特許第6559620号(P6559620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559620
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】導電性耐熱シール材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20190805BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20190805BHJP
   C09J 1/00 20060101ALI20190805BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20190805BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20190805BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C09K3/10 Q
   C09J11/04
   C09J1/00
   C09J9/02
   H01B1/22 A
   H01B1/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-135406(P2016-135406)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-2964(P2018-2964A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213840
【氏名又は名称】朝日化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】中根 久志
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−057937(JP,A)
【文献】 特開平03−074483(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00413304(EP,A1)
【文献】 特開平06−349318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性充填剤と、バインダーとを含む導電性耐熱シール材料であって、前記導電性充填剤が、導電性被覆材で被覆された無機粉末であり、前記バインダーが一次粒子のメディアン径が異なる2種以上のコロイダルシリカの混合物であり、この混合物が、第1のコロイダルシリカと、前記第1のコロイダルシリカよりもメディアン径の小さいコロイダルシリカとからなり、前記第1のコロイダルシリカのメディアン径を100としたときの、メディアン径の小さいコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が50以下であることを特徴とする導電性耐熱シール材料。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの混合物が、メディアン径の異なる3種類のコロイダルシリカからなり、第1のコロイダルシリカのメディアン径を100としたとき、第2のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が20〜50であり、第3のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が8〜20であることを特徴とする請求項に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項3】
前記第1のコロイダルシリカのメディアン径が70〜230nmであることを特徴とする請求項またはに記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項4】
前記第1のコロイダルシリカのコロイダルシリカ全体に占める割合が10質量%以上70質量%未満であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項5】
前記導電性被覆材が銀であり、前記無機粉末がセラミック粉末または金属粉末であることを特徴とする請求項1に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項6】
前記セラミック粉末が、アルミナ粉末およびシリカ粉末から選ばれる1種以上であり、前記金属粉末が、銅粉末およびニッケル粉末から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項7】
