特許第6559588号(P6559588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559588封止装置用弾性シートおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559588
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】封止装置用弾性シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20190805BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190805BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   B32B5/02 Z
   B32B25/10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-16857(P2016-16857)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-139058(P2017-139058A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓悟
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−079587(JP,A)
【文献】 特開平10−326019(JP,A)
【文献】 特開2010−221467(JP,A)
【文献】 特開平09−055456(JP,A)
【文献】 特開2015−151418(JP,A)
【文献】 特表2013−500176(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0360390(US,A1)
【文献】 特開2015−089672(JP,A)
【文献】 特開平08−118834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
B32B 5/02
B32B 25/10
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル形状の機能材料デバイスの製造過程に使用される封止装置に用いられる弾性シートであって、
弾性シートは、弾力性を有するメッシュに対し、少なくとも片面に、所定の平面パターンで弾性層が設けられて構成されており、
前記弾性層の表面は、表面粗度がRa0.01〜0.20μmの平滑な面とされて、吸着性を有しており、
前記弾性層の厚みは、メッシュを構成する線の線径をdとして、メッシュを構成する線が交差する位置における厚みt1がdの0.03〜0.5倍とされ、メッシュの目開き部における厚みt2がdの0.7倍以上とされた
封止装置用弾性シート。
【請求項2】
請求項1に記載の封止装置用弾性シートを製造する方法であって、
表面粗度がRa0.01〜0.20μmの転写面を準備し、当該転写面に、ペースト状の樹脂材料を印刷して、弾性層となるべき平面パターンを転写面上にペースト状樹脂材料によって形成する工程、
印刷工程に引き続き、形成された平面パターンを覆うようにメッシュを配置して、メッシュを転写面に向かって押圧して、ペースト状樹脂材料の一部をメッシュの目開き部に入り込ませて、厚みt1及び厚みt2を所定の厚みとする工程、
メッシュの押圧工程の後に、ペースト状樹脂材料を硬化させて弾性層とする工程、
硬化工程の後に、転写面から弾性層をメッシュとともに引きはがす工程、
を含む封止装置用弾性シートの製造方法。
【請求項3】
メッシュの番手が80〜250メッシュであり、弾性層が硬度60〜70デュロAのシリコーンゴムにより形成されている請求項1に記載の封止装置用弾性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止装置用弾性シート及びその製造方法に関する。特に、パネル形状の機能材料デバイスの製造過程に使用される封止装置に用いられる弾性シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パネル形状の機能材料デバイスが種々の分野で活用されている。機能材料デバイスとしては、例えば、モジュール型のディスプレイや、照明装置、光学素子などがある。より具体的には、機能材料デバイスとして、タッチパネルや液晶表示装置、OLED(有機発光ダイオード)素子、有機EL表示装置や有機EL照明器、光学フィルム、光学フィルタ、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池などが例示される。これら機能材料デバイスは、パネル形状にされて、種々の機器に組み込まれる。近年では、パネルの形状も、旧来からの平面状のパネルに加え、湾曲形状やドーム形状といった3次元形状のパネル形状とされることもある。
【0003】
