特許第6559569号(P6559569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559569トリオルガノボラン−アミノ官能化ナノ粒子、組成物、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559569
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】トリオルガノボラン−アミノ官能化ナノ粒子、組成物、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20190805BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190805BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
   C08F2/44 A
   C08F292/00
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-549472(P2015-549472)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-509561(P2016-509561A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】US2013074257
(87)【国際公開番号】WO2014099516
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年10月24日
【審判番号】不服2018-6868(P2018-6868/J1)
【審判請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/739,856
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ガルベ, ジェームズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】バラン, ジミー アール., ジュニア
【合議体】
【審判長】 菊地 則義
【審判官】 後藤 政博
【審判官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510788(JP,A)
【文献】 特表2008−530338(JP,A)
【文献】 特表2009−509026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機コア及び表面改質基を含む、表面改質されたナノ粒子であって、
前記表面改質基が、構造−Z−NHR−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]を有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含み、
前記無機コアが、無機酸化物ナノ粒子であり、
前記表面改質基が、前記ナノ粒子に結合した(C1〜C30)有機基を含む非アミン官能性安定化有機基を更に含む、ナノ粒子。
【請求項2】
Zが、1〜30個の炭素原子を有する二価有機基であり、
がH、アルキル基、又はシクロアルキル基であり、
各Rが独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリル基である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
Zが、1〜20個の炭素原子を有する二価有機基であり、
が、H又は(C1〜C6)アルキル基又は(C4〜C8)シクロアルキル基であり、
各Rが独立して、(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、アリール部分がC6〜C14でありアルキル部分がC1〜C10であるアラルキル基、又はアルキル部分がC1〜C10でありアリール部分がC6〜C14であるアルカリル基である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記表面改質基が、トリオルガノボランとの複合体ではないアミン官能性有機基を更に含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記非アミン官能性安定化有機基が、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記無機コアが少なくとも5ナノメートルの粒径を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
液体中の、表面改質された複数の請求項1に記載のナノ粒子の分散液。
【請求項8】
表面改質されたナノ粒子を作製する方法であって、
前記方法が、
液体中に分散されるとき、複数のアミン官能性無機ナノ粒子を安定化するように選択される結合した非アミン官能性安定化有機基を含む、アミン官能性無機ナノ粒子を提供することと、
式B(R[式中、各Rが、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]で表されるトリオルガノボラン化合物を提供することと、
表面改質されたナノ粒子を形成するために有効な条件下で、前記アミン官能性無機ナノ粒子と、前記トリオルガノボラン化合物とを組み合わせることであって、各表面改質されたナノ粒子が、無機コア及び表面改質基を含み、前記表面改質基が、構造−Z−NHR
−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]を有する、少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含むことと、を含み、
前記アミン官能性無機ナノ粒子を提供することが、液体中に分散されるとき、複数の前記ナノ粒子を安定化するように選択される結合した非アミン官能性安定化有機基を含む無機ナノ粒子を提供することと、アミン官能性化合物を提供することと、結合した非アミン官能性安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子を形成するために有効な条件下で、前記アミン官能性化合物と結合した非アミン官能性安定化有機基を含む無機ナノ粒子とを組み合わせることと、を含み、
前記無機コアが、無機酸化物ナノ粒子であり、
前記非アミン官能性安定化有機基が、(C1〜C30)有機基を含む、方法。
【請求項9】
前記アミン官能性無機ナノ粒子と前記トリオルガノボラン化合物とを組み合わせることが、溶媒中でそれらを混合することによって起こり、
前記溶媒が、その後、結果として得られる、無機コア及び前記表面改質基を含む前記表面改質されたナノ粒子から除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
重合性成分及び表面改質されたナノ粒子を含む重合性組成物であって、
各表面改質されたナノ粒子が、無機コア及び表面改質基を含み、
前記表面改質基が、構造−Z−NHR−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]を有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含み、
前記無機コアが、無機酸化物ナノ粒子であり、
前記表面改質基が、前記ナノ粒子に結合した(C1〜C30)有機基を含む非アミン官能性安定化有機基を更に含む、重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
有機ボラン及びアミンの低分子ルイス酸/塩基複合体が知られている。それらは、トリオルガノボラン(ルイス酸)とアミン(ルイス塩基)との反応によって形成され得る。トリオルガノボランと最も安定した複合体を形成するアミンは、一級アミン及びいくらかの二級アミンを含む。三級アミン、立体的に嵩高い二級アミン、及び中で窒素原子孤立電子対が非局在化される(したがって、ホウ素の空のp軌道を介してホウ素原子と強い供与結合を形成するために利用可能でない)アミンは、有機ボランと安定性のより低い複合体を形成する。複合体は、次の一般的な構造を有する。
【0002】
【化1】

[式中、各Rが独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はアラルキル基であり、各R’が独立して、H、アルキル基、又はシクロアルキル基である。]
【0003】
トリオルガノボラン−アミン複合体は、アミンと反応し、それにより、遊離トリオルガノボランを遊離させる化合物によって「脱複合体化」し得る。この反応は、典型的には、アミンが、その後、トリオルガノボランを複合化するのにもはや利用可能ではないように、不可逆性である。遊離トリオルガノボランは、酸素と反応していくつかの遊離−ラジカル種を生成し、それらのうちのいくらかは、アクリレート等の不飽和モノマーのラジカル重合を開始することが知られている。
【0004】
このような従来のトリオルガノボラン−アミン複合体は、大気中の酸素による酸化に関して遊離トリオルガノボランより安定しているが、一方、依然として一層高い安定性への必要性が存在する。更に、このような従来のトリオルガノボラン−アミン複合体は、多くの場合、不活性雰囲気下に保持される液体であり、したがって、貯蔵、移送、又は処理が容易ではない。
【0005】
[概要]
本開示は、液体ボラン−アミン複合体よりも一般的に容易に貯蔵され、移送され、処理される、トリオルガノボラン−アミン官能化ナノ粒子を提供する。このような官能化ナノ粒子は、送達され、その後、脱複合体化され、活性種、トリオルガノボランをその意図された使用のために放出することができる。重要なことは、トリオルガノボランは、官能化ナノ粒子を、例えば、カルボン酸等の脱複合体化剤で処置することによって、ナノ粒子から遊離され得る。遊離されたトリオルガノボランは、例えば、エチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリレートモノマー)の遊離ラジカル重合反応等、重合反応のための反応開始剤として、使用されることが可能である。
【0006】
一実施形態において、本開示は、無機コア及び表面改質基を含む表面改質されたナノ粒子を提供し、この表面改質基は、構造Z−NHR−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]を有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む。無機コアは、典型的には、無機酸化物コア、例えば、シリカ、ジルコニア、又はアルミナである。
【0007】
一実施形態において、本開示は、液体中の、複数のこのような表面改質されたナノ粒子の分散液を提供する。
【0008】
一実施形態において、表面改質されたナノ粒子を作製する方法が提供され、この方法は、液体中に分散されるとき、複数のナノ粒子を安定化するように選択される結合した安定化有機基を含む、アミン官能性無機ナノ粒子を提供することと、式B(R[式中、各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]で表されるトリオルガノボラン化合物を提供することと、表面改質されたナノ粒子を形成するために有効な条件下で、アミン官能性無機ナノ粒子と、トリオルガノボラン化合物とを組み合わせることと、を含む。各表面改質されたナノ粒子は、無機コア及び表面改質基を含み、この表面改質基は、構造−Z−NHR−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]を有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む。
