特許第6559567号(P6559567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559567刺激の効果下で状態を変化させることが可能な材料を含んだ粒子の分散体を含む組成物を使用する毛髪の美容処置の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559567
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】刺激の効果下で状態を変化させることが可能な材料を含んだ粒子の分散体を含む組成物を使用する毛髪の美容処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20190805BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20190805BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61Q5/06
   A61K8/02
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-537222(P2015-537222)
(86)(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公表番号】特表2015-533179(P2015-533179A)
(43)【公表日】2015年11月19日
(86)【国際出願番号】EP2013071507
(87)【国際公開番号】WO2014060400
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】1259794
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/737,905
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・プロ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】レティシア・フェイエット
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・ピストリオ
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−507726(JP,A)
【文献】 特開2001−342117(JP,A)
【文献】 特開平07−069840(JP,A)
【文献】 特開2003−212735(JP,A)
【文献】 特開2003−226618(JP,A)
【文献】 特開2005−213252(JP,A)
【文献】 特開2004−203881(JP,A)
【文献】 特表2006−501257(JP,A)
【文献】 特開2006−213718(JP,A)
【文献】 特開平4−230616(JP,A)
【文献】 特開平11−286418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61K 5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪を形づくる方法であって、
- 毛髪へ、1種又は複数種の溶媒からなる液状溶媒系、及び前記溶媒系に不溶性であり外的刺激の効果下で状態を変化させることが可能な材料を含んだ粒子の分散体を含む組成物を適用する工程と、
- 前記組成物の適用前、適用中又は適用後に、毛髪を、所望のヘアスタイルへ形づくる工程と、次いで又は同時に、
- 材料の状態の変化を可能にする1種又は複数種の刺激を施す工程と、
- ヘアスタイルの固定化を得るため前記刺激を止める工程と
を含み、
固定化ポリマーを適用する工程を含まず、
材料の状態の変化を可能にする前記刺激が、熱的刺激であり、
前記材料が、状態を可逆的に変化させることが可能であり、
前記材料が、固体状態から液体状態へ移行するように状態を変化させることが可能であり、
前記材料が、動物起源、植物起源又は鉱物起源のワックスから選択される天然起源のワックス又はこれらの混合物から選択され、
前記粒子の数平均一次粒子径が、1〜500μmを範囲とする、
方法。
【請求項2】
前記熱的刺激が、ヘアドライヤー、加熱用フード、赤外線放射又はマイクロ波の手段によって施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料の融点/軟化点が、30℃〜150℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒の沸点が、前記材料の融点/軟化点を超えている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、水及び有機溶媒、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、水、エタノール又はこれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子が、組成物の総質量に対して、少なくとも0.05質量%の割合で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、増粘剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
材料の状態の変化を可能にする前記刺激が、30秒〜3時間を範囲とする期間施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ゲル、ローション又はムースの形態にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激の効果下で状態を変化させることが可能な材料の粒子の分散体を含む組成物を使用する毛髪の美容処置の方法に関し、詳細には、該組成物を使用したヘアスタイルの保持を形づくる及び/又は形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容製品の市場で最も普及している、ヘアスタイルの保持を形づくる及び/又は形成するための毛髪用製品は、スプレー組成物、例えばラッカー及びスプレーである。ラッカー及びスプレーは、アルコール性溶液又は水性溶液、及び1種又は複数種の材料、一般にポリマー樹脂から本質的に構成され、それは固定化成分としても知られ、その機能は、種々の美容補助剤との混合物として毛髪間の密着を形成することである。ラッカーは、具体的には、効果的でほとんど知覚できないスポットの固定化を得ることを可能にする。スプレー及びラッカーは、エアロゾル装置又はポンプの手段によって一般に分配され、そのため、単純な、ボトル、チューブ又は瓶に比べ、付加的な廃棄物を生じさせる。
【0003】
更に、ヘアスタイルを形づくるために、熱処置を用いたスタイリング方法がある。仏国特許第2811886号は、例えば、毛髪へ、固定化ポリマー及び熱溶融ポリマーを含有する組成物を適用する工程、並びにポリマーの融点に近い又は融点を超える温度で加熱して次いで冷却させる工程から構成されるスタイリング方法を記載している。熱溶融ポリマーは、固定化ポリマーと合わされ、且つ配合媒体に溶解性であるため、ヘアスタイルの固定化は毛髪の被覆によって得られ、これは、かなり知覚できるものである。
【0004】
独国特許第2810130号は、頭部毛髪を形づくる方法を記載しており、これは、頭部毛髪へ、ポリマーの、パウダー、メッシュ又はネットを適用する工程と、次いで加熱して該ポリマーを溶融させて、そうしてヘアスタイルを固める工程とから成る。該ポリマーは、35℃から120℃の間の温度で軟化し又は溶融し、熱は、フード又は「輻射加熱器」等のツールで、40℃から150℃の間の温度で加えられる。しかしながら、パウダー、メッシュ又はネットは、精密さをもって毛髪へ適用することが相当難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2811886号
【特許文献2】独国特許第2810130号
【特許文献3】米国特許第A-4874554号
【特許文献4】米国特許第A-4137180号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ISO規格11357-3、1999年
【非特許文献2】Mineralogie des argiles [Mineralogy of Clays]、S. Caillere、S. Henin、M. Rautureau、第2版、1982年、Masson
【非特許文献3】CTFA(第6版、1995年)
【非特許文献4】M.R.Porter、Handbook of Surfactants、Blackie & Son(グラスゴー及びロンドン)が出版、1991年、116〜178頁
