(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の第1推定値を計算し、前記プラント状態量の第1推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第1計算部であって、計算された機器パラメータは正常状態の機器パラメータとして保存される、第1計算部と、
前記プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、非定常状態における数学的関係を表す非定常モデルを用いて、前記非定常モデルの機器パラメータに前記正常状態の機器パラメータを代入することにより、プラント状態量の第2推定値を計算し、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差がある閾値以上であるかどうかを判断する第1判断部と、
前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差が前記閾値以上であると前記第1判断部により判断された場合に、前記定常モデルを用いてプラント状態量の第3推定値を計算し、前記プラント状態量の第3推定値と前記プラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第2計算部であって、計算された機器パラメータは異常状態の機器パラメータとして保存される、第2計算部と、
前記正常状態の機器パラメータと前記異常状態の機器パラメータとの差が一定値以上かどうかを判断する第2判断部と
を備えたプラント評価装置。
前記第2計算部により行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測部を更に備えた請求項1に記載のプラント評価装置。
プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の推定値を計算し、前記プラント状態量の推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する計算部と、
前記計算部による計算後の機器パラメータと計算前の機器パラメータとを比較し、該比較の結果に応じて機器パラメータを更新する更新部と
を備えたプラント評価装置。
前記計算部により行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測部を更に備えた請求項3に記載のプラント評価装置。
プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の第1推定値を計算し、前記プラント状態量の第1推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第1計算ステップであって、計算された機器パラメータは正常状態の機器パラメータとして保存される、第1計算ステップと、
前記プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、非定常状態における数学的関係を表す非定常モデルを用いて、前記非定常モデルの機器パラメータに前記正常状態の機器パラメータを代入することにより、プラント状態量の第2推定値を計算し、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差がある閾値以上であるかどうかを判断する判断ステップと、
前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差が前記閾値以上であると前記判断ステップにおいて判断された場合に、前記定常モデルを用いてプラント状態量の第3推定値を計算し、前記プラント状態量の第3推定値と前記プラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第2計算ステップであって、計算された機器パラメータは異常状態の機器パラメータとして保存される、第2計算ステップと、
前記正常状態の機器パラメータと前記異常状態の機器パラメータとの差が一定値以上かどうかを判断する第2判断ステップと
を含むプラント評価方法。
前記第2計算ステップにおいて行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測ステップを更に含む請求項5に記載のプラント評価方法。
プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の推定値を計算し、前記プラント状態量の推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する計算ステップと、
前記計算ステップによる計算後の機器パラメータと計算前の機器パラメータとを比較し、該比較の結果に応じて機器パラメータを更新する更新ステップと
を含むプラント評価方法。
前記計算ステップにおいて行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測ステップを更に含む請求項7に記載のプラント評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシミュレーション装置は、誤差が発生した際に同定モデルで修正すべきパラメータの情報を予め有している。