【0009】
一実施形態において、本明細書に記載される重合性成分及び表面改質されたナノ粒子を含む、重合性組成物が提供される。
【0010】
用語「ナノ粒子」は、100ナノメートル(nm)以下の粒径(即ち、粒子の最長の寸法、例えば、球体の直径)を有する粒子を指し、これは、非疑集及び非集合離散粒子、並びに100ナノメートル(nm)以下の粒径(即ち、疑集体又は集合体の最長の寸法、例えば、球体の直径)を有する疑集又は集合粒子である。本明細書における用語「ナノ粒子」は、フュームド若しくは発熱性無機酸化物(例えば、フュームドシリカ(時に沈殿シリカともいう。)、発熱性シリカ、又はフュームドアルミナ等)を除く。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、脂肪族基、環状基、又は脂肪族基と環状基との組み合わせ(例えば、アルカリル及びアラルキル基)として分類される、炭化水素基(酸素、窒素、硫黄及びケイ素のような、炭素及び水素以外の任意元素を含む)を意味する。本発明の文脈において、有機基は、有機ボラン−アミン複合体及び/又はモノマー重合若しくはエチレン性不飽和モノマーの形成を妨害しないものである。用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和である直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含するのに使用される。用語「アルキル基」は以下に定義される。用語「アルケニル基」は、ビニル基のような、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「環状基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉じた環状炭化水素基を意味する。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性と類似する特性を有する環状炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」は、以下に定義される。用語「複素環式基」は、環の1つ以上の原子が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄等)である閉じた環状炭化水素を意味する。別途記載のない限り、有機基は、典型的には、少なくとも1個の炭素原子、多くの場合、最大30個の炭素原子を含有する。有機基は、任意の好適な原子価を有することができるが、多くの場合、一価又は二価である。
【0012】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルであり、かつ直鎖、分枝鎖、環式、及び二環式アルキル基、並びにそれらの組み合わせを含む一価基を指し、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。別途記載のない限り、アルキル基は、典型的には、1〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。本明細書で使用されるアルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
用語「シクロアルキル」は、閉環アルキル基を指す。別途記載のない限り、シクロアルキル基は、典型的には、1〜30個の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
用語「アルキレン基」は、アルカンのラジカルであり、かつ直鎖、分枝鎖、及び環式基、並びにそれらの組み合わせを含む二価基を指し、非置換及び置換アルキレン基の両方を含む。別途記載のない限り、アルキレン基は、典型的には、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0015】
用語「アリール」とは、芳香族及び任意に炭素環式である1価の基を指す。アリールは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の追加の環は、不飽和、部分的飽和、飽和、又は芳香族であり得る。別途記載のない限り、アリール基は、典型的には、6〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アリール基は、6〜20個、6〜18個、6〜16個、6〜12個、又は6〜10個の炭素原子を含有する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナンスリル、及びアントラシルが挙げられる。
【0016】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基である一価基を指す。用語「アルカリル」は、アルキル基で置換されたアリールである一価基を指す。両方の基において、アルキル部分は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個炭素原子、又は1〜4個炭素原子を有し、アリール部分は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0017】
用語「加水分解性」は、大気圧の条件下で、1〜10のpHを有する水と反応し得る基を指す。加水分解性基は、多くの場合、それが反応するとき、ヒドロキシル基に変換される。ヒドロキシル基は、多くの場合、更に反応を受ける。典型的な加水分解性基としては、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシルオキシ、又はハロが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、本用語は、多くの場合、シリル基中でケイ素原子と結合された1つ以上の基に関連して使用される。
【0018】
用語「非加水分解性基」は、大気圧の条件下で、1〜10のpHを有する水と反応することができない基を指す。典型的な非加水分解性基としては、アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、本用語は、多くの場合、シリル基中でケイ素原子と結合された1つ以上の基に関連して使用される。
【0019】
用語「含む(comprise)」及びこの変形は、これらの用語が明細書及び請求項で用いられる場合、限定的な意味を有さない。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で、特定の効果をもたらし得る本開示の実施形態のことを指す。しかしながら、同一又は他の環境下で、他の実施形態も好ましい可能性がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを目的としたものではない。
【0021】
本願では、「a」、「an」、及び「the」等の用語は、1つの実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示のために用いることができる一般分類を含む。用語「a」、「an」、及び「the」は、少なくとも1つという用語と同義的に使用される。一覧を伴った、「の少なくとも1つ」及び「の少なくとも1つを含む」という語句は、その一覧の項目の任意の1つ、及びその一覧の項目の2つ以上の任意の組み合わせを指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、内容に別段の明確な指示がない限り、用語「又は」は、一般的に、「及び/又は」を含むその通常の意味合いにおいて使用される。
【0023】
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ又は全てを、若しくは列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0024】
同様に、本明細書においては、全ての数は「約」という用語で、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されるとみなされる。本明細書において測定した量と関連して使用されるとき、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に対応するレベルの注意を払う当業者によって期待されるような測定量の変化を指す。
【0025】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数及び端点(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)が包含される。
【0026】
同じであり得る又は異なり得る基は、「独立して」何かであることを指す。つまり、ある基が本明細書に記載される式中に2個以上存在するとき、各基は独立して、特に言及されるか否か関わらず、選択される。例えば、式中に2個以上のR基が存在するとき、各R基は、独立して選択される。更に、これらの基の中に含まれるサブグループも独立に選択される。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「室温」は、20℃〜25℃、又は22℃〜25℃の温度を指す。
【0028】
本開示の上記概要は、本開示の開示される各実施形態又はすべての実現形態を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願の全体を通じて幾つかの箇所で、実施例のリストによって指針が与えられるが、これらの実施例は異なる組み合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載される列挙は、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって、排他的な列挙として解釈するべきではない。
【0029】
[実施形態の詳細な説明]
本開示は、1個以上のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む表面改質されたナノ粒子を提供する。一実施形態において、表面改質されたナノ粒子は、無機コア及び表面改質基を含み、この表面改質基が、構造−Z−NHR−B(R[式中、Zが二価有機基であり、RがH又は有機基であり、各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]を有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む。
【0030】
ある特定の実施形態において、このような表面改質されたナノ粒子は、トリオルガノボランとアミン官能性ナノ粒子(例えば、アミン官能性ナノシリカ粒子)との反応生成物である。ナノ粒子は、トリオルガノボラン及びアミン官能性有機基の結合ルイス酸−塩基の複合体を含む。ナノ粒子につながれたこれらのラジカル前駆体複合体は、遊離ラジカル源として機能することができる。更に、このような表面改質されたナノ粒子はまた、硬化性接着剤及び他の硬化性多成分配合物等の重合性系において、フィラーを補強するように機能することができる。したがって、これらの固体で分散性の遊離ラジカル源は、遊離ラジカル重合反応開始剤として有用であり、二部二重硬化系を調製するために使用することができる。ルイス酸塩基複合体は固体形態であるため、このような複合体の量は、より容易に送達することができ、送達される量は、液体形態である複合体と比較してより制御可能である。
