(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る超電導磁石装置について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
1.構成
図1は、第1の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る超電導磁石装置1を示す。例えば、超電導磁石装置1は、MRI装置等に実装される。超電導磁石装置1は、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル(被冷却体)15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20を備える。
【0016】
真空容器11は、断熱真空容器とも呼ばれる。真空容器11は、熱シールド部12及び超電導コイル15等を収容する。真空容器11は、外部との熱移動を抑制するため、その内部が真空状態である。これによって、超電導コイル15と真空容器11との間を断熱状態に保持することができる。
【0017】
熱シールド部12は、熱放射による真空容器11から超電導コイル15への熱伝達を防止するために、超電導コイル15を覆うように設けられる。熱シールド部12は、例えば、銅及びアルミニウム等の熱伝導率が高い材料で構成される。
【0018】
また、熱シールド部12は、機械的強度を増すために、例えば、銅及びアルミニウム等の熱伝導率が高い材料に、ステンレス鋼及びFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)等の剛性部材が裏打ちされた複合材料で構成されてもよい。この場合、熱シールド部12は、熱伝導率が高い材料側が、超電導コイル15の対向面となるように設置される。また、熱シールド部12は、冷凍機14によって冷却される。
【0019】
シールド支持材13は、熱シールド部12を真空容器11に支持する。
【0020】
冷凍機14は、単段冷凍機又は多段冷凍機である。冷凍機14が多段冷凍機である場合、多段冷凍機は、多段の冷却ステージを通じて極低温の寒冷を生成する。冷凍機14としての多段冷凍機は、例えば4[K]程度以下の低い到達温度を実現可能な2段4K−ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機である。冷凍機14としての2段冷凍機の高段の冷却ステージは、低段の冷却ステージに至る途中で生成される寒冷により、高段の冷却ステージに熱的に接続された部材を伝導冷却する。冷凍機14としての2段冷凍機の低段の冷却ステージは、生成される寒冷により、低段の冷却ステージに熱的に接続された部材を伝導冷却する。
【0021】
冷凍機14が単段冷凍機である場合、単段冷凍機は、単段の冷却ステージを通じて極低温の寒冷を生成する。冷凍機14としての単段冷凍機は、例えば40K〜50[K]程度の到達温度を実現可能なGM冷凍機又はパルスチューブ型冷凍機である。冷凍機14としての単段冷凍機に備えられる唯一の冷却ステージは、生成される寒冷により、冷却ステージに熱的に接続された部材を伝導冷却する。GM冷凍機は、液体窒素や液体ヘリウム等を使用する装置に比べて、コスト的にも維持管理の面でも負担が軽い。そのため、MRI装置やリニアモーターカー等の超伝導材料の冷却に広く用いられる。
【0022】
ここでは、冷凍機14が多段冷凍機であり、冷凍機14としての2段冷凍機の低段の冷却ステージ14aに熱輸送装置が熱的に接続される例を説明する。冷凍機14が多段冷凍機である場合、熱輸送装置は、複数の冷却ステージのいずれかの冷却ステージに熱的に接続されればよい。
【0023】
超電導コイル15は、例えば、コイルの線材に金属系のNb
3Snが用いられるNb
3Sn超電導コイルである。なお、コイルに用いられる線材は、Nb
3Snに限られるものではなく、他の金属系の超電導線材が用いられてもよい。
【0024】
また、超電導コイル15は、例えば、コイルの線材に酸化物系の高温超電導線材が用いられる高温超電導コイルである。高温超電導線材として、例えば、ビスマス系(例えば、Bi2223)材料等が用いられる。
【0025】
コイル支持体16は、超電導コイル15を熱シールド部12に支持する。
【0026】
熱輸送装置20は、排熱部21、排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、媒介配管25、及び伸縮制御部26を備える。
【0027】
排熱部21は、冷凍機14の冷却ステージ14aに熱的に接続されている。熱的に接続とは、接触状態の他、熱伝導が可能な距離が保持されている非接触の状態を意味する。
【0028】
排熱配管22は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、排熱部21に熱的に接続された配管である。排熱部21及び排熱配管22によって熱交換器が形成される。例えば、排熱配管22は、排熱部21に、らせん状に巻き付けられる。
【0029】
受熱部23は、超電導コイル15に熱的に接続されている。なお、超電導コイル15が複数存在する場合、複数の超電導コイル15に接続される伝熱部17が備えられてもよい。その場合、受熱部23は、伝熱部17を介して複数の超電導コイル15に熱的に接続される。
【0030】
受熱配管24は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、受熱部23に熱的に接続された配管である。受熱部23及び受熱配管24によって熱交換器が形成される。例えば、受熱配管24は、受熱部23に、らせん状に巻き付けられる。受熱配管24は、重力方向における高さが、冷却ステージ14aの重力方向における高さよりも低くなるように設置されることが好適である。このような構成とすることで、熱スイッチのOFF時の熱侵入量を低減することができる。
【0031】
冷凍機14が停止した際、冷却ステージ14aの温度が上昇するが、冷却ステージ14aの高さが受熱配管24より高いと、高温となった冷媒が下降することがなく上部に留まるため、受熱配管24に侵入することがない。したがって、熱スイッチとしてのOFF時の熱侵入量を低減でき、超電導コイル15の温度上昇の速度を遅くすることが可能となる。
【0032】
媒介配管25は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、排熱配管22の一端と受熱配管24の一端とを接続する配管である。
【0033】
伸縮制御部26は、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26は、排熱配管22に接続される第1伸縮制御部26aと、受熱配管24に接続される第2伸縮制御部26bと、を備える。
【0034】
第1伸縮制御部26aは、伸縮部としてのベローズ31と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33)と、を備える。第1伸縮制御部26aの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ31は、伸縮動作により内容積が可変であり、排熱配管22の一端に接続される。ベローズ31としては、極低温でも伸縮が可能な金属で構成され、かつ、応力集中が1箇所で起こりにくいように、厚さを均一に製作した電着ベローズ等の高寿命部材が用いられる。ベローズ31は、伸縮動作により可動の可動底面(排熱配管22との接続面の対向面)と、固定底面(排熱配管22との接続面)とを備える。
【0035】
ベローズ用コイル32は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石33は、ベローズ31の可動底面(
図1に示すベローズ31の左側面)を固定底面(
図1に示すベローズ31の右側面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図1の左右方向)に往復移動可能な可動子である。
【0036】
ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33は、ベローズ31を伸縮させるための駆動機構である。
図1に示すベローズ31は、伸びている状態を示す。
【0037】