機能材料デバイスは、機能材料の酸化や加水分解等の化学的劣化や、機能材料の脱落などの物理的劣化をすることの無いよう、通常、バリア層や保護層を備えている。このようなバリア層や保護層は、機能材料に密着して一体化されるよう、いわゆる封止装置を用いて、真空環境下で貼り合わされる。
例えば、特許文献1には、真空チャンバと弾性ダイアフラム31と弾性シート22を備える封止装置Aが開示され、当該封止装置により、弾性シート22に保持した封止基板(例えばバリア層)と、治具5上に置かれた成形基板(例えば、有機EL表示装置の本体部分)とを、真空環境下で一体化する技術が開示されており、当該技術によれば、機能材料薄膜層から空気を排した3次元形状の機能材料デバイスが製造できることが開示されている。参考のため、特許文献1中の図を図5として引用して示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−79587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様な封止装置においては、治具5上に置かれる成形基板と、弾性シート22に保持した封止基板を正確に重ねあわせて一体化し、機能材料デバイスとする必要があり、弾性シート22には、しっかりと封止基板を保持する機能が求められる。一方で、封止基板と成形基板が一体化されて機能材料デバイスが製造された後には、弾性シート22は封止基板からたやすく引きはがされる必要がある。
【0006】
しかしながら、弾性シート22に求められる保持力とはがしやすさを両立させるのは容易ではなかった。例えば、特許文献1には、弾性シート22と静電チャック23を併用し、静電チャックにより封止基板を保持する技術が開示されているが、静電チャックが使えない封止基板もある。あるいは、特許文献1には、弾性シートの保持力を確保するために粘着剤を利用する技術が開示されているが、粘着剤では、保持力と引きはがしやすさの調整幅が小さく、両者のバランスがよい弾性シートがなかなか得られなかった。
【0007】
本発明の目的は、保持力と引きはがしやすさのバランスに優れた封止装置用の弾性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、弾力性を有するメッシュと、表面が平滑で特定の厚み分布を有する弾性層とを組み合わせると、保持力と引きはがしやすさのバランスが良くなることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、パネル形状の機能材料デバイスの製造過程に使用される封止装置に用いられる弾性シートであって、弾性シートは、弾力性を有するメッシュに対し、少なくとも片面に、所定の平面パターンで弾性層が設けられて構成されており、前記弾性層の表面は、表面粗度がRa0.01〜0.20μmの平滑な面とされて、吸着性を有しており、前記弾性層の厚みは、メッシュを構成する線の線径をdとして、メッシュを構成する線が交差する位置における厚みt1がdの0.03〜0.5倍とされ、メッシュの目開き部における厚みt2がdの0.7倍以上とされた封止装置用弾性シートである(第1発明)。
【0010】
第1発明においては、メッシュの番手が80〜250メッシュであり、弾性層が硬度60〜70デュロAのシリコーンゴムにより形成されていることが好ましい(第3発明)。
【0011】
また、本発明は、第1発明の封止装置用弾性シートを製造する方法であって、表面粗度がRa0.01〜0.20μmの転写面を準備し、当該転写面に、ペースト状の樹脂材料を印刷して、弾性層となるべき平面パターンを転写面上にペースト状樹脂材料によって形成する工程、印刷工程に引き続き、形成された平面パターンを覆うようにメッシュを配置して、メッシュを転写面に向かって押圧して、ペースト状樹脂材料の一部をメッシュの目開き部に入り込ませて、厚みt1及び厚みt2を所定の厚みとする工程、メッシュの押圧工程の後に、ペースト状樹脂材料を硬化させて弾性層とする工程、硬化工程の後に、転写面から弾性層をメッシュとともに引きはがす工程、を含む封止装置用弾性シートの製造方法である(第2発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の封止装置用弾性シート(第1発明、第3発明)によれば、弾性シートによる封止基板の保持において、保持力と引きはがしやすさがバランスよく高められる。特に第3発明の弾性シートは、パネル形状の機能材料デバイスの製造に用いられる封止装置用の弾性シートとしてさらに優れたものとなる。
また、本発明の封止装置用弾性シート製造方法(第2発明)によれば、そのような弾性シートが効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の弾性シートを示す斜視図である。
図2】第1実施形態の弾性シートの構造を示す断面図である。
図3】第1実施形態の弾性シートの製造方法を示す模式図である。
図4】第1実施形態の弾性シートの構造を示す透視図である。
