(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均繊維長3〜50μmであり、アスペクト比20〜100である針状二酸化チタン粒子と、平均粒子径3〜30μmであり、アスペクト比1〜5である非針状二酸化チタン粒子とが一体化したことを特徴とする、二酸化チタン複合粉末。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分散性に優れた二酸化チタン複合粉末の製造方法、及び分散性、導電性に優れた導電性複合粉末の製造方法並びに二酸化チタン複合粉末及び導電性複合粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の二酸化チタン複合粉末及び導電性複合粉末の製造方法並びに二酸化チタン複合粉末及び導電性複合粉末を提供する。
【0008】
項1 チタン源とカリウム源とを酸化物換算モル比でTiO
2/K
2O=2.9〜3.3の割合で混合した原料混合物を準備する工程と、前記原料混合物を焼成することにより、針状4チタン酸カリウム粒子と非針状2チタン酸カリウム粒子とが一体化したチタン酸カリウム複合粉末を調製する工程と、前記チタン酸カリウム複合粉末を酸処理して水和チタン酸複合粉末を調製する工程と、前記水和チタン酸複合粉末を熱処理することにより、針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した二酸化チタン複合粉末を製造する工程とを備える、二酸化チタン複合粉末の製造方法。
【0009】
項2 項1に記載の方法により製造された二酸化チタン複合粉末の表面に導電層を形成する工程を備える、導電性複合粉末の製造方法。
【0010】
項3 前記導電層が、酸化錫層からなる導電層である、項2に記載の導電性複合粉末の製造方法。
【0011】
項4 前記酸化錫層が、アンチモン成分を含有しない酸化錫層である、項3に記載の導電性複合粉末の製造方法。
【0012】
項5 項2〜4のいずれか一項に記載の方法で製造された導電性複合粉末。
【0013】
項6 項5に記載の導電性複合粉末を含有する、導電性組成物。
【0014】
項7 項6に記載の導電性組成物を塗布してなる、塗膜。
【0015】
項8 平均繊維長3〜50μmであり、アスペクト比20〜100である針状二酸化チタン粒子と、平均粒子径3〜30μmであり、アスペクト比1〜5である非針状二酸化チタン粒子とが一体化したことを特徴とする、二酸化チタン複合粉末。
【0016】
項9 前記針状二酸化チタン粒子の少なくとも一部が、前記非針状二酸化チタン粒子により結束している、項8に記載の二酸化チタン複合粉末。
【0017】
項10 項8又は9に記載の二酸化チタン複合粉末の表面に導電層が形成された、導電性複合粉末。
【0018】
項11 項10に記載の導電性複合粉末を含有する、導電性組成物。
【0019】
項12 項11に記載の導電性組成物を塗布してなる、塗膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分散性に優れた二酸化チタン複合粉末、及び分散性、導電性に優れた導電性複合粉末を得ることができる。
【0021】
本発明の導電性複合粉末を塗料に用いることにより、平坦性に優れ、かつ表面抵抗値の低い塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
<二酸化チタン複合粉末の製造方法>
本発明の二酸化チタン複合粉末の製造方法は、チタン源とカリウム源とを酸化物換算モル比でTiO
2/K
2O=2.9〜3.3の割合で混合した原料混合物を準備する工程と、原料混合物を焼成することにより、針状4チタン酸カリウム粒子と非針状2チタン酸カリウム粒子とが一体化したチタン酸カリウム複合粉末を調製する工程と、チタン酸カリウム複合粉末を酸処理して水和チタン酸複合粉末を調製する工程と、水和チタン酸複合粉末を熱処理することにより、針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した二酸化チタン複合粉末を製造する工程とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明において原料として用いるチタン源としては、二酸化チタンを含有するもの、又は加熱により二酸化チタンを生じる化合物が挙げられる。かかるチタン源の化合物としては、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の二酸化チタン;ルチル鉱石;含水チタニア、水酸化チタンウェットケーキ;等が挙げられ、これらの中でも二酸化チタンが好ましい。チタン源の粒子径は、目的とする粒子の大きさにより適宜選択することができる。
