(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪第1実施形態≫
<走査型画像表示装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る走査型画像表示装置100の構成図である。
走査型画像表示装置100は、レーザ光源1a,1b,1cから出射されるレーザ光を走査して、投影面であるスクリーンSに画像を投影(表示)する装置である。走査型画像表示装置100は、車両のフロントガラスに画像を表示するヘッドアップディスプレイの他、プロジェクタ等にも用いられる。
【0011】
図1に示すように、走査型画像表示装置100は、光モジュール10と、制御回路21と、ビデオ信号処理回路22と、レーザ光源駆動回路23と、フロントモニタ信号検出回路24と、走査ミラー駆動回路25と、を備えている。また、走査型画像表示装置100は、前記した構成の他に、光モジュール10の各部品を保持する保持筐体31(
図2参照)や、保持筐体31を収容するベース32、外カバー33等(同図参照)を備えている。
【0012】
図1に示す光モジュール10は、レーザ光源モジュール11と、走査ミラー12と、フロントモニタ13と、を備えている。レーザ光源モジュール11は、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の3原色のレーザ光を一軸上に結合させる機能を有している。レーザ光源モジュール11は、レーザ光源1a,1b,1cと、コリメータレンズ2a,2b,2cと、ビーム結合部3d,3eと、を備えている。
【0013】
レーザ光源1aは、赤色のレーザ光を出射する光源である。レーザ光源1bは、緑色のレーザ光を出射する光源である。レーザ光源1cは、青色のレーザ光を出射する光源である。コリメータレンズ2aは、レーザ光源1aから入射するレーザ光が平行光になるように収差補正するレンズであり、レーザ光源1aの光軸上に設置されている。他のコリメータレンズ2b,2cについても同様である。
【0014】
ビーム結合部3dは、コリメータレンズ2bを介して入射する緑色のレーザ光(レーザビーム)と、他のコリメータレンズ2cを介して入射する青色のレーザ光(レーザビーム)と、を結合し、一軸上のレーザ光とする結合器である。
別のビーム結合部3eは、前記したビーム結合部3dから入射するレーザ光と、コリメータレンズ2aを介して入射する赤色のレーザ光と、を一軸上のレーザ光として結合する結合器である。
【0015】
走査ミラー12は、レーザ光源1a,1b,1cから出射されるレーザ光(前記した結合後のレーザ光)を走査して、スクリーンS(投影面)に画像を投影するミラーである。走査ミラー12は、走査ミラー駆動回路25から入力される駆動信号によって、ミラー面を2次元で(つまり、2軸で)周期的に反復回動させ、ビーム結合部3eから入射するレーザ光を反射させるようになっている。これによって、スクリーンS上に水平・垂直方向の2次元でレーザ光が走査され、画像が表示される。なお、走査ミラー12として、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて作製された2軸駆動ミラーを用いることができる。走査ミラー12は、圧電駆動、静電駆動、電磁駆動等の方式で駆動される。
フロントモニタ13は、ビーム結合部3eにおいて結合した後のレーザ光を検出し、後記するフロントモニタ信号検出回路24に検出信号を出力するようになっている。
【0016】
制御回路21は、外部から入力される画像信号(画像情報)を取り込み、取り込んだ画像情報をビデオ信号処理回路22に出力する。
【0017】
ビデオ信号処理回路22は、制御回路21から入力される画像信号に対して各種処理を施した後、処理後の画像信号をR/G/Bの3原色信号に分離し、分離後の3原色信号をレーザ光源駆動回路23に出力する。また、ビデオ信号処理回路22は、制御回路21から入力される画像信号から水平同期信号(HSYNC)及び垂直同期信号(VSYNC)を抽出し、これらの信号を走査ミラー駆動回路25に出力する。
【0018】
レーザ光源駆動回路23は、ビデオ信号処理回路22から入力される3原色信号のそれぞれについて、輝度値に基づく駆動電流を生成し、この駆動電流によってレーザ光源1a,1b,1cを駆動する。例えば、レーザ光源駆動回路23は、赤色に対応する信号の輝度値に基づく駆動電流によって、赤色のレーザ光源1aを駆動する(緑色・青色についても同様)。これによって、レーザ光源1a,1b,1cからは、画像信号に基づく所定の表示タイミングに合わせて、R/G/Bの輝度値に基づく強度のレーザ光が出射される。
