特許第6559627号(P6559627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559627通信網の可用帯域を推定するシステム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559627
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】通信網の可用帯域を推定するシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/70 20130101AFI20190805BHJP
【FI】
   H04L12/70 Z
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-167994(P2016-167994)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-37782(P2018-37782A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】塩原 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岡廻 隆生
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−142622(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040006(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/174069(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/084334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−12/955
H04L 13/00−13/18
H04L 29/00−29/14
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される通信路を含む通信網において可用帯域を推定するシステムであって、
前記通信網を介してデータを送受信可能な送信装置及び受信装置を備え、
前記送信装置は、
一又は複数のパケットからなる複数のパケット群を含み前記一定の送信時間間隔(TTI)ごとに1つの該パケット群を有し且つ該パケット群のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するパケットトレインを生成するパケット生成部と、
前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の所定のパケットに送信時刻を付加する送信時刻付加部と、
前記送信時刻が付加されたパケットトレインを、前記通信網を介して前記受信装置へ送信するパケット送信部と、を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信されたパケットトレインを、前記通信網を介して受信するパケット受信部と、
前記受信したパケットトレインの各パケット群の受信時刻を記憶する受信時刻記憶部と、
前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の受信時刻とそのパケット群に付加されている送信時刻とに基づいて伝送遅延を計算する伝送遅延計算部と、
前記パケットトレインにおける前記パケット群の伝送遅延の変動に基づいて、前記可用帯域を計算する可用帯域計算部と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記可用帯域計算部は、前記パケットトレインの複数のパケット群のうち、前記伝送遅延の変動が発生し始めた直前に受信されたパケット群のパケットサイズ、又は、前記伝送遅延が減少しなくなったときに受信されたパケット群のパケットサイズを用いて、前記可用帯域を計算することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記パケット生成部は、前記パケット群の複数のパケットを連続して送信するように前記パケットトレインを生成することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記パケット生成部は、前記パケット群の複数のパケットを一定間隔で送信するように前記パケットトレインを生成することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのシステムにおいて、
前記複数のパケットのパケットサイズは一定サイズであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかのシステムにおいて、
前記複数のパケットのパケットサイズは上限サイズ内で可変であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットの数を第1優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第2優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6のシステムにおいて、
前記パケット群に含めるパケットの数が一定であり、
前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6のシステムにおいて、
前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第1優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットの個数を第2優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とするシステム。