前記導電性充填剤のメディアン径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1、5、6のいずれか1項に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項8】
さらに、コロイダルシリカに加えて、他のバインダーを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性耐熱シール材料。
【請求項9】
前記他のバインダーが、アルカリ金属ケイ酸塩、リン酸塩化合物、ベントナイト、シランカップリング剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項に記載の導電性耐熱シール材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機接着剤を用いる耐熱シール材料に関し、電子デバイスあるいはパワーデバイス、燃料電池あるいは固体酸化物水蒸気電解装置(SOE)等のシールや接着に使用される導電性耐熱シール材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機接着剤を用いる耐熱シール材料としては、シリカ粉、アルミナ粉、ジルコニア粉等のセラミック粉と、バインダーとして、ケイ酸ソーダ、リチームシリケート、コロイダルシリカ等を用いたものが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、セラミック粉末として所定の粒度分布を示すアルミナ粉末および無機バインダーとして所定量のコロイダルシリカを含み、所定量の無機分散剤およびシランカップリング剤を含む無機接着剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の改良方法としては、特許文献2には、導電性粉末として金属粉末を用い、シリカ-アルミナ系無機接着剤を固定剤として使用し、その上に気体を透過しないガラスのシール材を積層することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−32695号公報
【特許文献2】特開平10−279887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の無機接着剤は、無機質のため高温での使用には耐え、耐熱性には優れているが、気孔が多く気体透過率が大きいため、シール材として使用することができない。また、高温での使用においてカーボンブラック、黒鉛が酸化し、導電特性が損なわれる。
【0007】
特許文献2の方法の問題点は、高温での使用において導電性粉末が溶融、流動状態になり、高温での長時間使用に耐えられない。
【0008】
これらの無機接着剤は、高温時での導電性の変化が著しく、燃料電池やパワーデバイスなどの技術分野には使用できないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、気体透過率が低く、150℃前後で硬化した後、500℃以上の高温に曝された場合でも導電性を担保し、収縮率が小さく、かつ接着力が高く、また熱膨張率の調製が可能な無機接着剤を提供し、これを用いた耐熱シール材料を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、無機接着剤を、導電性被覆材で被覆された無機粉末を充填剤とし、一次粒径メディアン径の異なる二種類以上のコロイダルシリカを混合したバインダーとで構成することにより目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明は、導電性充填剤と、バインダーとを含む導電性耐熱シール材料であって、前記導電性充填剤が、導電性被覆材で被覆された無機粉末であり、前記バインダーが一次粒子のメディアン径が異なる2種以上のコロイダルシリカの混合物であり、この混合物が、第1のコロイダルシリカと、前記第1のコロイダルシリカよりもメディアン径の小さいコロイダルシリカとからなり、前記第1のコロイダルシリカのメディアン径を100としたときの、メディアン径の小さいコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が50以下であることを特徴とする導電性耐熱シール材料である
【0016】
また本発明は、前記コロイダルシリカの混合物が、メディアン径の異なる3種類のコロイダルシリカの混合物からなり、第1のコロイダルシリカのメディアン径を100としたとき、第2のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が20〜50であり、第3のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が8〜20であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記第1のコロイダルシリカのメディアン径が70〜230nmであることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記第1のコロイダルシリカのコロイダルシリカ全体に占める割合が10質量%以上70質量%未満であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、導電性被覆材が銀であり、前記無機粉末がセラミック粉末または金属粉末であることを特徴とする。