【0019】
走査ミラー駆動回路25は、ビデオ信号処理回路22から入力される水平同期信号及び垂直同期信号に合わせて、走査ミラー12を2次元的に反復回動させる駆動信号を生成し、生成した駆動信号を走査ミラー12に出力する。
【0020】
フロントモニタ信号検出回路24は、フロントモニタ13からの検出信号に基づいて、レーザ光源1a,1b,1cから出射されるR/G/Bのレーザ光の出力レベルを検出する。フロントモニタ信号検出回路24によって検出された出力レベルは、ビデオ信号処理回路22に入力される。そして、レーザ光源駆動回路23によって所定の出力レベルになるようにレーザ光源1a,1b,1cの駆動電流が調整される。
【0021】
図2は、走査型画像表示装置100が備える光モジュール10、保持筐体31、ベース32、及び外カバー33の分解斜視図である。なお、
図2に示すようにx,y,z軸を定義する。
走査型画像表示装置100は、光モジュール10等(
図1参照)の他に、
図2に示す保持筐体31と、ベース32と、外カバー33と、後記する保護カバー34(
図3参照)と、ヒートシンク35(
図3参照)と、温度調整素子36(
図4参照)と、を備えている。
【0022】
図2に示す保持筐体31は、レーザ光源1a,1b,1cや走査ミラー12(
図1参照)等、光モジュール10の各部品を保持する筐体である。保持筐体31の材料として、例えば、高剛性・高熱伝導性のマグネシウム合金を用いることができる。なお、レーザ光源1a,1b,1cは、保持筐体31の内部に向けてレーザ光を出射するように、保持筐体31の側壁に設置されている。
図1に示すコリメータレンズ2a,2b,2c、ビーム結合部3d,3e、走査ミラー12、及びフロントモニタ13も、保持筐体31の内部の所定位置に設置されている。
【0023】
ベース32は、外カバー33とともに保持筐体31を収容する箱状部321(上側が開口した凹状の部分)と、箱状部321の底壁からy軸方向に延びる板状部322と、箱状部321に設置される封止ガラス32gと、を備えている。なお、
図2では、板状部322の一部を省略している。
【0024】
箱状部321には、光モジュール10(
図1参照)を保持する保持筐体31等が設置されている。板状部322には、前記した各回路を実装した基板(図示せず)が設置されている。封止ガラス32gは、走査ミラー12(
図1参照)で反射したレーザ光をスクリーンSに向けて透過させるためのガラスである。この封止ガラス32gは、箱状部321の内部に湿った外気が入り込まないように封止されている。
【0025】
外カバー33は、ベース32とともに保持筐体31を収容するものであり、板状を呈している。外カバー33は、ベース32が備える箱状部321の開口を塞ぐように設置されている。なお、
図3に示す薄肉部33pについては後記する。
【0026】
また、保持筐体31を収容する「収容体」は、ベース32と、外カバー33と、を含んで構成される。外カバー33が設置された状態において、前記した「収容体」の内部は密封されている。例えば、図示はしないが、縦断面視で下側に凹んだ環状のシール溝(図示せず)を箱状部321の上面に設け、このシール溝にOリング(図示せず)を設置することで、「収容体」の内部を密封するようにしてもよい。また、樹脂を用いて、ベース32と外カバー33との隙間を封止してもよい。
このように「収容体」の内部を密封することで、湿った空気が「収容体」の内部に入り込まないようにして、レーザ光源1a,1b,1c等の結露を防止している。そして、「収容体」の内部には、比較的乾燥した空気が密封されている。
【0027】
なお、板状部322上の基板(図示せず)に実装されている回路と、レーザ光源1a,1b,1cと、を電気的に接続する配線(図示せず)付近は、樹脂を用いて封止されている。
【0028】
ベース32及び外カバー33は、例えば、熱伝導率の高いAl(アルミニウム)を用いて形成されている。これによって、レーザ光源1a,1b,1cや各回路から外部に放熱しやすくなるからである。なお、ベース32や外カバー33に用いる材料は、熱伝導率の高いものであればよく、例えば、Cu(銅)を用いてもよい。
【0029】
図3は、走査型画像表示装置100の斜視図である。