図5】従来技術の封止装置の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、有機EL発光パネルの製造用の封止装置に使用できる弾性シートを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1に第1実施形態の封止装置用弾性シート1の斜視図を示し、図2に封止装置用弾性シート1の断面図を示す。また、図4は、シートの面直方向から見てメッシュの線がどのように配置されているかを示す透視図である。
弾性シート1は、弾力性を有するメッシュMに対し、少なくとも片面に、所定の平面パターンで弾性層Rを設けて構成されている。本実施形態においては、弾性層Rは、メッシュMの片面側に、設けられている。なお、弾性層RはメッシュMの両面に設けられていてもよい。また、弾性シート1には、メッシュMと弾性層の他、他の要素(例えばバックアップ層等)が設けられていてもよい。
【0016】
弾性層Rは、所定の平面パターンに設けられており、本実施形態においては、複数の平行な筋状のパターンに設けられている。また、弾性層が設けられる平面パターンは、筋状、同心円状、櫛歯状、波型状であってもよいし、格子状、複数のドットが散在するパターン、べた塗りされた中に複数の穴が散在するパターン等であってもよい。これらの平面パターンは、保持する対象物の形状や、引きはがし方などに応じて定められる。
【0017】
メッシュMは封止装置において求められる弾力性を有している。メッシュを構成する線の材質としては、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン、ステンレス等が例示できる。メッシュを構成する線として高張力芯鞘繊維(例えば株式会社クラレの「VECRY」等)を使用することもできる。メッシュMとしては、番手が50〜1000メッシュの物が好ましく使用でき、80〜250メッシュの物が封止装置用弾性シートの素材として特に好ましく使用できる。本実施形態においては、ポリエステル樹脂製のモノフィラメントを用いた120メッシュのメッシュを用いている。
【0018】
弾性層Rは、弾力性を有する樹脂材料により形成された層である。弾性層Rを構成する材料としては、シリコーンゴムやイソプレンゴムなどのゴム材料や、ウレタン樹脂などの樹脂材料が利用できる。これら樹脂材料は、架橋するゴムや反応により硬化する樹脂などのような、硬化性樹脂であることが好ましい。弾性層Rの弾力性の程度は、デュロA硬度で40〜80程度とされることが好ましく、より好ましくは、デュロA硬度で60〜70程度とされる。本実施形態においては、弾性層Rは、デュロA硬度で65度の架橋されたシリコーンゴムにより形成されている
【0019】
弾性層Rの表面Ptは、表面粗度がRa0.01〜0.20μmの平滑な面とされている。この平滑な面Ptは吸着性を有していて、平滑面Ptの吸着性を利用して、対象物(封止基板)を保持する。本実施形態においては、表面粗度Ra0.1μm以下の鏡面状の平滑面としている。
【0020】
メッシュMに対し、弾性層Rは、弾性層の一部がメッシュMの目開き部分に入り込むような形態で一体化されている。そのため、弾性層Rの厚みは、メッシュの線がある部分とメッシュの目開き部とで異なった厚みとなっている。図2には、弾性層Rが目開き部に入り込んだ様子を破線で示している。弾性層Rの厚みは、メッシュを構成する線の線径をdとして、メッシュを構成する線が交差する位置における厚みt1がdの0.03〜0.5倍とされ、メッシュの目開き部における厚みt2がdの0.7倍以上とされる。
典型的には、メッシュの線径が30〜150μmとされ、厚みt1は3〜80μmとされ、厚みt2は40〜300μmとされる。
本実施形態においては、メッシュを構成する線の線径dが80μmとされ、メッシュを構成する線が交差する位置における厚みt1が、8μm(線径dの0.1倍)とされ、メッシュの目開き部における厚みt2が100μm(線径dの1.25倍)とされている。
【0021】
上記実施形態の弾性シート1は、パネル形状の機能材料デバイスの製造過程に使用される封止装置に使用することができる。例えば、特許文献1に開示された封止装置における弾性シート(図5に図示された封止装置においては弾性シート22)として、上記実施形態の弾性シート1が好ましく使用できる。封止装置においては、弾性シート1の弾性層Rの表面Ptに、封止基板が吸着されて保持され、封止基板と成形基板とが一体化された後に、封止基板から弾性シート1が引きはがされる。弾性シート1が使用される具体的形態や封止装置の動作等については、従来の弾性シートと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
また、特許文献1においては、弾性シートによって保持されるべき封止基板として、防湿バリア層となるべきものが例示されているが、本発明により保持されるべきものはこれに限定されない。弾性シートが保持する対象物は、成形基板となるべきものであってもよいし、他のフィルム状、シート状、パネル状の素材であってもよい。
【0023】
上記実施形態の封止装置用弾性シート1の製造方法について説明する。図3に封止装置用弾性シート1の製造工程を模式的に示す。
