(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば浴室の換気を行う場合には、入浴直後で壁面が濡れていると、換気運転のみを行っても壁面を完全に乾燥させることは困難である。このため、浴室の湿度が低下したことにより換気運転を終了させてしまうと、換気運転を行った後であるにもかかわらず、暫くすると壁面に付着していた水分が自然蒸発して浴室内の湿度が上昇してしまう不都合がある。
【0006】
そこで、浴室の湿度が低下しても、壁面に付着する水分が自然蒸発するまでの間、換気運転を継続させることが考えられる。しかし、換気運転が連続して長時間に亘って行われることにより、換気運転に伴うエネルギーの浪費を抑えることができない不都合がある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、換気運転に伴うエネルギーの浪費を抑えつつ不用意な湿度上昇に応じた排湿運転を行うことができる換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
ファンの回転により室内の空気を強制的に屋外に排出する換気装置において、室内の湿度を検出する湿度検出手段と、少なくとも前記湿度検出手段による検出湿度の変化量が判定用湿度範囲内の値となるまで強制換気による排湿運転を行う排湿運転制御手段と、該排湿運転制御手段
が排湿運転を終了させ
ることによりファンを低回転とした後に、前記湿度検出手段により検出された湿度が上昇したとき前記排湿運転制御手段に排湿運転の開始を指示する排湿運転指示手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の換気装置は、排湿運転制御手段を備えることによって、湿度検出手段の検出湿度に応じた運転が行えるだけでなく、排湿運転が停止した後であっても湿度の上昇に応じて強制換気による排湿運転を行うことができる。
【0010】
即ち、湿度検出手段により検出された湿度の変化量が判定用湿度範囲内の値となると、排湿運転制御手段が排湿運転を終了させるが、その後、湿度検出手段の検出湿度が上昇した場合には、排湿運転指示手段が排湿運転制御手段に排湿運転の開始を指示する。従って、湿度が上昇したときのことを考慮して長時間の連続運転を行う必要がなく、湿度が上昇した場合に合わせて排湿運転が行え、エネルギーの浪費を抑えることができる。
【0011】
なお、換気装置は周知のように、ファンとそのファンを駆動するモータ等の駆動手段とを備えて、ファンの回転により換気運転を行う。ここで本発明における排湿運転は、積極的な除湿ではなく、室内空気中の水蒸気をファンの回転により屋外に排出することによって行うものである。また、本発明の換気装置における排湿運転の終了とは、ファンの回転を停止(換気運転停止)させるこ
とでなく、ファンを低回転として換気能力を低下させ
るものとする。
【0012】
また、本発明の換気装置においては、室内の不快指数を算出する不快指数算出手段を備え、前記排湿運転制御手段は、前記湿度検出手段により検出された湿度の変化量が判定用湿度範囲内の値となり且つ前記不快指数算出手段により算出された不快指数が予め設定された値以下となるまで強制換気による排湿運転を行うようにしてもよい。これによれば、室内の不快指数が低下するまで排湿運転が行われるので、室内環境を快適な状態とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1を参照して、1は浴槽1aが配置された浴室、2は浴室1に隣接する脱衣室である。浴室1には、浴室暖房乾燥機3が設けられている。浴室暖房乾燥機3は、温風を浴室1内に吹き出すことによって、暖房運転及び乾燥運転(衣類乾燥や浴室乾燥)を行う。更に、浴室暖房乾燥機3は、本発明の換気装置に相当する構成を有しており、浴室1内の空気を強制的に排出することによって換気運転を行う。浴室暖房乾燥機3は、脱衣室2の壁面に取り付けられたリモコン4により各種設定や運転に関する操作が行われる。
【0015】
図2に示すように、浴室暖房乾燥機3は、浴室1の天井1bに載置されるようにして取り付けられた筐体5と、筐体5の下面を天井1bの下側から覆うパネル6とを備えている。
【0016】
パネル6には、吸込み口7と吹出し口8とが共に下向きに形成されている。吹出し口8は横長矩形状に形成されており、その形状に略対応するルーバー9が設けられている。ルーバー9は、浴室暖房乾燥機3の暖房運転や乾燥運転の停止時、及び換気運転中には、吹出し口8を閉じる姿勢となり、暖房運転中及び乾燥運転中には吹出し口8を開いて風向を決める。
【0017】
筐体5の内部には、吸込み口7の下流側で強制的に空気流を形成するファン10が設けられており、ファン10によって形成される空気流の下流側には、暖房用通風路11と換気用通風路12とが形成されている。暖房用通風路11は下流端が吹出し口8となっている。換気用通風路12は、下流端が排出口13となっている。排出口13は、屋外で開放する図外のダクトに接続される。