図3に示す保護カバー34は、各回路を保護するためのカバーである。前記したように、各回路を実装した基板(図示せず)が板状部322(
図2参照)に設置され、この基板を覆うように保護カバー34が設置されている。なお、保護カバー34として、亜鉛鋼板や鉄板等のSPCC(冷間圧延鋼板)を用いてもよいし、また、熱伝導率の高いAl(アルミニウム)を用いてもよい。
【0030】
ヒートシンク35は、前記した各回路からの熱や、箱状部321(
図2参照)に収容されているレーザ光源1a,1b,1cからの熱を外部に逃がすためのものであり、複数のフィンを有している。
図3に示す例では、ヒートシンク35は、ベース32、外カバー33、及び保護カバー34をx軸方向において両側から挟み込むように設置されている。
【0031】
図4は、
図2のII−II矢視断面図である。なお、
図4では、ヒートシンク35(
図3参照)の図示を省略している。また、
図4に示す矩形状の破線は、ベース32が備える封止ガラス32g(
図2参照)を表している。
図4に示すように、保持筐体31は、走査ミラー12(
図1参照)で反射したレーザ光をスクリーンSに向けて透過させるためのガラス31gを備えている。つまり、走査ミラー12で反射した光が、ガラス31g及び封止ガラス32gを透過してスクリーンSに向かうようになっている。
【0032】
温度調整素子36は、レーザ光源1a,1b,1cの温度を、所定の動作保証温度範囲内で維持するための素子である。温度調整素子36として、自身に流れる電流の大きさ・向きによって温度変化するペルチェ素子を用いることができる。
図4に示す例では、箱状部321の底壁に温度調整素子36が設置され、この温度調整素子36の上に保持筐体31が設置されている。
【0033】
例えば、車両に搭載するヘッドアップディスプレイとして走査型画像表示装置100を用いる場合、寒冷地や真夏日での使用を考慮すれば、環境温度(
図4に示す外気K2の温度)は、摂氏マイナス数十度から摂氏百度近くの範囲で変化する可能性がある。つまり、レーザ光源1a,1b,1cの動作保証温度範囲を大きく外れるほどに環境温度が変化するため、レーザ光源1a,1b,1cの温度を調整するために温度調整素子36を設けている。
【0034】
図4に示すように、外カバー33は、この外カバー33を含む「収容体」の他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部33p(第1変形部)を備えている。薄肉部33pは、「収容体」の内部の圧力変化に伴って弾性変形することで、前記した圧力変化を抑制する機能を有している。
【0035】
なお、外カバー33をAl(アルミニウム)で形成する場合、薄肉部33pの厚さは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。このような厚さにすることで、「収容体」の内部に密封された空気(以下、密封空気K1という:
図4参照)の圧力変化に伴って、薄肉部33pが弾性変形しやすくなるからである。
【0036】
例えば、走査型画像表示装置100が搭載されている車両の環境温度が比較的高いときには、外カバー33やベース32を介した伝熱によって、密封空気K1の温度が密封時(「収容体」の密封直後)よりも高くなる。この温度上昇に伴って密封空気K1の圧力が上昇し始めると、薄肉部33pが外側に向けて膨らむように弾性変形する(
図4の上側の破線を参照)。つまり、「収容体」の容積が大きくなるため、密封空気K1の圧力上昇が抑制される。その結果、密封空気K1の圧力は、密封時と比べてほとんど変化しない。
【0037】
また、例えば、走査型画像表示装置100が搭載されている車両の環境温度が比較的低いときには、密封時よりも密封空気K1の温度が低くなる。この温度低下に伴って密封空気K1の圧力が低下し始めると、薄肉部33pが内側に向けて凹むように弾性変形する(
図4の下側の破線を参照)。つまり、「収容体」の容積が小さくなるため、密封空気K1の圧力低下が抑制される。その結果、密封空気K1の圧力は、密封時と比べてほとんど変化しない。
【0038】
なお、保持筐体31の内部は、図示はしないが、複数箇所において「収容体」の内部と連通している。したがって、保持筐体31の内部の圧力は、密封空気K1の圧力と略同一である。つまり、外気K2の温度が変化しても、保持筐体31に保持されている走査ミラー12(
図1参照)付近の圧力はほとんど変化しない。
【0039】
<効果>