【非特許文献5】CTFA辞典、第5版、1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
単純で精密な適用動作で、特定の分散装置を使用する必要性なしに、ほとんど知覚できない、効果的なヘアスタイルの固定化を得る必要性がある。
【0008】
出願人は、先行技術の欠点を矯正して上記の目的に適うようにすることが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、毛髪の美容処置の方法、詳細には毛髪を形づくる方法であり、該方法は、
- 毛髪へ、液状溶媒系、及び該溶媒系に不溶性であって外的刺激の効果下で状態を変化させることが可能な少なくとも1種の材料を含んだ粒子の分散体を含む組成物を適用する工程と、
- 該組成物の適用前、適用中又は適用後に、毛髪を、所望のヘアスタイルへ形づくる工程と、次いで又は同時に、
- 材料の状態の変化を可能にする1種又は複数種の刺激を施す工程と、
- ヘアスタイルの固定化を得るための刺激を止める工程と
を含む。
【0010】
刺激が施されている間、材料は、状態を変化させ、具体的には固体状態から液体状態へ移行させる。粒子は、溶融し、毛髪間にスポットを密着させる。固定化は、エアロゾルの使用に頼ることなしに、ラッカーで得られた固定化のタイプに匹敵し、且つゲルでの固定化よりもはるかに知覚できない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の、他の対象、特徴、態様及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことで、より一層明らかになる。
【0012】
表現「少なくとも1つの」は、表現「1つ又は複数の」と同義である。
【0013】
材料の状態の変化を可能にする刺激は、熱的刺激、機械的刺激、pH変化刺激及び光刺激から選択される。
【0014】
好ましくは、材料の状態の変化を可能にする刺激は、熱的刺激である。
【0015】
熱的刺激は、ヘアドライヤー、加熱用フード、赤外線放射又はマイクロ波の手段によって施される。
【0016】
他の刺激は、次のように想定することができる:機械的刺激は、摩擦により、圧力により、又は振動により生じることが可能であり、pH変化は、化合物の沈殿により生じることが可能であり;光、詳細には、可視光又はUV光は、ランプの手段により又は光反応により施されうる。
【0017】
本発明による方法において適用される組成物は、溶媒系、及び該溶媒系に不溶性である粒子の分散体を含み、該溶媒に不溶性である粒子は、状態を変化させることが可能な材料を含む。
【0018】
用語「溶媒系」は、単独の溶媒又は溶媒混合物を意味することを意図している。
【0019】
本発明の目的では、表現「溶媒系に不溶性である粒子」は、その、25℃及び大気圧での溶媒系中の溶解度が0.1%未満、より一層良好には0.001%未満であって、固体形態又はペースト状形態にある、好ましくは固体形態にある、溶媒中に存在する粒子を意味することを意図している。
【0020】
一実施形態によれば、溶媒系に不溶性である粒子は、その軟化点又は融点が30℃から150℃の間である(限界値を含む)少なくとも1種の材料を含む。好ましくは、該化合物は、軟化点又は融点が、30℃から120℃の間、より一層優先的には35℃から80℃の間である(限界値を含む)。
【0021】
軟化点の値又は融点の値は、DSC(示差走査熱量測定)法によって求められることが可能であり、その場合、軟化点又は融点は溶融ピークに相当し、温度上昇は5℃/分又は10℃/分である。融点はまた、コフラーベンチを用いても測定することができる。
【0022】
溶媒系に不溶性である粒子は、熱可塑性ポリマーの、ワックスの若しくはペースト状脂肪物質の、又はこれらの化合物の混合物の、粒子であってよい。
【0023】
好ましくは、溶媒系に不溶性である粒子は、ケイ素原子を含有しない。
【0024】
熱可塑性ポリマーは、ホモポリマー及びコポリマー、詳細には、例えば、ポリアクリル、ポリメタクリル等のブロック及び/又はランダムホモポリマー又はコポリマーから選択されてよく、例としては、ポリアクリルアミド又はポリメタクリル酸、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン及びポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(ハロゲン化ビニル)、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、ポリ(ビニルニトリル)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニル、ポリビニルエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、主鎖に環を有する多環、例えばポリフェニレン、主鎖にヘテロ原子を有するポリマー、例えばポリアミド、ポリオキシフェニレンから選択されてよい。
【0025】
ホモポリマーの事例において、それらは、より具体的には、以下のモノマーから構成されるホモポリマーから選択することができる:
そのホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマー、好ましくは以下のモノマーから選択される:
- 式CH2=C(CH3)COOR1のメタクリレート
(式中、R1は、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基若しくはイソブチル基を表し、前記アルキル基が、ヒドロキシル基及びハロゲン原子(Cl、Br、I又はF)から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されていることも可能であり、又はR1はC4〜C12シクロアルキル基を表す)
- 式CH2=CHCOOR2のアクリレート
(式中、R2は、C4〜C12シクロアルキル基、例えばアクリル酸イソボルニル基又はtert-ブチル基を表す)
- 次式の(メタ)アクリルアミド
【0026】
【化1】
【0027】
(式中、R7及びR8は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれが、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状のC1〜C12アルキル基、例えば、n-ブチル基、t-ブチル基、イソプロピル基、イソヘキシル基、イソオクチル基若しくはイソノニル基を表し、又はR7はHを表してR8は1,1-ジメチル-3-オキソブチル基を表し、
且つR'は、H又はメチルを示す)
挙げることができるモノマーの例には、N-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジブチルアクリルアミドが含まれる。
- スチレン及びその誘導体、例えばクロロスチレン
- 及びそれらの混合物。
【0028】
特に好ましいモノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、スチレン、並びにこれらの混合物である。
【0029】
好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、又はこれらの化合物のコポリマーから選択される。
【0030】
組成物はまた、ワックスの粒子も含んでよい。
【0031】
用語「ワックス」は、室温(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化を伴い、融点が30℃以上であり、200℃までは可能である、親油性化合物を意味することを意図している。
【0032】
本発明の目的では、融点は、ISO規格11357-3、1999年に記載されている熱分析(DSC)で観察される最大吸熱ピークの温度に相当する。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instruments社により名称MDSC2920で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0033】
測定プロトコルは、以下の通りである:
るつぼに入れたワックス5mgの試料に、-20℃から100℃を範囲とする第1の温度上昇を加熱速度10℃/分で施し、それを、次いで、100℃から-20℃へ冷却速度10℃/分で冷却し、最後に-20℃から100℃を範囲とする第2の温度上昇を加熱速度5℃/分で施す。第2の温度上昇中に、空のるつぼが吸収する力と、ワックスの試料を含有するるつぼが吸収する力との差の変動を、温度の関数として測定する。化合物の融点は、吸収される力の差の変化を温度の関数として示す曲線のピークの頂点に相当する温度値である。
【0034】
ワックスは、室温で固体である、天然起源のワックス、合成ワックス及びそれらの混合物から選択することができる。