【0018】
暖房用通風路11の吹出し口8の上流側の近傍には、加熱手段14が設けられている。加熱手段14は、図外の熱源機から供給される温水を流す放熱器により構成されている。
【0019】
暖房用通風路11と換気用通風路12とが分岐する位置には、暖房用通風路11と換気用通風路12とで空気流の方向を切り換える風路切換ダンパ15が設けられている。風路切換ダンパ15は、暖房運転の際に換気用通風路12を塞ぎ、換気運転の際には暖房用通風路11を塞ぎ、乾燥運転の際には暖房用通風路11と換気用通風路12との中立位置で、暖房用通風路11と換気用通風路12との夫々を半開状態とする。
【0020】
吸込み口7近傍の筐体5内部には、浴室1の温度を検出するための室温センサ16が設けられている。また、吸込み口7とファン10との間の空間奥には、浴室1の湿度を検出する湿度センサ17(湿度検出手段)が設けられている。
【0021】
湿度センサ17は、防水ケース18の外壁に固定され、防水ケース18に収容された制御ユニット19に接続されている。制御ユニット19は、室温センサ16及び湿度センサ17から温度情報及び湿度情報を取得して各種の制御に用いる。制御ユニット19は、
図1に示すように、リード線4aを介してリモコン4との間で信号の送受信を行う。
【0022】
リモコン4は、図示しないが、運転や設定に関する各種の操作を行う操作部と、時間等(後述する残時間)や各機能を表示するための表示画面とを備えている。
【0023】
図2に示すように、制御ユニット19は、暖房運転、乾燥運転、及び通常の換気運転を行うための制御部を機能として備えているが、更に、換気運転の一種として排湿運転を行うための制御部も備えている。即ち、制御ユニット19は、排湿運転制御部20(排湿運転制御手段)と、排湿運転指示部21(排湿運転指示手段)と、不快指数算出部22(不快指数算出手段)とを機能として備えている。
【0024】
不快指数算出部22は、室温センサ16から得られる温度情報と湿度センサ17から得られる湿度情報とから不快指数を算出する。
【0025】
排湿運転制御部20は、湿度センサ17による検出値に基づく絶対湿度(以下検出絶対湿度という)の変化量が判定用湿度範囲内の値となり、不快指数算出部22が算出した不快指数が予め設定された値以下となるまで、強制換気による排湿運転を行う。
【0026】
また、排湿運転指示部21は、排湿運転を行った後に、検出絶対湿度が上昇したとき、排湿運転制御部20に排湿運転の開始を指示する。
【0027】
排湿運転指示部21から指示を受けた排湿運転制御部20は、暖房用通風路11を閉じるように風路切換ダンパ15を動作させると共にファン10を回転させる。これにより、排湿運転が終了した後であっても、不用意に浴室内の絶対湿度が上昇することによって排湿運転が開始され、湿気を含んだ浴室1内の空気の換気が行われる。
【0028】
ここで、
参考例として、排湿運転について
図3を参照して説明する。排湿運転は、上記構成の浴室暖房乾燥機3を換気装置として作動させることにより行われる。
【0029】
図3に示すように、制御ユニット19の排湿運転制御部20は、排湿(換気)運転を開始すると、STEP1でファン10を動作させる。なお、ファン10の動作に先立って、風路切換ダンパ15により暖房用通風路11を塞ぐ。
【0030】
次いで、排湿運転制御部20は、STEP2においてファン10の動作開始時から20分が経過したか否かを判断し、20分が経過したらSTEP3へ進んで湿度センサ17の検出値に基づいて現在の検出絶対湿度を判定用として設定する。ファン10が動作を開始した直後は、浴室1内の湿度分布の偏り等により湿度センサ17の検出値が安定しない。湿度センサ17の検出値が不安定であると、STEP3において判定用とする検出絶対湿度の精度が低下する。そこで、ファン10の動作開始時から検出絶対湿度が安定する時
間(20分)が経過したところで現在の検出絶対湿度を判定用として設定するので、高い精度の検出絶対湿度を判定に用いることができる。
【0031】
続いて、排湿運転制御部20は、STEP4へ進んでSTEP15(後述)の処理を行うための残時間を設定し、更にSTEP5で不快指数算出部22により不快指数を算出して、STEP6へ進む。
【0032】
STEP6においては、排湿運転制御部20は、現時点で運転開始から2時間40分経過していた場合はSTEP15へ進み、2時間40分経過していない場合は、STEP7へ進む。
【0033】
STEP7で排湿運転制御部20は、STEP3で設定した判定用の絶対湿度から算出した下限値(判定用絶対湿度−a)及び上限値(判定用絶対湿度+b)により湿度変化量の範囲(本発明における判定用湿度範囲に相当する)を定め、この湿度変化量の範囲内に現在の検出絶対湿度が収まっているか否かを判断する。同時に、STEP5で算出した不快指数が予め定めた値c以下であるか否かを判断する。なお、ここで用いた上記a,b,cは本発明者が試験等により予め得たデータに基づいて定めた値であ