【0024】
まず、表面粗度がRa0.01〜0.20μmの転写面TSを準備し、当該転写面TSに、ペースト状の樹脂材料PMを印刷して、弾性層Rとなるべき平面パターンを転写面TS上にペースト状樹脂材料PMによって形成する(図3(a))。印刷は、典型的にはスクリーン印刷により行われる。印刷は、ディスペンサやLIMS成形やグラビア印刷を利用した印刷であってもよい。
転写面TSは、例えば、金属板、樹脂板、樹脂シートなどに準備すればよい。図3には、金属板上に転写面TSを設けてスクリーン印刷した例を示している。転写面TS上にスクリーン印刷用のマスクMSを置いて、ペースト状の樹脂材料PMをスクリーン印刷する。マスクMSには、弾性層Rとなるべき平面パターンの開口が設けられていて、スキージSQなどを用いて、ペースト状樹脂材料PMを開口に押し込むようにスクリーン印刷すれば、弾性層Rとなるべき平面パターンを転写面TS上にペースト状樹脂材料PMによって形成することができる。なお、この段階では、樹脂材料PMは、未硬化のペースト状の状態を保っている。以上が印刷工程である。
【0025】
印刷工程に引き続き、樹脂材料PMにより転写面TS上に形成された平面パターンを覆うようにメッシュMを配置して、メッシュMを転写面TSに向かって押圧して(図3(b))、ペースト状樹脂材料PMの一部をメッシュMの目開き部に入り込ませつつ、メッシュの厚み方向の位置を調整して、厚みt1及び厚みt2を所定の厚みとする(図3(c))。ここで、メッシュMの押圧は、種々の方法によることができる。例えば、メッシュに張力を与えながら、転写面に向かってメッシュを所定の力で押しつけるようにしてもよい。あるいは、メッシュの裏側に別の板を当てて、転写面TSと、別の板の間の隙間を所定の寸法となるように押して、メッシュを転写面に向かって押し付けてもよい。メッシュMを転写面TSに向かって押圧すると、ペースト状樹脂材料PMの一部がメッシュMの目開き部に入り込む。厚みt1の調整は、メッシュを押圧する力を調節したり、メッシュと転写面の間に残る寸法を調節したりすることにより行うことができる。また、厚みt2の調整は、スクリーン印刷するペースト状樹脂材料PMの量や粘度を調整することにより調整できる。以上がメッシュの押圧工程である。
【0026】
メッシュの押圧工程に引き続き、ペースト状樹脂材料PMを硬化させて弾性層Rとする。硬化はペースト状樹脂材料PMの特性に応じて、熱や紫外線、放射線などを与えればよい。硬化の手段は特に限定されない。この硬化工程を経ることで、所定の平面パターンを有する弾性層RとメッシュMが一体化されることになる。以上が硬化工程である。
【0027】
硬化工程の後に、転写面TSから弾性層RをメッシュMとともに引きはがすと、上記第1実施形態の封止装置用弾性シート1が得られる。弾性シート1においては、弾性層の表面Ptに転写層TSの表面が転写されて、転写層TSが有していたのとほぼ同じ表面粗度が得られる。この引きはがし工程が行いやすいように、スクリーン印刷工程に先立って、転写面TSに離型剤を塗布したり、転写面をペースト状樹脂材料とは接着しない材料とする(例えばシリコーン樹脂フィルムやフッ素樹脂フィルム等)ことが好ましい。
【0028】
以上の工程を経ることにより、上記第1実施形態の封止装置用弾性シート1が製造される。なお、弾性シート1の製造工程には、他の工程を含ませてもよい。例えば、必要に応じて、硬化工程に前後して、メッシュ表面にさらに他のペースト状樹脂材料をスクリーン印刷等により追加してもよい。このようにすると、メッシュの両面に弾力性を有する層を形成することができる。メッシュの両面に弾力性を有する層を設けると、封止基板の保持力と引きはがす力のバランスの調整幅がより広くなる。
【0029】
上記実施形態の封止装置用弾性シート1の作用及び効果について説明する。封止装置用弾性シート1は特許文献1に開示されるような封止装置に用いられて、封止基板(樹脂フィルムや防湿バリア層、機能材料が印刷されたパネル状の樹脂薄板など)を保持し、封止基板が成形基板と一体化された後に、封止基板から引きはがされて使用される。
上記実施形態の封止装置用弾性シート1は、従来この用途に用いられてきたゴムシートや粘着剤付の弾性シートに比べ、保持力と引きはがしやすさのバランスに優れており、封止基板をしっかりと保持できる一方で、引きはがす際には、封止基板から引きはがしやすい。また、粘着剤を用いた弾性シートのように、粘着剤が封止基板の側に残ってしまうこともない。
【0030】
上記実施形態の封止装置用弾性シート1が保持力と引きはがしやすさのバランスに優れている理由は以下のものであると推定する。
封止装置用弾性シート1は図2の断面図と図4の透視図に示すように、メッシュMに弾性層Rを特定の構成で積層したものである。そして、図4に示すように、メッシュの線が交差する部分X、Xでは、弾性層の厚みt1がかなり薄くされていて、メッシュの目開き部分Y、Yでは、弾性層の厚みt1が比較的厚くされている。このことにより、線の交差部分X、Xでは、メッシュの線により弾性層Rが強く封止基板に押しつけられることになり、メッシュの目開き部分Y,Yでは、弾性層の押し付けが弱く、柔らかく封止基板に接触することになる。