【0035】
本発明の目的では、「天然起源のワックス」は、ワックスが合成ワックスではないこと、即ち化学的合成によって得られたものでないことを示唆する。
【0036】
天然起源のワックスは、植物源、動物源又は鉱物源に由来する。
【0037】
しかしながら、この天然ワックスは、精密にする及び/又は精製するタイプの第2の処理、そうでなければ化学反応、例えばエステル化又はエーテル化を受ける。これらの天然起源の変性ワックスもまた、本発明に好適である。
【0038】
一般に、本発明の関連において検討されるワックスは、室温(25℃)で固体である親油性化合物である。
【0039】
本発明に好適である天然起源のワックスの例示として特に挙げることができるのは、炭化水素系ワックス、例としては、みつろう、ラノリンワックス、シナロウ、コメヌカロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウ、オーリクリーワックス、エスパルトワックス、ベリーワックス、シェラックワックス、はぜ蝋、木蝋、モンタンワックス、オレンジワックス及びレモンワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビロウ、ダイズロウ、ヤマモモロウ、レタモ(retamo)ロウ、パーム核ロウ、パームロウ、鯨ロウ、Astrocaryum murumuru脂、Myrica pubescenワックス、オキシエチレン化マンゴー油、並びにこれらに由来する生成物である。
【0040】
これらに由来する生成物の例示として特に挙げることができるのは、天然起源の変性ワックス、例としては、Gattefosse France社により商品名「Apifil」で販売されているポリエチレングリコール-8の変性みつろう、Koster Keunen社により商品名「Cera Bellina(登録商標)」で販売されているポリグリセリル-3の変性みつろう、オキシプロピレン化ラノリンワックス、及びこれらの混合物である。
【0041】
直鎖状若しくは分枝状のC8〜C32脂肪鎖を含有する動物油又は植物油の接触水添によって得られるワックスもまた挙げることができる。これらの中で特に挙げることができるのは、Desert Whale社により商品参照名Iso-Jojoba-50(登録商標)で製造されている又は販売されているトランス異性化した部分水添ホホバ油等の異性化ホホバ油、水添ヒマワリ油、水添ヒマシ油、水添ヤシ油、水添ラノリン油である。
【0042】
みつろうが、好ましくは使用されることになる。
【0043】
合成ワックスは、非極性ワックス及びエステルワックスから選択されてよい。
【0044】
用語「エステルワックス」は、本発明によれば、少なくとも1つのエステル官能基を含むワックスを意味することを意図している。
【0045】
セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水添によって得られたワックス、Sophim社により名称Phytowax ricin 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)で販売されているものもまた、エステルワックスとして使用することができる。
【0046】
使用されてよいエステルワックスとして更に挙げることができるのは、Heterene社により名称Hest 2T-4S(登録商標)で販売されているテトラステアリン酸ビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)である。
【0047】
用語「エステルワックス」はまた、式R1COOR2(式中、R1及びR2は、その原子の数が10〜50個であって、O、N又はP等のヘテロ原子を含有してよく、その融点が25〜120℃を範囲とする、直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族鎖を表す)のエステルを意味することを意図している。例えば、パルミチン酸セチル、ヒドロステアリン酸ヒドロキシオクタコサノール、テトララウリン酸ビス(トリメチロールプロパン)、及びアジピン酸ジラウリルとアジピン酸ジテトラデシルとの混合物を挙げることができる。
【0048】
非極性ワックスは、詳細には、炭素原子及び水素原子のみで構成されていて、N、O、Si及びP等のヘテロ原子を含まない炭化水素系ワックスである。
【0049】
本発明にとって好適である非極性ワックスの例示として挙げることができるのは、炭化水素系ワックス、例えば微結晶ワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、セレシンワックス及びポリエチレンワックス、Fischer-Tropsch合成によって得られるワックス、及び蝋様コポリマー、並びに更にこれらのエステルである。
【0050】
オゾケライトとして挙げることができるのは、Ozokerite Wax SP 1020 Pである。
【0051】
使用されうる微結晶ワックスとして挙げることができるのは、Sonneborn社により販売されているMultiwax W445(登録商標)、並びにParamelt社により販売されているMicrowax HW(登録商標)及びBase Wax30540(登録商標)である。
【0052】
更に挙げることができるのは、シリコーンワックス、例えばC10〜C45アルキル基を含有するアルキルジメチコン又はアルコキシジメチコン、30℃で固体であってそのエステル鎖が少なくとも10個の炭素原子を含むポリ(ジ)メチルシロキサンエステル、フルオロポリメチルジメチルシロキサン及びこれらの混合物である。
【0053】
直鎖状のC10〜C30脂肪アルコール、例えばステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール又はデコサノールの使用もまた想定することができる。
【0054】
好ましくは、Heterene社により名称Hest 2T-4S(登録商標)で販売されているテトラステアリン酸ビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)が使用されることになる。
【0055】
状態を変化させることが可能な材料はまた、少なくとも1種のペースト状脂肪物質も含んでよい。
【0056】
本発明の目的では、用語「ペースト状脂肪物質」は、可逆的な固体/液体の状態変化を伴い、温度23℃で液体画分及び固体画分を含む、親油性脂肪化合物を意味することを意図している。
【0057】
言い換えれば、ペースト状化合物の出発融点は、23℃未満とすることができる。ペースト状化合物の、23℃で測定した液体画分は、該化合物の9質量%〜97質量%を占めることができる。23℃におけるこの液体画分は、15質量%から85質量%の間、より好ましくは40質量%から85質量%の間を好ましくは占める。
【0058】
好ましくは、ペースト状脂肪物質は、終点融点が60℃未満である。
【0059】
好ましくは、ペースト状脂肪物質は、硬度が6MPa以下である。
【0060】
好ましくは、ペースト状脂肪物質は、固体状態において異方性の結晶組織を有し、これはX線観察によって見ることができる。
【0061】
本発明の目的では、融点は、ISO規格11357-3、1999年に記載されている熱分析(DSC)において観察された最大吸熱ピークの温度に相当する。ペースト状物質の融点、又はワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instruments社により名称DSC Q2000で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0062】
融点の測定、及び終点融点の判定に関して、試料の、調製及び測定プロトコルは、以下の通りである:
80℃へ予加熱して、同様に加熱してあるスパチュラを用いた磁気撹拌で引き戻したペースト状脂肪物資5mgの試料を、密封したアルミニウムカプセル又はるつぼの中に入れる。結果の再現性を確保するために、2回の試験を実施する。
【0063】
測定は、上記の熱量計で実施する。オーブンを、窒素でフラッシュする。冷却を、RCS 90熱交換器で実施する。続いて該試料を以下のプロトコルに供する:該試料を最初に温度20℃で入れ、次いで20℃から80℃へ移行させる第1の温度上昇を加熱速度5℃/分で施し、次いで80℃から-80℃へ冷却速度5℃/分で冷却し、最後に-80℃から80℃へ移行させる第2の温度上昇を加熱速度5℃/分で施す。第2の温度上昇中に、空のるつぼが吸収する力と、ペースト状物質又はワックスの試料を含有するるつぼが吸収する力との差の変動を、温度の関数として測定する。化合物の融点は、温度の関数として吸収される力の差の変動を表す曲線のピークの頂点に相当する温度値である。
【0064】
終点融点は、そこで試料の95%が溶融した温度に相当する。
【0065】