【0026】
本発明において原料として用いるカリウム源としては、酸化カリウムを含有するもの、又は加熱により酸化カリウムを生じる化合物が挙げられる。かかるカリウム源の化合物としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、硝酸カリウム等が挙げられ、これらの中でも炭酸カリウムが好ましい。
【0027】
チタン源とカリウム源の混合割合は、酸化物換算モル比でTiO
2/K
2O=2.9〜3.3の割合であり、好ましくは2.9〜3.2であり、より好ましくは3.0〜3.1である。混合比率を2.9〜3.3の範囲とすることで、針状の4チタン酸カリウム粒子と非針状の2チタン酸カリウム粒子とが生成し、異形状の粒子同士が複合化した粉末を得ることができる。チタン源とカリウム源の混合割合が2.9未満となると2チタン酸カリウム粒子の比率が多くなり、混合割合が3.3を超えると4チタン酸カリウム粒子の比率が多くなり、目的とする性能を有する粉末を得ることができないため好ましくない。
【0028】
原料混合物に、必要に応じて反応の均一化や結晶成長の目的でフラックスを添加して焼成してもよく、フラックスとしては、塩化カリウム、フッ化カリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸カリウム等を例示することができ、これらの中でも塩化カリウムが好ましい。フラックスの添加割合は、チタン源とカリウム源の合計量100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
【0029】
チタン源とカリウム源の混合は、任意の方法により行うことができ、例えば各種ミキサー、タンブラー、ブレンダー等の混合装置を用いて混合する方法を例示できる。また、湿式混合した後、スプレードライ法により混合物を造粒する方法等を採用することもできる。
【0030】
原料混合物の焼成は、ガス、電気等を用いて行われ、原料混合物を好ましくは800〜1100℃、より好ましくは900〜1100℃の温度範囲において、好ましくは1〜24時間保持、より好ましくは2〜6時間保持することで焼成反応を完結することができる。必要に応じて、焼成反応後に解砕処理を行ってもよい。前記焼成により、針状4チタン酸カリウム粒子と非針状2チタン酸カリウム粒子とが一体化したチタン酸カリウム複合粉末を得ることができる。
【0031】
チタン酸カリウム複合粉末の酸処理は、チタン酸カリウムのK
2O成分を抽出し水和チタン酸複合粉末とすることができれば公知の方法を用いることができる。例えば、前記焼成物を水中で分散させて水性スラリーとし、水性スラリーに酸を添加して攪拌することにより行うことができ、酸処理後は、必要により水洗し、また濾過、遠心分離等により固形分を該スラリーから分離してもよい。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。酸は必要に応じて2種以上を併用してもよい。チタン酸カリウム複合粉末を酸処理することにより、水和チタン酸複合粉末を調製することができる。
【0032】
水和チタン酸複合粉末の熱処理においては、好ましくは、水和チタン酸化合物を80〜350℃で熱処理して単斜晶系8チタン酸とし、次いで得られた8チタン酸を500〜700℃で熱処理を行うことで二酸化チタン複合粉末を製造する。このように熱処理を行うことで、水和チタン酸化合物を製造する前の粒子形状を維持しつつ、結晶化度の高い針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した二酸化チタン複合粉末を製造することができる。
