とアーム4Bの回動支点との距離L1、アーム4Bの回動支点とバケット4Cの回動支点との距離L2、バケット4Cの回動支点とバケット4Cの先端Eとの距離L3を上記の数式(1)、(2)にそれぞれ代入することにより、バケット4Cの先端Eの座標(X1,Y1)を求めることができる。従って、角度センサ4A1〜4C1及びバケット位置演算部21は、バケット4Cの位置を取得する位置取得器31として機能する。
【0041】
次に、作業状態判定部22による作業状態の判定処理について、図5を用いて説明する。
【0042】
作業状態判定部22は、フロント作業機4の作業状態として、目標施工面が設定されていない通常の掘削作業、移動作業、及び均し作業のいずれかの状態を検出する。これらの作業状態のうち移動作業及び均し作業の各状態においては、オペレータが、バケット4Cで地面を掘り過ぎないように操作レバー17A,17Bの操作に注意する必要があるので、移動作業及び均し作業は通常の掘削作業よりも高い集中力が要求される。なお、目標施工面が予め設定されている場合には、当該目標施工面を含む施工情報が記憶装置に記憶される。
【0043】
ここで、図5に示すように、バケット4Cの先端Eの位置と目標施工面Fの位置との距離をHとすると、この目標施工面Fからのバケット4Cの高さHは、バケット4Cの先端EのY座標Y1、及び目標施工面FのY座標Y2を用いて下記の数式(3)により表される。
【数3】
【0044】
作業状態判定部22は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの先端EのY座標Y1、及び記憶装置に記憶された目標施工面FのY座標Y2を上記の数式(3)に代入することにより、目標施工面Fからのバケット4Cの高さHを求めることができる。そして、作業状態判定部22は、このバケット4Cの高さHと所定の距離H1(図7参照)とを比較し、バケット4Cの高さHが距離H1未満であるとき、フロント作業機4の作業状態が移動作業の状態であると判定し、バケット4Cの高さHが距離H1以上であるとき、フロント作業機4の作業状態が移動作業の状態でない、すなわち通常の掘削作業の状態であると判定する。
【0045】
また、作業状態判定部22は、パイロット圧センサ19Aによって検出されたアーム4B側のパイロット圧、すなわちアーム4Bを上下方向へ回動させるためのパイロット圧PPam(図7参照)が所定の第1閾値P1(図7参照)以上であり、かつパイロット圧センサ19Bによって検出されたブーム4A側のパイロット圧、すなわちブーム4Aを上下方向へ回動させるためのパイロット圧PPbm(図7参照)が所定の第2閾値P2(図7参照)未満であり、さらにボトム圧センサ18Aによって検出されたブームシリンダ4aのボトム圧PBbm(図7参照)が所定の第3閾値P3(図7参照)未満である条件を満たすとき、フロント作業機4の作業状態が均し作業の状態であると判定する。
【0046】
一方、作業状態判定部22は、上記条件を満たさないとき、フロント作業機4の作業状態が均し作業の状態でない、すなわち通常の掘削作業の状態であると判定する。従って、パイロット圧センサ19A,19B、ボトム圧センサ18A、バケット位置演算部21、及び作業状態判定部22は、フロント作業機4の作業状態を検出する作業状態検出装置32として機能する。なお、上述した作業状態判定部22による均し作業の状態の判定では、ボトム圧センサ18Aによって検出されたブームシリンダ4aのボトム圧PBbmが第3閾値P3未満であることを条件の1つとして求めた場合について説明したが、この場合に限らず、当該条件を省略してもよい。
【0047】
表示制御部23は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置、及び予め記憶装置に記憶された運転室6内の運転席(図示せず)の位置や表示装置9の位置を含む車体の寸法情報に基づいて、作業情報Wを表示装置9に表示する位置を演算する表示位置演算部231と、作業状態判定部22によって判定されたフロント作業機4の作業状態に応じて、作業情報Wの表示を、予め設定された文字による表示又は色を含む表示に切換える表示切換部232とを含んで構成されている。なお、ここで文字による表示とは、文字のみで用いたいわゆる通常表示を示し、また色を含む表示とは文字に色で強調したマークを併せた表示、色で強調したマークのみの表示、さらにマークや文字の大きさを変えたり、点滅させた表示、などオペレータに対する多様な態様の強調表示を含む。
【0048】
表示位置演算部231は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置、運転室6内の運転席の位置、及び表示装置9の位置の関係から、透過型の表示装置9の画面のうち、運転室6内から見てバケット4Cの周辺の所定の範囲内に作業情報Wを映し出すことが可能な位置を算出する。
【0049】
表示切換部232は、作業状態判定部22によってフロント作業機4の作業状態が通常の掘削作業の状態であると判定されたとき、作業情報Wの表示を文字による表示に切換え、作業状態判定部22によってフロント作業機4の作業状態が移動作業の状態又は均し作業の状態であると判定されたとき、作業情報Wの表示を、色を含む表示に切換える。なお、表示装置9には、運転室6内のオペレータが作業情報Wの表示を手動で切換えるための切換スイッチ9Aが設けられており、表示切換部232は、切換スイッチ9Aからの切換指令に従って、作業情報Wの表示を文字による表示又は色を含む表示に強制的に切換える。