【0031】
ある特定の実施形態において、トリオルガノボラン及びアミン官能性有機基のつながれた(即ち、結合された)複合体を有する表面改質されたナノ粒子複合体の構造は、以下の構造によって表すことができる。
【0032】
【化2】

式中、Zが少なくとも1個の炭素原子を有する二価有機基であり、各Rが独立して、アルキル、シクロアルキル、又はアリールアルキル基であり、nが少なくとも1の整数である。円によって表されるナノ粒子は、任意のタイプの無機ナノ粒子であり得るが、典型的には、無機酸化物ナノ粒子である。
【0033】
有意に、本開示は、複合体を形成し、それによって、活性化学種を非活性化する又は安定化する方法で選択的に表面改質されたナノ粒子を提供する。一旦形成されると、これらのナノ粒子複合体は、複合体がその後分解され、それによって、その意図された使用のために活性種を放出するまで、より容易に送達、使用、及び貯蔵され得る。
【0034】
より具体的には、本開示の表面改質されたナノ粒子は、大気中の酸素による酸化に対して安定しており、少なくとも以下の特徴を提供する。1)該ナノ粒子は、エチレン性不飽和モノマーの重合等のラジカル反応のためのトリオルガノボランの便利な固体源である。2)該ナノ粒子は、重合性系中で補強用フィラーとしての有用性を有する。3)ナノ粒子と結合したトリオルガノボランは、無機ナノ粒子(例えば、無機酸化物)、トリオルガノボランのための不燃担体によって「希釈」される。
【0035】
遊離トリオルガノボランは、表面改質されたナノ粒子を、例えば、脱複合体化剤で処置することによってナノ粒子から遊離することができる。典型的には、脱複合体化剤は、アミン官能性ナノ粒子のアミン基と反応することができるアミン反応性化合物である。有用な脱複合体化剤としては、イソシアネート、及び酸(カルボン酸及び無水カルボン酸を含む)が挙げられる。有用なイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びポリイソシアネート(商品名DESMODUR N100及びDESMODUR N3300でBayer MaterialScience,Pittsburgh,PAから入手可能であるもの等)を挙げることができる。有用な酸としては、鉱酸(塩酸及び硫酸等)、モノ−、ジ−、及びポリカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸)を含むカルボン酸、及びスルホン酸(ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等)が挙げられる。有用な無水カルボン酸としては、無水コハク酸、無水リンゴ酸、無水アクリル酸、無水イタコン酸が挙げられる。有用な脱複合体化剤が、例えば、米国特許第5,686,544号(Pocius)、国際特許第97/07171号(Deviny)、米国特許第5,872,197号(Deviny)、及び米国特許第6,812,308号(Devinyら)に記載されている。遊離されたトリオルガノボランは、例えば、アクリレートモノマーの重合を開始することが可能である。
【0036】
ナノ粒子
本開示のナノ粒子は、無機コア、具体的には、無機酸化物コア(例えば、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、及びアルミナ−シリカ)を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、シリカ、ジルコニア、又はそれらの混合物を含む。
【0037】
ナノ粒子は、非金属の酸化物、金属の酸化物、又はそれらの組み合わせを含み得る。非金属の酸化物としては、例えばケイ素又はゲルマニウムの酸化物が挙げられる。金属の酸化物は、例えば、鉄、チタン、セリウム、バナジウム、アンチモン、錫、アルミニウム、又はジルコニウムの酸化物を含む。
【0038】
ナノ粒子は、100ナノメートル(nm)以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、15ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下の平均粒径を有することができる。ナノ粒子は、少なくとも1ナノメートル、少なくとも5ナノメートル、少なくとも15ナノメートル、少なくとも20ナノメートル、少なくとも25ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、又は少なくとも75ナノメートルの平均粒径を有することができる。
【0039】
種々のナノ粒子が市販されている。ナノ粒子の商業的供給源として、Nyacol Co.(Ashland,MA)、Solvay−Rhodia(Lyon,France)、及びNalco Co.(Naperville,IL)を利用することができる。ナノ粒子は、当該技術分野において既知の技法を使用して作製することもできる。例えば、ジルコニアナノ粒子は、例えば、国際公開第2009/085926号(Kolbら)に記載されている水熱技術を使用して調製することができる。
【0040】
好ましくは、無機(表面改質されていない)ナノ粒子は、40ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下、より好ましくは、10ナノメートル以下の平均粒子直径を有する、水性又は水/有機溶媒混合物中に提供されるシリカナノ粒子であり得る。平均粒径は、透過電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、(表面改質されていない)ナノ粒子は、コロイド状分散液の形態であり得る。水性媒質中のコロイド状シリカナノ粒子は当該技術分野で周知であり、市販されている。水又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、LUDOX(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手可能)、NYACOL(Nyacol Co.,Ashland,MAから入手可能)、及びNALCO(Nalco Co.,Naperville,ILから入手可能)といった商品名で市販されている。
【0042】
有用なシリカゾルのうちの1つは、5ナノメートルの平均粒径、pH 10.5、及び15重量%の固形含量を有する、Nalco Co.,Naperville,ILから入手可能であるシリカゾルとして入手可能なNALCO 2326である。他の市販されているシリカナノ粒子としては、Nalco Co.から入手可能なNALCO 1115、NALCO 1130、NALCO 1040、NALCO 1050、NALCO 1060、NALCO 2327、NALCO 2329、Remet Corp.から市販されているREMASOL SP30、及びSigma−Aldrichから市販されているLUDOX SMが挙げられる。
【0043】
ジルコニアナノ粒子分散液は、商品名「NALCO OOSSOO8」でNalco Chemical Co.から、及び商品名「BUHLER ZIRCONIA Z−WO」でBuhler AG Uzwil,Switzerlandから入手可能である。好適なジルコニアナノ粒子はまた、例えば、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に記載されているものである。
【0044】
ナノ粒子は、完全に凝縮されてもよい。完全凝縮ナノ粒子(非晶質シリカを除く)は、典型的に、55%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)を有する。例えば、結晶化度は、約86%まで又はそれ以上の範囲にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性(例えば、ジルコニア)ナノ粒子は、屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的に、屈折率がより低い。
【0045】
ある特定の実施形態において、無機コアは、シリカ、ジルコニア、又はアルミナ等の無機酸化物コアであり得る。
【0046】
結合トリオルガノボラン−アミン複合体
表面改質基は、構造−Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む。結合された(即ち、つながれた)このような複合体は、遊離−ラジカル前駆体複合体である。表面改質基は、多くの場合、付着基を介して無機ナノ粒子と共有結合的に結合する。つまり、付着基は、無機ナノ粒子の表面及び表面改質基の両方と共有結合的に結合する。
【0047】
このような結合複合体において、Zは二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zは1〜30個の炭素原子を有する二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zは1〜20個の炭素原子を有する二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zは1〜10個の炭素原子を有する二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zは1〜6個の炭素原子を有する二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zは1〜3個の炭素原子を有する二価有機基である。ある特定の実施形態において、Zはアルキレン基である。
【0048】
このような結合複合体において、R及びR基は、ルイス酸−塩基トリオルガノボラン−アミン複合体が、結合アミン基とトリオルガノボラン化合物との間で容易に形成されるように、選択される。これは、電子的及び立体的考察に基づいてこのような基を選択することを含む。例えば、Rは、ルイス酸−塩基複合体が形成されないように、立体障害性であり過ぎない、又は電子吸引性であり過ぎないことが所望である。
【0049】
このような結合複合体において、Rは、H又は有機基である。ある特定の実施形態において、Rは、H、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はそれらの組み合わせ(例えば、アラルキル、アルカリル、又はクロアルキルで置換されたアルキル)である。ある特定の実施形態において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、−CH−フェニル、又は−CH−シクロヘキシルである。ある特定の実施形態において、Rは、H、アルキル基、又はシクロアルキル基である。ある特定の実施形態において、Rは、H、(C1〜C6)アルキル基、又は(C4〜C8)シクロアルキル基である。ある特定の実施形態において、Rは、Hである。
【0050】
好ましいR基は、ルイス酸−塩基複合体が形成されないように、立体障害性であり過ぎない。フェニル、イソプロピル、t−ブチル、及びシクロヘキシル等の立体障害基は、望ましくないが、このような嵩高い基がアミン基の窒素原子と直接結合しない場合には、それらを使用することができる。このような基の例としては、−CH−フェニル又は−CH−シクロヘキシルが挙げられる。なお更に好ましいR基は、メチル、エチル、及びプロピル基がルイス酸−塩基複合体のより容易な形成を可能にすることから、メチル、エチル、及びプロピル基である。
