【文献】
鹿工技ニュース,2009年,No. 84,p. 5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら本発明の説明のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
図1は、本発明の醤油風調味料の製造工程を示すフロー図である。ここで、本発明において、醤油風調味料とは、以下に詳細に説明するように、醤油と類似の風味をもちながら、しかもこれに加えて従来の醤油では発揮できない独特の風味をも有している馬鈴薯蛋白質由来の調味料を意味するものとする。
醤油風調味料の製造が開始されると、先ず、ステップS1(図ではST1と表記)において、原料の仕込みを行い、ステップS2へ進む。原料は、馬鈴薯から抽出した蛋白質(以下、馬鈴薯蛋白質と呼ぶ)であり、これに塩酸と水を加えたものを原料液と呼ぶ。
ステップS2において、原料液から馬鈴薯蛋白質の塩酸分解を行い、ステップS3へ進む。塩酸分解は、所定の温度で所定時間行う。塩酸分解は、原料液を煮沸して行ってもよい。ステップS2において馬鈴薯蛋白質に付着している微生物等は殺菌される。
【0016】
ステップS3において、塩酸分解を行った容器から中和容器に原料液の移動を行い、ステップS4,S5へ進む。
【0017】
ステップS4において、塩酸分解を行った馬鈴薯蛋白質の中和を行い、ステップS5へ進む。
【0018】
ステップS4の中和工程では、中和剤としてアルカリ性薬品、例えばソーダ灰を添加し、ステップS5へ進んでもよい。
【0019】
ステップS5において、所定のpH範囲に収まるようにpH調整を行い、ステップS6へ進む。pHは、希釈した酸性溶液及びアルカリ溶液を用いて調整すればよい。
【0020】
ステップS6において、食塩を投入し食塩濃度を調整する、食塩投入と濃度調整の工程を行ったら、ステップS7,ステップS8へ進む。
【0021】
ステップS7において、発酵容器に麹を投入し、ステップS8において所定の期間、例えば1ケ月、さらには1ケ月以上発酵を行い、ステップS9へ進む。
【0022】
ステップS9において、発酵を停止して得た発酵液を濾過し、ステップS10において、醤油風調味料を得ることで、工程が終了する。濾過は、発酵液中から米麹等の固形分を除去し、液体の醤油風調味料を得る工程である。濾過は、篩、フィルタやこれらの組合せで行うことができる。
【0023】
麹としては、小麦麹、大麦麹、米麹や馬鈴薯麹を使用することができる。しかしながら、ノンアレルギーの醤油風調味料を得るためには、アレルゲンを含有しない米麹、馬鈴薯、大麦麹の何れか一つ又はこれらの組合せを使用すればよい。
【0024】
図2は、本発明の醤油風調味料の別の製造工程を示すフロー図である。
醤油風調味料の製造が開始されると、先ず、ステップS21において、原料の仕込みを行い、ステップS22へ進む。原料は、ステップS1と同様に、馬鈴薯蛋白質とし、これに塩酸と水を加えて原料液とする。
【0025】
ステップS22において、原料液から馬鈴薯蛋白質の塩酸分解を行い、ステップS23へ進む。
【0026】
ステップS23において、塩酸分解を行った原料液の冷却を行い、ステップS24,25へ進む。
【0027】
ステップS24において、塩酸分解を行った容器に中和剤としてアルカリ性薬品、例えばソーダ灰を添加し、ステップS25へ進む。
【0028】
ステップS25において、水を添加し、水の量の調整、つまり加水調整を行い、ステップS26へ進む。ステップS26においてpH調整を行う。
【0029】
ステップS27において、後述する第1の酵素反応を行うために、所定の温度となるように液温調整とpH確認を行い、ステップS28へ進む。
【0030】
ステップS28において、所定の温度で所定時間の第1の酵素反応を行い、ステップS29へ進む。
ここで、第1の酵素反応に用いる酵素は、馬鈴薯蛋白質からアミノ酸を抽出する酵素を選定する。このような酵素としては、エンド型プロテアーゼやエキソ型プロテアーゼを用いることができる。ステップS27で測定するpH値は、第1の酵素反応に用いる酵素の反応に適した値であるかを確認し、必要に応じてpH値を酵素の反応に適したpH値に調整すればよい。
【0031】
ステップS29において、後述する第2の酵素反応を行うために、液温の調整とpHを酸性にするために塩酸等を添加してpH調整を行い、ステップS30へ進む。
ステップS30において、原料液に酵素を添加し、第2の酵素反応を行い、ステップS31へ進む。