しかし、誤差発生要因によっては、予め設定した情報だけでは修正箇所を特定することができない可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消し、プラント状態量の推定値と実測値との間の誤差に応じて、プラント内の異常発生原因の推定を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係るプラント評価装置は、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の第1推定値を計算し、前記プラント状態量の第1推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第1計算部であって、計算された機器パラメータは正常状態の機器パラメータとして保存される、第1計算部と、前記プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、非定常状態における数学的関係を表す非定常モデルを用いて、前記非定常モデルの機器パラメータに前記正常状態の機器パラメータを代入することにより、プラント状態量の第2推定値を計算し、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差がある閾値以上であるかどうかを判断する第1判断部と、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差が前記閾値以上であると前記第1判断部により判断された場合に、前記定常モデルを用いてプラント状態量の第3推定値を計算し、前記プラント状態量の第3推定値と前記プラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第2計算部であって、計算された機器パラメータは異常状態の機器パラメータとして保存される、第2計算部と、前記正常状態の機器パラメータと前記異常状態の機器パラメータとの差が一定値以上かどうかを判断する第2判断部とを備えている。
【0007】
前記プラント評価装置は、前記第2計算部により行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測部を更に備えていてもよい。
【0008】
本発明の別の側面によれば、プラント評価装置は、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の推定値を計算し、前記プラント状態量の推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する計算部と、前記計算部による計算後の機器パラメータと計算前の機器パラメータとを比較し、該比較の結果に応じて機器パラメータを更新する更新部とを備えている。
【0009】
プラント評価装置は、前記計算部により行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測部を更に備えていてもよい。
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係るプラント評価方法は、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の第1推定値を計算し、前記プラント状態量の第1推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第1計算ステップであって、計算された機器パラメータは正常状態の機器パラメータとして保存される、第1計算ステップと、前記プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、非定常状態における数学的関係を表す非定常モデルを用いて、前記非定常モデルの機器パラメータに前記正常状態の機器パラメータを代入することにより、プラント状態量の第2推定値を計算し、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差がある閾値以上であるかどうかを判断する判断ステップと、前記プラント状態量の第2推定値と前記プラント状態量の実測値との誤差が前記閾値以上であると前記判断ステップにおいて判断された場合に、前記定常モデルを用いてプラント状態量の第3推定値を計算し、前記プラント状態量の第3推定値と前記プラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する第2計算ステップであって、計算された機器パラメータは異常状態の機器パラメータとして保存される、第2計算ステップと、前記正常状態の機器パラメータと前記異常状態の機器パラメータとの差が一定値以上かどうかを判断する第2判断ステップとを含む。
【0011】
前記プラント評価方法は、前記第2計算ステップにおいて行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測ステップを更に含んでいてもよい。
【0012】
本発明の別の側面によれば、プラント評価方法は、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表す定常モデルを用いてプラント状態量の推定値を計算し、前記プラント状態量の推定値とプラント状態量の実測値との差に応じて前記プラント機器の機器パラメータを計算する計算ステップと、前記計算ステップによる計算後の機器パラメータと計算前の機器パラメータとを比較し、該比較の結果に応じて機器パラメータを更新する更新ステップとを含む。
【0013】
前記プラント評価方法は、前記計算ステップにおいて行われた前記機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、前記機器パラメータの将来変化を予測する予測ステップを更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラント状態量の推定値と実測値との間の誤差に応じて、プラント内の異常発生原因の推定を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0017】
[プラント]
まず、評価対象となるプラントの一例を説明する。