本実施形態によれば、設置環境(外気K2の温度等)が変化しても、「収容体」の内部の圧力変化が抑制されるため、その圧力が略一定に保たれる。これによって、所定の駆動電圧(駆動パターン)で回動する走査ミラー12の空気抵抗が変化しにくくなるため、走査ミラー12の振れ角の変動を抑制できる。したがって、スクリーンS(
図1参照)に投影される画像の歪みを抑制し、高品質な画像を表示できる。
【0040】
図10は、外カバーが薄肉部を有しない比較例において、収容体内の密封空気K1の圧力と、基準位置からの走査ミラー12の振れ角の変動と、の関係を示す説明図である。なお、
図10の横軸は、比較例における「収容体」内の密封空気K1の圧力である。また、
図10の縦軸は、所定の駆動電圧で走査ミラー12を回動させた場合における、基準位置からの走査ミラー12の振れ角の変動である。
【0041】
走査ミラー12(
図1参照)は、2次元で周期的に回動するように構成されている。具体的に説明すると、走査ミラー12は、横方向(X方向)において共振周波数で高速に回動するとともに、縦方向(Y方向)において比較的低速で回動する。
【0042】
前記したように、比較例では、密封空気K1の圧力変化に伴って弾性変形する薄肉部33p(
図4参照)を設けていない。つまり、環境温度が変化しても「収容体」の容積はほとんど変化しないため、「収容体」の内部の圧力が大きく変化する。ちなみに、体積が一定である密封空気K1は、環境温度が摂氏マイナス数十度を基準として、摂氏百度における圧力が1.4倍程度になる。前記した圧力変化に伴って、走査ミラー12が回動する際の空気抵抗が変動し、走査ミラー12の横方向の振れ角も変動する。その結果、スクリーンSに投影される画像に歪みが生じたり、画像全体の大きさが変化したりする可能性がある。なお、
図10に示す縦方向に関しては、走査ミラー12の回動が比較的低速であるため、振れ角の変動はほとんどない。
【0043】
図5は、収容体内の密封空気K1の温度と、基準位置からの走査ミラー12の振れ角の変動と、の関係を示す説明図である。
図5の横軸は、「収容体」内の密封空気K1の温度である。
図5の縦軸は、所定の駆動電圧で走査ミラー12を回動させた場合における、基準位置からの走査ミラー12の振れ角の変動である。
図5の□印は、本実施形態のデータであり、■印は、薄肉部33p(
図4参照)を設けていない比較例のデータである。本実施形態及び比較例のいずれについても、横方向(X方向)の振れ角のみをプロットしている。
【0044】
比較例では、密封空気K1の温度が、例えば、40℃から82.5℃まで上昇すると、所定の駆動電圧で回動する走査ミラー12の横方向の振れ角が、基準位置よりも約2°小さくなっている。これに対して本実施形態では、密封空気K1の温度が40℃から82.5℃まで上昇しても、所定の駆動電圧で回動する走査ミラー12の横方向の振れ角が、基準位置からほとんど変動していない。これは、密封空気K1の圧力変化を抑制するように薄肉部33p(
図4参照)が弾性変形することで、「収容体」の内部の圧力が略一定に保たれるからである。このように、本実施形態によれば、設置環境の変化にかかわらず、歪みのない高品質な画像をスクリーンSに投影できる。
【0045】
また、「収容体」内に気圧センサ(図示せず)を設け、その検出値に応じて走査ミラー12の駆動電圧を設定する従来技術では、気圧センサを設けるぶん製造コストが高くなるという事情があった。また、前記した従来技術では、気圧の検出値が駆動電圧に反映されるまでの時間遅れと、密封空気K1の圧力変化と、が相まって、走査ミラー12の挙動が不安定になるという事情もあった。
これに対して本実施形態によれば、密封空気K1の圧力変化が抑制されるため、所定の駆動電圧で回動する走査ミラー12の振れ角を略一定にすることができる。また、気圧センサを設ける必要がないため、走査型画像表示装置100の製造コストを従来よりも大幅に低減できる。
【0046】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、薄肉部37p(
図6参照)を有する内カバー37を追加した点と、外カバー33Aには薄肉部を設けていない点と、が第1実施形態とは異なるが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0047】
図6は、第2実施形態に係る走査型画像表示装置100Aが備える光モジュール10、保持筐体31、ベース32、外カバー33A、及び内カバー37の分解斜視図である。