ペースト状化合物の、23℃での液体画分(質量による)は、23℃で消費される融解エンタルピーの、ペースト状化合物の融解エンタルピーに対する比に等しい。
【0066】
ペースト状化合物の融解エンタルピーは、固体状態から液体状態へ移行するために化合物によって消費されるエンタルピーである。ペースト状化合物は、その質量の全てが結晶性固体形態にあるとき、固体状態にあると言われる。ペースト状化合物は、その質量の全てが液体形態にあるとき、液体状態にあると言われる。
【0067】
ペースト状化合物の融解エンタルピーは、ISO規格11357-3、1999年に従って、上記の熱量計を用いて1分当たり5℃又は10℃の温度上昇をして得られた全ての溶融曲線の積分に等しい。ペースト状化合物の融解エンタルピーは、化合物を固体状態から液体状態へ変化させるために必要なエネルギーの量である。これはJ/gで表される。
【0068】
23℃で消費される融解エンタルピーは、試料が23℃で示す液状画分と固体画分とからなる状態へ、固体状態から変化するために、試料が吸収するエネルギーの量である。
【0069】
ペースト状化合物の、32℃で測定される液体画分は、該化合物の30質量%〜100質量%、好ましくは該化合物の50質量%〜100質量%、より好ましくは該化合物の60質量%〜100質量%を好ましくは占める。ペースト状化合物の、32℃で測定される液体画分が100%に等しいとき、ペースト状化合物の溶融範囲の終点の温度は32℃以下である。
【0070】
ペースト状化合物の、32℃で測定される液体画分は、32℃で消費される融解エンタルピーの、ペースト状化合物の融解エンタルピーに対する比に等しい。32℃で消費される融解エンタルピーは、23℃で消費される融解エンタルピーと同じ方法で計算される。
【0071】
硬度の測定に関して、試料の、調製及び測定のプロトコルは、以下の通りである:
ペースト状脂肪物質を、直径75mmの型の中に入れ、該物質を、型の高さのおよそ75%まで満たす。熱履歴を克服するために、且つ結晶化を抑制するために、型を、プログラム可能なVotsch VC0018のオーブン中へ入れ、そこで、該型を、最初に温度80℃で60分入れておき、次いで80℃から0℃へ冷却速度5℃/分で冷却し、次いで安定化温度0℃で60分放置し、次いで0℃から20℃へ移行させる温度上昇を加熱速度5℃/分で施し、次いで安定化温度20℃で180分放置する。
【0072】
圧縮力の測定は、Swantech社製のTA/TX2i質感分析器で実施する。使用するスピンドルは、質感に応じて以下の通り選択する:
- きわめて硬質の出発材料には、直径2mmの円柱形鋼鉄製スピンドル
- あまり硬質ではない出発材料には、直径12mmの円柱形鋼鉄製スピンドル。
【0073】
該測定は、3つの段階を含む:試料の表面の自動検出後の、第1の段階、そこでスピンドルは、0.1mm/秒の測定速度で移動し、ペースト状脂肪物質を貫通深さ0.3mm(ソフトウェアは、達成された最大力の値を記録する)まで貫通し;第2の「緩和」段階、そこでスピンドルは1秒間、この位置に残り、そこで該力は1秒の緩和後に記録され;最後に、第3の「引き戻し」段階、そこでスピンドルは、その所期の位置へ1mm/秒の速度で戻り、プローブの引き戻しエネルギー(負の力)が記録される。
【0074】
第1の段階中に測定した硬度値は、ニュートンで測定された最大圧縮力を、テクスチュロメータシリンダがペースト状脂肪物質と接触している面積(mm2で表される)で割った値に相当する。得られた硬度値は、メガパスカル又はMPaで表される。
【0075】
ペースト状脂肪物質は、合成脂肪物質、及び植物由来の脂肪物質から好ましくは選択される。ペースト状脂肪物質は、植物由来の出発材料からの合成によって得ることができる。
【0076】
ペースト状脂肪物質は、有利には以下から選択される:
- ラノリン及びその誘導体
- ポリアルキレングリコールのペンタエリスリチルエーテル、糖の脂肪アルキルエーテル及びこれらの混合物から選択されるポリオールエーテル、5オキシエチレン単位(5 OE)を含むポリエチレングリコールのペンタエリスリチルエーテル(CTFA名:PEG-5ペンタエリスリチルエーテル)、5オキシプロピレン単位(5 OP)を含むポリプロピレングリコールのペンタエリスリチルエーテル(CTFA名:PPG-5ペンタエリスリチルエーテル)及びこれらの混合物、並びにより具体的には、Vevy社により名称Lanolideで販売されている、PEG-5ペンタエリスリチルエーテルとPPG-5ペンタエリスリチルエーテルとダイズ油との混合物(この混合物において成分の質量比は46/46/8であり、即ち46%のPEG-5ペンタエリスリチルエーテルと、46%のPPG-5ペンタエリスリチルエーテルと、8%のダイズ油である)
- ポリマー若しくは非ポリマーのシリコーン化合物
- ポリマー若しくは非ポリマーのフルオロ化合物
- ビニルポリマー、特に:
・オレフィンのホモポリマー及びコポリマー
・水添ジエンのホモポリマー及びコポリマー
・好ましくはC8〜C30アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルの、直鎖状若しくは分枝状のオリゴマー、ホモポリマー又はコポリマー
・C8〜C30アルキル基を含有するビニルエステルのホモポリマー及びコポリマーであるオリゴマー
・C8〜C30アルキル基を含有するビニルエーテルのホモポリマー及びコポリマーであるオリゴマー
- 1種又は複数種のC2〜C100ジオール、好ましくはC2〜C50ジオール間でのポリエーテル化から得られる脂溶性ポリエーテル
- エステル
- 並びに/又はこれらの混合物。
【0077】
脂溶性ポリエーテルのうち特に好ましいのは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとC6〜C30長鎖アルキレンオキシドとのコポリマーであり、より好ましくは、コポリマーにおける、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの、アルキレンオキシドに対する質量比が5:95〜70:30となるものである。この系統群で特に挙げることができるのは、長鎖アルキレンオキシドが、平均分子量1000〜10000を有するブロックに配列されているようなコポリマーであり、例えば、Akzo Nobel社により商品名Elfacos ST9で販売されている、ドデカンジオール(22mol)とポリエチレングリコール(45 OE)とのエーテル等のポリオキシエチレン/ポリドデシルグリコールのブロックコポリマーである。
【0078】
エステルのうち、以下が特に好ましい:
- グリセロールオリゴマーのエステル、特にジグリセロールエステル、とりわけアジピン酸とグリセロールとの縮合物であって、グリセロールのヒドロキシル基の一部が、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、カプリン酸、イソステアリン酸及び12-ヒドロキシステアリン酸)の混合物と反応しているもの、例えば、具体的にはSasol社により商品名Softisan 649で販売されているもの
- Alzo社により商品名Waxenol 801で販売されているプロピオン酸アラキジル
- フィトステロールエステル
- 脂肪酸トリグリセリド及びその誘導体
- ペンタエリスリトールエステル
- 遊離のアルコール官能基又は酸官能基が酸基又はアルコール基で必要に応じてエステル化された、ジオール二量体と二酸二量体とのエステル、特に二量体ジリノール酸エステル;こうしたエステルは、以下のINCI名を有するエステルから特に選択することができる:高級アルコール工業株式会社により配布されている名称Risocast DA-L又は更にRisocast DA-Hで知られる水添ヒマシ油ダイマージリノール酸、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス-ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル(Plandool G)、ダイマージリノール酸フィトステリル/イソステアリル(Lusplan PI-DA、Lusplan PHY/IS-DA)、ダイマージリノール酸フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル(Plandool H又はPlandool S)、及びこれらの混合物
- マンゴー脂、例えばAarhusKarlshamn社により参照名Lipex 203で販売されている製品
- 水添ダイズ油、水添ヤシ油、水添アブラナ種子油、又は水添植物油の混合物、例えば、水添の、ダイズ、ヤシ、パーム及びアブラナ種子の植物油の混合物、例えばAarhusKarlshamn社により参照名Akogel(登録商標)で販売されている混合物(INCI名:水添植物油)