図1に示しているように、プラント1は、配管2と、配管2内を流れる流体の流量を調節する第1バルブ3及び第2バルブ4とを備えている。第1バルブ3は、第2バルブ4よりも上流側に設けられている。配管2と第1バルブ3と第2バルブ4とはいずれも、プラント機器である。
【0018】
第1バルブ3の上流の配管圧力をP1とし、第1バルブ3の下流かつ第2バルブ4の上流の配管圧力(又は中間部圧力)をP2とし、第2バルブ4の下流の配管圧力をP3とする。一例として、配管圧力P1及びP3は一定であり、配管圧力P2は時間とともに変化し得るものとする。
【0019】
第1バルブ3内を流れる流体の流量をF1とし、第2バルブ4内を流れる流体の流量をF2とする。流量F1及びF2は、プラント1の状態を表すプラント状態量であるとともに、プラント1のプロセス制御における制御対象である。配管圧力P1〜P3もプラント状態量である。また、第1バルブ3のバルブ開度をX1とし、第2バルブ4のバルブ開度をX2とする。バルブ開度X1及びX2は、プラント1のプロセス制御における操作量である。
【0020】
第1バルブ3の流量係数をCV1とし、第2バルブ4の流量係数をCV2とする。流量係数CV1及びCV2はいずれも、プラント機器の機器パラメータである。
【0021】
[第1実施形態]
図2は、プラント1を評価するプラント評価装置5を示している。このプラント評価装置5は、プラント1から実測データをオンライン又はオフラインで取得できるように構成されているとともに、第1計算部52と第1判断部53と第2計算部54と第2判断部55とを備えている。各機能部の詳細は後述する。
【0022】
図3は、プラント評価装置5のコンピュータハードウェア構成例を示している。プラント評価装置5は、CPU510と、インタフェース装置520と、表示装置530と、入力装置540と、ドライブ装置550と、補助記憶装置560と、メモリ装置570とを備えており、これらがバス580により相互に接続されている。
【0023】
プラント評価装置5の機能を実現するプログラムは、CD−ROM等の記録媒体590によって提供される。プログラムを記録した記録媒体590がドライブ装置550にセットされると、プログラムが記録媒体590からドライブ装置550を介して補助記憶装置560にインストールされる。あるいは、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体590により行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータからダウンロードすることもできる。補助記憶装置560は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0024】
メモリ装置570は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置560からプログラムを読み出して格納する。CPU510は、メモリ装置570に格納されたプログラムにしたがってプラント評価装置5の機能を実現する。インタフェース装置520は、ネットワークを通して他のコンピュータに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置530はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置540はキーボード及びマウス等である。
【0025】
プラント評価装置5が行う処理について、
図4を参照しながら以下に説明する。なお、本処理は定期的に行われる。
【0026】
まず、ステップS101において、第1計算部52は、機器パラメータの最終計算から一定期間が経過したかどうかを判断する。一定期間が経過したと判断された場合は、ステップS102が行われ、さもなければステップS103が行われる。機器パラメータの計算については後述する。
【0027】
ステップS102において、第1計算部52は、定常モデルを用いて、流量(プラント状態量)F1の第1推定値F1
1と、流量F2の第1推定値F2
1と、中間部圧力P2の第1推定値P2
1を計算する。定常モデルとは、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、定常状態における数学的関係を表すプラントモデルである。第1計算部52による推定値F1
1、F2
1及びP2
1の計算式は以下の通りである。
【数1】
【0028】
具体的には、以下の通りである。
【数2】
なお、非線形連立方程式は、解析解(数式で表される解)を上記のように求めることが一般的には困難である。そのため、様々な数値解析手法を用いて近似解を求めることが一般的である。
【0029】
このように、定常モデルにおいては、これらの関係式(1)〜(3)を連立し、推定値F1
1、F2
1及びP2
1が計算される。
【0030】
なお、流量係数CV1及びCV2は、設計条件や後述する機器パラメータ更新結果から得られる。バルブ開度X1及びX2と配管圧力P1及びP3とは、実測値から得られる。実測値がない場合は、経験値や仮定値などを与える。
【0031】
本ステップではさらに、第1計算部52は、流量F1の実測値である流量実測値F1
rの入力と、流量F2の実測値である流量実測値F2
rの入力と、中間部圧力P2の実測値である圧力実測値P2
rの入力とのうちの少なくとも1つをプラント1から受け付ける。続いて、第1計算部52は、流量F1の第1推定値F1
1と流量実測値F1
rとの差と、流量F2の第1推定値F2
1と流量実測値F2
rとの差と、中間部圧力P2の第1推定値P2
1と圧力実測値P2
rとの差との合計値を計算する。プラント1から受け付けられなかった実測値がある場合は、その実測値と対応する推定値との差はゼロとする。なお、差の合計値は二乗差の合計をとることが望ましい。第1計算部52は、この合計値が最小となるような流量係数CV1及びCV2の値を計算する。合計値がゼロになった場合、正確な機器パラメータすなわち流量係数が再現されたことになるが、現実的にはゼロになることはあまりないため、合計値が最小となる機器パラメータを、最適な機器パラメータと考える。