【0031】
その結果、線の交差部分X,Xで、弾性層Rの表面Ptと封止部材とが密着してしっかりと吸着する一方で、メッシュの目開き部分Y,Yでは、吸着力が比較的弱くなる。このような部分X,Xと部分Y,Yが弾性層Rの全面にわたって散在することになるため、部分X,Xの部分でしっかりとした保持力を確保しつつ、部分Y,Yによって、全体の保持力が調整され、あるいは、部分Y,Yが弾性層が封止基板から引きはがされる起点となって、引きはがしに要する力が小さくなって、保持力と引きはがし力のバランスが良くなる。
【0032】
この観点から、弾性層の平面パターンは、平面パターンにおいて弾性材料が存在する部分の大きさ(筋状パターンであればそれぞれの筋の幅寸法、ドット状パターンであれば、ドットの直径等)が、メッシュの線の間隔よりも大きい、好ましくはメッシュの線の間隔の3倍以上、より好ましくは5倍以上に大きくされるのが良い。このようにされていると、弾性層Rにおいて、ひとつながりの平面パターンの中に、図5のように部分X,Xと部分Y,Yがまじりあって散在し、保持力と引きはがし力のバランスが良くなるからである。
【0033】
また、同様の観点で、弾性層Rの厚みが、メッシュの線が交差する部分X、Xにおいて薄くされていること、すなわち、メッシュの線の線径dに対し、厚みt1が0.5倍以下とされていることが重要である。部分X,Xにおける厚みt1が薄くされていることで、弾性層Rに、部分X,Xという比較的硬い部分と、部分Y,Yという比較的柔らかう部分とがメリハリをつけて設けられることになる。弾性層Rが厚くなると(例えば、メッシュの線の間隔を超える程度に厚くなると)、このような部分的な硬さ変化が生じにくくなる。
【0034】
また、メッシュの番手が80〜250メッシュであり、弾性層が硬度60〜70デュロAのシリコーンゴムにより形成されるようにすると、例えば、防湿バリア層を封止基板として用いる場合の様な、表面が平滑な樹脂フィルムや樹脂パネルを保持する用途の封止装置用弾性シートとして、保持力と引きはがしやすさのバランスが特に優れたものとなる。
【0035】
また、上記製造方法によって封止装置用弾性シートを製造すると、表面が非常に平滑で、かつ、厚みt1が薄くされ、厚みt2が厚く成形された封止装置用弾性シートを、効率的、かつ高い精度で製造することができ、得られた封止装置用弾性シートの保持力と引きはがし力のバランスにも優れる。
【0036】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0037】
上記実施形態の説明においては、メッシュMとして平織りされたメッシュを例として説明したが、メッシュMは平織りのメッシュに限定されず、綾織りのメッシュなど、他の織構造のメッシュであってもよい。また、メッシュは織物でなく、平板にパンチングされたような形態のメッシュであってもよい。いずれのメッシュであっても、メッシュを構成する線が交差する部分の薄い弾性層の部分と、メッシュの目開き部の厚い弾性層の部分が散在することにより、同様の効果が生ずる。
【0038】
また、弾性層Rを構成するペースト状樹脂材料を硬化する方法は、架橋・加硫や、反応による硬化が代表的であるが、他の方法で硬化させてもよく、特に限定されない。例えば、光硬化性(紫外線硬化性)樹脂材料を用いて、光により硬化させてもよいし、樹脂材料を溶剤等に溶解させてペースト状にしたものを、溶剤を揮発させて硬化させてもよい。樹脂材料が熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマからなるものである場合には、樹脂材料を高温にしてペースト状にした状態でスクリーン印刷とメッシュの押圧を行い、しかる後に、温度を下げて樹脂材料を硬化させてもよい。
【0039】
また、上記弾性シートは、さらに他の部材を備えるものであってもよい。他の部材としては、例えば、バックアップ材やシール材などが例示される。
【0040】
また、封止基板や成形基板の具体的構成や用途、封止装置の具体的構成は特に限定されない。封止装置の例として例示した特許文献1には、3次元形状の有機EL発光パネルの製造に用いられる封止装置が開示されているが、上記実施形態の封止装置用弾性シート1は、フラットパネルを製造する際の封止装置に用いることもできる。また、有機発光パネルの封止でなく、例えば、タッチパネルや液晶表示装置の封止に用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
封止装置用弾性シートは、パネル状の機能材料デバイスを製造するための封止装置に使用することができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0042】
1 封止装置用弾性シート
M メッシュ
R 弾性層
Pt 平滑面(弾性層表面)
t1、t2 厚み
X 線の交差部
Y 目開き部
TS 転写面
MS マスク
SQ スキージ
PM ペースト状樹脂材料
図1
図2
図3
図4
図5