また本発明は、前記セラミック粉末が、アルミナ粉末およびシリカ粉末から選ばれる1種以上であり、金属粉末が銅粉末およびニッケル粉末から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
また本発明は、前記導電性充填剤のメディアン径が1〜100μmであることを特徴とする。
また本発明は、さらにコロイダルシリカに加えて、他のバインダーを含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記他のバインダーが、アルカリ金属ケイ酸塩、リン酸塩化合物、ベントナイト、シランカップリング剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、気体透過率が低く、500℃以上の高温に曝された場合でも収縮率が小さく、また熱膨張率の調整が可能である。
また、本発明の導電性耐熱シール材料は、充填剤の導電性により、シール材自体が導電性を有するので、ガスを封止しつつ導電性を保持するという効果も得られ、水素電解セルの固定などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、導電性充填剤と、バインダーとを含む導電性耐熱シール材料であって、前記導電性充填剤が、導電性被覆材で被覆された無機粉末であり、前記バインダーが一次粒子のメディアン径が異なる2種以上のコロイダルシリカの混合物であることを特徴とする導電性耐熱シール材料である。
【0023】
本発明の導電性耐熱性シール材料は、スラリー状またはペースト状であり、導電性充填剤60〜90質量%と、バインダーとしてのコロイダルシリカ10〜40質量%とを、含む。
【0024】
本発明において、導電性充填剤は、導電性被覆材で被覆された無機粉末である。
本発明において、導電性充填剤としては、メディアン径が5〜100μmのものを用いることが好ましい。
本発明において、導電性充填剤は、導電性被覆材が無機粉末表面をめっき膜の状態で被覆されている。
または、導電性被覆材は、無機粉末、金属粉末の一次粒子の表面を重量%で10〜50%めっき膜のように均一に被覆していることが望ましい。
【0025】
導電性被覆材としては、銀、白金、金などの金属材料があげられる。これらの中でも、コスト削減可能であることから銀を用いることが好ましい。
【0026】
また、導電性被覆材で被覆される無機粉末としては、特に制限されないが、セラミック粉末または金属粉末が好ましく、セラミック粉末としては、アルミナ粉末およびシリカ粉末の1種以上があげられる。これらのセラミック粉末は1種類を用いてもよく、2種以上を適宜併用することもできる。
被覆されるセラミック粉末の粒径としては、メディアン径が1〜50μmのものが好ましい。
【0027】
また、被覆される金属粉末としては、銅、ニッケルなどの金属粉末があげられる。これらの金属粉末としては、メディアン径が1〜50μmのものを用いることが好ましい。
【0028】
本発明の導電性充填剤に使用される導電性被覆材で被覆された無機粉末は、導電性被覆材と、無機粉末とを、めっき技術を用いることによって、製造することができる。
【0029】
また、市販の導電性被覆材で被覆された無機粉末も好適に使用することができ、かかる導電性無機粉末としては、たとえば、アルミナ粉末の表面に均一に銀めっきを施したものとしてTFM−L10F、シリカ粉末の表面に均一に銀めっきを施したものとしてTFM−S05P、銅粉末の表面に均一に銀めっきを施したものとしてTFM−C15F(いずれも東洋アルミニウム株式会社製)などがあげられる。
【0030】
また、本発明における導電性充填剤は、前記の導電性被覆材で被覆された無機粉末以外に、被覆されない無機粉末を含んでいてもよく、かかる無機粉末としては、特に制限されないが、セラミック粉末が好ましい。
【0031】
かかるセラミック粉末としては、アルミナ粉末、イットリア安定化ジルコニア粉末、ムライト粉末、結晶性シリカ粉末、フォルステライト粉末およびステアタイト粉末から選択される1種以上を挙げることができる。これらのセラミック粉末は1種類を用いてもよく、2種以上を適宜併用することもできる。
セラミック粉末の粒径としては、メディアン径が1〜100μmのものを用いることが好ましい。
【0032】
