(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559550
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】手動調理器用食品保持具
(51)【国際特許分類】
A47J 43/28 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
A47J43/28
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-224772(P2015-224772)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-86797(P2017-86797A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000123413
【氏名又は名称】下村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】下村 啓治
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6145128(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0108802(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0160512(US,A1)
【文献】
米国特許第4751747(US,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0106198(KR,A)
【文献】
英国特許出願公開第2415601(GB,A)
【文献】
特開2001−95449(JP,A)
【文献】
特開2007−100282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の弾性を備えた樹脂で形成した挟持板における下端外面に船体状の指先保護部を設け、下方内面に食品挟持用突起を設けると共に、上方端に連結部を設けた挟持部材を、下方開口状態で対向させて上方端を連結して開閉自在とした食品保持具であって、一方の挟持部材の前記連結部を、対向側に向かって挟持板上端縁から突出する鍔部と、前記鍔部から挟持板上端縁と平行に架設した軸部からなる軸連結部で構成し、他方挟持部材の連結部を、挟持板の上端を内面側に向けて前記軸部に被冠装着可能な逆U字状で、且つ軸部に被冠装着した際に先端部分が対向挟持部材の挟持板上端縁内面に当接する形状とした係止連結部で構成してなることを特徴とする手動調理器用食品保持具。
【請求項2】
鍔部を挟持板の前後端に設け、係止連結部を前記前後の鍔部間に嵌合装着される大きさに形成してなる請求項1記載の手動調理器用食品保持具。
【請求項3】
挟持部材の一方の挟持板を、上方の連結部形成部分が一体に接続し、下方部分が前後二分割となるように形成した請求項1又は2記載の何れかの手動調理器用食品保持具。
【請求項4】
挟持板を一指幅と二指幅の割合で二分割した請求項3記載の手動調理器用食品保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜のスライス加工、おろし加工等の所定の加工を、野菜や食品の摺動操作によって行う手動調理器等を使用するに際して、野菜や食品を保持し安全に調理できるようにした食品保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手動調理器等の使用に際して手を傷付けないようにするために、従前より種々の野菜保持具が提案されている。その一般的な器具としては、野菜への刺突部を下設した基板の上面に把手部を突設した構成が知られており、当該器具は野菜を調理器摺動面に押しつけるようにして使用される。これに対して野菜を掴持して使用する器具も知られている。
【0003】
例えば特許文献1(特開平10−216028号公報・
図2)には、手持握り部に連設した押当部が屈伸溝を支点として屈伸させ、すりおろし対象の野菜を挟持できる器具が開示されている。また特許文献2(特開2009−183631号公報・
図8)には、トング型のU字形状で、先端脚部間に所望の野菜・食品を挟んで掴持し、おろしプレートで食品卸調理を行う食品保持具が開示されている。
【0004】
さらに特許文献3(特開2012−217719号公報)には、トング様本体を枢着基端と開閉対向挟持面を摺動面に対して水平に位置させて、食品が対向挟持面を上下貫通するように保持され、或いは対向挟持面の下方に連続して設けた押圧用底部で食品が押さえつけられて所定の摺動操作(食品調理)を行う器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−216028号公報。