第2伸縮制御部26bは、伸縮部としてのベローズ41と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル42及びベローズ用永久磁石43)と、を備える。第2伸縮制御部26bの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ41は、伸縮動作により内容積が可変であり、受熱配管24の一端に接続される。ベローズ41としては、ベローズ31と同様に、電着ベローズ等の高寿命部材が用いられる。ベローズ41は、伸縮動作により可動の可動底面(受熱配管24との接続面の対向面)と、固定底面(受熱配管24との接続面)とを備える。
【0038】
ベローズ用コイル42は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石43は、ベローズ41の可動底面(
図1に示すベローズ41の右側面)を固定底面(
図1に示すベローズ41の左側面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図1の左右方向)に往復移動可能な可動子である。
【0039】
ベローズ用コイル42及びベローズ用永久磁石43は、ベローズ41を伸縮させるための駆動機構である。
図1に示すベローズ41は、縮んでいる状態を示す。なお、ベローズ41は伸びると
図1中に示すベローズ31と同様な状態となる。また、ベローズ用永久磁石33,43は縦線が中央に入った形で示されているが、これはS極とN極を概略的に示しているものである。
【0040】
ここで、順に接続されたベローズ31、排熱配管22、媒介配管25、受熱配管24、及びベローズ41には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図1において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ31,41は、所定の位相差で周期的に(繰り返し)伸縮する。所定の位相差は、逆位相であることが好適であるが、ほぼ逆位相であればよい。ベローズ31,41の伸縮動作によれば、排熱配管22、媒介配管25、及び受熱配管24の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0041】
第1に、ベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ41が伸びる過程では、ベローズ31が冷媒を排熱配管22に向かって押し出し、ベローズ41が冷媒を受熱配管24から引き込む。つまり、ベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ41が伸びる過程では、ベローズ31内の冷媒は排熱配管22に向かって流れ、排熱配管22内の冷媒は媒介配管25に向かって流れ、媒介配管25内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒はベローズ41に向かって流れる。
【0042】
第2に、ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ41が縮む過程では、ベローズ31が冷媒を排熱配管22から引き込み、ベローズ41が冷媒を受熱配管24に向かって押し出す。つまり、ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ41が縮む過程では、ベローズ41内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は媒介配管25に向かって流れ、媒介配管25内の冷媒は排熱配管22に向かって流れ、排熱配管22内の冷媒はベローズ31に向かって流れる。
【0043】
排熱部21及び排熱配管22によって形成される熱交換器では、ベローズ31,41の伸縮動作により排熱配管22内に移動してくる冷媒と、冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び受熱配管24によって形成される熱交換器では、ベローズ31,41の伸縮動作により受熱配管24内に移動してくる冷媒と、超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0044】
2.作用
図1に示す超電導磁石装置1の構成を用いて、超電導磁石装置1の作用について説明する。
【0045】
超電導磁石装置1の排熱配管22内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、ベローズ31,41が所定の位相差で周期的に伸縮されると、排熱配管22、媒介配管25、及び受熱配管24の配管系内の冷媒が往復動される。
【0046】
ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ41が縮む過程では、受熱配管24内で温められた冷媒は、媒介配管25を介して排熱配管22まで移動する。排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。
【0047】
続くベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ41が伸びる過程では、排熱配管22内で冷却された冷媒は、媒介配管25を介して超電導コイル15側に移動する。受熱配管24まで移動してきた冷媒は、再び、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。
【0048】
このように、ベローズ31,41の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0049】
ここで、超電導コイル15側と冷凍機14側との温度差については、配管系に封入される冷媒の比熱や、往復動される冷媒の流速や、冷媒の流量等により制御(設計)が可能となる。つまり、超電導磁石装置1では、ヒートパイプが用いられる場合のような温度領域の制限がない。
【0050】
また、超電導磁石装置1では、発熱量の変化に従ってベローズ31,41の伸縮量を調整することで、大小の発熱量の変化に対応できるような制御が可能となる。発熱量が比較的大きい場合、例えば、比較的大きな重量の超電導磁石の予冷(室温から所定温度までの冷却)の場合と、発熱量が比較的小さい場合、例えば、定常状態の場合との両方で効率の高い熱輸送が可能となる。
【0051】
また、上述したように、配管系として熱伝導率が低いステンレス等の材料が用いられる。冷凍機14の停止時にベローズ31,41の伸縮動作も停止させることで、熱輸送装置20による熱輸送を、配管系の熱伝導分も含めて低減する(断熱する)ことができる。トラブル時のように意図せずに冷凍機14が停止した場合、冷却ステージ14aの温度上昇による熱侵入を超電導コイル15に伝え難くすることが可能となり、超電導コイル15の温度上昇速度を低減することが可能となる。超電導コイル15における臨界温度まで上昇する時間が延び、超電導状態を保持できる時間を増加させることができる。
【0052】
また、冷凍機14を交換する場合やメンテナンスする場合のように、冷却ステージ14aを室温レベルまで温度上昇をさせようと、意図して冷凍機14を停止させる場合、冷凍機14からの熱侵入を低減でき、超電導コイル15の温度上昇を抑えることが可能となる。つまり、再冷却時間の短縮にも効果がある。配管系の各配管の長さをさらに長く、断面積をさらに小さくすることで伝導による熱侵入量は低減でき、超電導コイル15の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0053】
図2は、従来技術に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0054】
図2は、従来技術に係る伝導冷却式の超電導磁石装置Pを示す。超電導磁石装置Pは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び伝熱部材Lを備える。なお、
図2において、
図1に示す構成部材と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
伝熱部材Lとしては、一般的に、熱伝導率が極低温で高い無酸素銅又は高純度アルミニウム等の材料が使用される。超電導磁石装置Pでは、軽量化の観点から金属である伝熱部材Lを無制限に大きくすることはできない。伝熱部材Lの重量が、高温側及び低温側の温度差とのトレードオフの関係となるので、伝熱部材Lを小さく軽量とした場合に、十分に小さい温度差を得ることはできない。
【0056】
3.効果