【0050】
次に、表示切換部232によって切換えられた表示装置9の表示例について、図6(a)〜(c)を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
表示切換部232は、作業情報Wの表示を文字による表示に切換えると、図6(a)に示すように、表示装置9の画面のうち表示位置演算部231によって演算された位置に、作業情報Wを表す文字が映し出される。このとき、作業情報Wがバケット高さ情報である場合には、例えば図6(a)に示すように、「200mm」の文字がバケット4Cの移動方向を示す矢印と共に映し出され、これらの文字及び矢印には色が付されていない。
【0052】
また、図示されないが、作業情報Wが燃費情報である場合には、1日の累計燃費を示す「35m/L」等の文字が映し出され、作業情報Wが周囲警告情報である場合には、警告の対象物の名称、方向、及び車体からの距離を示す「車体後方4mに作業員が接近」等の文字が映し出され、作業情報Wが車体警告情報である場合には、故障の内容及びその対処方法を示す「マフラフィルタの異常です。直ちに機体を安全な姿勢にしてエンジンを停止し、最寄の支店または営業所にお問い合わせください」等の文字が映し出される。
【0053】
一方、表示切換部232は、作業情報Wの表示を、色を含む表示に切換えると、図6(b)、(c)に示すように、表示装置9の画面のうち表示位置演算部231によって演算された位置に、作業情報Wを表す色が反映される。このとき、作業情報Wがバケット高さ情報である場合には、表示切換部232は、例えば図6(b)に示すように、「200mm」の文字及び矢印に色を付加してもよいし、図6(c)に示すように、文字及び矢印の代わりに、カラーバーを表示したり、あるいは丸や三角等の記号や図形等に色を付加して表示してもよい。なお、このような色を含む表示は、燃費情報、周囲警告情報、及び車体警告情報についても同様である。
【0054】
また、色を含む表示において、作業情報Wがバケット高さ情報である場合には、表示切換部232は、例えば、目標施工面Fからのバケット4Cの高さHに応じて、緑色、黄色、橙色、赤色の順へ色相環を辿るように変化させたり、あるいはバケット4Cが目標施工面Fに接触、すなわちバケット4Cの高さHが0になったときに、赤色の点滅表示を行ってもよい。同様に、作業情報Wが燃費情報である場合には、表示切換部232は、燃費が悪くなるにつれて緑色、黄色、橙色、赤色の順へ色相環を辿るように変化させてもよい。さらに、作業情報Wが周囲警告情報又は車体警告情報である場合には、表示切換部232は、赤色の表示や赤色の点滅表示を行ったり、あるいはバケット高さ情報及び燃費情報と区別するために、表示装置9に予め内蔵されたスピーカ等の音声出力装置(図示せず)から警告音を出力してもよい。
【0055】
次に、本実施形態に係るコントローラ8による作業情報Wの表示の制御処理を、図7のフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、制御処理の始動及び停止は、ここでは運転室6内にエンジン11の始動及び停止を実行させる図示しないキーのオンオフに連動することを想定している。しかしこれに拘わることなく、他の手段を用いてもよい。また、エンジン11が始動してから停止するまでの間は、一定周期毎に処理されることを想定している。
【0056】
図7に示すように、まず、コントローラ8の表示制御部23は、切換スイッチ9Aの入力信号を確認し、切換スイッチ9AがON状態になっているかどうかを判断する((ステップ(以下、Sと記す)701))。そして、表示制御部23は、切換スイッチ9AがON状態になっていると判断すると(S701/Yes)、表示制御部23の表示切換部232は、切換スイッチ9Aからの切換指令が色を含む表示の指令であるかどうかを判断する(S702)。
【0057】
このとき、表示切換部232は、切換スイッチ9Aからの切換指令が色を含む表示の指令であると判断すると(S702/Yes)、後述のS713の処理が行われる。一方、表示切換部232は、切換スイッチ9Aからの切換指令が色を含む表示の指令ではない、すなわち文字による表示の指令であると判断すると(S702/No)、後述のS707の処理が行われる。
【0058】
S701において、表示制御部23は、切換スイッチ9AがON状態になっていない、すなわちOFF状態になっていると判断すると(S701/No)、コントローラ8は、角度センサ4A1〜4C1の検出値を取得する(S703)。次に、コントローラ8は、記憶装置内の情報を参照し、目標施工面Fを含む施工情報が記憶装置に記憶されているかどうかを判断する(S704)。
【0059】