【0032】
第1計算部52は、前記計算された流量係数CV1及びCV2をそれぞれ、正常状態の機器パラメータとしてメモリ装置570に保存する。もちろん、メモリ装置570以外の任意の記憶装置に保存してもよい。この保存を、機器パラメータの更新とも呼ぶ。
ただし、実測データに欠損などの異常が含まれる場合や、定常状態でない実測値を用いて計算した場合には、機器パラメータを更新しない。
【0033】
このように、本ステップにおける機器パラメータの計算は、プラント全系での誤差が最小となるように、式(1)〜式(3)に示したような定常モデルを用いて行われる。
【0034】
ステップS103において、第1判断部53は、非定常モデルを用いて、流量(プラント状態量)F1の第2推定値F1
2と、流量F2の第2推定値F2
2と、圧力P2の第2推定値P2
2とを計算する。非定常モデルとは、プラント機器の機器パラメータとプラント状態量との、非定常状態における数学的関係を表すプラントモデルである。計算式は以下の通りである。
【数3】
ただし、式(4)の定数αは圧力の応答係数である。式(5)のP2oldは、非定常計算の前回の計算(前回の時刻)における圧力であり、前回の式(5)により得られた推定値P2
2である。dtは、差分化時間(計算時間刻み)を表している。式(6)の流量係数(機器パラメータ)CV1には、上述した正常状態の機器パラメータ(第1計算部52による更新後の機器パラメータ)CV1が代入される。式(7)の流量係数(機器パラメータ)CV2には、上述した正常状態の機器パラメータ(第1計算部52による更新後の機器パラメータ)CV2が代入される。バルブ開度X1及びX2と、配管圧力P1及びP3とは、実測値から得られる。実測値がない場合は、経験値や仮定値などを与える。
【0035】
このように、非定常モデルでは、式(4)に示したように時間微分項dP2/dtが計算され、この時間微分項を用いて式(5)により推定値P2
2が計算される。次に、計算された推定値P2
2を用いて、式(6)及び(7)から、推定値F1
2及びF2
2とが計算される。
【0036】
式(1)〜式(3)に示した定常モデルと、式(4)〜式(7)に示した非定常モデルとはいずれも、プラントの物理現象(プロセス応答)を表す数理モデルである。ただし、非定常モデルでは時間微分項を考慮するのに対し、定常モデルでは式(1)に示したように時間微分項をゼロとして扱うという点で、両モデルは異なる。
【0037】
本ステップにおいて、第1判断部53はさらに、流量(プラント状態量)F1の第2推定値F1
2と、流量実測値F1
rとの差を計算する。この差を第1乖離度とも呼ぶ。第1乖離度の例を
図5の符号D1として示している。第1判断部53は、流量(プラント状態量)F2の第2推定値F2
2と、流量実測値F2
rとの差をも計算する。この差を第2乖離度とも呼ぶ。第1判断部53は、圧力(プラント状態量)P2の第2推定値P2
2と、圧力実測値P2
rとの差をも計算する。この差を第3乖離度とも呼ぶ。実測値がない場合は、乖離度の計算は行わない。
【0038】
ステップS104において、第1判断部53は、第1乖離度と第2乖離度と第3乖離度との少なくとも1つが一定値を超えているかどうかを判断する。判断結果が正の場合は、プラント1に異常が生じているとして、ステップS105が行われ、さもなければ本処理は終了する。
【0039】
ステップS105において、第2計算部54は、上述した定常モデルを用いて、流量(プラント状態量)F1の第3推定値F1
3と、流量F2の第3推定値F2
3と、圧力P2の第3推定値P2
3とを計算する。第2計算部54による推定値F1
3及びF2
3の計算式は以下の通りである。
【数4】
【0040】
なお、流量係数CV1及びCV2は、前記計算した機器パラメータや後述する機器パラメータ更新結果から得られる。バルブ開度X1及びX2と配管圧力P1及びP3とは、実測値から得られる。実測値がない場合は、経験値や仮定値などを与える。
【0041】
本ステップではさらに、第2計算部54は、流量F1の実測値である流量実測値F1
rの入力と、流量F2の実測値である流量実測値F2
rの入力と、中間部圧力P2の実測値である圧力実測値P2
rの入力とのうちの少なくとも1つをプラント1から受け付ける。続いて、第2計算部54は、流量F1の第3推定値F1
3と流量実測値F1
rとの差と、流量F2の第3推定値F2
3と流量実測値F2
rとの差と、中間部圧力P2の第3推定値P2
3と圧力実測値P2
rとの差との合計値を計算する。なお、差の合計値は二乗差の合計をとることが望ましい。第2計算部54は、この合計値が最小となるような流量係数CV1及びCV2の値を計算する。
【0042】
第2計算部54は、前記計算された流量係数CV1及びCV2をそれぞれ、異常状態の機器パラメータとしてメモリ装置570に保存(更新)する。もちろん、メモリ装置570以外の任意の記憶装置に保存してもよい。
ただし、実測データに欠損などの異常が含まれる場合や、定常状態でない実測値を用いて計算した場合には、機器パラメータを更新しない。
【0043】
このように、本ステップにおける機器パラメータの計算は、プラント全系での誤差が最小となるように、式(8)〜式(10)に示したような定常モデルを用いて行われる。
【0044】
ステップS106において、第2判断部55は、ステップS102で得られた正常状態の機器パラメータと、ステップS105で得られた異常状態の機器パラメータとの差が一定値以上かどうかを判断する。具体的には、第2判断部55は、正常状態の流量係数CV1と異常状態の流量係数CV1との差を計算し、その差が一定値以上かどうかを判断する。さらに、第2判断部55は、正常状態の流量係数CV2と異常状態の流量係数CV2との差を計算し、その差が一定値以上かどうかを判断する。