第1の実施形態に係る超電導磁石装置1によると、超電導磁石装置1の重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
1.構成
図3は、第2の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0058】
図3は、第2の実施形態に係る超電導磁石装置1Aを示す。超電導磁石装置1Aは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Aを備える。
【0059】
熱輸送装置20Aは、
図1に示す熱輸送装置20と同様に、排熱部21、排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、及び媒介配管25を備える。ここでは、排熱配管22は第1排熱配管22と称され、媒介配管25は第1媒介配管25と称される。
【0060】
加えて、熱輸送装置20Aは、伸縮制御部26A、第2排熱配管27、及び第2媒介配管28を備える。
【0061】
第2排熱配管27は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、排熱部21に熱的に接続された配管である。排熱部21及び第2排熱配管27によって熱交換器が形成される。例えば、第2排熱配管27は、排熱部21に、らせん状に巻き付けられる。
【0062】
第2媒介配管28は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、受熱配管24の一端と第2排熱配管27の一端とを接続する配管である。
【0063】
伸縮制御部26Aは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Aは、第1排熱配管22に接続される第1伸縮制御部26aと、第2排熱配管27に接続される第3伸縮制御部26cと、を備える。
【0064】
第3伸縮制御部26cは、伸縮部としてのベローズ51と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル52及びベローズ用永久磁石53)と、を備える。第3伸縮制御部26cの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ51は、伸縮動作により内容積が可変であり、第2排熱配管27の一端に接続される。ベローズ51としては、ベローズ31と同様に、電着ベローズ等の高寿命部材が用いられる。ベローズ51は、伸縮動作により可動の可動底面(第2排熱配管27との接続面の対向面)と、固定底面(第2排熱配管27との接続面)とを備える。
【0065】
ベローズ用コイル52は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石53は、ベローズ51の可動底面(
図3に示すベローズ51の左側面)を固定底面(
図3に示すベローズ51の右側面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図3の左右方向)に往復移動可能な可動子である。
【0066】
ベローズ用コイル52及びベローズ用永久磁石53は、ベローズ51を伸縮させるための駆動機構である。
図3に示すベローズ31は伸びている状態を示し、ベローズ51は縮んでいる状態を示す。
【0067】
ここで、順に接続されたベローズ31、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、第2排熱配管27、及びベローズ51には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図3において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ31,51は、所定の位相差で周期的に伸縮する。所定の位相差は、逆位相であることが好適であるが、ほぼ逆位相であればよい。ベローズ31,51の伸縮動作によれば、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0068】
第1に、ベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ51が伸びる過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22に向かって押し出し、ベローズ51が冷媒を第2排熱配管27から引き込む。つまり、ベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ51が伸びる過程では、ベローズ31内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒はベローズ51に向かって流れる。
【0069】
第2に、ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ51が縮む過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22から引き込み、ベローズ51が冷媒を第2排熱配管27に向かって押し出す。つまり、ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ51が縮む過程では、ベローズ51内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒はベローズ31に向かって流れる。
【0070】
排熱部21及び第1排熱配管22によって形成される熱交換器と、排熱部21及び第2排熱配管27によって形成される熱交換器とでは、ベローズ31,51の伸縮動作により排熱配管22,27内に移動してくる冷媒と冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び受熱配管24によって形成される熱交換器では、ベローズ31,41の伸縮動作により受熱配管24内に移動してくる冷媒と超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0071】
つまり、熱輸送装置20Aは、
図1に示す熱輸送装置20と比較して、単に配管の取り回しを増加させることで、受熱部23の近傍に伸縮制御部をもたない。熱輸送装置20Aでは、熱輸送装置20と比較して、複数の伸縮制御部どうしを近い場所に設置するため、全体としては複数の伸縮制御部をコンパクトに集約できる。また、熱輸送装置20Aのような構成とすることで、熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0072】
なお、熱輸送装置20Aにおいて、媒介配管は、1又は2本に限定されるものではなく、n(n=1,2,…)本であればよい。媒介配管が1本からn本に増加したによる熱輸送量は、n倍となる。ただし、媒介配管の全体の長さは増加するため、媒介配管内の流量に伴う圧損の増加を考慮した設計が必要となる。
【0073】
2.作用
図3に示す超電導磁石装置1Aの構成を用いて、超電導磁石装置1Aの作用について説明する。
【0074】
超電導磁石装置1Aの排熱配管22,27内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、ベローズ31,51が所定の位相差で周期的に伸縮されると、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒が往復動される。
【0075】
ベローズ31が伸びる過程、かつ、ベローズ51が縮む過程では、第2排熱配管27内で冷却された冷媒は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動する。
【0076】
第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0077】
続くベローズ31が縮む過程、かつ、ベローズ51が伸びる過程では、第1排熱配管22内で冷却された冷媒は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動する。
【0078】
第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0079】
このように、ベローズ31,51の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25,28を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0080】
