【実施例1】
【0023】
次に,本発明の実施例を説明する。
図1において,1は海草・藻類,漁業における採取や養殖及びその加工で生じる藻類の残渣,2は木,竹,草,残滓(野菜屑等)の未分解の有機物,3は自然由来の木酢液又は竹酢液であり,藻類1と有機物2が十分に漬け込める適量を水槽4に収容している。
【0024】
・請求項1に記載してある木酢液又は竹酢液は極強酸性であり、その化学性の範囲はpHが3.5以下とする。
・上記の「適量」とは,120リットルを考慮するのではなく,藻類1と有機物2を混合した
ものを同量の自然由来の木酢液又は竹酢液3に漬け込むことを意味する。
(1) 自然由来の木酢液又は竹酢液とは、木,竹,草,残滓等の未分解の有機物を炭の製造過程で産出されるものである。
(2) 有機物に対する酢液の割合を次のとおりである。容量比で,藻類1と有機物2に対して木酢液又は竹酢液が0.5以上の割合である。
(3) 腐植及び腐植液(フルボ酸)は,酢液単独時よりもキレート作用が高いことから,糞尿や残滓に対して混合,散布することで消臭効果を発揮するように使用するものである。
(4) 腐植及び腐植液(フルボ酸)は,植物に対しては腐植液(フルボ酸)を希釈して散布し,その植物が生長している土壌に対しては散布,混合することで生長促進作用を有するのみならず,発芽の促進,耐病性の向上,耐乾燥性の向上,光合成の促進,代謝の促進,植物性酵素の活性化などの効果や,殺菌作用を有する。
【0025】
「具体的な施工例における施工順序」
(1) 水槽4に入れる藻類1と木,竹,草,残滓等の未分解の有機物2に対して,容量換算で50%以上の自然由来の木酢液又は竹酢液3をミキサー等の機器で混合する。
(2) そして,水槽4内に投入する当該有機物を木酢液又は竹酢液が有機物に染み込むのに5時間以上で腐植含有量が5%以上になるのに,最低で600時間にわたって木酢液又は竹酢液3に漬け込んで養生期間をおく。
【0026】
[効果確認試験]
アオサを用いて脱塩処理の予備試験を行った。試験はアオサ30kg(湿重量)をカゴに入れ水道水の流水で洗浄する方法とたらいに漬け込んで洗浄する方法の2ケース行った。試験の結果,漬け込み洗浄の方が確実に脱塩できたが流水洗浄でも撹拌してやることで十分に脱塩できることが確認された。生成実験は,120リットルの密閉できるタンクに木酢液,アオサ,バーク(木質)資材を入れ,アオサ脱塩処理の有無,木質資材(バーク資材)添加の有無を組合せた4ケースで行った。また,比較のため木酢液の代わりにpHがほぼ同じで海苔網の洗浄に使用している有機酸(グローゲン:第一製網(株)製)に脱塩していないアオサとバーク資材を入れたものでも試験を行った。
[表1a:実験ケース]
[表1b:比較ケース]
表1(a・b)において,脱塩処理をしていないアオサ(ケース2,4)はECの値が高い傾向があり,バーク資材を加えていないケース4では約3週間で測定限界値(EC=20mS/cm)を超えた。
なお,ケース5は実験開始1週間後にはpHも上昇し腐敗臭がしはじめ,その後もpHが上昇し約1ヶ月後にpHは,ほぼ中性の値を示し腐敗も進んでいた。
[表2:モニタリング結果(OR:測定限界値以上)]
上記表2に示す、腐敗したケース5を除き,各ケースよりサンプルを採取して分析試験を行った。
試料を赤外線吸収スペクトル(FT−IRスペクトル)分析し,既知のフルボ酸のFT−IRスペクトル(異なる5サンプル)との比較によりフルボ酸が生成されているかどうかの評価を行った。その結果,脱塩処理をせずバーク資材をいれたケース2においてフルボ酸と同様の化学構造を示しており,フルボ酸が生成されていることがわかった。
[表3:異なる5サンプルの赤外線吸収スペクトル(FT−IRスペクトル)]
[表4:サンプル2の赤外線吸収スペクトル(FT−IRスペクトル)]
ksw−FA(排かん水フルボ酸)の特徴である以下の(1)〜(5)の特徴が確認できている。
(1) 5サンプル全体に共通する3333cm-1での吸収を確認、CP,Ks,Kswと同様の高い吸収(水素結合したOH基に由来した吸収)
(2) 原かん水,排かん水に見られる2931cm-1での吸収を確認
(3) 1564cm-1での吸収を確認,Ksと同様の傾向(水素結合したカルボニル基と芳香族構造の共役C=Cに由来した二つの構造が貢献している。)
(4) 5サンプルに共通する1424cm-1付近の吸収スペクトルと1348cm-1のスペクトルの吸収を確認。(カルボキシル基のC-O伸縮振動とOHの変角振動に由来)
(5) 5サンプルに共通する662cm-1付近の小さい谷も確認。(芳香環上のC-H変角振動と推測)