り、好ましくは、aは0.2g/m3,bは1.0g/m3,cは75とされる。不快指数75は一般に快適さの上限とされる値であり、排湿運転制御部20に予め設定されたものである。
【0034】
排湿運転制御部20は、湿度変化量の範囲内に現在の検出絶対湿度が収まっていて且つ不快指数が予め定めた値c以下である場合には、更にSTEP8に進むが、そうでない場合は、STEP9へ進む。排湿運転制御部20は、STEP9に進んだ場合には、改めて現在の検出絶対湿度を判定用として設定し、STEP6へ戻る。
【0035】
排湿運転制御部20は、STEP8に進むと、STEP7の条件を満たす状態が10分間連続して検出されるか否かを判断し、10分経過するまでにSTEP7の条件が満たされなくなったらSTEP6へ戻るが、10分間STEP7の条件が満たされていた場合には、STEP10へ進んでファン10を停止させて一旦排湿運転を終了させる。
【0036】
次いで、排湿運転制御部20は、ファン10を停止させている間、STEP11に進み、現在の検出絶対湿度がSTEP10でファンを停止させた時点の検出絶対湿度に基づいて設定した判定値(ファン停止時の絶対湿度+d)以上であるか否かを判断する。なお、ここで用いた上記dは本発明者が試験等により予め得たデータに基づいて定めた値であ
り、具体的には1.0g/m3に設定されるのが好ましい。
【0037】
そして、STEP11において、現在の検出絶対湿度がファン停止時の絶対湿度+d以上であったときには、浴室1の湿度が上昇したことが明らかであるため、STEP12でファン10を動作させ、STEP6へ戻る。STEP11及びSTEP12の動作は、排湿運転指示部21の作動によるものである。これにより、STEP10で一旦排湿運転が停止した後に、湿度が上昇すれば、STEP12のファン10の動作により、迅速且つ確実に排湿運転を再開させることができる。
【0038】
一方、排湿運転制御部20は、STEP11において、現在の検出絶対湿度が上記判定値(ファン停止時の絶対湿度+d)以上でない場合は、STEP13へ進んで10分間STEP11の判断を続ける。そして、10分間、現在の検出絶対湿度の上昇変化が見られなかった場合には、排湿運転制御部20は、STEP14でファン10を動作させてSTEP15で最終処理を行い、STEP16でファン10を停止させて排湿運転を終了させる。
【0039】
STEP15においては、STEP4で設定された残時間をカウントダウンし、その際の残時間を表示させる。ここで、STEP4における残時間(換気運転時間)の設定処理について説明する。
【0040】
残時間設定の第1の例としては、過去6時間内の湿度変化量に応じて残時間を決定する。即ち、具体的には、過去6時間内の最低絶対湿度と換気(排湿)運転中の最高絶対湿度との差を算出し、このときの差が大きい場合は残時間を長く設定し、差が小さい場合は残時間を短く設定する。これにより無駄な排湿運転時間を削減でき、エネルギーの浪費を抑えることができる。
【0041】
残時間設定の第2の例としては、換気(排湿)運転開始からファン10を作動させて所定時間が経過するまでの絶対湿度変化の勾配に応じて残時間を決定する。即ち、具体的には、換気(排湿)運転開始時の検出絶対湿度から、所定時間(例えば20分)が経過して排湿が進んだときの現在の検出絶対湿度までの下り勾配を算出し、勾配が緩やかである場合は残時間を長く設定し、勾配が急である場合は残時間を短く設定する。これにより無駄な排湿運転時間を削減でき、エネルギーの浪費を抑えることができる。
【0042】
な
お、STEP5による不快指数の算出処理を行い、STEP7の判断で不快指数を用いることにより、確実に室内環境を快適な状態とする構成を示した。しかし、本発明においてはこれに限るものではなく、STEP5による不快指数の算出処理を行うことなく、STEP7では判定用の絶対湿度と現在の検出絶対湿度との比較のみでファン10を停止させるか否かの判断を行うようにしてもよい。何れにおいても、排湿運転指示部21によるSTEP11及びSTEP12の作動を備えることにより、換気運転に伴うエネルギーの浪費を抑えつつ不用意な湿度上昇に応じた排湿運転を行うことができる。
【0043】
また、上記排湿運転の説明において、具体的な時間や数値を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば浴室1の大きさやファン10の送風能力に応じて適宜設定されるものである。
【0044】
また、本実施形態においては、上記構成の浴室暖房乾燥機3を示したが、これに限るものではなく、室内の空気を強制換気できる換気装置であれば本発明を適用して上記効果を得ることができる。