第2実施形態に走査型画像表示装置100Aは、第1実施形態で説明した構成に加えて、
図6に示す内カバー37(第1収容体)を備えている。
【0048】
内カバー37は、保持筐体31を収容するものであり、下側が開口した箱状を呈している。内カバー37は、その下端面がベース32の底壁に当接した状態で(
図7参照)、このベース32に固定されている。また、内カバー37がベース32に固定された状態において、内カバー37の内部は密封されている。
【0049】
内カバー37は、例えば、熱伝導率の高いAl(アルミニウム)を用いて形成されている。なお、内カバー37に用いる材料は、熱伝導率の高いものであればよく、例えば、Cu(銅)を用いてもよい。
また、内カバー37は、光モジュール10及び温度調整素子36に接触しないように配置されている。つまり、
図6に示す板状部322上の基板(図示せず)に設置された各回路と、レーザ光源1a,1b,1cと、の間で熱伝導経路が形成されないようにすることで、レーザ光源1a,1b,1cの温度上昇を抑制している。
【0050】
内カバーガラス37gは、走査ミラー12(
図1参照)で反射したレーザ光をスクリーンSに向けて透過させるためのガラスである。この内カバーガラス37gは、内カバー37の内部に湿った外気が入り込まないように封止されている。
【0051】
図7は、
図6のIII−III矢視断面図である。
図7に示すように、内カバー37は、この内カバー37の他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部37p(第1変形部)を備えている。薄肉部37pは、内カバー37の内部(
図7に示す密封空気K1)の圧力変化に伴って弾性変形することで、前記した圧力変化を抑制する機能を有している。
なお、内カバー37をAl(アルミニウム)で形成する場合、薄肉部37pの厚さは、1mm以上10mm以下にすることが好ましい。このような厚さにすることで、密封空気K1の圧力変化に伴って、薄肉部37pが弾性変形しやすくなるからである。
【0052】
外カバー33Aは、ベース32とともに内カバー37を収容する板状部材であり、ベース32の開口を塞ぐように設置されている。なお、内カバー37を収容する「第2収容体」は、ベース32と、外カバー33Aと、を含んで構成される。本実施形態では、前記したように、外カバー33Aに薄肉部を設けていないため、外カバー33Aはほとんど変形しない。
【0053】
ちなみに、外カバー33Aと内カバー37との間に外気K2が入り込まないように、外カバー33Aを密封してもよいし、また、外カバー33Aと内カバー37との間に外気K2が入り込むようにしてもよい。なぜなら、外カバー33Aと内カバー37との間に外気が入り込むか否かに関わらず、内カバー37の内部さえ密封されていれば、レーザ光源1a、1b、1c等の結露を抑制できるからである。
【0054】
また、薄肉部37pの上面(外面)と、外カバー33Aの下面(内面)と、の上下方向の距離によって、内カバー37が外側に向けて弾性変形する限度を調整してもよい。つまり、弾性変形する薄肉部37pの上面が、ある高さで外カバー33Aの下面に接触するようにすることで、薄肉部37pの弾性変形の限度を調整してもよい。これによって、内カバー37の破損を防止できる。
【0055】
<効果>
本実施形態によれば、薄肉部37pを備える内カバー37を設けることで、内カバー37の内部の圧力変化を抑制できる。したがって、所定の駆動電圧における走査ミラー12の振れ角の変動を抑制し、スクリーンSに投影される画像の歪みを抑制できる。
また、例えば、外カバー33Aと内カバー37との間も密封することによって、保持筐体31を二重構造で密封できるため、第1実施形態よりも光モジュール10の結露をさらに抑制できる。
また、薄肉部37pと外カバー33Aの上下方向の距離によって、内カバー37が外側に向けて弾性変形する限度を調整することで、内カバー37の破損を防止できる。
【0056】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、外カバー33B(
図8参照)が薄肉部を備えない点と、外カバー33Bを含む「収容体」の内部に密封されている気体K3(
図8参照)の密度が、外気K2の密度よりも小さい点と、が第1実施形態と異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0057】
図8は、第3実施器形態に係る走査型画像表示装置100Bの縦断面図である。