【0045】
その後、正常状態と異常状態との差が一定値以上であると判断された流量係数(機器パラメータ)が第2判断部55により特定される。
【0046】
なお、ステップS102で得られた正常状態の機器パラメータと、ステップS105で得られた異常状態の機器パラメータとは、次回のステップS101における判断結果が「No」であった場合に行われるステップS103において用いられる。具体的には、ステップS104にて異常がないと判断された場合、機器パラメータはほぼ変化していないと考えられるため、その時点での正常状態の機器パラメータは、次回のステップS101における判断結果が「No」であった場合に行われるステップS103において用いられる。これに対し、ステップS104にて異常があると判断された場合は、最新の状態を反映した機器パラメータとするため、その時点での異常状態の機器パラメータが、次回のステップS101における判断結果が「No」であった場合に行われるステップS103において用いられる。
【0047】
本実施形態によれば、正常状態と異常状態との差が一定値以上であると判断された機器パラメータに基づいて、プラント内の異常発生の原因の推定及び異常度合いを定量的に評価することができる。また、ステップS102及びS105において、プラント全系での機器パラメータ更新が行われる。つまり、局所的な機器パラメータ更新となることがないことから、異常原因が見いだせなくなってしまう可能性を低減することができる。さらに、この機器パラメータ更新は、比較的計算負荷の高い処理であるが、一定期間毎に行われるステップS102を除くとステップS105実行時のみ行われるため、計算負荷の増加を抑えることができる。
【0048】
[第2実施形態]
図6は、別の実施形態に係るプラント評価装置5aを示している。図示しているように、プラント評価装置5aは、計算部56と更新部57とを備えている。
図7は、プラント評価装置5aによる処理の流れを示している。本処理は定期的に行われる。
【0049】
まず、ステップS201にて計算部56は、機器パラメータの計算を行う。この計算は、ステップS102と同様である。
【0050】
ステップS202において、更新部57は、計算部56により行われた計算前後の機器パラメータを比較する。計算前の機器パラメータとは、計算部56における前回の計算により得られた機器パラメータのことである。そして、ステップS203において、更新部57は、機器パラメータを、ステップS201において計算された値に更新するかどうかを判断する。その判断基準は、実測データに欠損などの異常が含まれないこと、実測値が定常状態であることである。ステップS203の判断結果が「Yes」であった場合は、ステップS204にて機器パラメータの更新を行う。
【0051】
本実施形態によれば、ステップS202にて機器パラメータの比較を行い、その比較結果から、プラント内の異常発生原因の推定を効率的に行うことができる。また、本実施形態によれば、比較的計算負荷の大きい非定常モデルを使わずにプラント評価を行うことができる。
【0052】
[第3実施形態]
第1実施形態において得られる異常時の機器パラメータの中で、プラント運転に支障のない軽微な異常の場合は、プラント運転を継続することがある。その場合、プラント評価装置5は、予測部(不図示)をさらに備えていてもよい。この予測部は、第2計算部54による機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、機器パラメータの将来変化を予測する。
【0053】
図8に、機器パラメータの一例である触媒活性値と時間との関係を示している。予測部は、計算結果の履歴を表す点H1〜H4に基づいて、触媒活性値の将来変化を表す直線Lを導き出す。直線Lの導出にあたり、最小二乗法又はスプライン補間を用いることができる。そして、この直線Lと、プラント運転に必要な触媒活性値の最小値を表す閾値との交点Qから、プラント運転の継続が可能な期間を予測することができる。さらに、機器パラメータの急激な変化を監視することができる。
【0054】
なお、プラント評価装置5aが予測部(不図示)を備えていてもよい。この予測部は、計算部56による機器パラメータの計算結果の履歴に基づいて、機器パラメータの将来変化を予測する。
【0055】
第1実施形態〜第3実施形態に共通の効果として、誤差発生の原因となり得る相関操作の有無とは無関係に、プラント異常状態の原因を推定することができる。さらに、プラント異常の度合いを定量的に評価することができる。加えて、プラント全系での機器パラメータ更新を行うため、局所的なパラメータ更新となることがなく、異常原因が見いだせなくなってしまう可能性を低減することができる。
【0056】
[その他]
上記実施形態においては、機器パラメータが複数存在するプラントを例としたが、機器パラメータは少なくとも1つあればよい。
【0057】
状態量の例として流量を挙げたが、これに限られない。温度、圧力など測定可能な任意の量を状態量として用いることができる。また、プロセス制御における操作対象は、バルブに限られず、任意のプラント機器とすることができる。
【0058】
機器パラメータの例として、流量係数及び触媒活性値を挙げた。しかし、これに限られず、熱交換器の伝熱係数、配管の圧損など任意の機器パラメータをプラント評価に用いることができる。
【0059】
前述したプラント評価装置の機能的構成は、前述の態様に限られるものではなく、例えば、各手段を統合して実装したり、逆に、さらに分散して実装したりすることも可能である。
【0060】
前述した実施形態は、プラント評価装置により実行されるプラント評価方法としての側面をも有している。
【0061】
本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づく種々の変更は本発明の概念に含まれる。