3.効果
第2の実施形態に係る超電導磁石装置1Aによると、超電導磁石装置1Aの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。
【0081】
(第3の実施形態)
1.構成
図4は、第3の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0082】
図4は、第3の実施形態に係る超電導磁石装置1Bを示す。超電導磁石装置1Bは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Bを備える。
【0083】
熱輸送装置20Bは、
図1に示す熱輸送装置20と同様に、排熱部21、排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、及び媒介配管25を備える。ここでは、受熱配管23は第1受熱配管23と称され、媒介配管25は第1媒介配管25と称される。
【0084】
加えて、熱輸送装置20Bは、伸縮制御部26B、第2媒介配管28、及び第2受熱配管29を備える。
【0085】
第2受熱配管29は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、受熱部23に熱的に接続された配管である。受熱部23及び第2受熱配管29によって熱交換器が形成される。例えば、第2受熱配管29は、受熱部23に、らせん状に巻き付けられる。受熱配管24,29のうち少なくとも一方は、重力方向における高さが、冷却ステージ14aの重力方向における高さよりも低くなるように設置されることが好適である。このような構成とすることで、熱スイッチのOFF時の熱侵入量を低減することができる。
【0086】
第2媒介配管28は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、排熱配管22の一端と第2受熱配管29の一端とを接続する配管である。
【0087】
伸縮制御部26Bは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Bは、第1受熱配管24に接続される第2伸縮制御部26bと、第2受熱配管29に接続される第4伸縮制御部26dと、を備える。
【0088】
第4伸縮制御部26dは、伸縮部としてのベローズ61と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル62及びベローズ用永久磁石63)と、を備える。第4伸縮制御部26dの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ61は、伸縮動作により内容積が可変であり、第2受熱配管29の一端に接続される。ベローズ61としては、ベローズ41と同様に、電着ベローズ等の高寿命部材が用いられる。ベローズ61は、伸縮動作により可動の可動底面(第2受熱配管29との接続面の対向面)と、固定底面(第2受熱配管29との接続面)とを備える。
【0089】
ベローズ用コイル62は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石63は、ベローズ61の可動底面(
図4に示すベローズ61の右側面)を固定底面(
図4に示すベローズ61の左側面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図4の左右方向)に往復移動可能な可動子である。
【0090】
ベローズ用コイル62及びベローズ用永久磁石63は、ベローズ61を伸縮させるための駆動機構である。
図4に示すベローズ41は伸びている状態を示し、ベローズ61は縮んでいる状態を示す。
【0091】
ここで、順に接続されたベローズ41、第1受熱配管24、第1媒介配管25、排熱配管22、第2媒介配管28、第2受熱配管29、及びベローズ61には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図4において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ41,61は、所定の位相差で周期的に伸縮する。所定の位相差は、逆位相であることが好適であるが、ほぼ逆位相であればよい。ベローズ41,61の伸縮動作によれば、第1受熱配管24、第1媒介配管25、排熱配管22、第2媒介配管28、及び第2受熱配管29の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0092】
第1に、ベローズ41が縮む過程、かつ、ベローズ61が伸びる過程では、ベローズ41が冷媒を第1受熱配管24に向かって押し出し、ベローズ61が冷媒を第2受熱配管29から引き込む。つまり、ベローズ41が縮む過程、かつ、ベローズ61が伸びる過程では、ベローズ41内の冷媒は第1受熱配管24に向かって流れ、第1受熱配管24内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は排熱配管22に向かって流れ、排熱配管22内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は第2受熱配管29に向かって流れ、第2受熱配管29内の冷媒はベローズ61に向かって流れる。
【0093】
第2に、ベローズ41が伸びる過程、かつ、ベローズ61が縮む過程では、ベローズ41が冷媒を第1受熱配管24から引き込み、ベローズ61が冷媒を第2受熱配管29に向かって押し出す。つまり、ベローズ41が伸びる過程、かつ、ベローズ61が縮む過程では、ベローズ61内の冷媒は第2受熱配管29に向かって流れ、第2受熱配管29内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は排熱配管22に向かって流れ、排熱配管22内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は第1受熱配管24に向かって流れ、第1受熱配管24内の冷媒はベローズ41に向かって流れる。
【0094】
排熱部21及び排熱配管22によって形成される熱交換器では、ベローズ41,61の伸縮動作により排熱配管22内に移動してくる冷媒と、冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び第1受熱配管24によって形成される熱交換器と、受熱部23及び第2受熱配管29によって形成される熱交換器とでは、ベローズ41,61の伸縮動作により受熱配管24,29内に移動してくる冷媒と、超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0095】
つまり、熱輸送装置20Bは、
図1に示す熱輸送装置20と比較して、単に配管の取り回しを増加させることで、排熱部21の近傍に伸縮制御部をもたない。熱輸送装置20Bでは、熱輸送装置20と比較して、複数の伸縮制御部どうしを近い場所に設置するため、全体としては複数の伸縮制御部をコンパクトに集約できる。また、熱輸送装置20Bのような構成とすることで、熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0096】
なお、熱輸送装置20Bにおいて、媒介配管は、1又は2本に限定されるものではなく、n本であればよい。媒介配管が1本からn本に増加したによる熱輸送量は、n倍となる。ただし、媒介配管の全体の長さは増加するため、媒介配管内の流量に伴う圧損の増加を考慮した設計が必要となる。
【0097】
2.作用
図4に示す超電導磁石装置1Bの構成を用いて、超電導磁石装置1Bの作用について説明する。
【0098】
超電導磁石装置1Bの排熱配管22内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24,29内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、ベローズ41,61が所定の位相差で周期的に伸縮されると、第1受熱配管24、第1媒介配管25、排熱配管22、第2媒介配管28、及び第2受熱配管29の配管系内の冷媒が往復動される。
【0099】
ベローズ41が縮む過程、かつ、ベローズ61が伸びる過程では、第1受熱配管24内で温められた冷媒は、第1媒介配管25を介して排熱配管22まで移動するとともに、排熱配管22内で冷却された冷媒は、第2媒介配管28を介して第2受熱配管29まで移動する。
【0100】