【0051】
このような結合複合体において、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。ある特定の実施形態において、各Rは独立して、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はそれらの組み合わせ(例えば、アラルキル基又はアルカリル基)である。ある特定の実施形態において、各Rは独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリル基である。ある特定の実施形態において、各Rは独立して、(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、(C6〜C14)ar(C1〜C10)アルキル基、又は(C1〜C10)alk(C6〜C14)アリール基である。ある特定の実施形態において、各R基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。ある特定の実施形態において、各Rは独立して、アルキル基又はシクロアルキル基である。ある特定の実施形態において、各Rは独立して、(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基である。ある特定の実施形態において、各Rは、構造−Z−NHR−B(Rにおいて同じものである。
【0052】
好ましいR基は、ルイス酸−塩基複合体が形成されないように、電子供与性であり過ぎない。典型的には、アリール基等の電子供与性基は、アルキル及びシクロアルキル基ほど望ましくないが、このような基がトリオルガノボラン(triorganonoborane)基のホウ素原子に直接結合しない場合には、それらを使用することができる。
【0053】
構造−Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン複合体のある特定の実施形態において、Zは1〜30個の炭素原子を有する二価有機基であり、Rは、H、アルキル基、又はシクロアルキル基であり、各Rは独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリル基である。
【0054】
構造−Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン複合体のある特定の実施形態において、Zは1〜20個の炭素原子を有する二価有機基であり、Rは、H又は(C1〜C6)アルキル基若しくは(C4〜C8)シクロアルキル基であり、各Rは独立して、(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、(C6〜C14)ar(C1〜C10)アルキル基、又は(C1〜C10)alk(C6〜C14)アリール基である。
【0055】
構造−Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン複合体のある特定の実施形態において、Zは1〜3個の炭素原子を有する二価有機基であり、RはHであり、各Rは独立して、(C1〜C6)アルキル基である。
【0056】
ある特定の実施形態において、アミン官能性有機基は、−Si−O−Si−結合を含有する付着基を介して無機酸化物ナノ粒子と共有結合的に結合することができる。
【0057】
ナノ粒子と結合した任意の基
ナノ粒子は、構造−Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン複合体以外の表面改質基を含み得る。例えば、ナノ粒子は、ナノ粒子と直接結合したアミン官能性有機基を更に含み得る。これは、このようなアミン官能性有機基がトリオルガノボランとの複合体ではないことを意味する。このようなアミン官能性有機基は、典型的には、トリオルガノボランと結合しない、アミン官能性ナノ粒子上の超過基である。
【0058】
また、ナノ粒子は、ナノ粒子と直接結合した追加の安定化(典型的には、非アミン官能性)有機基を含み得る。このような有機基は、ナノ粒子と結合され得るトリオルガノボラン−アミン複合体及び任意のアミン官能性有機基から分離され、かつそれらと異なる(即ち、それらの一部ではない)。追加の安定化有機基は、ナノ粒子と結合する多種多様な従来の官能性基から選択することができる。典型的には、安定化有機基は、結合アミン官能性有機基をトリオルガノボランと複合化する前に、液体(例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又はグリコール)、又はそれらの組み合わせ)中に分散されるとき、複数のアミン官能性無機ナノ粒子を安定化するように選択される。このような追加の安定化(典型的には、非アミン官能性)有機基は、カテナリー酸素原子及び他の官能性基(例えば、OH基)を任意に含有する(C1〜C30)有機基を含む。ある特定の実施形態において、追加の安定化有機基は、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はそれらの組み合わせ(アルカリル又はアラルキル基)を含む。ある特定の実施形態において、追加の安定化有機基は、(C3〜C16)アルキル基である。
【0059】
アミン官能性有機基及び追加の安定化有機基は、−Si−O−Si−結合を含有する付着基を介して無機酸化物ナノ粒子と共有結合的に結合することができる。
【0060】
したがって、ある特定の実施形態において、アミン官能性有機基は、式A−ZNHR[式中、Aは、基−ZNHRを表面に付着させるナノ粒子の表面と反応する基であり、Z及びRは、−Z−NHR−B(Rについて本明細書で定義される通りである]の化合物によって提供される。A基は、式−Si(R)(R[式中、Rが加水分解性基であり、Rが加水分解性基又は非−加水分解性基である]の基等の加水分解性シリル基であり得る。多くの実施形態において、A基は、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等のトリ(アルコキシ)シリル基である。式A−ZNHRの例示的な化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、及び11−アミノウンデシルトリエトキシシランが挙げられる。
【0061】
ある特定の実施形態において、追加の安定化有機基は、式A−Qの化合物[式中、Aは上記と同じであり、Qは安定化有機基である]によって提供される。ある特定の実施形態において、Qは、カテナリー酸素原子及び他の官能性基(例えば、OH基)を任意に含有する(C1〜C30)有機基である。ある特定の実施形態において、Qは、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はそれらの組み合わせ(アルカリル又はアラルキル基)である。好ましいQ基は、(C3〜C16)アルキル基(メチル、エチル、分枝及び非分枝プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、及びヘキサデシル基等)、又は(C6〜C14)アリール基(フェニル基等)である。
【0062】
式A−Qの例示的化合物としては、例えば、イソオクチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、及びブチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0063】
製造法
本開示の表面改質されたナノ粒子は、(ナノ粒子と結合した)アミン官能性有機基をトリオルガノボラン(B(R)と複合化する前に、液体(例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又はグリコール)、又はそれらの組み合わせ)中に分散されるとき、複数のアミン官能性無機ナノ粒子を安定化するように選択される有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子で開始することを含む方法によって作製することができる。
【0064】
この文脈において、「安定化する」及び「安定化すること」は、好ましくは、上記分散液がゲル化する(典型的なフラスコ(例えば、250mlの丸底フラスコ)中で透けて見えるような透明又は僅かに曇った状態から、混濁、多くの場合、比較例1において起こるような粘性コンシステンシーに変化する)傾向を低減する、好ましくはゲル化を防止するとして定義される。このようなゲル化は、典型的には、アミン官能性無機ナノ粒子と結合した追加の安定化有機基を使用することなく起こる。
【0065】
アミン官能性基を有するナノ粒子を官能化することは、好ましくは、当業者が従来の技法を用いて行うことができるように、例えば、式A−Qの化合物を用いて、安定化(典型的には、非アミン官能性)有機基を有する粒子を最初に官能化することによって行われる。このような有機基(本明細書において「安定化」有機基を指す)は、アミン官能性有機基をトリオルガノボランと複合化する前に、液体(例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又はグリコール)、又はそれらの組み合わせ)中に分散されるとき、複数の結果として得られたアミン官能性無機ナノ粒子を安定化するように選択することができる。
【0066】
式A−Qの化合物のある特定の実施形態において、基Aは、式−Si(R)(R[式中、Rは加水分解性基であり、Rは加水分解性基又は非加水分解性基である]で表される加水分解性シリル基である。ある特定の実施形態において、基Qは、(C3〜C16)アルキル基又は(C6〜C14)アリール基である。
【0067】
したがって、結合した安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子は、以下を含む方法、即ち、極性液体(例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又はグリコール)又はそれらの組み合わせ)中に分散されたとき、複数のナノ粒子を安定化するように選択される結合した安定化有機基を含む無機酸化物ナノ粒子を提供することと、アミン官能性化合物(例えば、式A−ZNHRの化合物)を提供することと、結合した安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子を形成するのに有効な条件下で、アミン官能性化合物と、結合した安定化有機基を含む無機ナノ粒子とを組み合わせること、を含む方法によって作製することができる。
【0068】
アミン官能性ナノ粒子を作製するための好適なアミン官能性化合物(例えば、式A−ZNHRの化合物)は、多くの場合、上で定義される式−Si(R)(Rの加水分解性シリル基である基Aを含む。例示的アミン官能性化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、及び11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン又はアミノアリールトリアルコキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本開示の方法は、式B(R[式中、各Rが炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である]のトリオルガノボラン化合物を提供することと、表面改質されたナノ粒子を形成するために有効な条件下で、有機基を含むアミン官能性無機酸化物ナノ粒子をトリオルガノボラン化合物と組み合わせることとであって、各表面改質されたナノ粒子が本明細書に記載される無機コア及び表面改質基を含む、組み合わせることと、を更に含む。