- シア脂、特にINCI名がシア脂(Butyrospermum Parkii Butter)であるもの、例えばAarhusKarlshamn社により参照名Sheasoft(登録商標)で販売されているもの
- カカオ脂、特にDutch Cocoa BV社により名称CT Cocoa Butter Deodorizedで販売されている製品、又はBarry Callebaut社により名称Beurre De Cacao NCB HD703 758で販売されている製品
- サラソウジュ脂、特にStearinerie Dubois社により名称Dub Shorea Tで販売されている製品
- 並びにこれらの混合物。
【0079】
より具体的には、ペースト状脂肪物質は、遊離のアルコール官能基又は酸官能基が酸基又はアルコール基で必要に応じてエステル化された、ジオール二量体と二酸二量体とのエステル、特に二量体ジリノール酸エステル;マンゴー脂、水添ダイズ油、水添ヤシ油、水添アブラナ種子油、水添植物油の混合物、例えば、ダイズ、ヤシ、パーム及びアブラナ種子の水添植物油の混合物、シア脂、カカオ脂、サラソウジュ脂、並びにそれらの混合物から選択される。
【0080】
好ましい一実施形態によれば、ペースト状脂肪物質は、水添の、ダイズ、ヤシ、パーム及びアブラナ種子の植物油の混合物、シア脂、カカオ脂、サラソウジュ脂、並びにこれらの混合物、より具体的には上記のものから選択される。
【0081】
別の実施形態によれば、溶媒系に不溶性である粒子は、少なくとも1種の、具体的にはpH8又は9の近傍の、pHの変化に反応して状態を変化させることが可能な材料を含む。
【0082】
挙げることができるのは、例えば、イオン性ポリマー、詳細にはアニオン性ポリマー、例えば、Akzo Nobel社により名称Resyn 28 2930で、及びISP社により名称Gantrez ES 425 Lで販売されているポリマーである。
【0083】
好ましくは、溶媒系に不溶性である粒子は、少なくとも1種の、状態を可逆的に変化させることが可能な材料を含む。そのため、刺激を止めたとき、材料はその初期の状態に戻る。
【0084】
有利には、粒子の数平均一次粒径は、0.01〜500μm、好ましくは0.1〜300μm、より優先的には1〜250μmである。好ましい一実施形態によれば、粒子の数平均一次粒径は、1〜500μmを範囲とする。
【0085】
本発明の目的では、用語「一次粒径」は、粒子1個の対蹠的な2つの点の間を測定することが可能な最大寸法を意味することを意図している。
【0086】
粒径は、透過電子顕微鏡によって求められてよく、又はBET法により又はレーザー粒径分析計を用いて比表面積を測定することによって求められてよい。
【0087】
溶媒に不溶性である粒子は、種々の形、例えば球体の形、光輝材、針状又は小平状であってよく、好ましくはそれらは、ほぼ球状である。
【0088】
溶媒に不溶性である粒子は、それらが構成されている材料をナイフミル中で粉砕して、次いで得られた粒子を篩うことによって調製される。0.01μmから500μmの間の画分を回収して、配合媒体中で分散させる。
【0089】
幾つかの材料の混合物の事例において、材料は、溶融相中で予混合する。
【0090】
好ましくは、粒子は、本発明による方法において適用される組成物中に、組成物の総質量に対して少なくとも0.05質量%の割合で、好ましくは0.1質量%〜95質量%を範囲とする割合で、より優先的には1質量%〜50質量%を範囲とする割合で、より一層良好には2質量%〜30質量%を範囲とする割合で存在する。
【0091】
本発明による方法において適用される組成物は、溶媒系を含む。
【0092】
先に示した通り、溶媒系は、1種又は複数種の溶媒を含む。
【0093】
好ましくは、溶媒の沸点は、状態を変化させることが可能な材料の融点/軟化点を超えている。
【0094】
組成物は、水性の、アルコール性の、又は水性-アルコール性の溶媒を含み、好ましくは水性-アルコール性の溶媒を含む。
【0095】
好ましくは、組成物は水を含み、好ましくはその含量は、組成物の総質量に対して5質量%以上である。水の含量は、優先的には、組成物の総質量に対して5質量%〜98質量%、好ましくは30質量%〜95質量%、より一層良好には50質量%〜90質量%、なおより一層良好には70質量%〜90質量%を範囲とする。
【0096】
組成物はまた、モノアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノール;ポリオール、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール又はグリセロール;ポリオールエーテル;及びこれらの混合物から好ましくは選択される、1種又は複数種の、水に溶解性の液状有機溶媒も含んでよい。有機溶媒は、好ましくはエタノールである。
【0097】
好ましくは、組成物は、固定化ポリマーを一切含まない。用語「固定化ポリマー」は、刺激を施さずに頭部毛髪に形を授けることが可能なポリマーを意味することを意図している。
【0098】
本発明による組成物はまた、天然の又は合成の、会合性の又は非会合性のポリマー性増粘剤、及び非ポリマー性増粘剤、具体的には無機増粘剤から選択されうる、本発明の粒子とは異なる1種又は複数種の増粘剤も含んでよい。
【0099】
用語「増粘剤」は、それが存在するために、組成物の粘度を、25℃及びせん断速度1s-1で少なくとも100cps増加させることが可能になる化合物を意味することを意図している。
【0100】
挙げることができるポリマー性増粘剤の例には、セルロース増粘剤が含まれ、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、グアーガム及びその誘導体、例えばRhodia社により参照名Jaguar HP 105で販売されているヒドロキシプロピルグアー、微生物起源のガム、例えばキサンタンガム及びスクレログルカンガム、カラゲナン、例えばCargill社により参照名Satiagum UTC 30で販売されているカラゲナン粉末、ラジカル重合反応又は重縮合反応から、例えばアクリル酸の又はアクリルアミドプロパンスルホン酸の架橋結合ホモポリマーから得られる合成ポリマー性増粘剤、例えばカルボマー、又は非イオン性、アニオン性又は両性の会合性ポリマー、例えばGoodrich社により名称Pemulen TR1又はTR2で、Allied Colloids社により名称Salcare SC90で、Rohm & Haas社により名称Aculyn 22、28、33、44又は46で、及びAkzo社により名称Elfacos T210及びT212で販売されているポリマー、又は他に、Sensient社により市販参照名Covacryl MV 60で販売されている製品等のポリアクリル酸ナトリウム、又は他に、Lubrizol社により名称Carbopol Ultrez 21で販売されているポリマーがある。
【0101】
無機増粘剤は、無機の酸化物及び/又は水酸化物から本質的に構成されている。
【0102】
それらは、クレイ及びシリカから好ましくは選択される。
【0103】
クレイは、それ自体が既に周知である生成物であり、これは例えば、刊行物Mineralogie des argiles [Mineralogy of Clays]、S. Caillere、S. Henin、M. Rautureau、第2版、1982年、Massonに記載されており、その教示は、参照によって本明細書に包含される。
【0104】
クレイは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム及びリチウムのカチオン、及びこれらの混合物から選ばれうるカチオンを含有するケイ酸塩である。
【0105】
こうした生成物の例として挙げることができるのは、スメクタイトの系統群のクレイ、例えばラポナイト及びモンモリロナイト、ヘクトライト、ベントナイト、バイデライト又はサポナイト、及び更にバーミキュライト、ステベンサイト又はクロライトの系統群のクレイである。
【0106】
クレイは、天然起源のものであっても合成起源のものであってもよい。好ましくは、毛髪等のケラチン繊維と美容上適合可能であって許容されるクレイが使用される。
【0107】
クレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト,
セピオライト及びこれらの混合物から選択することができる。好ましくは、クレイは、ベントナイト又はヘクトライトである。
【0108】
クレイは、親有機性クレイから選択されてよい。
【0109】
親有機性クレイは、第四級アミン、第三級アミン、酢酸アミン、イミダゾリン、アミン石鹸、脂肪硫酸塩、スルホン酸アルキルアリール及びアミンオキシド、並びにこれらの混合物から選択される化合物で変性されているクレイである。
【0110】
好ましくは、本発明による親有機性クレイは、第四級アミンから選択される化合物で変性されているクレイである。
【0111】