【0033】
単斜晶系8チタン酸を得るための熱処理の時間は特に制限はないが、通常0.5〜24時間、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは0.5〜2時間とすればよい。二酸化チタン粒子を得るための熱処理の時間は特に制限はないが、通常0.5〜8時間、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜2時間とすればよい。
【0034】
本発明の二酸化チタン複合粉末の製造方法によれば、針状粒子と非針状粒子とが同時に生成する。このため、針状粒子の一部が非針状粒子により結束して一体化した複合粒子にすることができる。針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した二酸化チタン複合粉末とすることにより、分散性に優れた複合粉末にすることができる。
【0035】
<二酸化チタン複合粉末>
本発明の二酸化チタン複合粉末は、平均繊維長3〜50μmであり、アスペクト比20〜100である針状二酸化チタン粒子と、平均粒子径3〜30μmであり、アスペクト比1〜5である非針状二酸化チタン粒子とが一体化したことを特徴としている。針状二酸化チタン粒子におけるアスペクト比は、繊維長と繊維径の比である。非針状二酸化チタン粒子におけるアスペクト比は、長径と短径の比である。本発明の二酸化チタン複合粉末は、針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した構造を有しているので、分散性に優れている。
【0036】
本発明の二酸化チタン複合粉末においては、針状二酸化チタン粒子の少なくとも一部が、非針状二酸化チタン粒子により結束して一体化していることが好ましい。このように一体化することにより、いわゆるテトラポット状やウニ状のような粒子構造を有していることが好ましい。このような粒子構造を有することで、塗膜形成時に、結束一体化した部分が互いの重なりを排除するので凝集物は発生を抑制し、より分散性に優れた二酸化チタン複合粒子にすることができる。また均一分散で導電経路の形成が、比較例よりも少量添加で実現できる。
【0037】
本発明の二酸化チタン複合粉末は、上記本発明の二酸化チタン複合粉末の製造方法により製造することができる。
【0038】
<導電性複合粉末及びその製造方法>
本発明の導電性複合粉末は、上記本発明の二酸化チタン複合粉末の表面に導電層が形成されてなることを特徴とする。本発明の導電性複合粉末の製造方法は、上記本発明の二酸化チタン複合粉末の製造方法によって製造された二酸化チタン複合粉末の表面に導電層を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0039】
本発明の導電性複合粉末は、吸油量が100ml/100g以下であることが好ましく、下限値は60ml/100gであることが好ましい。上記吸油量が小さすぎると針状粒子が減少し、導電性の低下を招く場合がある。上記吸油量が大きすぎると針状粒子が多くなり、塗料中において針状粒子同士の絡み合いが部分的におきて塗膜厚さより大きい凝集体が生じる場合がある。
【0040】
導電層は、安定した導電性と白色性の観点から、酸化錫層であることが好ましく、アンチモン成分を含有する酸化錫層であることがより好ましい。アンチモン成分を含有する酸化錫は、導電性において安定しているが、白色性に劣る問題がある。このため、導電層は、複数の導電層から形成されていてもよく、例えば、アンチモン成分を含有する酸化錫層上に、アンチモン成分を含有しない酸化錫層が形成されている導電層が挙げられる。白色性に優れることで、導電性だけでなく、外観や機能面から白色が求められる用途等に好適に用いることができる。
【0041】
本発明の導電性複合粉末において、導電層の割合は、二酸化チタン複合粉末100質量部に対して15〜35質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることより好ましい。導電層の割合を15〜35質量部とすることで、優れた導電性と白色性を得ることできる。導電層がアンチモン成分を含有する酸化錫層の場合、アンチモン成分を含有する酸化錫層にアンチモン成分が5〜15質量%含まれていることが好ましい。