【0070】
このような方法において、少なくとも超過トリオルガノボランは不安定であり得るため、好ましくは、使用されるトリオルガノボラン化合物(B(R)の量は、ナノ粒子上のアミン官能性基の数に対して当量未満である。N(H)−B(R結合の形成、したがって、ナノ粒子と結合したアミン−トリオルガノボラン複合体の形成は、例えば、11B NMR分光法により同定され得る。
【0071】
ある特定の実施形態において、アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物(B(R)とを組み合わせることは、本明細書に記載される無機コア及び表面改質基を含む結果として得られた表面改質されたナノ粒子からその後除去される溶媒中でそれらを共に混合することを含む方法によって行うことができる。典型的には、この方法において、溶媒は、アルカン(例えば、ヘキサン)、芳香族(例えば、トルエン)、エーテル(例えば、THF)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0072】
ある特定の実施形態において、アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物(B(R)とを組み合わせることは、以下を含む方法、即ち、溶媒中にトリオルガノボラン化合物を添加して、例えば、噴霧等によってアミン官能性無機ナノ粒子を乾燥させることと、ナノ粒子をかき混ぜ、本明細書に記載される無機コア及び表面改質基を含む結果として得られた表面改質された無機ナノ粒子から溶媒を蒸発させること、を含む方法によって行うことができる。典型的には、この方法において、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)又はヘキサンである。
【0073】
アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物(B(R)とを組み合わせることは、空気中で行うことができるか、又は窒素雰囲気中等の不活性雰囲気中で行うことができる。アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物(B(R)とを組み合わせることは、より低い温度(例えば、−20℃、−10℃、又は0℃)、室温、より高い温度(例えば、溶媒の沸点と同じ温度)を含む任意の温度で行うことができる。
【0074】
本明細書に記載の方法は容易であり、無機コア及び結合−Z−NHR−B(R複合体並びに結合−Q安定化有機基を含む、表面改質されたナノ粒子を調製するために制御可能である。例えば、このような方法は、既知の予想できる量の結合−Z−NHR−B(R複合体を提供する。更に、本明細書に記載の方法は、具体的には、本明細書で定義されるように、ナノ粒子を使用する際のゲル形成を回避する。
【0075】
対照的に、フュームドシリカ又はシリカナノ粒子を有するが安定化有機基を有さない、単純に3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性化合物を用いる方法は、多くの場合、ゲルの形成をもたらす(フュームドシリカを用いた比較例1、及びシリカナノ粒子を用いた比較例4)。フュームドシリカ及び安定化有機基と共にアミン官能性化合物を使用する方法は、トリオルガノボラン(比較例2、比較例6、及び比較例10)と組み合わせると、有効な遊離ラジカル源を提供しない、白色の粉末を形成する。つまり、(無機ナノ粒子であると考えられていない)フュームドシリカは、−Z−NHR−B(R複合体のためのコア材料として好適ではない。フュームドシリカが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性化合物と、イソオクチルトリメトキシシラン等の安定化基の源との混合物で処理された場合、結果として得られた修飾フュームドシリカは、比較例2の材料を使用する比較例5〜7の材料を使用する比較例9〜11によって証明されるように、トリオルガノボランと組み合わされたときに、有効な遊離ラジカル源を提供しない。
【0076】
比較例1及び3は、米国特許第7,649,068号に記載されるように、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性化合物を有するフュームドシリカを使用する。比較例1は、混合物が溶媒(水)を含む場合、ゲルが形成されることを示す。ゲルの形成は望ましくない。比較例3は、混合物が溶媒を含まない(即ち、フュームドシリカが乾燥状態で使用される)場合、比較例3の材料を使用する比較例8の材料を使用する比較例12によって証明されるように、トリオルガノボランと組み合わされたときに、有効な遊離ラジカル源を提供しない材料が形成されることを示す。
【0077】
したがって、本開示は、ゲルではなく、かつトリオルガノボランの有効源であるトリオルガノボラン−アミン官能化ナノ粒子を作製するはるかに制御可能な方法を提供する。
【0078】
使用
本開示の表面改質されたナノ粒子は、広い用途を有する。該ナノ粒子は、例えば、高充填合成物を含む充填合成物において、二部構造用接着剤において、かつ硬化性(メタ)アクリレート含有組成物において、有用であり得る。
【0079】
本開示の表面改質されたナノ粒子は、乾燥した固体材料として提供することができる。このような乾燥した固体材料は、典型的には、不活性雰囲気下で液体中に溶解される遊離トリオルガノボラン及び従来のアミン−ボラン構造よりも安定している。更に、固体粒子は、粒子のかなりの部分が無機であるため、トリオルガノボランのより安全な送達手段を提供する。
【0080】
代替的に、本開示のナノ粒子は、液体中の複数の表面改質されたナノ粒子の分散液中に提供され得る。本開示の表面改質されたナノ粒子は、重合性成分(液体であり得る)を含む重合性組成物中で使用することができる。
【0081】
このような分散液は、好ましくは、物理的及び化学的に安定している。物理的に安定しているとは、このような分散液が、典型的なフラスコ(例えば、250mlの丸底フラスコ)中で透けて見えるように、外観が透明である又は僅かに曇っている(しかし、混濁ではない)ことを意味する。化学的に安定しているとは、結合トリオルガノボラン−アミン複合体が、例えば、大気中の酸素及び/又は大気水による分解に対して、又はそれらとの反応に対して安定していることを意味する。
【0082】
有用な脱複合体化剤としては、イソシアネート、酸(カルボン酸を含む)及び無水カルボン酸が挙げられる。有用なイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びポリイソシアネート(商品名DESMODUR N100及びDESMODUR N3300でBayer MaterialScience,Pittsburgh,PAから入手可能であるもの等)が挙げられ得る。有用な酸としては、鉱酸(塩酸及び硫酸等)、モノ−、ジ−、及びポリカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸)を含むカルボン酸、並びにスルホン酸(ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等))が挙げられる。有用な無水カルボン酸としては、無水コハク酸、無水リンゴ酸、無水アクリル酸、及び無水イタコン酸が挙げられる。有用な脱複合体化剤は、例えば、米国特許第5,686,544号(Pocius)、国際公開第97/07171号(Deviny)、米国特許第5,872,197号(Deviny)、及び米国特許第6,812,308号(Devinyら)に記載されている。遊離されるトリオルガノボランは、典型的には、遊離ラジカル機構を介して、重合性成分の重合を開始することができる。
【0083】
典型的には、このような重合性成分は、エチレン性不飽和モノマー、オリゴマー、並びに1つ以上のエチレン性不飽和基を有するポリマーを含む。好適な化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を受けることが可能である。このようなフリーラジカル重合性化合物としては、モノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート(即ち、アクリレート及びメタクリレート)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;(メタ)アクリルアミド(即ち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、並びにジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールのビス−(メタ)アクリレート(好ましくは、分子量200〜500)、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に記載されているもののような、アクリレート化されたモノマーの共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(Zadorら)に記載されているもののような、アクリレート化されたオリゴマー、並びに米国特許第4,648,843号(Mitra)に開示されているもののような、ポリ(エチレン性不飽和)カルバモイルイソシアヌレート、並びにビニル化合物、例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジパート、及びジビニルフタレートが挙げられる。他の適切なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、国際公開第00/38619号(Guggenbergerら)、同第01/92271号(Weinmannら)、同第01/07444号(Guggenbergerら)、同第00/42092号(Guggenbergerら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(Fockら)、米国特許第4,356,296号(Griffithら)、欧州特許第0373 384号(Wagenknechtら)、欧州特許第0201 031号(Reinersら)、及び欧州特許第0201 778号(Reinersら)に開示されているようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、2つ以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することが可能である。
【0084】
ある特定の実施形態において、表面改質されたナノ粒子は、二重硬化系に組み込むことができる。二重硬化系は、典型的には、2つの重合性成分、例えば、熱硬化性成分(例えば、ポリ尿素、ポリウレタン、又はエポキシ熱硬化性)等の第1の重合性成分と、重合性アクリレート成分等の第2の重合性成分とを含む。重合性アクリレート成分は、1つ以上のアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む任意の重合性アクリレート成分であり得る。
【0085】