S704において、コントローラ8は、施工情報が記憶装置に記憶されていると判断すると(S704/Yes)、コントローラ8のバケット位置演算部21は、角度センサ4A1〜4C1によって検出された各回動角α,β,γ、及び予め記憶装置に記憶された車体の寸法情報からバケット4Cの位置を演算する。次に、コントローラ8の作業状態判定部22は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置、及び予め記憶装置に記憶された施工情報の目標施工面Fに基づいて、目標施工面Fからのバケット4Cの高さHを演算し(S705)、演算したバケット4Cの高さHが距離H1未満であるかどうかを確認する(S706)。
【0060】
このとき、作業状態判定部22は、バケット4Cの高さHが距離H1未満であることを確認すると(S706/Yes)、フロント作業機4の作業状態が移動作業の状態であると判定し、後述のS713の処理が行われる。一方、S706において、作業状態判定部22は、バケット4Cの高さHが距離H1以上であることを確認すると(S706/No)、フロント作業機4の作業状態が通常の掘削作業の状態であると判定する。
【0061】
そして、表示制御部23の表示位置演算部231は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置及び車体の寸法情報から、作業情報Wを表示装置9に表示する位置を演算すると、表示制御部23が表示位置演算部231によって演算された位置に作業情報Wを表示すると共に、表示切換部232がその作業情報Wの表示を文字による表示に切換え(S707)、図示しないキーがオンであれば、一定周期毎にS701に戻り、図示しないキーがオフされた場合、作業情報Wの表示の制御処理を終了する。
【0062】
一方、S704において、コントローラ8は、施工情報が記憶装置に記憶されていないと判断すると(S704/No)、パイロット圧センサ19A,19Bの検出値を取得し(S708)、さらにボトム圧センサ18A〜18Cの検出値を取得する(S709)。次に、作業状態判定部22は、パイロット圧センサ19Aによって検出されたアーム4B側のパイロット圧PPamが第1閾値P1以上であるかどうかを確認する(S710)。
【0063】
このとき、作業状態判定部22は、アーム4B側のパイロット圧PPamが第1閾値P1未満であることを確認すると(S710/No)、フロント作業機4の作業状態が通常の掘削作業の状態であると判定し、S707の処理が行われる。一方、S710において、作業状態判定部22は、アーム4B側のパイロット圧PPamが第1閾値P1以上であることを確認すると(S710/Yes)、パイロット圧センサ19Bによって検出されたブーム4A側のパイロット圧PPbmが第2閾値P2未満であるかどうかを確認する(S711)。
【0064】
このとき、作業状態判定部22は、ブーム4A側のパイロット圧PPbmが第2閾値P2以上であることを確認すると(S711/No)、フロント作業機4の作業状態が通常の掘削作業の状態であると判定し、S707の処理が行われる。一方、S711において、作業状態判定部22は、ブーム4A側のパイロット圧PPbmが第2閾値P2未満であることを確認すると(S711/Yes)、ボトム圧センサ18Aによって検出されたブームシリンダ4aのボトム圧PBbmが第3閾値P3未満であるかどうかを確認する(S712)。
【0065】
このとき、作業状態判定部22は、ブームシリンダ4aのボトム圧PBbmが第3閾値P3以上であることを確認すると(S712/No)、フロント作業機4の作業状態が通常の掘削作業の状態であると判定し、S707の処理が行われる。一方、S712において、作業状態判定部22は、ブームシリンダ4aのボトム圧PBbmが第3閾値P3未満であることを確認すると(S712/Yes)、フロント作業機4の作業状態が均し作業の状態であると判定する。
【0066】
そして、表示位置演算部231は、バケット位置演算部21によって演算されたバケット4Cの位置及び車体の寸法情報から、作業情報Wを表示装置9に表示する位置を演算すると、表示制御部23が表示位置演算部231によって演算された位置に作業情報Wを表示すると共に、表示切換部232がその作業情報Wの表示を、色を含む表示に切換え(S713)、図示しないキーがオンであれば、一定周期毎にS701に戻り、図示しないキーがオフされた場合、作業情報Wの表示の制御処理を終了する。
【0067】
このように構成した本実施形態に係る油圧ショベル1によれば、オペレータに提供する作業情報Wが、表示制御部23によって表示装置9のうち運転室6内から見てバケット4Cの周辺に表示される。この状態において、移動作業や均し作業のように、通常の掘削作業よりも高い集中力が要求される作業が行われると、表示切換部232によって表示装置9の作業情報Wの表示が、文字による表示から色を含む表示に切換えられる。これにより、運転室6内のオペレータは、フロントガラス6Aを通してバケット4Cを注視していても、作業情報Wとして表現される色を周辺視野で十分に捉えることができるので、作業に集中しながら作業情報Wを感覚的に理解することができる。このように、本実施形態は、オペレータが集中力を要する作業を行っても、必要な情報を容易に把握することができるので、優れた作業効率を得ることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る油圧ショベル1では、移動作業や掘削作業と比較してオペレータが視線を逸らす余裕がある掘削作業が行われているときには、表示切換部232によって表示装置9の作業情報Wの表示が文字による表示に切換えられるので、オペレータがその文字を読み取ることにより、バケット高さ情報、燃費情報、周囲警告情報、及び車体警告情報等を含む詳細な情報を正確に把握することができる。