【請求項10】
一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される通信路を含む通信網において可用帯域を推定する方法であって、
送信装置が、一又は複数のパケットからなる複数のパケット群を含み前記一定の送信時間間隔(TTI)ごとに1つの該パケット群を有し且つ該パケット群のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するようにパケットトレインを生成することと、
前記送信装置が、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の所定のパケットに送信時刻を付加することと、
前記送信装置が、前記送信時刻が付加されたパケットトレインを、前記通信網を介して受信装置へ送信することと、
前記受信装置が、前記送信装置から送信されたパケットトレインを、前記通信網を介して受信することと、
前記受信装置が、前記受信したパケットトレインの各パケット群の受信時刻を記憶することと、
前記受信装置が、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の受信時刻とそのパケット群に付加されている送信時刻とに基づいて伝送遅延を計算することと、
前記受信装置が、前記パケットトレインにおける前記パケット群の伝送遅延の変動に基づいて、前記可用帯域を計算することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10の方法において、
前記パケットトレインの複数のパケット群のうち、前記伝送遅延の変動が発生し始めた直前に受信されたパケット群のパケットサイズ、又は、前記伝送遅延が減少しなくなったときに受信されたパケット群のパケットサイズを用いて、前記可用帯域を計算することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10又は11の方法において、
前記パケット群の複数のパケットを連続して送信するように前記パケットトレインを生成することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10又は11の方法において、
前記パケット群の複数のパケットを一定間隔で送信するように前記パケットトレインを生成することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかの方法において、
前記複数のパケットのパケットサイズは一定サイズであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかの方法において、
前記複数のパケットのパケットサイズが上限サイズ内で可変であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15の方法において、
前記パケット群に含まれるパケットの数を第1優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第2優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15の方法において、
前記パケット群に含めるパケットの数が一定であり、
前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15の方法において、
前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第1優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットの個数を第2優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信網の可用帯域を推定するシステム及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送信装置から受信装置へパケットサイズが順次に線形増加または減少する複数の計測パケットを所定の送信間隔で送信し、送信装置から受信装置までの通信経路の利用可能帯域(以下「可用帯域」という。)を計測するネットワーク帯域計測方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、送信装置から送信された計測パケットを受信装置で受信して計測パケットの受信間隔を計測する。そして、可用帯域を超えた場合には、パケット詰まりによる遅延(以下「キューイング遅延」という。)が発生するためにパケット間隔が広がることにより可用帯域を推定できる。すなわち、受信間隔と送信間隔とが等しい計測パケットのうちでパケットサイズが最大の計測パケットを用いて可用帯域を計算している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ネットワーク帯域計測方法では、受信間隔の変動の原因がパケット詰まりによるキューイング遅延のみである通信網(例えば、有線の固定データ通信網)を想定した方法であり、以下に示すように一定の送信時間間隔でデータを送信する通信網(例えば、無線通信路を含む移動体通信網)については可用帯域を正確に測定することができないという課題がある。無線通信路を含む移動体通信網(例えば、LTE(Long Term Evolution)/LTE−Advanced(以下、「LTE/LTE−A」という。)を用いた移動体通信網)では、一定の送信時間間隔(TTI: Transmission Time Interval)毎に基地局から受信装置へデータが送信される。このとき、TTI毎の送信可能なデータ量(TBS: Transport Block Size)がパケットサイズよりも大きい場合は、複数のパケットを結合し、一度に送信する。このため、上記従来のネットワーク帯域計測方法で測定する受信間隔は、上記一定の送信時間間隔(TTI)毎のパケット送信のためのパケット送信待ち時間や上記パケットを結合するためのパケット結合処理時間によって変動し、上記のパケット送信待ち時間やパケット結合処理時間と、キューイング遅延を区別できない。