二重硬化系の成分は、独立して重合し、硬化した材料(例えば、基板上のコーティング)を形成する。熱硬化性成分は、重合し、アミンとイソシアネートとの自発的な反応によって、例えば、ポリ尿素を形成することができる。アクリレート成分は、重合して、アクリルホモポリマー又はコポリマーを形成することができる。アクリルポリマーは、架橋されても、架橋されなくてもよい。硬化材料中の熱硬化性成分及びアクリルポリマーは、(例えば、熱硬化性成分及びアクリレート成分の両方と反応性である化合物を組成物中に含ませることによって)互いに化学的に結合することができるか、又はそれらは、成分が互いに化学的に結合されていない相互貫入ポリマー網(IPN)を形成することができる。
【0086】
1つの例示的な実施形態において、二重硬化系は、重合して、(ポリアミン成分とポリイソシアネート成分との自発的な反応によって)ポリ尿素を、及び(1つ以上のアクリレートモノマーの重合によって)ポリアクリレートを形成することができる、二部系である。この実施形態において、第一の部分は、ポリアミン成分及び有機ボラン−アミン官能化ナノ粒子を含み、第二の部分は、ポリイソシアネート成分及び1つ以上のアクリレートモノマーを含む。任意に、第二の部分のポリイソシアネートの部分は、脱複合体化剤として作用して、トリオルガノボランをトリオルガノボラン−アミン官能化ナノ粒子から遊離することができるか、又は第二の部分は、脱複合体化剤を更に含むことができる。二部が混合された後、ポリアミン成分及びポリイソシアネート成分は、自発的に反応して、ポリ尿素を形成することができ、放出されたトリオルガノボランは反応して、1つ以上のアクリレートモノマーの重合を開始することができる。
【0087】
典型的には、このような系は、2つの硬化性成分が、各成分の化学的性質を制御することによって、硬度及び可撓性等の硬化材料の物理的特性を制御又は変更するための方法を提供する点で、従来のポリ尿素、ポリウレタン、エポキシ、又はアクリレートコーティングに勝る利点を有する。
【0088】
代表的な実施例
1.無機コア及び表面改質基を含む、表面改質されたナノ粒子であって、表面改質基が、構造−Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む、ナノ粒子。
[式中、Zが二価有機基であり、
がH又は有機基であり、
各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]
【0089】
2.無機コアが無機酸化物コアを含む、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0090】
3.無機コアが、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、ゲルマニウム酸化物、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、又はアルミナ−シリカを含む、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0091】
4.無機酸化物コアが、シリカ、ジルコニア、又はアルミナを含む、実施形態3に記載のナノ粒子。
【0092】
5.無機コアがシリカを含む、実施形態4に記載のナノ粒子。
【0093】
6.Zが1〜30個の炭素原子を有する二価有機基である、実施形態1〜5のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0094】
7.RがH、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はそれらの組み合わせである実施形態1〜6のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0095】
8.Rがメチル、エチル、n−プロピル、−CH−フェニル、又は−CH−シクロヘキシルである、実施形態7に記載のナノ粒子。
【0096】
9.各Rが独立して、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はそれらの組み合わせである、実施形態1〜8のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0097】
10.Zが、1〜30個の炭素原子を有する二価有機基であり、
がH、アルキル基、又はシクロアルキル基であり、
各Rが独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリル基である、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0098】
11.Zが、1〜20個の炭素原子を有する二価有機基であり、
が、H又は(C1〜C6)アルキル基又は(C4〜C8)シクロアルキル基であり、
各Rが独立して、(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、(C6〜C14)ar(C1〜C10)アルキル基、又は(C1〜C10)alk(C6〜C14)アリール基である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0099】
12.各Rが独立して、アルキル基又はシクロアルキル基である、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0100】
13.Zが、1〜3個の炭素原子を有する二価有機基であり、
がHであり、
各Rが独立して、(C1〜C6)アルキル基である、実施形態12に記載のナノ粒子。
【0101】
14.各Rが構造−Z−NHR−B(R内で同じである、実施形態1〜13のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0102】
15.Zがアルキレンである、実施形態1〜14のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0103】
16.表面改質基が、トリオルガノボランとの複合体ではないアミン官能性有機基を更に含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0104】
17.表面改質基が、ナノ粒子と結合した安定化有機基を更に含む、実施形態1〜16のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0105】
18.安定化有機基が、カテナリー酸素原子及び他の官能性基を任意に含む(C1〜C30)有機基を含む、実施形態17に記載のナノ粒子。
【0106】
19.安定化有機基が、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態18に記載のナノ粒子。
【0107】
20.液体中の、複数の実施形態1〜18のいずれか1つに記載の表面改質されたナノ粒子の分散液。
【0108】
21.安定している実施形態20に記載の分散液。
【0109】
22.液体が重合性モノマーを含む、実施形態20又は21に記載の分散液。
【0110】
23.表面改質されたナノ粒子を作製する方法であって、該方法が、
液体中に分散されるとき、複数のアミン官能性無機ナノ粒子を安定化するように選択される、結合した安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子を提供することと、
式B(Rで表されるトリオルガノボラン化合物[式中、各Rが、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]を提供することと、
表面改質されたナノ粒子を形成するために有効な条件下で、アミン官能性無機ナノ粒子と、トリオルガノボラン化合物とを組み合わせることであって、各表面改質されたナノ粒子が、無機コア及び表面改質基を含み、表面改質基が、構造−Z−NHR−B(Rを有する、少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体[式中、
Zが二価有機基であり、
がH又は有機基であり、
各Rが独立して、炭素原子を介して前記ホウ素原子と結合した有機基である。]を含むことと、を含む、方法。
【0111】
24.結合した安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子を提供することが、
液体中に分散されるとき、複数のナノ粒子を安定化するように選択される結合した安定化有機基を含む無機ナノ粒子を提供することと、
アミン官能性化合物を提供することと、
結合した安定化有機基を含むアミン官能性無機ナノ粒子を形成するために有効な条件下で、アミン官能性化合物と、結合した安定化有機基を含む無機ナノ粒子と、を組み合わせることと、を含む、実施形態23に記載の方法。
【0112】
25.アミン官能性化合物と、無機ナノ粒子とを組み合わせることが、水、アルコール、又はそれらの組み合わせから選択される溶媒中で起こる、実施形態24に記載の方法。
【0113】
26.アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物とを組み合わせることが、溶媒中で起こり、該溶媒が、その後、結果として得られる、無機コア及び表面改質基を含む表面改質されたナノ粒子から除去される、実施形態23〜25のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
27.溶媒が、アルカン、芳香族、エーテル、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態26に記載の方法。
【0115】
28.アミン官能性無機ナノ粒子とトリオルガノボラン化合物とを組み合わせることが、
溶媒中のトリオルガノボラン化合物を乾燥アミン官能性無機ナノ粒子上に噴霧することと、
ナノ粒子をかき混ぜ、溶媒を蒸発させ、結果として得られる、無機コア及び表面改質基を含む表面改質された無機酸化物ナノ粒子を形成することと、を含む、実施形態23〜25のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
29.溶媒がTHF又はヘキサンである、実施形態28に記載の方法。
【0117】
30.重合性成分及び表面改質されたナノ粒子を含む重合性組成物であって、各表面改質されたナノ粒子が、表面改質基を含み、表面改質基が、構造−Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1個のトリオルガノボラン−アミン複合体を含む、重合性組成物。
[式中、Zが二価有機基であり、
がH又は有機基であり、
各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。]
【0118】
31.二重硬化系の一部である、実施形態30に記載の組成物。
【0119】
32.表面改質されたナノ粒子が、結合した安定化有機基を更に含む、実施形態30又は31に記載の組成物。
【0120】
33.安定化有機基が、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態32に記載の組成物。
【実施例】
【0121】
本開示の目的及び利点を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に引用された特定の物質及びその量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限すると解釈されるべきではない。
【0122】