本発明において、導電性充填剤として導電性被覆材で被覆された無機粉末と、被覆されない無機粉末との使用比率は、導電性充填剤が導電性を大きく低下させない範囲であれば特に制限されないが、たとえば、導電性充填剤中に導電性被覆材で被覆された無機粉末が40質量%以上含まれるように用いればよい。
【0033】
本発明において、メディアン径とは、一次粒子の累積質量百分率50%相当粒子径(d50)を意味する。
【0034】
本発明において、バインダーとして用いられるメディアン径が異なるコロイダルシリカとしては、種々のものが知られている。たとえば、一次粒径が4〜6nmのコロイダルシリカ(ST−XS、ST−NXS、ST−OXS)、8〜11nmのコロイダルシリカ(ST−S)、10〜15nmのコロイダルシリカ(ST−30、ST−N、ST−O)、20〜25nmのコロイダルシリカ(ST−50、ST−N−40、ST−O−40)、40〜50nmのコロイダルシリカ(ST−20L、ST−OL)、70〜100nmのコロイダルシリカ(ST−ZL)、70〜130nmのコロイダルシリカ(MP−1040)、170〜230nmのコロイダルシリカ(MP−2040)、420〜480nmのコロイダルシリカ(MP−4540M)など(いずれも、日産化学株式会社製)のコロイダルシリカが市販されている。
【0035】
本発明においては、バインダーとして一次粒径のメディアン径が異なる2種以上のコロイダルシリカを混合して使用する。これにより導電性充填剤が充填された隙間にコロイダルシリカ粒子をより密に埋めることができ、硬化、焼成後の気体透過率の減少と、収縮率の減少に寄与する。
【0036】
本発明において、前記コロイダルシリカの混合物は、第1のコロイダルシリカと、前記第1のコロイダルシリカよりもメディアン径の小さいコロイダルシリカとからなり、前記第1のコロイダルシリカのメディアン径を100としたとき、メディアン径の小さいコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が50以下であることが好ましい。この粒径比が50を超えると、コロイダルシリカ粒子が密充填になりにくいため好ましくない。
【0037】
メディアン径の小さいコロイダルシリカとしては、メディアン径の粒径比が50以下のものであればよく、特に限定されず、前記第2または第3のコロイダルシリカのいずれか、または混合物であってもよく、さらには前記粒径比を満たす他のコロイダルシリカであってもよい。
【0038】
本発明において、前記コロイダルシリカの混合物が、メディアン径の異なる3種の混合物であり、具体的には、第1の種類のコロイダルシリカのメディアン径を100としたとき、第2のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が20〜50であり、第3のコロイダルシリカのメディアン径の粒径比が8〜20である混合物がとりわけ好ましい。
【0039】
また本発明が2種類または3種類のコロイダルシリカの混合物である場合、第1のコロイダルシリカのメディアン径は最大のメディアン径を有するものであって、そのメディアン径が70〜230nmであることが好ましい。この範囲より大きい径になると、バインダーとしての接着力が小さくなり、小さい径になると収縮率が大きくなるため好ましくない。
【0040】
本発明において、第1コロイダルシリカは、コロイダルシリカ混合物全体に占める割合が10質量%以上70質量%未満であることが好ましい。10質量%より小さいと収縮率が大きくなり、70質量%より大きいと接着力が小さくなるため好ましくない。
【0041】
また、本発明のコロイダルシリカが、第1のコロイダルシリカと、コロイダルシリカよりもメディアン径の小さいコロイダルシリカとからなる場合において、メディアン径の小さいコロイダルシリカとして、前記第2または第3のコロイダルシリカのいずれかを用いるときは、第2のコロイダルシリカは0〜50質量%、第3のコロイダルシリカは0〜70質量%であることが好ましい。ただし、第2のコロイダルシリカが0質量%のときは、第3のコロイダルシリカが0質量%よりも大きく、第3のコロイダルシリカが0質量%のときは、第2のコロイダルシリカが0質量%よりも大きい。これにより、第2のコロイダルシリカと第3のコロイダルシリカとは、混合物中に少なくとも一方が含まれるので、第2のコロイダルシリカと第3のコロイダルシリカの両方が、ともに0質量%となることはない。
【0042】
また、本発明のコロイダルシリカが、メディアン径の異なる3種の混合物である場合には、第2のコロイダルシリカは10〜50質量%、第3のコロイダルシリカは20〜70質量%であることが好ましい。
【0043】
本発明の導電性耐熱シール材料は、バインダーであるコロイダルシリカに加えて他のバインダーを含む。