挙げることができる親有機性クレイには、クオタニウム-18ベントナイト、例えばElementis社により名称Bentone 3、Bentone 38及びBentone 38Vで、United Catalyst社により名称Tixogel VPで、Southern Clay社により名称Claytone 34、Claytone 40及びClaytone XLで販売されているもの;ステアラルコニウムベントナイト、例えばElementis社により名称Bentone 27Vで、United Catalyst社により名称Tixogel LGで、及びSouthern Clay社により名称Claytone AF及びClaytone APAで販売されているもの;並びにクオタニウム-18/ベンザルコニウムベントナイト、例えばSouthern Clay社により名称Claytone HT及びClaytone PSで販売されているものである。
【0112】
親有機性クレイは、具体的には、変性ヘクトライト、例えばC10〜C12脂肪酸アンモニウムクロリド、とりわけジステアリルジメチルアンモニウムクロリド及びステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリドによって変性されているヘクトライトから選択される。
【0113】
使用されうるシリカは、天然で未処理であってよい。そのため、挙げることができるのは、Hoffmann Mineral社により名称Sillitin N85、Sillitin N87、Sillitin N82、Sillitin V85及びSillitin V88で提供されているシリカである。
【0114】
それらは、フュームドシリカであってよい。
【0115】
フュームドシリカは、酸水素炎中で揮発性ケイ素化合物を高温で加水分解し、微粉砕シリカを生成することによって得ることができる。この方法により、それらの表面に多数のシラノール基を含有する親水性シリカを得ることが特に可能になる。シラノール基の数の低減をもたらす化学反応を介して、前記シリカの表面を化学的に変性することが可能である。シラノール基を疎水基で置換することが特に可能であり、その場合、疎水性シリカが得られる。
【0116】
疎水性基は、以下とすることができる:
(a)ヘキサメチルジシラザンの存在下でフュームドシリカを処理することによって特に得られるトリメチルシロキシル基。こうして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995年)に従って「シリル化シリカ」として知られる。
(b)ポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下でフュームドシリカを処理することによって特に得られるジメチルシリロキシル基又はポリジメチルシロキサン基。こうして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995年)に従って「ジメチルシリル化シリカ」として知られる。
【0117】
挙げることができる官能化シリカには、Hoffmann Mineral社により名称Aktisil MAM、Aktisil MAM-R及びAktisil WWで提供されている製品が含まれる。
【0118】
好ましくは、無機増粘剤は、ラポナイト誘導体、モンモリロナイト誘導体、ベントナイト誘導体、ヘクトライト誘導体、アタパルジャイト誘導体、セピオライト誘導体、スメクタイト誘導体、カオリン誘導体、シリカ誘導体、及びクレイから選択される。
【0119】
増粘剤は、組成物の総質量に対して、0.01質量%〜10質量%を範囲とする含量で、好ましくは0.1質量%〜5質量%を範囲とする含量で、より好ましくは0.2質量%〜2質量%で存在してよい。
【0120】
本発明による組成物はまた、少なくとも1種の界面活性剤も含んでよい。
【0121】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性及び双性イオン性の界面活性剤から選択される。
【0122】
用語「アニオン性界面活性剤」は、イオン性基又はイオン化が可能な基としてアニオン性基のみを含む界面活性剤を意味することを意図している。これらのアニオン性基は、-C(O)OH、-C(O)O-、-SO3H、-S(O)2O-、-OS(O)2OH、-OS(O)2O-、-P(O)OH2、-P(O)2O-、-P(O)O2-、-P(OH)2、=P(O)OH、-P(OH)O-、=P(O)O-、=POH及び=PO-基から好ましくは選択され、アニオン性の部分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム等のカチオン性対イオンを含む。
【0123】
本発明による組成物において使用されうるアニオン性界面活性剤の例を介して挙げることができるのは、硫酸アルキル、硫酸アルキルエーテル、硫酸アルキルアミドエーテル、硫酸アルキルアリールポリエーテル、硫酸モノグリセリド、アルキルスルホネート、アルキルアミドスルホネート、アルキルアリールスルホネート、スルホン酸α-オレフィン、スルホン酸パラフィン、アルキルスルホスクシネート、スルホコハク酸アルキルエーテル、スルホコハク酸アルキルアミド、アルキルスルホアセテート、アシルサルコシネート、アシルグルタメート、アルキルスルホスクシナメート、アシルイセチオネート及びN-アシルタウレート、ポリグリコシド-ポリカルボン酸のアルキルモノエステルの塩、アシルラクチレート、D-ガラクトシド-ウロン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルアリールエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸塩;並びに、対応する、これらの全ての化合物の非塩化形態;6〜40個の炭素原子を含むこれらの全ての化合物のアルキル基及びアシル基、並びにフェニル基を示すアリール基である。
【0124】
これらの化合物は、オキシエチレン化されていることが可能であり、その場合、1〜50個のエチレンオキシド単位を好ましくは含む。
【0125】
ポリグリコシド-ポリカルボン酸のC6〜C24アルキルモノエステルの塩は、C6〜C24アルキルポリグリコシド-クエン酸塩、C6〜C24アルキルポリグリコシド-酒石酸塩、及びC6〜C24アルキルポリグリコシド-スルホコハク酸塩から選択することができる。
【0126】
アニオン性界面活性剤が塩の形態にあるとき、アニオン性界面活性剤は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩若しくはカリウム塩、好ましくはナトリウム塩から、アンモニウム塩、アミン塩、とりわけアミノアルコール塩、又はアルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩から選択されてよい。
【0127】
アミノアルコール塩の例を介して特に挙げることができるのは、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩及びトリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩又はトリイソプロパノールアミン塩、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール塩、並びにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩である。
【0128】
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、具体的にはナトリウム塩又はマグネシウム塩が、好ましくは使用される。
【0129】
前述のアニオン性界面活性剤のうち好ましくは使用されるのは、2〜50個のエチレンオキシド単位を含んで、特にアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミノアルコール塩及びアルカリ土類金属塩の形態にある、(C6〜C24)硫酸アルキル、(C6〜C24)硫酸アルキルエーテル又はこれらの化合物の混合物である。
【0130】
特に、2〜20個のエチレンオキシド単位を含んで、特にアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミノアルコール塩及びアルカリ土類金属塩の形態にある、(C12〜C20)硫酸アルキル、(C12〜C20)硫酸アルキルエーテル又はこれらの化合物の混合物を使用することが好ましい。より一層良好には、2.2molのエチレンオキシドを含有する硫酸ラウリルエーテルナトリウムを使用することが好ましい。
【0131】