【0042】
導電層の形成方法としては、公知の導電層を形成する方法を用いることができ、例えば、二酸化チタン粒子の表面に湿式処理によってアンチモン成分を含有する錫化合物及び/又はアンチモン成分を含有しない錫化合物を形成し、これを熱処理してアンチモン成分を含有する酸化錫層及び/又はアンチモン成分を含有しない酸化錫層を形成する方法を挙げることができる。
【0043】
具体的には、二酸化チタン複合粉末(基材)の水分散液に、第1段階として、第二錫化合物及びアンチモン化合物が添加される。この第二錫化合物及びアンチモン化合物は、水溶液の状態で添加されることが好ましい。水分散液に添加された第二錫化合物及びアンチモン化合物を、加水分解反応等により、例えば、第二錫水酸化物及びアンチモン水酸化物等の水不溶性物質とすることにより、基材の表面上に、水不溶性物質を付着し堆積させる。第二錫化合物及びアンチモン化合物の添加の際、添加と同時にアルカリ溶液を添加し、水分散液のpHを2〜5の酸性領域に保ちながら反応させることが好ましい。系内のpHを2〜5の酸性領域に保つことにより、析出する第二錫の水不溶性物質が均一に基材に被覆できる形態で析出するため、より均一な被覆が可能となる。
【0044】
添加するアルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水等を使用することができる。添加する第二錫化合物及びアンチモン化合物は、同種の塩であることが好ましい。すなわち、第二錫化合物として塩化錫を用いる場合には、アンチモン化合物として三塩化アンチモンを用いることが好ましい。また、第二錫化合物及びアンチモン化合物は、混合溶液として添加することが好ましい。
【0045】
上記第1段階の後、第2段階として、第一錫化合物を水分散液に添加する。水分散液に添加した第一錫化合物を加水分解等することによって、水酸化第一錫等の第一錫の水不溶性物質を析出させ、この第一錫の水不溶性物質を第二錫及びアンチモンの水不溶性物質の上に付着堆積させる。この第一錫化合物の添加の際にも、第一錫化合物の添加と同時に、アルカリ溶液を添加して、水分散液のpHを2〜5の酸性領域に保ちながら、第一錫化合物を反応させることが好ましい。
【0046】
アルカリ溶液としては、上記第1段階で添加するアルカリ溶液と同様のものを使用することができる。一般に、塩化第一錫等の第一錫化合物溶液を添加し、酸性領域で水酸化物を析出させると、粘度が急上昇し、基材上への均一な被覆層の形成が困難である。しかし、基材上に既に第二錫及びアンチモンの水不溶性物質が均一に被覆しているため、系内の粘度上昇は殆ど見られず、第一錫の水不溶性物質をその上に均一に形成することができる。
【0047】
上記第1段階及び第2段階における水分散液の液温は、室温でも可能であるが、好ましくは、50〜80℃に加温する。加温により、より均一な反応が可能である。
【0048】
上記第1段階及び第2段階における第二錫化合物、アンチモン化合物、及び第一錫化合物の添加量は、酸化錫層及び酸化錫層中のアンチモン成分が、所望の被覆量及び含有量となるような添加量が適宜選択される。
【0049】
上記第1段階及び第2段階の析出反応終了後は、水分散液を濾過し脱水した後、乾燥する。乾燥後、基材上に付着堆積させた水不溶性物質を熱処理し、酸化錫を主成分とする導電層を形成する。熱処理の温度は、基材上の被覆層が導電性を有する酸化錫とし得る温度であれば特に限定されないが、通常は350〜600℃である。また、熱処理の時間は処理温度等によって異なるが、通常0.5〜5時間である。熱処理の雰囲気は、2価の錫である第一錫の水不溶性物質を酸化して4価の酸化錫とする必要があるため、酸素が含まれた酸化性雰囲気で行う。従って、大気中の加熱処理を行うことができる。
【0050】
<導電性組成物及びその製造方法>
本発明の導電性組成物は、上記本発明の導電性複合粉末を含有することを特徴とし、多様な形態で利用することができる。例えば、該導電性複合粉末を溶媒に分散した分散液、分散液にさらにバインダー樹脂(結合材)を配合した塗料、該導電性複合粉末と樹脂を溶融混練した樹脂組成物を挙げることができる。本発明の導電性複合粉末は、溶融混練のような強いせん断力を用いなくとも分散させるができる優れた分散性を有していることから、分散液、塗料として用いることが好ましい。