図8に示すベース32及び外カバー33Bは、保持筐体31を収容する「収容体」であり、その内部は密封されている。本実施形態において「収容体」に密封されている気体K3の密度は、標準状態(0℃、1013.25hPa)における空気の密度未満である。このような気体K3として、例えば、窒素や酸素よりも分子量の小さいヘリウムやネオンを用いることができる。
【0058】
前記した気体K3がヘリウムであるとして、その密封は次の手順で行われる。すなわち、ベース32に外カバー33Bを設置して封止し、ベース32の開口部(封止ガラス32gが設置される箇所)を介して、「収容体」の内部の密封空気をヘリウムに置換する。その後、前記した開口部に封止ガラス32gを設置して、気密性を維持する。なお、標準状態よりも高温・低圧で気体K3を密封し、「収容体」の内部に存在する気体K3のモル数を比較的少なくしてもよい。このようにして空気の密度未満であるヘリウムを「収容体」の内部に密封すると、空気を密封する場合と比較して、走査ミラー12が回動する際の粘性抵抗が小さくなる。また、「収容体」の内部の温度変化しても、圧力が変化しにくくなる。したがって、所定の駆動電圧における走査ミラー12の振れ角の変動が抑制され、スクリーンSに投影される画像の歪みを抑制できる。
【0059】
また、「収容体」の内部に密封する気体K3の密度に代えて、気体K3の粘度に着目してもよい。つまり、「収容体」に密封されている気体K3の粘度が、標準状態(0℃、1013.25hPa)における空気の粘度未満であるようにしてもよい。このような気体K3として、例えば、ヘリウムやネオンを用いることができる。
【0060】
<効果>
本実施形態によれば、空気よりも密度又は粘度の小さい気体K3を「収容体」に密封することで、「収容体」の内部の圧力変化を抑制できる。したがって、走査ミラー12の振れ角の変動を抑制し、スクリーンSに投影される画像の歪みを抑制できる。
また、本実施形態によれば、外カバー33Bに薄肉部を設ける必要がないため、走査型画像表示装置100Bの製造工程を簡単化できる。
【0061】
≪変形例≫
以上、本発明に係る走査型画像表示装置100,100A,100Bについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、以下で説明するように走査型画像表示装置100Cを構成してもよい。
【0062】
図9は、第1の変形例に係る走査型画像表示装置100Cの縦断面図である。
第1の変形例は、第1実施形態の構成に変形部39(第2変形部)を追加した構成になっている。変形部39は、薄肉部33p(第1変形部)の外面に塗布又は接着されており、薄肉部33pよりも線膨張係数の大きい材料で形成されている。このような変形部39の材料として、ポリスチレンやポリカーボネートを用いることができる。
【0063】
図9に示す密封空気K1が温度上昇し、薄肉部33pが外側に弾性変形する際には(上側の破線を参照)、前記した温度上昇に伴って変形部39も膨張し、薄肉部33pと一体になって外側に変形する。
また、密封空気K1が温度低下し、薄肉部33pが内側に弾性変形する際には(下側の破線を参照)、前記した温度低下に伴って変形部39が収縮し、薄肉部33pと一体になって内側に変形する。このように変形部39を設けることで、薄肉部33pが変形しやすくなるため、「収容体」の内部の圧力変化を適切に抑制できる。
なお、第1の変形例を第2実施形態(
図7参照)に適用し、薄肉部37p(第1変形部)の外面に、内カバー37よりも線膨張係数の大きい変形部(第2変形部)を塗布又は接着してもよい。
【0064】
また、第2の変形例として、「収容体」の内部を減圧するようにしてもよい。すなわち、第1実施形態の構成において、「収容体」(ベース32及び外カバー33:
図4参照)の内部を、「標準気圧」よりも低い圧力で密封してもよい。なお、前記した「標準気圧」とは、1013.25hPa(1atm)の気圧である。
例えば、「収容体」の内部に密封されている空気の圧力が標準気圧よりも低い圧力となるように、減圧チャンバ(図示せず)を用いて減圧する。これによって、走査ミラー12が回動する際の空気の粘性抵抗が小さくなるため、走査ミラー12の振れ角の変動を第1実施形態よりも抑制できる。なお、走査型画像表示装置100の設置環境によって大気圧が多少は変化するが、「収容体」の内部が十分に減圧されているため、走査型画像表示装置100の使用時においても「収容体」の内部は標準気圧よりも低い圧力で維持される。