従って、上記ネットワーク帯域計測方法では、送信装置から受信装置までの通信経路に移動体通信網を含む場合の可用帯域(以下「移動体通信網の可用帯域」という。)を正確に推定することができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係るシステムは、一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される通信路を含む通信網において可用帯域を推定するシステムであって、前記通信網を介してデータを送受信可能な送信装置及び受信装置を備え、前記送信装置は、前記一定の送信時間間隔(TTI)ごとに一又は複数のパケットからなる複数のパケット群を含み且つ該パケット群のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するパケットトレインを生成するパケット生成部と、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の所定のパケットに送信時刻を付加する送信時刻付加部と、前記送信時刻が付加されたパケットトレインを、前記通信網を介して前記受信装置へ送信するパケット送信部と、を備え、前記受信装置は、前記送信装置から送信されたパケットトレインを、前記通信網を介して受信するパケット受信部と、前記受信したパケットトレインの各パケット群の受信時刻を記憶する受信時刻記憶部と、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の受信時刻とそのパケット群に付加されている送信時刻とに基づいて伝送遅延を計算する伝送遅延計算部と、前記パケットトレインにおける前記パケット群の伝送遅延の変動に基づいて、前記可用帯域計算部と、を備える。
前記システムにおいて、前記可用帯域計算部は、前記パケットトレインの複数のパケット群のうち、前記伝送遅延の変動が発生し始めた直前に受信されたパケット群のパケットサイズ、又は、前記伝送遅延が減少しなくなったときに受信されたパケット群のパケットサイズを用いて、前記可用帯域を計算することを特徴とするシステム。
また、前記システムにおいて、前記パケット生成部は、前記パケット群の複数のパケットを連続して送信するように前記パケットトレインを生成してもよいし、前記パケット群の複数のパケットを一定間隔で送信するように前記パケットトレインを生成してもよい。
また、前記システムにおいて、前記複数のパケットのパケットサイズは一定サイズであってもよいし、上限サイズ内で可変であってもよい。
ここで、前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットの数を第1優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第2優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。また、前記パケット群に含めるパケットの数が一定であり、前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。また、前記前記パケット生成部は、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第1優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットの個数を第2優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。
【0005】
また、本発明の他の態様に係る方法は、一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される通信路を含む通信網において可用帯域を推定する方法であって、送信装置が、前記一定の送信時間間隔(TTI)ごとに一又は複数のパケットからなる複数のパケット群を含み且つ該パケット群のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するようにパケットトレインを生成することと、前記送信装置が、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の所定のパケットに送信時刻を付加することと、前記送信装置が、前記送信時刻が付加されたパケットトレインを、前記通信網を介して前記受信装置へ送信することと、受信装置が、前記送信装置から送信されたパケットトレインを受信することと、前記受信装置が、前記受信したパケットトレインの各パケット群の受信時刻を記憶することと、前記受信装置が、前記パケットトレインのパケット群ごとに、該パケット群の受信時刻とそのパケット群に付加されている送信時刻とに基づいて伝送遅延を計算することと、前記受信装置が、前記パケットトレインにおける前記パケット群の伝送遅延の変動に基づいて、前記可用帯域を計算することとを含む。
前記方法において、前記パケットトレインの複数のパケット群のうち、前記伝送遅延の変動が発生し始めた直前に受信されたパケット群のパケットサイズ、又は、前記伝送遅延が減少しなくなったときに受信されたパケット群のパケットサイズを用いて、前記可用帯域を計算してもよい。
また、前記方法において、前記パケット群の複数のパケットは連続して送信されてもよいし、前記パケット群の複数のパケットは一定間隔で送信されてもよい。
また、前記方法において、前記複数のパケットのパケットサイズは、一定サイズであってもよいし、上限サイズ内で可変であってもよい。