第1媒介配管25を介して排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却されるとともに、第2媒介配管28を介して第2受熱配管29まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。すなわち、超電導コイル15は、第2媒介配管28を介して第2受熱配管29まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0101】
続くベローズ41が伸びる過程、かつ、ベローズ61が縮む過程では、第2受熱配管29内で温められた冷媒は、第2媒介配管28を介して排熱配管22まで移動するとともに、排熱配管22内で冷却された冷媒は、第1媒介配管25を介して第1受熱配管24まで移動する。
【0102】
第2媒介配管28を介して排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却されるとともに、第1媒介配管25を介して第1受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。すなわち、超電導コイル15は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0103】
このように、ベローズ41,61の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25,28を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0104】
3.効果
第2の実施形態に係る超電導磁石装置1Bによると、超電導磁石装置1Bの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。
【0105】
(第4の実施形態)
1.構成
図5は、第4の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0106】
図5は、第4の実施形態に係る超電導磁石装置1Cを示す。超電導磁石装置1Cは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Cを備える。
【0107】
熱輸送装置20Cは、
図3に示す熱輸送装置20Aと同様に、排熱部21、第1排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、第1媒介配管25、第2排熱配管27、及び第2媒介配管28を備える。
【0108】
加えて、熱輸送装置20Cは、伸縮制御部26Cを備える。
【0109】
伸縮制御部26Cは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Cは、第1排熱配管22と、第2排熱配管27とに接続される。
【0110】
伸縮制御部26Cは、伸縮部としてのベローズ31,51と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33)と、を備える。伸縮制御部26Cの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ51は、ベローズ用永久磁石33を挟んでベローズ31に対向するように設置される。ベローズ31は、伸縮動作により可動の可動底面(第1排熱配管22との接続面の対向面)と、固定底面(第1排熱配管22との接続面)とを備える。ベローズ51は、伸縮動作により可動の可動底面(第2排熱配管27との接続面の対向面)と、固定底面(第2排熱配管27との接続面)とを備える。
【0111】
ベローズ用コイル32は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石33は、ベローズ31の可動底面(
図5に示すベローズ31の下面)を固定底面(
図5に示すベローズ31の上面)に対して往復動させるように、また、ベローズ51の可動底面(
図5に示すベローズ51の上面)を固定底面(
図5に示すベローズ51の下面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図5の上下方向)に往復移動可能な可動子である。
【0112】
ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33は、ベローズ31,51を伸縮させるための駆動機構である。
図5に示すベローズ31は伸びている状態を示し、ベローズ51は縮んでいる状態を示す。
【0113】
ここで、
図3の熱輸送装置20Aと同様に、順に接続されたベローズ31、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、第2排熱配管27、及びベローズ51には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図5において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、
図3の熱輸送装置20Aと同様に、ベローズ31,51は、所定の位相差で周期的に伸縮する。所定の位相差は、逆位相であることが好適であるが、ほぼ逆位相であればよい。ベローズ31,51の伸縮動作によれば、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0114】
つまり、熱輸送装置20Cは、
図1に示す熱輸送装置20と比較して、単に配管の取り回しを増加させることで、受熱部23の近傍に伸縮制御部をもたない。熱輸送装置20Cでは、熱輸送装置20と比較して、複数の伸縮制御部どうしを近い場所に設置するため、全体としては複数の伸縮制御部をコンパクトに集約できる。また、熱輸送装置20Cのような構成とすることで、熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0115】
また、熱輸送装置20Cにおいて、媒介配管は、1又は2本に限定されるものではなく、n本であればよい。媒介配管が1本からn本に増加したによる熱輸送量は、n倍となる。ただし、媒介配管の全体の長さは増加するため、媒介配管内の流量に伴う圧損の増加を考慮した設計が必要となる。
【0116】
なお、超電導磁石装置1Cは、伸縮制御部を排熱側に集約する超電導磁石装置1A(
図3に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現するものである。本発明は、伸縮制御部を受熱側に集約する超電導磁石装置1B(
図4に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現してもよい。
【0117】
2.作用
超電導磁石装置1Cの作用は、
図3に示す超電導磁石装置1Aの作用と同様であるので、説明を省略する。
【0118】
3.効果
第4の実施形態に係る超電導磁石装置1Cによると、超電導磁石装置1Cの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。また、第4の実施形態に係る超電導磁石装置1Cによると、
図3に示す超電導磁石装置1Aや
図4に示す超電導磁石装置1Bと比較して、伸縮制御部の簡素化、小型化が可能となるメリットがある。
【0119】
(第5の実施形態)
1.構成
図6は、第5の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0120】
図6は、第5の実施形態に係る超電導磁石装置1Dを示す。超電導磁石装置1Dは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Dを備える。
【0121】
熱輸送装置20Dは、
図3に示す熱輸送装置20Aと同様に、排熱部21、第1排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、第1媒介配管25、第2排熱配管27、及び第2媒介配管28を備える。
【0122】
加えて、熱輸送装置20Dは、伸縮制御部26Dを備える。
【0123】
伸縮制御部26Dは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Dは、第1排熱配管22と、第2排熱配管27とに接続される。
【0124】