他のバインダーとしては、アルカリ金属ケイ酸塩、リン酸塩化合物、ベントナイト、シランカップリング剤から選ばれる1種以上があげられる。
【0044】
アルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムまたはケイ酸リチウムを挙げることができる。このうち、ケイ酸リチウムが特に好ましい。添加量は、多くなると安定化が阻害される傾向になるので、安定性と改善したい接着力から添加量を決めるのが望ましい。
【0045】
またリン酸塩としては、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムなどを挙げることができ、このうち特にリン酸アルミニウムが好ましい。添加量は前記同様、安定性と改善したい接着力から添加量を決めるのが望ましい。
【0046】
さらに、本発明の導電性耐熱シール材料においては、ベントナイトまたはシランカップリング剤を含むことにより、導電性充填剤、とりわけ被覆セラミック粉の分散状態を改善することができ、これらの物質はバインダーとして、本発明の耐熱シール材料に粘性を付与し、あるいは本発明の耐熱シール材料を緻密化するという効果を奏する。
上記の他のバインダーは、1種類を用いてもよく、2種以上を適宜併用することもできる。
【0047】
本発明においては、できるだけ、密充填が可能なように導電性充填剤およびバインダーの粒径範囲を広く、選択する。この粒径範囲が狭いと密充填となりにくいため好ましくない。
【0048】
導電性耐熱シール材料としては、接着する基材に対し、熱膨張係数にできるだけ差がないように導電性耐熱シール材料自体の熱膨張係数を調整する必要があるが、導電性耐熱シール材料の熱膨張係数が高いときには、熱膨張係数の比較的大きいジルコニア粉末、結晶性シリカなどと組み合わせて調製することが可能である。
【0049】
また本発明の導電性充填剤においては、ガラス繊維または金属酸化物粉末を含む。
【0050】
本発明の導電性耐熱シール材料において、ガラス繊維を含むことにより、硬化後の微細クラックを防止することができる。この微細クラックは、耐ガス透過性を著しく劣化させるため、ガラス繊維を含むことにより、結果として耐ガス透過性を改善することができる。
【0051】
このガラス繊維の大きさは、通常、長さ10〜100μm、直径5〜20μmのものを用いる。その含有量は、導電性耐熱シール材料における全固形分に対し、5〜25質量%が好ましい。
【0052】
また金属酸化物微粉末は、1μm以下の粒径であり、凝集の少ないものが好ましい。これによりセラミック粒子の隙間を埋め、より密充填をすることができる。
【0053】
1μm以下の金属酸化物粉末は、強い粉砕によっても得られるが、一般的にこのような粉砕により得られたものは、凝集粒となっており、単一粒に分散することが極めて困難であるため好ましくない。
【0054】
強い粉砕によらない金属酸化物微粉末としては、アルミニウムアルコキシドの加水分解により製造されたアルミナ、CVD法(in situ chemical vapor deposition)によって製造されたアルミナおよび揮発性金属酸化物前駆体の熱分解により製造された金属酸化物微粉末などを挙げることができる。
【0055】
このアルミニウムアルコキシドの加水分解により製造されたアルミナとしては、高純度アルミナ、AKP−20(中心粒径0.46μm)、AKP−30(中心粒径0.20μm)、AKP−50(中心粒径0.20μm)、AKP−53(中心粒径0.18μm)、AKP−3000(中心粒径0.70μm)など(いずれも、住友化学株式会社製)を挙げることができる。
【0056】
またCVD法により製造されたアルミナとしては、アドバンストアルミナAA−03(中心粒径0.44μm)、AA−04(中心粒径0.50μm)、AA−05(中心粒径0.53μm)、AA−06(中心粒径0.83μm)など(いずれも、住友化学株式会社製)を挙げることができる。
【0057】
また揮発性金属酸化物前駆体の熱分解により製造された金属酸化物微粉末としては、ヒュームドシリカのAEROSIL90(比表面積90m/g)、AEROSIL130(比表面積130m/g)、AEROSIL150(比表面積150m/g)、AEROSIL200(比表面積200m/g)、AEROSIL255(比表面積255m/g)、AEROSIL300(比表面積300m/g)、AEROSIL380(比表面積380m/g)などを挙げることができ、ヒュームド金属酸化物のAEROXIDE−AluC(アルミナ、比表面積100m/g)、AEROXIDE−Alu65(アルミナ、比表面積65m/g)、AEROXIDE−Alu130(アルミナ、比表面積130m/g)、AEROXIDE−TiOP25(チタニア、比表面積50m/g)、AEROXIDE−TiOPF2(チタニア、比表面積57.5m/g)、AEROXIDE−TiOT805(チタニア、比表面積90m/g)、AEROXIDE−TiONKT90(チタニア、比表面積62.5m/g)など(いずれも、日本アエロジル株式会社製)を挙げることができる。