【特許文献2】特開2009−183631号公報。
【特許文献3】特開2012−217719号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで前記した調理対象食品を掴持するトング構造の食品保持具において、食品掴持に際して、常時開口状態であると対象食品を掴み易く、一般的なトング構造の場合にはU状に形成した構成部材自体の弾性で常時開口状態を維持してこれを実現している。
【0007】
また食品を掴持して摺動操作する場合には、掌内で掌の開閉方向と一致する指の付け根側を開閉基部にすると使い易い。即ち特許文献3に開示されているように、食品の挟持保持部と開閉基部が水平状態の器具は使い難い。一方特許文献3に示されているような押圧用底部のように指先保護となる部分が存在すると安心して使用することができる。
【0008】
しかし開閉基部と挟持保持面(掴み面)が上下位置となって、掌内で掌の開閉方向と掴み面の開閉方向を一致させ、且つ下方部分に指先保護部を形成すると、末広がり状の嵩張る器具が想定され、不使用時の収納に問題がある。
【0009】
そこで本発明は、安全に且つ使い易く、不使用時における収納に際してはコンパクト化できる新規な手動調理器用食品保持具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載に係る手動調理器用食品保持具は、所定の弾性を備えた樹脂で形成した挟持板における下端外面に船体状の指先保護部を設け、下方内面に食品挟持用突起を設けると共に、上方端に連結部を設けた挟持部材を、下方開口状態で対向させて上方端を連結して開閉自在とした食品保持具であって、一方の挟持部材の前記連結部を、対向側に向かって挟持板上端縁から突出する鍔部と、前記鍔部から挟持板上端縁と平行に架設した軸部からなる軸連結部で構成し、他方挟持部材の連結部を、挟持板の上端を内面側に向けて前記軸部に被冠装着可能な逆U字状で、且つ軸部に被冠装着した際に先端部分が対向挟持部材の挟持板上端縁内面に当接する形状とした係止連結部で構成してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して両挟持部材の内面側を対向させて、係止連結部の先端部分が軸部と挟持板の上端縁との間隙に差し入れて、軸連結部に係止連結部を被冠装着すると、対向する挟持部材は、下方開口状態で上部が互いの連結部によって連結される。食品加工(調理)に際しては、挟持部材を掌内に納めると共に指先を指先保護部内に差し入れ、指先の開閉操作で挟持部材の開閉を行って、加工対象食品を掴持し、調理器に対して摺動操作して所定の加工を行うものである。また対向挟持部材を閉じた際には、係止連結部の先端が挟持板上端内面に当接して係止されるので、手による掴持圧力を開放すると、反発弾性によって挟持部材は開放状態に復帰する。
【0012】
特に本発明は、連結部を着脱可能としたものであり、且つ前記した連結部において、係止連結部の先端部分を軸部と挟持板の上端縁との間隙に差し入れずに、当該先端部分を前記上端縁の外側に添わせて軸連結部に被冠すると、両挟持部材は閉口状態で連結されて、コンパクト化できる。
【0013】
また本発明の請求項2記載に係る手動調理器用食品保持具は、前記請求項1記載の器具において、鍔部を挟持板の前後端に設け、係止連結部を前記前後の鍔部間に嵌合装着される大きさに形成してなるもので、両連結部の連結がより確りとなされる。また非使用時においても、係止連結部が鍔部間に嵌合装着されるので、両挟持部材は下方閉口状態でコンパクトに確りと連結される。
【0014】
また本発明の請求項3及び4記載に係る手動調理器用食品保持具は、前記請求項1記載の器具において、挟持部材の一方の挟持板を、上方の連結部形成部分が一体に接続し、下方部分が前後二分割となるように形成したもので、特に前記の分割した挟持板を一指幅と二指幅の割合で二分割したものである。
【0015】
分割挟持板を採用すると、非分割挟持板を備えた挟持部材の指先保護部に拇指を入れ、分割挟持板を備えた挟持部材の各指先保護部に、人差し指、中指、薬指を一指と二指に分けて差し入れ、食品を3点で掴持し、変形食品に対しても確実な掴持を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成は上記のとおりで、指の付け根側が連結部(開閉基部)となり掌内で掌の開閉方向と一致した器具で、食品掴持がし易く使い易いと共に、使用状態から連結部を外し、挟持部材の下方を閉口状態として連結部を被冠連結することで、器具がバラバラにならず一体のままコンパクト化でき、収納に便利な器具としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の全体斜視図(器具使用時)。
【