本発明の組成物中で使用されうる非イオン性界面活性剤の例は、例えばM.R.PorterによるHandbook of Surfactants、Blackie & Son(グラスゴー及びロンドン)が出版、1991年、116〜178頁に記載されている。該界面活性剤は、特に、アルコール、α-ジオール及び(C1〜C20)アルキルフェノールから選択され、これらの化合物は、エトキシル化、プロポキシル化又はグリセロール化された基でエーテル化されており、且つ例えば8〜40個の炭素原子を含有する少なくとも1つの脂肪鎖を含有し、エチレンオキシド基及び/又はプロピレンオキシド基の数は、おそらく、特定すると1〜200を範囲とし、グリセロール基の数は、おそらく、特定すると1〜30を範囲とする。
【0132】
更に挙げることができるのは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドと脂肪アルコールとの縮合物;2〜30のエチレンオキシド単位を好ましくは有するポリエトキシル化脂肪アミド、平均して1〜5つの、特定すると1.5〜4つのグリセロール基を含有するポリグリセロール化脂肪アミド;2〜30のエチレンオキシド単位を含有するソルビタンのエトキシル化脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、(C6〜C24アルキル)ポリグリコシド、N-(C6〜C24アルキル)グルカミン誘導体、アミンオキシド、例えば(C10〜C14アルキル)アミンオキシド又はN-(C10〜C14アシル)アミノプロピルモルホリンオキシドである。
【0133】
本発明において使用されうる両性又は双性イオン性の界面活性剤は、具体的には第二級又は第三級脂肪族アミン誘導体であってよく、そこで脂肪族基は、8〜22個の炭素原子を含有する直鎖状鎖又は分枝状鎖であり、前記アミン誘導体は、少なくとも1つのアニオン性基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基又はホスホン酸基を含有する。特に挙げることができるのは、(C8〜C20アルキル)ベタイン、スルホベタイン、(C8〜C20アルキル)アミド(C6〜C8アルキル)ベタイン及び(C8〜C20アルキル)アミド(C6〜C8アルキル)スルホベタインである。
【0134】
使用されうる上に定義した任意選択で四級化された第二級又は第三級脂肪族アミン誘導体のうち更に挙げることができるのは、CTFA辞典、第5版、1993年で、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸及びココアンホジプロピオン酸の名称の下で分類されている化合物である。
【0135】
例を介して挙げることができるのは、Rhodia社により商標Miranol(登録商標)C2M Concentrateで販売されているココアンホ二酢酸塩である。
【0136】
更に使用することができるのは、CTFA辞典でジエチルアミノプロピルココアスパルタミドナトリウムの名称の下で分類されて、Chimex社により名称Chimexane HBで販売されている化合物である。
【0137】
上記の両性又は双性イオン性の界面活性剤のうち好ましくは使用できるのは、(C8〜C20)アルキルベタイン、例えばココベタイン;(C8〜C20)アルキルアミド(C3〜C8)アルキルベタイン、例えばコカミドプロピルベタイン;式(B'2)の化合物、例えばラウリルアミノスクシナミン酸ジエチルアミノプロピルのナトリウム塩(INCI名:ココアスパルタミドジエチルアミノプロピルナトリウム)、並びにそれらの混合物である。より優先的には、両性又は双性イオン性の界面活性剤は、コカミドプロピルベタイン及びココベタインから選択される。
【0138】
本発明による組成物中で使用されうるカチオン性界面活性剤は、例えば、任意選択でポリオキシアルキレン化されている、第一級、第二級又は第三級脂肪アミン塩、第四級アンモニウム塩及びこれらの混合物を含む。
【0139】
特に挙げることのできる第四級アンモニウム塩の例には、以下がある:
- テトラアルキルアンモニウムクロリド、例えばジアルキルジメチルアンモニウムクロリド若しくはアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(ここでアルキル基はおよそ12〜22個の炭素原子を含む)、具体的にはベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド若しくはベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、又は他に、第2に、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウムメト硫酸塩、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメト硫酸塩若しくはジステアロイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメト硫酸塩、又は他に、最後に、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド若しくはステアラミドプロピルジメチル(酢酸ミリスチル)アンモニウムクロリド、Van Dyk社により名称Ceraphyl(登録商標)70で販売されているもの
- イミダゾリンの第四級アンモニウム塩、例としてはRewo社により名称Rewoquat(登録商標)W 75で販売されている製品
- ジ四級アンモニウム塩又はトリ四級アンモニウム塩、例としては、Finetex社により提供されているFinquat CT-P(クオタニウム-89)、及びFinetex社により提供されているFinquat CT(クオタニウム-75)
- 1つ又は複数のエステル官能基を含有する第四級アンモニウム塩、例えば塩、具体的には、ジアシルオキシエチルジメチルアンモニウムのクロリド若しくはメチル硫酸塩、ジアシルオキシエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウムのクロリド若しくはメチル硫酸塩、モノアシルオキシエチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムのクロリド若しくはメチル硫酸塩、トリアシルオキシエチルメチルアンモニムのクロリド若しくはメチル硫酸塩、又はモノアシルオキシエチルヒドロキシエチルジメチルアンモニウムのクロリド若しくはメチル硫酸塩、及びこれらの混合物。アシル基は、14〜18個の炭素原子を好ましくは含有し、且つより具体的にはパーム油又はヒマワリ油等の植物油から得られる。化合物が幾つかのアシル基を含有するとき、これらの基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0140】
これらの生成物は、例えば、任意選択でオキシアルキレン化された、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルキルジエタノールアミン若しくはアルキルジイソプロパノールアミンと、植物起源若しくは動物起源の脂肪酸又は脂肪酸混合物との直接エステル化によって、又はこれらのメチルエステルのエステル交換によって得られる。このエステル化の後に、アルキルハロゲン化物、好ましくはメチルハロゲン化物若しくはエチルハロゲン化物、硫酸ジアルキル、好ましくは硫酸ジメチル若しくは硫酸ジエチル、メタンスルホン酸メチル、パラ-トルエンスルホン酸メチル、グリコールクロロヒドリン又はグリセロールクロロヒドリン等のアルキル化剤の手段によって四級化される。
【0141】
こうした化合物は、例えば、Henkel社により名称Dehyquart(登録商標)で、Stepan社により名称Stepanquat(登録商標)で、Ceca社により名称Noxamium(登録商標)で、又はRewo-Witco社によりRewoquat(登録商標)WE 18で販売されている。
【0142】
本発明による組成物は、例えば、ジエステル塩が質量の大部分を占める、第四級アンモニウムのモノエステル、ジエステル及びトリエステル塩の混合物を含有してよい。
【0143】
米国特許第A-4874554号及び米国特許第A-4137180号に記載されている、少なくとも1つのエステル官能基を含有するアンモニウム塩を使用することもまた可能である。
【0144】
使用することができるのは、花王株式会社により名称Quatarmin BTC 131で販売されているベヘノイルヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0145】
好ましくは、少なくとも1つのエステル官能基を含有するアンモニウム塩は、2つのエステル官能基を含有する。
【0146】
本発明による組成物中に存在してよいカチオン性界面活性剤のうち、選択することが更に特に好ましいのは、セチルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩及びジパルミトイルエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、並びにこれらの混合物、より具体的にはベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド及びジパルミトイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメト硫酸塩、並びにこれらの混合物である。