以下の実施例は、あくまで説明を目的としたものであって、添付された特許請求の範囲をいかなる意味においても限定することを意図するものではない。実施例における部、百分率、比等は全て、特に記載しない限り、重量基準である。使用されている単位の略語としては、h=時間、gm=グラム、wt=重量、cm=センチメートルが挙げられる。特に明記しない限り、材料は、Sigma−Aldrich,St.Louis,MOから入手した。
【0123】
調製例1
シリカ(100gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2326で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。イソオクチルトリメトキシシラン(3.41gm、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから入手)と1−メトキシ−2−プロパノール(100gm、Alfa Aesar,Ward Hill,MAから入手)との混合物を撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて2時間加熱した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)と1−メトキシ−2−プロパノール(22.1gm)との混合物をフラスコに添加した。混合物を80℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0124】
調製例2
シリカ(100gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2327で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。フェニルトリメトキシシラン(1.75gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)と1−メトキシ−2−プロパノール(約60gm)との混合物を、撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて約4時間加熱した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm)と1−メトキシ−2−プロパノール(約60gm)との混合物をフラスコに添加した。混合物を80℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0125】
調製例3
シリカ(500gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2326で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。ヘキサデシルトリメトキシシラン(24.36gm、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから入手)の混合物と、エタノール(約280gm)中の20重量パーセントのメタノールの混合物とを撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて約4時間加熱した。3−アミノプロピルトリメトキシシラン(12.60gm)とエタノール(約280gm)中の20重量パーセントのメタノールとの混合物を、次いで、フラスコに添加した。混合物を80℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0126】
調製例4
シリカ(500gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2326で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。イソオクチルトリメトキシシラン(16.44gm、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから入手)の混合物と、エタノール(約280gm)中の20重量パーセントのメタノールの混合物とを撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて約4時間加熱した。N,N−diメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(14.57gm)とエタノール(約280gm)中の20重量パーセントのメタノールとの混合物を、次いで、フラスコに添加した。混合物を80℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0127】
調製例5
シリカ(100gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2326で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。イソオクチルトリメトキシシラン(3.29gm、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから入手)の混合物とエタノール(約56gm)中の20重量パーセントのメタノールの混合物とを撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて約4時間加熱した。N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.59gm)とエタノール(約56gm)中の20重量パーセントのメタノールとの混合物を、次いで、フラスコに添加した。混合物を80℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0128】
比較例1
フュームドシリカ(16.6gm、Evonik Degussa Corp.,Parsippany,NJから商品名AEROSIL 200で入手可能)と水(83.4gm)とを、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)と1−メトキシ−2−プロパノール(122gm)との混合物をフラスコに添加した。混合物の粘性が急速に増大し、撹拌を妨げた。混合物がゲルを形成するように見えた。
【0129】
比較例2
フュームドシリカ(16.6gm、Evonik Degussa Corp.,Parsippany,NJから商品名AEROSIL 200で入手可能)と水(83.4gm)とを、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)と、イソオクチルトリメトキシシラン(3.41gm、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから入手)と、1−メトキシ−2−プロパノール(122gm)との混合物を、次いで、フラスコに添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、混合物を撹拌し、80℃にて一晩加熱した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0130】
比較例3
フュームドシリカ(16.6gm、Evonik Degussa Corp.,Parsippany,NJから商品名AEROSIL 200で入手可能)を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)を乾燥状態でAEROSIL 200を含有するフラスコに添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、混合物を撹拌し、80℃にて一晩加熱した。次いで、反応混合物をPyrex皿に注ぎ、熱風乾燥器内で150℃にて乾燥させ、生成物を白色の粉末として得た。
【0131】
比較例4
シリカ(100gm、Nalco Company,Naperville,ILから商品名Nalco 2326で入手)の水性分散液を、水冷冷却器及びメカニカルスターラーを備えた3頚丸底フラスコ中で秤量した。1−メトキシ−2−プロパノール(100gm、Alfa Aesar,Ward Hill,MAから入手)を撹拌Nalco分散液に添加した。次いで、フラスコを油浴に入れ、80℃にて2時間加熱した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3.41gm、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)と1−メトキシ−2−プロパノール(22.1gm)との混合物をフラスコに添加した。混合物の粘性が急速に増大し、撹拌を妨げた。混合物がゲルを形成するように見えた。
【0132】
比較例5
丸底フラスコに比較例2の生成物(1.01gm)とトルエン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.6mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0133】
比較例6
丸底フラスコに比較例3の生成物(1.01gm)とトルエン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.75mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0134】
比較例7
丸底フラスコに比較例2の生成物(0.5gm)を入れた。テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.3mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0135】
比較例8
丸底フラスコに比較例3の生成物(0.5gm)を入れた。テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.35mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0136】
(実施例1)
丸底フラスコに調製例1のナノ粒子生成物(0.5gm)を入れた。ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.2mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0137】
(実施例2)
丸底フラスコに調製例2のナノ粒子生成物(1.5gm)を入れた。ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.22mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0138】
(実施例3)
丸底フラスコに調製例3のナノ粒子生成物(0.5gm)を入れた。テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.22mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0139】
(実施例4)
丸底フラスコに調製例4のナノ粒子生成物(0.25gm)を入れた。テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.1mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0140】
(実施例5)