【0051】
本発明の導電性組成物を該導電性複合粉末、バインダー樹脂(結合材)及び溶媒を含有する塗料として用いる場合、結合材としては、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。溶媒としては、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、芳香族、脂肪族炭化水素等の非水溶媒、水、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。必要に応じて着色材、充填材、分散剤、可塑剤、硬化助剤、消泡剤、増粘剤、乳化剤、紫外線吸収剤等から選ばれる1種を単独又は2種以上を配合することもできる。
【0052】
上記塗料における導電性複合粉末の配合量は、結合材100質量部に対し、10〜100質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
【0053】
本発明の導電性組成物を塗料として用いる場合、電気・電子機器、家電、自動車等の分野において広く用いられる合成樹脂、ガラス、セラミックス等の絶縁性被処理体に塗布することにより、表面平坦性が優れ、かつ表面抵抗値の低い塗膜を形成することができる。例えば、静電塗装法の下塗り塗料(プライマー)、クリーンルーム等の帯電防止塗料等に用いることができる。
【0054】
上記塗料を塗布して、塗膜を形成する被処理体としては、電気・電子機器、家電、自動車等の分野において広く用いられる各種の合成樹脂、ガラス、セラミックス等を挙げることができ、これはシート状、フィルム状、板状等の任意の形状をとり得る。合成樹脂の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、及びフェノール樹脂等を挙げることができるが、これらに制限されるものでない。
【0055】
上記塗料の被処理体への塗布は、常法により、例えば、ロールコート、スピンコート等の手法で行うことができる。その後、必要により加熱して溶媒を蒸発させ、塗膜を乾燥させて硬化させる。このとき加熱又は紫外線等を照射してもよい。
【0056】
本発明の導電性複合粉末は分散性に優れていることから、本発明の導電性複合粉末を使用した塗膜は、表面性状又は表面平坦性において優れている。さらに、本発明の導電性複合粉末は、非針状粒子が部分的に針状粒子を結束していることから、本発明の塗膜は、針状粒子のみの粉末や、針状粒子と非針状粒子を単に混合した粉末を使用した塗膜と比較し、導電性複合粉末の配合割合が少なくても優れた導電性を得ることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0058】
実施例及び比較例において、粉末の粒子形状は、電界放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名「S−4800」、日立ハイテクノロジーズ製)、及びフロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA−3000」、シスメックス製)により確認した。
【0059】
粉末の吸油量は、JIS K−5101−13−1に準じ測定した。粉末の体積抵抗は、試料粉末を圧力容器に入れて14kg/cm
2で圧縮し、この圧粉を電気計測器(商品名「デジタルマルチメーター TR6871」アドバンテスト製)によって測定した。粉末のL値は、色彩色差計(商品名「CR−300」、コニカミノルタ製)を用いて測定した。
【0060】
塗布膜の表面抵抗は、固形分全量中において粉末が35質量%となるように、粉末と樹脂固形分含有量40質量%のアクリル塗料(商品名「アクローゼスーパーECOクリヤー」、大日本塗料製)とを混合し、得られた導電性組成物を乾燥前の膜厚が200μmになるように塗布し、乾燥後、表面抵抗を抵抗測定器(商品名「ハイレスタ−AP MCP−T250」、三菱油化製)にて測定した。
【0061】
(実施例1)
<基材の製造>