伸縮制御部26Dは、伸縮部としてのベローズ31と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33)と、容器71と、を備える。伸縮制御部26Dの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ31は、伸縮動作により可動の可動底面(第1排熱配管22との接続面の対向面)と、固定底面(第1排熱配管22との接続面)とを備える。
【0125】
ベローズ用コイル32は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石33は、ベローズ31の可動底面(
図6に示すベローズ31の下面)を固定底面(
図6に示すベローズ31の上面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図6の上下方向)に往復移動可能な可動子である。
【0126】
容器71は、ベローズ31が伸縮する空間と、ベローズ用永久磁石33を挟んでベローズ31に対向する空間V1とがベローズ用永久磁石33によって仕切られるように設置される。容器71の空間V1は、第2排熱配管27の一端に接続される。
【0127】
ここで、順に接続されたベローズ31、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、第2排熱配管27、及び空間V1には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図6において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ31は、周期的に伸縮する。ベローズ31の伸縮動作によれば、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0128】
第1に、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V1が拡がる過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22に向かって押し出し、空間V1が冷媒を第2排熱配管27から引き込む。つまり、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V1が拡がる過程では、ベローズ31内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は空間V1に向かって流れる。
【0129】
第2に、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V1が縮む過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22から引き込み、空間V1が冷媒を第2排熱配管27に向かって押し出す。つまり、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V1が縮む過程では、空間V1内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒はベローズ31に向かって流れる。
【0130】
排熱部21及び第1排熱配管22によって形成される熱交換器と、排熱部21及び第2排熱配管27によって形成される熱交換器とでは、容器71内のベローズ31の伸縮動作により排熱配管22,27内に移動してくる冷媒と、冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び受熱配管24によって形成される熱交換器では、容器71内のベローズ31の伸縮動作により受熱配管24内に移動してくる冷媒と、超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0131】
つまり、熱輸送装置20Dのような構成とすることで、
図1に示す熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0132】
なお、超電導磁石装置1Dは、伸縮制御部を排熱側に集約する超電導磁石装置1A(
図3に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現するものである。本発明は、伸縮制御部を受熱側に集約する超電導磁石装置1B(
図4に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現してもよい。
【0133】
また、ベローズ31は通常薄肉であるため、ベローズ31の内外で圧力差が生じると強度不足でベローズ31が破損してしまう恐れがある。そこで、超電導磁石装置1Dでは、ベローズ31の内外で、冷媒を移動させる程度の圧力差しか差圧をかけず、耐圧力は外側の低容積の肉厚の筒で持たせればよい。このような超電導磁石装置1Dの構成によれば、ベローズ31を破損させる恐れがなく、差圧も小さいため、ベローズ31の薄肉化、長寿命化が期待できる。
【0134】
2.作用
図6に示す超電導磁石装置1Dの構成を用いて、超電導磁石装置1Dの作用について説明する。
【0135】
超電導磁石装置1Dの排熱配管22,27内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、容器71内のベローズ31が周期的に伸縮されると、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒が往復動される。
【0136】
ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V1が拡がる過程では、第1排熱配管22内で冷却された冷媒は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動する。
【0137】
第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0138】
続くベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V1が縮む過程では、第2排熱配管27内で冷却された冷媒は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動する。
【0139】
第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0140】
このように、ベローズ31の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25,28を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0141】
3.効果
第5の実施形態に係る超電導磁石装置1Dによると、超電導磁石装置1Dの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。また、超電導磁石装置1Dによると、
図3に示す超電導磁石装置1Aや
図4に示す超電導磁石装置1Bと比較して、伸縮制御部の簡素化、小型化が可能となるメリットがある。
【0142】
(第6の実施形態)
1.構成
図7は、第6の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0143】
図7は、第6の実施形態に係る超電導磁石装置1Eを示す。超電導磁石装置1Eは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Eを備える。
【0144】
熱輸送装置20Eは、
図3に示す熱輸送装置20Aと同様に、排熱部21、第1排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、第1媒介配管25、第2排熱配管27、及び第2媒介配管28を備える。
【0145】
加えて、熱輸送装置20Eは、伸縮制御部26Eを備える。
【0146】
伸縮制御部26Eは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Eは、第1排熱配管22と、第2排熱配管27とに接続される。
【0147】
伸縮制御部26Eは、伸縮部としてのベローズ31と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33)と、容器72と、連結部73と、を備える。伸縮制御部26Eの駆動機構のベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33は、非磁性体によって形成される、真空容器11の外部の筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ31は、伸縮動作により可動の可動底面(第1排熱配管22との接続面の対向面)と、固定底面(第1排熱配管22との接続面)とを備える。