【0069】
一方、掘削作業と比較して高い集中力が要求される移動作業又は均し作業が行われているときには、表示切換部232によって作業情報Wの表示が色を含む表示に切換えられるので、作業情報Wの表示がオペレータの作業の妨げになるのを回避することができる。これにより、操作レバー17A,17Bを操作するオペレータが、移動作業において、バケット4Cの位置を目標施工面Fに的確に合わせることができると共に、均し作業において、地面等を意図通りに整えることができるので、作業対象に対して繊細な操作が求められる作業を円滑に進めることができる。
【0070】
ところで、フロント作業機4の作業状態が移動作業の状態であるときには、オペレータは、操作レバー17A,17Bを操作してバケット4Cの先端Eを予め設定された目標施工面Fへ接近させる。本実施形態に係る油圧ショベル1は、このような移動作業の状態におけるバケット4Cと目標施工面Fとの位置関係に着目し、作業状態判定部22による移動作業の状態の判定を行うようにしている。すなわち、作業状態判定部22は、バケット位置演算部21の演算結果を参照して目標施工面Fからのバケット4Cの高さHを演算し、演算したバケット4Cの高さHと所定の距離H1との大小を比較することにより、フロント作業機4の作業状態が移動作業の状態であるかどうかを精度良く判別することができる。
【0071】
また、フロント作業機4の作業状態が均し作業の状態であるときには、オペレータは、操作レバー17A,17Bを操作し、アームシリンダ4bを伸長させてアーム4Bを車体側へ引き寄せた状態に維持しつつ、ブームシリンダ4aを伸長させて、バケット4Cの先端EのY座標Y1を一定に保つように操作する。本実施形態に係る油圧ショベル1は、このような均し作業におけるブーム4A及びアーム4Bの状態に着目し、作業状態判定部22による均し作業の状態の判定を行うようにしている。すなわち、作業状態判定部22は、パイロット圧センサ19Aによって検出されたアーム4B側のパイロット圧PPamが所定の第1閾値P1以上であること、及びパイロット圧センサ19Bによって検出されたブーム4A側のパイロット圧PPbmが所定の第2閾値P2未満であることをそれぞれ判定条件として用いることにより、フロント作業機4の作業状態が均し作業の状態であるかどうかを迅速に判別することができる。このように、本実施形態は、集中力を要するフロント作業機4の作業状態の判定を、高精度かつ効率的に行うことができるので、信頼性に優れた油圧ショベル1を提供することができる。
【0072】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0073】
また、本実施形態に係る油圧ショベル1は、フロント作業機4の先端に装着されたアタッチメントとして、バケット4Cを用いて構成された場合について説明したが、本発明はこの場合に限らず、例えば、バケット4Cの代わりに、金属スクラップを吸着して運搬するマグネット等を用いて構成されてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態に係る油圧ショベル1では、表示装置9は、運転室6の前面に形成されたフロントガラス6Aに重ね合わせて設置された透過型の液晶ディスプレイや液晶モニタ等から構成された場合について説明したが、本発明はこの場合に限らず、例えば、作業情報Wを示す実像を表示するための実像表示部(図示せず)と、この実像表示部から投射された画像を反射させてフロントガラス6Aの前方に当該画像の虚像を表示するためのコンバイナ(図示せず)とから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…油圧ショベル(建設機械)、4…フロント作業機(作業装置)、4A…ブーム、4A1〜4C1…角度センサ、4a…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、4B…アーム、4b…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、4C…バケット(アタッチメント)、4c…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
6…運転室、8…コントローラ、9…表示装置、9A…切換スイッチ、13…油圧ポンプ、14…パイロットポンプ、16…バルブ装置、17…操作装置、17A,17B…操作レバー、18A〜18C…ボトム圧センサ、19A…パイロット圧センサ(アーム用圧力検出器)、19B…パイロット圧センサ(ブーム用圧力検出器)
21…バケット位置演算部、22…作業状態判定部、23…表示制御部、31…位置取得器、32…作業状態検出装置、231…表示位置演算部、232…表示切換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7