ここで、前記パケット群に含まれるパケットの数を第1優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第2優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。また、前記パケット群に含めるパケットの数が一定であり、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。また、前記パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第1優先として上限サイズの範囲内で順次増加又は減少させ、前記パケット群に含まれるパケットの個数を第2優先として上限個数の範囲内で順次増加又は減少させるように、前記パケットトレインを生成してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一定の送信時間間隔でデータが伝送される通信路を含む通信網において、可用帯域を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る送信装置及び受信装置を含む可用帯域推定システムの概略構成の一例を示す説明図。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ、比較例に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの一例を示す説明図、及び、そのパケットトレインが移動体通信網を介して受信装置で受信されるときのパケットトレインの一例を示す説明図。
図3】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの一例を示す説明図。
図4】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの他の例を示す説明図。
図5】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの更に他の例を示す説明図。
図6】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの更に他の例を示す説明図。
図7】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレインの更に他の例を示す説明図。
図8】本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける移動体通信網の可用帯域の推定手順の一例を示すシーケンスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、可用帯域を推定する通信網がLTE/LTE−Aを用いた移動体通信網である場合について説明するが、可用帯域を推定する通信網は、一定の送信時間間隔でデータが伝送される通信網であれば、他の移動体通信システムを用いた移動体通信網または、移動体通信網以外の通信網であってもよい。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る送信装置及び受信装置を含む可用帯域推定システムの概略構成の一例を示す説明図である。
本実施形態に係る可用帯域推定システムは、一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される無線通信路を含む移動体通信網200を介してデータを送受信可能な複数の送信装置110及び受信装置120を備え、移動体通信網200の可用帯域を推定するシステムである。送信装置110及び受信装置120は例えばNTP(Network Time Protocol)などを利用して時間同期されていてもよい。また、送信装置110及び受信装置120は、通信機能を有するパーソナルコンピュータやサーバなどのコンピュータ装置であってもよいし、移動通信網200の基地局や移動局(ユーザ装置)であってもよい。
【0010】
ここで、「可用帯域」(実行速度、スループット)は、移動体通信網200の物理的な通信容量である物理帯域(例えば100Mbps)のうち、利用中の帯域(例えば30Mbps)を除く、使用可能な帯域(例えば70Mbps)である。また、通信網が複数の通信路から構成される場合における通信網の可用帯域とは、複数の通信路の中で最も可用帯域が低い通信路の可用帯域である。(最も可用帯域が低い通信路のことをボトルネックと呼ぶ。一般的に、移動体通信網においては無線通信路がボトルネックとなる。)一定の送信時間間隔(TTI)でデータが伝送される無線通信路を含む移動体通信網200において、無線通信路がボトルネックになる場合の可用帯域を前述の特許文献1に記載されている従来方法で推定しようとしても、次のように精度よく推定することができない。
【0011】
図2(a)及び(b)はそれぞれ、比較例に係る可用帯域推定システムにおける送信装置から送信されるパケットトレイン400の一例を示す説明図、及び、そのパケットトレイン400が移動体通信網を介して受信装置で受信されるときのパケットトレイン400の一例を示す説明図である。
図2(a)に示すように、本比較例の可用帯域推定システムで用いられるパケットトレイン400は、パケットサイズが順次に線形増加する複数のパケット411で構成され、この複数のパケット411が所定の送信間隔ΔTで送信される。そして、送信装置から送信されたパケットトレイン400を受信装置で受信してパケット411の受信間隔を計測し、受信間隔と送信間隔とが等しいパケット411のうちでパケットサイズが最大のパケット411を用いて可用帯域を計算している。すなわち、パケット411の受信間隔の変動に基づいて可用帯域を推定している。
【0012】
しかしながら、上記比較例に係る可用帯域推定システムにおいて、送信装置から送信されたパケットトレイン400が、一定の送信時間間隔(TTI)でデータを送信する移動体通信網を介して受信装置に受信される場合、図2(b)に示すように互いに隣り合う複数のパケット411が結合され一度に送信されるため、一定の送信時間間隔(TTI)毎に隣り合う複数のパケット411がまとめて受信される。このため、受信装置で測定する受信間隔が、上記一定の送信時間間隔(TTI)毎のパケット送信のためのパケット送信待ち時間や上記パケットを結合するためのパケット結合処理時間によって変動する。すなわち、パケット詰まりによるキューイング遅延と、上記のパケット送信待ち時間やパケット結合処理時間を区別できないため、移動体通信網の可用帯域を精度よく推定することができない。