【0148】
ベローズ用コイル32は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石33は、連結部73を介してベローズ31の可動底面(
図7に示すベローズ31の下面)を固定底面(
図7に示すベローズ31の上面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図7の上下方向)に往復移動可能な可動子である。
【0149】
容器72は、真空容器11の内部でベローズ31を収容する。連結部73は、ベローズ用永久磁石33の往復運動に従ってベローズ31を伸縮させるようにベローズ用永久磁石33及びベローズ31を連結する。容器72の空間V2は、第2排熱配管27の一端に接続される。
【0150】
連結部73は、熱伝導率が低いステンレス等の材料によって構成され、断面積が強度を保つ程度の最低限の断面積であることが好適である。ステンレス等によって構成された連結部73は、駆動機構の熱を伝え難いので、冷凍機14の小型化及び高効率化を実現できる。
【0151】
駆動機構は、真空容器11の外部に設けられる。しかしながら、駆動機構は、真空容器11の内部であって、熱シールド部12の外部に設けられてもよい。その場合、駆動機構の発熱分が冷凍機14の第1段の冷却ステージで冷却されるように構成されてもよい。また、駆動機構は、リニア駆動機構に限定されるものではない。駆動機構は、クランク及びガス圧制御等の他の駆動方式の機構でもよい。
【0152】
ここで、順に接続されたベローズ31、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、第2排熱配管27、及び空間V2には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図7において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ31は、周期的に伸縮する。ベローズ31の伸縮動作によれば、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0153】
第1に、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V2が拡がる過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22に向かって押し出し、空間V2が冷媒を第2排熱配管27から引き込む。つまり、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V2が拡がる過程では、ベローズ31内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は空間V2に向かって流れる。
【0154】
第2に、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V2が縮む過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22から引き込み、空間V2が冷媒を第2排熱配管27に向かって押し出す。つまり、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V2が縮む過程では、空間V2内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒はベローズ31に向かって流れる。
【0155】
排熱部21及び第1排熱配管22によって形成される熱交換器と、排熱部21及び第2排熱配管27によって形成される熱交換器とでは、容器72内のベローズ31の伸縮動作により排熱配管22,27内に移動してくる冷媒と冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び受熱配管24によって形成される熱交換器では、容器72内のベローズ31の伸縮動作により受熱配管24内に移動してくる冷媒と超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0156】
つまり、熱輸送装置20Eのような構成とすることで、
図1に示す熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0157】
なお、超電導磁石装置1Eは、伸縮制御部を排熱側に集約する超電導磁石装置1A(
図3に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現するものである。本発明は、冷媒移動機構を受熱側に集約する超電導磁石装置1B(
図4に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現してもよい。
【0158】
2.作用
図7に示す超電導磁石装置1Eの構成を用いて、超電導磁石装置1Eの作用について説明する。
【0159】
超電導磁石装置1Eの排熱配管22,27内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、容器72内のベローズ31が周期的に伸縮されると、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒が往復動される。
【0160】
ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V2が拡がる過程では、第1排熱配管22内で冷却された冷媒は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動する。
【0161】
第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0162】
続くベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V2が縮む過程では、第2排熱配管27内で冷却された冷媒は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動する。
【0163】
第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0164】
このように、ベローズ31の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25,28を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0165】
3.効果
第6の実施形態に係る超電導磁石装置1Eによると、超電導磁石装置1Eの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。また、超電導磁石装置1Eによると、駆動機構の発熱分の超電導コイル15への熱伝導を低減することができる。
【0166】
(第7の実施形態)
1.構成
図8は、第7の実施形態に係る超電導磁石装置の構成例を示す概略図である。
【0167】
図8は、第7の実施形態に係る超電導磁石装置1Fを示す。超電導磁石装置1Fは、真空容器11、熱シールド部12、シールド支持材13、冷凍機14、超電導コイル15、コイル支持体16、及び熱輸送装置20Fを備える。
【0168】
熱輸送装置20Fは、
図3に示す熱輸送装置20Aと同様に、排熱部21、第1排熱配管22、受熱部23、受熱配管24、第1媒介配管25、第2排熱配管27、及び第2媒介配管28を備える。
【0169】
加えて、熱輸送装置20Fは、伸縮制御部26Fを備える。
【0170】
伸縮制御部26Fは、排熱配管及び受熱配管の少なくとも一方に接続される。ここでは、伸縮制御部26Fは、第1排熱配管22と、第2排熱配管27とに接続される。
【0171】
伸縮制御部26Fは、伸縮部としてのベローズ31と、駆動機構としてのリニア駆動機構(ベローズ用コイル32及びベローズ用永久磁石33)と、容器74と、熱交換器75と、を備える。伸縮制御部26Fの伸縮部及び駆動機構は、非磁性体によって形成される筒状筐体(図示しない)内に設けられる。ベローズ31は、伸縮動作により可動の可動底面(第1排熱配管22との接続面の対向面)と、固定底面(第1排熱配管22との接続面)とを備える。