ここで、ステップS30の第2の酵素反応に用いる酵素は、馬鈴薯蛋白質からアミノ酸に分解する酵素であって、第1の酵素反応で用いる第1の酵素とは異なる第2の酵素とすることができる。このような酵素としては、第1の酵素反応にエンド型プロテアーゼを用いた場合には、第2の酵素にエキソ型プロテアーゼを用いることができる。また、第2の酵素反応では、エンド型プロテアーゼとエキソ型プロテアーゼを同時に用いてもよい。ステップS29で測定するpH値は、第2の酵素反応に用いる酵素の反応に適した値であるかを確認し、必要に応じてpH値を酵素の反応に適したpH値に調整すればよい。
【0032】
ステップS31において、第2の酵素反応を行った容器から発酵容器に原料液の移動と原料液の量(体積)の測定を行い、ステップS32へ進む。酵素反応工程を追加することにより、馬鈴薯蛋白質からアミノ酸に分解され、蛋白分解率を向上させることができる。蛋白分解率の向上により醤油風調味料の旨味を増すことができる。ここで、中和工程と食塩添加工程との間で行う酵素反応工程は、1種類以上の酵素を用いた1回の酵素反応工程で行ってもよい。
ステップS32において、発酵容器に中和剤としてアルカリ性薬品、例えば苛性ソーダを添加し、所定のpH範囲に収まるようにpH調整を行い、ステップS33へ進む。
【0033】
ステップS33において、食塩濃度を測定し、ステップS34,S35へ進む。ステップS34において、食塩濃度を調整する。ステップS35において、液温調整を行い、発酵容器に麹を投入し、ステップS36へ進む。
【0034】
ステップS36において所定の期間、例えば1ケ月、さらには1ケ月以上発酵を行い、ステップS37へ進む。
【0035】
ステップ37において、発酵を停止して得た発酵液を濾過し、ステップS38において、醤油風調味料を得ることで、一連の工程が終了する。
【0036】
前記発酵工程の後で濾過工程を行い、さらにその後、pH調整工程、食塩調整工程、全窒素調整工程から選ばれる何れか一つ又はこれらの組合せた工程を行ってもよい。
本発明の醤油風調味料は馬鈴薯蛋白質由来であって、後述するホルモール窒素(F−N)と全窒素(T−N)との比である蛋白分解率(F−N/T−N)を、40〜60%とすることができる。
【0037】
本発明の醤油風調味料によれば、従来の醤油よりも旨味の高い独特の風味を有する調味料が得られる。また、旨味、塩味、全窒素、色度等の調整により従来の醤油と同等の醤油風の味覚と色みに調整し得る調味料やノンアレルギーの醤油が得られる。
【0038】
本発明の醤油風調味料の製造方法によれば、水に溶け難い馬鈴薯蛋白質から従来の醤油よりも旨みの高い醤油風調味料を容易に製造することができる。さらに、醤油風調味料は、アレルゲンを含まない、馬鈴薯蛋白質と発酵に米麹等を用いることによりノンアレルギーの醤油風調味料を容易に製造することができる。
次に、醤油風調味料の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
図1に示したフロー図により実施例1の醤油風調味料を製造した。各ステップの緒条件を以下に示す。
ステップS1:原料の仕込みの詳細を下記に示す。
水:1890mL
塩酸(3規定):630mL
馬鈴薯蛋白質:1000g
ステップS2:上記原料液を3時間沸騰した。
ステップS3,S4:塩酸分解を行った原料液を中和容器に移動し、ソーダ灰を290g添加した。pHは、3.16であった。
ステップS5:中和のため苛性ソーダを、112g添加し、pHを、3.16〜7.02にした。
ステップS6:食塩を130g添加し、原料液の食塩濃度を、11.29%から13.9%に調整した。
ステップS7:米麹を、対液重量として12.6%(下記表1のAに対応)、17.6%(下記表1のBに対応)、22.6%(下記表1のCに対応)の3種類にして、25℃で1ケ月間発酵させた。
ステップS8,S9:発酵液を濾過して、実施例1の醤油風調味料を得た。
【0040】
実施例1で得た醤油風調味料の分析を行った。実施例1の醤油風調味料の分析値を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
水分は赤外線水分計(株式会社ワイエムシィ製、IB−30型)により、pHはpHメータ(東亜電波工業株式会社製、HM−30G)により、糖度(以下、Brixと呼ぶ)は糖度計(アタゴ株式会社製、APAL−1)により、比重は、重量と体積により、食塩濃度は塩分分析計(東亜ディーケーケー株式会社製、SAT−210)により、全窒素(T-N)はケルダール法により、ホルモール窒素(F-N)は、ホルモール滴定法により、色度は、醤油比色用標準液との比較により測定した。