丸底フラスコに調製例5のナノ粒子生成物(0.5gm)を入れた。テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.25mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌し、生成物を白色の粉末として得た。
【0141】
(実施例6)
丸底フラスコに、調製例1のナノ粒子生成物(10.03gm)とトルエン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(7.0mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0142】
(実施例7)
丸底フラスコに、調製例2のナノ粒子生成物(3.03gm)とヘキサン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.45mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0143】
(実施例8)
丸底フラスコに、調製例3のナノ粒子生成物(1.05gm)とトルエン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.45mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0144】
(実施例9)
丸底フラスコに、調製例4のナノ粒子生成物(0.52gm)とトルエン(約20mL)を入れた。フラスコに窒素ガスを通気した後、ヘキサン中のトリエチルボランの1モル溶液(0.25mL)を、シリンジを介してフラスコに添加した。混合物を約1時間室温で磁気的に撹拌した。ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去し、生成物を白色の粉末として得た。
【0145】
(実施例10)
200mLの丸底に調製例1のアミン官能性シリカナノ粒子10.03gmを入れた。次いで、トルエン(20.5gm)をフラスコに添加した。混合物を磁気的に撹拌してナノ粒子を懸濁させた。ナノ粒子の撹拌懸濁液に、テトラヒドロフラン中のトリエチルボランの1モル溶液(7.0mL、7.0mmolのトリエチルボラン、Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)を添加した。計算された化学量論は、トリエチルボランに対して計算されたモル過剰のアミノ基が存在するというものであった。ロータリーエバポレーターを使用して揮発性成分を除去した後、混合物を室温で約20分間撹拌させた。生成物は白い自由流動性粉であり、フラスコを封止するためのゴムセプタムを用いて丸底フラスコ中に貯蔵した。
【0146】
(実施例11)
ガラスバイアル瓶に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(SR238、Sartomer USA,LLC,Exton,PAから入手)中のElvacite 1010(Lucite International,Cordova,TNから入手したメチルメタクリレートマクロモノマー)30重量パーセントの溶液2.0gを入れた。実施例10のナノ粒子生成物(0.5g)をバイアル瓶に添加し、モノマー混合物中に分散させた。第2のガラスバイアル瓶に、1.0gのElvacite 1010/SR238混合物及び0.13gの氷酢酸を入れた。第2のバイアル瓶の内容物をピペットを使用して第1のバイアル瓶に一度に移し、次いで、結果として得られた組成物を、それをピペット内にくみ出し、それをバイアル瓶内に排出することによって混合した。1分以内に、混合物の粘性が増大し始めた。更に2分後、混合物は注入可能でなくなり、更に3分後(混合の合計6分後)、組成物は重合されたゲルとなった。
【0147】
(実施例12)
ガラスバイアル瓶に、アクリル酸イソボルニル(1.69gm、TCI America,Portland,ORから入手)と実施例10のナノ粒子生成物(0.36gm)を入れた。第2のガラスバイアル瓶に、アクリル酸イソボルニル(0.73gm)と氷酢酸(0.1gm)を入れた。第2のバイアル瓶の内容物をピペットを使用して第1のバイアル瓶に一度に移し、次いで、結果として得られた組成物を、それをピペット内にくみ出し、それをバイアル瓶内に排出することによって混合した。15秒以内に、混合物は暖かくかつ粘性となった。更に5秒後(混合の合計20秒後)、組成物は重合されたゲルとなった。
【0148】
(実施例13)
ポリ尿素成分及びポリアクリレート成分を形成することが可能な二部二重硬化液体組成物を調製した。次いで、2つの部を組み合わせ、反応させて、ポリマーを形成した。Clearlink 1000(5.5gm、Dorf Ketal Chemicals,LLC,Stafford,TXから入手した脂環式ジアミン)、Desmophen NH 1420(20.0gm、Bayer MaterialScience,Pittsburgh,PAから入手した脂環式ジアミン)、Ti−Pure R960(15.0gm、DuPont Co.,Wilmington,DEから入手した表面改質された二酸化チタン)、及び実施例10のナノ粒子生成物(4.0gm)をビーカーの中で混合することによって、第一の部分を調製した。組み合わせられた材料をCowles型ミキサを使用して混合し、白色の不透明な分散液を形成した。Desmodur XP2410(17.0gm、Bayer MaterialScienceから入手したイソシアヌレート系のジ−イソシアネート)、Desmolux D100(1個のアクリレート及び2個のイソシアネート基を有するイソシアヌレート系化合物、Bayer MaterialScienceから入手)、Desmolux XP2513(39.0gm、Bayer MaterialScienceから入手したイソシアヌレート系のトリアクリレート)、及びヘキサンジオールジアクリレート(16.0gm、Sartomer USA,LLCから入手)をビーカー中で混合することによって、第二の部分を調製した。
【0149】
各パートを、50mLの合計体積を有するデュアルチャンバ2:1分配カートリッジ(Brandywine Materials LLC,Burlington,MAから入手)の別個のチャンバに装填した。第一の部分をカートリッジの2つのチャンバのうちの小さな方に装填した。カートリッジの全ての内容物をビーカーに排出し、2つの部分を木製舌圧子を使用して40秒間混合した。混合物をノッチコーティングバーを使用して、0.635mm(0.025インチ)の厚さの紙剥離ライナー上にコーティングした。コーティングは、20分以内に硬化した皮膚を形成し、それは、45分後に剥離ライナーから剥離するのに十分な構造的一体性を有していた。
【0150】
(実施例14)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例6の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0151】
(実施例15)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例7の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0152】
(実施例16)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例8の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0153】
(実施例17)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例9の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0154】
(実施例18)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例1の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0155】
(実施例19)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例2の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0156】
(実施例20)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例3の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0157】
(実施例21)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例4の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0158】
(実施例22)
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び実施例5の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は急速に増大し、5分以内に、混合物は、バイアル瓶が傾いたとき、もはや流出せず、これが有効な重合であることを示した。
【0159】
比較例9
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び比較例5の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は15分間に渡って増大せず、これが有効な重合ではないことを示した。
【0160】
比較例10
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び比較例6の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は15分間に渡って増大せず、これが有効な重合ではないことを示した。
【0161】
比較例11
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び比較例7の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は15分間に渡って増大せず、これが有効な重合ではないことを示した。
【0162】
比較例12
スクリューキャップ付きバイアル瓶に、2−エチルヘキシルアクリレート(2.0gm)、氷酢酸(1滴)、及び比較例8の生成物(0.1gm)を入れた。混合物の粘性は15分間に渡って増大せず、これが有効な重合ではないことを示した。
【0163】
本明細書に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容は、あたかもそれぞれが個々に組み込まれたのと同様に、それら全体が参照により組み込まれる。本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく本開示に対する様々な改変及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本開示は本明細書に記載される説明的実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではない点、更にこうした実施例及び実施形態はあくまで一例として示されるものであって、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである点は理解されるはずである。