【0172】
ベローズ用コイル32は、筒状筐体の側面に沿って配置される。ベローズ用永久磁石33は、ベローズ31の可動底面(
図8に示すベローズ31の下面)を固定底面(
図8に示すベローズ31の上面)に対して往復動させるように、筒状筐体の軸方向(
図8の上下方向)に往復移動可能な可動子である。
【0173】
容器74は、ベローズ31が伸縮する空間と、ベローズ用永久磁石33を挟んでベローズ31に対向する空間V3とがベローズ用永久磁石33によって仕切られるように設置される。容器74の空間V3は、第2排熱配管27の一端に接続される。
【0174】
熱交換器75は、第1排熱配管22に接続された配管と、第2排熱配管27に接続された配管との間で、熱交換を行う。
【0175】
駆動機構は、真空容器11の外部に設けられる。しかしながら、駆動機構は、真空容器11の内部であって、熱シールド部12の外部に設けられてもよい。その場合、駆動機構の発熱分が冷凍機14の第1段の冷却ステージで冷却されるように構成されてもよい。また、駆動機構は、リニア駆動機構に限定されるものではない。駆動機構は、クランク及びガス圧制御等の他の往復制御機構でもよい。
【0176】
ここで、順に接続されたベローズ31、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、第2排熱配管27、及び空間V3には、液体又は気体の状態の冷媒が封入されている。
図8において、冷媒が封入されている部分をドットで示す。また、ベローズ31は、周期的に伸縮する。ベローズ31の伸縮動作によれば、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒を、周期的に往復動させることが可能である。
【0177】
第1に、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V3が拡がる過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22に向かって押し出し、空間V3が冷媒を第2排熱配管27から引き込む。つまり、ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V3が拡がる過程では、ベローズ31内の冷媒は熱交換器75を介して第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は熱交換器
75を介して空間V3に向かって流れる。
【0178】
第2に、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V3が縮む過程では、ベローズ31が冷媒を第1排熱配管22から引き込み、空間V3が冷媒を第2排熱配管27に向かって押し出す。つまり、ベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V3が縮む過程では、空間V3内の冷媒は熱交換器75を介して第2排熱配管27に向かって流れ、第2排熱配管27内の冷媒は第2媒介配管28に向かって流れ、第2媒介配管28内の冷媒は受熱配管24に向かって流れ、受熱配管24内の冷媒は第1媒介配管25に向かって流れ、第1媒介配管25内の冷媒は第1排熱配管22に向かって流れ、第1排熱配管22内の冷媒は熱交換器75を介してベローズ31に向かって流れる。
【0179】
排熱部21及び第1排熱配管22によって形成される熱交換器と、排熱部21及び第2排熱配管27によって形成される熱交換器とでは、容器74内のベローズ31の伸縮動作により排熱配管22,27内に移動してくる冷媒と冷却ステージ14aとの間で熱交換が行われる。また、受熱部23及び受熱配管24によって形成される熱交換器では、容器74内のベローズ31の伸縮動作により受熱配管24内に移動してくる冷媒と超電導コイル15との間で熱交換が行われる。
【0180】
つまり、熱輸送装置20Fのような構成とすることで、
図1に示す熱輸送装置20と同じ制御により、熱輸送装置20の効果に加え、媒介配管が1本から2本に増加したによる熱輸送量が2倍となる。
【0181】
ここで、熱輸送装置20Fでは、ガス振動の振幅を定常よりも大きくとることで、冷凍機14の高段の冷却ステージと超電導コイル15との熱交換(熱輸送)も可能となる。例えば、熱輸送装置20Fは、排熱配管22,27及び伸縮制御部26Fの間の配管と、高段の冷却ステージとの間で熱交換を行う構成をもつ。その場合、高段の冷却ステージと初期冷却時の超電導コイル15の温度が高い条件において、高段の冷却ステージの冷凍能力を超電導コイル15の冷却に有効に使うことができる。
【0182】
なお、超電導磁石装置1Fは、伸縮制御部を排熱側に集約する超電導磁石装置1A(
図3に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現するものである。本発明は、伸縮制御部を受熱側に集約する超電導磁石装置1B(
図4に図示)の配管系と同等な配管系において装置の小型化を実現してもよい。
【0183】
2.作用
図8に示す超電導磁石装置1Fの構成を用いて、超電導磁石装置1Fの作用について説明する。
【0184】
超電導磁石装置1Fの排熱配管22,27内の冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。また、受熱配管24内の冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められる。そして、容器74内のベローズ31が周期的に伸縮されると、第1排熱配管22、第1媒介配管25、受熱配管24、第2媒介配管28、及び第2排熱配管27の配管系内の冷媒が往復動される。
【0185】
ベローズ31が縮む過程、かつ、空間V3が拡がる過程では、第1排熱配管22内で冷却された冷媒は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動する。
【0186】
第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第2媒介配管28を介して第2排熱配管27まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第1媒介配管25を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0187】
続くベローズ31が伸びる過程、かつ、空間V3が縮む過程では、第2排熱配管27内で冷却された冷媒は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動するとともに、受熱配管24内で温められた冷媒は、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動する。
【0188】
第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒は、超電導コイル15に熱的に接続された受熱部23を冷却することで温められるとともに、第1媒介配管25を介して第1排熱配管22まで移動してきた冷媒は、冷却ステージ14aに熱的に接続された排熱部21によって冷却される。すなわち、超電導コイル15は、第2媒介配管28を介して受熱配管24まで移動してきた冷媒によって冷却される。
【0189】
このように、ベローズ31の伸縮動作により、超電導コイル15の発熱を、定常的に、媒介配管25,28を介して冷却ステージ14a側に移動させることができる。
【0190】
3.効果
第7の実施形態に係る超電導磁石装置1Fによると、超電導磁石装置1Fの重量を抑えながら、超電導コイル15側と冷凍機14側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。また、超電導磁石装置1Eによると、伸縮制御部26Fの駆動機構の発熱分の超電導コイル15への熱伝導を低減することができる。
【0191】
さらに、超電導磁石装置1Fによると、伸縮制御部26Fの駆動機構等の可動部のメンテナンス性が向上する。
【0192】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、装置の重量を抑えながら、被冷却体側と冷凍機側との間における十分に小さい温度差を確保することができる。
【0193】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。