図6】連結部の装着説明図で、(イ)は使用時、(ロ)は収納時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した手動調理器用食品保持具は、二つの挟持部材A,Bで構成され、挟持部材A,Bは所定の弾性を備えた樹脂で形成した
ものである。
【0019】
両挟持部材A,Bは、基本的に挟持板1(1a,1b)と、指先保護部2(2a,2b)と、食品挟持用突起3と、指先突板部4と、連結部(軸連結部5及び係止連結部6)を備えてなるものである。
【0020】
詳細に説明すると、挟持部材Aの挟持板1は、加工処理対象となる食品(X,Y)を掴持するに十分な大きさで、且つ掌に納まる大きさとしたもので、この挟持板1の下方部分の外面に船体状(袋状)に張り出した指先保護部2を設けたものである。尚指先保護部2の内面には使用時に指先が当たる指当面21を膨出形成してなる。
【0021】
食品挟持用突起3は、挟持板1の下方内面となる指先保護部2の内面に設けたもので、先端を尖らした三角形状等の加工対象食品に食い込む形状としたものである。また挟持板1の側縁には、前記挟持板1の下方から中間部分まで食品挟持用突起3の補助突起31を設けてなる。
【0022】
また指先突板部4は、指先保護部2の外底面に板状に突設したもので、野菜調理時に誤って指先保護部2の底面を平刃体に食い込ませたとしても、指先を保護できるようにしたものである。
【0023】
軸連結部5は、鍔部51と軸部52からなり、鍔部51は、挟持板1の上端縁11から内面方向に突出させて設けたもので、軸部52は前記の鍔部51間に、挟持板1の上端縁11と平行に架設したものである。
【0024】
挟持部材Bは、挟持板が上端部分の係止連結部6の部分が一体に接続し、下方部分が前後二分割となる分割挟持板1a,1bに形成されたものであり、分割挟持板1a,1bの下方にそれぞれ指先保護部2a,2bを設け、指先保護部2a,2bの形成位置に対応する分割挟持板1a,1bの内面及び指先保護部2a,2bの外底面に、食品挟持用突起3及び補助突起31、指先突板部4を設けたものである。
【0025】
特に分割挟持板1a,1bの全体は挟持板1より前後幅を大きくし、且つその分割割合は、約2:1とし、指先保護部2a,2bの大きさを、一指幅と二指幅としたものである。
【0026】
係止連結部6は、分割挟持板1a,1bの連続する部分である上端に分割挟持板1a,1bと連続して形成したもので、その前後幅は鍔部51間に嵌合する大きさとしてなる。
【0027】
形状は、前記軸部52に被冠装着可能な逆U字状で、且つ軸部52に被冠装着した際に先端部61が挟持部材Aの挟持板1の上端縁11の内面に当接する形状としたものである。
【0028】
而して挟持部材A,Bの内面側を対向させて、係止連結部6の先端部61を軸部52と挟持板1の上端縁11の間隙に差し入れて、軸部52に逆U字状の係止連結部6を被冠装着すると、対向する挟持部材A,Bは、下方開口状態で上部の互いの連結部(軸連結部5と係止連結部6が連結される(
図6イ)。
【0029】
前記の連結状態が使用状態であり、食品加工(調理)に際しては、挟持部材A,Bを掌内に納めると共に、親指aの指先を挟持部材Aの指先保護部2内に差し入れて、右手保持の場合には挟持部材Bの指先保護部2aには人差し指bを差し入れ、指先保護部2bには、中指c、薬指dを差し入れ、指先の開閉で挟持部材A,Bの開閉を行う。この開閉操作は係止連結部6の先端部61が挟持板1の上端縁11の内面に当接して係止されているので、掴持圧力を開放すると、反発弾性によって挟持部材は開放状態に復帰する。
【0030】
前記の挟持部材A,Bの開閉によって加工対象食品Xを挟持すると共に、加工対象食品Xに食品挟持用突起3を食い込ませて確りと掴持し、所定の野菜調理器に対して摺動操作することで、安全に食品加工を行うことができる(
図3)。
【0031】
更に、挟持部材Bは分割挟持板1a,1bを採用したものであるから、食品の3点掴持となり、変形食品に対しても確実に掴持することができる。
【0032】
次に非使用時の場合について説明すると、使用時に連結した軸連結部5と係止連結部6の連結を解除し、挟持部材A,Bをそのまま対面状態のままで、係止連結部6の先端部61を、軸部52と挟持板1の上端縁11との間隙に差し入れずに、前記先端部61を前記板上端縁11の外側に添わせるように、係止連結部6を鍔部51の間に嵌合装着すると、両挟持部材は下方閉口状態で、食品挟持用突起3が外部に露出することなく、且つコンパクトに連結されることになる。従って安全かつコンパクト化して収納できるものである。
【符号の説明】
【0033】
A,B 挟持部材
1 挟持板
1a,1b 分割挟持板
11 上端縁
2,2a,2b 指先保護部
21 指当面
3 食品挟持用突起
31 補助突起
4 指先突板部
5 軸連結部
51 鍔部
52 軸部
6 係止連結部
61 先端部