また、「収容体」の内部を略真空(真空に近い状態)にしてもよい。すなわち、第1実施形態の構成において、ベース32(
図4参照)に外カバー33を設置した後、真空ポンプ(図示せず)を用いて「収容体」の内部を略真空とした後、封止ガラス32gで封止してもよい。また、ベース32に真空引き弁(図示せず)を設置し、この真空引き弁を用いて「収容体」の内部を略真空にしてもよい。「収容体」の内部を略真空にすると、「収容体」の壁面からの熱輻射で内部の温度が変化したとしても、内部の密度・粘度は略ゼロで維持される。したがって、温度変化に関わらず、走査ミラー12の振れ角の変動を抑制できる。なお、第2の変形例は、第2、第3実施形態にも適用できる。
【0065】
また、第3の変形例として、第1実施形態において温度調整素子36(
図4参照)を用いて「収容体」の内部を比較的高温にした状態で、外カバー33をベース32に設置するようにしてもよい。所定圧力下において温度を高くすると、密封空気K1の密度・粘度が小さくなるため、「収容体」の内部の圧力変化を抑制できる。また、温度調整素子36に代えて恒温機(図示せず)を設置し、この恒温機によって「収容体」の内部を比較的高温にした状態で空気を密封してもよい。なお、第3の変形例は、第2、第3実施形態にも適用できる。
【0066】
また、第4の変形例として、第1実施形態で説明した外カバー33に代えて、ダイアフラム(第1変形部)を用いてもよい。また、外カバー33の一部に孔を設け、この孔にダイアフラムを設置してもよい。樹脂製のダイアフラムは、金属製の外カバーよりも変形しやすいため、「収容体」の内部の圧力変化を適切に抑制できる。なお、第4の変形例は、第2実施形態にも適用できる。
【0067】
また、第5の変形例として、第1実施形態で説明した「収容体」の内部(例えば、保持筐体31と外カバー33との間:
図4参照)に吸着材(図示せず)を設置してもよい。これによって「収容体」の内部の水分が、吸着材に吸着される。その結果、空気の密封時よりも「収容体」の内部が減圧され、その圧力変化を抑制できる。また、吸着材を設置することで、光モジュール10の結露を防止できる。なお、第5の変形例は、第2、第3実施形態にも適用できる。
【0068】
また、第6の変形例として、第2実施形態で説明した内カバー37(
図7参照)の上壁をダイアフラムで構成し、ベース32に外カバー33Aを設置する際、ダイアフラムを外側(上側)に変形させることで、内カバー37の内部を減圧してもよい。例えば、外カバー33Aの下面と、ダイアフラムの上面と、にそれぞれ磁石を設置し、これらの磁石が鉛直方向で互いに引き合うようにする。外カバー33Aを設置すると、磁力によってダイアフラムの一部分が吊り上げられて、外側に向けて膨らむようにダイアフラムが変形する。これによって、内カバー37内が減圧されるため、走査ミラー12の振れ角の変動を抑制できる。
【0069】
また、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせ、第1実施形態の構成において、「収容体」にヘリウムやネオンを密封してもよい。すなわち、「収容体」に密封されている気体の密度が、標準状態における空気の密度未満になるようにしてもよい。また、「収容体」に密封されている気体の粘度が、標準状態における空気の粘度未満になるようにしてもよい。これによって、走査ミラー12が回動する際の粘性抵抗が小さくなるため、走査ミラー12の振れ角の変動を第1実施形態よりもさらに抑制できる。同様に、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることもできる。
【0070】
また、各実施形態では、2軸駆動の走査ミラー12(
図1参照)を用いる構成について説明したが、これに限らない。すなわち、1軸駆動の走査ミラーを2つ用意し、互いに直交する方向にレーザ光を走査できるように配置してもよい。
また、各実施形態では、レーザ光源1a,1b,1cの温度上昇を抑制するために温度調整素子36を設ける構成について説明したが、これに限らない。すなわち、走査型画像表示装置100の設置環境が事前に把握できており、温度調整素子36を設けずとも、「収容体」の内部がレーザ光源1a,1b,1cの動作保証温度範囲内であることを予測できていれば、温度調整素子36を省略してもよい。
【0071】
また、実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。