【0013】
そこで、本実施形態では、以下に示すように、送信装置110から受信装置120に送信するパケットトレインとして、一定のTTI(LTE/LTE−Aでは1ms)ごとに一又は複数のパケットからなる複数のパケット群310を含み且つそのパケット群310のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するパケットトレイン300を生成して用いることにより、移動体通信網200の可用帯域を精度よく推定できる。
【0014】
図1において、送信装置110は、パケット生成部112と送信時刻付加部114とパケット送信部116とを備える。パケット生成部112は、後述のように、一定のTTIごとに一又は複数のパケットからなる複数のパケット群を含み且つそのパケット群のパケットサイズの合計が順次増加又は減少するパケットトレイン300を生成する。送信時刻付加部114は、パケットトレイン300のパケット群ごとに、パケット群の所定のパケット(例えば、パケット群の先頭のパケット)に送信時刻を付加する。パケット送信部は、移動体通信網200を介して受信装置120に、送信時刻を付加したパケットトレイン300を送信する。
【0015】
受信装置120は、パケット受信部122と受信時刻記憶部124と伝送遅延計算部126と可用帯域計算部128とを備える。パケット受信部122は、移動体通信網200を介して送信装置110から送信されたパケットトレイン300を受信する。受信時刻記憶部124は、パケット受信部122で受信したパケットトレイン300の各パケット群の受信時刻を記憶する。伝送遅延計算部126は、パケットトレインのパケット群ごとに、パケット群の受信時刻とそのパケット群に付加されている送信時刻とに基づいて伝送遅延を計算する。可用帯域計算部128は、パケットトレイン300におけるパケット群の伝送遅延の変動に基づいて、移動体通信網200の可用帯域を計算する。
【0016】
図3は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置110から送信されるパケットトレイン300の一例を示す説明図である。
図3のパケットトレイン300は、TTIごとに一又は複数のパケット311からなる複数のパケット群310を含み且つそのパケット群310のパケットサイズの合計が1パケット単位で順次増加するように構成されている。すなわち、図示の例では、TTIごとに、パケット群310に含まれるパケット311の個数が1個ずつ増えるように、パケットトレイン300が構成されている。また、各パケット群310の先頭のパケット311には送信時刻が付加される。そして、送信装置110から送信されたパケットトレイン300が移動体通信網200を介して受信装置120に受信される。このとき、パケット群の間には予めTTIの間隔があいているため、パケット群の合計サイズがTBSを超えなければ、パケット送信待ち時間やパケット結合処理時間の影響を受けず、パケット群の間隔はTTIで変わらない。一方、パケット群の合計サイズがTBSを超える場合には、パケット詰まりが発生するため、TBSを超えた部分が以降のTTIで送信され、パケット群の間隔がTTIの2倍またはそれ以上に広くなる。以上により、TTI毎に送信する無線区間が含まれていても、パケット詰まりにより発生するキューイング遅延のみを検知することができるため、正確な可用帯域の推定が可能である。
【0017】
図4は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置110から送信されるパケットトレイン300の他の例を示す説明図である。
図3のパケットトレイン300では、複数のパケット311が含まれるパケット群310のそれぞれにおいて、複数のパケット311は連続して送信されているが、図4のパケットトレイン300に示すように、パケット群310のそれぞれにおいて、複数のパケット311は一定間隔T0で送信してもよい。
【0018】
図5は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置110から送信されるパケットトレイン300の更に他の例を示す説明図である。
図5の例では、パケット群310に含まれるパケット312aの数を第1優先として上限個数(図示の例では3個)の範囲内で順次増加させている。そして、パケット群に含まれるパケットのパケットサイズを第2優先として上限サイズ(図示の例では例えば2ΔP)の範囲内で順次ΔP増加させるように第1のパケットサイズ(例えばΔP)のパケット312aを第2のパケットサイズ(例えば2ΔP)のパケット312bに入れ替えている。
【0019】
図6は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置110から送信されるパケットトレイン300の更に他の例を示す説明図である。
図6の例では、パケット群310に含めるパケットの数が一定(図示の例では3個)であり、パケット群310に含まれるパケット313a〜313eのパケットサイズを上限サイズの範囲内で順次増加させるように、パケットトレイン300を生成している。
【0020】
図7は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける送信装置110から送信されるパケットトレイン300の更に他の例を示す説明図である。
図7の例では、パケット群310に含まれるパケット313a〜313cのパケットサイズを第1優先として上限サイズ(例えば3ΔP)の範囲内で順次ΔP増加させている。そして、パケット群310に含まれるパケットの個数を第2優先として上限個数の範囲内で順次増加させるように、パケットトレイン300を生成してもよい。例えば、図7に示すように、パケット群310の1番目のパケットのサイズをパケット313a〜313cのように増加させ、1番目のパケット313cのサイズが上限サイズに達したら、2番目のパケットを追加し、その2番目のパケットのサイズをパケット313a〜313cのように増加させていく。