アナターゼ型二酸化チタンと炭酸カリウムとを3.1:1(酸化物換算モル比)の割合で混合し、二酸化チタンと炭酸カリウムの合計100質量部に対してフラックスとして塩化カリウムを15質量部で加え混合した。得られた混合物を電気炉中にて1020℃で4時間焼成し、その後徐冷して白色の塊を得た。得られた塊を解砕し、水中で解きほぐし、水洗してフラックスを除去した後、乾燥し白色粉末を得た。得られた粉末は、X線回折より2チタン酸カリウム(K
2O・2TiO
2)と4チタン酸カリウム(K
2O・4TiO
2)とからなる複合物であることがわかった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察より、針状4チタン酸カリウム粒子と非針状2チタン酸カリウム粒子とが一体化したチタン酸カリウム複合粉末であることを確認した。
【0062】
得られたチタン酸カリウム複合粒子100gを水3500ml中に分散させ、5分間撹拌しスラリーとした。70質量%硫酸溶液224gを投入し、20分攪拌しながらK
2O成分の抽出を行った後、濾過、水洗し、110℃にて10時間乾燥した。得られた粉末をX線回折より分析し、単斜晶H
2Ti
8O
17相であることを確認した。これを600℃にて2時間加熱することで、導電層を形成するための基材とする粉末を得た。
【0063】
得られた粉末は、SEM観察及びX線回折より、K
2O成分抽出前のチタン酸カリウム複合粉末の形状を保った単斜晶系結晶構造の二酸化チタンであることを確認した。
【0064】
図1に得られた粉末のSEM写真を示す。
図1に示すように、得られた粉末は、針状二酸化チタン粒子と非針状二酸化チタン粒子とが一体化した二酸化チタン複合粉末であることが確認された。より具体的には、針状二酸化チタン粒子の一部(端部)が、非針状二酸化チタン粒子により結束して一体化した二酸化チタン複合粉末であった。したがって、二酸化チタン複合粉末は、いわゆるテトラポット状やウニ状のような粒子構造を有していることが確認された。
【0065】
二酸化チタン複合粉末は、フロー式粒子像分析より、平均繊維長3〜50μmであり、アスペクト比20〜100である針状二酸化チタン粒子と、平均粒子径3〜30μmであり、アスペクト比1〜5である非針状二酸化チタン粒子とが一体化していることがわかった。また、化学分析より、二酸化チタン複合粉末のTiO
2純度は98.5質量%であった。
【0066】
<導電層の形成>
上記で得られた基材300gを水3600ml中に分散させ、水温を80℃にて10分間攪拌しスラリーとした。このスラリーに、塩化第二錫水溶液265g(Sn換算23質量%)と三塩化アンチモン15gを22質量%の塩酸に溶解させた溶液を合計384gとした混合溶液を1時間かけて滴下し、それと同時に25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を別個に滴下させ、反応液全体のpHを3〜4の範囲に保った。
【0067】
次に、塩化第一錫水溶液51g(Sn換算24質量%)を1時間かけて滴下し、第1段階と同様に、同時に25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を別個に滴下して、反応液全体のpHを3〜4の範囲に保った。第2段階の滴下反応が終了した後、そのままのpH及び液温を保ちながら30分攪拌した。その後pHを5に調整した。
【0068】
その後、室温まで放冷した後、反応生成物を濾過、水洗し、乾燥した。得られた乾燥物を酸化雰囲気である大気中で550℃、1時間加熱処理して白色の導電性二酸化チタン粉末を得た。
【0069】
得られた導電性二酸化チタン粉末は、SEM観察より導電層形成前の形状を保っていることを確認した。したがって、得られた導電性二酸化チタン粉末は、平均繊維長3〜50μmであり、アスペクト比20〜100である針状粒子と平均粒子径3〜30μmであり、アスペクト比1〜5である非針状粒子とが一体化した導電性複合粉末であった。
【0070】
導電性複合粉末の吸油量は95ml/100g、体積抵抗は9Ω・cm、L値は77であった。また、導電性複合粉末を用いた塗布膜の表面抵抗は2×10
5Ω/□であり、その塗布膜には凝集物がないことを目視で確認した。