【0147】
それらが存在するとき、界面活性剤は、組成物の総質量に対して、0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%、より一層良好には0.5質量%〜2質量%を占めることができる。
【0148】
本発明による組成物のpHは、2〜9、特定すると3〜8を一般に範囲とする。pHは、このタイプの適用のために化粧品業界で通常使用される酸性化剤若しくは塩基性化剤の手段によって、又は別法では、標準のバッファ系を用いて、所望の値へ調整されうる。
【0149】
酸性化剤のうち例を介して挙げることができるのは、有機酸又は無機酸のものである。
【0150】
用語「無機酸」は、無機化合物に由来する任意の酸を意味することを意図している。無機酸のうち挙げることができるのは、塩酸、オルトリン酸、硫酸、スルホン酸及び硝酸である。
【0151】
特に使用することができるのは、例えば、無機又は有機の酸、例えば塩酸、オルトリン酸又は硫酸、カルボン酸、例としては、酢酸、酒石酸、クエン酸又は乳酸及びスルホン酸である。
【0152】
塩基性化剤のうち挙げることができる例には、アンモニア水、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン、例えば、モノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン並びにそれらの誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、並びに次式:
【0153】
【化2】
【0154】
(式中、Wは、ヒドロキシル基又はC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン残基であり、Ra、Rb、Rc及びRdは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又はC1〜C4アルキル基若しくはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物が含まれる。
【0155】
好ましくは、pH調節剤は、アルカリ剤、例えばアンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1,3-プロパンジアミン又はアルカリ水酸化物、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、又は他に、酸性化剤、例えばリン酸又は塩酸から選択することができる。
【0156】
本発明による組成物は、噴射剤を含んでよい。例えば、挙げることができるのは、液状化気体、例えばジメチルエーテル、1,1-ジフルオロエタン若しくはC3〜5アルカン、例としては、プロパン、イソプロパン、n-ブタン、イソブタン若しくはペンタン、又は圧縮化気体、例えば空気、窒素若しくは二酸化炭素、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0157】
優先的に挙げることができるのは、C3〜5アルカンであり、具体的にはプロパン、n-ブタン及びイソブタン、並びにこれらの混合物である。
【0158】
組成物が噴射剤を含むとき、組成物は、1種又は複数種の噴射剤を、組成物の総質量に対して、1質量%〜60質量%、より一層良好には2質量%〜50質量%、より一層優先的には4質量%〜40質量%を範囲とする量で含む。
【0159】
本発明による方法において使用される組成物はまた、本発明の化合物以外に1種又は複数種の添加剤も含んでよく、それらは、非シリコーン調節剤、具体的にはカチオン性ポリマー、パンテノールを含むビタミン及びプロビタミン、日焼け止め剤、真珠光沢剤及び透明化剤、染料、金属イオン封鎖剤、可塑剤、溶解剤、酸性化剤、塩基性化剤、抗酸化剤、気泡防止剤、潤滑剤、エモリエント、ヒドロキシ酸、浸透剤、香料、保存剤及びフィラー、並びに状態を変化させることが可能な材料を含む不溶性粒子以外の粒子、例としては、有色又は無色の、無機及び有機の顔料である。
【0160】
これらの添加物は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0〜20質量%を範囲とする量で存在してよい。
【0161】
言うまでもなく、当業者であれば、本発明に従って使用される組成物の有利な特性が、想定される添加によって有害な影響を受けない又は実質的に受けないように、任意選択の追加の化合物及び/又はこれらの量を注意深く選択することになる。
【0162】
本発明による組成物は、とりわけ、程度の差はあれ、ローション、ゲル、セラム、クリーム、ペースト又はムースへ増粘化される液体の形態にあってよい。
【0163】
好ましくは、本発明による組成物は、ゲル又はクリームの形態にある。
【0164】
組成物は、ポンプ又はバルブ等の分配手段をもたない容器、例えばボトル、チューブ又は瓶の中に詰められてよい。
【0165】
本発明による毛髪の美容処置の方法は、毛髪へ、上に記載した有効量の組成物を適用する工程から成る。
【0166】
組成物は、湿った又は乾いた毛髪へ適用することができる。
【0167】
組成物は、頭部毛髪の全体へ適用することができ、又は部分的に、頭部毛髪の一部のみへ適用することができる。
【0168】
毛髪は、手で、又は櫛若しくはブラシを用いて、形づくることができる。
【0169】
形づけた後に又は形づけるのと同時に、1種又は複数種の、材料の状態の変化を可能にする刺激を施す。
【0170】
刺激を施すことは、組成物を頭部毛髪上へ分配した後に、直接実施することができる。刺激は、組成物が適用された頭部毛髪の全ての領域へ、徐々に施すことができる。
【0171】
刺激は、粒子が状態を変化させるために十分な期間、施す。好ましくは、材料の状態の変化を可能にする刺激は、30秒〜3時間を範囲とする期間、好ましくは1〜20分を範囲とする期間、施される。
【0172】
次いで、ヘアスタイルの固定化を得るための刺激を止める。
【0173】
刺激を連続して施すことを通じて、ヘアスタイルは、組成物の更なる付与なしに、望み通りの回数だけ、あつらえて作り直すことができる。
【0174】
好ましくは、本発明による毛髪を形づくる方法は、その間に固定化ポリマーを適用する工程を含まない。
【0175】
以下の実施例は、本発明を例示するために役立つが、本来、限定するものではない。
【実施例】
【0176】
本発明による方法において使用される組成物を、下表に示す化合物から調製した。以下の実施例において、量は全て、組成物の総質量に対する活性材料の質量パーセントで示す。
【0177】
ゲル形態にある組成物
【0178】
【表1】
【0179】
ムース形態にある組成物
【0180】
【表2】
【0181】
上の表に記載されている粒子を形成する材料及び材料混合物の融点は、以下の通りである:*
- ポリプロピレン(1):71℃(実施例1、2及び3)
- テトラステアリン酸ビス(トリメチロールプロパン)(2):35℃
- ポリビニルオクダデシルエーテル(3):42〜48℃
- ポリプロピレン(1)/ポリビニルオクタデシルエーテル(3)の混合物(50/50):63〜65℃(実施例4)
- ポリプロピレン(1)/テトラステアリン酸ビス(トリメチロールプロパン)(2)の混合物(30/70):48℃(実施例5、6、9、10及び11)
- ポリプロピレン(1)/テトラステアリン酸ビス(トリメチロールプロパン)(2)の混合物(70/30):48℃(実施例7)
- ポリプロピレン(1)/テトラステアリン酸ビス(トリメチロールプロパン)(2)の混合物(50/50):66℃(実施例8及び12)
【0182】
種々の実施例において記載した組成物を瓶の中に詰める。
【0183】
それらを試料とし、手で、乾いた又は湿った毛髪へ適用する。
【0184】
次いで、ヘアスタイルを形づくり、粒子を溶融させるために、従来技術のヘアドライヤーのブローにより、温度60℃で頭部半分当たり3〜5分、熱を加える。ヘアドライヤーは、粒子が溶融するように、頭部毛髪の表面全体へ穏やかに当てる。
【0185】
一旦、粒子が溶融したら、ヘアドライヤーを頭部毛髪から外し、すると粒子は頭部毛髪上に見えなくなり、粒子は、ラッカーで得られた毛髪のネットワークに匹敵する毛髪のネットワークを形成するスポットを介して固定化される。
【0186】
毛髪を形づくることは、熱可逆性であり、毛髪束が再び熱を施される場合、そこに新しい形を付与することが可能である。
【0187】
きわめて良好な永続性のある光沢、及びきわめて良好な永続性のある毛髪の感触もまた得られる。