【0058】
これらは、使用目的に応じて、導電性耐熱シール材料中の含有量を適宜調整すればよいが、好ましい配合量は、前記高純度アルミナ、アドバンストアルミナの場合には導電性耐熱シール材料中に0.1〜5質量%、とりわけ0.5〜2質量%であるのが好ましく、ヒュームド金属酸化物の場合には、耐熱シール材料中に0.1〜5質量%、とりわけ0.5〜3質量%であるのが好ましい。
【0059】
本発明の導電性耐熱シール材料に用いる接着剤組成物は、例えば導電性充填剤、バインダー、およびその他の成分を適当な分散媒体中で、室温〜40℃で、混合することにより容易に製造することができる。分散媒体としては、水、エタノール、IPAなどがあげられるが、水が最も好ましい。
【0060】
バインダーであるコロイダルシリカは、通常、水に分散された水分散液として市販されているので、これを用いる場合には、このコロイダルシリカの水分散液に、導電性充填剤、バインダーおよびその他の成分を加えて混合することにより、本発明の導電性耐熱シール材料を調製することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
コロイダルシリカ(製品名ST−ZL、ST−40、ST−S、日産化学株式会社製)を用いて、SiO換算で、粒径70〜100nmのコロイダルシリカ16.9重量部と、20〜25nmのコロイダルシリカ4.8重量部と、8〜11nmのコロイダルシリカ2.5重量部を混合した。SiO濃度は、10重量%であった。これにさらに、ベントナイト0.26重量部を加えてバインダーとした。
【0063】
このバインダー100重量部(SiO換算)に、メディアン径10μmの銀被覆アルミナ粉末(東洋アルミ株式会社製 TFM−L10F 銀被覆量48%)60.4重量部、メディアン径40μmのガラスフリット粉末(日本フリット株式会社製 CK0061)3.8重量部、メディアン径5μmのアルミナ粉末(住友化学株式会社製 AM−21)11.3重量部を添加し混合しペースト状の導電性耐熱シール材料を製造した。
【0064】
このペーストを用いて形状φ30×2mmに成形し、150℃で30分間硬化した。さらに700℃で焼成した後、このサンプルの水素透過係数を測定した。評価は以下のようにして行った。
【0065】
水素透過係数の測定は、差圧法を用いて行った。
◎ 透過係数が1×10−15未満
○ 透過係数が1×10−15以上、5×10−15未満
△ 透過係数が5×10−15以上、1×10−14未満
× 透過係数が1×10−14以上
これらの結果については、表3に示す。
【0066】
収縮率の評価は、150℃で硬化後、700℃で焼成し、サンプルの寸法を測定し以下の式で線収縮率を求め、評価は以下のように行った。
(L150−L700)/L150×100%
◎ 収縮率が0.1%未満
○ 収縮率が0.1%以上、0.5%未満
△ 収縮率が0.5%以上、1.0%未満
× 収縮が1.0%以上
これらの結果については、表3に示す。
【0067】
体積抵抗の測定は、前記150℃、30分間硬化したものを、10mm×10mmのTPwp切り出し、500℃における体積抵抗を測定した。測定にはポテンショスタットReference600(GAMRY社製)を用いた。
【0068】
◎ 体積抵抗が0.1Ω・cm未満
○ 体積抵抗が0.1Ω・cm以上、0.5Ω・cm未満
△ 体積抵抗が0.5Ω・cm以上、1.0Ω・cm未満
× 体積抵抗が1.0Ω・cm以上
【0069】
前記ペーストによって20mm×10mmの2枚のSUS板を接着面積が1.0cm2となるように、また接着剤組成物の厚み180μmとなるようにして接着し、150℃、30分間加熱乾燥した後、オートグラフによって接着強度を決定した。
【0070】
◎ 接着強度が5.0MPa以上
○ 接着強度が3.0MPa以上、5.0MPa未満
△ 接着強度が1.0MPa以上、3.0MPa未満
× 接着強度が1.0MPa未満
【0071】
接着強度の測定は、オートグラフ装置(AGS−1000B、島津製作所製)を用いてせん断破壊することにより行った。
これらの結果については、表3に示す。
【0072】
(実施例2、実施例3)
バインダー、セラミック粉末等の組成を表1および2に示す。実施例1と同じ方法で気体透過率、収縮率、体積抵抗および接着強度を測定し、同じ方法で評価した。結果は表3に示す。
【0073】
(比較例1、比較例2)
バインダー、セラミック粉末等の組成を表1および2に示す。実施例1と同じ方法で気体透過係数、収縮率、体積抵抗および接着強度を測定し、同じ方法で評価した。結果は表3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】