【0043】
実施例1のAの醤油風調味料の米麹は対液重量が12.6%であり、水分が65.7%、pHが6.33、Brixが43.9、色度が2以下、比重が1.298、食塩濃度が14.98g/dL(デシリットル)、全窒素(T−N)が2.03%、ホルモール窒素(F−N)が0.94%、F−N/T−Nが46.3%であった。
【0044】
実施例1のBの醤油風調味料の米麹は対液重量が17.6%であり、水分が、64.9%、pHが6.22、Brixが45.1、色度が2以下、比重が1.213、食塩が14.30g/dL(デシリットル)、全窒素(T−N)が1.96%、ホルモール窒素(F−N)が0.89%、F−N/T−Nが45.4%であった。
【0045】
実施例1のCの醤油風調味料の米麹は対液重量が22.6%であり、水分が、58.7%、pHが6.14、Brixが52.3、色度が2以下、比重が1.254、食塩が15.96g/dL(デシリットル)、全窒素(T−N)が2.12%、遊離態窒素(F−N)が0.95%、F−N/T−Nが44.8%であった。
【実施例2】
【0046】
図2に示したフロー図により実施例2の醤油風調味料を製造した。各ステップの緒条件を以下に示す。
ステップS21:原料の仕込みの詳細を下記に示す。
水:29L
塩酸(3規定):9.5L
馬鈴薯蛋白質:15kg
ステップS22:原料液を3時間沸騰した。撹拌はしなかった。
ステップS23:原料液を60℃程度まで冷却した。
ステップS24:ソーダ灰を4.4kg添加した。pHは、3.62であった。
ステップS25:加水調整のため、水を5L(リットル)追加し、液量を48Lとした。
ステップS26:中和のため苛性ソーダを1.7kg添加し、pHを、7.5〜8.0にした。
ステップS27:液温が61.3℃であり、pHが8.05であることを確認した。
ステップS28:マルチフェクトPR6L(ジェネンコア社製)を50g添加し、温度を58〜62℃とし、pHを7.5〜8.0とし、3時間の一次酵素反応を行った。マルチフェクトPR6Lは、エンド型プロテアーゼである。
【0047】
ステップS29:次に、HClを1.55L添加し、pHを8.5から5.39にし、液温48.7℃とした。
ステップS30:プロテアーゼM(天野エンザイム社製)を50g添加し、温度を48〜50℃とし、pHを5.0〜5.5とし、16時間の二次酵素反応を行った。プロテアーゼMは、エキソ型プロテアーゼである。
ステップS31:液46Lをステンレス製の容器に移動した。
ステップS32:中和のため苛性ソーダを、225g添加し、pHを5.44〜6.76にし、さらにpHをほぼ中性の6.8〜7.2に調整した。
ステップS33:食塩濃度を測定し、12.93%であった。
ステップS34:食塩(並塩)を1.1kg添加し、原料液の食塩濃度を、12.93%から14.61%に調整した。
ステップS35,36:液温を25℃に調整し、米麹(トモエ、甘こうじY)を、対液重量として22.6%とし、1ケ月間発酵させた。
ステップS37,S38:発酵液を濾過して、実施例2の醤油風調味料を得た。
【0048】
実施例2の醤油風調味料の分析を行った。実施例2の醤油風調味料の分析値を表2に示す。分析方法は実施例1と同じである。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例2の醤油風調味料の米麹は対液重量が22.6%であり、水分が63.6%、pHが5.70、Brixが47.0、色度が2以下、比重が1.226、食塩濃度が14.50g/dL(デシリットル)、全窒素(T−N)が1.94%、ホルモール窒素(F−N)が1.01%、F−N/T−Nが52.1%であった。
【0051】
(比較例1)
比較例1の醤油風調味料として、塩酸分解を行わないで、酵素分解と米麹による発酵により醤油風調味料を製造した。
図3は、比較例1の醤油風調味料の製造工程を示すフロー図である。
醤油風調味料の製造が開始されると、先ず、ステップS51において、原料の仕込みを行い、ステップS52へ進む。原料は、ポテトから抽出した蛋白質(以下、馬鈴薯蛋白質と呼ぶ)と、塩酸と水にpH調整のアルカリとして苛性ソーダを添加した。
ステップS52において、原料液の攪拌混合をし、pHを測定し、ステップS53へ進む。
【0052】