【0071】
(比較例1)
<基材の製造>
アナターゼ型二酸化チタンと炭酸カリウムとを3.5:1(酸化物換算モル比)の割合で混合し、二酸化チタンと炭酸カリウムの合計100質量部に対してフラックスとして塩化カリウムを16質量部で加え混合した。得られた混合物を電気炉中にて1020℃で4時間焼成し、その後徐冷して白色の塊を得た。得られた塊を水中で解砕し、水洗してフラックスを除去した後、乾燥し白色粉末を得た。得られた粉末は、X線回折より4チタン酸カリウム(K
2O・4TiO
2)であり、SEM観察より針状であることを確認した。
【0072】
得られた粉末100gを、水3500ml中に分散させ、5分間撹拌しスラリーとした。70質量%硫酸溶液224gを投入し、20分攪拌しながらK
2O成分の抽出を行った後、濾過、水洗し、110℃にて10時間乾燥した。得られた粉末は、X線回折より単斜晶H
2Ti
8O
17相であることを確認した。これを600℃にて2時間加熱することで、導電層を形成するための基材とする粉末を得た。
【0073】
得られた粉末は、SEM観察及びX線回折より、K
2O成分抽出前の粒子形状を保った単斜晶系結晶構造の二酸化チタンであることを確認した。
図2に得られた粉末のSEM写真を示す。
図2に示すように、得られた粉末は、針状二酸化チタン粒子であることが確認された。粉末の粒子形状は、フロー式粒子像分析より平均繊維長3〜50μmかつアスペクト比20〜100の針状粒子であった。また、化学分析よりTiO
2純度は97.5質量%であった。
【0074】
<導電層の形成>
導電層の形成は、実施例1と同様の方法で行うことで導電性二酸化チタン粉末を得た。
【0075】
得られた導電性二酸化チタン粉末は、SEM観察より導電層形成前の形状を保っていることを確認した。
【0076】
導電性二酸化チタン粉末の吸油量は109ml/100g、体積抵抗は208Ω・cm、L値は82であった。また、導電性二酸化チタン粉末を用いた塗布膜の表面抵抗は4×10
7Ω/□であり、その塗布膜に凝集物があることを目視で確認した。
【0077】
(比較例2)
<基材の製造>
別々に製造した針状二酸化チタンと非針状二酸化チタンとを8:2の質量比で混合することで、導電層を形成するための基材とする粉末を得た。
【0078】
針状二酸化チタンは、比較例1と同様の方法で行うことで得た。
【0079】
非針状二酸化チタンは、 アナターゼ型二酸化チタンと炭酸カリウムとを2:1(酸化物換算モル比)の割合で振動ミルを用いて粉砕混合した。得られた混合物を電気炉中にて880℃で4時間焼成し、その後徐冷して白色の塊を得た。得られた塊を水中で解砕した後、乾燥し白色粉末を得た。得られた粉末は、X線回折より2チタン酸カリウム(K
2O・2TiO
2)であり、SEM観察より非針状であることを確認した。
【0080】
得られた非針状2チタン酸カリウム粒子の粉末100gを、水3500ml中に分散させ、5分間撹拌しスラリーとした。70質量%硫酸溶液365gを投入し、20分攪拌しながらK
2O成分の抽出を行った後、水洗し、110℃にて10時間乾燥した。得られた粉末は、X線回折より単斜晶H
2Ti
2O
5相であることを確認した。これを600℃にて2時間加熱することで、非針状二酸化チタン粒子の粉末を得た。
【0081】
得られた非針状二酸化チタン粒子の粉末は、SEM観察及びX線回折より、K
2O成分抽出前の粒子形状を保った単斜晶系結晶構造の二酸化チタンであることを確認した。粉末の粒子形状は、フロー式粒子像分析より平均粒子径3〜30μmかつアスペクト比1〜5の非針状粒子であった。また、化学分析よりTiO
2純度は97.5質量%であった。
【0082】
<導電層の形成>
導電層の形成は、実施例1と同様の方法で行うことで導電性二酸化チタン粉末を得た。導電性二酸化チタン粉末の吸油量は136ml/100gであった。また、導電性二酸化チタン粉末を用いた塗布膜は、導電性組成物に凝集物が多く発生し、製造することができなかった。
【0083】
以上のことから、本発明に従う実施例1の導電性複合粉末を用いることにより、分散性及び導電性に優れ、かつ表面性状又は表面平坦性に優れた導電性塗膜を形成できることがわかる。