【0021】
以上示した図3図7のパケットトレイン300のいずれにおいても、TTIごとに送信される複数のパケット群310のパケットサイズの合計を順次増加させることができる。
【0022】
なお、図3図7のパケットトレイン300の例では、パケット群310のパケットサイズの合計が順次増加するようにパケットトレイン300を生成しているが、パケット群のパケットサイズの合計が順次減少するようにパケットトレイン300を生成してもよい。
【0023】
図8は、本実施形態に係る可用帯域推定システムにおける移動体通信網の可用帯域の推定手順の一例を示すシーケンスフロー図である。
図8において、まず、送信装置110は、図3図7に例示したいずれかのパケットトレイン300を生成し(S101)、パケットトレイン300に含まれる複数のパケット群310(1),310(2),・・・,310(n),・・・,310(N)のそれぞれの先頭のパケットに送信時刻(送信予定時刻)t1(1),t1(2),・・・,t1(n),・・・,t1(N)を付加する(S102)。ここで、パケット群310(n)及びt1(n)はパケットトレイン300の先頭からn番目のパケット群及びその送信時刻である。また、Nはパケットトレイン300に含まれるパケット群の総数である。また、パケット群310(1),310(2),・・・,310(n),・・・,310(N)のそれぞれのパケットサイズの合計[byte]を、S(1),S(2),・・・,S(n),・・・,S(N)とする。
【0024】
次に、送信装置110は、移動体通信網200を介して受信装置120にパケットトレイン300を送信する(S103)。具体的には、パケットトレイン300に含まれる複数のパケット群310(1),310(2),・・・,310(n),・・・,310(N)のそれぞれについて、送信時刻(送信予定時刻)t1(1),t1(2),・・・,t1(n),・・・,t1(N)が到来したら順次送信する。
【0025】
一方、受信装置120は、移動体通信網200を介して送信装置110から送信されたパケットトレイン300を受信し、受信したパケットトレイン300の各パケット群310(1),310(2),・・・,310(n),・・・,310(N)の先頭のパケットの受信時刻t2(1),t2(2),・・・,t2(n),・・・,t2(N)を記憶する(S201)。
【0026】
次に、受信装置120は、パケットトレイン300のパケット群310(n)ごとに、パケット群310(n)の受信時刻t2(n)とそのパケット群310(n)に付加されている送信時刻t1(n)とに基づいて伝送遅延DT(n)[s]計算する(S202)。伝送遅延DT(n)は、例えば次式(1)により計算することができる。
【数1】
【0027】
次に、受信装置120は、パケットトレイン300におけるパケット群の伝送遅延DT(n)の変動に基づいて、移動体通信網200の可用帯域A[bps]を計算する(S203)。具体的には、パケットトレイン300の複数のパケット群310のうち、伝送遅延の変動が発生し始めた直前に受信されたパケット群が第n番目のパケット群310(n)であり、そのパケットサイズがS(n)[byte]であり、移動体通信網200でのデータの送信時間間隔がTTI[s]であるとすると、移動体通信網200の可用帯域A[bps]は次式(2)を用いて計算することができる。
【数2】
【0028】
以上、上記実施形態によれば、移動体通信網200を介して送信装置110から受信装置120に、上記所定のパケット群310を含むパケットトレイン300を送信することにより、実トラフィックへの影響を抑制しつつ移動体通信網200の可用帯域を推定することができる。
【0029】
なお、伝送遅延DT(n)の計算(S202)および可用帯域Aの計算(S203)は、パケット群310(N)の受信後に行ってもよいし、各パケット群310(n)が受信するたびに行ってもよい。
【0030】
また、パケット群のパケットサイズの合計が順次減少するようにパケットトレイン300を生成して送信する場合は、パケットトレイン300の複数のパケット群310のうち、伝送遅延が低下しなくなったとき(変動しなくなったとき)に受信されたパケット群のパケットサイズSを用いて、上記式(2)により、移動体通信網200の可用帯域Aを計算することができる。
【0031】
また、本明細書で説明された送信装置110及び受信装置120等における処理工程及び構成要素は、前述の手段のほか、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの処理工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0032】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、NodeB、サーバ、ゲートウェイ、交換機、コンピュータ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0033】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0034】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0035】
110 送信装置
112 パケット生成部
114 送信時刻付加部
116 パケット送信部
120 受信装置
122 パケット受信部
124 受信時刻記憶部
126 伝送遅延計算部
128 可用帯域計算部
200 移動体通信網
300 パケットトレイン
310 パケット群
311 パケット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2015−062322号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8