ステップS53において、原料液の加熱殺菌を行い、ステップS54へ進む。
【0053】
ステップS54において、温度調整とpH調整を行い、ステップS55へ進む。ステップS55において、酵素を添加し一次酵素反応を行い、ステップS56へ進む。
【0054】
ステップS56において、pH調整を行い、ステップS57へ進む。ステップS57において、酵素を添加し二次酵素反応を行い、ステップS58へ進む。
【0055】
ステップS58において、発酵容器に麹を投入し、所定の期間発酵を行い、ステップS59へ進む。
【0056】
ステップS59において、発酵を停止した得た発酵液を濾過し、ステップS60において、比較例1の醤油風調味料を得、工程が終了する。
【0057】
図3に示したフロー図により比較例の醤油風調味料を製造した。各ステップの緒条件を以下に示す。
ステップS51:原料の仕込みの詳細を下記に示す。
水:3250mL
馬鈴薯蛋白質:325g
苛性ソーダ:3.0g
ステップS52:原料液を攪拌混合し、pHを8.0±0.3の範囲に調整した。pHの測定値は7.73であった。
ステップS53:原料液を80〜85℃に加熱し、殺菌を行った。
ステップS54:苛性ソーダを1.4g添加し、pHを、7.10から7.89に調整した。原料液を60±2℃とし、pHが8.0±0.3であることを確認した。
ステップS55:マルチフェクトPR6L(ジェネンコア社製)を1100mg(対原料0.34%)添加し、温度を60±2℃とし、1時間の一次酵素反応を行った。
ステップS56:苛性ソーダを0.1g添加し、pHを、6.77から6.80に調整し、最終的にpHを7.0±0.2の範囲に調整した。
ステップS57:マルチフェクトPR6L(ジェネンコア社製)1100mg(対原料0.34%)と、フレーバーザイム1000L(ノボザイムズ社製)550mg(対原料0.17%)を添加し、温度を60±2℃とし、15時間以上の二次酵素反応を行った。フレーバーザイム1000Lは、エキソ型プロテアーゼである。
【0058】
ステップS58:米麹を、対液重量として15.0%とし、液温を25℃に調整し、1ケ月間発酵させた。
ステップS59,S60:発酵液を濾過して、比較例1の醤油風調味料を得た。
【0059】
比較例1の醤油風調味料の分析を行った。比較例1の醤油風調味料の分析値を表3に示す。分析方法は実施例1と同じである。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、比較例1の醤油風調味料の米麹は対液重量が15.0%であり、水分が70.3%、pHが5.75、Brixが37.4、色度が43、比重が1.202、食塩濃度が18.66g/dL(デシリットル)、全窒素(T−N)が0.52%、ホルモール窒素(F−N)が0.29%、F−N/T−Nが55.8%であった。
原料の馬鈴薯蛋白質は水に溶け難く、比較例1の醤油風調味料は、実施例1及び実施例2の醤油風調味料に比較して、全窒素(T−N)の割合が低いため、全窒素の収率が低下した。これにより、比較例1の醤油風調味料は、実施例1及び実施例2の醤油風調味料に比較して、色が薄く、後述する味覚も劣るものであった。
【0062】
(味覚試験)
実施例1及び実施例2の醤油風調味料と、比較例2として市販の濃口醤油と、比較例3として市販のノンアレルギーの醤油風調味料であるエゴマ醤油の味覚試験を行った。
味覚試験用の実施例1及び実施例2の醤油風調味料に加え、実施例1,2で得た醤油風調味料を比較例2の濃口醤油の分析値に合わせて水分、塩分、全窒素の値を調整し、それぞれ実施例3,4の醤油風調味料を作製した。その際、実施例3及び4の醤油風調味料は、大豆原料の醤油と比べて、風味が淡泊なことから全窒素の値を高めに調整した。
【実施例3】
【0063】
実施例3は、実施例1の醤油風調味料の水分、塩分、全窒素の値を調整し、比較例2の濃口醤油の分析値に合わせた醤油風調味料である。
【実施例4】
【0064】
実施例4は、実施例2の醤油風調味料の水分、塩分、全窒素の値を調整し、比較例2の濃口醤油の分析値に合わせた醤油風調味料である。
【0065】
比較例2の濃口醤油の分析値に合わせて水分、塩分及び全窒素の値を調整した実施例3及び4の醤油風調味料と、比較例2の濃口醤油と、比較例3のエゴマ醤油の分析を行った。分析値を表4に示す。分析方法は実施例1と同様である。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示すように、実施例3の醤油風調味料では、水分が65.5%、pHが5.0、色度が2以下、Brixが43.3、比重が1.212、食塩濃度が15.24g/dL、全窒素が理論計算値で1.56%、ホルモール窒素が理論計算値で0.78%、F−N/T−Nが50.0%であった
【0068】
実施例4の醤油風調味料では、水分が64.8%、pHが5.0、色度が2以下、Brixが44.9、比重が1.218、食塩濃度が15.17g/dL、全窒素が1.53%、ホルモール窒素が0.76%、F−N/T−Nが50.1%であった。
【0069】
比較例2の濃口醤油では、水分が72.3%、pHが4.75、色度が12、Brixが34.8、比重が1.163、食塩濃度が15.32g/dL、全窒素が1.29%、ホルモール窒素が0.76%、F−N/T−Nが58.9%であった。
【0070】
比較例3のエゴマ醤油では、水分が73.3%、pHが5.26、色度が13、Brixが34.3、比重が1.170、食塩濃度が16.92g/dL、全窒素が0.63%、ホルモール窒素が0.41%、F−N/T−Nが65.1%であった。
【0071】
(味覚センサーによる測定)
次に、実施例1〜4の醤油風調味料と、比較例2の濃口醤油と、比較例3のエゴマ醤油の味覚センサー(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー社製、味認識装置、TS−5000Z)による測定を行った。
【0072】
実施例1〜4の醤油風調味料と、比較例2の濃口醤油と、比較例3のエゴマ醤油を味覚センサーで測定した結果を
図4〜
図7及び表5に示す。測定した味覚は、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、苦味、渋味、旨味コクであり、比較例2の濃口醤油を基準とした。表5は、味覚センサーで測定した結果であり、+、−共に人の舌で感じられる差は、0.5以上が目安となる。表において太線の箇所は、その対応する味覚が比較例2よりも良好であることを示している。
【0073】
【表5】
【0074】
図4は、実施例1,3及び比較例2の醤油の旨味を示すレーダーチャートである。
図4に示すように、実施例1,3の醤油風調味料は、成分調整の有無に関わらず何れも比較例2の濃口醤油よりも、旨味が高いことがわかる。
【0075】
図5は、実施例2,4及び比較例2の醤油の旨味を示すレーダーチャートである。
図5に示すように、実施例2,4の醤油風調味料も実施例1と同様に、成分調整有りのほうが比較例2の濃口醤油よりも、旨味が高いことがわかる。
【0076】
図6は、比較例2の濃口醤油と比較例3のエゴマ醤油の旨味を示すレーダーチャートである。
図6に示すように、エゴマ醤油は、比較例2の濃口醤油よりも、旨味と塩味が高いことがわかる。
【0077】
図7は、実施例3及び4の成分調整をした醤油風調味料と、比較例2の濃口醤油と、比較例3のエゴマ醤油の旨味を示すレーダーチャートである。
図7に示すように、実施例3及び4の成分調整をした醤油風調味料は、比較例2の濃口醤油と比較例3のエゴマ醤油よりも、旨味と塩味が高いことがわかる。
【0078】
(醤油風調味料の味)
実施例1〜4の全ての醤油風調味料は、比較例2の濃口醤油と比較して旨味が高い結果となった。特にpHが高いほど旨味は強く感じられる値となっている。
【0079】
実施例1〜4の醤油風調味料の食塩値は同等に調整しているが塩味には差が出ており、これは旨味の差が影響していると思われる。
【0080】
苦味雑味、渋味刺激、苦味は実施例1及び実施例2の醤油風調味料の方が、比較例2の濃口醤油と比較して低く、これにより、実施例1及び実施例2の醤油風調味料の風味が淡泊に感じられると推定される。
【0081】
最も比較例2の濃口醤油との差が少なかったのは実施例3及び4の醤油風調味料pH5.0の調整品であることが分かった。
なお、渋味、旨味コクに大きな差はなく、実施例1〜4の醤油風調味料と比較例2の濃口醤油の味覚は、ほぼ同等であることが判明した。
【実施例5】
【0082】
実施例5として、実施例4の発酵後濾過した醤油風調味料を、塩酸、水、食塩を用いて濃口醤油の成分値に調整した。
図8は、実施例5の濃口醤油の成分値に調整した醤油風調味料と比較例2の濃口醤油の旨味を示すレーダーチャートである。
図8に示すように、実施例5の醤油風調味料の旨味は、比較例2の濃口醤油と同等であることが分かる。
【0083】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。